竜人戦記〜故郷への旅路〜   作:りゅうちゃんDX

9 / 13
第9話

 

中年の男が馬車から降りてこちらに駆け寄って来る。

 

「いやあ、助かりました。なんとお礼を言ったらいいか。本当にありがとうございました」

 

彼は俺の隣にいるオーシャンの手をとって激しく上下に振っている。頭も下げながら笑みを浮かべているが、その瞳が値踏みするようにオーシャンをみているのに俺は気づいた。浮かべている笑みもどこか胡散臭い感じがする。当の本人であるバカは照れ臭いのか手で後頭部を掻いている。そしてまんざらでもなさそうだ。

 

「い、いや。助け合いは大事だし、礼なんていいよ」

 

「それにしてもお強いんですね、こちらのリザードマンは。あなたの従魔か何かですか?」

 

「ええ。まあ一応は。こいつの名前は「グランドダ、主ノオーシャン共々ヨロシク」」

 

種族を間違えられたが、そこは指摘せずに流す。もとより竜人とリザードマンはかなり似ており、翼を仕舞って?いることがそれに拍車をかけているのだろう。それと顔まで覆う兜を被っていることもそうだろう。明確な違いを述べるとしたら角があるということぐらいだ。

行商人然とした男は顔に貼り付けたような笑顔を崩して驚きの表情を浮かべている。

 

「お、おっと。まだ名乗っていませんでしたね、これは失礼。自分、迷宮都市イスタールを拠点としている行商人、アルマンでございます。以後お見知り置きを」

 

アルマンは右手を左胸に添えて軽く頭も下げる。無精髭が生えて髪もボサボサではあるが、かなり様になっている。商売でそういう作法が必要になるときがあるのだろう。

 

「オーシャン殿は冒険者なのでしょうか? これまでリザードマンを従えた冒険者は多く見てきましたが、これほどまでに強く、話すリザードマンを連れている方ははじめてみました」

 

商人の目から見ればオーシャンの装備が真新しいのがよくわかるだろうに、食えないやつだ。

 

「いや、村が盗賊に襲われて生き残ったただの農民だよ。1人では生活ができないから都市部に出て仕事を探そうかと思ったんだ。こいつは盗賊が去ってから現れたところを俺が打ち負かして部下にしたんだ」

 

最初は悲しそうに話していたのに最後の方になると少し得意げに話していた。褒められたことで天狗になっている。

 

アルマンはへえそうなんですかと納得した様子は見せているものの、まだ訝しんでいるようだ。先ほどの戦闘からもこんな弱いやつが俺のような魔物(魔物ではない)を倒せるはずがないと思っているに違いない。

 

「お悔やみ申し上げます。最近は物騒ですからね。ここスタジェント王国とゼンガルディア帝国の今もなお続いている戦争のせいで、各地に逃亡兵が散らばっているようです。私が定期的に回っていた村の一つも同じようなことになっていました。その帰りにこうして魔物に追われていたというわけです」

 

「そうなのか」

 

現在の地がスタジェント王国であること、隣国のゼンガルディア帝国と戦争をしていることはオーシャンへの質問でわかっていた。

どうやら他にもいくつかの村が襲われているらしい。そのうちの一つを俺は偶然見つけたということか。

 

「さて、よかったら私の馬車に乗って迷宮都市ヘルマールまで行きませんか? お礼ということもありますが、いろいろ話も聞いて見たいので」

 

これは魅力的な提案だ。現状俺たちは住処もなくただ放浪していたにすぎない。オーシャンも村から外に出たことがないというので右も左もわからない状態だったのだ。

商人だというからにはかなりの情報も持ち合わせているだろう。それをなんとか引き出してみよう。

 

「オーシャン、申シ出ヲ受ケ入レヨウ」

 

「うん、そうだな。じゃあ頼むよ」

 

日本に長年住んでいた身としてはまだ12、3の子どもが大人に対して敬語を使わないことにムッとしてしまうが、別の世界なのだということで割り切ろう。俺の考え方は古臭いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。