ガラクタと呼ばれた少女達   作:湊音

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from :大淀と愉快な仲間達

sub :羽黒です

妙高姉さんが返事が無いと不安がっていました……

やっぱり提督になるって大変ですよね

私の応援なんかが役に立つとは思わないですけど

精一杯応援しているので頑張ってください!

後、できれば妙高姉さんに返事をしてあげてください……


向かい風に向かって(2)

 田舎暮らしとは時間との闘いだと俺は思う、やるべき事を一通り終わらせてしまえば本当に何をして時間を潰せば良いのかが分からなくなる。

 

「ほら、さっさと動け」

 

「は、はい……」

 

 だから俺達は自分の身体を使って時間を潰す事にした、部屋の中は赤城のかいた汗のせいでどこか甘ったるい匂いと若干湿度が上昇しているような気がする。

 

「そんなペースじゃ終わらないぞ」

 

「もう無理ですっ……」

 

 赤城の腹部へと手伸ばしてみると赤城は叫び声とも取れる声をあげた。

 

「ここに力を入れるんだよ」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 力を入れようとしているのは手から伝わる感触で分かるのだが、口では無理だと言っても必死で力を入れようとしている赤城を褒めてやりたくなる。

 

「仕方が無い、手伝ってやるよ」

 

 俺は赤城の手を握るとゆっくりと引き寄せる、互いの顔が近づくと赤城の額に玉のような汗が浮かんでいる事に気付き視線を奪われる、汗で張り付いた前髪が妙な色気を感じさせた。

 

「今日はこれくらいで許してやろう」

 

「ありがとうございます……!」

 

 赤城との逃亡生活も5日目を迎えていた、食事の量も増えてきたしリハビリを兼ねて筋トレをさせているのだが腹筋が10回しかできないというのは流石に呆れてしまう。

 

「そろそろ飯にするか」

 

「今日は何ですか?」

 

「焼き魚」

 

 畳の上に横たわったまま今日の食事は何かを聞いてくる赤城に今日のメニューを端的に告げる、俺の告げたメニューに文句があるのか赤城は不満そうな表情でこちらを睨んできた。

 

「じゃがいもとか大根もあるぞ」

 

「昨日と一緒ですよね……?」

 

「俺が汗水垂らして貰って来た食材が不満なら食うんじゃ無い」

 

 流石に毎食老婆に食事を分けてもらうというのはまずいと思って少し離れた場所に住んでいる農家や漁師の人に分けてもらっているのだが、どうしても似たような食材ばかりになってしまうのは仕方が無いと思う。

 

「実は私、焼き魚大好きなんです」

 

「そうか、さっさと起きて手伝え」

 

 俺は七輪を庭へと運ぶと炭を入れていく、余所者の俺を受け入れてくれている老人達には本当に頭が上がらない。

 

「お醤油ってまだ残ってましたっけ?」

 

「下の戸棚に入ってる、塩も入ってるはずだから持ってきてくれ」

 

 流石に艦娘を連れて逃亡中だとは説明できなかったので、都会で仕事に失敗して嫁と2人で親戚を頼って田舎に帰って来たと説明してみたのだが不思議とそれ以上の事を聞いてくる人は居なかった。

 

「流石に焼き魚以外のメニューも考えた方が良いかもな」

 

「お刺身とかどうでしょう?」

 

 調味料を持って来た赤城はパラパラと楽しそうに魚に塩をかけながら希望を口にする、しかし俺達には大きな問題があった。

 

「さばけるのか?」

 

「……無理です」

 

 それは2人共料理が作れないという事だった、蛇や蛙だって食べる方法は知っているのだがそれは食事を楽しむと言うより生きていくための技術だし、今はそんな状況になるほど切羽詰まっていない。

 

「何も思い出せませんが、私も艦娘になる前はこんな感じで料理をしていたのでしょうか?」

 

「そうかもな」

 

 赤城は魚を七輪の上に並べると、少しぎこちない動作で野菜を切り分けていく。確かに赤城くらいの年齢であれば彼氏の1つや2つ見つけて何気ない日常を送っていてもおかしくは無いと思う。流石に艦娘としての服装で居るとまずいと思い家にあった服に着替えてもらっているのだが、こうして普通に生活していると赤城が艦娘だと気付ける人間は居ないだろう。

 

「湊さんは軍に入る前とかは何をしていたんです?」

 

「うーん、何をしていたかと聞かれると困るが、今とそんなに変わらないんじゃないかな」

 

「ご家族の方が農家か漁師だったんですか?」

 

 そういう意味で言った訳では無いのだが、赤城にとって俺は農家や漁師の手伝いをしている印象が強いのだろうか。

 

「何をやっていたんだろうな」

 

「ご両親の仕事を知らないんです?」

 

「あぁ、そもそも両親を知らないからな」

 

 別に隠したいと思っている訳でも無いし、赤城の質問に素直に答えてみる。それを聞いた赤城はどう反応したら良いのか分からないのか視線があちこちに泳いでいた。

 

「別に気にする事じゃないだろ、赤城だって艦娘になる前の事は思い出せないんだろ?」

 

「そうですが、なんだか申し訳無い事を聞いてしまいましたね」

 

 俺は親の顔を知らない、赤城は親の顔を思い出せない。意味は違うのかもしれないけど俺にとってはどちらも似たような物だと思う。

 

「俺は施設で育ったんだ、笑える話なんだけど俺は船着き場に捨てられてたらしい」

 

「それのどこが笑えるんですか……?」

 

「俺の名前を思い出してみろ」

 

「湊さん……?」

 

 爺に引き取られた後に聞いた話なのだが、俺の名前の由来は港に捨てられていた事が関係しているらしい。

 

「安直過ぎて笑えるだろ」

 

「全然笑えませんよ……」

 

「おかしいな、部隊の仲間達に話したらみんな笑ってたんだけどな」

 

 実際この話を聞いた隊長はトイレに捨てられてなくて良かったなってこっちがむかつくくらい大声で笑っていたと思う。

 

「部隊ですか、湊さんはどんな艦に乗ってたんです?」

 

「そういえば言ってなかったか。 俺は元々陸軍出身なんだ、だから船には移動くらいでしか乗ったことない」

 

「何を聞いても私の予想外の答えが返ってきてしまうのですが……」

 

 恐らくは赤城なりに場が無言にならないように気を遣ってくれていたのだろう、今更だけどもう少し気の利いた返答をしてやるべきだった。

 

「折角だし少し昔話をしてやろう」

 

 どうして赤城に話そうと思ったのかは分からない、このまま基地に戻れば解体されてしまう赤城に同情したのかも知れないし、帰る場所が無いという状況がどこか自分と重なったのかも知れない───。

 

 

 

 

 

「なぁ湊、そろそろ帰ろうよ……」

 

「喋るな、見付かったらまた説教されるだろ!」

 

 俺と子分の(たける)は暗くなった食堂でダンボールを被って時間が来るのを待っていた。

 

「僕トイレに行きたいんだけど……」

 

「もう少しだから頑張れ!」

 

 俺が思いつく限りの最高のタイミングは消灯前の点呼が終わり、大人たちが見回りを行った直後。それが最も見つかりづらいと思う。

 

「来たっ……!」

 

 食堂の扉がゆっくりと開かれると、ダンボールに開けた穴から小さな人影が見える。今すぐにでも飛び出して捕まえてやりたいのだが、決定的な現場を押さえないと言い逃れされてしまうと昨日テレビを見て学んでいた。

 

「俺が合図したら一斉に飛び出すぞ……!」

 

「うんっ!」

 

 俺は岳にだけ聞こえるように小声で呟くと、食堂の中を物色している影をじっと睨みつける。影は手慣れているのか暗い食堂の中を真っ直ぐ冷蔵庫目掛けて歩いているようだった。

 

「今だっ! 岳、行くぞ!」

 

 影が紙パックのジュースと夕食時に余ったデザートのゼリーを手にしたタイミングで俺と岳は段ボールから飛び出す、影は突然の事に驚いたのか頭を庇うようにその場にしゃがみ込んでしまった。

 

「観念しろ、逃げ場はもう無いぞ」

 

 食堂の出入り口は岳が守っているし、1対1の喧嘩なら年上にだって負けない自信がある。

 

「ごめんなさいっ、許してください!」

 

「ん? よく見たら新入りじゃないか、施設に入って早々おやつ泥棒とは度胸があるじゃないか」

 

 てっきり年上の奴等かと思ったけど、蹲って怯えているのは先月この施設に入って来たばかりの新入りだった。

 

「ここじゃまずい、場所を変えるぞ! 岳、撤収!」

 

「分かった!」

 

 俺と岳は泣き出してしまった新入りの手を掴むと、食堂から出て施設の裏山に作った秘密基地へと移動した。

 

「これでも飲んで落ち着けよ、岳の分もあるぜ」

 

「うん、ありがと……」

 

「いつの間に盗ったの……?」

 

 俺は3人分のジュースとゼリーを均等に配ると泣き虫新入りから事情を聞く事にした。

 

「食堂からおやつを盗って来たら仲間だって認めてやるって言われて……」

 

「大人に見つかったらお尻叩きじゃ済まないよそれ……」

 

「誰がそんなくだらない事を言ったんだ?」

 

 自分の手を汚さずにおやつを手に入れるなんて甘えた事は絶対に許す訳にはいかない、見付からないように努力や工夫を重ねるのがおやつ泥棒の正しい楽しみ方なのだ。

 

「2つ上のお兄ちゃん達にそう言われて……」

 

「またアイツらか、この前も俺の妹達からおやつを取ろうとして懲らしめてやったばかりなのに!」

 

「俺のって、別に湊だけの妹って訳じゃ無いと思うんだけど……?」

 

 岳が余計な事を言ってくるけど、強きに逆らい弱きを守れってこの前来た陸軍のお姉ちゃんも言ってたし、だから俺は弟や妹達をアイツ等から守る義務がある。

 

「ちょっと懲らしめてくるわ」

 

「うんっ!」

 

「えっ、消灯時間過ぎてるよ!?」

 

 その後俺は2つ上の卑怯者共の部屋に殴り込みに行くと、大人が止めに入るまで暴れてやった。流石に3対1はきつかったけど、殴った回数は俺の方が多いし俺の勝ち、そんな10歳の夏だった───。

 

 

 

 

 

「良い話だろ?」

 

「け、結局湊さんもおやつを盗ってたんですよね……?」

 

「あぁ、しかも何故か分からないけどおやつ泥棒をした時には俺に戦利品を1つ分けてくれるってルールができた」

 

 赤城は焼き魚を皿に移すと俺に渡してくれた、醤油を数滴たらして手を合わせるとこれを分けてくれた老人達に感謝する。

 

「もう1つ気になったんですけど、どうして湊さんは犯人を捕まえようとしたんですか?」

 

「そりゃあ自分の縄張りを荒らされたら誰だって怒るだろ」

 

 赤城はまるで宇宙人でも見るかのような表情で俺の顔をマジマジを見てきた、俺の顔に何かついているのだろうか。

 

「いまいちだったか、じゃあ次の話は絶対感動するぞ」

 

 俺は魚の身を解し口に運ぶと素直に美味いと思った。昨日も一昨日も食べてそろそろ食べ飽きる頃合いかとも思ったが、必死に働いて手に入れた食料はそれだけでその辺の高級料理よりも美味いと言い切れる自信があった───。

 

 

 

 

「俺の可愛い妹を泣かせた野郎をぶん殴りに行こうと思う」

 

「えぇ……、今度は何があったのさ」

 

「近所の小学校の子が千秋(ちあき)のスカートを捲ったり、ブスだとかバカだとか悪口を言ってくるらしい」

 

 男は何があっても女を守ってやれって陸軍のお姉ちゃんも言っていた、だからこれから俺のやることは間違いなく正しい行いなのだ。

 

「それって太郎君の事?」

 

「名前は知らん、俺が興味あるのは千秋を泣かせたって事実だけだ」

 

「思うんだけど、太郎君って千秋ちゃんの事好きなんじゃないかな……?」

 

 岳の言っている事の意味が分からない、もし本当にその太郎とか言う奴が千秋の事を好きならばどうして意地悪をして泣かせる必要があるのだろうか。

 

「岳、お前頭大丈夫か?」

 

「その言い方は酷く無い!?」

 

「じゃあ聞くけど、岳は小夏(こなつ)を泣かせたいって思うのか?」

 

「ど、どうして小夏が出てくるのさ! 別に僕は小夏なんて好きじゃないし!」

 

 実際岳がこっそり小夏に夕食のデザートを渡しているところを俺は目撃している、今更言い逃れとはなんと女々しい男なのだろうか。

 

「それで、どうなんだ?」

 

「小夏は関係無いけど、好きな子には優しくするべきなんじゃないかなって思う」

 

「そうだよな、だから俺はその太郎とやらをぶん殴りに行く」

 

 俺はテレビで見た主人公の真似をして大げさに振り向く、本当はマントを付けていればかっこよく決まったとは思うのだけどビニール袋で作ったマントは静電気がすごくて使い物にならなかった。

 

「待ってよ、僕もついて行くよ!」

 

 俺と岳は近所の公園へと走る、千秋の話によればいつも5時くらいまでは友達と遊んでいるらしい。

 

「太郎ってのはどいつだ!」

 

「顔も分からないのに殴りに行くとか言い出したの……?」

 

 俺は公園にあるジャングルジムに登ると、大声で太郎の名前を呼んだ。野球をして遊んでいた子やシーソーで靴飛ばしをしていた子達の視線が俺に集まる。

 

「太郎って俺の事か?」

 

「ち、千秋を泣かせたのはお前か!」

 

 まずい、てっきり女の子をいじめるような男だからひ弱なもやし野郎だと思っていたのだが太郎は予想以上にでかい。身長は俺より頭1つくらい大きいし、何より相撲取りでも目指しているのでは無いかと思える程太っている。

 

「何だよ、お前千秋ちゃんの何なんだよ!」

 

「俺は千秋の兄貴だ、妹が泣かされたからにはお前には痛い目にあってもらう!」

 

「ち、千秋ちゃんのお兄ちゃん……!?」

 

 普通に殴りかかってもあの体重相手じゃ掴まれた時点で負けてしまう、陸軍のお姉ちゃんは対格差のある相手を戦う時にはどうしたら良いと言っていただろうか。

 

「あのさ、太郎君に聞きたいんだけど、もしかして千秋ちゃんの事好きなんじゃないかなって……」

 

「だ、誰があんなブスの事好きになるかよ!」

 

 心の中で岳にナイスアシストだと褒めてやる、確か対格差のある相手と戦う時は正面からではなく不意を突けばいいと教えて貰ったはずだ。

 

「おらぁぁ!」

 

 俺は砂を握りしめると思いっきり太郎の顔面に向かって投げつける、不意を突かれた太郎は顔面にもろに砂を浴びて目を押さえながらその場にしゃがみ込んでしまった。

 

「み、湊!?」

 

「これでとどめじゃぁぁぁ!」

 

 太郎におぶさる様にして首に手を回す、どうしてこれが裸締めと言うのかは分からないしチョークなんとかって呼び方の方がかっこいいと思う。

 

「いーち、にー、さーん!」

 

 相手を無抵抗にさせるだけであれば首を真直ぐ押さえるのではなく横から潰すようにする、そして自分の頭を使って押し込むと10秒数える。辛いばかりで楽しくない訓練の授業もついに役に立つ日が来た。

 

「はーち、きゅー、じゅーう! よし、これで太郎も懲りただろう」

 

「た、太郎君息してないんだけど……?」

 

「大丈夫、背中をこうやって思いっきり叩けば……」

 

 お姉ちゃんがやってたように真似をしてみるが、太郎の意識が戻らない。まずい、何がまずいのかはよく分からないが変な汗が出てきた。

 

「起きろやおらぁぁ!!」

 

「太郎君しっかり!!」

 

 俺は必死で太郎の背中を蹴る、岳は必死で太郎の頬を叩く。俺達2人の頑張りが太郎に通じたのか太郎は無事に意識を取り戻した。

 

「つ、次に千秋を泣かせたら今以上に痛い目にあうと思えよ!」

 

「ちょっと、湊!? 置いて行かないでよ!?」

 

 俺と岳は必死で施設へと走った、もう少しで危ない橋を渡るところだったが千秋への意地悪は無くなり俺は近所の子供達の間で恐れられる存在になった、そんな11歳の春だった───。

 

 

 

 

 

「どうだ、俺は妹を近所の悪ガキから守ってやったんだ」

 

「私には湊さんがどうして誇らしそうにできるのかが分かりません……」

 

 ちなみに好きな子には意地悪したくなるという心理に気付いたのは俺が陸軍に入って16歳になってからだったりする。

 

「おーい、野菜持って来たけどまぐきやうかー?」

 

 玄関から皺枯れたような老人の声が聞こえてきた、今日は手伝いに行ってないはずだがどうしたのだろうか。俺は焦げかけた野菜を網の縁へと移動させると玄関へと向かう。

 

「ちょぺっど傷は入ってるけど味は良いぞ」

 

「ありがとうございます、妻も喜びます」

 

 傷の入った野菜は市場に出荷できないと聞いていたのだが、今の俺達にとってはご馳走と言っても間違いでは無いと思う。

 

「嫁こさちょぺっどはがへさのたのか?」

 

「はい、最近は食べる物も美味しいと見る見る元気になってますよ」

 

「それは良がた、やっぱり都会の空気は汚れてて身体さ悪りがきやの」

 

 何よりも俺が1番驚いているのは知らなうちになんとなくだが言葉の意味を理解できるようになっている事だった。

 

「これも飲むど良い、美味いぞ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 田酒と書かれたラベルを見る限り酒だとは分かるのだが生憎酒は苦手だ、しかしせっかくの好意を断る訳にはいかず笑顔で受け取る。

 

「それだばあ嫁こさんさ、しろしぐ伝えておいてぐれ」

 

「はい、一緒に頂く事にしますよ」

 

「それど目付きの悪りおなごど借金取りがうろついてたかきやしばきやぐは大人しぐしておいた方が良いぞ」

 

 手を振りながら道路を歩いて行く老人に俺は大きく頭を下げる、騙しているようで後ろめたさもあったが、ここまで本気で他人に感謝するというのは初めてだと思う。

 

「赤城って飲めるのか?」

 

「飲んだことは無いですね……」

 

 こちらの様子を窺っていた赤城に酒瓶を見せて尋ねてみるが、飲んだことが無いらしい。飲まなければ飲まない方が良いとは思うのだが折角だから少しくらいは飲んでみる事にしよう───。

 

 

 

 

 

「はっくしょん!」

 

「風邪かしら?」

 

「いや、誰かが僕の噂をしてるのかも、僕って昔からそういうのに敏感なんです」

 

 加賀さんと一緒に湊さんを探しているのだが、どうにも見つからない。村の人達に話しかけても何故だか僕の事を悪者でも見ているかのような目でこちらを見てくる。

 

「こんにちはー、ちょっと人を探してるんですが……」

 

「なサ返す金はね、さっさど都会サ帰れ!」

 

 畑仕事をしている老人に話しかけてみたのだが、良く分からない言葉を口にして歩いて行ってしまった。一体僕が何をしたと言うのだろうか───。


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