ガラクタと呼ばれた少女達   作:湊音

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to :大淀と愉快な仲間達

sub :お休み中の湊さんに代わり二航戦の私達が

初めまして、でも無いかな?

蒼龍と飛龍です!

湊さんは作戦で疲れてお休み中なので、私達が連絡しておきますね!

鹿屋ってどんな所なんですか?

こっちは空気は綺麗だけど、朝と夜はちょっと寒くてそこだけ辛いですよー!

湊さんがたまーにニコニコしながら誰かと連絡取ってるなとは思っていましたが、

奥さんや彼女さんじゃなく、業務連絡だったんですね!

今はまだ眠っていると思うので、起きたら返事するように伝えておきますね!


提督のお仕事(1)

「ここは何処だ……?」

 

 ゆっくりと目を開いてみると白い天井が視界に入る、しかし視界の左半分が暗闇になっており俺はゆっくりと左目に触れてみる。

 

「眼帯なんて付けてりゃ見えるはずが無いよな」

 

 そう思って眼帯を外してみるが、視界は変わらなかった。何があったのか理解はできず、周囲を見渡してみると規則正しく音を鳴らす機械や俺の腕には透明な管が繋がれている。1度落ち着こうと目を閉じて深呼吸をしてみるが瞼の裏には最後に見た光景が映っていた。

 

 ヤットキテクレタ。

 

 声は聞き取れなかったが、間違いなくアレはそう言っていた。真っ白な肌でとても人とは思えなかったが、まるで仕事が終わり帰宅してきた父親を見る子供のような安堵した表情でそう言っていた。

 

「失礼しま……っ! 目が覚めたんですね!」

 

 扉が開くと赤城が驚いた表情のまま俺に近づいて来た。

 

「赤城か、おはよう」

 

「ええ、おはようございますってそうじゃなくて、3日も眠っていたんですよ!?」

 

 赤城の言葉で自身が3日間も眠っていた事を知る、随分と長い間寝ていたせいか意識すると身体のあちこちが痛むような気がする。一応身体を確認してみると、身体のあちこちに包帯が巻かれていた。

 

「鎮守府はどうなった? ここは何処だ? 全員無事なのか?」

 

「落ち着いてください、鎮守府は無事です。 ここは鎮守府の医療施設で、負傷者は居たようですが戦死者は出ていないと聞いています」

 

 無事に鎮守府を守る事ができたのであれば良かったと安堵する。赤城は俺が目覚めたらそうするように指示を受けていたのかベッドの横にあるボタン押すと、少しして白衣を着た老人が部屋に入って来た。

 

「悪いが赤城、話が終わるまで外で待っててもらっても良いか?」

 

「分かりました」

 

 赤城が一緒に居た事で話をし辛そうにしている老人を見て俺は赤城に部屋から出て行くように伝える。医療施設に運ばれたという事はただ眠っていた訳ではなく、恐らく様々な検査も行われているのだろう。

 

「起きて早々気を遣わせてすまないね」

 

「いえ、なんとなく察してますので」

 

「いつからだね、種類は?」

 

「海外での暴動の時からです、詳しい種類は分かりませんが向こうでは注射器を、日本に戻ってからは煙草型のやつです」

 

 呉の提督に止めろと忠告されてからは吸ってはいなかったのだが、そう簡単に身体から抜ける物でも無いらしい。

 

「アンフェタミンかメタンフェタミン、その後は大麻樹脂という所かね?」

 

「恐らく、支給されていただけなので詳しくは元上司に確認しないと分かりません」

 

「その若さで君は何を見てきたのかね?」

 

 俺はその質問に答えるべきなのかどうか悩んだ、誰かに話すという事はあの時の光景を思い出す必要がある。できる事ならそんな真似はしたくなかった。

 

「すまない、君も被害者の1人だ。 今の質問は忘れてくれ」

 

「1週間くらいは使用していないのですが、やはり分かってしまう物なんですかね?」

 

「こうして君に確認するまでは怪しい所だった、儂以外の者は気にも留めて無かったようだけどな」

 

「そうですか、申し訳ありませんがこの事は黙っていてもらえると助かります」

 

 白衣を着た老人は大きく溜め息をつくと、とても悲しい目をして俺の顔を見ていた。

 

「儂には君の見てきた光景は分からん、医師として止めろという助言を送るが、何か必要な物があれば良いたまえ。 碌に眠る事もできないのだろう?」

 

「そのおかげでこの前の敵襲には気付けましたので、別に悪い事ばかりじゃないですよ」

 

 空気が重くなってしまったので何となく気にしていないという事を伝えてみるが、老人は俺の様子を見て呆れてしまったようだった。

 

「それよりも、左目の事を聞きたいのですが」

 

「そうだな、この話はこれ以上は止そう。 君は網膜剥離という言葉は聞いたことはあるかね?」

 

「……昔、海外のサッカー選手が騒がれていたくらいしか」

 

「眼球に強い衝撃を受ける事が原因になる事が多いのだが、海面に飛び込んだ際か船を爆破した際か分からんが君はその衝撃が原因だろう」

 

 なんとなく以前渡された診断書の事を思い出した、すぐに検査を受けろと書かれていたが素直に聞いておけば良かったなと軽く後悔をする。それでも俺の左目1つで多くの人の命が救えたのであれば安い物だろう。

 

「赤城達には黙っておいてください。 彼女達の大事な時期に余計な心配をかけたくないので」

 

「分かった、約束しよう。 その代わり可能な限り早く治療を受けると約束してくれ」

 

「分かりました」

 

 提督になるためのこの期間中は恐らく無理だろう、仮に提督になってから時間に余裕ができるとは思えないので俺の約束は守れずに終わってしまいそうだなと心の中で謝罪する。

 

「さて、そろそろ扉で待ってる赤城を部屋に入れてやる事にしますか」

 

「意識もはっきりしておるようだし、無理をしないのであれば自由にしても構わんよ」

 

 そう言って老人は扉を開けて部屋から出ていく、赤城は立ち去る老人に深々と頭を下げると心配そうな表情のまま部屋の中に入って来た。

 

「どうでした……?」

 

「心配するような事は無いよ、頑丈な身体だって褒められた」

 

「そうですか、良かった……」

 

「ただ、目にばい菌が入ったみたいで眼帯をしてろって言われたな」

 

 俺は赤城にそう言って再び眼帯をつける。なんとなく鹿屋で出会った天龍の事を思い出して彼女はどうして眼帯をつけているのかが不思議に思えてきた。

 

「さて、大湊の提督にでも挨拶に行くか。 酒は用意できなかったが、勝利の報告くらいはしておいた方が良いだろ」

 

 俺は腕から点滴の管をゆっくりと外すと、ベッドから立ち上がり固まってしまった身体を解すために軽くストレッチを行う。俺が3日眠っていた以上は他の誰かがすでに報告しているとは思うのだが、やはり自分の口で勝ったと言いたかった。

 

「勝利……、そうですよね。 私達勝ったんですよね」

 

「あぁ、俺もこうして目が覚めたし犠牲者も居ない。 完全勝利だろ」

 

 俺の言葉にゆっくりと頷いた赤城と一緒に提督が眠っている部屋を探す。2人で探してみてもなかなか見つからず、途中すれ違った男に部屋を訪ねてようやく辿り着くことができた。

 

「調子はどうだ?」

 

 俺はそう言いながら扉を開けると提督は何やら難しい表情で資料に目を通しているようだった。

 

「おぉ、湊くんか。 医者の話だともう少し安静にしておいた方が良いそうだ」

 

「それなら仕事はしない方が良いんじゃ無いか?」

 

 安静にしろと言われたのであればベッドの上で資料に目を通しているのもやめた方が良いとは思うのだが、俺の言葉に提督は苦笑いを浮かべていた。

 

「ええんよ、安静にしろって言われても仕事をしちゃダメだって言われた訳じゃないからね」

 

 飲み物を買いに行ってたのか、ペットボトルと紙パックを持った龍驤が部屋に入って来た。俺と赤城は龍驤の言葉の意味が分からず互いに見合わせる。

 

「結局提督って何が悪かったんですか?」

 

 てっきり酒の呑み過ぎで身体の何処かを悪くしているのでは無いかと思っていたが、なんとなくそうじゃないような気がしてきた。

 

「ふむ、魔女の……。 いや、今の時代であれば深海棲艦の一撃とでも……」

 

「ただのぎっくり腰やね、何や前日に階段から落ちたって言うとったけど、いい歳なんだから少しは気を付けて欲しいもんやねぇ」

 

 俺はその説明を聞いて背中に嫌な汗をかいた、なんとなく提督に視線を合わせてみるが原因は俺の思っている通りなのか提督は露骨に俺から視線を逸らした。

 

「そ、そうか。 良い歳なんだから無理はしないようにな……?」

 

「う、うむ……」

 

 大事な作戦を部下との殴り合い、それもただの親馬鹿論争の喧嘩が原因で指揮を取れなかったと言うのは流石にこの男でもまずいと思ったのだろう。何よりもその原因を作ってしまった俺は勝利の報告をする嬉しさよりも罪悪感が凄い。

 

「だからこうしてうちが面倒見てるんやけど、なかなか大変でなぁ」

 

「そういう訳で、雑務程度は問題無いがもう少し良くなるまでは湊くんに提督代理を続けてもらおうと考えているのだがどうだね?」

 

「ま、まぁ乗りかかった船なので……」

 

 このタイミングでそんな事を言われてしまえば断る訳にはいかなかった、意地の悪さは相変わらずだなと思っていたが、俺もこの男に最大限の仕返しを思いついてしまった。

 

「それじゃあ提督代理として赤城に任務を与える」

 

「何でしょうか?」

 

「この老人が提督業に復帰できるまで介護してやってくれ。 提督として大事な身体だ、実の父親のように大切に扱うように」

 

 提督は持っていた資料を落とすと信じられない物でも見るかのような目で俺を見てきた。

 

「何か問題でも?」

 

「儂には龍驤が居るからそんな気遣いは……」

 

「うちはもうちょっと発着艦の練習がしたいし、代わってくれるなら嬉しいなぁ」

 

 助けを求めた龍驤には見放され、仕方が無いと提督は大きく溜め息をついていたが、赤城は俺の与えた任務に快く了承してくれた。

 

「それじゃあ俺は軽く鎮守府を見て回って来るから、頼んだぞ」

 

 俺は赤城の肩を軽く叩くと部屋から出る、少し歩くと後ろから龍驤に呼び止められた。

 

「これ、落とし物やで」

 

「ん……? この事は誰かに話したのか?」

 

 龍驤が俺に手渡して来たのは以前執務室を片付けていた時にポケットに隠していた提督と赤城が写っている写真だった。写真は海水に浸かったせいか多少痛んでいるようだったが龍驤が丁寧に乾かしてくれたのだろう。

 

「誰にも言って無いよ、最初は赤城の着任した時の写真かと思ったけどさっきのやり取りで何となく察してしもうたわ」

 

「そうか、一応極秘らしいから変に口を滑らせないようにな」

 

 俺と龍驤は少し意地の悪い笑みを浮かべた後、互いに親指を立て小さな作戦の成功を祝った───。

 

 

 

 

 

 

「しっかし暇だな……」

 

 書類関係の仕事は提督が行ってくれている以上は正直俺が提督として行うべき仕事は無かった。あの男の事だから仕事を押し付けると言うよりは俺に提督代行として鎮守府を管理していたという箔を付けようとしてくれているのだろうが、3日動かさなかった身体を動かしたくて仕方が無い。

 

「み、湊提督代理に敬礼!」

 

 鎮守府の損傷状況を確認しようと適当に散歩していると、訓練生の集団に一斉に敬礼されてしまった。仕方が無く俺も敬礼を返してみるがどうもむず痒い。

 

「楽にしてくれ、提督代理って立場上仕方が無いのかもしれないが俺は大湊に勉強に来てる立場だからいちいち敬礼なんてしなくて良いぞ」

 

「は、はい!」

 

 訓練生が俺の言葉に一斉に返事をしたのを見てなんとなく陸軍の部下達を思い出す。思えば訓練の途中で抜けてしまう事になったが元気にやっているのだろうか。

 

「今から訓練か?」

 

「はい! 1300からグラウンドで体術の訓練を行う予定になっています!」

 

「俺も見に行って良いかな?」

 

 正直陸軍で育った俺は海軍の訓練に興味があった、なんとなく察しはつくのだが実際に訓練を見た事が無い以上は1度見てみる必要があるだろう。そんな事を考えながら訓練生の後についていく。

 

「貴様等は時計も読めないのか? 5分前に行動しろと何度も言っているはずだが貴様等の耳は飾りか!?」

 

 グラウンドについて早々大尉の怒鳴り声が聞こえてきた、正直この手の時間に関しては5分前に到着してもグラウンドの整備を行っていないだとか服装に乱れがあるとかなんだかんだ嫌味を言われてしまう物だった。

 

「あぁ、すまない。 俺が途中で引き留めちまったんだ」

 

「げっ……。 湊……提督代理……」

 

 俺の存在に気付いたのか大尉は露骨に嫌そうな顔をしてきた。

 

「悪いが訓練を見学させてくれ」

 

「勝手にしろ……ください」

 

 なんだろうか、俺の方が階級が上だと伝えた時には気にしていなさそうだったのだが妙に不格好な言葉遣いをしているような気がする。

 

「本日は訓練用のナイフを使用した模擬戦を行う、訓練の終了は貴様等の中で誰かが俺に有効打を与えたら終了。 俺に有効打を与えられた者は腕立て100回とする!」

 

「は、はいっ!」

 

 なんだか懐かしい、俺も施設に居た頃はよくやらされていたような気がする。実際ナイフなんて艦で戦う海軍には関係無いのだろうが、この訓練で大切なのはどれだけボロボロにやられても諦めずに立ち向かう事だって教えられたような気がする。

 

「それでは最初は誰だ?」

 

「じ、自分が行きます!」

 

 大尉の声に1番大柄な訓練生が前に出た、俺が施設でやらされて居た頃は大抵1番槍は俺の役割だっただけになんだか親近感が湧いてくる。

 

「やぁぁぁ!」

 

 ナイフを持ち大尉に向かって真っすぐ走る訓練生を見て苦笑してしまう、一見ナイフを突き刺すために突進しているようにも見えるが、狙いは大尉の膝を抱え込み転倒させてから仕留めるつもりなのだろう。

 

「この馬鹿が!」

 

「うぐっ……」

 

 大尉の膝を抱え込もうとした瞬間訓練生の背中に思いっきり肘が落ちた。本来であればタックルに合わせて顔に膝を入れるのが常套手段なのだが、流石にそこまでやる程大尉も鬼では無いのだろう。

 

「貴様は馬鹿かっ! ナイフを持った相手にタックルなんて死にたいのか!」

 

 そう言って大尉は訓練生の右肩を訓練用のナイフで叩く、実際ゴム製のそれで切れる事は無いのだが叩かれるとそれなりに痛い。

 

「す、すみません!」

 

「腕立てをしながら他の者を見ていろ! 次っ!」

 

 その後も訓練生達は試行錯誤を繰り返しながら大尉に挑んでいったが、結果は全員で仲良く腕立てをする事になった。腕立てを終えた物は疲労で何倍も重く感じるナイフを持って再び挑み、もう1度腕立てを行う事になる。

 

「諦めない心ってより、腕立てやらせたいだけなんだよなコレ……」

 

 実際2周目3週目と疲労が溜まっていけば自分よりも格上の相手に有効打を入れるなんて事は不可能になってくる、本当に狙うのであれば1週目を狙うべきだろう。

 

「なぁ大尉」

 

「なん……でしょうか?」

 

「久しぶりに俺も訓練に参加しても良いかな?」

 

「……はっ?」

 

 俺の提案に大尉は絶望的な表情を、訓練生達は腕立てをしながらも目をキラキラと光らせながら俺達のやり取りを見ていた。

 

「昔からお礼参りってのを1度やってみたかったんだよな」

 

 俺は肩を軽く回して首を鳴らすと身体の調子を確認する、若干の気怠さはあったが問題は無いだろう。

 

「怪我人があんま調子に乗るなよ……?」

 

「お、調子出てきたみたいだな」

 

 大尉の口調がいつも通りの上から目線に戻り、棒立ちだった姿勢がナイフを前に突き出し片腕を背中に回すと言う教科書に載っているような正しい姿勢になった。腕立てを終えた訓練生が俺にナイフを手渡そうとしてきたが、俺はそれを拒否する。

 

「ハンデとして俺は素手で良いですよ」

 

「馬鹿にしやがって」

 

 本来であれば訓練生の前で教官の株を下げるような真似は行うべきではない、それでも俺の過去の清算のためにも大尉にはここで恥をかいてもらおう。

 

「お前等、よく見ておけよ。 覚えて置けばストーカーに襲われた彼女を守る時に役に立つぞ」

 

「はいっ!」

 

 俺は腕立てをしている訓練生にそう伝えると元気の良い返事が返ってくる、実際俺が教えて貰った時にも同じ説明をされたのだが正直1度もそんな場面に遭遇した事は無い。

 

「……俺が勝ったらてめぇにも腕立てをやらせてやるからな」

 

「それじゃあ俺が勝ったら大尉が腕立てって事で」

 

 俺と大尉はにらみ合ったままジリジリと間合いを詰める、俺は大尉の姿勢から突くのか薙ぐのかを確認する。やや重心が前にあるような気がするし、恐らくは突く方だろう。突くのであれば狙うのは1番的がでかい腹部を狙う事が容易に想像できる。

 

「ふっ!」

 

 大尉は息を吐くのと同時に真直ぐ俺の腹部目掛けてナイフを握った右腕を突き出してくる、俺は突き出された右腕を自分の脇の下へ優しく誘導するように押してやると軽く身体を捻ってナイフを避ける。

 

「さて、どうする?」

 

 慌ててナイフを引こうとした大尉の腕を腋を締めて捕まえると、誘われた事に気付いて焦っている大尉の顔を確認する。

 

「くそがっ!」

 

「今みたいにナイフを相手にする時の基本は避ける事や受ける事よりも、相手が攻撃を外すように誘導するのがコツだから覚えておけ」

 

「おー……」

 

 悔しそうな大尉を他所に俺は訓練生に講義するように説明してやる、慣れてしまえば簡単な事なのだがこんな事で歓声を上げている訓練生が可愛く思えてきた。

 

「捕まえてしまえば後は簡単だ、頭突きをしても良いし空いている手でぶん殴ってやっても良い」

 

 俺は説明しながら大尉の顎に軽く手の平を当てると、人差し指で1本貰ったと合図をして捕まえた腕を解放してやる。

 

「……だからお前とこの手の訓練をするのは嫌なんだよ」

 

「施設に居た頃から俺の取柄はこれくらいだったからな」

 

 初めのうちは俺も弟や妹達と同じように何度も地面に組み伏せられていたが、陸軍のお姉ちゃ……隊長に指導してもらえるようになってからは体術の訓練だけは別枠で行うようになっていた。

 

「それじゃあ腕立てに行ってみましょうか」

 

「や、やりゃあ良いんだろうが!」

 

 大尉は地面に手をつくと腕立てを開始した、それを見ていた訓練生は少し鬱憤が晴れたようだったが正直そんな上手い話ばかりじゃ無い事も教えて置いた方が良いだろう。

 

「上官が腕立てしてるのに、お前達が上から見てて良いと思うのか?」

 

「えっ……? あっ、全員腕立て開始!」

 

 俺の言葉の意味を理解したのか大柄の訓練生が腕立てを行うと全員に合図を出した。

 

「それじゃあ俺は鎮守府を見て回る事にするよ、回数は敢えて言わないでおくが大尉が続ける限り頑張るように」

 

 俺は腕立てをしている大尉に軽く手を上げてその場を後にする、これで大尉は自分のプライドを守るために訓練生が全員へばるまでは腕立てを止める事ができなくなっただろう。そんな事を考えながら歩いていると何時から見ていたのか腕を組んだまま不機嫌そうな表情をしている加賀に引き留められた───。




from :大淀と愉快な仲間達

sub :榛名です!

初めましてでは無いですね

直接お話をしている訳ではありませんが、

再びお二人とこうして言葉を交わせると言うのはなんだか嬉しいですね

こちらはどちらかと言えば蒸し暑い日が多く、少しだけそちらが羨ましいです

もし可能であれば、湊さんがニコニコしているという話を

もう少し詳しく聞きたいのですが、どのような感じだったのでしょうか?

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