ガラクタと呼ばれた少女達   作:湊音

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目をそらして(2)

「おかえりなさい、舟遊びはどうでした?」

 

「そんな洒落た事なんてしていないよ、偵察任務って言ってくれ」

 

 俺は胡散臭い笑顔で手を振っていた男に係留用のロープを投げ渡す。船に乗っている最中に視線を感じたような気がしたのはこいつが迎えに来るタイミングでも窺っていたのだろうか。

 

「態々出迎えなんてどうしたんだ?」

 

「28日の事を話しておきたいと思いまして、食事でも一緒にどうかなと」

 

 予定では27日に利根の最終検査をして問題が無ければ明後日の28日の早朝から呉へと向かう事になっていたはずだが、正直に言ってしまえば今の状態の利根にもう1度検査を受けさせても良いのか不安がある。

 

「なぁ、利根の今朝の結果ってもう出たのか?」

 

「はい。 身体的には問題なし、やや艤装との接続には難ありのようですが、そこは慣れの問題で片付けても大丈夫だと聞いています」

 

 船の上での出来事をこいつに話したほうが良いのかは分からない。事情を説明して明日の検査を取りやめて出発の日程を早めることはできないかと相談してみても良いのだが、俺の後ろで男の視線から隠れるようにしている利根の様子を考えて下手な事は言わないほうが良いのではと判断する。

 

「……少し用事を思い出したんだが、出発の日程を早めるってのは無理なのか?」

 

「それはどうしてですか? どんな用事が? 何かあるようならこちらで人手を用意しますが?」

 

 無理だと言われて流されると思っていたのだが、予想以上の剣幕で捲くし立てるように質問を繰り返してくる男に少しだけ怖さを感じる。

 

「恥ずかしい話なんだが、護衛艦ってのを気に入ってしまってな。 どうにかしてゆっくり見たいなと思っただけなんだ」

 

「……そうですか。 残念ですが明日は湊さんの検査もありますので厳しいですね。 左目の具合も確認しておかないと手遅れになったらまずいでしょうし」

 

「そうだよな。 急に変なこと言って悪かったな」

 

「いえ、湊さんの護衛艦に憧れるなんて子供のような一面を見る事ができて少し驚いてしまいましたよ」

 

 先ほど感じた怖さこそ無くなったようだが、それでも言葉の何処かに棘を感じるような気がする。利根の事を考えればここで長居しても良い結果にはならないだろうし、適当な理由をつけてこの場を離れた方が良いだろうか。

 

「そうだ。 艦娘は医務室じゃなく明石さんに見てもらった方が良いんだよな? さっき利根が船の上でバランスを崩してこけちゃってな、大丈夫だとは思うけど念のため明石さんに見ておいて貰いたいんだが何処に居るか知らないか?」

 

「この時間なら工廠ですかね。 それでは一緒に食事をするのは次の機会という事にしましょうか」

 

「悪いな、それじゃあ言ってくるよ」

 

 俺は軽く手を上げて別れの挨拶をすると、俺の背中に張り付いている利根を半ば引き摺るようにして工廠へと向かう。去り際に男が何かを呟いたようだったが、海風に遮られ聞き取る事ができなかった。

 

「大丈夫か?」

 

「……また嫌な目をしていたのじゃ」

 

「利根って人見知りだったりするのか?」

 

「そんな訳では無いと思う……」

 

 工廠に向かう途中に泣き過ぎて目を腫らした利根に尋ねてみる。嫌な目というものがどんな意味を含んでいるかは分からないが、単純に人見知りだからあの男の事が苦手だという訳では無いらしい。

 

「やっぱり近づくと結構すごい音がしてたんだな」

 

「なんだか懐かしいのう……」

 

 工廠に近づくにつれて工作機械の鉄を削る音や溶接と思われる騒音聞こえてきた。仕事中であれば邪魔するのも悪いかなと思ったが、開いている交渉の扉から見慣れた人影が見えたことで声をかけてみる事にした。

 

「明石さーん……?」

 

「あれっ? 湊さんと利根さん? こんな所にどうしたんですか?」

 

 明石さんは至って普通の対応だと思うのだが、腰に付けられた見慣れない機械にもしかしたらという感情を抱く。

 

「それって艤装ですか……?」

 

「そうですけど?」

 

「ひ、人用の艤装ってあったんですね……」

 

「はい? あっ! 言ってませんでしたっけ!?」

 

 明石さんは艤装に取り付けられているクレーンで吊り上げた部品をゆっくりと作業台の上に降ろすと両足を揃え敬礼をしてくれた。

 

「工作艦、明石です。 改めてよろしくお願いしますね!」

 

「あぁ、やっぱりか……。 よろしく頼むよ……」

 

 別に明石さんが艦娘だから何か変わるわけでは無いのだが、なんとなく工廠で働く女性って点に憧れに近いものを感じていただけに少し複雑な気分になる。

 

「明石ぃ!! 何サボってやがんだ!! さっさと部品持って来い!」

 

「ご、ごめんなさいぃ!! も、もう少しでお昼休みになるので良ければ食事でも!」

 

 明石さんはそう言い残して再び部品を吊り上げるとガシャガシャと音を立てながら工廠の奥へと走っていってしまった。

 

「もしかしてお主、明石を知らんかったのか?」

 

「工作艦って何だよ……。 どうせ俺が知ってる艦は大和や長門くらいだよ……」

 

「お主、本当に海軍に所属しておるのか?」

 

 先ほどまで縮こまっていた利根にドヤ顔で明石さんについて説明されたのだが、正直に言ってしまえば所属なんて関係無しで好きな人は知っている内容だけど、興味の無い人には全くと言って無縁な内容だと思う。

 

「明石は日本で唯一の工作艦として建造された艦でな───」

 

「お、おう……」

 

 まるで一般常識かのように利根は俺に説明をしてくれているが、先ほどのショックがまだ残っているのか話の半分くらいは頭に入っていないような気がする。

 

「あぁ? 誰だてめぇは? 見ない顔だが新入りか?」

 

「えっ、いや。 新入りって訳じゃ無いですが……」

 

 交渉の奥から無精髭を生やした年配の男がこちらに歩いてくる。その後ろにも工具を持った男達がずらずらと俺と利根に近づいてきているのだが、全員が殺意に近い何かを視線に含ませているような気がして数歩後ずさってしまう。

 

「な、なんなのじゃ! 怖いのじゃ!」

 

「いざとなったら逃げるぞ……! 利根も走る準備だけはしておけ!」

 

 最悪の場合利根を逃がす事は可能だろう。俺は素手でも相手が持っているのが火器の類では無く鈍器の類だと考えれば少し痛い目に合うかもしれないが時間を稼ぐことはできると思う。

 

「俺の質問に答えろ」

 

「何だ……?」

 

「明石とは何処までやったよ」

 

「何処までとは……?」

 

 年配の男は持っている工具を俺の顔に突きつけると眉間に皺を寄せて睨み付けてくる。周りの男達も俺の回答が不満だったのか今すぐにでも掴みかかってくるのでは無いかと思える程頭に血が上っているようだった。

 

「てめぇ! しらばっくれようだなんて甘いこと考えてるんじゃねぇだろうな!!」

 

「な、何もしてないって! 大湊からここまで交互に運転してたくらいだって!」

 

「……ドライブくらいならまぁ良いか。 まぁ初犯って事で勘弁しておいてやろう!」

 

「あ、あぁ……?」

 

 俺の回答に満足したのか集まった男達は昼休みを告げる鐘の音と共に立ち去ってしまった。正直に言ってしまえば初犯の意味が分からないが攻撃してくる訳じゃないならこれ以上踏み込まないほうが良いだろう。

 

「お待たせしました! あれ? 班長と湊さんは一体何を?」

 

「おう! ちょっと男同士の友情を確かめ合ってた所よ! そうだよな?」

 

「あ、あぁ。 工廠の人と仲良くしておいた方が良いですし……」

 

 年配の男は俺の肩に手を回すと耳元で大声で笑っている。百歩譲ってその行為自体は許せるが、肩をバンバンと叩いてきたり腹筋を殴ってくる行為は辞めてほしい。

 

「明石はうちの工廠の『華』だ。 手を出したら生きて帰れると思うなよ?」

 

「……おう」

 

 明石さんには聞こえないようにボソリと呟かれたので俺は取り合えず頷いておく。

 

「それじゃあ俺は飯に行ってくるからよ。 明石はチビのメンテもあるだろうし昼からは抜けて良いぞ」

 

「はーい! 何かあればすぐに行きますので、呼んでくださいね!」

 

 それだけ言い残して年配の男は立ち去ってしまったが、笑顔で手を振ってる明石と訳も分からず呆然としている俺と怯えている利根の3人は不思議な空気に包まれてしまう。

 

「何だったんだあの人……」

 

「横須賀工廠の班長さんですね。 良くご飯をご馳走してくれますし、フライスも旋盤も溶接も何でもできる凄く良い人ですよ!」

 

「……そうか」

 

 明石さんはその後も工廠の人について色々と教えてくれたが、嬉しそうに語るその姿を見るに本当にここの人たちが好きなんだなと思った。

 

「話を折るようで悪いんだけど、ちょっと相談したい事があるんだけど」

 

「食事をしながら……、って訳にはいかないみたいですね。 工廠の奥に休憩室があるのでそこを借りましょうか」

 

「む、難しい話をするのであれば我輩は外に居ても良いか?」

 

「あぁ、あまり遠くに行くなよ」

 

 利根としては先ほどの事を改めて聞かされるというのは避けたい事なのだろう。目を離しても良いものかと少し悩んだが、俺の視線に気付いて『大丈夫なのじゃ』と言って頷いている以上は信用した方が良いかもしれない。

 

「さて、ちょっと待っててくださいね」

 

「別に汚くても俺は構わないですよ」

 

 明石さんはゴソゴソと部屋の中の物を移動させたり、コンセント周りの物を確認しているようだったが、何をしているのかが良く分からなかった。

 

「大丈夫そうですね。 最近なんだか監視されてるような気がして落ち着かないんですよね」

 

「盗撮か盗聴でもされてるのんですか?」

 

「気のせいだとは思うのですが……、念には念を入れてってやつですね」

 

 一通り確認できて満足したのか、明石さんは押入れから座布団を取り出すと数度叩いて炬燵机の前に敷いてくれた。

 

「それで、相談ってどんな内容ですか?」

 

「単刀直入に聞きたのですが、『艦娘』って一体何ですか?」

 

「湊さんには以前説明したと思いますが……」

 

「あぁ、質問が悪かったですね。 元々が人ってのは知っていますが、もしかしたら『そうじゃない』のもあるのかなって」

 

 本当に聞きたい内容は『艦娘』と化け物。『深海棲艦』と『艦娘』の関係なのだが、明石さんが艦娘である以上は下手な聞き方をしてしまえば大湊の加賀のように機嫌を損ねてしまうのでは無いかと思った。

 

「その話を誰かにしましたか?」

 

「いや、こんな内容を話しても誰にも相手にされないでしょうし」

 

 明石さんは何かを考えるように視線を床や天井に交互に移すとじっと俺の目を見てゆっくりと口を開いた。

 

「私も湊さんと同じような疑問を感じたことがあります」

 

「それはどうして?」

 

「私は艦の補修や修理を行うために建造された艦でした。 だから戦闘なんかは基本的に苦手ですし、敵が居ると分かれば他の艦に守って貰って必死で逃げるのが当たり前だったんです」

 

「利根から聞いたが工作艦ってやつなんですよね」

 

 俺の返答に明石さんは頷く。

 

「はい。 それが原因なのかは分かりませんが、基本的に私は臆病なんです。 でも、仲間の艦娘が怪我をしたと聞けば全力で直してあげたいと思いますし、逃げてばかりと言う訳でも無いんですよね」

 

「それが先ほどの疑問とどう関係が?」

 

「敵からは逃げたい、仲間は直したい。 この2つって私が明石である証明なのかなって思ってるんですよ。 だからこそ『直すよりも逃げ出したい』って感じる子に疑問を覚えたんです」

 

「ちなみに利根はどっちだったんですか?」

 

 恐らくは明石さんも元になった艦の記憶の影響を受けているのだと思う。

 

「本人には言えませんが、正直に言えば……、でした」

 

「でした?」

 

 明石さんの言葉に引っ掛かりがあったので尋ね返してみる。

 

「湊さんが来る少し前から利根さんの調整を行っていたのですが、この工廠に来たすぐは正直逃げ出してしまいたいって思っていました」

 

「過去形って事は今は違うって事で良いんですよね?」

 

「はい。 今はそんな風には感じないんですよね、むしろ私が頑張って調整してあげないと!って気持ちのしかありませんし」

 

「途中で変わるって事もあるんですね……」

 

 途中で変わってしまうと考えれば俺の推測は外れているのかもしれない。

 

「あまり言葉には出したくないですが、『元々が人間』の艦娘と『元々が人間以外の何か』の艦娘の2種類が居るのではないかと思ってるんですよね」

 

「……それが相談したかった事の本題です」

 

「やっぱりそうですか。 私って少し特殊な艦娘ですし、そんなに気を使わなくても大丈夫ですよ」

 

「助かります。 先ほど利根と船に乗っていたら急に様子がおかしくなったのですが、深海棲艦と似た感覚を感じたんですよね」

 

「……詳しく聞かせて貰っても良いでしょうか」

 

 俺は大湊で見た深海棲艦の事を話した後に利根とのやり取りを説明する。

 

「湊さんの推測では元々が人間の艦娘と、元々が『深海棲艦』の艦娘が居るって事でしょうか?」

 

「そこまではっきりしてる訳じゃないですが、無関係では無いのかなって思ってます」

 

 明石さんは眉を顰めながら炬燵机を人差し指で何度も叩いている。

 

「もう1つ気になっている事があるんですよね。 湊さんの考えの答えに繋がるとは考えづらいですが、この際ですし湊さんには伝えておいたほうが良いかもしれませんね」

 

 今はどのような事でも情報が欲しい。艦娘である彼女達を疑っている訳では無いのだが、これから先付き合っていくのであれば知らなかったでは済まされない場面が訪れるかもしれないと思った。

 

「私達艦娘に共通する特徴なんですが、『記憶の欠落』って何故起こるのでしょうか?」

 

「理由を考えた事は無いですけど、元々の人の記憶に艦としての記憶が入る訳ですから脳がパンクしてしまうとかそんな感じなのでは?」

 

「例えばですが、湊さんは数年後に今日や昨日の事を忘れると思いますか?」

 

「全部覚えている訳では無いと思うけど、なんとなくは覚えていると思います」

 

 些細なことは忘れてしまっているとは思うのだが、全てを忘れるとは考えづらい。

 

「この前班長さんが子供の頃の話をしてくれたんですけど、確か今年で50歳くらいだったと言うです。 つまり全て覚えている訳じゃなくても40年近く昔の事を覚えているんです、だとしたら艦の記憶が入ってきたからって人の記憶全てを失うってありえない気がするんですよね」

 

「なんとなく言いたい事は分かりますが……」

 

「例えばですが鹿屋に居る金剛さんは1912年5月に進水、最後の時は1944年11月として約32年の記憶量があると仮定しましょうか」

 

「……俺より年上だったんだな」

 

 正直失言だったと思う。明石さんはわざとらしく咳払いをしてから話を続ける。

 

「私は1938年6月29日に進水、1944年3月30日に最後の日を迎えています。 約6年として金剛さんとの差は26年としましょう」

 

「結構差があるんだな」

 

「そうなんです! 記憶量で考えたら26年は決して小さくない差なんです、ですが私も金剛さんも同じように記憶の欠落を起こしています。 もっと例を出すなら私の友人に1942年4月に進水、最後の日が1945年7月の艦娘が居ますが3年でも同じなんですよね」

 

 記憶量によって脳がパンクすると考えれば32年分の記憶を持つ金剛と6年の明石さんで差が出てもおかしくはない。金剛や明石さんの見た目から年齢を考えても日常生活が困難になる程だとは思えなかった。

 

「つまり故意的に記憶を欠落されていると?」

 

「そう考えると自然なんですよね。 でもそれはどうしてって謎は出てきますが」

 

「元々が深海棲艦の艦娘には人としての記憶が無いとしたら……?」

 

「その結論に入る前にもう少し現状を整頓してみましょうか」

 

 確かに少し結論を急ぎすぎていたかもしれない。

 

「私達に共通する例としては利根さんが最適でしょう。 そこで考えるのが利根さんの一人称の『我輩』や少し変わった話し方に着目してみましょう」

 

「なんと言えば良いか分からないが、少し古風な感じがするな」

 

「それもありますが、我輩って女性では無く男性が使う一人称だと思うんですよね。 見た目的に私よりも若く見える利根さんの記憶が無くなったからと言ってもそんな言葉遣いになると思います?」

 

「思わないですね」

 

「仮定に仮定を重ね続けるのは少し怖いですが、艦娘は元になった人の記憶と乗っていた人の記憶を持っていて、利根さんが持ってる記憶って彼女自身の記憶では無く彼女に乗っていた人の記憶なんじゃないでしょうか」

 

 話し方という点で考えれば金剛の胡散臭い喋り方もそうだ、元々が日本人じゃ無かったとしてもあそこまで胡散臭い日本語になるとは考えづらい。話し方以外では川内が夜が好きだと言っていたのはどちらの記憶なのだろうか。

 

「なんだか考えれば考えるほど訳が分からなくなってきますね……」

 

「私達の知らない場所で何かを隠そうとしている人が居るって事だけ分かれば少しは前進したと考えるしか無いかもしれませんね……」

 

 誰かが何かを隠す場合はそれを人に知られることで自分に不利益が発生する事が理由だと思う。仮に艦娘が元々人では無いと公表しておけば軍が人体実験をしているなんて悪評を生む事は無かっただろうし、その悪評を受けてでも隠し通したい何かがあるのだろう。

 

「おっと、お昼休みも終わりみたいですね」

 

「あぁ、すまない。 食事の邪魔してしまいましたね……」

 

「利根さんも待ちくたびれているでしょうし、3人でご飯でも食べに行きましょうか」

 

 休憩室に流れる鐘の音と明石さんの腹部から聞こえてきた音が重なる。

 

「……奢りますよ」

 

「い、いえっ!? そんなの悪いですし!」

 

 先ほどまでの眉間に皺を寄せたままの表情ではまずいと思い適当に冗談を交えて気持ちを切り替えると利根が待っている工廠の入り口へと向かう。

 

「ぬぉぉぉぉぉ高いのじゃー! これなら索敵もばっちりなのじゃ!!」

 

「何やってんだ……?」

 

「ん? 話は終わったのか? 我輩はこやつ等が暇そうにしておったから遊んでやっておるぞ!」

 

 遊んでやっていると言うよりは、工廠の人たちに遊んでもらっていたと言うほうが正しいと思う。手には溢れそうなほどの量のお菓子を持たされているし何故遊び方が御輿スタイルなのかも良く分からない。

 

「よし! それじゃあ俺達は仕事に戻るから利根ちゃんも頑張れよ!」

 

「うむ! 任せておれ!」

 

 そう言って男達は工廠の中へと戻っていくと少しして工作機械の重低音や鉄を削るような高音が聞こえてくる。

 

「人気者だな」

 

「うむ! 我輩は人気者だったのじゃ!」

 

「……今から飯を食いに行こうと思ってるんだが、入るか?」

 

「……大丈夫じゃ!」

 

 結果を言ってしまえば利根の頼んだ料理を俺と明石さんで食べることになってしまった。明石さんが予想以上に食べるという事に驚いたが、大湊でも驚いた事だったのでどうにか表情に出す事は無かった───。


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