SOUL EATER ~八幡cross~ 作:ハッチー
「あら?比企谷君駄目じゃない。まだ寝てないと、酷い怪我なんだから」
起き上がろうとしている俺にメデューサ先生は少し困ったような表情を浮かべながら俺の前まで来てベットに座るように言われ首からかけていた聴診器を俺の胸に当ててくる。
聴診器を当てられた事で体がビクッと反応してしまうがメデューサ先生は俺の反応が面白いのかくすくすと笑っている。その光景を見ていたであろう、マカとソウルも笑っている事で今の俺は羞恥により顔を真っ赤にしているだろう。
「あらごめんなさい。あまりに反応がウブだったものだからつい」
この一言でソウルは声をあげて笑いだした。あまりに大声を出して笑いすぎたためか傷口に響いたらしく傷口を押さえている。心の中でざまぁみろとだけ言っておこう。
「おい八幡.....誰がざまぁみろだ!」
「あれ?」
「くす。あなた声に出てたわよ?」
メデューサ先生は聴診器を首にかけ直して俺に言ってきた。どうやら口に出してしまっていたようだ。
「まあまあ、二人ともまだ怪我が治ってないんだから落ち着いて」
「マカが言うなら仕方ねえか...八幡、怪我が治ったら覚えとけよ!」
「あー覚えてるまで、覚えておくわ」
こんな何気無い談笑が堪らなく嬉しくて懐かしくて暖かいと感じていた。でも何かが足りないと、何かがぽっかりと抜け落ちてしまっているようなそんな感じがして今この場に俺がいるの間違っているんじゃないかと思ってくる。二人の会話を聞きながら愛想笑いを浮かべて段々と二人の声が小さくなっていく。周りは少しずつ暗くなっていき、まるで此処にいるのは俺一人のような...........。
「....谷........大...?」
「お.....八......!!」
ぼふっと何かが顔に当たったことで顔を上げるとマカとソウルとメデューサ先生が心配そうに俺を見ていた。顔に当たったものは枕だった。ソウルが俺に向かって投げたのだろう。
「比企谷君どうしたの?やっぱりまだ体調が優れないかしら?問題はなさそうだったけど」
「八幡君大丈夫?」
「八幡何一人で考えてんだよ。気になることがあるなら俺達にも言えよ」
そうか....俺は一人じゃないんだ。
このもどかしい気持ちは分かっている。ぽっかりと空いてしまった穴は既に答えが出ている。それなら行動に移せば良いだけじゃないか。俺には頼れる友達がいるんだから。
「マカとソウル。それにメデューサ先生に頼みがある」
皆真剣な表情で俺の言葉の続きを待ってくれている。正直言えば少しだがまだ怖い。俺の頼みを聞いて拒絶されるんじゃないか、とか。でも俺一人じゃ見付けられない気がした。人は一人では生きていけないように。俺だけじゃ一色を見つけることはできないと思うから。
「一色を......俺のパートナーを探すのを手伝って欲しい」
深々と頭を下げながら俺は頼んだ。俺は頭を上げずにずっと下げたままだ。マカ達がどのような顔をしているのかが分からない。それになかなか返事も返ってこない。その事に緊張と不安で涙が溢れだしそうになる。俺は半ば諦めながらずっと下ろしていた頭を上げた。
「やっと頭を上げてくれたね」
「たくっ親友に何、何時までも頭下げてんだよ」
頭を上げた俺は優しい笑みを浮かべてくれるマカ達三人の顔があり思ってもみなかった言葉が返ってきた。
「「そんなの当たり前でしょ(だろ)!!」」
「お前ら.....」
「良いわね。久し振りに感動してしまったわ。勿論私も協力するわよ。一色さん、絶対に見つけましょうね」
「はい...」
「それじゃあ私は用事があるから帰るけど。マカちゃん、後はよろしくね」
「はい、メデューサ先生」
メデューサ先生が、そのあと帰ると言った後マカも時間があまり遅くならないように帰れとソウルに言われ半ば喧嘩しながら帰っていった。喧嘩するほど仲が良いというのは本当らしい。
ふと一色との日々を思い返すと俺が一色を最初避けていただけで喧嘩なんてしたことなかった事を思い出してどこか寂しい気持ちになる。
「喧嘩するのも悪くないのかもな...」
「いや良くねーだろ?マカなんて見てみろよ。怒ったときとか遠慮なしに殴ってくるからな。まったく...こっちは怪我人だっての」
先程マカチョップをくらった頭を擦りながら言っているソウルだがその顔はどこか嬉しそうだった。
「なあ八幡。一つ聞いても良いか?」
唐突にソウルから聞かれ驚いたが首を縦にふることで肯定する。
「お前起きる前に魘されてたけど変な夢見なかったか?」
変な夢......。思い当たる節はあった。
自分と“鬼”が出てきた夢のことだろう。だがソウルの聞き方は少しおかしいと感じた。普通なら魘されてたけど変な夢でも見たのか?だよな。でも見なかったか?てことはソウルも見たってことか?
「ああ、鬼が出てきた」
「っ!八幡の夢にも出てきたのか!!うっ....」
ベットから落ちるんじゃないかってくらいの勢いで聞いてきたソウルは傷口を抑えながら息を荒くしている。
「落ち着けって...まだ治ってないのに動いたら傷口が開くぞ」
「ああ、そうだな...。それでどんな夢だった?」
ソウルの表情は何時ものふざけた様子が一切感じられず真剣そのものだった。
「意識が無くなって最初に自分自身にあった」
「自分に?」
思っていた答えと違ったのか少しがっかりしたような表情になりながらもふざけた様子はなく続きを聞く事は伝わったので話していく。
幼い日の自分。現在の自分。そして鬼。この一連の話をして何処かの水に落ちて深く深く沈んでいく事を話した。
鬼が出た辺りからソウルからお前もか、とか。やっぱり扉が急に現れたんだなとか言われたが意味が分からないのでソウルの話も聞くとその内容は驚愕のものだった。
マカの中からソウルが突き破って出てくるなんて....それじゃあまるで魔剣みたいじゃないか。俺はこの言葉を言いそうになるが必死に噛み締めた。
そのあとは雑談になりマカ達がいた時には聞いていなかったがシュタイン先生とデスサイズが来てくれた後、あと少しで魔剣を倒せそうな所で魔女が現れた事を聞いた。
俺と一色を襲った矢印は魔女の攻撃によるもの?だけどあの時一色はあの攻撃の仕掛けた人物を知っていそうだった。何よりあの攻撃をされた後に一色はおかしくなってしまった。
一色は魔女を知っている?
----------------何故?
一色の言っていた、呪われたという言葉が最悪なピースとなってパズルに嵌まっていく。
いくら否定しても一色の姿が、存在が一致してしまう。
でも何故一色はこの場にいないのか?
[捨てられた]ふとこの言葉が脳裏をよぎり決定付けてしまう。
一色は魔女でありながら魔女から終われている?それで魔女に見付かり現在は誰も姿を見ていない?
確証は無いが辻褄は合ってしまう。俺の心音は荒くなる。
死武専は魔女を狩り、鬼神の復活を阻止する学校だ。
一色いろはが魔女なら俺は..........。
ふと甦るのは一色との日々。最初は鬱陶しかった。女子に近くにいられても迷惑なだけだった。でもいつの間にか隣にいて信じようって思えるようになって...そして。
[先輩。わたしを信じて下さい]
......一色は職人で俺は武器。武器と職人は二人で一つ。重要なのは魂...だったな。
魔女よりも先に見付けて急に俺の前から消えたことを説教しないとな。
「ん?どうしたんだよ八幡。珍しくにやにやしてて気持ち悪いぞ?」
「ほっとけ.....でもパートナーって良いもんだと思ってな」
「....お前本当に八幡か?きっと腹切られる前に頭もぶつけたんだな。ちょっと待ってろ今メデューサ先生呼んでくるから」
引きながら言ってくるソウルに心を削られながらもベットに体を預けて目を閉じた。
ゆっくり休み睡眠をとって体を回復させて、次目を覚ますときには一色を探しに行こうと決めて。
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..................。
「おーーーっす!!八幡!俺様が来てやったぜ!!」
そう言って入ってきたブラック☆スターに抱き付かれ体が悲鳴を、いや口から叫び声を上げて気絶という睡眠で目を閉じることになった。