SOUL EATER ~八幡cross~ 作:ハッチー
マカと魔剣を素通りして地下走っているとブラック☆スターの後ろ姿が見えてきた。粉塵により良く見えないが明らかにブラック☆スターが劣性だった。粉塵が晴れると肩で息をし、額から血を流しているブラック☆スターが立っていた。傷は深くなさそうだが魂の波長を使いすぎたのか疲労が見てとれる程、ブラック☆スターは疲弊していた。
「ブラック☆スター」
「っ、八幡か。へっなんだよ速かったじゃねーか。お前が来る前に強引にでも連れて帰ろうと思ってたんだけどな」
「先輩....無駄です。貴方たちでは、わたしには勝てません。諦めてください」
「一色....」
「来ないで下さい!!」
一色の魔女の魂が膨れ上がり余波で数歩後ろにたじろいでしまう。でも、メデューサから受けたときとは違い、一色の波長は嫌な感じが全くしなかった。
「...一色。探してたんだぞ?ほらもう帰るぞ」
「止めてください....止めてください!わたしに近付かないで下さい!!」
一色は掴んでいた槍をこちらに向かって降り下ろす、まるで鎌鼬のように頬は切れ、服は裂かれた。軽傷だが至るところから血が流れている。死にはしないが、そのうち出血で動けなくなるだろう。
「なあブラック☆スター」
「どうした八幡」
「俺に譲ってくれないか?」
ブラック☆スターから無言で鎖鎌を首に当てられる。冷たく、幾度となく鬼神の卵と化した魂を狩ってきたブラック☆スターの相棒。当てられている筈なのに全くと言って良いほど恐怖心は無かった。
「一色を助けたい。頼むブラック☆スター。一色は....俺のパートナーなんだ!」
張り上げた声と共にブラック☆スターが笑うのが聞こえる、首に当てられていた鎖鎌を下ろしながら。
「まっ仕方ねーな。椿も譲れって怒ってるし。マカといい八幡といい、真面目ちゃんは反抗期でも起こしてんのか?」
「サンキューな、ブラック☆スター」
「別に。ただ後悔だけはすんなよな」
「ああ」
「...誰もここからは通しませんよ」
「いんや、通してもらうぜ!椿!モード妖刀!」
鎖鎌から漆黒に覆われた刀に変わる。一度だけ死神様の部屋で見たがあの時は、一瞬で波長を流し込みブラック☆スターは、倒れていた。だが、もしも一瞬でも垣間見た圧倒的とも言える力を使いこなしていたら、ブラック☆スターは、かなり強くなっている筈だ。
ブラック☆スターの顔に模様が浮かび上がり凄い量の魂がブラック☆スターを中心に膨れ上がる。これを魂の共鳴無しでしているのだから驚きだ。恐らくシュタイン先生だって無理だろう。
「俺様のステージに向かって突き進むぜ!!」
「逃がしません!」
一色は、ブラック☆スターに対して槍を降り下ろす。先程俺に対して攻撃したような甘い攻撃ではなく鎌鼬の量も威力も上がっている。当たれば致命傷は避けられないだろう。
ブラック☆スターは、ただ真っ直ぐ走り抜ける。人目では霞む位のスピードで、一瞬影から黒い人形の何かが現れて鎌鼬を全て弾きおとした。あれは?と思った頃には既にブラック☆スターの後ろ姿は、見えなくなる程遠くにいっていた。
「...逃げられちゃいましたか」
「さ、一色。一対一だな」
「武器でしかない先輩では、わたしを倒せませんよ?」
「別にいいさ、倒しにきたわけじゃないからな」
少しずつ一色に近付く。コツコツと軽快な足音で、目の前にいるのは魔女。だが俺のパートナーの一色いろはだ。怖がる事はない、怖がる理由もない。今一番怖いことは、ここで一色を連れ戻せず、一生一色に会えなくなることだ。
「止まってください。それ以上近付けば殺します」
槍を此方に向ける一色に俺は止まることなく少しずつ近付いていく。
「来ないで下さい!!」
一閃。凄まじい風圧と衝撃に足が止まってしまったが直ぐに歩を進める。一色とのズレた距離を戻すために。
「...どうして....」
一色が構える槍の切っ先が俺の首筋を捉える。ひんやりとした武器は、あと少し、ほんの少し前に出すだけで俺の喉を貫くだろう。
「なあ一色覚えてるか?」
「何が、ですか..」
「お前と初めて会った日の事を」
一色からの返事はない。ただ微かに唇が震えている、そんな気がした。
「最初は、どうせ直ぐにお前も離れていくって思ったんだ。俺にはパートナーなんていなかったし、必要とも思ってなかったからな。別に自分が強いからって理由でパートナーがいらないって思ってわけじゃない。死武専で習う範囲ならパートナー無しでもこなせるだけの力をつけたからだ。俺は別にデスサイズになりたいとか、そう言った感情は無かったから卒業さえ出来れば良いと思ったんだ」
「....」
「そんな奴とパートナーになったってつまらないだろ?だから最初、やたらと近付いてくるお前に嫌悪感すら抱いていた。ボッチの独自フィールド勝手に侵すなっての。どう反応すれば良いのかとか、分かんないだろうが。でもさ....一色と、暫く一緒にいて悪くなかったんだ。....楽しかったんだ。こいつとならパートナーとしてやっていけるかもしれないって...初めて思えたんだ」
「....先輩。わたしは魔女です」
「知ってる」
槍から一色が震えているのが伝わってくる。少し首筋が切れたのか槍に俺の血液が流れていく。
「先輩は、武器です。死武専生です。魔女を倒すのが仕事なんですよ?」
クルッと槍を一回転させて地面に突き刺した一色は、涙を流しながら笑顔で言ってきた。
「わたしを....殺してください」
両手を広げながらそう言った一色の瞳からは、後悔も恐怖も感じられなかった。
そんな一色を俺は抱き締めた。
「せん....ぱい?」
「一色、お前を殺さなくちゃいけないなら俺は死武専を辞める。お前と一緒にいられるのなら魔女だからとか関係ない。だってお前は、俺のパートナーなんだから」
「せ、ひくっ....先輩....」
俺は、胸の中で泣く一色の頭を優しく撫でる。
「先、輩....嬉しいです。でも、もう遅いんです...」
「一色?」
「わたしの体内には、蛇がいます。メデューサがわたしが裏切った時に殺せるようにって仕掛けていったんです。わたしの力も体内では届きません....ごめんなさい先輩。ですからせめて先輩の手で...先輩..?」
一色の話を聞いていて、メデューサが許せずかなり強めに抱き締めてしまった。一色を操り、殺そうとしたメデューサが俺は許せなかった。
ドクンッと胸の中の何かがざわついている。憎しみや殺意が見え始めると必ずくるこのざわつき。正体は分かっている。何時もは自制心でなんとか抑えていたが今回は、抑えることが出来ないかもしれない。
「なあ一色....
「先輩...聞いていなかったんですか?わたしの中には蛇がいるんですよ?何をしたところで遅いですよ」
「魂の共鳴だ」
魂の共鳴...本来、武器と職人の二人以上の絆の証しでもある奥義。
「魂の共鳴って....わたしは魔女ですよ?人間である、先輩と魂の共鳴なんてうまく行く筈が無いじゃないですか...」
「大丈夫だ。一色、俺を信じてくれないか?」
真っ直ぐ一色を見る俺に一色は、真っ直ぐに見つめ返してくる。打算ややけになって言っているわけじゃない。
「分かりました...最後ですし先輩を信じてみます」
「サンキューな、一色」
俺は武器に変身する。一色の手には漆黒に染められた槍が握られている。
(一色)
「なんですか....」
(これは最後じゃない。始まりだ)
「(魂の共鳴!!)」
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キィーと甲高い音を立てながら開く真っ赤な扉。その扉、自制心という扉を俺は自らから開けた。
「よお~待ってたぜ?くはは、絶対にこの場所にお前は戻ってくると思ってたぜ。八幡」
扉を開けた部屋の中には、赤色の鬼が立っていた。
「久し振りだな....」
「あーここに来るのは二度目か?よく今まで我慢してきたもんだ。大したもんだよ、あんな大きな扉まで作って。俺様に何が望みだ?」
「力を寄越せ」
ここに来た理由は至極簡単。黒血を使うため。クロナみたいに魔剣になる可能性もあるだろう。狂気に呑み込まれれば俺だって...だから扉を作った。一人なら既に堕ちていたかもしれない。でも今なら、一色と一緒なら。
「良いぜぇ。さっさと俺様にお前の体をあけ渡しちまえよ~八幡。そうすれば全てを破壊してやるぜ?お前が望む全てをな。くはは」
気味悪く笑いながら述べる鬼に対して俺は、冷静なまま続ける。
「体はやらない。力だけを寄越せ」
「おいおい、力には対価が必要だ?そんな事も知らねーのか?」
「対価か、それなら契約だ。俺は力を使う。その間にお前は、俺を狂気に呑み込んでみろ。呑み込めたらこの体はお前のもんだ」
「キシ...キシシシシ。良いだろう。それじゃあ、そこのピアノの前に座ってくれ」
いつの間に現れたピアノ。弾きかたなんて分からない筈なのに旋律やメロディーが勝手に頭に思い浮かぶ。ピアノの椅子に座り深呼吸をして指を這わせる。不思議と落ち着く感覚に戸惑いを覚えながらメロディーを奏でる。
「キシシシシ。いつまで耐えられるかな?」
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「(はぁあああああ!!!)」
魂が膨れ上がる。一色の足元は凍っていき、頭にはニット帽が首には地面につきそうなほど程に長い赤色のマフラー。瞳の色もブルーに変わっており温度が急激に下がっていく。
シュタイン先生としたときとは、比べられないくらい安定した魂の共鳴に正直驚いていた。微塵も揺れない魂の波長。
憑依...シュタイン先生とメデューサとの戦闘で見せた技。この技の利点は幾つかある。
一つ目は、単純に力が上昇する。スピードも上がる。
二つ目は、一色の周りの気温が下がっているが、何も周りだけじゃない。自分自身の体温も著しく下がるのだ。そんな極寒の冷気に異物である蛇が耐えられるはずもなく、凍り砕け散る。
憑依-----氷神。
シュタイン先生とは、完璧に出来ず中途半端になってしまったこの技だが一色との魂の共鳴で完成した。あれほど著しく減っていた魂の波長は、まるで普段と同じように呼吸をするような感覚で出来ている。これなら一分どころか一時間でも戦えるだろう。大技を出したら流石にそこまでは出来なくとも三十分は、持つだろう。
「...どうして魂の共鳴が?」
(魔剣との戦いでクロナの血が少しだが俺の体内にも入っていたみたいでな、黒血は分かるだろ?それを利用させてもらった)
「り、利用って....駄目ですよ先輩!黒血を甘く見てはいけません!こんな無茶な使いかたしていたら何時か...何時か先輩が...」
(狂気になんて呑まれねーよ。俺は一人じゃないからな。そうだろ?
「っ!...うう、先輩。どれだけわたしを泣かせたら気がすむんですか...」
(いやここは笑うとこだろ?それに...一色、おかえり)
「先輩...ただいまです!!」
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