SOUL EATER ~八幡cross~ 作:ハッチー
感想や評価を下さった人ありがとうございます。好評価で焦りと喜びと感謝の日々です。これからも楽しんで頂けるように頑張ります。
「槍に変身してください」そう言った一色に対して俺は遠くで現在起こっている出来事が気になり変身せずにその場で後ろを振り返る。
「せ、先輩?」
魂感知の出来ない一色は俺が何をしているのか理解出来ないのだろう。心配そうに此方を見てくるが魂感知に優れた俺でもノイズが邪魔をしていて集中しないと感知しきれそうになかった。
「教会?のような建物の中に職人と武器.....そしてそれを取り囲んでいる大勢の魂....」
俺は独り言のようにボソボソと呟くように言うと一色が反応してきた。
「先輩どういう事ですか?」
「ん?ああ....1㎞くらい先に教会みたいな建物が見えるだろ?」
「んー....あ!見えました」
一色は俺の肩に手をおき覗き込むようにして俺が言った方向を確認した。
「別に肩に手をおく必要はないだろ?」
「えーこの方が見えやすいですし~良いじゃないですか♪」
何が良いんでしょうね.....俺の挙動がおかしくなる前に止めてほしいんだが。
「ちょっと八幡君!まだなの!?」
マカがバックステップの要領でソンソン・Jの攻撃をかわして俺のとなりに移動してきた。
「後ろに見える教会が気になってな.....悪いけどソンソン・J倒してくれ。俺と一色で見てくるから」
「え!?ちょっと八幡君!?」
マカの呼ぶ声が聞こえるなか俺は胸騒ぎがする教会に向かって一色と共に走った。
一緒に走っていて思ったのは一色はかなり足が早い。俺と並走しながらなぜ走っているのか聞いてきたし、俺は全力で走ってるから質問に返す余裕は無かったが。
「先輩無視しないで下さいよ~」と全力で走ってる状態で舌も噛まずに何時も通り話せる一色に驚きながらも5分かからずに教会の前についた。
俺は肩で息をしているが一色に疲れた様子は無く一色自身の身体能力の高さをこの時初めて俺は知った。
教会の中では相変わらず武器と職人の周りを大勢の魂が囲んでいる。絡まれてるにしても妙な状況だ。仮に50人くらいの一般人に俺が絡まれたとしよう。だが武器である俺の身体能力程度でも簡単に気絶させることくらいは簡単だ。
だが中の武器と職人はまるで動いていない。
「先輩本当にどうしたんですか?」
扉の前で開けようか開けないか悩んでいる俺に一色は聞いてくる。確かに中を確認すれば済むことだ。だが何故か手が動かなかった。まるでこの扉は開けてはいけないと誰かに言われているみたいに。
「........っ!」
急に武器と職人以外の魂反応が消えた。今の状況を考えると職人と武器が一瞬で殺し食べた事になる。だが死武専ではどんな理由があっても絶対に鬼神の卵と化していない人間の魂は食べてはいけない事になっている。
それにあの量を一度に食べたと言うことは.....。考えられるのは、キッドから聞いていた話の魔剣だった。魔剣が現れたらしい。それだけの情報だったが間違いなく中にいるのが魔剣だと断言できた。
これだけ人間の魂を食べれば狂気に飲み込まれていて正気ではないだろうし、かなり強いだろう。
俺は一色を見る。今回初めてタッグとして本格的に戦うが相手が悪すぎる。だけどこのまま放って置くわけにもいかないだろう。ならいっそのこと一色は逃がして俺だけで対処するか?
「..........」
一色に目線を移すと一色は何処か不機嫌そうに此方を見ており目が合った。俺は気まずくなり目線を反らそうとしたが一色の両手に顔を捕まれて顔を固定される。
「先輩がなに考えているか分かりませんけど。この中に危ない敵がいるのは分かりました。そして先輩がわたしを逃がして自分だけで戦おうとしていることも」
俺はなにも言い返せずに目線だけを下に反らす。一色は溜め息混じりに言ってくる。
「先輩。武器と職人は二人で一人です。何でも危ないことは自分一人でやろうとしないでください」
「だが.....」
「先輩がわたしを気づかってくれていることは分かります。嬉しいですけどパートナーとして、職人として信用されていないのは悲しいです」
一色は寂しそうに顔をうつ向かせながら言ってくる。
「確かにわたし達はパートナーを組んで日も浅いですし、初めて戦う相手です。でも....少なくとも先輩と過ごした短い日々はわたしにとって先輩を信用に値する人だと思わせてくれるだけの日々でした」
「一色......」
「先輩は....わたしを信じてはくれませんか?」
俺は本当はどう思っているのだろうか。死神様に言われたから一色と組んでいるだけなのだろうか。それとも一緒に過ごしていくうちに一色となら...と思えているのだろうか。今の俺にはまだ答えは出せない。
でも。
悪くないと思えている。と思う。
「なあ....一色」
「はい」
「俺は今まで人を心の底から信じた事がない。信じて、裏切られるのが怖かったから自分自身を守るために相手と知らない間に距離をおいているのかもしれない」
「だから俺が一色の事を信じているか?と聞かれて、素直に信じてる。なんて言うことは出来ない」
「そう....ですか」
一色の顔色は悪くなっていき唇を歯で噛み締めているのが分かる。申し訳ない気持ちと罪悪感で胸が張り裂けそうになるが最後まで言うために続ける。
「でも」
一色の顔が少し上がる。一色の瞳は真っ直ぐ俺を見据える。
「一緒にいた時間は、短いが.....悪くは無かったと思ってる」
「先輩.....」
一色は顔をあげてもう唇を噛み締めてはいない。その事にホッと安堵する。
「先輩ってめんどくさいですよね.....」
めんどくさい、か。うん、自覚はあるけど久し振りに言われたな....。
「まっそんなめんどくさい所、わたしは嫌いじゃないですけどね♪」
「.......あざといあざとい」
一瞬本気で一色の笑顔に見惚れそうになったが慌てて誤魔化す。
「なんですかーそれ~。まぁいいですけど、それじゃあ先輩。槍に変身してください、話はそれからです!」
「そうだな.....」
俺は2m程の長さの槍に変身した。
「これが先輩の武器の姿なんですね~」
一色は俺(武器)を見ながら「うえっ真っ黒ですね」と言ってくる。だが普通に持っている事から特に嫌悪感等は抱いていない....と思う。
「さて、と。それじゃあ扉開けますね」
扉は押すと簡単に開き教会の中央にやせ形の一人の......多分男?が剣を持って立っていた。
「また知らない人だよ...はぁ~僕もうやだよ」
男?は心底嫌なのか上体を仰け反らせながら言ってくる。一色があきらかに引いているが俺は別の事が気になっていた。
「あれ?そう言えば先輩。武器はどこですか?」
そう、目の前の男?だが魂の関知をするが職人と武器の魂は移動していない。
と、言うことは。
「職人の体内に武器がいる......」
少し短いですがここまでにしておきます。