慎二が雁夜に憧れたようです   作:祭恩寺

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CCCのワカメがカッコよすぎて


慎二、憧れる

 

 

「叔父様!」

 

少年が走りながら駆け寄ってくる。叔父と呼ばれたその男は、白髪で顔半分の筋肉が引きつたまま硬直しており、片足を引きずっている。一目で健常者ではないとはっきりと分かる。

 

普通であれば救急車、あるいは精神異常者と間違われ警察に通報されるかもしれない。一般人ならまず近づかない人間であるにもかかわらず、少年は明るい声を上げて男に近づいた。

 

「・・・慎二か。どうかしたのかい?」

 

「叔父様は聖杯戦争に参加するんですよね!もうサーヴァントとは召喚したんですか?間桐の魔術が負けるなんてあるはずないですよね?」

 

少年は自分が特別な存在だと信じて疑わなかった。子どもなら幼い日に、誰もが心の中で想っていること。

 

『自分は他人とは違う。特別なんだ』

 

そんな感情。

 

魔術、と言う特異な家系に生まれた少年は生まれた環境が特異で在るが故に、その想いが人よりも強かった。そこから更に自分の家の魔術は、他の家の魔術よりも優れていると思うようになっていた。

 

そんな少年にとって、これから家を代表し戦いに行く叔父はまるでヒーローの様に映った。その弱弱しい姿さえも、厳しい修行を経た証なのだと頭の中で美化されていた。そんな尊敬する叔父と会いたくて海外に遊学する話を取り消してまで家に残ったのである。少年は興奮し目をきらきらと輝かせ、普段の優越感に満ちた高慢な態度は身を潜め、歳相応の夢に憧れる少年になっている。

 

男は自分に無垢な憧れの目を向ける少年に、内心複雑に思いながら苦笑する。

 

「慎二。別に僕は間桐の家のために聖杯戦争に参加するんじゃないよ。僕なりに目的があっても事なんだ」

 

自分に分不相応な感情を抱く少年を諫めようとする。しかし、魔術師と言う自分が目指す存在である叔父を前に、少年の幼い憧憬の心は止まることはない。

 

「でも、」

 

それどころかその言葉に一層瞳を輝かせる。

 

「それでもすごいです!聖杯戦争はとっても危ないんでしょう?そこに自分から行くなんて!」

 

自分の父は魔術を嫌い、聖杯戦争を恐れていた。それに対し叔父は恐れもなく、自らの意思で戦いに赴こうとしている。

 

先程の叔父の言葉。強い意志を秘めた言葉は幼い少年の心を掴んで離さなかった。男は困ったように笑った。

 

「叔父様」

 

「ん?なんだい」

 

「叔父様の目的ってなんですか?」

 

「・・・僕の目的、か。そうだな」

 

初恋の人。そしてその娘達。彼女達を幸せにするために、そのために男は忌み嫌い、逃げ出した間桐の家に戻ってきた。

 

少年が夢見るような魔術がこの家にないこと。少年に魔術を行使することができないこと。それらを知る男は魔術に憧れる少年を憐れみながら、それでも自らの決意を口にする。せめて今だけは少年の夢を壊さないようにと。

 

「大切な人たちを、必ず救う事だ」

 

妄執に囚われた蟲翁から。そして魔道に驕った男から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい!!」

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

思わずぽかんっ、となった。

 

「やっぱり叔父様はすごい!!」

 

たとえ魔術師の家に生まれ、偏った価値観を持ち始めていたとしても・・・少年の童心はまだ失われていなかった。あるいは魔術の素養がなかったことが、少年の心にまだ純粋な心を残す結果となったのかもしれない。

 

大切な人を救う。ヒーローにとっては定番であり王道である。少年の目には、男は真実ヒーローとして映っていた。

 

「僕も!いつか叔父様みたいになります!絶対に!」

 

「―――」

 

男の心に、暖かい灯がともった。初恋の相手に想いを告げず、逃げ続けた人生。せめて幸せに暮らさせてあげたいと願った。そしてそれはまだ成し遂げていない。

 

しかし少年の言葉に、男はまるで自分の人生が報われたように感じた。

 

「叔父様?」

 

「え?あ、ああ。ごめんごめん。・・・・そっか僕みたいになりたいか。」

 

「はい!」

 

「・・・きっとつらいことばかりだぞ。損な役回りばかりかもしれない」

 

「そんなことないです!叔父様はすごいですよ!」

 

「ははっ、そっか。」

 

盲目に自分を賞賛する少年に、男は久しぶりに嬉しそうに笑った。男はしゃがんで少年と目を合わせる。

 

「それなら一つ、叔父さんと約束してくれるかい?」

 

「なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子を・・・・桜ちゃんを守ってやってくれ」

 

 

 

 

 

「桜、ですか?」

 

「ああ、そうだ。約束してくれるか?」

 

「・・・・・・そうすれば叔父様みたいになれますか?」

 

少年はしばらく考えてから質問した。

 

「もちろん。叔父さん《ヒーロー》が言うんだから間違いないよ」

 

「っ!わかりました!桜は僕がちゃんと守ります!」

 

ぱっ、と顔を輝かせて答える少年に、男は満足げに頷いた。

 

「ははっ、頑張るんだぞ慎二。――――ああ、安心した」

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず最初の方は以前と変わりませんが徐々に違ってきます。

友人に言われたのが切っ掛けでまた始めました。タイトルも変えて「おじさんの育てた間桐産最高級ワカメ」にしようかと思ったんですが、友人にハッ、ねぇわ、と言われたので以前と同じです。

ゆっくり投稿していく予定です。どうぞよろしくお願いします。
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