ハイスクールコブラ 作:えすとっく
真っ白な空間が目の前に広がっている。
俺はほんの少し前にトラックに轢かれて、テンプレ的にここ、真っ白な空間に来た。 もしやこれは転生のチャンス?
と思ったが、どうなんだろう、これ。
-ヴァァァァ! バンバン! ビギャァァァ!-
目の前でリオのカーニバルも尻尾巻いて逃げ出すレベルの馬鹿騒ぎが起きている。
状況が全く掴めない。 ほら今も、神社が降ってきたと思ったら何やら教会がそらに飛んで行った。 そしてそこらで爆発が起こりどこかが照らされサンバを踊る謎の集団がレッドカーペットを行進してくる。
奥に見えるブレイクダンスを踊るスフィンクスは何の悪夢だ? そしてロッキンを踊るキリスト像はダンスバトルでもしてるのか?
「おうお前! 飲んでねえなおい!」
「えっ、ちょっ、まっ、先ずは状況を説m…」
俺の言葉は疑問を言い切る前に遮られた。 何故か? 口に酒瓶を突っ込まれたからだ。 途端に広がる強烈なアルコールの味。 それを咄嗟に吐き出す。
俺の口に酒瓶を突っ込んだ男は、頬が赤くなっていて明らかにテンションが高く、言動が安定していない。
「なんだぁ兄ちゃん、男気ねえな! グイッといけやグイッと!」
いや、さっき口に含んだ感じじゃアルコール度数おかしいよね? グイッといったらグエッて逝くよ?
「本当に玉ついてんのかぁ?」
-プチッ-
「上等だコラァァァ! 大学で鍛えられた一気飲みなめんなやぁぁぁぁ!」
先ほど口に含んだ分の僅かな酔いと怒りで我を忘れた俺は、酒瓶を掻っ攫い思いっきり煽った。
♢
「…死にそうだ。」
「すいません! 本当にもうマジですいません!」
状況説明、結局あの後、俺が参加したエクストリーム飲み会はこの世界の神様たちが一堂に会して呑み明かす会で、滅多に仕事ない転生者が送られる場所を選んで全員の神様を呼んで飲み会を開いたところ、俺が偶然転生候補者に、しかしベロッベロに酔ってた神様方は俺に気づかず、むしろ飲み会に参加させ、そして全員の酔いが覚めてきた辺りで俺が部外者であることが判明。 事情を説明したら現在総土下座を食らっている。
「あー、ま、まあ頭上げてください。 しょうがないですよ、酔ってたんなら。」
うん、酔ってたんなら仕方がない。 酔った時が非常に酷い俺だからこそわかるんだ。
「し、しかし…」
「いやぁ、ほら、言ってしまえば俺が邪魔に入っちゃったとも取れますしね? おあいこでいいですおあいこで。」
因みに神様方と俺が飲んでいたのは『神殺し』とかいうエグい酒だ。
アルコール度数150%。 え? それ天元突破してない?
「ほんっとーに、本当にすまんかった!」
全力で頭を下げるのは布に身を包んだ白髪で、大量に白の髭を生やしたご老人、因みにゼウス様。 彼が俺に最初に酒を勧めた人物だ。
いや、こう、なんていうか…それでいいのか最高神。
…考えてみれば北欧神話なんて浮気パーティーだった気がしないでも…
「じゃ、じゃあ転生してもらうことにしようか。」
そう控えめに手を上げながら言うのはTSU○AYAのお兄さ… イエス様だ。
え? ごめんあなた立川にいなかった?
ってか本来尊敬すべき人なのだろうが… 先程『十字架に括られた状態から少しずつグリコになっていく。』というネタを本人がやるところを生で見てしまったせいで全く敬えない。
「あー、じゃあこのくじを引いて?」
次に出てきたのはパンチパーマっぽい髪型の青ね… え? 立川のブッダさんじゃね?
「わかりました…」
頭を襲う頭痛に耐えながら、くじ箱の中に手を入れ、ガサガサといじる。
そして『これだ!』と思ったものを引き抜く。
「…『めちゃくちゃタフな精神力』…?」
「あ、それは転生後の特徴を決めるくじね、こっちは転生後の容姿を決めるやつ。 次はこっちを引いてね?」
「あ、はい。 わかりました。」
次に引いたくじには…『中の上』… まあラッキーか。
「それでこっちは転生後の能力を決めるくじね。 外れもあるし場合によっては引いた物を使えない場合もあるけど。」
「…それくじの意味あるんですかね?」
疑問に思いながら取ったくじには…『サイコガン』か。 スペース・コブラのあれだな。
まあ、結構強…うん? 最初のくじって『めちゃくちゃタフな精神力』? たしかサイコガンって精神で撃つ物だったな… 勝った!
「いい組み合わせだね! それじゃあ、次の世界を堪能してきてね!」
「ありがとうございます。 ではまた。」
イエス様が手を振ると、意識がどんどん薄くなっていく。
かろうじて開く目は、俺に向かって手を振る神様方を映していた。
先頭で土下座していたゼウス様に、ナイスバディの天照大神様。 めちゃくちゃ仲良くなった天津彦彦火瓊瓊杵命くん。
じゃあな! また会おうぜ!
♢
「知らない天井だ。」
どうも、転生して数年が経った攘・ギリアン、ハーフです。
え? 天井? 死ぬほど見知ってますが?
まだ5歳の俺は保育園に行った後、近くの森の中でサイコガンの練習をしている。 問題なくサイコガンは発現していたようで、精神力によって強さを変えることも可能になった。 多分全力を出せばコブラさんのように小惑星を壊せる… 気がする。
さて、本日も保育園から帰り、昼寝を楽しんだ俺は森へ繰り出すのだった。
「…しっかし、サイコガンを使えるってことは他にもこんな能力を持った奴らもいるかもしれないってことか? 恐ろしいこって。」
森の中へ入って行き、左手を取り外す。
中から現れたのは左手と一体化した銃、サイコガンだ。
精神力により射撃の強さが変わり、めちゃくちゃタフな精神力を持つ俺では鬼に金棒、シモ・ヘイへに狙撃銃、マミさんにシャルロッテ… 最後のは違えか。
加減したサイコガンが木を揺らし、落ちてくる葉をこれまた加減したサイコガンで撃ち落とす。
サイコガンは普通の銃ではない。 弾道は曲がり、あり得ない破壊力を生み出すことができ、更に敵の気配さえ感じられれば目視せずともその方向に向かっていく。
今も、落ちてくる葉をカーブするサイコガンの弾が纏めて消し飛ばす。
「んー、完璧だ。 出力を出した練習はできないけど十分だな。」
そのあとも気まぐれに色々と撃っていた。
え? 飽きないのかって? そりゃああんな男のロマンを体現したような武器を扱えて飽きないわけもない。
日が傾いてきたので、家に帰ることにしよう。
一般的な民家の扉を開け、中に入る。
「ただいま。」
いつもなら電気が付いているはずの家が暗い。 そして… 何だこれは、血の匂い?
嫌な予感がした俺は急いで居間へ向かう。
そこにあったのは、俺の今世両親の死体と、背から黒い翼を生やした三人の男だった。
「お、ガキが帰ってきたみてえだな。」
「こぉんなガキが
「ま、こいつ殺してお仕事は終了、だろ?」
声を発することが出来ない俺に、光を固めたような槍を持つ男がジリジリとにじり寄って来る。
怖え、前世でも武装した男に囲まれたことなんてねえよ!
…でも、許せねえだろ。 本当の、と言っても良いのかは分からんが、実の親を殺されたんだ。 転生後の親だとしても、それでも許せねえ。
「…やるしか、ねえか。」
「あー? んだよ坊ちゃん。」
「クソッタレ共に地獄への案内でもしてやろうってんだよ!」
勢いよく左手を取り外し、サイコガンを露出させる。
男たちが対応する間もなく、いつもの威力で3発。
「ガッ!?」
「うぉっ!?」
「ぐげっ!」
男達はそれを食らって吹っ飛ぶが、腹に風穴をあける程でもない。
次は威力を上げる!
-ビシュゥ! ビシュゥ!-
先程よりもサイズの増したサイコエネルギーが堕天使二体の腹を貫く。
断末魔を上げながら逝った二人を見て、残った一人が怯えている。
「さて、質問のお時間だ。」
「畜生! 何だってんだ!」
悪態を吐く堕天使の顔を左手で殴り飛ばす。
サイコガンのカバーで、義手でもあるこの左手は途轍もなく硬く、攻撃力が高い。
「
「…答えるかよクソガッ!?」
男が言い切る前に、その口に左手を叩き込む。
「質問に答えろよ。 そう死に急ぐなよ。 お前のお仲間二人が地獄へのツアーを一足先に楽しんでるから不安なんだろ? 安心しな、お前が質問に答えなけりゃお前には特急券付きで地獄観光ツアーをプレゼントだ。」
「…くそっ!
「ああ、満足だ。 お前は組織に帰って金輪際俺に手を出さないように進言しろ! 傷つくのはお前らだぜ? 序でにお仲間の死体も持って帰れゴミ屑!」
腹に一撃拳を入れ、顔面を蹴り飛ばした。
「…くたばれクソガキ!」
最後に叫んだ堕天使が、二体の死体を持って飛び去る。
「…畜生のクソッタレが!」
最悪の日が来たと言えるだろう。
ただ一つついていたのは、俺の精神力が強いことだな。