結果として――――イリスはフローリアン家で保護される事になった。アミタがなんとか家族を説き伏せ、イリスを保護する事にしたのだ。ソロモンはその選択を受け入れ、アミタがフローリアン一家に何とか受け入れてもらえるように努力している姿を黙って見つめていた。
本来であれば、ソロモンの案に乗れば楽だったのだ。いくらイリス自身が自分のやった事を覚えていないのだとしても、アミタもキリエも紫天の守護者達も彼女がした事を覚えている。それは彼女がいる限り、彼女らの記憶に触れ続ける事になる。それは彼女らにとっても辛い選択だろう。
しかし、それでも、アミタはイリスを保護する道を選択したのだ。酷い目に遭ったのだから、他人に任せてしまえば良いというのは違うのだと、アミタは言った。たとえ、その結果として自分たちが大変な思いをする事になったとしても。一人ぼっちになってしまった彼女を見捨てることは正しい事ではないと思ったのだ。
「まったく物好きなものだ。そこまでして苦労を買おうとするとはな」
「そう仰られる割に、殿下の表情は緩んでおられるようですが?」
「それはそうだろうさ。易きに流されず、自分の意志で辛い道を選択した。俺はその意志を尊重するし、その選択を尊い物だと思うよ。チンク、お前は違うのか?」
「……いいえ、そんな事はありません。私には彼女たちの間に何があったのかは存じ上げません。それでも、きっと並々ならぬ関係だったという事は伝わってきます。それでもそういう選択をする事ができる、というのは素晴らしい事だと思います」
チンクは知識があるだけの赤子に近いイリスの世話をするアミタとキリエを見ながらそう言った。ソロモンはチンクの言葉に黙って頷き、窓の外にある光景に目を向けた。指輪による干渉がなくなった結果、エグザミアによって回復しつつある自然と環境。それは、フローリアン一家が求めてやまなかった光景だった。
それを見つめながら、ふと空を見上げると魔法陣が現れた。その総数は十四。膨大な魔力反応にフローリアン一家に戦慄が奔った。しかし、ソロモンが立ち上がると自然と理解する事ができた。ソロモンたちの迎えが来たのだと。それは同時にソロモンたちとの別れを意味していた。
「さぁて、そろそろ時間という訳だ。俺も俺の果たすべき役割を果たす事にしよう」
ソロモンが外に出ると、空から武装状態の魔導士たち――――天剣保持者と魔導騎士たちが現れた。ソロモンが彼らに手を振ると、猛スピードで距離を詰めソロモンの前で膝をついた。相変わらず、仰々しい連中だとため息を吐いた。そのため息を違う意味で勘違いした彼らの頬に汗が流れた。
「はぁ……まずは何と言うべきか。迎えご苦労と言うべきなのか?それともお前らは少し落ち着いた方が良いと言うべきなのか?俺が少し出歩くぐらいでお前らは一々騒ぎすぎだ。栄えある帝国の頂点に立つと言うのなら、もう少し落ち着きを持て」
「しかしながら、殿下。御身はこの世界において並び立つ者無き、至上の存在にございます。我らは御身の安全を守るために存在する騎士であれば、その本分を全うできぬ事は恥辱にございます。どうか、どこかに遠出されると言うのならば、我らをお連れ戴きたいのです」
「俺は初めてのおつかいも出来ない子供以下か。まったく……何度も言っているが、俺は王ではない。帝国の王であった昔ならばいざ知らず、今の俺にそのような価値があるものか。そうでなくとも、お前たちにそこまで心配されるほど柔ではないよ」
ソロモンの感情に触発されたのか、ソロモンの身体から魔力が流れ出した。それは決してソロモンの意図したところではなかったが、天剣たちは察した。ソロモンの魔力が旅立つよりも明らかに上昇している事を。それは同時にソロモンという王の絶対性が増したことを意味していた。
「……しかしながら、ソーン様。その者の申し出を無碍にされるのも些か無情な事かと思われます」
ソロモンが不満を抱えているのを知りながらもソレを顧みず、忠言は齎された。その忠言の主は空から降りてきた。その人物――――シュテルは偶々パトロールに出ており、戻っている途中で膨大な魔力反応を検知して早急に戻ってきたところだった。会話はサーチャーを先に飛ばして聞いていた。
「シュテル……」
「ソーン様、騎士にとって主とは絶対に守らなければならない対象でございます。そんな方に守らなければならない筋合いなどない、と言われては騎士としての本分を見失ってしまいます。どうか、御身が自由を謳われるのであれば、彼らにもその本分を守る自由をお与えください」
「……そう言われてはどうしようもないな。それが、騎士の声であるとお前は言うのだな」
「はい。初代煉獄女帝として、何より御身に絶対の忠誠を誓った者として。この言葉に嘘偽り、間違いはございません。ソーン様、どうか彼らにお慈悲を」
「……俺がそう言われて否定できると思うのか?」
「はい。万象統べては御身の支配下にございます。ソーン様にできない事などありよう筈がありません。それが我ら女帝と天剣たちが絶対の忠誠を捧げ、世界にその名を轟かせたソロモン王でございますが故」
ソロモンはシュテルの顔に苦い表情を浮かべる。少し頭を掻いた後、溜めこんできた物を吐き出すように長く息を吐きだす。天剣と魔導騎士たちは内心で斬首寸前の罪人のように怯えながらも、ソロモンの沙汰を待った。そしてソロモンが息を吐き終えると、首を一度回した。
「……まったく。お前にそう言われては俺も何も言えなくなってしまうだろうに。中々ひどい奴だな、お前も」
「お褒めに預かり、恐悦至極にございます」
「まぁ、良い。お前たちも俺の騎士を名乗るであれば、それに足る矜持と余裕を持て。俺が何かしら行動する度に余裕を崩すようでは、騎士などとは到底呼べんぞ」
「はっ、粉骨砕身で務めさせていただきます。ところで、殿下。そちらの方は一体……?」
「私の名はシュテル。シュテル・ザ・デストラクター。ソロモン王に仕えし初代
シュテルはそう言って、頭を下げた。天剣たち、特に今代の
初代の女帝の中で、最もソロモンに忠誠を捧げ且つ最も戦場において過激だったのは煉獄女帝だった、と言われている。その瞳の奥ではソロモンに対する忠義に燃え、その忠義の焔を体現するように敵を燃やし尽くした。煉獄女帝のいる戦場において、生き残りを期待するなど間違っている。その総てを煉獄の名の下に、灰燼と化すからだと言われるほどにその戦いぶりは過激だった。
生き残りがいる事を赦さない。ソロモンの言いつけを必ず守り、その為ならば自分の命とて惜しくはない。そう公言して憚らなかったのが初代煉獄女帝である。その伝承が正しいという事を、今彼らは身をもって知った。その瞳に宿る熱量を持って、ソロモンに対する感情がどれだけ強力なのかを強制的に理解する事となった。
「……あなたが今代の
「ハッ!私が十代目
シュテルはリゲルの瞳をじっと見つめた。己の裁定に引っかからなければ、その時点で燃やし尽くすつもりだった。その内容はソロモンに対して狂信と言っても良い程の忠誠を捧げる事ができるか、という内容だった。それを測るためには瞳を見れば十分だ。何故なら、彼女の一族は文字通り燃え盛る業火のような熱量を瞳に宿している。他人に追随を赦さないその熱量を宿していれば、それで十分だからだ。
何故なら、ソロモンはその只人であれば触れる事すら叶わない熱量を受け止められる。それは彼女の息子や娘にしてもそうだった。ほんの一時だったが、ソロモンに仕えた彼女の親族もまたその熱量をソロモンに向け、ソロモンは笑いながらそれを受け止めた。常人とは次元違いの器を持つソロモンだからこそ、彼らの熱量に何とも思わない。しかし、他の者たちからすれば彼女の一族は
王のために。王のためならば総てが許されると平気で信じている。王を守るためならば、敵を根絶やしにするのは当然。王に仇名すならば、敵を灰すら残さず燃やし尽くすのも道理。王の願いであるのならば、それが如何なる難業であろうとも叶えるのは自然な事……彼女らが認めた王に対する絶対の忠誠心たるや、他の者たちなど及びもつかないほどに過激なのだ。
「……良いでしょう。あなたの継承を、私が認めます。ゆめ、忘れることのなきように。その瞳に宿るその熱量を受け止めてくださる王の存在を。我らが受けたその恩寵は、如何なる人間にも叶えられない――――ソロモン王の御業だという事を」
「はい。この身の総てが燃やし尽くされるその時まで、王に絶対の忠誠を捧げる事を此処に宣言いたします」
「当然です。己が役割を忘れる事なきように」
ソロモンはそんな二人のやり取りを見て、苦笑を浮かべるだけだった。相変わらず豪勢な事だ、と思いながら。殺気によって空間が凍り付いた……否、二人がその身に宿す熱量によって、一歩でも動けば燃やし尽くされるのではないかとすら思えた。そんな空間にいて尚、苦笑を浮かべる程度しかない。その器の大きさに他の者たちは流石だと思う他なかった。
同時に他の魔導騎士たちは羨ましいとすら思っていた。彼女らにとって、初代女帝と面会する事は叶う事がない夢の一つでもある。ソロモン王に仕え、その生涯の総てを王に捧げた伝説中の伝説。その過激ぶりに他国が攻め入る事を躊躇うほどの抑止力となっていた十四人の近衛。その名に憧れ、天剣や魔導騎士を志す者は非常に多い。
帝国で未だ尚『騎士』という階級が通用する要因、それこそが十四人の近衛騎士。ただの一般人であろうと、実力さえあれば這い上がる事ができる階級であり、努力と才覚次第では天剣となる事も不可能ではない。事実、この場にいる者の中にはそうして天剣となった者もいる。
「……さて、こうしてダラダラと喋っていても良いが。その前にやるべき事をやっておくとしよう。ディアーチェ!」
「はっ、此処に」
「紫天の魔導書を寄越せ。俺をマスター登録しておく。そうしなければユーリはいつまで経っても小さいままだからな。これ以上、長い時を歩かせる訳にはいかん」
ユーリの成長には必要な要素が二つある。それは人並み以上の生命力、そしてBランク以上の魔力だ。ユーリは一度大人と呼べる年齢まで成長したが、ソロモンの死後ユーリに相応しい魔力量を持つマスターに恵まれなかった。ましてや、闇の書となってからはナハトヴァールの再生機構にエネルギーを吸われる一方となり、成長など恵まれる筈もなかった。
多少時間はかかるが、ソロモンがマスターとなる事で本来の状態まで成長する事が可能となる。少なくとも、ディアーチェたちの肉体年齢まで成長するのにそう時間はかからないだろう。本来の肉体の状態に戻るだけなのだから、寧ろ時間をかけすぎていると言えるかもしれないが。これは本来の機構を無視して、ユーリがディアーチェたちに魔力を送っていた結果なのだが……詳細は省いておこう。
「……まったく。お前は優しすぎるんだよ、ユーリ。お前がディアーチェたちに構わず本来あった予定通りに成長していけば、こいつらの役目も終わったと言うのに」
「で、でも……そんなの悲しすぎます。母様が私を助けてくれて、陛下が私を守るために用意してくださって、ディアーチェとシュテルとレヴィが私を守るためにずっと一緒にいてくれた……その好意を無碍にするなんて、悲しすぎます。私にはそんな事は出来ません!」
「……そうか。お前は本当に優しいな。まぁ、お前のやりたいようにやれば良い。お前の選択を俺は歓迎するからな。お前はお前なりに生きていけば良いんだ」
「はい!頑張ります!」
「おう、頑張れ頑張れ。お前は時々へっぽこだけど、ちゃんとやればできる子だって事は俺がよく分かっているからな。お前はお前なりにやって行けば、俺はそれで満足さ」
ユーリを持ち上げ、その命を感じるように抱きしめた。そして、ソロモンを見つめているフローリアン一家を見た。ソロモンは微笑を浮かべ、まるで神の啓示を受けた神官のように腕を広げた。
「さぁ、残された最後の仕事をするとしよう。
ソロモンは右手の手袋を外し、その指に嵌められた金色の指輪を空に掲げた。今も尚、ソロモンの魔力を吸い続けている指輪。いかなる願いをも叶えてみせる願望機としての機能は既に回復している。
指輪に集中する魔力。人の枠組みをとうに超えたほどの魔力。先のアルトリアを思い起こさせるほどの魔力量にアミタとキリエに戦慄が奔る。古代ベルカという戦乱の時代において、超常の存在として崇め奉られた王。人とは真逆の領域にいるように見えるソロモンに、キリエは恐怖を。アミタは物悲しさを抱いていた。
「さぁ、俺の願いを叶えろ。この世界のために努力した者のため、そしてこれからの再興を願うちっぽけな、けれど真に美しき家族のために――――」
指輪が次第に輝きを放ち始める。その荘厳にして秀麗なる輝きは、神が人に明かりを与えた伝承をなぞっているような気にさせた。思わずその場にいたソロモンを除く全員が強すぎる光に眼を晦まし、次に眼を開いた時には光は完全に消え去っておりソロモンは手を地面に押し当てていた。眼を閉じたまま地面に手を押し当てていたソロモンは暫くすると眼を開いて立ち上がった。
「……これで大丈夫だろう」
「あの、ソロモンさん。一体何をしたんですか?」
「資源の活性化、と言うべきかな。指輪を使って加工した魔力を星に流し、それによって星の資源をもう一度生産したんだ。少なくとも、向こう数千年は人の手が入ったとしても問題ない程度には資源に溢れているよ、この星は」
「それって……」
「エグザミアがこのまま機能すれば、文字通り真っ当な世界として始める事ができるという事さ。君たちの努力は報われたんだ。後は長い時間をかけて、この星の環境をどうにかする事だな。そうすれば、万事元通りどころかうまく回っていくだろうさ」
「ソロモンさん……ありがとうございます!私たちのためにここまでしていただいて、本当に何とお礼を言うべきなのか……」
「礼など不要だ。俺は俺ができる事をしただけに過ぎない。この後にこの星をどうするのか……それは君たち次第だ。栄えるもよし、滅ぼすもよし、好きにする事だな」
ソロモンは再び手袋を嵌めながらそう言った。そして、再び記憶に刻み込むように空を見上げた。その姿から、ソロモンはこの先特殊な事情でもない限りはこの星に来ないのだという事が分かった。その事に、アミタは心の底に焦りのような物が生まれていた。アミタの母――――エレノアはそっと娘の背中を押した。エレノアに押されたアミタはソロモンの前に出てきた。
「どうかしたか?アミタ」
「えっと、その……どうかお礼をさせて貰えませんか?今回、ソロモンさんの助けがなければ私たちはこの星を救う事ができませんでした。部下の方もご一緒に」
「……お礼にお礼を重ねてはしょうがないだろう?今回の一件は、俺の持ち物を使われたんだ。という事は、間接的に俺にも責任があったという事だ。俺は責任をまっとうしただけなのだから、礼など不要なんだ」
「な、何を言うんですか!確かに、ソロモンさんにも責任の一端があったのかもしれません。けれど、私たちがあなたのおかげで助かった事は事実なんです!それに対して礼が不要だなんて言わないで下さい!」
「……そうだな。それは軽率だった。だが、分かって欲しいんだ。俺は今回の一件に対して、何かしらの報酬を求めて行動した訳ではない。俺は俺がするべき事をしただけで、君たちが助けられたことはあくまでも結果論に過ぎない。だから、その為に君たちが心を砕く必要はないんだ」
「私は……私はただあなたの事が……」
「……ふぅ。君が俺に惚れたとかそんな話ならば、尚の事止めさせてもらおう。アルトリアの時も言ったが、君にももっと真っ当な男が現れる筈だ。俺のような破綻者ではなく。もっと真っ当な人間がな」
「ソロモンさん……どうしてソロモンさんは自分の事をそう卑下なさるんですか?この数日間接してきただけでも分かります。ソロモンさんは良い人です。ユーリの事も、イリスの事だって、ソロモンさんは尽力してくれました。本当はそんな事する必要はなかった筈なのに……」
アミタには分からなかった。どうしてソロモンがそこまで自分の事を卑下するのか。ソロモンの事を好く事を間違いだという風に語るのか。アミタからすれば、ソロモンはよほど真っ当な人間だ。この星の事はソロモンには関係ない話だったのに、迷惑をかけたからと言って尽力してくれたのだ。それだけの事をしてくれたソロモンが真っ当ではない訳がない。
「ふむ……前世において、俺は選定者と呼ばれる存在に王に選ばれた。君も知っているだろう?古代ベルカという時代において、あらゆる人間を恐れさせた魔王って奴さ。悪逆非道の限りを尽くし、ベルカ戦役において生まれた混乱を加速させたと言われる男だ。そんな奴が真っ当だと思うのか?」
「「殿下」そんな事は関係ありません!たとえ、世界中の人々があなたの事を非道な存在だと言ったとしても!私にとっては、ソロモンさんは真っ当な存在です!そうやって逃げようとするのは止めてください!」
「……参ったな。君はアレか?一度決めたら梃子でも動かない人間か?」
「話を逸らさないで下さい。ソロモンさんはどうして、そうやって逃げようとするんですか?」
「逃げる、か……」
「そうです。騎士王さんの好意からもあなたは逃げようとしている。どうして受け止めようとしないんですか?どうしてあなたは、彼女の……私の想いから目を逸らそうとするんですか?アルトリアさんもあなたも、二人とも同じです!自分に向けられた想い、そして自分が抱く想いから目を逸らそうとするんですか!?」
「――――あまり調子に乗るなよ、小娘。この御方をどなたと心得る。唯一にして絶対なる至高の存在、ソロモン王だぞ。身の程を弁えよ」
ソロモンを糾弾しようとする娘を前に、今代の煉獄女帝は我慢ならなかった。ソロモンが必要ないと言っているのだから、そのまま黙っていれば良いのだ。ソロモン王が優しくするのを良い事に好き放題宣う小娘に、彼女は今すぐ身の程の差という物を教えたくなったほどだ。
煉獄女帝がそう言えば、普通は黙る。当然だ。彼女は王のためになるのであれば、どんな事でもやってのける。目の前の小娘一人を焼き殺すぐらいなら平気でやってみせる。たとえ彼女の事を知らなかったとしても、彼女の瞳を見れば分かる。本気だという事がありありと伝わってくるからだ。しかし、残念ながら、と言うべきなのか―――――アミタはそこまで物分かりが良くはなかった。
「いいえ、黙りません!私はソロモンさんの口から答えを聞くまで黙る事はありません!あなたこそ、どうして私を止めるんですか?本当にソロモンさんの事を思うのであれば、自分に向けられた好意を無碍にする事を良しとするなんて間違っています!」
「……貴様は王の意向には従えないと、そう言う訳だな?」
「そうです。私は私が納得できる答えを聞けるまで、決して黙りません。大体、貴女は何なんですか?本当にソロモンさんの事を考えているんでしたら、こういう質問から逃げるのが悪い事なのは分かるでしょう!?」
「……よろしい。それが末期の言葉でよろしいですね?」
まずい。その場にいた全員が同時にそう思った。間違いなく、煉獄女帝の堪忍袋の緒が切れた。そう言いきれるほどに言葉から感情が消えていた。このままであれば、あの少女は死んでしまうかもしれない。そう思った瞬間、全員の視線がソロモンに向いた。
「……ハッ。ハハハハハハハッ!面白いにも程があるぞ!そんなに人の堪忍袋を攻撃しまくった奴は見た事がないぞ!」
「殿下……?」
「ああ、面白かった。もう良いぞ、
「……まぁ、そうですね」
「そうか。だったら……」
そこからソロモンの行動は一瞬だった。アミタの顔を掴み、何の躊躇いもなくアミタの唇を奪った。しかも、掴んだ瞬間に時間を止めているためにアミタ以外の誰も気付かない。口の中を蹂躙され、時間停止が解けた瞬間にアミタは腰砕けになっていた。
「――――ごちそうさまでした。それでは、これにて失礼」
有無を言わさずに転移し、空より高き先にあるコロニーへとソロモンは移動した。その時、ソロモンの頬にほんの少しだが赤みがさしていた事には誰も気が付かなかった。天剣たちがソロモンに追いついた頃には平然としたソロモンが立っていたが故に。
暫く後、アミタ宛に紫天の書を通じてメールが届き、その時にメールの内容を見たアミタの顔は真っ赤になっていた。そんな状態になったアミタは暫くの間、キリエや他の面子によって揶揄われたという……。これがソロモン第一の指輪収集の事件の顛末であった。
これにて指輪回収一旦終了です。
次回のネタはまだ未定ですが、活動報告で質問コーナーを作ってそれを当作品で説明しようと思いますのでよろしくお願いします。