ソロモン王。それは世界に名高いアグリアス帝国を建国し、民の心にその名を刻み込んだ神の名前。いつの日か蘇るとされ、帝国中の民たちがそれを今か今かと羨望している信仰対象でもある。十四人の近衛騎士を従え、世界を制する存在だと予言された王は今――――観光を楽しんでいた。
「う~ん、やはり外は良いな。こうして伸び伸びとしていられるのは実に良い事だ。そうは思わないか?」
「殿下が楽しまれていらっしゃるなら何よりでございます」
ソロモンと天剣保持者のNo.2メヌス・R・フォルネイスはアジトから遠く離れた惑星――――第97管理外世界と呼ばれる場所を訪れていた。そこは管理局で有名なエースたちが生まれ育った場所と聞き、ソロモンは興味を抱いていた。特別な存在が生まれる場所には、それ相応の歪みという物がある。それがどんな物か、気になったのだ。とはいえ、興味の大半は観光に向いていたが。
「空気は多少汚いが、それでも海は美しいな。空も青いし、中々に良い世界のようだな」
「この場所――――海鳴市は海の外観を観光のウリにしているようですので、自然環境の整備に力を入れているようです。都会というよりは環境に配慮した街になっているようです」
「ほぅ……良きかな良きかな。そういう事に意識を向けられるのは良い事だ。闘争の果てには滅びしかないように、繁栄の果てにもまた滅びしかない。その前にそういう方向に意識を向けるべきだ。そうだろう?」
「まったくもって、その通りです。それでは、殿下。次は如何いたしましょう?」
「その前に。この世界では俺の事を殿下と呼ぶのを止めろ。確か、ここは王制ではないのだろう?そんな場所で殿下呼びなど目立って仕方がないだろう。俺は純粋にこの街を楽しみたいんだ」
「し、しかし……殿下は殿下でございますから。名前呼びなど畏れ多く……」
「……相変わらず固いな、お前たちは。そうだな、ではこうしよう。この街では俺の事をサンと呼べ。偽名ならば呼び捨てる事ができるだろう?」
「…………………やってみます」
「何故、そこまで真剣な表情で覚悟を決める必要があるんだ……まぁ、良い。くれぐれも殿下呼びはするなよ」
「はい!頑張らせていただきます!」
「いや、だから、頑張る事じゃ……いや、もういい。気を付けてさえくれればそれで良い」
ソロモンはため息混じりに大丈夫かと思いながらも、大丈夫じゃないなと諦めていた。今回の人選は天剣保持者と魔導騎士たちによる壮絶な――――じゃんけんの末に決定された物だという事を知らないソロモンは、何でこいつが今回の付き人なんだろうか……と思わずにはいられなかった。
ソロモンに楽しんでもらうため、地球にあるガイドブックを買いに行き入念に観光プランを考えながらも、ソロモンの付き人になれた事でその内容の大半が吹っ飛んでいる。そのため、しどろもどろの状態になってはいるが、ソロモンが観光にはノープランで行動する人間のため問題はなかった。ソロモンは周囲を見渡しながら、メヌスの説明を聞いていた。
「それにしても、人の多い事だ。随分と平和な世界なんだな」
「そうですね。この世界、というよりはこの国では数十年ほど前に行われた世界大戦で敗れ、その時に軍事力を放棄したそうです」
「……軍事力を放棄などすれば、他国から狙い放題だろう?その問題はどう解決したんだ」
「そうですね……軍事力を放棄、と申しましたがそれは正確ではないようです。正確に言えば、攻撃用の軍事力がないという事です。防衛用の戦力は存在するようなので、有事の際はその戦力が戦う事になるようです」
「ははぁ……つまり、一般市民に対する徴兵制度が存在しないという事か。戦いになど関わる事がないからこそ、このように平和だと……しかし、それは
「はい、で……サンの言う通りです。この平和は戦いに関わる事がないからこそ、とも言えますが……彼らには暴力を行う覚悟すらないのでしょう。それ故、と言うべきなのでしょう。いじめという問題があるそうです」
「イジメ?なんだ、それは?」
「不特定多数が一個人に暴力や恐喝などを始めとした犯罪行為を行う事、だそうです。それによって死人すら出る場合もあるとか」
「犯罪なのにか?」
「はい。犯罪なのに、でございます」
ソロモン――――サンはメヌスの言葉に首を傾げざるを得なかった。王制ではないとはいえ、この国にも正式な法と呼ばれる物がある筈だ。理不尽な暴力などから民たちを守るための法が。だというのに、犯罪行為を犯しても裁かれないのならば、法がある意味とは何だ?そんな物、ただの紙きれ以下の価値しかないではないか。
「……この国は無能なのか?」
「それが集団の限界という事なのでしょう。……それでも、これは酷いと思われますが。虐げられる者が我慢を強いられる、そう人に
「ふぅん……それは何とも難儀な話だな」
「そうですね。この国も一人の絶対の王が統べていたという話ですが、何とも残念な話でございます」
「まぁ、そういう裏話に興味がない訳ではないが。今は楽しい話を聞きたいな」
「かしこまりました。この土地では相当に有名な喫茶店があるそうです。そちらに行ってみられますか?」
「ふむ、それも悪くはないが。まだ来たばかりだからな。もう暫くは歩き回ろう。こうして視察以外で他国を見回った経験など久しくないからな。こういう事ができる事自体が嬉しいのだよ。見た事もない景色というのは、見ているだけでも面白いからな」
「……それはようございました。私も殿下にお力添えする事ができ、嬉しく思います」
「……殿下呼びすんな、って言っただろうが」
「……あ。す、すいません」
「はぁ……もう少し慣れさせなければならんのだろうな。お前にしても騎士たちにしても」
「も、申し訳ございません!」
「良い。この程度の事で怒るほど短慮になったつもりはない。それよりも他に見る場所などはないのか?そちらにまずは行ってみるとしよう」
「は、はい。それでは……」
メヌスが鞄から手帳を取り出し、ペラペラと開き始めた。サンがそれを優しげな表情で見つめていると、その後ろから二人組の男が近付いてきた。サンがその気配に気付き振り返ると、そこにはそれなりに顔の良い男の二人組がいた。
「お姉さん、何か困り事かな?」
「俺たちが力になるよ。なにせ、此処は俺らの地元だからね。力になれると思うよ」
「は?」
サンを押し退け、二人はグイグイとメヌスに話しかけていく。魔法技術が広まっていない現地人が相手だからか、メヌスもやりにくそうにしていた。それでも、きっぱりと断っているが二人はまったく聞く耳を持っていない。ナンパに相当な自信があるのか、女が自分たちに靡かない訳がないと思っているようだ。
「メヌス、そろそろ行くぞ。時間は有限だからな」
「は、はい。それではこれにて失礼します」
「ちょっと待ってって。まだ話は終わって……」
「そちらの話は終わっておらずとも、こちらの話は終わっています。そちらが聞く耳を持っていらっしゃらないだけでしょう?」
「そんな
その言葉を聞いた瞬間、サンは何かが切れる音を聞いた。明らかな幻聴ではあるのだが、サンはため息を吐かずにはいられなかった。その音が何であるのか、これ以上なく理解しているからだ。……ついでに言うと、サンは筋肉がつきにくいのでひょろく見えるが、その筋肉密度は常人の三十倍以上ある。魔力で強化せずともトラックを持ち上げられる程度には力がある。普段はその八割がたを封印しているが。
「……今、何と言った?」
「へ?」
「殿下を侮辱したか?この世に並び立つ者なき、至高の御方を侮辱したな……?」
「ハァ……おい、そこのお二人さん。悪い事は言わんから、早く謝った方が良いぞ。この手の輩は――――」
サンがそう言った瞬間、メヌスは二人の腹部に強烈なレバーブローを叩きこんだ。二人はあまりの激痛に身を屈めた瞬間にこれまた強烈なアッパーカットを繰り出した。鼻の骨をへし折り、中々の美形だった顔面は見る影もなくなっていた。
「釣り合わない反撃を……って、もう終わってるし。せめて最後まで言わせろよ」
「申し訳ございません、殿下。もう少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?この身の程知らず共に、もう少し身の程という物を弁えさせなければなりません」
「放っておけ。あの程度、侮辱にすらなりはしない。そんな輩に使う時間など無駄すぎるだろう?」
「しかし、絶対至高の御身を貶したのです!その罪、命を持って償わせなければなりません!どうか、今暫く時間を!」
メヌスの眼は本気だった。サンが放っておけば、間違いなくメヌスはこの二人を殺す。それを確信できるほどにメヌスの瞳は冗談の色がなかった。その本気度にサンはため息を吐いた。これはメヌスに限った話ではなく、天剣保持者に限った話でもなく、近衛騎士全体に言える事なのだ。
ソロモン王は帝国における信仰対象だ。そしてその宗教ではソロモンを神として仰いでいる。つまり、ソロモンという存在は民からすれば神なのだ。しかし、近衛騎士或いはその近辺に達する騎士は総じて狂信者が多い。だからこそ、その名を傷つけ貶める者がいれば総力を結集してその者を消す。いや、それだけに納まらない場合も存在する。
「放っておけ。たとえ、その者らが俺を貶そうとも、俺は欠片も傷ついてはいない。報復するほどの理由も存在しない。それよりも、だ。楽しい時間をこそ、俺は欲している。俺からそれを奪うつもりか?」
「い、いえ!そのような事は決して!私も殿下には楽しい時間を過ごしてほしいと考えております!」
「そうか?ならば、その程度の者の血で手を穢すな。俺の近衛たる事を誇る貴様がそれでは、俺の株も下がってしまう。そのような事を、貴様はするつもりなのか?」
「いえ!そのような事は決してありません!」
「それで良い。さぁ、次の場所に行くぞ。なに、時間は有限だが、それでもまだ日が沈むには早い。多少はのんびりとしていても構わんだろうさ」
「はい!かしこまりました!」
「まぁ、それはそれとして……殿下呼びは止めろ」
倒れ伏して気絶した二人を放置し、サンとメヌスは歩き始めた。それから暫くの間散策を続けた二人は目的地としていた喫茶『翠屋』に向かった。そこはかなり繁盛をしており、これは味の方も期待できるだろうな。とサンは考えていた。残念ながらテーブル席は埋まっており、二人はカウンター席に案内された。
「いらっしゃいませ。こちらがメニューになっておりますので、決まりましたら声をおかけください」
「ありがとう。ふむ……メニューが多すぎてよく分からん。メヌス、すまんが任せても良いか?」
「はい!ええっと、では……エスプレッソを二つ。それとシュークリームを二つで」
『翠屋』のオススメはシュークリームだとガイドブックに書いてあった。なんでも、その道のプロが集まる大会で優勝したほどの腕前だとか書いてあった。サンに紹介したかったのもあるが、メヌスとしてもそれほどの菓子だというのなら食べてみたいと思っていた。しかし、マスターらしき男性は困ったような表情を浮かべながら頭を下げた。
「申し訳ございません、お客様。シュークリームは現在品切れ状態でして……」
「えっ。そ、そうなんですか……それじゃあ、どうしましょう」
「……店主。飲み物は先ほどのエスプレッソ?とやらを二つ。菓子は店主のオススメを二つ頼む」
サンは困った表情を浮かべながらメニューを見ながら、これでもないあれでもないと迷っていたメヌスを見ていた。よほど楽しみにしていたのか、悩んでいるメヌスにサンはそう言った。マスターはサンの注文に頷き、メヌスは驚いたような表情を浮かべていた。
「で……サン。どうして……」
「よほど楽しみにしてようだがな。ない物はないと納得するしかない。しかし、今のお前にその選択をさせるのは忍びないからな。なに、これほどに賑わう店の店主だ。俺たちの要望に応えてくれるだろう」
サンは置かれた水の入ったコップを飲みつつ、浮かんだ氷をじっと見つめていた。サンが生きていた時代では水と言えば煮沸消毒された普通の水だ。水を凍らせて作った氷を再び水に突っ込む、という飲み物はない。それを言えば、そもそも冷えた飲み物など地下で保存されていたりするワインなどが精々だったのだが。どちらにしても、稀少であったことに変わりはない。
「それにな。お前のおかげと言うべきか、今回の旅は中々に楽しい。それだけでも、お前を連れてきた甲斐があった。お前は俺のために努力したのだろう?ならば、お前の悲しそうな顔を見るのは忍びないという物だ。俺のやりたい事について来てもらっているのだからな」
「そ、そんな事はありません!私はあなたに楽しんでもらうために……」
「それでも、だ。お前が俺の世話と護衛を仕事としているとはいえ、俺のために尽力したのだろう?ならば、その労を労いたいと思うのは当然の事だ。お前の思い通りではなかったとしてもな。それに……旅なのだ。自分の予想通りにいかない事もまた一興だろうよ」
「……ありがとうございます」
「良い良い。気にするような事ではないしな」
「……お待たせいたしました。こちらエスプレッソと僭越ながら私オススメのケーキになります」
サンの言葉にメヌスが感動していると、マスターがコーヒーとショートケーキを置いた。メヌスは恥ずかしげに頬を赤く染め、サンはコーヒーカップを手に取りその匂いを嗅いでいた。生前、コーヒーを飲んだ事のないサンだったが、個人的にはその匂いは好きだった。同時に匂いだけで分かった。これは美味い、と。
実際、そのコーヒーは美味しかった。一緒に出されたケーキもまたコーヒーに合っていて美味かった。これはこの店も流行る訳だとサンは簡単とせざるを得なかった。メヌスの方を見ると、これまた美味そうに食べており、しかもご丁寧にサンが食べている物とは違うケーキだった。
「メヌス、もし良ければなんだが」
「はい?なんでしょうか?」
「お前の菓子も一口くれないか?」
「え、でも、私の食べかけですよ?」
「それがどうした?確かに、行儀としては悪いんだろうがな。ここには行儀作法の教師がいる訳でもない。多少、行儀に反していようが問題はあるまい」
「そ、そうですか?で、では、どうぞ……」
「おお、ありがとう。それでは失礼して……うむ。これはこれで美味い。店主も中々商売上手だな」
「ありがとうございます。そちらも注文なさいますか?」
「いや、今は結構だ。しかし、このコーヒーだったか?も美味いし菓子も美味い。言う事なしだな」
「ありがとうございます。お客様は外国からご旅行ですか?」
「外国……まぁ、外国か。確かに、今日は観光に来ていてな。ここは美味いとこやつが教えてくれたのでな。確かにここの菓子は美味いな。俺は中々に満足だ」
「お客様のいた場所にはケーキ――――洋菓子の類はなかったのですか?」
「そもそも、俺のいた場所には美食の文化がないのだ。食事とは栄養補給の為の物であり、仕事を迅速に済ませる或いは備えるために速く食べられる物が良しとされたのだ。このように手間のかかりそうな物は少なくとも俺の身の周りにはなかったな。他の場所にはあったかもしれんが」
「その割にはお嬢さんはご存知のようですね……?」
「私とで……彼は働いていた場所が違いますから。私は様々な土地を訪れていましたが、彼は一ヶ所で仕事をされていた方なので」
「なるほど……
「確かにな。王族というのも中々大変なのだよ。仕事は溜まる一方だし、臣下を纏め上げるというのも大変でな。まぁ、今となっては懐かしい思い出だ。気にする事もない」
「……何も仰られないんですね」
マスター――――高町士郎は驚いたような表情を浮かべていた。自分としてはカマかけのつもりでしかなかったが、そのまま乗って来られたので驚いていた。それに対して、サンはあっけからんとしていた。
「別に驚くような事ではない。俺にとってはどうという話ではないし、当てられても焦るような事ではない。マスターもこの現代にらしからぬ肉体をしているな。何か格闘技の類でもしているのか?」
「ええ、ちょっとした古武術を」
「ほう。古武術という事はアレか?割と実践的な物という事か?」
「そうですね。この仕事をする前はボディーガードなどをしていましたから」
「なるほど。そういう仕事は長くは続かぬものだからな。早めに辞める事ができて良かったな」
「……ええ、本当に」
士郎は本当にそうだと言わんばかりに頷いた。そんな士郎にサンは微笑を浮かべ、メヌスはそんなサンに困惑した。誰かの――――王のために全力を尽くす事はメヌスからすれば当然の事。命の総てを王のために尽くす事は当然のことであり、たとえ家族であろうとも逃げだす事はこの世で最も恥ずべき不名誉な事だ。だというのに、王はその選択を肯定した。
天剣であれ、魔導騎士であれ、ただの騎士であれ。己の命を神たる主のために尽くす事は当然の事。逃げることが正しい事であったとしても、主を置いての逃亡など万死に値する。それが誰のためであったとしても関係ない。信仰に殉じる者ならば、神であり王である存在に命を賭けるは当然の事だ。
「メヌス。全員がお前らのような狂信者ではない。重きを置くのは人の自由だ。それが自分であれ、家族であれ、恋人であれ、主であれ……それは人が選ぶことなのだ」
「……承知いたしました」
「不服そうだなぁ……一定の人間では世界は成り立たない、という事だけ分かっていればいい。それ以上の事をお前に押し付けるつもりはない」
サンはそう言うと、黙って再びケーキとコーヒーを楽しみ始めた。話はここまでだと言わんばかりの主の態度に、これ以上この話を続けるのは無粋な事なのだとメヌスは無理矢理納得した。メヌスも目の前の食事に再び没頭した。そんな二人を見ながら、士郎は注文を捌いていった。
~ソロモンと作者によるQ&Aコーナー~
「さて、そんな訳で始まる事となったQ&Aコーナーだ。相も変わらず思いつきで適当な事をするな、貴様は。申し遅れたが、ソロモンだ」
「別に良いじゃん。自分で作っておいてなんだけど、お前の設定とか壮大すぎるから。複数の次元世界の王とか意味不明だから。あ、作者のシュトレンベルグです。皆様、当作品を応援してくださり、ありがとうございます」
(ソロモン以下、ソ)「うむ。お気に入り登録も300以上と作者ともどもなかなか快調ではないかと思っている。これからも応援のほど、よろしく頼む」
(シュトレンベルグ以下、シュ)「さて、このコーナーは活動報告で募集したり、感想で戴いた疑問にお答えしていこう!というコーナーになっています。さて、栄えある第一回目の疑問は……こちら!」
Q.生前のベルカで忠誠心の高い女帝や天剣達がいましたが、妻がいたと書かれてた…よな?よく女帝や天剣達が認めましたね。反対とか無かったんですか?
シュ「まずは質問をして下さった岬サナ様、ありがとうございます。いつも感想をいただき、まことに感謝しております。それはそれとして……これはまぁ、思われそうな内容ですよね?」
ソ「そうだな。思われても仕方のない質問ではあるな。それでは答えさせていただくとしよう。
まず、前提として王の仕事は三つある。一つが国を栄えさせる事。二つが外敵を排除し、民の安全を守る事。そして三つめが、王の後継を作る事だ。つまり、俺が妻と結婚したのは妻を愛していたからとかではなく、後継者を作る必要があったからだ」
シュ「まぁ、次代の後継者がいないと周りは困るもんなぁ。戦乱渦巻く古代ベルカなんていう時代で生きてるんだし、周囲の声は尚の事強かっただろうな」
ソ「そういう事だな。俺の後継を望む声は貴族だけでなく、民の声もあった。女帝や天剣もその声に逆らってまで否定する事は出来なかったのだ。たとえ、俺が誰にも負けぬ存在であったとしても、死なぬ訳ではないからな。不承不承ながら、何とか認めたという所だ」
シュ「ちなみに奥さんの数は?」
ソ「三人だ。正室が一人に側室が二人。子供の数は……十人は超えていた、と思う」
シュ「なんで覚えてないんだよ……それ、親としてどうなの?」
ソ「仕方なかろう。何年前の話だと思っているんだ。俺が結婚したのはベルカ戦役終了後だが、それでも随分と昔の話なんだぞ。蘇ってからは刺激が多すぎて、前世の頃の事はあまり多くは思い出せんのだ」
シュ「そっか~……じゃあ、次の質問行くよ」
ソ「興味なしか……」
Q.天剣のNo.って何を基準にしてるんですか?戦闘能力?総合能力?忠誠心?とか想像してますが、実際にどうなのかと思いました。
シュ「これも分かる質問ですね。実際、十話以上書いておきながらまだ一回も戦闘してませんからね、あの集団。ほんと、すいません(土下座)」
ソ「この質問は……そうだな。俺の時代で言えば、戦闘能力。この時代で言えば総合能力、と言ったところか」
シュ「なんで違うの?」
ソ「求められる仕事の差だ。俺のいた時代は戦乱の時代。故に、戦闘能力が求められた。俺の近衛が斃れれば、俺が死ぬ可能性が上がる。だからこそ、最も強い十四人の騎士を俺が選定した。
今の時代では管理局に対する抑止力というだけでなく、様々な式典を始めとした仕事を任されているからな。戦闘だけできる馬鹿は必要ないという事だ。まぁ、戦闘力のある奴は基本的に頭も良いがな」
シュ「じゃあ、どうやって決まるの?」
ソ「そもそもの違いとして、女帝は血統。天剣は実力によって選定される。これは女帝は異能を持つ血統であるため、同種且つ現当主を超える者が現れない限りは変更する事ができないからだ。まぁ、そんな輩がいれば真っ先に血統に取り込むだろうがな。
逆に、天剣は謂わば究極の騎士という存在だ。だからこそ、絶対的な強者を実戦形式の決闘によって選定する。帝国に分類される総ての領域から騎士を集め、その総てと騎士たちは戦う。最後まで残っていた十人で争い、最後まで立っていた者から順に格付けされていく」
シュ「それだと、最後の戦いに残っていても逃げ回っている人間が上位に立つ事もあるんじゃないの?」
ソ「その段階まで行った連中は基本的に狂信者且つ自分の実力に自信を持っているが……そうだな。そういう可能性もあるな」
シュ「それは良いの?」
ソ「無論、構わん。最後の十人によるバトルロワイヤルは、天剣に相応しい力を持っているかどうかだけを見ている訳ではないからだ。戦闘能力は元より、判断能力などを始めとした各要素、そして運も見ているからだ」
シュ「運?」
ソ「そうだ。運も実力の内、という言葉があるようにな。戦闘力だけではなく、運も大事になってくる場合もある。たとえ、運によって自分では勝てない者よりも上に上がったとしても、それがその者の実力なのだ。間違いではない」
シュ「それだと不満を持つ人もいるんじゃない?俺はあいつよりも強いのに~とか、そういう事を言う人がいてもおかしくないと思うけど」
ソ「いないな」
シュ「なんで?」
ソ「勝ち上がった者がこれは運ではなく、ソロモン王による加護の賜物だと抜かすからだ。もちろん、俺は何もしていないがな。そう言われた奴は納得する他ないのだ。そこまで勝ち上がる奴は大体、狂信者だからな」
シュ「なんで狂信者が勝ち上がりやすいの?」
ソ「……天剣はソロモン王の剣であり、死後はソロモン王の御下に送られる。とかいう迷信があるからさ。そんな事はないし、俺も顔を会わせたことはない。それでも、死後の事など誰にも分からないんだ。天国に行きたいと思って生きている連中と大差ないのさ」
シュ「天国か信仰する対象の下かの違いがあるだけで、か」
ソ「そういう事だな。だから、忠誠心はあまり関係ない。初代の連中は忠誠心が信仰心に変わっていたし、それ以降の連中も俺――――ひいてはアクィナス家に対する信仰心で仕えているからな。裏切られる心配とかはした事がない。寧ろ眼が本気すぎて俺が引くレベルだ」
シュ「なるほど……とまぁ、こんな感じで質問にお答えしていきます。他にも気になる事などがありましたら、感想か活動報告の方に質問を送ってください。こちらの方で答えられる質問にはこのコーナーで答えていきたいと思っています」
ソ「感想でも構わないが、質問の内容によっては運対に引っかかってしまうからな。活動報告の方に書いてもらえるとありがたい」
ソ・シュ「「それでは質問、お待ちしていま~す!」」
・幕間という名の謝罪
ソ「作者めが俺の認めた王は聖王と騎士王だ、等とのたまったらしいがここに訂正しておこう。俺は聖王女を英雄としては認めていても、王としては認めていない。作者めの適当な戯言で誤解させてしまったら申し訳ないのでな。ここで詫びさせてもらう」
シュ(本当にすいませんでした!)