ミッドチルダを始め、各所の次元世界から磁場が次元世界中に広まっている。その報告を受けた天剣保持者や女帝たちの行動は早かった。彼らは翌日に控えていた出航を前倒しにする事を、既に乗り込んでいたソロモンに報告していた。その報告を聞きながら、ソロモンは手元の資料を見ていた。
「……殿下、恐れながらお聞きしてもよろしいかな?」
「なんだ、ジェイル。何か気になる事でもあったか?」
「何故、結界生成システムと
「ジェイル、今回の一件では我々だけで解決したとしても意味がない。なにせ、次元世界全体を呑み込まんとしている事件だからな。抑止力もこれを修正するのは並大抵ではあるまい。我々に必要な物ぐらいは分かるだろう?」
「目撃者、ですか?」
「それもある。だが、我々だけで解決した訳ではないという事実もいる。それに、この事件の果てで得られる物は連中にくれてやれば良い。最大級のロストロギアだ。今の帝国で扱えるような代物ではないし、俺のもとにあっても邪魔でしかない。管理できる連中に渡せばいい」
「彼らにも扱いきれるとは思えませんが……」
「使い潰すも破壊するも好きにすれば良い。どちらにしても、俺にとっては不要な代物だ。それとも、お前は欲しかったか?ならば、悪い事をしたな」
「いいえ、そのような事は微塵もありません。しかし、それならばアレまで渡す必要はなかったのでは?」
「なに、俺なりの祝いさ。友の門出だからな。少しはマシな物でも、と思っただけよ」
ソロモンは資料を傍に置いてあった机に置き、立ち上がった。その瞳に蒼色の輝きを宿し、遠く離れた土地にいる友を見た。そして、ちょうどその場では事情の説明が行われていた。
「……皆、集まってもらったのは他でもあらへん。異常事態への説明をするためや」
八神はやては語った。次元世界に起きている異変を。この機動六課という組織はその異変に対応するために設立された事を。そして、不幸な事に想定されていた以上の異変が起こってしまった事を。
もちろん、誰もきちんとは把握しきれていない。しかし、大事件が起こってしまっている事、そしてそれを解決する事ができるのは自分たちしかいないという事は理解できた。けれど、不安もあった。それは自分たちに解決できるのかという事だ。
「皆、不安はある事やと思う。ウチやってそうや。解決できるかどうかなんて分からへん。それどころか、ウチに指揮官として皆を引っ張っていけるかどうかすら定かやない。けどな。ウチはやらなあかん。その義務と責任があるからや。
だから――――どうか。どうかこんな不甲斐ない指揮官ではあるけど、ウチに協力してほしい。お願いします!」
なりふり構っていられない。そんな余裕、端から彼女には残されていない。次元世界そのものが滅びる可能性すらある異常事態。全員が一致団結して事に挑まなければ、すぐさま彼女らは敗北してしまいかねない。それが彼女らの現状。最初からクライマックスと呼んで差支えないだろう。
「もちろんだよ、はやてちゃん」
「私たちはそのために集まったんだからね」
「主はやてのご命令のままに」
「あたしらははやての守護騎士だからな。当然だぜ」
プライドなど端から捨て去り、
そして、それは残りの者たちもそうだ。彼女が求め、彼女に関わりのある人間がそれに応じ、ここにいる面子は揃った。そんな彼らが彼女を助けない訳がない。総て、彼女の目的を達成するために始まった事なのだから。
「皆……ありがとう!」
彼女は感謝するしかなかった。ここで離反されたとしても文句は言えない。それでも、彼らは彼女の願いに応えてくれた。次に進むためには彼女たちにはどうしても必要な事だった。だからこそ、次へ進むための一歩へ進む事ができる。
ロングアーチを始めとした後衛組は早速動き始め、フォワードチームも動こうとしたがはやては止めた。彼女たち、戦う事が仕事であるチームはしなければならない事があるからだ。
「皆、どうか落ち着いて聞いて欲しい。うちらはこの事態を解決するための一歩がある。ウチらの希望は絶えてへんねや」
そう言うと、はやては一つの機械を取り出した。それは、はやての友人であるカリムから送られてきた小包みの中に同封されていた機械だった。はやてはその機械が希望であると語ったが、それが何であるのかは誰にも分からなかった。
「あの、八神部隊長。それは一体、何なんですか?」
「これはな――――英霊召喚システムや」
「英霊召喚システム?」
「そう。英霊っていうのは、過去に存在した英雄の事や。皆に分かりやすく言えば、オリヴィエ様とか昔におった英雄を呼び出すって事やな」
「……そんな事が可能なんですか?」
「……分からへん。けど、これがうちらが頼れる唯一の縁や。おそらく、これから向かう先にはウチや高町一等空尉らでも勝てるか分からへん魔境や。次元世界総てを滅ぼそうとする、なんてけったいな事をしでかす連中なんやからな」
「それは、そうかもしれませんが……」
「ティアナが信用ならへんちゅうのもわかる。やから……最初にウチが召喚する」
「なっ、そんなのはやてがやる必要はないだろ!?あたしがやったって……」
「ううん。ヴィータやシグナムはウチとパスで繋がってる。やから、英霊召喚を行うことは出来へんねん。やから、ウチがやらなあかん。そうでなくとも、ウチは自分でも出来へんことを誰かにやれなんて言いたくないしな」
はやてはそう言うと、機械を起動させた。すると、機械が空中に浮かび上がった。そして地面に魔法陣を転写した。見た事もないその魔法陣にはやては魔力を注ぎ込み始めた。すると、青色の魔法陣が白色に染まり始めた。それと同時に、はやての右手には何かの紋様が浮かび始めた。そして完全に魔法陣が白く染まった瞬間、魔法陣が強烈に発光した。光が消えると、そこには銀色の長髪をたなびかせた女性が跪いていた。
「……え?」
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じ、参上しました。これより我が身はあなたの剣であり盾となりましょう。――――お久しぶり、と言うべきなんでしょうか?」
「リイン、フォース……?」
「いいえ。私はあなたがリインフォースと最初に名付けた個体のオリジナルです。けれど、彼女の綴った物語を私は見ていました。だからこそ、彼女の嘆きも彼女の喜びも私は知っています。それを、彼女が喜ぶかは分かりませんが……それでも私はあなたの事を知っています」
「ウチは……」
「どうか、自信を持ってください。あなたがこの戦いに参戦すると決めた瞬間から、サーヴァントたちの多くはあなた方の味方をするでしょう。私にしろ、他の者たちにしろ、あなた達という未来を守るためにサーヴァントとなったのですから。
それは彼女も同じことです。あなたにリインフォース
リインフォース――――キャスターははやての手を掴み、はやての眼を見ながらそう言った。その瞳からは既に亡き彼女の姿が幻視された。その姿にはやては何も喋る事ができなかった。静かに涙を流すはやてを抱きしめながら、キャスターは後ろを振り向いた。
「この戦いは、
頼む、とキャスターは頭を下げた。その真摯な姿に誰も口を開くことは出来なかった。それでも、前に出た者はいた。はやての昔からの友人である彼女ら――――なのはとフェイトは友の言葉を疑う事はしない。そうでなくとも、彼女らもはやてと共に立つ事を決めた者なのだ。
「もちろん。はやてちゃんは友達だもん。私たちは絶対にはやてちゃんの助けになるよ」
「うん。私たちもはやての力になりたいと思ってるから」
そんななのはに続くようにフォワードチームの新人たちも前に出た。彼女たちはそこまではやての事を知らない。けれど、尊敬に値する人が信頼しているというだけで彼女たちが信じる理由としては事足りた。その事実にキャスターは心の底から感謝した。
「ありがとう……魔力を注ぎながら願ってくれ。君たちの願いに、英霊はきっと答えてくれる筈だからな」
六人は同時に魔法陣に魔力を注ぎ込んだ。すると魔法陣が次々と色を変えていった。ある時は空色に、ある時は茜色に、ある時は桃色に、ある時は黄色に、ある時は金色に。そして魔力が魔法陣全体に及ぶと虹色の輝きへと変化していた。虹色の魔力光は魔法陣を高速で巡り、光は次第に強くなっていった。
そして光が最大まで高まり、爆発するように魔力光は光り輝いた。そして、光が消えたその先には――――六人の男女が跪いていた。その光景はあまりにも幻想的で、その場にいたほぼ全員の視線を釘付けにした。
『我らは御身のサーヴァント。この命尽き果てる瞬間まで、盾となり矛となりましょう』
図ったかのように全員が一斉に立ち上がり、自分のマスターの前に歩み寄った。
「初めまして!私はセイバー。真名は後で改めて名乗るけど、ひとまずよろしくね!マスター!」
「うん、初めまして。どうか、私に力を貸して、セイバー」
金髪の女性――――セイバーは高町なのはの許へ。
「お初にお目にかかります。我がクラスはランサー。我が一族の名に懸けて、御身に勝利を捧げましょう」
「えっと、よろしくお願いします!ランサーさん!」
緑髪の女性――――ランサーはエリオ・モンディアルの許へ。
「……俺はアーチャー。我が名に懸けて、君を守り抜く事を此処に誓うよ。どうかよろしく頼む」
「……ええ。あなたが力を貸してくれるなら、きっと百人力だと思うわ。よろしくね、アーチャー」
オレンジ髪の青年――――アーチャーはティアナ・ランスターの許へ。
「僕はライダー!こっちは相棒のヴァーズ!よろしく、マスター!」
「私はスバル!よろしくね、ライダー!」
赤髪の青年と小龍――――ライダーはスバル・ナカジマの許へ。
「わた……僕はアサシン。マスターのために、粉骨砕身の精神で挑ませてもらうよ」
「そう言ってくれるのはありがたいけど……自分の身も大事にしてね?」
黒髪の女性――――アサシンはフェイト・T・ハラオウンの許へ。
「俺はアヴェンジャー。あまり俺に近付きすぎないようにしろよ、マスター。怪我をしても知らないからな」
「え、えっと……よろしくお願いします!」
灰髪の青年――――アヴェンジャーはキャロ・ル・ルシエの許へ。
その光景を見ていたソロモンは自然と頬を緩めた。万雷の喝采を挙げたいと思うほどには素晴らしいと思っていた。実に楽しげなソロモンの姿に、彼の上機嫌具合を知ったソロモンは無粋と知りながらも尋ねた。ソロモンもそう思っているであろう事を知りつつ答えた。
「上機嫌ですね、殿下。何か面白い物でもありましたか?」
「――――ああ。実に、実に面白かった。古今東西、いやあれは未来の者もいたかな?ともかく、実に美しいと言わざるを得ない。あれは俺には呼び出す事などできまい」
ソロモンは理解していた。今回の黒幕の正体を知っているからこそ、自分や関係者が召喚する英霊は敵対するだろう事を。だからこそ、その力を他に託す事にした。その美しき光景は自分には出す事ができないと理解していたからこそ、彼は他に投げたのだ。
無論、ジェイルに語った言葉に嘘はない。機動六課という組織を生かすために、そして友人であるスバルやティアナが争いの間で死なないようにするという名目は確かにある。だが、それ以上に彼は見たいと思ったのだ。過去・現在・未来の英雄たちが未来のために手を取り合う姿を。
「ジェイル、これで総ての舞台は整った。さぁ、特異点攻略へと赴こうじゃないか」
そう言ったソロモンたちの眼前にある巨大なモニターには、それぞれの特異世界の情報が記載されていた。それぞれに暫定的な名前が付けられ、画面に表示されていた。順番は特殊な磁場が発生した順番となっている。
『第一特異世界 “救世の乙女”終滅世界大戦アルフォッグ』
『第二特異世界 “絶雷の帝王”進化革命帝国フォンジーズ』
『第三特異世界 “絶海の支配者”閉鎖隔絶海域ヴォルニエフ』
『第四特異世界 “叛逆の獅子”絶対夢霧王国ニーレイム』
『第五特異世界 “非情なる医王”邪龍討伐戦線アルス・パトロフィーニ』
『第六特異世界 “中道の■士”審判超越世界ベルグチーク』
『第七特異世界 “■■■■■”夢想侵略戦争ホープノーツ』
「壮観だな。そうは思わないか?ジェイル」
「あしらえたかのような数ですから、そう思われるのも無理らしからぬ事かと」
「……まぁ、それはそうだろうがな。どちらにしても、俺たちのするべき事は変わらない。そうだろう?」
「御身の望むがままに」
まるで劇に登場する執事の如く、ジェイルは頭を下げた。そんなジェイルの行動を鼻で笑いつつ、ソロモンは特異世界への侵攻を命じた。その命を受け、ソロモンの乗る船――――次元航行船『ノア』の乗組員が急いで動き始める。
「懐かしき生存競争の始まりだ――――一勝負といこうか、管理局よ」
~ソロモンと作者のQ&Aコーナー~
「はい、そんな訳で両者ともに物語を動かすためのピースがひとまず揃いました!やっと進められるよ……シュトレンベルグです」
「懐かしき闘争の始まりだな。まぁ、語られるかどうかは皆目分からんが。ソロモンだ」
シュ「まぁ、できる限りはやっていこうかな?戦闘より会話メインになるかもしれないけど」
ソ「致し方ないか。それでは質問に移っていくか。最初の質問は……これか」
Q.ソロモンって女性の好みとかあるの?ソロモンの普段を見てると女性の好みが存在するのか気になった。
シュ「ああ、やっぱり来たね。で、実際どうなの?」
ソ「女性の好みか……俺の意見に従わない奴とかは好きだな」
シュ「反抗的、って事?」
ソ「そういう意味じゃない。ただ、イエスマンに興味はないという意味だ。他にも面白い奴は好きだな。前回出てきたシバの女王とかな」
シュ「多分、この質問は性癖の話をしてるんだと思うけど……」
ソ「なんだ、フェチズムの話か。と言われてもな……身体つきに関しては一切気にした事がない。天剣やら女帝は鍛えているから身体つきは良い。あそこまでとは言わないが、多少は鍛えてあって肉付きが良い方が抱き甲斐はある。……これで良いか?」
シュ「うん、もう、なんていうか……それで良いんじゃない?じゃあ、次の質問」
Q.ソロモンに聞きたいんですが、高町一家やその他諸々に年齢詐称に近いレベルの若さを異能、魔法使わずに保ってる人達に何か疑問とか湧き上がったりしない?
ソ「……何かおかしいか?」
シュ「うん、まぁ、普通は40代半ばまでいって、あんなに若々しい訳ないからね?」
ソ「異能や魔法など使わずともそういう輩はいるさ。俺が見た中では生涯、子供の姿のままでいた輩もいた。それに比べればどうという事もないさ」
シュ「えぇ……それってどうなの?まぁ、良いや。じゃあ、次の質問」
Q.ソロモンがGOD時空に飛んだら闇の欠片は反応するの?過去に出会って人達の女帝やら天剣やらとかが出たら、ソロモンと相対してすぐに膝を折るのが想像出来たのだけど。
シュ「これは……場合によるんじゃない?」
ソ「そうだな。俺がいた時空なら反応するだろうが、別次元では反応しないだろう。まぁ、俺がいない世界では天剣も女帝も名を馳せていないのだから、出現するかどうかも曖昧だがな」
シュ「闇の書の欠片はどうなるだろ?」
ソ「それは魔力の塊なのだろう?俺の魔力に触れなどすれば、消滅するのが関の山だろう。俺から関連した人間を召喚するのはほぼ不可能と言って良いな」
シュ「そんなもんなんだ」
ソ「そんなものだ。さて、質問は以上だな?岬サナ殿よ、いつも質問を送ってくれて感謝している。こやつとしては良いモチベーション維持に繋がっているそうだからな」
シュ「本当にいつもありがとうございます。他の皆様も気になる事があれば質問をどしどし送ってくださいね!待ってますから!それではこの辺で。さようなら~!」
~ソロモンと作者退室~
「それでは最近レギュラーとなりつつあるな。ディアーチェだ」
「呼んでくれてありがとう!レヴィだよ」
「いつもありがとうございます。シュテルです」
「こんにちは!ユーリです」
ディ「最近気温が一気に変わりつつある。こういう時は風邪をひいてしまう可能性が高い。体調には気を付けるのだぞ」
シュ「作者は最近innocentが終わったと知り、驚いていたそうですが皆様は楽しめたでしょうか?楽しめたなら幸いです」
レ「それじゃあ、興の質問へ行ってみようー!」
ユ「お、おー!」
Q.女帝一家の血筋が十代まで続いてたけど、シュテル達って結婚したの?ソロモンの忠誠心の高さから他の人と結婚してるイメージが沸かない。
ディ「本当にこういう質問が好きなのだな。……まぁ、結婚はしている。政略結婚に近い物だったがな」
シュ「私はしなくても良かったのですが……殿下が作った物を守るためなら仕方がありません。そうでなくとも、血は残す必要がありますから」
レ「愛していたかどうか、ってなると微妙だけどね。言い方は悪いけど種馬みたいな物だったしね」
ディ「まぁ、総じて愛はなかったな。子供は教育の必要もあるし接してはいたが……それも愛ゆえとは言い難いしな」
シュ「しかし、間違っていたとは言えません。私たちの行動が今の殿下をお助けしている訳ですから」
ディ「それもそうだな……他に質問は無いか。それではこれにて失礼させてもらうか。最早諦めているが、あまりこういう質問ばかりしないようにな」
レ「僕は困らないけど、あんまり長続きしちゃうと……ね?」
シュ「私たちも元は英雄の一種。ひょっとすれば、私たちの英霊が現れるかもしれませんね?その時は……気を付けてくださいね?」
ユ「えっと、質問お待ちしてます!」