魔法少女リリカルなのは~魔王の再臨~   作:シュトレンベルク

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指輪回収・3

「ふむ……なるほど。それではソロモン君、で良いかな?この星の自然は回復している筈なのに、環境に変化がないのは君の言う星の魔力が消費されているからなんだね?」

 

「その通り。俺の思っている以上に博識な方でよかった。普通はこんな話は与太話と言って斬り捨てるからな。ジェイルを始めとした選定者や選ばれた王ぐらいにしか分からない話だからな」

 

「まぁ、彼も割とはっちゃけた人間だけど、科学者としては有能だから。かの大賢者ソロモン王の知識を疑うほど、博識であるとは思っていないからね」

 

 グランツ研究所を訪れたソロモンたちはまず、アミタとキリエの父親であるグランツ・フローリアン博士と面会していた。そこでソロモンの事を知っていたグランツと話が盛り上がり、現在まだ病気が治ったばかりだというのにグランツは興奮していた。

 

「父さん、ちょっと落ち着いて下さい。まだ病気が治ったばかりなんですから……」

 

「そうは言ってもね、アミタ。この世総ての智慧を得た大賢者ソロモン王と対話する事ができるなんて、智慧を求める者としては夢みたいな事なんだよ」

 

「昔の俺ならいざ知らず、今の俺には総ての智慧を得るとまではいかないだろうな。今の俺にそれほどの力はない」

 

「そうなの?」

 

「『総ての智慧を得た者』は俺が指輪を持っていた時の称号だからな。世界を見つめる千里眼を持とうとも、総てを知るには程遠い。まぁ、今の俺にはそんな物は必要ないんだがな」

 

「なんと勿体ない……」

 

「選定者に選ばれた王としては失格なんだろう。しかし、ただの人間に『全知』の力など不要でしかない。人は己の手元にあるモノさえ把握していれば十二分だ。それ以上を望めば、その果てには滅びしか待っていないのだからな」

 

「……そうかもしれないですね。ともかく、こうしてあなたと出会えて光栄だ。この星を救うために尽力してくださると言うのなら是非もない。狭い所ではありますが、利用してください」

 

「礼を言おう、グランツ殿。必ずや俺の指輪を回収し、この世界を救うための一助となる事を約束しよう」

 

「……礼を言うべきはこちらの方です。たとえ、あなたの形見がエルトリア崩壊の一助を担っているのだとしても。あなたにはそんな物を無視する選択肢もあった。けれど、こうして助けとなってくれるのであれば礼を言うべきは私なのです。ありがとうございます」

 

 グランツはまだ苦しいだろうにベッドから起き上がり、ソロモンに頭を下げた。それに対して、ソロモンは微妙な表情を浮かべていた。今回の一件を終幕させ、エルトリア復興に対する一助となる事は当然の事だからだ。指輪が外部に流出していた事はソロモンの予想外だった。けれど、それはソロモンがこの星の現状を無視していい理由にはならない。

 そうでなくとも、かつてとはいえ自分の従者が世話になっている家だ。ならば、尽力とはいかずとも、一助になる事は当たり前な事でしかない。態々礼を言われるような事ではない。それに、自分たちだけでもこの星を救いたいと願う者たちを見捨てるほど非道になった覚えはない。王ではなく、ただの一個人として、ソロモンは彼らを助けたいと願ったのだから。

 

 自分という存在がどれほど力になれるかは分からずとも。せめて、こうして頑張る家族に頑張っていて良かったと思えるような、そんな光景を見せたい。ソロモンはそう願ったのだ。そして願った以上、その為に力を尽くす。それがソロモンなりの流儀という物だ。

 たとえ、いつかは死にゆく命だったとしても、その過程には救いがあるべきだ。誰しもがこの星を見捨てていく中で、それでもこの星を救いたいと願って努力し続けてきたこの家族に。その過程で苦しんだであろうこの家族に。少しでも良いから、その努力が報われたと思える瞬間を与えたい。ソロモンはそう想ったのだ。

 

「王様!お久しぶりです!」

 

「久しぶりだな、ユーリ。お前は数百年は経っていると言うのに全然成長していないな」

 

「え、ユーリはプログラム体だから成長しないんじゃないの?」

 

「……?何を言ってるんだ?ユーリは人間のように成長するし、順調に歳を重ねれば死ぬ。そうでなければ紫天の守護者など付ける訳がないだろう」

 

「えぇっ!?」

 

「そういえば、ディアーチェ。お前らも何故子供の姿をしているんだ?魔力が足りていないのか?」

 

「えっと、どういう事なんですか?私たちには呑み込めてないんですけど……」

 

「ユーリは俺に仕えていた四人の魔導騎士の一人、光華の破壊女帝(ブレイカー)アナスタシア・エーベルヴァインの娘だ。だが、生来生命力が弱くてな。最早死産と言っても差し支えないほどに産まれた時に生命力がなかった。しかし、アナスタシアが俺に懇願したのだ。どうか、エグザミアをユーリに移植してほしい、とな」

 

「それは……」

 

「エグザミアは永遠結晶。朽ちず壊れず滅びない。その特性は生命力を操作する事。どれだけ微弱であろうとも、生命力があるのであればそれを活性して生きることは可能だ。アナスタシアはそれを使って、ユーリを生かそうとした。……その為には、俺に許しを乞い、叶えられても謗りを受けねばならないと知りながらな」

 

「どうして、なんですか?」

 

「エグザミアは元々禁忌兵器に使用されていた物だからだ。周囲に存在する総ての生物から生命力を奪いとり、果てには星すら食い潰す禁忌兵器にな。俺はエグザミアをその禁忌兵器から抉り出し、厳重に封印した。その危険性を理解していたからだ」

 

 一歩間違えれば一つの星を食い潰すほどの兵器、その源たる永遠結晶。それを用いたいと告げたアナスタシアに対するバッシングは途方もない物だった。当然だ。いくつもの世界を滅ぼした禁忌兵器、その動力源たる永遠結晶を自分の娘を救うために使用したい、と言ったのだ。到底許されるような物ではないだろう。

 

「自らの首を捧げる覚悟すらある、という表情をされてはな。アナスタシアの事が惜しかった訳ではない。自分の娘のために、ソロモン王という当時最強の王を相手にする覚悟を持っていた。それを見て、ユーリに永遠結晶を移植する事を許可した。まぁ、その代わりユーリが永遠結晶を操作できるようになるまで、俺が養育したがな」

 

「え?そうなんですか?」

 

「当然だ。魔力と生命力は同等の代物だ。いつ永遠結晶を暴走させるか分からない幼児など危険すぎる。他人に世話を任せる訳にはいかない。ユーリが永遠結晶をきちんと制御できるようになるまで、俺が面倒を見なければいけないのは寧ろ当然という物だ。ちょうど王位を譲ろうかと考えていたし、ちょうど良かったと言えばちょうど良かったがな」

 

「そうだったんですね……知りませんでした」

 

「お前には知らせていなかったからな。俺が庇護する必要もない段階まで来たが、ユーリに防衛戦力を付けない訳にはいかなかった。そこで開発されたのが紫天の書だ。夜天の魔導書をベースにして、他の魔導騎士を守護者として配置した。普通に生きて、普通に死なせるためにな」

 

「あの、ソロモンさん?ユーリは……」

 

「分かっている」

 

 ソロモンは言いにくそうにしているキリエを見ながら、膝の上に座っているユーリの頭を拳でぐりぐりと抑えつけた。ちょうど中指の第二関節で頭を抑えつけられているため、ユーリは悲鳴を上げた。ソロモンにいじめられているユーリの悲鳴に、ディアーチェは慌て始めた。

 

「ユーリ~……お前、長く寝てたからって永遠結晶の制御方法を忘れてんじゃねぇぞ。ん?俺が教えてやった方法は無駄だったってか?どうなんだ?」

 

「痛い痛い!痛いです、王様!」

 

「痛いじゃねぇよ。反省してんのか?俺は教えた筈だよな?お前の力は一歩間違えれば、世界を滅ぼす力だと。だから、お前はその力を制御できるようにしなければならないと。それを忘れて暴走するとは何事だ?」

 

「ごめんなさい~!許してください、王様!」

 

「まったく……ディアーチェ、紫天の書を貸せ」

 

「はっ、かしこまりました。どうぞ」

 

 ディアーチェから紫天の書を受け取ると、ソロモンは適当なページを開いた。そして右手を叩きつけた。それと同時にソロモンの身体から魔力が紫天の書に注がれた。先ほどの太陽ほどではなくとも、膨大な魔力量だった。それこそ、ディアーチェとシュテルとレヴィの魔力を集めても足りないほどには多かった。

 少しの間魔力を注ぎ込むと、ソロモンは紫天の書をディアーチェに返した。その頃には紫天の魔導書は魔導書という言葉が相応しい程の魔力を注ぎ込まれていた。そう、ソロモンは紫天の書が耐えきれる限界まで魔力を与えた。本来、誰かが保有する事で本領を発揮する魔導書にマスターが必要なくなるほどの魔力を注ぎ込んだのだ。

 

 それによって、省エネモードと言っても良かったディアーチェたちが本来の力を発揮できる(・・・・・・・・・)余裕が生まれた(・・・・・・・)。ディアーチェたちの身体に魔力が迸り、光に包まれながら余剰の魔力が稲光として奔った。それは紫天の守護者が本来あるべき姿へと立ち返るという事。彼女らが本領を発揮できる姿への回帰を意味していた。

 ユーリの守護を任じられた初代魔導騎士のプログラム体。しかし、マスター無き状態では本来の実力を発揮することは不可能だ。魔導書に搭載されている自然からの魔力収集機能では、省エネモードで使える魔力の補填ぐらいしか出来ない。本来の実力とは程遠い、子供時代であればこんな物か程度の実力しか発揮できないのだ。

 

 魔導の王たるソロモン王が選んだ四人の魔導騎士。その実力は決して生半な物ではない。彼女らの実力がどれほどの物であったか、ソロモンは知っている。だからこそ、彼女らを選んだのだ。世界を滅ぼすかもしれない永遠結晶の保持者の守護と、場合によっては保持者の排除をさせるために。

 

「さて、肉体の調子はどうだ?お前たちの身体能力が最も高かった時に設定できた筈だが」

 

「万事問題なく。今すぐにでもあの騎士王を殺しに行っても良い程には快調です」

 

「だよね~。流石はソロモン様!さっきの状態じゃ不安があったけど、今はそんなの欠片もないもん」

 

「当たり前な事を抜かすな。我らが至上の王と仰いだ御方だぞ。この程度、寧ろ朝飯前と言ったところだろう」

 

 光が晴れると、先程まで子供の姿をしていた三人はどこにもおらず。大人に成長していた三人がそこにはいた。ソロモンの加護を受け、天剣保持者たちに匹敵或いは凌駕するほどの実力を持っていた頃まで肉体は成長していた。元となった少女たちの情報はそのまま利用し、肉体は完全な状態に成長していた。

 

「凄い……」

 

 これがソロモン王の誇った魔導騎士。女帝の名を賜り、魔王の近衛としての地位を与えられた存在。世界の王たるソロモンから信頼されていた騎士。アミタとキリエは戦わずとも理解していた。自分ではどれだけ努力しても届かない地平に、彼女らは立っているのだという事を。

 

「それなりにはなったか。神器を持たずとも、その状態ならそれなりに戦えるだろう」

 

「神器?そんな物があるのかい?」

 

「ああ。天剣保持者たちが天剣を持っていたように、魔導騎士たちは神器を持っていた。まぁ、神の器と呼ぶには少々脆すぎるがな」

 

「いえ、それはソロモン様だけです。普通の人間であればどれだけ魔力を注いだとしても、罅の一つも入れることは出来ませんから」

 

「えっと……何の話?」

 

「その昔、ソロモン王は神器の耐久力が気になったのです。神器は天剣と同じく、折れず曲がらず朽ちず欠けず滅びないと称されるほどの強度を持っていました。事実、まともな武器では天剣も神器も衝突した瞬間に壊れてしまいます。それほどの絶対的な強度を持っていたのです。

 そこでソロモン王は神器に限界があるかどうかが気になったのです。そこでソロモン王は己の持ちうる魔力を神器に注ぎ込みました。神器もしばらくは耐えました。けれど、ある一点を超えた時、空間が軋み始めるのと同時に神器に罅が入り始めたのです」

 

「あれ以上は無駄だと思ったから、そこで止めたがね。あのまま続けていれば……いや、別に良いだろう。それよりも、今は状態の確認を急げ。明後日には騎士王討伐及び指輪の回収を行う」

 

『ハッ、かしこまりました!』

 

 ソロモンの言葉に三人は胸元に手を当てた。それを確認すると、膝の上で不安そうにしていたユーリを抱き上げた。そして外に出ると、ユーリを上に投げ飛ばして遊び始めた。それはユーリが幼少の頃、ソロモンがユーリにしてあげていた遊びだった。魔力を使って軌道を弄るという無駄な高等技術も使っていた。

 それから暫くの間、身体を休めたソロモンは誰もが寝静まった深夜に研究所を出た。ソロモンにこの家族を巻き込む気が欠片もなかったからだ。紫天の書に魔力を注ぎ込んだのは、紫天の守護者と呼ぶにはあまりにもディアーチェたちの力がお粗末な物だったからだ。あんな状態ではいざという時にユーリを守りきれないと判断したのだ。

 

「殿下」

 

「おや、まだ起きていたのか。夜更かしは身体に悪いぞ」

 

「知っております。しかし、私は殿下の監視役兼警備役です。殿下が一人で参ろうと言うのに、それをみすみす放置することは出来ません」

 

「勝手なことを……」

 

「勝手ではございます。けれど、それが私に課せられた役割でございますので。殿下が自由になさると言うのなら、我々も自由にさせていただくだけです」

 

「……なるほど。確かに、それは道理だな。好きにせよ。もとより貴様の行動を制限する資格など、俺にはないのだからな。そしてそれは、お前たちも同様だ」

 

 ソロモンが研究所の方を振り向くと、そこには既に装備を整えているディアーチェたちがいた。三人ともこの事態を認識していたからなのか、特に何とも思ってはいなかった。強いて言うなら、自分たちは頼りにならないのかと思っていたぐらいだ。ソロモンの意向に抗う気はないが、頼りにされないのはそれはそれで嫌だった。

 

「相手は騎士王。我が同盟者だった存在だ。女神だった頃ほどではないが、あいつも十分人から離れている。そんな存在との戦いにお前たちが参戦する必要はない。お前たちが守るべきは俺ではないからだ。お前たちが守るべきは俺ではなく、ユーリだ。その事を忘れるな」

 

「もちろん、言われるまでもない事です。しかし、相手はこの星を滅ぼそうとする者。ならば、いずれ退治せねばならないのは必然。であれば、今という絶好の好機を逃す事は愚かなことでしょう?」

 

「俺すら利用しという訳か。良い。実に良いな。その在り様は俺にとっても望むべき物だ。ならば行くか。紫天の守護者よ。化け物退治だ」

 

 ソロモンは転移魔法を使い、見つけた歪みの中心へと向かった。神話に登場する英雄のように、彼らは世界を救う戦いへ赴いた。彼らの姿が欠片も残さず消え去った時、その者がちょうど目を覚ました事を誰も気付く事はなく事態は動き始めた。

 ソロモンが転移してくるのと同時、騎士王は目を覚ました。もはや睡眠も食事も必要なくなった彼女だが、それでも休むという事は重要だと認識していた。しかし、敵が来たというのなら話は別。主の最大戦力として戦場に赴く必要がある。

 

『アーサー、敵が来たの?』

 

「はい。我が同盟者であり、主の持つ指輪の本来の主であるソロモン王がこちらに向かっているようです。いかがいたしましょう?」

 

『追い返す、しかないでしょう?この指輪を渡す訳にはいかない。私は必ず……』

 

「……かしこまりました。では、命令(オーダー)を。我が主」

 

『撃退なさい、アーサー。私の願いを阻む総てを、その槍を持って貫きなさい』

 

「了解いたしました、マスター。しかし……」

 

『……何かしら?』

 

 

「別に殺してしまっても良いのでしょう?」

 

 

『……ええ、構わないわ。あなたの力を、私に見せてちょうだい』

 

「――――御意に。我が力、我が槍、我が運命、私の総てはあなたと共にあるのだから」

 

 そして騎士王――――否、嵐の王は戦場へ向かう。その総ては己が槍を揮うと決めた主のために。たとえ、相手が自分と同じ選定者に選ばれた者であろうとも、その力が主を傷つけるものであるのならば抗わなければならない。我が暴虐を持って、敵の総てを薙ぎ払わんと決めたあの時からそう決まったのだ。

 

「頼むぞ、ドゥン・スタリオン」

 

 自身の愛馬に乗り込み、嵐の王は敵を待つ。己の生涯の中で、最も強かった相手であり同時に己が唯一敗れ去った相手である魔導の王。互いに相手の事を尊重し、真実同格だと思うことのできた相手。己の全力を持ってぶつからなければ、きっと勝てないだろう。

 

「……来ましたか、ソロモン王」

 

「ああ、来たともさ騎士王。いや、その呼び方も今は正しくないのだろう。お前を信じ支える部下も、お前が救い導く民草たちとも最早いないのだから。それは俺も同じ事だがな」

 

「そうですね。思えば遠くに来たものです……そうは思いませんか?ソーン(・・・)

 

「そうだな。懐かしきベルカの地は既に遠く、我々はこうしてまた相争う事となった。再会を喜べばよいのか、それともこうして争う事を悲しめば良いのか……どちらだと思う?アルトリア(・・・・・)

 

 最早知っている者も少ないであろう互いの真名で呼び合う二人。ソーンの生涯において、その名前を知っているのは同格である同盟者と妻だけ。アルトリアにしても家族と選定者ぐらいのものだろう。どうであるにせよ、その名前の意味を知る者はほぼいない。ディアーチェたちはその意味を予想してはいるが。

 だからこそ、その意味を知っているアルトリアが羨ましく憎い。何故なら、その名前を知っているという事はソロモンに心から信頼されている証だからだ。ソロモンは人を信用する事はあっても、信頼の領域にまで至る事は滅多にない。それはディアーチェたちに真名を明かしていない事からも明らかだ。だからこそ、真名を預けられているアルトリアが羨ましく同時に憎くてたまらないのだ。

 

「さて、私としても答えには迷うところですね。それで、ソーン。こうして雑談しに来たのですか?それならば、幾らでも応じますが」

 

「ハッハッハ、そんな訳ないだろう?俺は俺の指輪を取り戻すためにこの星を訪れた。目的の物がすぐ近くにあるというのに、それをみすみす放置する訳にはいかん。お前とて分かっているだろう。アレ(・・)が人の器には余るものだという事ぐらい、な」

 

「確かにそれはそうなのでしょう。しかし、私の役割はこの場所を守る事です。私はあなたを通す訳にはいかないのです。もし通りたいと言うのなら――――」

 

 アルトリアは空中から鎗を取り出して構えた。それは明確な敵対宣言であり、ソーンを除いた全員が武器を構えた。ソーンはただじっとアルトリアを見つめていた。アルトリアもまた戦闘態勢を取らないソーンを見つめながら、暴風を発生させる。砂を巻き込む暴風はソーンの頬を撫で、ソーンの頬からは血が流れた。

 

「――――私を斃していきなさい。かつて、私を討ち取った時のように、私を殺してみせなさい」

 

「……良いだろう。それがお前の選択だというのなら。俺がお前を殺してやる――――武装形態」

 

 ソーンはその言葉と共に、ゆったりとしたフードに身を包んだ戦闘向きとは思えない戦闘装束を身に着けた。これはソーンの魔導に対する絶対の自信、そしてそもそも近寄らせる気すらないという意志の表れだった。事実、古代ベルカ時代において、この戦闘装束を身に着けたソーンは負けた事がない。

 アルトリアは戦意を露わにする。当然だ。ソーンはかつて女神へと至ったアルトリアを殺してみせた相手だ。決して侮って良い相手ではないし、そんな事をしている余裕もない。選定者に選ばれた王が相対すれば、そこにはどちらかは必ず死ぬ。世界に選ばれるとはそういう事なのだから――――

 

「さぁ、始めよう。俺たちの戦争を、再び」

 

「ええ、そうしましょう。この因縁に今度こそ決着を」

 

 魔導の王と嵐の王はこうして激突した。世界の総てを変革させ、救世する王たちは再びぶつかり合うのだった。




ディアーチェたちの姿はinnocentの大人モード的な奴をイメージしてください。
ソロモンの戦闘装束はfgoのソロモンイメージで大丈夫です。
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