2017/12/10 投稿
「なんでここにいやがる。カスデクゥ!」
「か、かっちゃんがいるなんて……不運だ」
怒鳴る爆豪に頭を抱える出久。
ここは雄英高校の敷地内にある戦闘訓練場の一つ。
今日がヒーロー科1年A組初のヒーロー基礎学の実技訓練なのだが、いざ現場に来てみればヒーロー科ではない出久がそこにいたというわけである。
「理由は、僕も実習に参加するからだよ。テスター専攻だからサポートアイテムのテストもするんだ」
「はぁ!? ヒーロー科と関係ないところでやれや!」
「僕に言わないでよ。ああもう、かっちゃんがいるとか不運すぎる」
「ンだとコラ! ブッ殺す!!」
キレる爆豪を切島が慌てて引き離し、沈静化を図る。
このままでは話が進まない。
「はじめましてだな。A組ヒーロー科の飯田天哉だ。よろしく」
「あ、H組サポート科でテスター専攻の緑谷出久です。よろしく、飯田くん」
「私、麗日お茶子です。よろしくねー」
飯田を皮切りに自己紹介をしていく面々。一通り終えたところで飯田が代表して皆が気になっていることを尋ねた。
「緑谷くん、勉強不足で申し訳ないのだが、サポート科のテスター専攻とは聞いたことがないのだが詳しく教えてくれないか?」
「ハハハ、それは知らなくて当然だよ。今年から新設されたコースだし、在籍も僕だけだからね」
「む、そうだったのか。それで、いったいどんなことを?」
「サポートアイテムの開発者と現場の橋渡しをする人材の育成だよ。ほかのサポート科みたいにアイテム制作の勉強をしながら今日みたいにヒーロー科に混じってアイテムの実際の使われ方やヒーロー活動の実態を学ぶってかんじだよ」
出久の説明にほかのメンバーは分かったような分からないような。
まぁ、開発者たちの変人度を知らないと何を言っているのか分からないだろう。
むしろ、反応したのは別のところ。
生徒が作ったアイテムだけでなく、企業が作ったアイテムの試作品もテスターとして送られてくるという部分だ。
ヒーロー科としても、将来自分が使うかもしれないアイテムは気になるのだ。
「へぇ、たとえばどんなのがあるんだ? パワードスーツとかあったりして」
「パワードスーツ? あるよ?」
「あるのかよ!?」
冗談交じりに効いた瀬呂だったが、実際にあると言われると驚くしかない。
実例を見せるべく、愛用のタブレットを使って紹介を始める。
『黄金騎士スーツ』〝ガルム重工”製や、『ステルススーツmk II』〝Xー13研究施設”製などを紹介していくと、A組の皆も楽しそうに声をあげた。
いつの時代も強化スーツやパワードスーツはロマンがあるのだ。
まぁ、『自力で脱げなくなり暴走します』だとか、『ちなみに薬物投与は戦闘時にピンチに陥った時大量に使いますので薬物中毒にご注(この先は掠れて見えない』とかの怪しい部分は意図的に隠しておいたのだけど。
世の中知らない方が良いこともあるよネ?
「あー、キミたち、そろそろ始めるから雑談はやめなさい」
盛り上がっているところへ、オールマイトから注意が入って整列する皆。
出久もタブレットの電源をオフにする。シャットダウン時に映る『I'll be back……』とサムズアップして沈んでいく機械の腕の映像を確認して出久も列に並ぶ。
戦闘訓練は二人一組での屋内戦闘だった。
パートナーは麗日お茶子。対戦相手は飯田天哉……そして、爆豪勝己!
体中に装備をつけてはいるものの、初回ということもあって比較的軽装備である。いま一番重たいのは背負っている盾形の光子力バリア発生装置くらいだ。
新型のテイザーガンをチェックする出久にパートナーの麗日が声をかけてきた。
「緑谷くん、準備中に悪いんだけどそろそろ作戦会議しよ?」
「あ、うん、ごめんね。待たせちゃって。で、作戦だけど……」
意見を交わす二人。主に話をするのは建物への潜入方法について。
出久のアイテムと麗日の個性で屋上から潜入する案やあえて正面突破などいくつか案が出たが、麗日の負担や戦力の分散の愚を考えた結果、窓からの潜入となった。
潜入方法を決めたところで時間も無くなり、作戦会議は終了。あとは出たとこ勝負である。
「潜入成功。……クリア!」
「うん! なんか緑谷くん、慣れてるね」
「アハハ、まあ、過去にいろいろと、ね?」
テイザーガンを構えながら安全を確保する姿はなかなか形になっており、感心する麗日に出久は複雑な表情を浮かべた。
不運に巻き込まれて
屋内を進む二人。途中、曲がり角に近づいたところで嫌な予感を感じて飛びのく出久。
次の瞬間に爆豪が飛び出してきて、爆破攻撃を仕掛けてきた。
「クッ、麗日さん、大丈夫!?」
「うん! ありがと」
「デクこら、避けてんじゃねぇよ」
麗日を助け起こしつつ、体勢を整えた出久は思わず舌打ちをしそうになる。
手に持っていたテイザーガンから火花が飛び散り、見るからに破損してしまっている。
『モロい!? あとでレポートに〝耐久性に難あり”ってしておかないと。でも、キツいぞ、これ』
いきなりメインウェポンを失うという不運。だが、この程度のことはいつものことだ。すぐさま気持ちを切り替える。
テイザーガンを投げ捨て、新型の特殊警棒を手に取る。
伸縮式の警棒は一瞬で使いやすい長さとなり、爆豪へとその先端を向ける。
「麗日さん、先に行って。かっちゃんは僕が相手をする!」
「ハッ! 上等だ。中断されねぇ程度にブッ飛ばしたらぁ!!」
右手で大振りな攻撃を仕掛けてくる爆豪だが、それより早く出久が動く。
左手首からフックブレードを伸ばし、相手のコスチュームに引っかけて前のめりに体勢を崩し、そのままその背中の上を転がるように勢いをつけて投げ飛ばした。
防御や高所への移動の補助のためのフックを活用した使い方。
多くのアイテムを使って鉄火場を潜り抜けてきたのは伊達ではないのだ。
「ムカツクなぁ……そうやって無個性よりも雑魚のマイナス個性のくせにちょろちょろと目障りで……ムカツクなあ!!」
立ち上がりながら怒りを顕わにする爆豪に出久はビビりながらも真正面から対峙する。
再度ぶつかる爆豪と出久。
爆豪の蹴りを警棒で受けながし、左手のフックブレードで反撃。しかし、爆破の空中移動で避けられ、追撃の爆破をなんとか飛びのく。
短い時間で多くの攻防を交わす姿にモニター越しの同級生たちは歓声を上げるが、当の本人は冷や汗が止まらない。
「熱ッ!」
金属製の警棒に爆破の熱が伝わり、たまらず取り落してしまう。
『ああもう! 持ち手まで金属だとこうなるよ! 武器なしでかっちゃんとやれっての!?』
なんとか互角のように戦っているが、かなりいっぱいいっぱいだったりする出久。
不利な状況になった時の常套手段といえばこれだ!
「戦略的、撤退!」
「何ィ!? クソが! なんだこの煙」
忍者よろしく煙玉を投げつけて逃亡する出久。
ある意味逃げ癖がついているわけだが、たいてい逃げ切れなかったりするのだけれど……学習能力がないとは言ってはいけない。
そうして逃げ出した出久は、物陰に隠れて反撃の算段を立てはじめる。
メインの武器を二つ失ってしまっている状態では、正面突破は難しい。何か策を考えなければ。
『さて、どうする? いや、まずは状況を知ることから始めないと。そういえば、偵察機のアイテムがあったはず』
情報収集を第一に考え、『シェンフェールド』という携帯端末を取り出し、丸い小型の偵察機を飛ばす出久。
カメラを起動させて一番に映りこんだのは爆豪のドアップの顔であった。
「見ィつけたァ!!」
「ギャアアア!?」
画面越しのあまりの迫力に悲鳴を上げる出久。そして爆破によって偵察機はあえなく撃ち落とされてしまった。
「な、なんでここが!?」
「物陰からンなもんが飛び出て来たら誰だって見に行くわ! このアホが!」
不運にも偵察機が飛び立つところを見られており、一発で場所がばれてしまったのだ。うーん、アンラッキー。
けっして出久もわざとやっているわけではないのだが、爆豪からしたらなめているとしか思えない。
「そぉかよ。てめえ、俺を舐めてるんだな?」
「そ、そんなことないよ!」
めっちゃ警戒して戦ってるよ! と、出久が主張するも聞き入れられるわけも無し。
怒りに震えながら右腕の籠手のギミックを操作する爆豪。
「俺の要望通りなら、こいつを使えばてめぇのフザけた考えもできなくなる」
『爆豪少年、ストップだ! 殺す気か!?』
危険を感じ、制止するオールマイトの言葉を無視し、爆豪はトリガーに手をかける。
「当たんなきゃ死なねえよ!」
安全ピンを引き抜き、最大火力を放つ。
一方、出久はヤバい雰囲気を感じ取り後ずさりしようとして……
「あっ!?」
先ほどの偵察機の残骸に足をとられ、特大爆破の射線上へ。
転んで倒れる最中、爆豪と視線が合う。
『な、何しとんじゃ、てめぇはー!?』
『や、やっちゃったー!?』
最大火力、直撃。後には何も残っていない……
『み、緑谷が死んだー!?』
『この人でなしー!!』
クラスメイトの声は届いていないが、人の命を奪ってしまったと、青ざめる爆豪。
残念。緑谷出久の物語はここで終わってしまった!
不幸個性さん「ふー、たくさん働きましたー!」
明日に続く。
あ、出久くんの迷い込んだヤクザの名前は死穢八なんちゃら会とかって言ったらどうする?