たとえばこんな緑谷出久   作:知ったか豆腐

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バトラー亜種です。
最初の冒頭はほとんど変わらないです。

※出久が最初から女の子です。苦手な人は注意!(今更感)

2018/03/26 投稿


いずくメイド
バトラー亜種 いずくメイド


 人は生まれながらに平等ではない。

 緑谷出久が齢4歳にして突きつけられた現実だ。

 その現実は幼い出久を打ちのめすには充分過ぎる事実であった。

 

 

 緑谷出久は“無個性”だ。

 

 世界総人口の約8割が何らかの特異体質となった超人社会において何の特殊能力もない人間。

 それが“無個性”である。

 

 この事実は“個性”を使って活躍するヒーローになることが出来ないことと同義であり、出久の夢を否定することだった。

 そんな残酷な現実を突きつけられた出久は――

 

「僕は……ヒーローになれない……」

 

 立ち直ることが出来なかった。

 心の傷は大きく、情緒不安定な毎日。

 しまいには、大好きであったオールマイトの姿を見るだけで泣き出す始末だった。

 自分がなることが出来ない理想の姿を見ることは既に苦痛ストレスとなっている。

 

 ストレスから逃れるにはその原因から離れることが一番だ。

 つまり、一番のストレス原因となっているオールマイトを目にしない環境こそ出久が必要な場所であった。

 心配した母親は夫に相談した結果、一つの決断をする。

 

「出久……お父さんの所へ行く?」

「……うん」

 

 オールマイトがいる日本を離れ、父親が単身赴任する海外へ。大きな決断だった。

 こうして緑谷家は日本を去り、海の向こうへ。

 ユーラシア大陸を挟んだ歴史ある島国。女王が治める連合王国、イギリスの地へと。

 

 

 イギリスに渡った出久であったが、慣れない環境に捨てきれないヒーローへの憧れが足かせとなり、すぐには元気になれなかった。

 彼女のことをただただ見守るしかない両親の元へある日、イギリスの友人が一つ提案を持ってきた。

 

「ヒーローと違う職業、違う世界があることを教えてあげればよいのでは?」

 

 ヒーローになれなければこの世の終わりみたいな顔をしているのなら、それ以外の可能性を教えて世界を広げてやればいい。

 そういう友人に母親は不安をこぼす。

 

「でも、いったい、どんな職業を見せればいいでしょうか? ヒーローに代わるものとなると普通の職業では……」

「ふむ。そうですな……ヒーローに負けないほど特殊なものとなれば――」

 

 友人はその職業を告げる。

 すなわちそれは、メイドである、と。

 

==================

 

 染められたかのように真っ赤なお屋敷で出久は銀髪のメイドに出迎えられた。

 緊張する出久を連れて、屋敷の主のもとへ案内する銀髪メイドの少女。

 屋敷の主は、コウモリの羽をつけた吸血鬼の姿をもつ少女であった。

 

「ぎゃおー、た〜べちゃうぞー!」

「ひぃ、ぼ、僕を食べてもいいから、ほ、他の人は襲わないで!」

「……ねぇ、咲夜。軽い悪ふざけだったのに良い子すぎて心が痛いわ」

「とりあえず、誤解は解いておいたほうがよいのでは?」

 

 少しおちゃめな主の少女を始めとして屋敷の住人に気に入られ、銀髪メイドの瀟洒な仕事ぶりを見た出久。

 その優雅な姿を見て出久は銀髪メイドへ尋ねた。

 

「どうやったらそんな風になれるの?」

「そうね。この仕事に誇りを持っているからかしら。そのためにお嬢様のために完璧な仕事を心がけるのよ」

 

 出久はメイドの基本的な心構えを知った。

 

 

 次に訪れたのはイギリスに用事で来ていた南米の富豪、ラブレス家。

 ラブレス家の一人息子、ガルシア坊ちゃんに歓迎されながら、メイドをまとめ、婦長と呼ばれるロベルタというメイドについてまわった。

 家事が苦手なロベルタのことを最初は残念に思っていた出久だったが、他のメイドにテキパキと指示を出す様子はとてもカッコよく見えた。

 なんでも一人でこなす咲夜と違い、ロベルタは人を従える能力があった。

 メイド長、婦長と同じメイドを取りまとめる立場ながら、スタンスの違いがあって面白い。

 また、運悪くガルシア坊っちゃんを狙ってやってきた賊に襲撃された際に、ロベルタが圧倒的な強さで撃退した姿にも出久はひどく感動することとなったのだ。

 

「サンタマリアの名に誓い、すべての不義に鉄槌を!」

「すごいなぁ……メイドさんって、強いんだね」

 

 メイドは強い。

 出久の中で強烈なイメージとなった。なってしまった!

 

 

 その次に見学に訪れたのは日本から渡英していた鶴屋家の別荘。

 明るいお嬢様に落ち着いた大人の雰囲気のメイドの森さんが出迎えてくれて、同じ日本人という安心感もあって楽しく過ごすことができた。

 楽しいこと大好きなお嬢様のお願いを即座に答えていく森さんに、出久の目は輝きっぱなしだった。

 一番の思い出は、鶴屋お嬢様と森さんの古武術の組手だろう。

 鶴屋家に代々伝わるという古武術の修行に付き合う森さんは、かなりの実力者だったようで、アクション映画さながらの動きを見せつけていた。

 

「弱冠17歳で鶴屋流古武術を免許皆伝しちゃう予定のためにも、今日こそは乗り越えさせてもらうさ!」

「お嬢様、あなたに敬意を示し、あえていいましょう……上を知りなさい!」

 

 特撮ヒーローようなキックを受けて「みぎゃー」と吹き飛ぶお嬢様。

 舞う土埃を払いながら現れた森さんの姿は、とても優雅だったという。

 そんな姿を『メイド=強い』という図式ができてしまっていた出久は疑問に思うどころか、むしろすごいすごいと喜ぶほどで……

 その後も「森式メイド術」というナニカを見せられ続け、出久の中でメイドの認識がすごいことになってしまっている。なってしまっているのだ!

 

 

 最後に訪れたのは学園を運営するアッシュフォード家のお屋敷へ。

 鶴屋お嬢様とは別のベクトルで楽しいこと大好きなミレイお嬢様と、他家からお預かりしているというルルーシュの若様とナナリーお嬢様に出迎えられた出久。

 なぜかメイドをしている日本人の篠崎咲世子さんにお世話になった。

 仕事をそつなくこなす姿に感心しながらも、いままで見てきたメイドさんに比べてあまり薄いインパクトに残念に思う出久。

 だが、それもルルーシュから秘密のお願いをされるまでのことだった。

 

「では、咲世子。頼んだぞ」

「はい。いってらっしゃいませ」

「え? ルルーシュさんが二人?」

 

 悪友に誘われてチェス賭博にこっそり出かけようとするルルーシュと、それをごまかすために変装していた咲世子さんの姿を見て驚く出久。

 イレギュラーに慌てるルルーシュに咲世子さんは語りかけた。

 

「メイドというのは主人の秘密を守るのも仕事なのです。だから、出久ちゃんも私のために黙っていてくれませんか?」

「その、変装もメイドに必要なの?」

「ええ、必要があればこういったこともするのですよ」

「そうなんだね!」

 

 二人の会話を聞いていたルルーシュは、『違う、間違っているぞ咲世子! それはメイドではない!』と、内心ツッコミを入れていたのだが、口に出すと自分の不利になるとわかっていたので何も言わなかったのだった。

 こうして出久のメイド像はとんでもない方向へ。

 ああ、どうしてこうなった!?

 

 

 各家を訪問して間違ったメイド像を認識してしまった出久は、たちの悪いことにそのメイドに憧れてしまったのであった。

 ヒーローから目をそらすという目的は達成したのに、また新たな問題が起こっている。

 そして、厄介なことにその背中を押す者がいたのだから大変だ。

 

「僕、メイドさんになりたい!」

「なら、うちで働くといいわ。住み込みで」

「お嬢様、そんな簡単に……」

「いいじゃない。それに、フランだって出久のことは気に入っていたもの」

 

 スカーレット家のお嬢様、レミリアが出久のことを気に入ってメイドとして雇い入れたのだ。

 まぁ、雇い入れたと言っても4歳の出久を本当に雇用したわけではないのだが。

 スカーレット家で預かる傍ら、教育を受けさせるということを出久の両親に納得させたレミリアお嬢様。

 その中に、花嫁修業という名のメイド修行があったりするわけで。

 こうして、出久は立派なメイドを目指して修行を始めたのであった。

 

 これは、緑谷出久が最優のメイドになる物語だ。

 

 ……どうして、どうして、こうなった!?

 

 

 

オマケ

 ――――ある日のスカーレット家主従の会話

 

「出久もこの家に来て慣れてきたわね」

「ええ。学ぶ意欲が旺盛で私も教えがいがあります」

 

 午後の紅茶を楽しみながらレミリアが告げ、咲夜が頷く。

 気まぐれから屋敷に入れた出久をどうやらレミリアは大変気に入ったようだった。

 彼女の個性「運命を操る程度」の個性は、出久のあり得たかもしれない未来、平行世界の未来をものぞき見ていたのだ。

 性別が男だったら、もし現実に心を完全に折られなかったら、彼女は世界を動かす人物になれたかもしれない。

 そんな可能性を感じ取っていた。

 そんな宝石の原石のような彼女を自分の手元で育てればどうなるのか楽しみでしょうがないレミリア。

 それを楽しむためなら多少の労力や出費は構わないと思っている。

 

「そういえば、あの子、美鈴やパチェにもいろいろと教わっているそうね?」

「そのようです。なんでも、『もっと努力しないと完璧なメイドさんになれない』だそうです」

 

 「メイドをどう思っているのかしら」とため息を吐く咲夜にレミリアは楽しそうに笑う。

 

「ハハッ! そうなのね。なら、その希望を叶えてあげないと」

「お嬢様、何をなさるおつもりですか?」

「それはね――――」

 

 

 その後、出久はメイドのスキルを身につけるためという名目で他家に度々奉公に出されることになるのだった。

 そして、毎回そこで気に入られて特殊な技術を教えられて師匠が増えていくこととなる。

 何人か戦闘能力寄りのメイドがいるが気にしてはいけない。

 

 

オマケのオマケ「姉妹の会話」

 ――――出久が他家に奉公に出ていった日

 

「イズクがいなくなったのは、お姉様のせいか!」

「フ、フラン、これも出久のためなのよ!」

「うるさい! お姉様のバカー!!」

「フ、フラン〜!?」

 

 最愛の妹から罵声を浴びせられて崩れ落ちるレミリア。

 うーうー、と変な声を上げながら頭を抱えてしゃがみ込む姿に、いつものカリスマは感じられなかった。

 

「お嬢様……」

 

 それを遠くから見つめるメイドの咲夜は……なんだか愛おしげにそれを見つめていたのだった。

 とりあえず、鼻血を拭こうよ、咲夜さん。




さあて、出久はどこの家のメイドになるでしょうか?

1.轟家
出久「焦凍さん、夕食ができました」
焦凍「このみそ汁の味……毎日でも飲みてえな」
轟家の皆さん「「「――!?」」」

A組ブルジョアの一人、轟さん家に派遣された出久ちゃん。焦凍お坊ちゃんの天然が爆発する!?


2.爆豪家
出久「おはようございます。かっちゃん」
勝己「とっくに起きとるわ、クソが。勝手に入ってくんな!」
出久「え、でも、おばさんが起こしてきてって……」
勝己「余計なことすんな、ババア!」

10年後、幼馴染がメイドになって帰ってきた!? そのメイド、ハイスペックにつき……


3.相澤家
出久「先生、いくら合理的だからってゼリーとかばかりじゃだめですよ」
消太「ああ、すまないな」

合理を求めすぎて普段の生活を心配された相澤先生の元へ派遣されたスーパーメイド出久。ダメンズキラー出久?


さぁ、正解は次回更新で!
※注意:アンケートではないので、リクエストは受け付けておりません。あしからず。
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