笑顔が誰にだって出来るって本当ですか   作:コリブリ

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島村卯月のウワサ
ランニングシューズは既に十足以上潰してしまっているらしい


第6話 太陽に焼かれ

 島村卯月は笑わない。

 正確に表するなら、うまく笑えない。

 

 卯月がアイドルとして活動し始めた頃であれば、天然ゆえの上手い笑顔ができたであろうが、それは既に望めない。

 ならアイドルとして成長した今はどうだろうか、普通のアイドルなら一年も活動すればいわゆる営業スマイル、巧い笑顔くらいはできるようになる。

 しかし業界の汚い部分を一身に受け続け、重なり積もった結果、卯月はどこか卑屈で、陰気で、見る者に不快感や不信感を与える笑顔しか浮かべられなくなってしまったのだった。

 かと言って、卯月にとって笑顔とはアイドルの根源であり、願いであり、始まりであった、ゆえに捨てることなどできず、今日も自宅の洗面台に立ち、笑顔の練習をする。

 

「……えへっ」

 

 まさしくアイドルと言ったあざとさを含む声色が響き渡る、声だけを聴けばその辺りの男性はすぐさま魅了されてしまうことうけあいだろう。

 ただ、透き通った声と比べれば、鏡に映った卯月の笑顔は濁点まみれであったが。

 そもそも卯月の声色にあざとさが混ざるなど、アイドルを始めた当初からすればありえないことだ。表情だけでなく仕草、ふとした声、飾らぬ姿、全てを意識せず素を描き出していたからこそ、彼女の笑顔は魅力たりえていた、しかし仮面を被った今、同じ笑顔を描き出すことなどできるはずもない。

 

 なら、仮面を被った笑顔は魅力たりえないか、そうではないだろう。

 

 アイドルとは偶像であり、ファンたちが描き出すイメージに左右されることなど大いにあるのだから、仮面の笑顔――いわゆるクールな笑顔でも魅了することはできるはずであるとは、美城の言葉だ。

 故にその笑顔を何とか武器に出来ないかとちょっとした方向転換を試みているわけであるが。

 

「……きりっ」

 

 ぐにゃりと曲がる口元からして、卯月がクールな笑顔を取得するまでの道のりは長い。

 

「卯月ーもうすぐご飯できるわよー」

「はーい」

 

 母親に呼ばれた卯月はいそいそと髪を梳き整え始めた。

 本日は美城との歓迎会からちょうど一週間、世間一般で言えば休日であるため、予定は午後からのレッスンのみである。午前は丸々空いてるので自主レッスンの時間にしようと予定を頭の中で構築し始めた彼女は、髪を後ろでひとまとめにし、ポニーテールを作る。 

 

「…………」

 

 ヘアゴムからぱちんと小気味の良い音を鳴らしながら離した手はおもむろに鏡へと添えられ、顔の輪郭をなぞり、口角へとたどり着く。

 そこに映る自分を見た卯月は今日も思う。

 

 いっそ笑わない方がまだ見ていられる顔になると。

 

 

 朝食を食べ終わり346プロから無料で配られるピンクのジャージへと着替えた卯月はランニングシューズを履いて家を出る。公園まで軽いジョギング程度の速度を維持しつつ、到着してから柔軟を始めた。

 卯月にとって家を出てからここまでの行動はもはや生活習慣と言っていい程に馴染んだ行動だ。774プロに所属するよりも以前、養成所での三年間ですら風邪を引いた時以外は雨の日であろうとも続けてきたルーチンワーク。定位置である鉄棒の横に陣取り公園中央を見ると、開けた景色が卯月に安心感を与える。

 レッスンと違い指先まで意識する必要もなく同じ動きを繰り返すだけ、運動というのは行っている間は何も考えなくていいからストレス解消になり、合わせて体力作りも出来る、卯月にとって一石二鳥のお得な日課だった。

 

(今日はロングかな)

 

 卯月は腕を十字に組みながらランニングコースをどうするか思案する。

 平日は朝早くに出ても汗を流すためにお風呂に入る時間や、学校の準備の時間を考えるとどうしても短くなってしまうが、今日は休日、午後に予定が入っているとはいえ休む時間もあり長めのコースを選択した。

 卯月がじんわりと汗をかき始めたのを合図に柔軟が終わり、公園の中央から少しそれた場所にある時計で時間を確認すれば既に三十分ほど、いい塩梅に身体がほぐれていることを感じつつ軽く肩を回す。

 

(この走り出す瞬間の高揚感が好きだなぁ)

 

 何も考えなくていいから楽しいと、随分と後ろ向きな理由の高揚感である事実に気づきつつも目をそらし今日も走る。

 いざと構えた瞬間、自分の視界に小さな影が映り込んだ。鉄棒を使うのかと気にせず走り出した卯月であったが、数十メートルを走ったところで自らの足音に重なってもう一つの足音が聞こえるではないか。

 後ろに誰かの存在を感じたまま走るのはなんとなく気分が悪い。たまたま公園を出るまで道が同じである可能性もあるし、神聖な時間を邪魔されたくないとの思いもあり、少しスピードを速めて柵を越え舗装されたレンガ造りの道に出たが足音はついてくる。

 休日の朝で人通りが少ないとはいえここまで足音を垂れ流しながら追うストーカーもいない。そうなると明らかに彼女に付いてきている存在は何なのか。卯月からしても結構なスピードで走っているはずなのだがぴったりとついてくる存在は明らかに彼女を追っていた。

 流石に無視するわけにもいかなくなった卯月が顔だけで斜め後ろをちらりと見れば、そこには卯月と同じように髪をポニーテールにまとめた少女……いや、卯月よりも十センチほど背が低い女性が笑顔で走っていた。

 

「おはようございますっ! 気持ちの良い朝ですね!」

「おっ、おはようございますっ……?」

 

 卯月は謎の少女が発した快活な挨拶に釣られ咄嗟に挨拶を返してしまう。彼女はいったい誰だろうと知り合いの顔を思い浮かべたが、当てはまる名前は出てこない。

 

(……あれだ、体育会系的な、あれ)

 

 卯月がこうして話しかけられるのは稀ではあるが、ないわけではない。彼女が軽いランニング程度のスピードで流している時に追い越していくニイチャン、あるいはネエチャンに声をかけられる事はある。何故か運動をしている人というのは他人との繋がりが近くなる傾向があるらしい、何故か。卯月にはわからない理由がそこにはあるのだろう、いわゆる体育会系のノリというやつだ。

 卯月はそれが悪いとは言わない、他人との繋がりを重要視する時は彼女にだってある。ただ今回に限って言えば追い越すとかすれ違うとかではなく、追走されているのだ。

 卯月にとって一人のお楽しみタイムであるランニング中に、パーソナルスペースへするりと入り込んでくる者達はあまり好きになれない。ゆえに更にスピードを上げれば意図を察して自然と離れていくだろうと考え、ペースをいつもの倍ほどにした。

 

「おおおっ、丁度いいペースですよっ! 私もご一緒しますっ!」

(ええぇ…………)

 

 一定のペースで刻まれる二つの足音は離れるどころか近くなった、対角からむしろ並列になった。

 卯月が顔ではなく横目だけで見れる位置まで移動してきた謎の少女をちらりと見れば、オレンジのシュシュに赤いジャージ、ぱっちりと開かれた瞳はまるで「元気っ!」の言葉が体現したかのような印象を抱かせた。

 

「――あれ、そのジャージ」

 

 卯月が少女の顔から再び服装へと視線を落とした時、ふと気づく。

 

「はい! 346プロのジャージです! あなたもですねっ!」

 

 卯月が着ているジャージも、少女が着ているジャージも色は違えど同じ意匠、346プロから配布されるジャージである。つまり彼女も自主レッスンで走ろうとしていたところ、同僚を見かけて一緒に走っているということだ。

 

「朝早くからするランニングはいいですね! 実に健康的で、実に気持ちがいいですよ! そう思いませんか!」

 

 今にも覆いかぶさりそうな勢いで喋りかけてくる少女に引いた笑いでしか対応できない卯月は、ジャージに続いて更に気づく。少女のその顔、髪型はどこかで見たものだったからだ。それなりのスピードで走っているため思考が上手く回らなかったが、横断歩道で一瞬止まった時に思い出す。思い出してしまった。

 

 それはいつの日か、テレビで見かけた顔で、声で――笑顔で、横にいる。

 

「日野、茜ちゃん?」

「はいっ、いかにも、私が日野茜ですっ!」

 

 卯月は驚きの表情を隠せなかったが、無理もない。日野茜と言えば346プロでも売れっ子として名が通っている一人。アイドルランクにしてB、紛うことなきトップアイドルだ。売りは元気と元気と元気、そして元気と、太陽のような、笑顔。

 

 卯月の驚きはすぐに引っ込むこととなる、何故ならそれ以上の動悸が彼女を襲い始めていたからだ。

 

 アイドルとして底辺の活動をしてきた卯月からすれば、同じアイドルでも格が違いすぎるのも理由の一つであったが、それよりも、何よりも、屈託なく笑う茜は、彼女がいつしか夢見たアイドルそのものであり、ちっぽけな自分と比べてしまったから。

 舞台で踊る茜を直接見たわけではない、笑顔でたくさんのファンに祝福される姿をみたわけではない、だが、トップアイドルという存在そのものが、卯月にとっては恐怖、あるいは忌避の対象でしかないのだ。

 あの日、卯月を裏切った先輩のように本性がどこにあるかなど分かるはずもなく、例え彼女にとって茜が裏切る要素など皆無であっても、忌避感を覚える要素はいくらでも見つけられた。

 茜に、苦労はあっても苦痛はなかったのだろう、たくさんの仲間に支えられながら、その笑顔を曇らせることなくその高見まで上り詰めたのだろう――勝手な妄想でしかないと分かっていても、卯月の思考を埋め尽くす。

 卯月が卯月にしかわからない苦悩があったように、茜にも茜にしかわからない苦悩を持っているはずで、それでも、と。

 

「……っ」

 

 卯月から漏れた声にならない声が雑踏に消える瞬間、信号が青に変わり、今までとは比べ物にならない速さで駆けだした。ランニングシューズの底がすり減るたびに、卯月の心もすり減っていく。それは自分の弱さゆえに逃げ出してしまった事を感じているが故か。

 もしこれが美城の意向で出会ったのなら逃げ出すことはなかっただろう。そこには何かしらの意味があり、卯月自身の為だと考えられたからだ。いや、地下アイドルや名の通っていないアイドルなら普通に接していたはずだ。あるいは劣等感どころか親近感すら覚え、親しくできたかもしれない。

 卯月はそんな思いこそ醜い心象を映し出しているようで、茜よりも自らを嫌悪した。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 市街地を抜け河川敷まで駆け抜けてきて、深海から這い上がるように息をする卯月。漏れ出す苦痛の声は、全力疾走後の肺の痛みだけでなく、言い知れぬ胸の痛みを吐き出すようであった。

 

「――――ボンバァァァアアアアッ!!」

 

 それも束の間、卯月の耳は後ろからの奇声を確かに捉えた。まさかと振り向けば追ってくる日野茜の姿が見える。

 

「かけっこなら負けませんよぉおおおおっっ!!」

(何で追ってくるんですかああああっ!)

 

 卯月からすればもはや理解不能であった。不意に走り出したのは彼女だったが、それを見てかけっこと勘違いして追いかけてくる人物がどれほどいるだろうか。現にいるのだから皆無ではない、それでも自分相手ではなくてもいいじゃないかと、愚痴を零さずにはいられない。

 ぐちゃぐちゃになった思考を抱えたまま再び走り出した卯月の足は自然と動いていた。毎日のように繰り返し走っていた道だから、一人になれる道だから、無心になるために駆けた道だったから、何を考えるでもなく身体が憶えているのだ。

 

「ハッ、ハッ、ハッ」

 

 卯月が普段走るペースに比べればかなり早くはあったが、この速さのリズムで吐く息に垂れ落ちる汗は、むしろ彼女の全身を覆っていた色々な痛みをも放出させた。

 茜と不意に出会い逃げ出してしまった卯月であったが、段々とどうでもよくなってきている。それは思考の放棄であるのだが、もう何でもいいと、自身に考える暇すら与えぬよう、走れなくなる手前の速度を維持して前だけを見続けた。彼女が今までで感じたことがない程に、走り続けていたいと思いを抱きつつ。

 

 だが、その道にも終わりは来る。

 いつもであれば一時間と少しかけて周る道を、半分以下の時間で最初の公園に戻ってきてしまった卯月はベンチへと腰掛けながら前傾姿勢となる。確実に筋肉痛になるであろう足を揉みながら見つめる地面に、零れ落ちた汗が黒いシミを作り出した。

 それから数十秒遅れ「うおおおおおおっ!」――奇声を発しながら茜も公園へ到着した。

 茜はきょろきょろと辺りを見渡し、奥まった場所のベンチに座る卯月を見つけると肩で息をしながら近づいてくる。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 卯月はその足音を聞きながら、もはや動く元気はないと諦めて足を揉み地面を見続け、数歩離れた位置であろう場所で足音が止まった。

 卯月は自分に視線が降り注いでいるのを感じながらも、その発信元を見る気が無ければ、言葉をかける気もない。正確にはそんな気力すらないのだが、とにかく色々と疲れていたのだ、心も、身体も。

 茜は彼女のそんな様子を意に介さず、更に近づき、卯月の視界に赤い靴が写り込むと同時に、俯くその両肩に手が置かれた。

 

「凄いですっ!」

「…………はい?」

 

 卯月は茜が放った言葉の意味を正確に捉えられず、見る気がなかった彼女の顔をまじまじと見上げてしまう。そこにあったのは、キラキラと輝く目をした茜の顔だった。

 

「私が同い年くらいの女の子とかけっこをして、全力で追いつけなかったのは久々ですっ! もしかして陸上をやっていたんですか?」

「……運動部には、所属していませんよ。毎日、同じ道を走っていただけ、それだけです」

 

 自主レッスンと称して欠かしたことがない毎朝のランニングは、卯月にとって数少ない趣味であり、小さな自慢であった。

 そんな小さな自慢であっても、開口一番褒められたからなのか、卯月は毒気なく受け答えができた。よほど捻くれていなければ、認めてもらうという行為に不快感を感じる人間はいないであろう。なら卯月はそのよほどには当てはまらないかと聞かれれば、微妙なラインである。

 卯月はそれなりに活躍しているアイドル限定の対人恐怖症という、なんとも面倒くさい状況であるが、疲労困憊な状況と、追いかけっこを続けた結果クリアになった思考と視界、そして邪気を含まない茜の快活な口調と、色々な要素が重なった結果、なんとか会話を可能にしていた。

 

「毎日!? 毎日ですか! それは凄いです、凄い以外の言葉が出てきません、凄い! 私は運動が好きですが好きだからこそ好きな時に走ります! 私も毎日走りたいです! 凄い!」

「凄い走ればいいじゃないですか、毎日」

「そうですねっ、凄い毎日走りますっ!」

 

 何ともおざなりな返答を返す卯月であったが、何ともなのはお互い様であった。

 茜もまた全力疾走の疲れと、素直に凄いと思った興奮と、色々混ざりあってしまったが故に言いたいことが先行して何ともな言葉になってしまっていたのだ。

 

(……これは、何というか)

 

 自らが夢見たアイドルであるはずの日野茜、そんな大きな存在が島村卯月という一個人を認めて褒めたたえているという事実は、彼女の自尊心を大きくくすぐり、僅かな優越感を感じさせた。

 卯月とてここまで屈託なく褒められれば嫌悪よりも照れが先に来る。とはいえ真顔である事に変わりなく、目からキラキラ光線を発する茜と並んでしまうと、じゃれつく犬とやれやれと言わんばかりに相手をする飼い主のようであった。

 

「ええと、凄いお名前は?」

「凄くはないですけど、島村卯月です」

「凄くはない卯月ちゃんですね、憶えました!」

 

 ふんすと鼻息を荒くする茜を見た卯月は優越感を感じていた自分を恥じる。純粋に褒めてくれていた彼女の称賛が安っぽいものに感じられてしまうから、そうならぬよう努めて誠実に応えようとする。

 

「ありがとうございます」

 

 出てきたのは短い感謝の言葉。聞く人が聞けば冷たく感じるであろうそれは、褒めてくれたことと、名前を憶えてくれたこと、両方に対してであった。後者に関しては伝わるはずもなかったが。

 

「……ありがとう、ございます」

 

 卯月の口から続けざまに感謝の言葉が漏れ出たが、それは何に対しての感謝であるか――

 

「いえいえ、興奮して喋りすぎました! 卯月ちゃんは……あ」

 

 ぴぴぴと電子音が茜のポケットから響き渡り、彼女の言葉は途中で途切れてしまう。まだお昼前であるが何を知らせるアラーム音か、茜の表情が険しさに染まっていく。

 

「お、お昼前から演劇のお稽古でした……あと三十分しかありません……」

「それは……ここから346のビルまで、走っても三十分以上かかりますよ……?」

 

 卯月が同じ状況に陥れば死刑宣告にも近しいが、茜にとってはそうではないらしい。

 

「いえ、頑張ればきっと間に合います、間に合わせてみせますっ! 押してダメならさらに押せ! 気合を入れろ私いいいいいっ!!」

 

 茜の言葉はもはや何を言っても無駄なのだろうと感じさせるほど根拠がない自信だったが、彼女なら可能にしてしまうのではないかと思わせてくれるほど、勢いだけはあった。逆に言えば勢いだけしかない。

 茜は握りこぶしを天に掲げ、すぐさま走り出した――しかし背中が見えなくなるところで卯月の元まで引き返し、彼女に一言を残してまた走り出す。

 

「では明日から毎日よろしくお願いします!」

「へっ?」

 

 卯月は唐突な宣言に困惑するのみであったが、聞き返す相手は既にいない。

 まさか明日もここに来るという事かと、卯月は一抹の不安を覚えつつも、どこか安堵の気持ちもあった。それは茜が立ち去ってから静まり返ってしまった公園に感じる郷愁にも似た寂しさからくるものか、あるいはまた話せることへの期待からか。

 

(二度目の感謝の意味も、伝わっていないでしょうけど)

 

 二度目の感謝の意味、それは卯月自身でもはっきりとは理解していなかった。何となくと言えばそれまでだが、複雑な心情を読み解くとすればトップアイドルへの不信感を少しでも和らげてくれたことへの感謝であろう。

 表裏のない茜であったからこそ、一度は逃げ出した卯月も会話を続けられた、そして普通の受け答えをさせてくれた。そんな思いが渦巻いて出てきたのが、感謝なのだ。

 これが他の346プロ所属の高ランクアイドルであれば、疲れたきった足を押して再び逃げ出していた可能性すらある、そもそも逃げ出した段階で追いかけてこないだろうが。

 

 卯月にとって、明日から一人の空間がなくなってしまうことに関しては微妙な表情を浮かべるばかりであるが、今の彼女にとってはそれ以上に、茜と話せるかもしれないという事実が、嬉しいと思えていた。

 

 

 




日野茜のウワサ
最近演劇のお稽古に遅刻して怒られたらしい

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