私の生まれた理由   作:hi-nya

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ちゅみみーん!

更新遅くなってすみません! 『女帝』戦です。



RUN!!

 『吊られた男』そして『皇帝』の襲撃から一夜が明けた、翌朝のこと。

 ホテルのロビーに続々と集合する仲間たち。最後に登場したのはこのひとだった。

 

「おはようございます。ジョースターさん」

 

「おはよう……」

 

「あれ? どうしたんですか?」

「じじい、元気ねえじゃねーか」

 

 普段とは異なるその沈んだ様子に皆で声をかけると、彼は渋い顔で腕を掲げる。

 

「例の、虫に刺されたと思っていたところに、ばい菌が入ったらしい……」

 

 見ると確かに人のこぶし大の腫脹があり、それは赤黒く変色していた。明らかな異常に、たまらず僕は顔をしかめ進言する。

 

「昨日よりさらに腫れている……。

 やはりそれ以上悪化しないうちに医者にみせたほうがいいですよ」

「そうかのう……」

 

「これ、なんか人の顔に見えないか?」

「おい、冗談はやめろよ、ポルナレフ! しかたない。病院に行くか……」

 

 僕たちの説得に、しぶしぶだが、ようやく重い腰を上げる気になったようだ。

 

「へへへ、ついていってやろうか?」

「年寄あつかいするな! ひとりでいけるわ!」

 

 ポルナレフの軽口にむきになるジョースターさん。そこへ彼女が飛び跳ねるほどの勢いで手を上に挙げる。

 

「あ、はいはーい! じゃあ私一緒に行きたいです!

 えっと、海外の病院ってどんな感じか興味あるので」

「……そうか? じゃあ、一緒に来るか?」

「はい!!」

 

「ふっ!」

 

 すっかり、『おじいちゃんと孫娘』である。その微笑ましい様子におもわず笑みがもれてしまう。

 

「やれやれだぜ……」

 

 その横でため息をつく本物の孫。

 

「では、僕らは適当にこのあたりで待機していますね。お気をつけて。」

「ああ」

「さっ、オレはネーナのところに行こーっと!」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

 

 足取り重くホテルを出発し、歩き出す。

 

「……すまんな、保乃。つきあわせて」

 

 道中、隣の彼女に声をかける。

 

「え?! な、なんでですか? 私が行きたいって言ったんですよ!」

「あいかわらず嘘が下手じゃのう。まったく、わしをだまそうなんざ100年早い!」

「す、すみません! ついてきちゃって……迷惑でしたか?」

 

 冗談めかして凄んでやると、どうやら本気にしてしまっているらしい。本気でおろおろしているこの単純娘。しかたがないのでちょびっとだけ本音をこっそり教えることにする。

 

「……いや。ほんとのほんとはちょっぴり心細くてな」

「よかった。ですよね! 私だったら一人で病院とか絶対嫌ですもん! しかも海外の。あ、でも……」

 

 すると、ほっとした表情を浮かべながらこんなことをいう。

 

「私が『来たくて』来たので。『つきあわされて』来ているんじゃあないです」

 

「……君は、いい子じゃのう。ほんとうの孫よりもよっぽどわしのことを……うぅ!」

 

 真摯なその様子につい感心してしまう。

 

「そうじゃ! いっそのこと孫の嫁に……!」

 

 そうすればこの娘が()()()()()()になるではないか。我ながらいい案だ……と思ったのだが、すぐに気づく。

 

「あ、そうだった。ダメじゃな。ちぇっ……」

「え、なんですか?」

 

 どうやら本人はさっぱり意味がわかっていないようだ。そーいうことに関してはてんでにぶいのが玉に瑕、といったところか。

 

(あいつも、苦労するのぉ……)

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

「「ふぇっくしょぉぉい!!」」

 

「……。風邪かい? 承太郎?」

「……。花京院、お前こそ」

 

 ふたり揃ってくしゃみをする。体調には全く問題がないはずだが……と、首をかしげる。

 

「それにしても……」

 

「なぁなぁ、ネーナ、考え直そうぜ……

 ホルホースなんかよりもさ、オレの方が絶対にいい男だぜ。

 オレはよ、過去にはこだわらない広い心の持ち主さ……。

 昔どんな男と付き合ってたって気にしないしな!」

 

 僕らは朝食がてら、何か食べつつジョースターさんたちを待っていようということになり、ホテル隣接のカフェにやってきていた。

 そこへ、どこからかちゃっかりポルナレフが例の女性を連れてきて、昨日同様、必死に口説いていた。性懲りもない、下心丸出しのその様子に呆れてしまう。

 

「こんなときに……しかも敵方の女性だぞ。まったく、色ボケも大概にしてほしいね」

「……」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

「ここか」

 

 歩くこと数十分。ジョースターさんと私は病院にたどり着いた。

 受付を済まし、待合室にて待つ。朝一番で来たためか、どうやら患者さんは私たちだけで、すぐ診てもらえるようだった。

 

「あぁ、ヤブじゃったらどうしよう? 逃げていい?」

「っ! ……ええ。ヤブだったら、逃げてください。いい先生だといいですね」

 

 そこに響く受付嬢の爽やかな声。

 

「ジョセフ・ジョースターさん、どうぞー」

「はぁ、呼ばれちった……。では、いってくるよ」

「がんばってください!」

 

 診察室に向かう不安気な背中を見送りつつ、考える。

 

(そうだよ、敵がお医者さんに化けてたりするかもしれないよね。

 ……セシリア、ジョースターさんを)

 

 今までの旅での出来事を鑑みると、いつ何時、どんな方法で敵が襲ってきたとしてもおかしくはない。備えあれば憂いなし。ということで、相棒を飛ばしておく。

 

(うーん、ハイエロファントほどでなくとも、せめて攻撃を受けた、とか、もっといろいろわからないかな? やってみよう……)

 

 待っている間、せっかくなので全神経を相棒に集中させてみた。

 

「……あっ! い、今!?」

 

 意外とやればできるものらしい。暫しの後、微かな異常を察知した。はじかれるように立ち上がると白い廊下を駆け抜ける。

 

「失礼します! ……あぁっ!?」

 

 診察室へ続く扉を引き開けると、そこに大変不似合いな惨劇が繰り広げられていた。あんぐりと口を開ける私の目に飛び込んで来たのは、血まみれで倒れ臥した医師の死体とメスを片手に闘うジョースターさんの姿。

 

 その対戦相手は信じ難いことに、()()()()だった。

 

「や、保乃! た、助かった! この疣が、敵のスタンドだったんじゃ!」

 

『ちゅみみーん! あたいが女帝(エンプレス)よッ!

 女ぁ! アンタが来たのは誤算だけれど……問題はない!

 順番に血祭りにあげてやるよッ!』

 

 敵スタンド……ジョースターさんの腕の疣は、今や完全に人の顔になっていた。いわゆる人面疽、というやつだろうか。目に鼻、口までついていて、おまけに流暢に喋っている。

 

「……先生、次の患者さんなんですが。はっ!」

 

 そこへ間の悪いことに看護婦さんが入ってきた。

 

「……きゃーーー! せ、先生が!」

「あっ! こ、これは……!」

 

『……わしはジョセフ・ジョースター。アメリカ人! ホテルクラークスに泊まっておる!

 わしがこの医者を殺った!』

 

 口を開きかけたその人とそっくりな声が飛び出した。その人の口ではなく、腕から。

 

「「な、なにぃッ!」」

 

『わしは君のような若いおなごが好みでなぁ……次は看護婦!君の番じゃあ~!』

 

「ひ、ひぃ! 人殺しッ!! け、警察を!!」

「あっ! 待ってくださ……!」

 

 弁解など聞く耳もたず。悲鳴をあげながら脱兎の如く踵を返す女性。

 

「ま、まずい、コイツ、わしの声真似を……!」

「と、とりあえずここから離れましょう! みんなに知らせないと……!」

 

 スタンドは、スタンドでしか、倒せない。

 だとしたら、まずいことに私にもジョースターさんにも、これといった攻撃手段が……ない。

 急いでその場からから逃走を図る。

 

「はぁ、はぁ……あっ!?」

 

 しかし、窓から飛び出し通りに出ようとした途端、くるくると踊り狂う赤色灯が目に入る。病院からホテルに続く道は、沢山のパトカーや警察官で溢れかえっていた。そこら中でけたたましく鳴り響くサイレンの音に混じってジョースターさんの腕から不快な笑い声が漏れてくる。

 

『ヒャハハハ、これであんたはインド警察に追われることになったわけだわねッ!

 ホテルに戻って応援を呼ぶってわけにはいかなくなったねぇ!』

「くっ! こ、このッ!たたきつぶしてやるッ!」

 

 業を煮やし、ジョースターさんが、壁に腕……疣を叩きつけようとした。そのときだった。

 

「なにッ!」

「て、手が生えた!?」

 

『ヘイッ! 自分の腕なんだよッ!

 もっと大切にあつかいなよ、くそじじいッ!』

 

 なんと顔だけだったスタンドから腕が生え、つっかえ棒のようにその身が激突するのを阻止した。

 

「ど、どんどん成長しているのか……?」

 

 したくもない想像をしている私達をよそに、近くにあったポールをぐっと掴む。

 

「おい、はなせ……なにをする? はなさんかい!」

『やだわよッ!』

 

 言うなり、騒ぎ出す。

 

『おまわりさーん、犯人はここよッ!!』

 

「こっちか!」

「急げ!」

 

 それを受け、近づいてくる怒号。迫り来る人々の気配。

 

「ううッ、こうなったら……『波紋疾走(オーバードライブ)』!!」

 

 たまらず、ジョースターさんが『波紋』で攻撃する。

 

『……トンチキィィィ!自分の腕に自分の『波紋』が通じるかいッ!』

「くっ!」

 

 空振りに終わるも、それしきでめげるこのひとではなかった。

 

「……ならば!『隠者の紫(ハーミットパープル)』!!」

 

『ぐうっ、し、しめつけられる……』

「ハーミットパープルにはこういう使い方もあるのじゃ!」

「や、やった!」

 

 その茨を巻きつけ束縛し、動きを抑えることができたようだ。

 

「よし! 今のうちに! 保乃、ホテルに戻って承太郎たちを呼んできてくれ!」

「は、はい! ……あっ!」

 

 駆け出そうとするやいなや飛んでくる、ドラマ等でよく聞く警告の文句。

 

「警察だ! 逃げるなよ! 動くと、撃つぞ!」

「か、囲まれておる……」

 

 いつのまにか前後の道をパトカーを盾に拳銃を構える大勢の警察官によって塞がれてしまっていた。

 

(ど、どうしよう!? そ、そうだ!)

 

「……きゃーー! やめてください! 撃たないで! 私、人質です!」

 

 とっさにジョースターさんの腕をとり、捕まっている演技をする。

 

「うッ……」

 

 躊躇の色を纏った張り詰めた空気が周囲に流れる。

 

「(い、今のうちに……)」

「ぬはははは! そうだ! この娘の命が惜しくば道を開けろッ!」

 

 そのままじりじりと後ずさり、包囲網を越える。

 

「(……スマン)」

「(……いえ)」

 

 

 当座の危機を脱し、無我夢中でとにかくジョースターさんと街をひた走っていると、市場のような場所にたどり着いた。雑踏に紛れ、建物の影に姿を潜める。

 

「こ、このあたりまでくれば! わ、わしは隠れとるから……」

「はい、いってき……、え……?」

「ん……?」

 

 今度こそ。そう期待した私たちの耳に届く。目立たぬよう布で覆っていたジョースターさんの腕から、ゴリゴリ、バリバリ……と、不審な音が。

 

「「?! な、なにを……」」

 

 布を捲ると、敵はリンゴや、キャベツ……そして、鶏までもを丸呑みにしていた。

 

『……食事中さッ!でっかくなるためにねッ!』

 

 瞬間、二倍くらいの大きさに膨れ上がり、その身を締め付けていた『隠者』の紫の茨が無惨にも引き千切られてしまう。

 

「そ、束縛がッ!」

『パパ、ありがとう~! おかげでこんなに大きくなれたわ!

 これこそ親のすねかじり!いや腕かじりかしらねぇーー!』

 

 腹立たしいことに少々上手いことを言いつつ、太くなった腕でジョースターさんの顔面に重いパンチを繰り出す。

 

「危ないッ!」

 

 それをなんとかセシリアが防いでくれる。

 

『ちっ! ……動くんじゃないよ! このくそアマ! アンタが助けを呼びに離れたら、すぐにでもこのジジイを殺してやる! アタイの力は見ただろう? もう頸動脈にも手が届く! ここをプツッとやっちゃったら、どうなるだろーねぇ!! ヒャハハハハ!』

 

「ううっ!」

 

(ホテルまで、まだ、300m以上は優にある。ダメか……)

 

 セシリアでジョースターさんを護りつつ、知らせに走る……というわけにはいかない距離だった。

 

『でも、そうなると、先に……アンタを殺らなきゃいけないね!』

「……!」

 

 ぎろりとスタンドの目が鋭くこちらを睨む。

 同時にジョースターさんが叫ぶ。

 

「もういい、保乃、自分にスタンドを戻せ!」

「嫌です……こいつの狙いはそれなんですから!」

 

『ヒャハハハ! じゃあ、女、おまえから、死ねぇぇーッ!!』

「くっ!」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

 食後の珈琲をすすりつつ、おれは花京院と適当に駄弁りながらじじい達を待っていた。

 相変わらず、女の気を引こうと無駄な努力を続けるポルナレフの野郎は当然ほおっておいて、だ。

 

 すると突然……本当に突然のことだった。

 

「……はっ!」

「どうした? 花京院」

 

 ポツリと、呟く。

 

「……あのひとが……、あぶない」

 

「は?」

 

「すまない、承太郎。僕は行く……!」

 

 それだけ言い残すとすぐさま立ち上がり、勢いよく窓から店を飛び出していく。

 

「お、おい……!」

 

 外を見やるも、すでにそこに在るのは立ちのぼる砂煙だけだった。

 

「……はええよ」

 

 おもわず心の底からの感想を零す。

 

「……つーか、おまえにだけはぜってー、色ボケとか言われたくねぇ……」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

『死ねぇぇー!!』

 

「くっ……!」

 

 繰り出される拳に私が身構えた。その瞬間だった。

 

『ぐえぇっ!』

 

「……お嬢さん方、わしの存在をわすれてもらっちゃ困るな!」

 

「あっ!」

 

 『隠者の紫』で再び、敵の腕、首を拘束し、その攻撃を阻止してくれるジョースターさん。

 

「おい! もう助けを呼ぶ案はやめじゃ! ふたりでコイツをなんとかするぞ!」

「は、はいッ!!」

 

 私に促したあと、敵に向け高らかに宣言する。

 

「このジョセフ・ジョースターが、闘いにおいてきさまなんかとは年季がちがうということを、これから思い知らせてやる!」

 

 決まった! と思った。

 

「……いたぞ!殺人犯だ!!」

「「!?」」

 

 しかし、残念なことにまたも警官隊に囲まれる。

 

「……と、とりあえず、逃げるぞ!!」

「はいー!!」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

「とはいえ、どうしましょう」

「うむ。ハーミットパープルの遠隔視能力を使って、こいつの本体がどこにいるか見つけ出したいが、カメラがない……」

 

 路地裏を逃げまどいつつ、わしらは作戦を立てるべく話し合っていた。その隙をついて、またも敵が暴れ出す。

 

『ほあちょー! こんな束縛効かないっていったわよねッ! なめるなッ!!』

 

 茨が引きちぎられるとともに、鋭い手刀が繰り出される。

 

「オー、ノォー!!」

 

 叫ぶも、予期した衝撃が我が身に降りかかることはなかった。

 

「させないッ!」

 

 セシリアがその攻撃を見事はじきとばしてくれたようだ。

 

「おおっ!」

 

 すぐさまその主がまっすぐな言葉を敵にぶつける。

 

「……あなたこそ、なめないでください!

 私がいる限り、ジョースターさんを傷つけさせはしないッ!!」

 

「!」

 

 普段は朗らかなこの娘の凛々しい姿に感動と、そして……

 

(この、瞳……この感じ……は……)

 

 古い記憶が、呼び起こされた……そんな気がした。

 

 だが、そんな感慨も束の間、そこには低俗な争いが発生していた。

 

『キィイー! イライラするッ! 本当に邪魔くさいねっ!

 この……ブス! 地味! ずんどう! ペチャパイ!!』

「はぁぁあー?! ぺ、ペチャパッ……!?」

『このブラジャーいらず~! アタイなんて肩が凝って凝って……

 そんな悩み、アンタにゃ縁がなさそーでうらやましいかぎりだわさ! けけけ!』

「きぃーッ! た、例え事実でも、いや、だからこそッ! 世の中には言っていいことと悪いことがあるんですッ!!」

 

「お、おい、おちつけ……」

 

 つい、そんなキャットファイトに気をとられてしまっていたときだった。

 

『すきありぃ!』

「ぐぅ……ッ!」

 

 飛んできたパンチをかわそうとバランスを崩し、そばの露店に倒れ込んでしまう。積んであった箱や並んでいた灰壺がひっくり返り、ガラガラと音を立てる。

 

「!」

 

 これぞまさに『転んでもただでは起きない』というやつだろうか。待ちに待った光明が、わしの脳裏にとうとう訪れる。

 

(これだ!)

 

「す、すみません! ジョースターさん! 大丈夫ですか!?」

「おい……!」

 

 眼で、合図を送る。

 

「……? はっ!」

 

「……いくぞ!」

「はいッ!!」

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

『ヘイ! どんどん承太郎たちから離れていくよッ! ふへへへ!』

「はぁ、はぁ……わしらがただやみくもに走り回っていたと思うのか?」

 

 さらに駆け回ること十数分。とうとう辿り着く。目的の場所に。

 

「きさまを……」

 

『!?』

 

「これの中につっこむためじゃー!」

 

 なみなみと注がれた黒い液体……その中に腕を漬ける。

 

『がぼ、ごぼ……!』

 

 上手くいった……そう思った矢先だった。液中から急にギラリと光る何かが飛んできた。

 

「!」

 

 それをかろうじてセシリアがはね返す。

 

「っ! あ、あぶない……!」

「く、釘!?」

『ヒャハハ! さっき拾っておいたのさ! これであんたの頸動脈を掻っ切ってやる!

 アタイをこんな中につっこんで、窒息でもすると思ったのかい! しねーよ! 忘れたのかい!?

 スタンドはスタンドでしか倒せない!

 おいぼれのスタンドもペチャパイのスタンドもアタイをぶったおせるよーなものじゃない!

 このまま持久戦に持ち込めばアタイの勝利は確実さ!!』

 

「「……」」

 

『ヘイッ! さっき……戦いの年季がどうのとか言ってたねッ!

 今のどこが闘いの年季なのさッ! どこが作戦なのさッ!

 てめーはただ年齢をとっただけのおいぼれジジイだろーがぁッ!』

 

「「……」」

 

『あんたらにゃ、この女帝を倒す方法など何ひとつ…………ん?』

 

「「……ふふ……」」

 

『何ひとつ……ウゥッ!』

 

 遅まきながら、なにかがおかしいことに気づいた、哀れなヤツに言ってやる。

 

「え? 何ひとつ……なんじゃと?

 年をとって耳が遠くなったかの! よぉききとれんかったのォ!」

 

 黒く固定され、ひび割れていく……自らのその身体の変化から、ようやく液体の正体に感付いたようだ。

 

『こ、これは……まさか!? コールタール!』

 

「よくわかったのう! この辺、道路の舗装工事をしとるようでのぉ!」

『つ、つっこんだのは、窒息させるためではなく……アタイをかためるためだったのかァ?!

 し、しかしなぜ、コールタールの場所など……』

「いひひひひ、我がスタンド、『隠者の紫』の能力は……」

 

 先ほど倒れ込んで散乱した、箱、壺……その中にあった()は、舞い落ち、地面に降り積もる。

 

『はっ! お、おまえ、念写したなッ! は、灰をこぼして利用して……位置を……?!』

 

「ま、これで闘いの年季の違いというのがよおーくわかったじゃろう。

 ……相手が勝ち誇ったときそいつはすでに敗北している……。

 これがジョセフ・ジョースターのやり方。老いてますます健在というところかな」

 

 そのほとんどが黒い塊と成り果てた、ヤツの身体に茨を巻きつける。

 

「……そして、スタンドはスタンドでひきはがせる!」

『え! あ!』

 

「……おまえは『やめてそれだけは』という」

 

『やめてッ! やめてそれだけは! ……はっ!!』

 

「にやり。……だめだな、わしだって痛いんだ! 子どもというのはいつまでも親のスネをかじってちゃいかん! 大きくなったら……」

 

『!』

 

「ひとり立ち、せんとなぁ!!」

 

 そのまま一気に千切りとるように、引き離す!

 

『ぐはぁー!! ……』

 

 寄生していた宿主を失ったそれは、苦悶の叫びとともに、動かなくなった。

 

 

 

 

 

「やれやれ、なんとかなったわい……」

「やりましたね!」

 

 歓喜の表情で駆け寄ってくる孫娘。

 

「あったりまえじゃ! わしを誰だと思っておる!」

「ふふ、さすがです」

「ふっ、助かったよ。おまえさんがおらんかったらどうなったことやら」

「いえ! 私また何にもできなかったし……」

 

 そういって、苦笑いを浮かべる彼女にいう。

 

「……さっきの台詞、シビれたぞ。

 50年前に出逢っておればのう。惚れちゃってたかもしれんな!」

 

「ま、また、そんな……お上手なんですから!」

「にしし……!」

「もう!」

 

 からかいつつも、天を仰ぎ、心の中で呼びかける。

 

(……なぜだろうな。

 あの時、おまえのことを思い出したよ。……シーザー……)

 

 懐かしき、友に……。

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

 ジョースターさんの鮮やかな作戦勝ちにすっかり気が緩んでいた私は気づかなかった。

 

 敵の身体がゆっくりと蠢いていたことを。

 

『……ゆ、る、さん!ゆるさんぞぉ!』

 

「「なにッ!」」

 

 怨念めいた声が地を這うように響く。

 

『こうなったら、せめてアンタを道連れにしてやんよ!

 死ね……くそアマぁああーーー!』

 

「いかん!」

「しまっ! セシリア、戻っ……!」

 

 私の顔面めがけて、鋭く尖った釘が勢いよく飛んでくる。

 

(くっ、間にあわない……!

 ……ダメ、かな? ……か……!)

 

 覚悟をし、目を閉じ歯を食いしばる。

 

 すると、ききなれたこえが、きこえた。

 

「……スプラーッシュ!!」

 

『ぐべらッ!! ち、ちくしょう……』

 

(! ……えっ……?)

 

 恐る恐る瞼を持ち上げると、そこには、撃ち落とされた釘と、バラバラになり、今度こそ動かなくなった敵。

 

 そして、振り向いたその先には、彼が、いた。

 

「か、花京院!?」

 

「だいじょうぶですか?!」

 

 いいながら駆けてくるその姿に目を疑いつつ、どうにか応える。

 

「……う、うん」

 

「……こ、こやつ、また、いいところで!

 今回はわしの見せ場回じゃあなかったんかい!」

 

 その後、案の定、ふたりそろってお説教を受ける。

 

「まったく……ダメでしょう! ふたりとも! 油断したら!」

「ご、ごめんなさい……」

「スマン……」

 

「……間に合ってよかった。さがしましたよ」

 

 一通り叱ったのち、そうして微笑む。

 そんな彼にジョースターさんと口々に疑問をぶつける。

 

「し、しかし、花京院おぬし……どうしてここに?!」

「そ、そうだよ! なんで?!」

 

 すると、なにやら勘違いしたのか、どこかズレた答えが返ってくる。

 

「だから、頑張って探したんですって……。

 街中にいた警察から、

 『殺人犯のアメリカ人が、東洋人の娘を人質にして北東方向に逃走中』

 ……って無線をハイエロファントで傍受したので、これだ! と思って。

 それを頼りに……あとは走りました」

 

「いや、そうじゃなくてだな。

 おまえさん、なんでわしらがスタンド使いに襲われとるかわかったんじゃ……?」

 

 呆れ顔で、改めて問い直すジョースターさん。

 

「……は?」

 

 そうだ。根本的に、だ。

 しかし、彼はすこし考えたのちにこんなことをいう。

 

「……なんとなく、です。なんか嫌な予感がしたので」

 

「まじか、こいつ……」

 

 

「……」

 

 その裏でこっそりと頭をかかえていた私。

 

(び、びっくりした! 呼んだら、ほんものが……!)

 

 心臓がまだ激しく高鳴り続けていた。

 これは、そう、驚きで。そうだ。突然のことに驚いたから。そのはずだ。

 

(……って、あ、あれ? ……私……呼ん……?! えぇえー!?)

 

 幸いなことに密かにとまどう私には気づかず、ふたりは敵スタンド使いを検分しつついう。

 

「……そんなことより、なんですかこいつは。本体は?」

「あぁ、目星はついておる。今頃ポルナレフがおったまげとるだろ……」

 

 

 

 *         *          *

 

 

 

 またも、突然だった。

 

 花京院が、何の力だかしらん……謎の電波を受信して店を飛び出して行った。

 それから少し経った頃だ。

 

「なぁなぁ、ネーナぁ……」

 

 ポルナレフが囁いた。

 

「……オゴエッ! ぶぇえー!!」

 

 刹那、女が口から黄緑色の液体を勢いよく吐き出す。

 

「!?」

「ゲゲェーッ!! な、なんだッ? どうした、ネーナ……ああッ?!」

 

 さらに驚くべきことにその女は縦に割れ、そこから相当なダメージを受けた様子の、既に血まみれで意識がない別の女が現れる。

 

「なっ! なんだーッ! こいつは!」

 

「フム……よくわからんが、こいつもスタンド使いか」

 

 それを観察しつつ、考察する。

 

「……で、今、じじいか、……あの色ボケがやっつけた……ってところだろーな」

 

「うそぉーー!?」

 

 驚愕の表情で叫ぶポルナレフ。信じられないのか、はたまた信じたくないのか。おそらく後者だろう。

 

「ふん、本当はこんな醜女なのをスタンドでカモフラージュしていたのか……危なかったなぁ、ポルナレフ!」

「そ、そんなぁ……」

 

 塩をかけられたナメクジの様にしおれる男に、慰めにもならない慰めの言葉をかけておく。

 

「とりかえしのつかないことになる前でよかったじゃねーか! くくく……!」

 

「うわぁーん!! もうオレ、女なんて信じねぇッ!」

 

 

 

 

 




ちゅみみーん!

ジョースターさん、ごもっともなメタ発言はお控えください。貴方の見せ場はまたいずれ……!



もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?

  • そのまま4部にクルセイダース達突入
  • 花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
  • 花京院の息子と娘が三部にトリップする話
  • 花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
  • 読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!
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