先に謝っておきます……ごめんなさい!!
セスナが墜落したあの翌朝。私たちは救助隊と無事合流を果たし、近くの村まで送ってもらうことができた。
聞けば紅海がもう比較的近いらしく、それを渡るのがエジプトへの最短コースだということだった。そこで、船を手に入れることのできる海辺の街まで、サンドバギーで移動をしていた。
その道中に、悲劇は起きた。
「……おい、オアシスがあるぜ」
もうすぐ日没といったところで、承太郎君がスタープラチナの視力を使ってオアシスを発見。今夜はここで野宿をすることになった。
大きな泉があり、その水は澄んでいてとても綺麗だった。
「やったーっ! オレ水浴びしてこよーっと! みんなも行こうぜ! 」
ポルナレフさんの発案で、男性陣は水浴びをすることにしたようだ。
「おまえもいこーぜ! いっしょに! ぐふふ」
「い、行けるわけないでしょう! 私は荷物番をしていますから!ごゆっくり!! 」
(とはいったものの、たしかに、うらやましいなぁ……。
砂埃で身体中ジャリジャリだし、髪の毛ばさばさだし、汗でべたべただし……。
いいなあ、男の人は。まぁ仕方ないんだけどさ)
性別というどうしようもない壁に対し心の中で独りぼやきつつ、お湯を沸かしお茶の準備をしながら待っていると、みんなが戻ってきた。
「あぁー、さっぱりした! すごく! とっても爽やかな気分だ!! 」
「……」
ポルナレフさんがこれみよがしに爽快さをアピールしてくる。いったいなんなのか。
「いいぞ、保乃。水浴びは! すごくいい! おまえも行って来たらいいと思うよ、うん! 」
「うっ……。いいです。誰が来るかもわからないですし。私は街まで我慢します」
「誰もいなかったぜ。大丈夫だ! 心配ならオレが見張っててやるから! 」
「……余計に心配です」
自分の貧相な身体を見て喜ぶ、特異な趣味の殿方がいると思っているわけではない。しかし当然ながら誰かに見られるのは嫌だ。いや、貧相だからこそさらに絶対見られたくないというのもある。……おわかりいただけるだろうか? このかなしみが。
そんな乙女心が理解できるべくもないくせに、ポルナレフさんはそのスタンドよろしく痛いところを的確に突いてきた。
「ひそ……そんなにジャリジャリ、ベタベタだったら、嫌われちゃうぜ~! 」
「ッ! ぐっ! な、なにがですか! だれに!? 」
その質問はあっさりスルーし、どこ吹く風のポルナレフさん。続けて言う。
「ちょっと浴びるだけでも全然違うぜ! サッと行って来いよ! なっ!! 」
(うう、どうしよう。そうしたいのはやまやまだけど……)
頭を抱えていると、見かねたような声がかかる。
「行ってきなさい。熱中症になってもいかんしな」
ジョースターさんのこの一言で私の心は決まった。
「……じゃあ、すみません。少しだけ、いってきます」
* * *
なにやら逡巡していたようだが、結局彼女も水浴びをしにいくようだった。この砂埃に照り付ける熱波。男でもつらい。そりゃあ女性にとってはなおさらだろう。
「さーてっと♪ 」
そんな彼女を見送ったあと、ポルナレフが不審な動きをするのを僕は見逃さなかった。
「おい……! ポルナレフ! どこに行く気だ!! 」
「なはは、ちょっと、トイレだよ、ト、イ、レ! 」
「嘘つけ! おまえ覗きに行く気だろう! 」
「……てへ。バレたか」
「バレたか、じゃあないッ!! 許さんぞ! そんなこと!! 」
「目の保養だって。そーだ花京院、おまえも行こーぜ、一緒に! 」
「行くかーッ!! 」
そして、どこまでも悪びれない男はこんなことを言う。
「えー、おまえだってほんとは見たいくせにー。好きな女の裸だぜ? 」
「……ぐッ! ぼ、僕は……」
そりゃあ見たい。僕だって健全な高校生男子だ。当然だろう。
しかし……
「……僕は、そんな卑怯な真似をせずとも、いつか正々堂々と見るッ!! 」
「……! 」
「!? 」
「!! 」
シーン、と、場に訪れる静寂。
「あ……」
「こ、こいつ……とうとう……」
「……やっとみとめやがった。
……しかも、ククク、なんだそりゃ……男らしすぎるわ……! 」
「プッ! ぶはははは! そうだな! そのとおりじゃな……! 」
そして、爆笑。
「う、うるさい! 悪いかッ! 」
その瞬間の動揺が、仇となった。
「へへへ……スキあり! じゃあなー!! 」
「ああっ! ま、待て! 」
* * *
「……誰も、いないよね……? 」
あたりを見回し、誰もいないことを確認してから、素早く服を脱ぎ、泉につかる。
「き、気持ちいい……!! 」
さっきのポルナレフさんに若干イラッとしたことを心の中で謝罪する。これはたしかにたまらない。冷たい水が日焼けで火照った肌にとても心地よい。潜ってみたり、少し泳いでみたり。水の中を堪能する。
「ああ、生き返るー! ふぅ……! 」
ずっと浸かっていたいが、そうもいかないことを思い出した。誰も来ないうちに、さっさと退散しなくては。
「タオル、タオルっと……」
そして、立ち上がり泉から出ようとした私の目に、信じられない光景が、映った……。
* * *
「……待て! この! 」
「待てと言われて待つやつはいねーよぉ~! 」
「こ、こいつッ! 」
いいかげんイラッとして、もういっそエメラルドスプラッシュをぶちかましてやろうかと思ったときだった。
「しっ! 隠れろ! いたぞ……! 」
「! な、なんで僕まで……! 」
僕らは匍匐前進のような格好で草叢に身を窶した。
「静かにしろって! ……くッ、後ろ姿しか見えん……! 」
「……ごくり……」
頭を少し上げると、こちらに背を向け泉に浸かる彼女の姿が目に入った。
(「ハッ!! も、戻るぞ! おい!! 」)
(「もういいじゃん! 自分に正直になれよぉー!! 」)
(「僕は正直だ! ……おまえなんかにみせてたまるかッ!! 」)
(「いってッ!」)
あたかもカメのように伸びようとするポルナレフの頭。それを僕は思い切り地面に押しつける。
その瞬間だった。
「あッ……! 」
彼女が立ち上がり、その肢体があらわになる。
湿った黒髪が流れる細い肩、白い背中、長く伸びる手足にくびれた腰……
……残念なことに木々などが邪魔をして、完全には見えないが。
(……おもったとおり……、いや、想像以上だ! う、うつくしい…!
ああ、今すぐ……しゃせいしたい……
って、ち、違う! 写生だ、写生!
綺麗なものをキャンバスに残したいという美術部魂だッ!
……写生してどうするって? ……結局のところ同じ? うるさいなッ! )
どこからともなくきこえてきた気がした天の声と争いながらも、その奇跡を目に焼き付けつつ感動とともに感謝の意を唱えていた。
(なんだ? ここは、楽園か……?
ああ……、神様……、ありがとう……)
「……おい……」
「ハッ! 」
そんな僕に低くドスの効いた声が届く。
「……なんだかんだで、結局てめーが一番しっかり見てんじゃねーか!! うらァ!! 」
「……ぐあっ! 」
そうして、すっかり油断していた僕は怒れるポルナレフに巴投げをくらい……
「!? か、かきょ……!? ……きゃあーーーっ!! 」
彼女の前に転がり出たのだった。
* * *
「うわーん! 」
(みられた……よりによって……いや、他の人になんて死んでも見られたくないから幸い……?
うう、でもっ、でもぉー…!)
「どうどう……うーむ、ここまでおもしろいことになるとは思ってなかったわい……」
「ぐすん……ん? 今、なんかいいませんでした? 」
「い、いや、なんでもないよ! よ、よしよし、災難じゃったのう」
「……災難……ほんとですよぅ! ふえぇーん……! 」
「し、しまった、逆効果じゃった……」
慌てる祖父。見かねてうんざりした声をあげるその孫。
「うるせぇな……。もういいじゃねーか、別に。時間の問題だろ……どうせ」
「よくないっ! なによ、それ……。うえーん! 」
「チッ、わかってんだろ? あいつはポルナレフのやろうを……」
「……とめにきてくれただけなんでしょ? そんなのわかってるもんー! 」
「わかってんなら、許してやれよ……」
「……別に、怒ってるわけじゃないし…… 」
「え? そうなの? 」
「じゃあ、なんだよ……」
「はずかしいよぉ!! ……それに……がっかりされた……」
「「はぁ? 」」
「ぜったいがっかりされたよ! もうやだー!! わーん! 」
「……」
「やれやれだぜ……」
か、勘弁してください。
ラブコメに超ありがちなやつをやりたかった。それだけなんです……今の内に……
もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?
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読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!