宜しくお願い致します。
いつもどおりの朝だった。
けたたましいアラームの音が鳴り響き、ぼんやりと目をあける。
はじまりの時間を容赦なく告げてくる……それを止めるべくベッドサイドに手をのばす。
彼(彼女かもしれない)は仕事を忠実に実行してくれているだけにもかかわらず、こうして毎朝疎まれ、恨みのこもった全力の一撃で頭を叩かれる。よく考えたら可哀想な気もするが、低血圧な持ち主のもとにきたのが運の尽きだろう。……もしかしたら恨まれているのはこっちの方かもしれないが。
しかたなく起き上がろうとするも、その寒さに身震いし、おもわず再び布団に戻る。あと一週間もしないうちに師走ではあるが、これほどだっただろうか?そもそも冷え性で、昔から寒がりなのだ。四季のうち最も苦手な、この季節がまたやってくるのは憂鬱だった。
まだ、あたたかくやわらかなここで、ふわふわとまどろんでいたい……
しかし、そんな甘い願望は叶うべくもないとわかってはいる。
今日も朝一番から受講している講義があるのだ。
二度寝という、甘美な誘惑をなんとか振り切り、布団から出て、準備を始める。
「全出席なんて無駄じゃん。最低限出られるときだけ出てたらいいんだよ。だって同じなんだから」
「しかもそんなに一年のときからからがつがつ単位とらなくても。来年またとれるでしょ? 」
先日、同級生の女の子たちに言われた言葉を思い出す。
しかし、個人的に、その意見にはまったく同意できなかった。
講義を受けるのであれば、聴けるだけ聴いておかないと損ではないのか。という貧乏人根性がひとつ。
そして理解力も貧しい私のこと、内容も一度抜けたりしたらわけがわからなくなってしまう。それでは意味がないではないか。
それに全出席……コンプリートという響きが、自分はけっこう好きだったりする。
……理由なんて、そんなささいなものだ。
あと、とれる単位はとれるうちにとりたかった。またとれる……なんて、未来のことがなぜわかるのか。いつ、なにがあるかなんて、だれにもわからないのだから。
よく真面目、だとか言われるけれど、そんなふうにそれとはかけ離れた理由、ただ単に小心者なだけなのだ。
あとはいうなれば、楽あれば苦あり……の逆が好きなだけだ。たとえ無駄な苦労になろうとも。
ショートケーキの苺はもちろん最後にとっておく。そういうやつだ。
ただ、そんなこと、もちろん彼女らには言わない。
自分だって、できることならこうしてずっとお布団と仲良くしていたい。元来怠け者なのだ。
ありがたいことに、仕送りの足しにと始めたバイトのシフトだって増やしてくれとも言われているし、やりかけのゲーム(ちなみに今ハマっているのは勇者が仲間たちと大魔王を倒す旅に出る、あれ、だ)だって続きが気になってしょうがない。
だから、彼女らの言い分も理解はできる。
他にもやりたいことがあるのだろう。その優先順位なんて個人の自由だ。
自分の方が少数派の意見だろうということはわかっていた。
なにより、こんなこと言ったらイイ子ぶっている……とか面倒くさいやつだ……なんて思われることは必須だ。互いに微妙な気分になるに決まっている。
じぶんのことなんて、わかってもらえるわけがない、それもわかっていた。
毎朝のことだが、同年代女子が聞いたら確実に驚くであろう、短時間で準備を終えた私。
まだ覚醒しきっていない頭をかかえつつ、部屋をでて、エレベーターで1階に降りる。
マンションのエントランスを出たところで、吹き抜けていく木枯らし。
おもわずコートの前をしっかりと止める。
北風と太陽、の旅人もこんなきもちだったのだろうか、などと思いながら。
大学にむけて、並木道を歩いていると少し体も温まってきた。
春は桜色に染まっていたこの通りの木々も、今は静かにその枝を伸ばしているだけだ。
華やかな満開の時期ももちろんいいけれど、厳かなこういう雰囲気もけっこう好きだった。
長い時間をかけて、再び咲き誇るその日までの準備をしているのだとおもえば一層だ。
途中、神社の境内へと続く石段のふもとあたりで、立ち止まる。
「……おはようございます」
しゃがんで植え込みに目を凝らし、目的の黒い四つの瞳をみつける。
「にゃー! 」
「今日も仲良しですねぇ。……ひゃー、可愛いよおぉー! 」
雉猫の親子だ。
先月はじめて出会ってからというもの、仲良くしてもらっている。彼らとしばらく遊んでから大学に行くのが毎朝の日課となっていた。
そっくりの毛並み、そっくりのしぐさでじゃれあう二匹。遺伝子の素晴らしさに思いを馳せていると仔猫がこちらへ寄ってきた。あごのあたりをなでてやると、ごろごろと気持ちよさそうにのどを鳴らしてくれる。
こうしていつもついつい時間を忘れてしまうのだ。
そのために残りの道のりを全力疾走することになるのもしばしばだったが……本望だった。
……こんなふうに、すべていつもどおりだった。
目覚ましにたたき起こされて、しぶしぶ大学にむかうのも。
桜並木道を、ぼんやりとあるくのも。
猫の親子とたわむれすぎて遅刻しそうになるのも……。
いつもとなんら変わることのない。
なんてことない、『日常』。
しかし、そんな日常のなかに突如、現れるものだと知った。
……非日常、は。
「きゃー!? ジョジョ!? 」
突然、石段の上から、学ランを着た高校生が降ってきた。
女の子たちの悲鳴とともに。
おもえば、それが、はじまり、だった。
私の、『奇妙な冒険』の……。
(あぶな……っ! あっ!? )
アスファルトに叩きつけられる、そう思った瞬間だった。
男性は、見事に受け身をとり、着地する。すぐに立ち上がったところをみると、それほどの怪我はないのだろう。ほっと胸をなでおろす。
ちなみにびっくりしたのか、母猫は仔猫をくわえて繁みの向こうに逃げていってしまった。なごり惜しくそれを見送り、騒ぎの方をみやる。
『ジョジョ』と呼ばれた高校生は大柄で身長が190cmはありそうなのが印象的だった。
「ジョジョ! 」
「ジョジョ!! 」
「大丈夫!? 」
駆け寄っていくたくさんの女の子たち。口々に心配する言葉を発しながら取り囲む。
そこへ、ひとりの、別の男性が石段を優雅に降りてくる。
緑がかった学生服に身をつつみ、学生鞄を持っている。ということは彼も高校生なのだろう。
ゆっくりと『ジョジョ』……さんに、近づいていく。
少し距離があるため、会話の内容まではわからないが、なにかを渡しているようだ。
そしてその場を離れ、こちらへ向かってくる。
そのひとが私の横を通りすぎる。
風をからめとりながら、彼の首にまかれた長いマフラーが翻る。
一瞬のことだった。
それにもかかわらず私の心臓は、停止しそうなほどの衝撃を受けた。
おもわず立ち上がり、その背中をみつめる。
「あ、……あれは……あのひとは……」
みえた。
たしかに、みた。
彼から……きらきらした、みどりいろの……なにか、が。
そして……。
おもわず、おいかけていた。
10分ほど歩いただろうか。
たどりついた場所は近所の高校だった。
通学時間帯だ。高校生(推定)である彼の向かう先として、これほどあてはまるものはないだろう。
ためらいなく門をくぐる彼に少し遅れて、ためらいながらも高校敷地内に侵入する。
昨年までは自分も高校生だったとはいえ、制服の少年少女に紛れて、ひとり私服。
浮いている。おもいきり、自分のほうが不審者だ。
講義にも確実に遅刻だろう。
さっきのだって、ただの見間違いかもしれない。
そうでなくても、だ。
はたして、かかわることが、いいことなのか……どうなのか。
そんなことはわかりきったことだった。
にもかかわらず……
なぜだろう? どうしても、ひきかえすことができなかった。
理性と裏腹に、なにかに操られているかのように、自分の脚が歩みをとめることは、なかった。
誰かにとがめられやしないか……それ以上に、彼にみつかったらどうしようか……
どぎまぎしながら、一定の距離を保ち、あとを尾ける。
しかし、彼が校舎の角を曲がったところで見失ってしまう。
(あれ?! しまった……)
あたりを見回すも、彼の姿はみえない。
(……こっちな、気が……)
しかたなく、勘だけを頼りに校舎を外からぐるりとまわるように探していく。
すると、ある部屋から悲鳴が聞こえてきた。
(ここは……保健室? )
「うわぁーッ!! せ、先生ッ!? なにをしているんですッ!? 」
「や、やめてください! ひぃいーっ!? 」
「まさかこれが、万年筆にみえるなんて……」
窓から漏れる、誰かと誰かが争うような声。室内はパニック状態のようだ。
そんななか、さりげなく窓枠に腰かけて、中の様子を観察している、彼をみつけた。
その表情は冷ややかで、冷徹そのものだった。
……でも、なぜか、どこか……。
ただひとつ。直感的に、この騒ぎは、彼が、なにか、をしているからだ……というのが、わかってしまった。
「それじゃあ、よくッ! 見てッ……」
「うわぁああーッ!! 」
ひときわ大きな悲鳴が聞こえた。
「やめてくださいッ!! 」
とっさに叫んだ。室内ではなく……彼にむけて。
ほんとうに、とっさのことだった。
「?! なにィ?! 」
視線が、ぶつかる。
「……」
(やっぱり……そうだ……)
きづいて、しまった。
ならば、臆するわけには、いかなかった。
私の瞳はただじっと、彼の瞳をみつめていた。
「ひ、ひぃいー!! 」
「に、にげろ! 」
一瞬、彼がこちらに気をとられた隙に、高校生二人が私の近くにある勝手口のようなドアから飛び出してきて、屋外へと逃げていく。
「ちっ! ……やれ」
「ぐっ! 」
開け放たれた扉から室内の様子をうかがうと、なんとさっきの、『ジョジョ』さんと、保険医の先生らしき女性が取っ組みあいをしているのがみえた。
「……。女、いま、わたしにやめろといったのか? なんだ貴様は……? 」
氷のような目をむけて、彼は私にいう。
しかし私が声を発する前に、それを聞いたジョジョさんが、女医さんを押さえつけながらいう。
そちらの彼の方からも、人型の、『なにか』、がでていた……。
「てめー、こそ、なんだ……?!
石段でおれの足を切ったのも、この、女医の、変貌ぶりも……
すべててめーの仕業か、花京院! 」
「……そのとおり。その女医はわたしのスタンドが憑りついて操っている。
わたしのスタンドを攻撃することは、その女医を傷つけることだぞ。承太郎」
マリオネットを手にした、花京院…とよばれた彼がいう。
「!? 」
(花京院……? す、スタンド……? )
「てめえッ! な、何者だ!? 」
「わたしのスタンドの名は『
わたしは人間だが、あのお方に忠誠を誓った」
(あの……お方……? )
「だから! ……きさまを殺す!! 」
彼が人形を操ると同時に、女医さんが再び暴れはじめ、承太郎……さんに飛び掛かる。
その、口の中に、なにか……が潜んでいるのがみえた。
「く、口のなかに……! 」
「! 」
「うおおおお!! 」
「なにっ!? 」
次の瞬間、承太郎さんは女医さんを押さえつけ、そして…
キスをした。
(わ、わわっ! )
そんな場合ではないが、おもわず目をそらす。
テレビ等ではなく……こんな間近でキスをしている人をみるのなんて初めてだった。
変なところで戸惑っている私をよそに、次の瞬間、承太郎さんの人型の、『なにか』が、口の中から『なにか』をひきずり出した。
「この先生をキズつけはしねーさ!
こうやってみれば、なるほどとりつくしか芸のなさそうなゲスなスタンドだぜ……、
緑色でスジがあって、まるで光ったメロンだな! 」
その言葉になぜかおぼえてしまう、違和感。
(え……でも……)
「はっ!? 」
(だ、だから! そんな場合じゃないって……! )
「ひきずり出したことを……後悔することになるぞ……承太郎……」
またも一瞬あさってな方向に飛んでしまった私の意識は、不穏な言葉により引き戻された。
「つよがるな。額に指のあとがくっきり浮き出てるぜ。
このまま……きさまの『スタンド』の頭をメロンのようにつぶせばきさ まの頭もつぶれるようだな。
ちょいとしめつけさせてもらうぜ。気を失ったところで、きさまをおれのじじいの所へ連れていく……おまえにとても会いたいだろうよ。おれもDIOという男のことが、すごく興味あるしな」
(じじい……? ディオ……? )
ふたりの因縁は一体なんなのだろう…そんな疑問に気をとられていた瞬間だった。
「はっ!? 」
「えっ!? 」
(なに……? あれ……)
気づくと承太郎さんのスタンドに頭を掴まれている彼のスタンドの手から、緑色の液体がボトボトと流れ落ちている。
「くらえ、我がスタンド『法皇の緑』の……」
「花京院! 妙な動きをするんじゃあねえ!! 」
「エメラルドスプラッシュ!! 」
上下に向かいあわせた両手の隙間に流れる緑色の液体。そこから、無数の宝石のような礫が発射される。
それは、凄まじい勢いで承太郎さんのスタンドを吹き飛ばした。
主も同時に保健室の壁を壊すほどの衝撃で、たたきつけられ、その口からは鮮血がほとばしる。
「エメラルドスプラッシュ……
我がスタンドの『法皇の緑』の体液にみえたのは破壊のエネルギーの
きさまのスタンドの胸をつらぬいた。よってきさま自身の内臓はズタボロよ。そして、その女医も……」
「あっ! 」
女医さんの耳や口からだらりと一筋の血液が流れ、その身はぐらりと倒れ臥した。
「いったはずだ……わたしの『法皇の緑』に攻撃を仕掛けることはその女医を傷つけることだと……」
(そ、そんな……)
「わたしのスタンドはきさまのより遠くまで行けるが広いところは嫌いでね。
必ず何かの中に潜みたがるんだ…ひきずりだすと怒ってしまう……
だから、のど内部あたりを出るときキズつけてやったのだ。
おまえが悪いのだ。承太郎、おまえの責任だ。これは承太郎……おまえのせいだ。おまえがやったのだ。最初からおとなしく殺されていればこの女医は無傷で済んだものを……」
「……」
「さ、とどめだ。……ん? 」
なにも考えていなかった。
ただ、体が、勝手にうごいていた。
「……だめ……です」
* * *
なんの罪もない人たちを、相棒が、傷つけていく。
やつの『言葉』が頭の中に響いて以降、『僕』の身体は乗っ取られたように、自由を失った。
その命令に忠実に従い、己の能力を非情に奮う『自分』をなす術もなく、ただ、みているだけ。
……地獄だった。
そして、相棒の攻撃をもろにくらい倒れた彼に、なおもとどめを刺そうとする『自分』。
(……やめろ! やめてくれ! ……ちくしょう! )
その懇願の声は『自分』に届くことはなく、むなしく響くだけだった。
しかし、そんな僕の前に、立ちはだかるひとがいた。
「……だめ……です」
(え……? )
悲痛な表情を浮かべ、そのひとは懸命に訴えかける。
「やめてください! あなたは! ほんとは……! 」
(な!? )
先程も自分をとめてくれた、見知らぬ、あの彼女だった。
「お、おまえ……?! ……ば、かやろう。来るな……! 」
倒れ臥した男から驚愕と制止の声が飛ぶ。
「先ほどから……一体なんだというのだ……本当に。
どこの誰だかしらんが、愚かな女だ。死にたければお前から死ね」
そして『自分』が冷徹非道な言葉と視線を彼女に向けて投げると同時に、相棒が禍々しきエネルギーをその手掌に集中し始める。
(だめだ……にげてくれ……! ……たのむからっ……! )
この至近距離からあの攻撃をそんな華奢な身体で受けたら……致命傷は必死だ。
「……くらえッ! 」
(……やめろぉおーッ!! )
渾身の力を、意識を、集中する。
動くな、とまれ、と……。
「……な、なんだ……? ……うごかん……! くっ……」
「え……? 」
「……ちっ……こいつまだ抵抗を……めざわりな」
「あ、あなた……!」
対峙する二人から、驚きと戸惑いの声が漏れる。
「こ、の……!……敗者はッ、おとなしくしておけッ……! 」
忌々しそうに『自分』が吐き捨てた瞬間だった。
(ぐ……あぁぁぁ!! )
僕の頭を稲妻に貫かれたかのような激しい疼痛が包む。
「はぁはぁ、こんどこそ……死ねッ! 」
(……く、くそ……)
どうにかしたかったが、限界だった。
無情にも、相棒から放たれた無数の破壊のエネルギー弾が彼女を襲う。
(くっ! )
みていられなかった。
そうだ。ずっと、おもっていた……。
もう、いっそ、みえなければ……。
(はっ……! )
しかし、そこで気づく。
(……よく考えたら、このひと……。
さっきから……
みえて、いる……?
エメラルドスプラッシュが。
……ハイエロファントが……)
(みえている)
(それは、すなわち……、まさか……!? )
「な、なにィ!? 」
「……させない……」
攻撃は、彼女に当たる前に、すべてはじきとばされる。
(このひと……も? )
その身体は、綺麗な薄桃色の光におおわれていた。
「そ、そんな……?! 」
そして、まっすぐに、『僕』の瞳をみすえ、いう。
「だいじょうぶです……もう、これ以上、『あなた』にだれも、傷つけさせない……! 」
「おまえ!? 」
「なッ!? き、きさま、スタンド使い!? 」
(だいじょうぶ……だって……?
……いま、たしかに……
……このひと……、なんで?
なんなんだ、ほんとうに……。)
僕の頭の中は、そんな疑問でいっぱいだった。
「おい……てめーの相手はおれだろう……」
「はっ……! 承太郎!? 」
『自分』が彼女のほうに気をとられている隙に、いつのまにか彼が立ち上がっていた。
「喧嘩の相手は病院送り……気に入らねー奴は先公だろーがぶちのめす……
この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルをはられている……
だが、こんなおれにもはき気のする『悪』はわかる!! 」
「『悪』とはてめー自身のためだけに、弱者を利用し踏みつけるやつのことだ!!
スタンドっつーのは厄介なもんだぜ……
やられたやつにも法律にも見えねぇし、何が起きたかなんてわかりゃあしねえ……。
だから……」
「おれが裁く! 」
「承太郎さん……」
彼女が呟く。
(……承太郎……)
空条承太郎。
DIOの宿命の相手……ジョースター家の末裔。
―この男も……『運命』に翻弄されているのだろうか……―
先程、あの石段の上で初めて彼を見た時に思った。
しかし、ちがった。
『翻弄』など、されていない。
真っ向立ち向かっている……『運命』に。
いや、そんなもの打ち破る、強さがある。この男には。
(君は……恰好いいな……。『自分』とは、おおちがいだ……)
直感した。この時。
『自分』は彼に、勝てないだろう、と。
そんな中、なおも『自分』は続ける。吐き気のもよおしそうな台詞を。
「それはちがうな……『悪』とは敗者のこと……『正義』とは勝者のこと……だ。
よくいうだろう? 勝者が歴史を作る……そんなものだ。
勝利がすべてよ! 敗けたやつが『悪』なのだ」
言いつつ、ふたたび破壊のエネルギーを練り始める。
「これで終わりだ! くらえ、エメラルドスプラッシュ! 」
迫りくる攻撃。にもかかわらず、承太郎はニヤリと笑う。
「……なに? 敗者が『悪』……それじゃあー……やっぱりィ! 」
「てめーのことじゃあねーかァーッ! 」
「なにィッ! エメラルドスプラッシュをはじき飛ばしたッ! 」
刹那、ハイエロファントを掴み、しめつける!
「オラオラオラオラオラオラ!
裁くのは、おれのスタンドだッー!! 」
無数の拳のラッシュをくらい、ふっとばされる。
「ぐはぁあッ!! 」
激しい衝撃。そして、頭に浮かぶおもい。
(……よかっ……た……。……これで……。)
(……もう、だれも……きずつけなくて……いいんだ……)
『自分』とともに、『僕』の意識も……ここまでのようだ。
薄れゆく意識のなか、僕の心のほとんどは、その安堵感で占められていた。
しかし、ひとつだけ……たったひとつだけ、気になった……。
「あ……あぁっ……! 」
怒涛の展開に呆然と立ち尽くしているこの女性……。
(……このひとは……いった、い……)
もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?
-
そのまま4部にクルセイダース達突入
-
花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
-
花京院の息子と娘が三部にトリップする話
-
花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
-
読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!