私の生まれた理由   作:hi-nya

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あ、この世界では今後の都合……ゲフン……!
えー、まぁ、あと一日だしここでも大丈夫だろ、ということで、原作と異なりそのままアスワンにいます。合流も諸事情により早めです。

ということで病院三日目です。今後の前フリ、かつ、今までちらほら出していた伏線もどきの一部回収……? そんな回です。おそらく。



赤い糸

「……うん。また、必ず連絡するから。……じゃあ」

 

 受話器を置くと同時に、軽やかに足音が近づいてくる。

 

「どうだった? 」

「叱られました。父に」

「……だろうね」

 

 少し離れて僕の様子を見守っていてくれていた彼女。

 

「いつぶりだろうな。あんな風に父に叱られるのは。

 母には……泣かれてしまうし。

 親を泣かすなんて、はじめてですよ、こんなの」

 

「そりゃあそうだろうね。

 ……やーい、この親不孝息子」

 

 しかし、その声音は台詞にまったくそぐわない、明るく弾んだものだった。

 

「ちょっと、さっきからなんでそんな嬉しそうなんですか……」

 

 発されたそんな僕の苦言に応えることもなくなおも彼女はいう。

 

「……ばんかい、しなきゃだね」

「……え? 」

 

「帰ったら、たくさん。……親孝行」

 

「……ふっ! そうですね」

 

「あ、そろそろ時間だ。じゃあ、戻ろっか」

「はい」

 

 

「まったく、ひとの気もしらないで……

 『どこにいるんだ! 』『今すぐ迎えに行く! 』

 ……ってふたりとも凄い剣幕なのをなだめて誤魔化すの、大変だったんですからね」

「そうだろうね。自業自得だね。……よかったね」

「いや、だから……」

「じぶんがいちばんうれしそうじゃない」

「う……」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

 電話を終えた彼とともに部屋に戻ると、ちょうど今朝の回診の時間がやってきた。懸念とともにハラハラとそれを見守っていると、案の定、医師からこんなセリフがもたらされる。

 

「あれ? 君、昨日……泣いた? 」

 

「……すみません」

「腫れちゃってるじゃあないか……。どうしたの? 」

 

 あきれ顔の医師。おもわず割って入り、自首する私。

 

「すみません! わ、私が悪いんです! 」

「君が? ……離婚届でも突き付けたのかい? 」

「そ、そんなわけないでしょう! もう……」

 

 しかし、ある意味惜しい。むしろ逆だ。うっかり勢いで(……本音だけど)プロポーズまがいのことをいいました。……いろいろすっとばして。と、ありのままを伝えたら、このけっこうおちゃめな先生はどういう反応をするだろうか。

 

 幸いなのか、なんなのか、どうやら彼にはそういうふうにはとられなかったようで……。

 昨晩あのあとも今朝も、まったくもって、いままでどおりの態度で接してくれている。

 

(友だちとして、ってことにしてくれたのかな。たぶん。

 ……気まずいから、そこはきづいてないことにしてくれているんだったらどうしよう……)

 

 そして、医師から続いて朗報ももたらされる。

 

「まぁ、経過は順調だけど。もう傷はほとんどふさがっているよ。

 明日の朝辺り、外そうか? 包帯」

 

「「ほ、本当ですか!? 」」

 

「ああ」

「じゃあ、明日退院ですか? 」

「いや、さすがに一日くらいは様子をみたいから、明後日だな。そのつもりでいて」

「はい」

 

「よかったね! 」

「ええ。思ったより早く合流できそうだ」

「うん! いろいろ準備しないとね」

「今どの辺にみんなはいるんだろうか……」

 

 そのとき、看護師さんが知らせにきてくれた。

 

「失礼します。ジョースターさんという方からお電話がかかってきていますよ」

「あ! ちょうどよかった! じゃあ、いってくるね」

「はい、お願いします」

 

 

 

 教えられた電話機の受話器を上げると、聞き慣れた明朗な声が聞こえてきた。朗報を伝える。

 

「そうかそうか! 明後日だな。わかった。

 こちらはおそらく、明日ルクソールに入り、一泊するようになると思う。そこでおち会おう!

 財団に連絡して、ヘリを頼むといい。わしからも伝えておく」

「わかりました。ありがとうございます! 」

「しっかし、やたら治りが早いな……。いいのか? 」

「ええ。お医者さんもびっくりしていましたが。だいじょうぶみたいです」

「まぁ、だいじょうぶならいいんじゃが。

 なんじゃ? 花京院のやつ、あいつ実は波紋戦士か? 」

「いや、それは……ないんじゃ……あ」

 

(波紋……。……まさかね)

 

 てのひらをみつめる。

 

「それはそうと、刺客とか来とらんか? 」

「あ、昨日一人きました」

「はぁ!? 保乃、おまえそんな、出前みたいに……。

 だいじょうぶだったんか!? 」

「はい。無事撃退できたので」

「そうか! よかったのぉ、残っておいて」

「はい! 」

「引き続き頼むよ。君も無理をせんようにな」

「ありがとうございます。そっちは、だいじょうぶですか? 」

「うむ、昨日承太郎が一人倒した。なかなか手強かったようじゃが……。

 まぁ、こちらのことは心配するな。問題ないよ。みんな無事だ」

「そうですか。よかった」

「ではまた明後日な」

「はい! また」

 

 

 

 部屋のドアを開けると同時に、身を乗り出すようにした彼から詳細を訊ねられる。

 

「おかえりなさい、どうでした?! 」

「うん、ルクソールで合流することになったよ。財団のヘリがここまで迎えにきてくれるって」

「なるほど。……みんなは、無事ですか? 」

「うん、だいじょうぶみたい。向こうにも強敵が現れたそうだけど、承太郎君がやっつけたって」

「そうなんですね……。早いとこ合流しなければ」

「うん」

「でも、そのまえにこっちにまた誰か来たりしてね……」

「……やめようよ。あなたの予想、よく当たるんだから……」

 

 

 

 

 

「はい、まずは、スープ。で、つぎは、ごはん……でしょ? 」

「おお! よくわかりましたね。新しいスタンド能力にでも目覚めました? 」

「もう、そんなわけないじゃない! 」

「わかってますよ。ふふ」

「つぎはおかずだよね。はい」

 

 ここ三日間の成果か、彼の食事パターンはだいたい把握できるようになっていた。

 我ながらちょっと誇らしい気持ちになる。……と、同時に、すこしだけ、寂しくなる。

 

(そっか……こうして、食べさせてあげられるのも、今日まで……かぁ……)

 

「! 」

 

(ハッ! なに考えてんの!? 回復するのはいいことなのに!

 ごめんなさい! ごめんなさい! いまのなしで……! )

 

 だれにかわからないが、心の底から謝る。そして、祈る。

 

(どうか、なにごともなく、無事、彼の眼が治りますように……)

 

「どうしたんですか? 」

 

 そんな私の様子に気づいたのか、食後のお茶を飲みつつ、彼が訊ねる。

 

「ううん。じゃあ、私、ごはん買ってくるね」

「はい、いってらっしゃい」

 

 

 

(さぁって、今日はどれにしようかなぁっと)

 

 院内の売店にて、様々なパンを前に考える。

 併設の食堂にて手作りされているものらしい、総菜パン、菓子パン、サンドウィッチ……どれもおいしそうで魅力的だ。

 しかしずっと気になってはいたものの、いつも売り切れていたアレが今日はまだ残っていた。

 

(あ! やった! ちょっと奮発しちゃおう。ふふっ)

 

「すみません、これください。……ん? 」

 

 すると、食堂の片隅に少年たち……一人が大勢に囲まれているのに気づく。

 皆で遊んでいるのかと思ったが、よく見るとそうではないようだ。

 

「おい、うまそーなもんもってんじゃあねーか」

「ちょっと貸してみろよ。オレが食ってやるから……へへ……」

「だ、ダメなのです……

 これは入院中のお、お、おにいちゃんにあげるものなのです……」

「うるせぇっ! 」

「よこせっつってんだろ! 」

「あっ! 」

 

 袋を取り上げられ、殴られる少年。

 

「うわぁん、い、痛いっ! 」

「へへ……おお! うめぇ! 」

 

「……」

 

(……子どもの喧嘩にしゃしゃり出るのもなぁ……うーん)

 

 動物は好きだ。

 こういうと何故かセットで子どもも好きだろうと思われがちだが、実はそうでもない。

 嫌いなわけではないが、好きでもない。というか、比較的苦手かもしれない。

 あまりふだん関わり合いにならないからかもしれないが、正直どう接していいのかわからない。

 

――あんたもいつか母親になったら変わるわよ――

 

 ……なんて昔、母さんにいわれたことがある。そんなものなのだろうか。

 

 そっとしておこう……

 そう思ったはずなのだが。

 

「……」

 

 しかし、『集団だからといって全てが許されると思っている人達』というのはもっと好きではない。それに、なぜだかやっぱり気になって、見過ごすことができなかった。

 

「……こんにちは」

「ああ? なんだよねーちゃん? 」

「なんか言いたいことでもあんのかよ」

「これはオレたち子どもの問題なんだよ」

「大人はすっこんでろよ。ああ? 」

 

(……。この歳でこれかぁ……将来が心配だなぁ)

 

 若気の至りといつか思う日がくるといいのだが。

 そんな風に思いつつ、持っていた物をスッと前に出す。

 

「まぁまぁ。これ、あげますから」

「こ、これはッ! 」

 

「ここの売店名物、幻の、DXコロッケパンッ!! 」

 

「く、くれ! 」

「欲しいっ! 」

 

 群がってくる少年たち。ひょいと袋を高く掲げる。

 

「おっと……勘違いしないでいただきたい。

 ただで差し上げるなんて、一言も言っていませんよ」

 

 

「かけっこで……一等賞になった人に、これを差し上げましょう……! 」

 

 

「さぁ、中庭に出るがいい! 正々堂々、勝負したまえッ! 」

 

「うおおおー! 」

「いくぜ、やろうどもー!! 」

 

 一斉にとび出ていく悪ガキさんたち。

 前言撤回。こういう単純なのはそんなに嫌いではないかもしれない。

 

「おっと」

「わっ!? 」

 

 そして、その隙にこっそり逃げ出そうとしていた殴られた方の少年の首根っこを摑まえる。

 

「君も参加に決まっているでしょう。

 逃げられるとでも思っているんですか……? 」

「ひ、ひぃい! だ、駄目なのです。

 ぼ、ぼくは文化系で……かけっこなどからっきしなのです! 」

 

 涙ながらに訴える少年にこそっと耳打ちする。

 

「……だいじょうぶ。ふつうに走ればいいだけだから。ね? 」

「……え? 」

 

 

 

「位置について……よーい、どん! 」

 

 かくして、コロッケパン争奪、チキチキ中庭レースはスタートした。

 

(……。なんでこんなことしてんだろう、私。

 って、自業自得か……)

 

 ゴールにて、むこうから駆けてくる少年たちを見やる。

 先頭はリーダー格と思しき大柄な子。

 その後も舎弟の皆さんたちが続き、例の少年はひとりかなり遅れていた。

 

(……しかたない)

 

 芝生だし、たいした怪我はすまい。そう確認しつつ、密かに呼び戻しておいた相棒をロープ状にして、こっそり罠を仕掛ける。

 

「あ! 」

「わっ! 」

「ぎゃっ! 」

 

「え? あ、あれ? なんで……?! 」

 

「はい、ゴール。君が一着ですね。

 ……どうでもいいけど、走る時はうつむいてないで、前をみて。

 で、目は開けといた方がいいですよ。危ないし。

 運動が苦手な子どもさんに多いらしいけど」

 

 続いてそこらかしこで倒れ臥している悪ガキさんたちの方を向き直る。

 

「あら、他の皆は転んじゃいましたね。

 そろいもそろって、なにもないとこで……不思議ですね。残念でした」

 

「い、いたいよぉ! 」

 

「痛いですか? そうでしょうね。

 ……知っていますか?

 殴られたら、もっと痛いんですよ?

 だいじなものとられたら、もっともっといたいんですよ?

 ……いいお勉強になりましたね。よかったですね。では」

 

「お、お、お姉さん……! 」

 

 そして、狐につままれたような表情で問いかけてくる少年に約束の物を渡す。

 

「おめでとう。はい、賞品。

 ……お兄さん、お大事にね」

 

「あ……」

 

「もっと堂々としていてもいいんじゃあないかな?

 君は、きっと、お兄さん思いの……いい弟さんなんだから。

 ……自信もってください。

 って、また、よけいなお世話かな。

 ……じゃあね。」

 

「……」

 

 

 

 

 

 部屋に戻る。

 

「ただいま」

「おかえりなさい、っ……! 」

 

 すると、私の顔をみた途端、なぜか急に俯く彼。

 

「ぷっ! ……くく、くくく……」

 

 そしてそこから漏れる笑い声。

 

「な、なに笑ってるの? 」

「いえ……」

 

「……けっこう、子どもには厳しいんだな、と」

 

「っ! え!? み、みてたの?! 」

「そんなわけないでしょう?

 何度もいいますけど、僕いま見えませんって」

「そ、そうだよね」

 

 安心しかけたところに、しれっと彼はいう。

 

「……『聞いて』は、いましたけど」

 

「……」

 

「『勝負したまえッ! 』……って、一体何者だよ。あなたは……。

 く、く……、ふはははは! 」

「う、……ちょ、わ、笑い過ぎでしょ! 」

「あぁ、面白かった! いやぁ、楽しませてもらいました」

「ぜんぜんおもしろくないよっ!

 あーもう! やっぱり子どもなんて好きじゃあないッ! 」

「ふっ! まぁまぁ、そういわずに。

 いいことしたんじゃあないですか?

 ああいうお子様方には早めのお仕置きと躾が必要だ」

「そうかなぁ……」

「ええ。

 ……あなたはいつか、いいおかあさんになりそうですね」

 

「……っ……! 」

 

 またもしれっと……そんなことをいわないでいただきたいものだ。

 

(どきどき……しちゃうじゃない)

 

「ああ、またおもいだしてしまった……!

 ふ、ふふふ、フハハハハ……、フホホアハハハ……ノォホホノォホ……」

「……むぅ……」

 

 まぁ、あいかわらず、そんな意味も自覚もちっともないのだろうけれど。

 

 

 

「ふぅ、笑った笑った。

 しかし、残念でしたね。コロッケパン」

「そうだよ。あーあ、私の愛しのデラックス様……」

「もう一個買えばよかっただけじゃあ……? 」

「もうなかった……」

「そんなに人気なのかよ……」

 

「……くっ! 明日こそは!! 」

「はいはい、がんばって。

 ……僕の分も、ふたつで、御願いしますね」

 

 

 

 スタンド使い同士はひかれあう。

 

 

 

 のちに知ることになるこの文句はこんなところでもやっぱり正しかったわけで……。

 まぁ、そんなことを私が知るのは……本当に、ずっとあとになってからなのだけれども。

 

 

 

*         *          *

 

 

 

 昼食が済み、午後からは音楽やラジオを聴いたりして、のんびりと過ごすことができた。

 

「あ、終わった。次はどのテープにしよっか? 」

「今度はあなたの好きなのでいいですよ」

「いや、それが私、恥ずかしいんだけど洋楽って今まであまり聴いたことがなくて……。

 だからそっちの聴きたいので」

「そうなんですか? ……じゃあ……で。

 ついでに自分の好きなのも持ってきてもらえばよかったのに」

「だいじょうぶだよ。私は精密動作の練習で忙しいんだから。なんてね」

 

 そういって笑う彼女。ほんとに自主トレをしていたのか。

 

「……ああ、でもやっぱり上手くいかない」

「なにをしているんですか? 」

「ん? セシリアに文字を書いてもらってます……。

 へったくそだったでしょう? あのとき」

「ああ。あのとき。

 でも初めてにしては上出来だったと思いますが……読めたし」

「……ご先祖様にもそういわれた。

 うーん、あのときに比べたらましになってきたかなぁ……」

「すぐ上手になりますよ。まぁ、焦らずに」

「うん、ありがと。がんばる」

「ええ」

 

「スタンドって、修行でどれくらいつよくなるものなのかな? 」

「どうなんでしょうね? おそらく個人差が大きいとは思いますが……」

「そっかぁ。まぁ、でも、するにこしたことはないよね! 」

「ええ。それだけは確実ですね」

「そういえばポルナレフさんもしたって言ってたね。

 『フフフ……理由あって、修行をした』……って」

 

「……。肉の芽つきの方で来ましたか」

「ん? 」

 

 似てないモノマネ、ポルナレフ編、肉の芽つきver。

 うん……やっぱり……。

 残念ながらこちらはあまり上達が見込めないようだ。

 

「……いえ。似てないな、と」

「ぐっ……! 」

「まぁ、それは置いとくとして、意外とああみえて、あいつ努力家ですからね」

「ふふ、そうだね。見習わなきゃ」

 

 

「……ちゃりおーっつ!! 」

 

「うわ! なんですか。いきなり……」

「……どう? 」

「……27点」

「100点満点の? 」

「もちろん」

「だめかぁ……」

「勢いしか似ていない。かるく赤点ですね」

「ひ、ひどい!

 い、いつか似てるって言わせてみせるんだから! 」

「はいはい。……いつか、ね」

「むぅ……! 」

 

「あ! ふふふ……」

 

 何かを思いついたように、不敵に笑う彼女。

 

「どうしたんですか? 」

「いいえ?

 そんなにいうなら、さぞかしあなたは上手なんだろうなぁ……って!

 ちょっとやってみ……」

 

「チャリオーッツ!! 」

 

「へ!? え? あれ? ぽ、ポルナレフさん!? いつのまに? ど、どこ? 」

 

「……オレの名はジャン・ピエール・ポルナレフ。

 スタンドは……戦車のカード、シルバーチャリオッツ……! 」

 

「に、似てる……! 本物かとおもった……」

「ふふふ、まぁ、ざっとこんな感じですか? 」

「えええ?! なんでそんなに上手いの!? 実はこっそり練習……? 」

「……なわけないでしょう。意外とできるものですね。はじめてやりましたが」

「く、くやしいー! 」

 

「いいもん……天才は99%の努力と1%の才能だもん……

 エジソンもそういっていたもん……」

「またなにをぶつぶついっているんですか……」

「なんでもないですー! ええと、次のこれだったよね」

 

 カチャリという音のあと、ゆるやかに聞き慣れたなつかしい曲が流れだす。

 

「……イギリスのシンガーさん、なんだね。

 このひとのうた、はじめて聴いたけどいい曲ばかりだね。

 もっと聴いてみたいかも……。日本に帰ったら買おうかな」

「でしょう!? ふふ、よかった。

 買わなくても、これ持って帰ればいいじゃないですか。

 僕ここにあるやつ全部持ってますし」

「あ、そっか」

「他にもおすすめがあるので、よかったら貸しますよ」

「ほんと? ありがと! 」

 

「『オレより上手に歌うやつはたくさんいるが、オレのように歌えるやつはいない』

 これは数多くある彼の名言のうちのひとつなんですが……凄いですよね。どのようなジャンルでも、自分より優れた人間はたくさんいるもの。にもかかわらず、自分の持ち味を自分自身で理解し、それを『何ものにも恥じない』気持ち、それが生涯を貫く自尊心であり、揺るぎない自己への信頼がある。実際、彼の声も歌い方も、ハスキーな中に不思議な透明感があり、聞けば一発で分かる個性があります」

 

「彼は数年前に組んでいたグループを解散し今はソロで活動しているんですが、グループ時代に彼が作った曲もまた名曲揃いです。これがまたすごいところなんですが、彼らの曲には似通ったところがまったくない。どれも曲調、雰囲気がガラッと変わるんです。一曲一曲、異なるスタイルを打ち出してくる。パンク、レゲエ、ジャズ、正統派ポップス、ついにはスタンダードなラブバラード……と、非常にバラエティに富んでいるんです。新しいものがリリースされる度に、新たな彼らの音楽との出会いがある。これは誰にでも出来そうで、真似できるものではない」

 

「彼はけっこうエゴイスト……やんちゃなところもあったりするんですが、一方とても知的で繊細で、作る曲にそれが如実に表れている。ちなみに大変な読書家で、飛行機など移動の際にはいつも本を読んでいるそうです。……だれかさんみたいですね。やれやれだぜ。ってね」

 

「今流してもらったこれ……表題曲の『シンクロニシティ』とは、精神科医ユングの提唱したもので、いわば『意味のある偶然の一致』のことで、日本語訳では『共時性』などといいます。それを歌詞で彼は見事に表現しています。一般的にはちょっとわかりづらいかもしれませんが」

 

「そんなふうに社会派な一面や哲学的な表現もまた魅力的なんですが、彼の歌詞は、陰鬱とした心境を描いたものが多くて……それがまたいいんですよ」

 

 そこへ一つの曲がちょうど流れてきた。

 

「あ!これ!

 この曲……どう思います? 」

「ん……? ちょっとまってね」

 

 そういうと黙りこくる彼女。おそらく熱心に曲に耳を傾けてくれているのだろう。

 

「……うーん……、甘いメロディラインに、綺麗な歌声がマッチしてて……

 素敵なラブソングだと思うけれど」

 

「そうなんですよ! 表向きは!

 でも実はこの曲、恐い曲なんです。

 一部訳してみると……

 ……お前の仕草、そのたびに

 ……お前が歩く、その一歩ごとに

 ……俺はお前をじっと見ているからな……ですよ? 」

「うっ! 」

「この曲、実は最初の奥さんと離婚する時に作った曲らしいですよ」

「えっ!? 」

「当時のインタビューで彼は、

 『この曲はゾッとするほど不快でちっぽけな曲。むしろ悪い歌だと言ってもいい。嫉妬や監視、所有権のことを歌った曲だから』と発言したそうです。『悪意を持って監視している人間』、つまりストーキングの歌。このように彼の書く歌詞は、一筋縄ではいかないところが魅力的で……」

 

「……」

 

 彼女がほぅっと息をはくのがきこえた。

 

「はっ! すみません。また長々と……」

「あ!ううん!ちがうの!

 本当にすきなんだなぁって。おもって。

 ……いいよね。そういうの。

 すきなことって、ついいっぱい語っちゃうもんね。

 だいじょうぶだよ。よくしっているでしょう?

 あなたがそういうふうに話をしてくれるのをきくの、私すきだもの」

 

「それに……

 ふふ、なんだか……あなたらしいよね。

 すごく、あなたがすきになりそうなひとなんだなぁって、よくわかっちゃった。

 おすすめ貸してもらうの、たのしみだなぁ」

 

 くすくすととても楽しげにそんなことをいう。

 

(……ぐっ……)

 

 不覚にもそんな様子に、そして、いま、彼女がしているであろう表情を想像するだけで、うるさく胸の鼓動が高鳴ってきてしまうのを感じる。

 

 しかも、その……二文字……を、そんなふうに何度も連呼しないでいただきたい。

 そういう意味じゃあない。

 なんて、そんなことはよくわかってはいるけれども。

 

(くそう、あいかわらずだな……。はっ! )

 

「……そうだ。日本に帰ったら、なかでも、ぜひあなたに聴いてほしい……とくにおすすめの曲があるんですよ」

「ん? なんていう曲? 」

「邦題は『マジック』といいます。おぼえておいてくださいね」

「うん。でも……帰ってからなの?

 気になるし、はやく聴きたい……。

 このテープの中のどれかに入っていないの? 」

「うっ! ……ええと、僕の渡すものを、聴いてほしいので……

 あとのおたのしみ、ということで」

「そうなの? じゃあ、しょうがないかぁ。

 仰せの通り、我慢して、おたのしみにとっておきます」

「……おねがいします」

 

(……あぶないところだった……)

 

 聴いてほしい……が、いまはまだ……まずいのだ。

 

 どうやらいうとおり、まっていてくれるらしい彼女の様子にほっと胸をなでおろす。安心すると急に反動か、睡魔が襲って来た。

 

「ああ、なんだか、一気に話したら眠くなってきました……」

「いいんじゃない? 少しお昼寝したら? 」

「……じゃあ、すみません。おやすみなさい」

「おやすみ」

 

 目を閉じ、微睡みの中、おもう……。

 

 こんなふうに穏やかな時を、すきなひとと過ごすことができるなんて。

 

(怪我も、すべてが悪いものではないのかもしれないな……なんてね)

 

(まったく……本当に、けしからんな……)

 

 

 

 

 

 そうして、あっというまに日は暮れて、夜がやってきた。

 

「眠れないの? 」

「あ、はい……。昼寝しちゃったからですかね」

 

(それもあるけれど……)

 

 明日包帯が外れる。僕の目は果たして本当に見えるようになっているのか。

 先生もああ言っていた。そんなに不安があるわけではないはずだが……。

 やはり心の底では気になっているのかもしれない。

 

「……。じゃあさ、むかしばなし、してあげよっか? 」

 

 すると、唐突に彼女がそんなことを言い出した。

 

「むかしばなし? そんな、子どもじゃあるまいし……」

「まぁ、いいじゃない。うちに代々伝わるやつ。けっこうおもしろいよ」

「……あなたのうち、代々伝わっているもの多すぎじゃあないですか……? 」

 

 しかし、ちょっと興味がわいたのも事実だった。

 

「ふーん……。じゃあ、お願いしようかな」

「了解いたしました。では、僭越ながら……」

 

 ひとつ咳払いをし、彼女は話はじめた。

 

「むかしむかし、あるところに……

 とってもビューティフルでプリチーでワンダホー、

 かつ、性格もよく、冷静沈着聡明な、少女がいました」

 

「ぶっ! なんですか、それ……」

「いや、冒頭、ほんとにこんなんなんだって……。私が考えたんじゃないんだよ……」

「……ほんとに代々伝わってんですか……? それ」

 

 とてもじゃあないが、そんな由緒正しさは感じられない。

 

「ちゃんと伝わってます。失敬な。続けるよ! 」

 

 

 

 

 

 少女は旅のとちゅうでした。たいせつなものをさがす旅でした。

 いくつもの海を渡り、いくつもの国を巡りました。

 

 でもさがしているものはなかなかみつからず、いたずらに時は過ぎていくばかりでした。

 

 まっしろに雪のつもった、ある日、ある国でのこと。

 たまたま迷いこんだ森のおくに、大きな洋館がありました。

 しんと静まり返っており、誰も住んでいないようです。

 今夜はここで眠らせてもらおう。

 そう思い、少女は中へと入っていきました。

 

 好奇心でむずむずした彼女が館を探検してまわっていると、突然の、大きな地震。

 

 くずれゆく館。

 はやくにげなければ。少女は外へと急ぎます。

 

 しかし、その途中で……

 運命はふたりをひきあわせました。

 

 だれもいない……。そう思っていたのに、そこには、二人の男がいました。

 

 一人は大地を揺るがすこともできそうな大男。

 もうひとりの男のひとは……

 

 血まみれでした。

 

 

 

 

 

「……は? なんかいい感じになってきたかと思ったのに……。なにそれ? バイオハ……」

「ちがう! 」

 

 

 

 

 

 少女はおもわず柱のかげに隠れ、そっと様子をうかがいました。

 倒れた血まみれの男のひとは、今にも息絶えてしまいそうなほどの大怪我をしているようです。

 

 そんな彼に追い討ちをかけるかのように、瓦礫の雨がふってきました。

 おもわず彼女はとびだして、その身を挺して彼を、庇いました。

 

 もちろんそんなこと、大男は知りません。無言でその場を立ち去りました。

 いや、気づいていたけれど、助かりっこない……。そう思ったのかもしれません。

 

 けれど、ふたりは生きていた。

 彼女には、誰も知らない、秘密の力があったのです。

 

 

 

 どれくらいの時間がたったでしょう。

 男のひとは意識を取り戻しました。

 

 みると、ひとりの少女が瓦礫の下敷きになりそうな自分を庇ってくれているではないですか。

 不思議なことに少女と瓦礫のあいだには隙間があり、おかげでつぶれずにすんでいるようです。

 しかし、本人にはすでに意識がないようでした。

 

 彼は渾身のちからを振り絞り、彼女を抱えて瓦礫の外に脱出しました。

 

 でも、それが精一杯。彼の意識もそこで、また途切れてしまいました。

 

 

 

 彼がふたたび目覚めるとベッドの上でした。

 痛みでまだ起き上がれなかったけれど、傷には手当がしてありました。

 

 そして、傍らにはあの少女が眠っていました。

 自分を助けてくれた、あの少女が。

 

 あの不思議な出逢いのときを思い返します。

 

 でも、思い出せませんでした。

 

 

 それ以外のことは、なにも。

 

 

 じぶんはなぜ、あそこにいたのか……

 いったいじぶんは、なにものなのか……

 なにもわからなかったのです。

 

 

 それから奇妙な共同生活がはじまりました。

 少女の看病の甲斐あって、彼の傷は徐々に癒えていきました。

 

 しかし、失われてしまった彼の記憶だけは、戻ることはありませんでした。

 

 

 

 ふたりで過ごす日々はつつましいながらも、とてもしあわせなものでした。

 たわいもないことで喧嘩をするのはしょっちゅうだけど、それすらも楽しい。

 いつしかふたりは互いのことがなくてはならない存在になっていました。

 

 

 

 そして長い時をかけて、男のひとはすっかり元気になりました。

 しかし、そんなある日、少女が塞ぎこんでいるのに気づきます。

 問いただすと、彼女はこういいました。

 

 

「わたしは、かえらなければ、いけないの」

 

 

 少女の家は代々不思議なちからをもつ一族で、それを生業としている。

 その血を絶やさないため、二十歳で相手がいなければ、許嫁と結婚するならわしである。

 それが嫌で、そもそもそんな決められた人生を過ごすのにずっと疑問を感じていた少女は、家をとびだしてきたのでした。

 

 しかし、その期限は限界まで迫っている。

 かえらなければ、ならない、と。

 

 

 

「こんな血……大嫌い。どうしてこんな家に生まれたんだろう……」

 

 彼女は彼にいいました。

 彼はしばらく黙りこんでいましたが、やがてこう、いいました。

 

「……おまえがそんな家に生まれていなければ、おれは今頃あの世にいるんだぜ。

 その方がよかったっていうのかよ……。まったくひどい女だぜ」

 

「血の絆ってのは、まずいちばんに大事にするべきものだ。絶対にだ。

 自分の血統に……代々受け継がれてきた魂に誇りをもて」

 

「……記憶がないくせに、おかしなこといってるって思うか?

 でも、なんでだろうな? ……それだけは……

 ゆるぎないものとして、この心にたしかにあるのを感じるんだ……」

 

「……帰りな。世話になった。ありがとうな」

 

 

 

 夜が明けました。

 彼が目を覚ますと、彼女の姿はありませんでした。

 家中。どこにも。

 

「いって、しまったか……」

 

 彼女のいない、家。

 そこで彼はひとり、立ち尽くしていました。

 

 

 自分には、なにもない。記憶すらもない。

 

 彼女をしあわせにできるわけが、ない。

 

 だから、みずから、てばなした……。

 

 これでよかったのだ。

 心からそう思っている。

 

 なのに、なぜこんなに……。

 

 

 

 そんな彼の耳に、ききなれたこえが届きました。

 

「ただいま! 」

 

「今日は市場でイカが安かったから買ってきた」

 

「……あなたの得意なパスタ、また作ってよ」

 

 

 

 

 

「……わたしは、ずっと、さがしていた。そしてやっとみつけたの」

 

「ただひとつ、唯一無二の護りたいもの。つまりは自分が生きる理由」

 

「……あなたの、いうとおりだったの」

 

「あなたを護ることができて、わたしははじめて、じぶんの血を誇らしくおもえたの」

 

「そしてあなたと過ごす日々で、わたしははじめて、じぶんらしく生きているっておもえたの」

 

「わたしのたいせつな血、誇り高い魂……」

 

「それをいっしょに繋ぐのは、……あなたであってほしい」

 

 

 

 

 

「……そしてふたりはいつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。ちゃんちゃん」

 

「……。めでたい。……うん、そうだね。……けれども!

 ……えっと、それで、おわり……? 」

「うん。そうだよ。あれ? いまいちだった? 」

「いや、……よかった。

 実はけっこう感動してしまった自分がいるッ! ……が、しかし! 」

 

(もはやどこからつっこんだらいいのかわからんが……)

 

「……むかし、ばなし……? 」

「うん。まぁ、実はこれ、私のおじいちゃんとおばあちゃんのなれそめ話らしいんだよね」

「はぁ!? 全然伝統じゃないじゃあないですか」

 

 つっこみどころはつっこむたびに増える一方だ。

 

「え? 一応伝わってるじゃない。まだ2代目だけど。これから伝えていくもんね! 」

「なんだそれ……。まぁ、どおりでなんかリアルな……」

「小さい頃、私を寝かしつける時におばあちゃんがよく話してくれたから覚えちゃったんだよね」

 

(自分の恋の話を孫の子守唄代わりに……いいのか、それ……?

 ……ん? ってことは……)

 

「この話の中の『家』ってあなたのうちのことですよね? 」

「うん、まぁ、そうだね」

「そ、そんなならわし、あるんですか?

 仁美さん、あなた19ですよね……来年?! い、許嫁が、いるんですか……!? 」

「い、いないッ! いないよ! そんな人! 」

「そ、そうなんですか」

 

「ええと、正確にいうと話にでてきたのは本家で、そことは断絶ぎみというか……」

「ああ、そういえば言ってましたね。あなた最初の頃」

「うん。補足するとね、一応帰ったんだって。おばあちゃん、おじいちゃん連れて。

 でもなんか本家の親戚たちが、やいやいうるさかったから、結局、なんていわれようと結婚します、とだけ言って出てきたんだって。」

「や、やいやい……」

「そもそも、おばあちゃんは、本家のそういうところが嫌いだったんだって。

 お金をもらって誰かを護るっていうのが、あまり。

 だから母さんや私にあまりちからのこと、詳しくは伝えてくれてないんだよ。

 じぶんと、じぶんのたいせつなものを護るちからだって。それでじゅうぶんだって」

「なるほど……。おふたりは、えっと、今もご健在なんですか? 」

「うん、日本で元気に暮らしてるよ」

「おじいさんの記憶は……。今も? 」

「うん。記憶を取り戻そうといろいろ探ってはみたらしいよ。

 でもその途中でへんな人たちに襲われて……例の大男の関係者なのかわかんないけど。

 おばあちゃん、そのときお腹に母さんがいて……。

 セシリアに護られて母さんは無事だったけど、おばあちゃん大怪我したらしいの……。

 それからはおじいちゃん、もういいって。ふたりのほうがだいじだからって……」

「それは……そうなりますよね、……男としては」

「そうだよね……自分が何者なのかとか、なんでその人と闘っていたのかとか、ほんとはすごく知りたいだろうけど。故郷とか家族のことも」

「なにか手がかりはないんですか? 」

「うーん、ふたりが出逢ったのはスイスなんだけど、生活習慣から察するにイタリアなんじゃないかって。おばあちゃん言ってた。おじいちゃんのパスタおいしいし」

「そ、それだけでイタリア出身っていうのは……」

「い、いや、別に根拠はそれだけじゃないって」

 

「……あれ、ってことは……あなた……」

「あれ? いってなかったっけ? 私一応クォーターなんだよ。推定イタリア人の……」

「初耳ですよ! へぇー。全然……」

「みえないでしょ? 兄さんはおじいちゃんそっくりだからけっこうそれっぽいけどね」

 

 意外だ。彼女に関して、しらないことがまだたくさんあるものだ。

 

「他には何かないんですか? 出逢ったときの服装とか持ち物とか……」

「えーとね、頭にけったいな飾りつけてて……

 あと、なんか、服、洗濯したら泡だらけになったって。

 ……おじいちゃんの正体って、ほんと、なんなんだろ……」

「あ、泡……? なんで……?

 しかし、けったいって……なんて言い草だ。おじいちゃん泣きますよ……? 」

「だっておばあちゃんがいってたんだもん。

 派手でけったいな格好で、きれいな金髪で……

 いっつも眉間にしわが寄ってて、素直じゃあなくて……

 でも、ほんとはすっごくやさしくて……

 今まで出会ったどの男のひとよりも、比べようがないくらい、かっこよくて……

 こんな素敵なひといるんだって、おもったって。

 けっきょくそうやって……」

「……惚気話をされるわけですね」

「そう。今でもふたりラブラブなんだよ。

 でもそういうの、いいなぁって。

 ずーっとかわらない……いや、つよくなっていくきもちって、やっぱりあるんだね」

「……運命の相手、ってやつなんでしょうね。だれにでもきっと、ひとり、いる……」

 

「……」

「……」

 

「ろ、ロマンティックだよね! 」

「そ、そうですね! す、素敵な話を聞かせてもらいました……」

「よ、よかった。そういってもらえて……」

 

(そういえば当初の目的は……。むしろ眠れなくなってしまった気がするが……)

 

「いつかおじいちゃんの記憶、取り戻させてあげられたらなぁ……」

「探しにいったらいいじゃあないですか。この旅が終わったら」

「あ……そっか。そうだね! うん、そうする! 」

「……そのときは、僕も付き合ってあげますから」

「え!? 」

「だって気になりますもん。大男の正体とその後」

「あ、ああ、そうだよね。たしかに私も気になる……」

「それに……」

「? 」

 

「あなたひとりじゃあ、あぶなっかしい。

 しょうがないから、僕がちゃんと、……ずっと、そばについててあげなきゃあね」

 

「っ!! 」

 

「むかしばなし、ありがとうございました。じゃあ、おやすみなさい」

「お、お、おやすみな、さい……」

 

(……昨日の仕返しだ。)

 

 昨晩はあれから一睡もできなかった。あたりまえだろう?

 

 ……胸がいっぱいで。

 

 ……こころのなかが、あなたへのきもちで、あふれていて。

 

(……すこしは、伝わっただろうか?)

 

――あなたのそばにいたい――

 

(……そんなの、そっちだけじゃあないんだと……)

 

 

 

 

 

 




コロッケパンはみんなだいすき至高の食品ナリ!
そんなのがエジプトにあるかよ……なんていわないでほしいナリ!



もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?

  • そのまま4部にクルセイダース達突入
  • 花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
  • 花京院の息子と娘が三部にトリップする話
  • 花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
  • 読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!

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