私の生まれた理由   作:hi-nya

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はい、とうとうやってまいりました! みんな大好き『セト神』アレッシー戦でございます!!
すみません、案の定の予想通りのベッタベタです……




Too Young!!

(あいつらは! )

 

 オレの視線、その先にあるのは、一組の男と女。

 

(ち、ちくしょう、もう退院してやがったのか!

 は、話が違う! せっかく今、ポル……)

 

 情報屋の話ではあと二、三日は出てこれまいと、そのはずではなかったのか。

 

(お、落ち着け! 落ち着くんだ……)

 

 そうだ、ある意味、好都合だ。自分に言い聞かせる。

 また礼金の値を釣り上げることができるではないか、と。

 

(……やつらは、強いッ……! )

 

 ひとりずつ、ひとりずつだ。

 殺ってやる。

 

 たとえ、どんな卑怯な手を使ってでも。

 

(この、『セト神』のアレッシー様が! )

 

「ハハフフフフフフ……!

 オレって、ほんっっと、えらいねぇ~~! 」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

「承太郎君たち、どこへ行ったんだろう……」

 

 磁力を操る女性スタンド使いを御老公お得意の機転で見事撃破した水戸の黄門……ならぬ僕達一行。しかし朝から散々振り回され尽くしたせいか、ジョースターさんとアヴドゥルさんの疲労は相当なもののようだった。よって、お二方には少し休んでもらうことにし、その間、僕と彼女は残りの仲間、承太郎達を探すことになった。

 かといって、頼みのセシリアも範囲外。他にあてもなくとりあえずホテルまで帰ってきたが、二人を見つけることはかなわなかった。

 

「反対方向に行ったのかもしれませんね。そっちを探してみましょう」

「うん」

 

 うなずく彼女にもう一つ思い立ち、提案する。

 

「あ、そのまえに、ちょっとトイレに行ってきていいですか? 」

「あ、なら私も行っておこっと。じゃあまたあとで」

「はい」

 

 先刻、のぞき(冤罪)事件のあった(起こしたのは身内だが……)御婦人用トイレに入っていく彼女。自分もその向かいにある紳士用のそれに入り、壁に居並ぶ白磁の便器達のひとつを選び小用を足す。なかなか綺麗な水洗式トイレなのが有難い……などと考えていた矢先だった。よりにもよって、だ。そんなときに限って、事件は起こる。

 

(……!? 殺気!? )

 

 首だけで振り向くと、背後に男がいた。

 

「……へへ、花京院典明だな」

 

「貴様!? 刺客!! 」

 

(こ、こんなときを狙うとは! なんて奴だ! )

 

 おかしい。トイレでの災難は……。先程ポルナレフまがいのことを考えてしまった報いであろうか。ここ三日間御無沙汰の電柱頭が脳裏をかすめる。

 

「ちょ、ちょっと待て! 今動けん! ひ、卑怯なっ! 」

「くくく、だからだよ。なんとでも言いな」

 

 なんたる外道。悪役の風上にも置けない。武士が名乗りを上げる間は待つ。戦隊シリーズだろうが仮面ライダーだろうがヒーローが変身中は黙って見守る。そんなもの暗黙のルールであろうに。ちなみに当然、そんなことを呑気に考えている場合ではない。が、生憎わかっていても止められるものではない。今動いたら間違いなく大惨事(スプラッシュ)だ。

 

「……死ねッ! 」

 

 そんなこちらの深刻な事情などお構いなしに、武士道も騎士道もヒーロー道(どちらかというとショッカー道かもしれない)もへったくれもない攻撃が容赦なく僕に迫る。

 

「……くっ! 」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

「ふぅ、さっぱり。おまたせしましたー、って……あれ? 」

 

 トイレから出て周囲を見回してみるも、彼のすがたはみえなかった。こういうとき、大概自分の方が後なのに……と、いつもと異なる状況に少しひっかかりをおぼえる。

 

(いや、そりゃあ、そんなこともあるでしょうよ……何考えてんの。

 ……でも……)

 

 頭をもたげる、嫌な予感。

 

(けど、さすがに男子トイレに入っていくわけにはいかないしなぁ。

 それこそ痴漢じゃん……いや、一応女だから痴女か。どうしよう……)

 

 しかし、躊躇しているその間に異変は起こる。

 

(ハッ!? )

 

 相棒から届く『殺意の波動』のシグナル。それに反応するのが少し遅れた。

 

(いけない! セシリア!! )

 

「ギャッ! 」

 

 トイレ内を光源として発される見慣れた碧色の閃光が辺りを眩く照らす。と、同時に、一人の見知らぬ男が悲鳴と共に転がり出てきた。

 

「あッ!! 貴方まさか!? 」

「……ちぃっ! 」

 

 こちらに気づくと舌打ちをし、逃げていく男。

 

(て、敵!? )

 

 変態だろうが痴女だろうが、なんとでも言うがいい。緊急事態だ。男子トイレに飛び込む。

 

「す、すみません、失礼しますッ!

 花京院くん! だいじょうぶ!? 」

 

 ところが、私の目に映ったのは予想など遥かに超えた光景であった。

 

「……え……? 」

 

 そこには『男の子』がひとり、いるだけだった。

 

「ひ……! ……あ、あれ? おねえさん、は、えっと……」

 

 ぶかぶかの緑色の制服に身をつつみ、だいすきな彼に、とってもよく似た、『男の子』が。

 

 

(ま、まさか、この子?! )

 

 そんなわけはない、と通常なら思うのかもしれないが、状況的……他に誰もいない。服装、そして、赤い果実の揺れるあのピアス。幼くしただけでそっくりな顔立ち、プラス髪の色や髪型……というか、あの前髪。および、なにより直感的にもなぜか確信があった。

 

 おそるおそる、『男の子』に問いかける。

 

「か、花京院くん……? 」

 

「え……? おねえさん……は?

 どうして? なぜ、僕の名前を知っているのですか? 」

 

(や、やっぱり! で、でも……)

 

「わ、私のこと、わからないの?! 」

 

 驚きと衝撃に押され、つい語勢を強めた言葉が飛び出てしまう。

 

「ごめんなさい……わからない。……しってる、はずなのに! どうして?! 」

 

 うつむき、泣きそうなこえで嘆く彼。

 

(しまっ……! 私の馬鹿!! )

 

 おもわず駆け寄り、そのちいさな震える肩を抱きしめる。

 

「ごめんね、びっくりしたよね。 だいじょうぶ、……だいじょうぶだよ」

「お、ねえさ、ん……」

 

(さっき逃げて行ったあの敵の男を倒せば、きっともとに戻れるはず。

 こういうときくらい、私がしっかりしなきゃ……! )

 

 かぶりを振り、自分を叱咤すると改めて少年に声をかける。

 

「花京院……典明君、だよね? 私は保乃宮仁美」

「ひとみおねえさん? 」

「うん、そう。怪我とかしてない? 痛いところとか、ないかな? 」

「はい、だいじょうぶです」

「よかった。変な人がきて怖かったね。でも、もうだいじょうぶ。安心して。

 私は、あなたの……味方だから」

 

 といっても、記憶がないのに信じてくれるものだろうか。でも、自分には他にどういえばいいのかわからなかった。

 

「……僕の、味方……? 」

「うん」

 

 向けられる視線をしっかりと受け止める。

 

「……。はい……! 」

 

 そのまま暫くこちらをうかがうようにみていた少年だが、やがて頷くと、少し、笑ってくれた。その様子にほっと胸をなで下ろす。

 

(あ、とりあえず、出なきゃ。ここ男子トイレだった……。

 あと、彼の服どうにかしなきゃ)

 

 

 

「これで、よし……っと」

 

 とりあえず、ホテルのブティックで子供服を購入しそれを着てもらう。

 子どもは苦手、とかそんなことは言っていられまい。というか、なぜか、この子に対してはそんなふうにはまったくおもわなかった。まぁ、当然といえば当然なのかもしれないが。それどころか……

 

「……服、ありがとうございます」

 

 にっこりと微笑む、彼。

 

「っ! じゃ、じゃあ、行こっか」

「はい! 」

 

 そして、私の手をきゅっとにぎってくれる。

 

(ちょっ! ど、どうしようっ! か、かわいいッ……!!

 なにこれ!?て、天使!? 天使様がこの地に御降臨をッ!! )

 

 すっかり心を奪われてしまっていた。さらに……

 

(……いつか、しょうらい、こどもができたら……

 こんな、かんじだったり……? )

 

 なんて、とんでもない想像までしてしまう始末。

 

(はっ! ……な、なんてことを私! )

 

「あああ……ッ! ご、ごめんなさい!

 今の無し! 今の無しッ!! ごめんなさいーッッ!! 」

 

「お、おねえさん……? 」

 

 まったく、本当に現金なものだ。

 

 

(さ、さて……)

 

 どうにか平静を取り戻して、これからどうするべきか、考える。

 

(うーん、とりあえず、当初の予定どおり、

 承太郎君たちを探して合流すべきかなぁ。でも闇雲に動くのも……)

 

 おそらく、あのスタンド使いは人を若返らせるのだろう。下手をしたら『産まれる前』にまで。恐ろしい相手だ。彼の身の安全を最優先するならば、ジョースターさんと師匠をここで待つ方がいい気がしてきた。それに、そういうスタンド使いがうろうろしているということを伝えておいた方がよいだろう。少し休んだらこちらに戻ると言っていたふたりの顔を思い浮かべる。

 

(うん、そうしよう)

 

 痴漢の一件のせいで入りにくいだろう、ということで、ホテルの外辺りにいることにした。

 待っている間、だいぶ彼も落ち着いたようなので、いろいろ聞いてみる。

 

「ええと、か……、典明君、いま、何歳?」

「6歳です。おねえさんは? 」

「私は19歳だよ」

「そうなんですか? 若くみえますね。高校生くらいかと思いました」

「そ、そう? ありがと……」

 

(……。昔からしっかりしてたんだなぁ……)

 

 三つ子の魂百まで、とはこのことだろうか。そんなことを考えていると、ぽつり彼が呟く。

 

「……僕、おねえさんのこと、とってもよくしってる気がする。

 でも、思い出せないんです……。ごめんなさい」

 

 しょんぼりと頭を垂れる少年。

 

「典明君……。だいじょうぶ、そのうち、おもいだせるよ。

 ……そうじゃなくても、私はあなたのこと、すごくよくしってる。

 ちゃんと、そばにいるから、安心して。ねっ! 」

「おねえさん……」

 

「はっ! 」

 

 そのとき、またしても嫌な気配を感じる。

 

(そうだ。こんなチャンスを敵が見逃すわけないか。

 そりゃ、くるよね。また……)

 

「おねえさん!うしろ!」

 

(いつでも来たらいい! はねかえしてみせるッ! )

 

 身構えた私に、典明君が叫ぶ。

 

「だめです! 影が捕まったら、おねえさんも……! 逃げて! 」

 

(影……? )

 

「……もう、おそいよ。女、おまえもガキになりなーッッ! 」

「おねえさん! 」

 

 背後から影踏みのように私の影に土偶のようなスタンドを差し向けてくる、敵の男。

 

「……おそい? そんなことはないですよ」

 

 それに向けて、言い放つ。

 

「なッ、なにィッ!? 」

 

 典明君の声を聞いた時点ですでに、自分の『影』はセシリアでつつみ、ガード済みだ。

 

「からくりがわかっていれば、そんなの通用しません。

 ありがと、典明君」

 

 

「ち、ちくしょう! せめてガキの花京院を! 」

 

 敵のスタンドが手にする斧。その凶刃が彼にむけて降り下ろされる。

 

「……そんなこと、私がさせると思いますか? 」

 

 もちろん、させない。セシリアでそれをはねかえす。

 

「……お、おねえさん! おねえさんも!? 」

「典明君、あぶないから、私のうし……」

 

 彼をかばうべく一歩前に出ようと、そう言いかけたときだった。

 

「……いっけーっ!! 」

 

「えっ!? 」

「ぐはあっ! 」

 

 敵にむけてキラキラと綺麗な碧色の水しぶきが浴びせかけられる。

 無論、普段よりは粒が小さいが、それでも十分痛そうだ。ふっとぶ、敵。

 

「僕だって、たたかえるッ!

 子どもだからって、なめないでいただきたい!

 おねえさん! 僕のうしろにっ!! 」

 

「っ! 」

 

――……僕の後ろに! ――

 

 鮮やかに蘇る、いつかの船の上での……凛々しく逞しい、碧色のおおきな背中。

 

(……ああ、やっぱり、本人なんだなぁ……)

 

 そんな場合ではないのに、つい口元が綻んでしまう。

 

「く、くそっ!」

 

 一方、旗色の悪さを察したらしく、再び逃走を図る敵。それを追い、少年は駆けだす。

 

「まてっ! 」

「あ! まって! 」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

 逃げ出した敵の男を追いかけたが、やはり大人の方が足が速い。悔しいが見失ってしまった。

 

「典明君、まって! 」

 

 追いかけてきてくれたおねえさんにいう。

 

「すみません、逃げられてしまいました」

「いいよ、そんなの。……あなたが無事でよかった」

 

 するとそういって、おねえさんはふわっとわらう。

 

(あ……)

 

「……はっ! そ、そうだっ! 」

 

 あたたかなそれについついみとれてしまいながらも、とってもだいじなことをおもいだす。

 さっき僕を護ってくれた、あの薄桃色の光を。

 

「ん? どうしたの? 」

「お、おねえさん、あの、『これ』、みえます……? 」

 

 みどりいろの僕の『友だち』。

 

 僕にしかみえない、僕だけの、友だち。

 

 祈るような気持ちで彼を呼び出す。

 

「え? ……あっ?! 」

 

 友だちをみた途端、瞬時におねえさんの顔色が変わる。

 

(しまった……。やっぱり、だめなのかな……? )

 

 落胆しかけた、そのときだった。

 

「きゃーッ! ハイエロファントもッ! ちっちゃいっ! かわいいーッッ!!」

「わっ! 」

 

 そういって、おねえさんは僕と友だちをぎゅっと柔らかな胸の中に包みこむ。

 それにすごくどきどきしながら、どうにか訊ねる。

 

「み、みえるの? 」

「え? もちろ……あ、そうか」

 

 しっかりとうなずくと、おねえさんはやさしいまなざしをむけ、僕にいった。

 

「……うん、みえるよ。典明君のだいじな『友だち』でしょう?

 私にもいるから。ここに……」

 

 そして、左手を掲げ、みせてくれる。

 

「ね? ……あなたにはみえるでしょう? 」

 

 おねえさんの『友だち』は、花みたいな小鳥で……とても綺麗だった。

 

 

 

*         *          *

 

 

 

「ハッ! ご、ごめんね! 」

 

 いつもはとてもできやしない……彼がちいさいのをいいことに、またもやそんなセクハラ(ショタハラ? )まがいの行為をうっかりしでかしてしまった私。それに猛省しつつ腕の中の少年を解放する。

 

「さ、さぁ、戻ろっか。きっとそろそろジョースターさんたちも……って、あれ? 典明君? 」

 

 歩き出そうと促すもその場にたたずんだままの少年を不思議に思い、呼びかける。

 しまった、うっとーしすぎて嫌われてしまっただろうか……と慌てふためき始めた私に対し、押し黙っていた少年は意を決したかのように口を開いた。

 

「おねえさん、……いや、ひとみさん」

 

「へっ!? な、なに? 」

 

 急に名前を呼ばれ、ちょっとドキッとしてしまった。すきなひとがちいさくなっているだけなわけだから、ゆるしてもらえるだろうか。それにしても……さすがに犯罪か。

 

(どうしよう、これを機にへんな趣味にめざめたら……。ぜんぶ花京院くんのせいだ)

 

 そして、そんな私の心をさらにどきどきさせるようなことを少年はいいだした。

 

「あなたには……恋人が、いるんですか? 」

「はぇっ?! な、なにを!? 突然!? 」

「そ、その反応は……! やはり心にきめたひとが!? 」

 

「……」

 

(恋人ではないけれど、心にきめたひと、というならば……

 それは、『あなた』なんだけど……うーん……)

 

 どう返したものか、考えあぐねているうちに彼はいった。

 

「……すこしだけ、待っていてください!

 どこのだれだか知りませんが、そいつよりもぜったいに、いい男になってみせます!

 だから、……そうしたらっ! 」

 

 

「……僕の……、お嫁さんになってください! 」

 

 

(ひ、ひぃゃあぁぁー!! わぁあー!? )

 

 どうしてくれよう。もう私の心中はてんやわんやの大騒ぎだ。

 

(い、いや、おちついて、おちつくのよ! ほ、ほら、彼はいま、こどもで……)

 

 必死に心を鎮めようと己に言い聞かせながら少年をみやったところで、きづく。

 

「あ……」

 

 彼は、とても真剣なまなざしでこちらをみている。

 まっすぐに。とてもきれいな瞳で。

 

(おんなじ……だ……)

 

 はじめて出逢ったときの、あの、彼の瞳と。

 

「……ありがとう」

 

 じぶんでも驚くほど自然に、素直なきもちがことばとなってあふれてくる。

 

「……うれしいな。すごく、うれしい。

 典明君が……『おおきく』、なったときに……

 もしも、いまとおなじきもちだったら……そうしたら……」

 

 

「……私を、あなたの……、お嫁さんにしてくれる? 」

 

 

「はいっ! もちろん! すぐ、おおきくなりますから! 」

 

 元気にうなずく彼に、こみあげてくるものをこらえつつ、どうにか伝える。

 

「……うん。たのしみに、しているね」

 

 

「よし、じゃあ、あいつを早くやっつけにいきましょう」

 

 そういうと、満面の笑みで私の手をひく少年。

 

「あ、ちょっと! 」

「だいじょうぶ! 僕とあなたなら、無敵ですよ」

「もう……! 」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

(くそ、誤算だった。花京院もスタンドをあんなガキの頃から操っていたとは……

 しかも、あの女、セト神の技まで防ぎやがるなんて……)

 

 辛くもひとまず逃げおおせたオレ。

 改めてやつらを殺る算段を考えていた。

 

(しかし、所詮はガキと女。なんとかもう一度隙をついて……)

 

 そこで、気づく。

 

「げ! あいつらは! 」

 

 こちらへと歩いてくるふたつの影に。

 

(じ、ジョースターと、アヴドゥル!

 ま、マライヤは? やられてしまったのか?! くそッ! )

 

 焦燥を抑え一旦それとなくやり過ごした後、こっそりと尾行しつつやつらの会話を盗み聞く。

 

「……ジョースターさん、よく考えたら我々ホテルに戻るのまずくないですか? 痴漢冤罪……女子トイレに侵入したのは事実なのだから、冤罪とは言えないのかもしれませんが」

「う! そ、そういえばそうじゃった」

「仕方がない。わたしが少し変装して、……といってもターバン外して上着脱ぐだけだけど。

 様子を見てきます」

「ああ。頼むよ」

 

 そうして、アヴドゥルはホテルに入っていき、ジョースターが独りになる。

 

(……今しかない! いけ! いくんだッ! オレ! )

 

 

「ん……? なんだ君は……え!? 」

「もらった! 死ね、ジョースター! 」

 

 『セト神』で、影を捕らえる。

 

「な、なにィッ!? 」

 

 成功だ。みるみるうちに若返っていく。

 

「な、なんじゃこりゃあぁー!? 」

 

 灰白色(シルバーグレイ)の髪はまっ黒く、刻まれていたシワも消えていく。

 

「やった! やったぞ! ジョースターを、やっ……え? あれ? 」

 

 飛び上がったのも束の間だった。

 

「……? 」

 

「げっ! 」

 

 そこには、ひとりの青年が立っていた。

 

「し、しまった! 歳の吸い取り方が足りなかった!! 」

 

「うお! すっげー!

 なんか超、身体が軽い! 絶好調! ありがとな! 」

 

 気安い言葉と人懐っこい笑顔をオレにむける青年。

 

「でも、さっきおまえ……おれに死ね、とかいってくれたよな?

 ってことは、よくわかんねーけど……」

 

 一転、にやりと、不敵に笑う。

 

「……敵、確定、だよな? 」

 

「ひ、ひぃいいいー! 」

「あっ! お、 おい、まちやがれッ! 」

 

 オレは、またも一目散に逃げ出した……。

 

 

 

*         *          *

 

 

 

 死ね、とかぬかした癖に、すたこら逃げた怪しい男を追っかけてきたおれ。

 スピードは比べるまでもないが、如何せんこの街の地理に詳しいらしい。巧みに曲がり道を利用し男はまんまと行方をくらませてしまった。

 

「きゃっ! 」

 

 きょろきょろとその姿を探しながら駆け回っていると、うっかり道行くひとりの女性にぶつかってしまった。

 

「わぉ! 大丈夫かい? すまねぇ」

「いえ、こちらこそ。すみません! 」

 

「……ッ!? 」

 

 その姿を見た瞬間、息が止まりそうになる。

 

「……し、シーザー?! 」

 

「え……? 」

 

 きょとんとした顔で首を傾げる女性。その反応に我に返り、自答する。

 

(い、いや。そんなはず、ないよな。あいつは……もう……)

 

 おれを生かすため、己の誇りを貫いて、散っていった……親友、に思いを馳せる。

 

(しかもこの娘は、女の子なのに……。

 なんでそう思ったんだ……? でも、この、纏っているオーラ……)

 

 微かにだが感じる、波紋の……魂の発する体内エネルギーの『色』。

 不思議とそれが瓜二つにみえた。

 

 たまらず、問いかける。

 

「き、君、もしかして、お兄さんとかいるかい? 」

「え? はい、いますけど……」

「まじか!? も、もしかして、イタリア人かい?

 し、シーザーとかいう名前では!? 」

 

 ごくりと息を飲む。しかし返ってきたのは『当たり前』の答えだった。

 

「いえ、『義経』という名の、日本人です。

 あ、おじいちゃんはイタリア人、……かもしれませんが」

「そ、そうか……。

 それでかな……。そうだよな……」

 

 そりゃあそうだ。

 そんな偶然、そうそうあるはずがないのだから。

 

「ごめんな、急に。人違いだった。

 知ってるやつ……に、とってもよく似ていたんだ。

 君の、……その、雰囲気が」

 

「……。そうなんですね。……すみません」

 

 おれの言葉を受け、その娘は何故かそういって心底申し訳なさそうに深々と頭を下げた。

 

「い、いや! 君が謝ることじゃあないじゃん!

 ……変な娘だな。ふっ! 」

 

 慌てて否定するも、そのあまりにも生真面目な姿におもわず笑ってしまう。

 すると、なおも真剣な表情で彼女はいった。

 

「あれ、そうですか?

 でも、なんだか……、すごくがっかりさせてしまったみたいなので」

 

「え……? ……そんなにがっかりしてた? おれ」

「はい、……とても」

 

 戸惑いとともに訊ねると、そんなふうにいわれてしまう。

 

「そっか……」

 

 自分はまだ、あきらめきれていないのだろうか。

 

 

 あいつが……生きて、いると。

 

 

――……JOJO! ――

 

 

 響く。いけ好かないとばかりおもっていた気障なあの声が。

 ふわりふわりと浮かびあがる。虹色の球体たちが。

 

 そんな影にすっかりとらわれていたおれの耳に、ふいにうしろから声が届く。

 

「……ひとみさんからはなれろっ! 」

 

 裾を思い切り引かれた勢いそのまま振り返ると、目に飛び込んでくるちいさな影。

 

「うおっ! なんだ? このチビっこ! 」

「チビじゃあないっ!

 きさまこそなんだ! ひとみさんにへんなことしたら、ゆるさんぞ! 」

「おっ? こいつ、チビのくせにいっちょまえに! へへ……」

 

 投げられるのはあんまりな台詞だったが、毛の逆立った、あまりに必死で健気なその様子にまたも笑みがこぼれてしまう。

 

「ち、ちがうよ。だいじょうぶだよ、典明君。このひとはね……」

 

 そんな少年に対し、彼女が弁解をしてくれる。

 

「……おともだちにね、私がすごく似ていたんだって」

 

「……それはナンパの常套句ですっ!

 まったく! あなたってひとは! 少しも目がはなせないんだから! 」

「ご、ごめんなさい……。

 あ、あれ? なんかこれ、いつもといっしょじゃない……? 」

 

 が、しかしそれは火に油を注いだだけに終わったようだ。アンバランスなはずなのに何故か非常にしっくりきている……そんなふたりのやりとりが見ていて面白い。その関係性に興味が湧いてきたおれは、好奇心に押されるまま、からかいがてら訊ねることにした。

 

「弟かい? へへ、頼もしい騎士くんだな。

 ねーちゃんのこと、しっかり護ってやるんだぜ、少年」

「弟じゃあないっ! 貴方なんかに言われなくても! 」

 

 心外だ、といわんばかりに憎まれ口を叩きつつプイっとそっぽを向く少年。

 

「あ、そうなの? ……じゃあなに? 」

「え!? ええと……その、あの……と、友だちですっ! 」

「……『いま』は、ですけどね」

「にゃッ!? の、典明君っ!? 」

「ふーん……? あー、でも、まじで、気を付けてな。

 今この街、変なやつがうろついているからなぁ」

 

 奥歯に何かが挟まったかのようにもごもごと答える彼女。憮然とした表情で付け加える少年。余計にわけがわからなくなりつつも、思い出し、老婆心ながら彼女に伝えると生意気な横槍が入る。

 

「ふん、貴方以上にあやしいひとなんているんですかねぇ? 」

「はあーん? そーいうこといっちゃうわけ?

 そんな可愛いおくちはこれかな? 」

 

戒めがてら、ほっぺたをひねってやる。

 

「いひゃい……くっ、まけるかっ! 」

「いってッ! この……!

 ほんとーにナマイキなおぼっちゃんですねぇッ……! 」

「なにおうっ! 」

 

「ちょ、ちょっと! やめてください!

 典明君も、やめてっ! 」

 

 ヒートアップしていくおれたちを見かねて彼女が止めに入る。

 それをみて、少年がいう。

 

「ふん……しかたがないな。ひとみさんに免じて、だ。

 今日は僕からひいてやる。次はないと思えよ? 」

「……。キミ、いまからそんなんでだいじょうぶかな?

 先がすごくおもいやられるよ?

 やぁ、おおきくなったらいったいどうなっちゃうのかなぁ?

 ぜひ一目見てみたいものだなぁ……! 」

「御心配なく。貴方のような大人にだけはなりませんから」

「にゃにおうッ!! 」

 

「……え、ええと! それで、変な人が出たんでしたっけ? 」

 

 雰囲気を払拭すベく話題の転換を図ろうと、彼女が再び割って入る。

 

「あ、そうそう。おれ、そもそも、その悪いやつを探していたんだよ。

 なんかこーんな二又で鈴のついた、へんてこりんな髪型で、たらこ唇の……、

 おどおどした、変な男」

 

 身振り手振りをまじえて説明する。

 

「そ、それは! まさか!?」

 

 するとなにやら心当たりでもあるのか、驚愕の表情を浮かべる彼女。

 

「え? 知ってんの? ひでーんだぜ、いきなりおれに死ねっつってさ。

 なんかしたかと思えば、失敗したのか逃げていきやがった。

 だから、こっちからやっつけにいってやろうと思ってさ」

 

「……そ、それって、もしかして……。

 ハッ! よく見たら、その服装はっ……! 」

 

 そして、なにかを察した様子の彼女に、しどろもどろに問われる。

 

「え、ええと、あの……し、失礼ですが、お名前をおうかがいしても……? 」

 

 それについ、軽口をたたく。

 

「おっ! 君、もしかして、おれに惚れちまったりなんてしちゃった? 」

 

「……え? 全然ないです。ありえません」

 

「ちょ! そこは即答ッ!? ……ハッ! 」

 

「……」

 

 冷水をぶっかけるような彼女の塩対応。にもかかわらず、それすらお気に召さないのか、おれたちを見るチビの視線が刺すように痛い。気のせいか、今にもなんか飛んできそうな……

 

「ま、まて!! わかった、わかったって! 」

 

 なんて可哀想な、おれ……しかたがないので真面目に答える。

 

「おほん! おれの名は……

 超絶イケメン波紋戦士、ジョセフ・ジョースター!

 ……なんちて! 」

 

 きまった! そう思った瞬間、うなだれた彼女が半ばやけっぱちに呟く。

 

「ああ……やっぱり……。

 昔からこのひとも、ちっともかわってないんだなぁ……はは」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

「あれ? ひとみさん、この軽薄そうなお兄さんのことを知っているんですか? 」

「うん……よく知ってる、おじいちゃんだった」

 

(いわれてみれば、承太郎君に似てるや……ノリが違い過ぎて気づけなかったけど)

 

 納得する私に対して、首を傾げる典明君。

 

「……? 意味がわかんないんですが」

 

 そして抗議の声を上げるジョースターさん(若)。

 

「おいッ! 君たち、失敬だぞ! だれが軽薄だ! だれがおじいちゃんだッ!! 」

 

「ええと……うん。

 もうとにかく、あの敵を倒せばすべてわかりますから……うん」

 

 頭が痛くなってきた私は、説明を放棄した。

 

「? まぁ、そういうなら……

 じゃあ、いきましょうか。たぶんこっちだと思います」

「うん」

「え? キミたち危険だぜ。そういうのはおれにまかせときなって。じゃあな! 」

「あ、まってください! って、ああ、行っちゃった……」

 

 

 

 制止虚しく、風の如きスピードで駆けて行ってしまった若いジョースターさんを典明君と追いかける。

 若い頃は現在よりさらに、とっても強かった……とのこと。大丈夫だとは思うが、でも『スタンドはスタンドでしか倒せない』。あのジョースターさん、今はスタンドが使えないはず。やはり念のためついていった方がいいだろう。

 

「あっ! 」

 

 街路を進んでいくと、とある家屋の二階から人が落ちてくるのが遠目に見えた。

 

「あそこだ! 行きましょう! 」

 

 その家の窓からは幼い男の子が顔を出して、なにやら叫んでいる。

 

「ハッ!! あの髪型は……!

 まさか、いや、絶対、ポルナレフさん! 」

 

 そして、その窓の真下でスタンド使いの男と対峙しているのは、やはりというか、このひとだった。

 

「……承太郎君!! いけない!」

 

「!? な……!? うッ……これはッッ! 」

 

 禍々しい『影』に承太郎君の影がとらわれてしまう。

 

「くっ! しまった! 承太郎君まで……! 」

 

 承太郎君の身長はみるみるうちに小さくなり、典明君とおなじくらいの年齢の少年になってしまった。

 勝ち誇った敵がいう。

 

「ふはははは! 承太郎!

 おまえが『スタープラチナ』を使えるようになったのはつい最近と聞く!

 つまり、今はスタンドを使えない! ただのガキになったのだ!

 うはうはうは! オレの、勝ちだッ!! DIO様! オレが承太郎を殺します!

 礼金をたっぷりはずんでもらいまっせー! 死ねェー! 承太郎ーッ! 」

 

「あぶな……あ! 」

「あ! 」

「あ! 」

 

「ぐほっ!! ……えっ?! えぇ!? 」

 

 何が起こったかわからないまま、気がついたら敵がぶっとばされていた。

 

「……やれやれ。子どもだからって、なめんなよ」

 

 天高く突き上げられたその拳を見て、全員初めて事態を悟る。

 

「な、殴った! 生身の子どもの拳で!! 」

 

「ひ、ひぃぃぃぃいー!!! いてぇー!! 」

 

「じょ、承太郎君は……」

「子どものころから、やるときはやる、性格の人だったのか……」

「強い……! 」

 

 

「う、うわぁー、に、逃げ……! ハッ! 」

 

 またも敵前逃亡を図ろうとした敵に、立ちはだかるひとがいた。

 

「おいおい、こんなとこにいたんだ……探しちゃったよ」

 

 若ジョースターさんだ。

 

 

「よくも、卑怯な手ばかり使って……」

 

 典明君。

 

「好き勝手してくれたな! あの家のおねぇちゃんにも、ボクにも……」

 

 ちびポルナレフさん。

 

「覚悟は、とうに……」

 

 少年承太郎君。

 

「出来ているよなぁ? ……にひひ……! 」

 

 そして、青年ジョースターさん。

 

 

「「「「オラオラオラオラオラオラオラオラァ!! 」」」」

 

 

 腹に据えかねていた四人が、一斉に総攻撃をかける。

 はるか彼方にふっとぶ、敵。『再起不能』決定だろう。

 

(……。あれ? なんかちょっぴり……気の毒……? )

 

 ちっちゃいみんなや、若い頃のジョースターさん。

 本来決してであうことができないはずの姿とであえて……

 

(私、また、なにもしないで見てただけだしなぁ。それに……)

 

 

――僕の、お嫁さんに――

 

 

 ……ぷろぽーず、なんて、されてしまっちゃった、わけで。

 

 あんなにすてきな『ちいさな騎士さま』に。

 

 

(ふふ、なんか私だけ、ほんと得しちゃった。

 って、い、いやいや、不謹慎不謹慎……! すみません……)

 

「……あっ! 」

 

 こっそり誰に向けてでもなく懺悔をしていると、ほどなくしてみんなの姿が元に戻り始める。

 

「ふう、よかった……って! ああッ! 」

 

 承太郎君とジョースターさんはいいが、花京院くんとポルナレフさん……

 

「き、きゃーっ! 」

「わ、わぁッ! 」

「す、スマン! 服、服ーっ!! 」

 

「は、はいーッ! 」

 

 こんなこともあろうかと持っててよかった。

 あわてて花京院くんに服を投げ渡し、うしろをむく。

 

「す、すみません。ありがとうございます……」

「いえ……、あの、その、こちらこそ……すみません……」

 

(……ちょ、ちょっとみえちゃった……ご、ごめんなさい……)

 

 ちなみにポルナレフさんは家の中に服を取りに走っていった。全裸で。

 

 

 

「はぁ、疲れた。なんなんじゃ、本当に今日は……」

「重ね重ね、おつかれさまでした」

 

 そんな中、ジョースターさんに声をかけられる。

 

「ふふ、どうじゃった? ナウなヤングじゃった頃のわしは?」

「ふふ! ……そうですね、たしかに『超絶イケメン波紋戦士』でしたね」

「じゃろおー! あーあ、戻っちゃった。

 あれ? わし、そのままのほうがよかったんじゃ……? 」

「い、いや、それはまずいですよ……」

「ふっ、それはそうと……」

 

 そして一転、真面目な顔になったかと思うと、くしゃりと笑う。

 

「あらためて……よく戻ってきた。……おかえり」

 

「……! はい! ただいま、です」

 

 

 

「よぉ。やっと……帰ってきやがったか」

「承太郎……」

 

「「……ふっ」」

 

 無言で交わされる、固い握手。

 

(よかった……)

 

 

「花京院! こいつめ! おぬしもよく戻ってきたのーう!! 」

 

 そんなふたりを温かいきもちでみつめていると、すぐさま駆け寄っていくジョースターさん。後ろから彼にヘッドロックをかます。何を言っているかはわからないが、手荒い歓迎の後なにやら小競り合いを始めたようだ。それを横目で冷やかに眺めつつ入れ替わりに承太郎君がこちらへやってくる。

 

「よお。おまえも、ひさびさだな」

「うん」

 

 そして私の様子を一瞥し、いう。

 

「……おまえだけ、まだ元に戻ってねーのか? 」

 

「……ぐっ! こ、こどもっぽいのは元からですよーだ! 」

「ふっ、冗談だ」

「真顔で冗談言わないでよ……」

 

 

 

「花京院! 保乃! ひさしぶり! 」

 

 そこに、慌てて服を身につけつつも、このひとが戻ってきた。

 

「ポルナレフさん! 」

「ポルナレフ! 」

「もう目は大丈夫か? 花京院」

「ああ」

 

 積もる話をしている中、ふと気づいた私は訊ねる。

 

「……あれ? ポルナレフさん。ピアス、片方、どこかに? 」

「あ……」

 

 想い出すかのように耳に手を当てたそのとき、家の中からひとりの女性が出てきた。

 なにかを探しているようで、こちらに気づくとポルナレフさんに声をかけた。

 

「あの、おたずねしますけど……

 わたしの家から男の子が出ていくのを見ませんでしたでしょうか?

 あなた方と同じ、外国人の子どもなのですけれど……」

 

「……」

 

 ポルナレフさんは何も言わなかった。

 普段と違う、真面目な表情で……ただ、女性をみつめていた。

 

(あ……、もしかして……)

 

「……」

 

 でも、みんなも、なにもいわない。

 

「……? 失礼ですけれど、前に、どこかでお会いしたような……」

「……。いえ、こ、子どもなんて……見ませんでした。い、いくぜ、みんな! 」

 

 そうして、背を向ける。

 瞬間、女性が、なにかに、気づく。

 

「! あ……! あの耳飾りは! 待って! まさか! 」

 

 その声に、ポルナレフさんは振り返る。

 

「一度も会ったことがことがないぜ……会うはずがない。オレたちは旅人なんだ。

 初めて来た場所だし、もう出発しなくてはならない。次の街へな……」

 

 それだけいうと、振り返ることなく歩いていく。

 

「……夢だったんだわ。やっぱり……」

 

 

 

 女性がみえなくなってしまってから、立ち止まる。

 

「……」

 

 全員で、ポルナレフさんを囲む。

 

「ポルナレフ……」

 

「……なにもいうなよ。……なにも、な……」

 

「……」

 

 返事の代わりに、その肩をみんなでたたく。そして、微笑む。

 

「さ、出発……っていうか朝飯食おうぜー! 腹へっちまったよ! 」

 

「……あれ? そういえば、アヴドゥルさんは? 」

 

 

 

*         *          *

 

 

 

「……信じられないッ! のこのこ戻ってきたわ! 」

「こいつよッ! ちかーんッ!! 」

「止まれ! 止まりなさい!! 」

「待ちなさい! この変態ーッ!! 」

 

「うわわああー!

 こ、これもわたしのキャラではないッ! けっしてーッ!! 」

 

 

「み、みんな!? どこだ!? 助けてくれーッ!! 」

 




へへ、ちび京院と若じじいをどうしてもからませたかったんでさぁ……!

そういえば、せっかくなので逆Ver(仁美ちゃんがちっちゃくなっちゃった! なパターン。ついでにオチ要員にされてたアヴさんも若くしてみたよ! )も実は書いてみたりしたのですが、花京院が変態おにいさんになり下がってしまったので泣く泣くボツにしましたとさ。めでたしめでたし。


もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?

  • そのまま4部にクルセイダース達突入
  • 花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
  • 花京院の息子と娘が三部にトリップする話
  • 花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
  • 読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!

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