私の生まれた理由   作:hi-nya

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Messenger of delight

(はぁ、それにしてもなぜ僕がこんな……)

 

 日本に戻った僕は自宅に戻る暇もなく再び次の目的地に向かう新幹線に乗り込んだ……ため息をつきながら。

 今日できることは明日に延ばすな。気の進まない事案こそ、積極的にさっさと済ましてしまうべきだ。件の女性を見つけ出して、遠くからそっと様子を窺い、その安否を確認する……以上でミッションコンプリート。簡単なことじゃあないか。と、自分を叱咤する。

 

 どうしても浮かんでしまう。

 ……どうせまたそれだけでは済まないのであろう。

 という経験則から来る不吉な予感。それをどうにか頭の片隅に押しやりながら。

 

 あの旅よりもさらに前、もう14、5年にもなる、一夜だけの過ち……だそうだ。焼け木杭に火をつけようとか、そういう気はさらさらない。会う気はない。ただ、気になってしかたがない……とのことだった。

 

──息災で、あればいい。後生じゃ、花京院!──

 

 とまで言われてしまえばどうしようもない。

 あのジョースターさんが人生において、奥さん以外で関係をもった、唯一の女性(※自己申告)。果たしてどのような方なのだろうか。

 

「杜王町……か」

 

 平日の昼下がりゆえか、駅前に人の通りはまばらだった。なんの変哲もない、ほどよく栄えた住みやすそうな地方都市だ。ただ、さすが東北、気温が低い……まぁ、アラスカほどではないが。などと晩秋の北風に抗いつつ、一歩足を踏み入れた。

 

(……? なんだ……?)

 

 瞬間、たしかに微かな『なにか』を感じる。この街全体に違和感……異質な雰囲気とでもいうべきか。

 

 ちなみにここでは余談となってしまう、その『原因』に関して僕があずかり知ることになったのは、またもやかなりあとの話だった。

 

 

 実はこの街にとんでもない事態が起こりつつあり、数年後再び仲間たちと激闘を繰り広げる羽目になるなんて……この時の僕は知る由もない。

 

 

(さて、と……)

 

 気を取り直し、今後の行動について考えてみる。

 所持している情報は、女性の名前、およびこの街の出身であるということ、そして、ジョースターさんが隠者の紫(ハーミット・パープル)で念写した写真……以上。圧倒的な情報不足をどう補うか。腕の見せどころだが。

 

 とりあえず正攻法でいくか、と、困った時の市民の味方。『POLICE』とわかりやすい看板が掲げられた駅前交番でまずは聞いてみることにした。

 

「こんにちは。すみません。少々お訊ねしたいのですが」

 

「ああ、どうされましたかな?」

 

 対応してくれたのは、一人の男性警官だった。この街のことなら任せておけ……いかにもたたき上げ、といった風な、経験豊富そうなベテラン警官だ。もしかしたらもうすぐ定年、そんな感じかもしれない。

 

「『トモコ』さんという、この女性を探しているのですが、御存知ないでしょうか?」

 

 写真を差し出しつつ、問う。

 

「……なぜ、こいつを探している?」

 

 すると、声のトーンががらりと変わる。じろりと睨みつけられる僕。

 

「……え? ええと、知り合いの古い知り合いでして……」

 

 そして、穏やかだったその表情が一変する。

 

「ああ? てめー、朋子になんの用だ!?」

「は!?」

「てめーが、ストーカー、ってやつだな? 誰が教えるか! とっとと失せな!」

「なッ!? ちょ、ちょっとまってくだ……」

「ガタガタしつけえぞ! 公務執行妨害で逮捕してやろうかッ!!」

「ええー!? し、失礼しましたッ……!」

 

 命からがら、どうにか逃げ出す。

 

(……本当に何故僕がこんな目に……)

 

 しかし、とんだいいがかり、かつ罵声を浴びせられたのは無駄ではなかった。

 

 あの急な激昂っぷり。彼は『トモコ』さんの関係者に違いない。

 

(よし……)

 

 毎度お馴染み、細く長い『法皇の尾行紐(ハイエロファント・テイルストリングス)』をそっと先程の老警官にくっつけておくことにする。

 これで準備完了。彼の勤務時間が終わってあとを尾けよう。それまでどうやって時間をつぶそうか……などと考えてながら周囲を見回すと目に入る。

 

(ゲームセンター、か。どうせ暇だし。久々にやるか)

 

 

 

『YOU WIN!』

 

 画面いっぱい、大きく派手に浮かび上がる文字を眺めつつ、思う。

 

(ふっ、歯ごたえのない。これで37連勝か)

 

「す、すげー! 何者だ!?」

「こ、このゲームでエキスパートモードクリアしている人初めてみた……!」

「しかもノーダメ……パーフェクト! ぱねぇ……!」

 

 あくまで普通にプレイしていたはずなのに、背後にいつのまにやらざわつく人だかりができてしまっていた。

 

「……」

 

 うっかり悪目立ちをしてしまったようだ。反省しつつ気まずさを覚えつつ、無言で席を立ち、店を出ようとした。

 

「なぁ、あんた……ちょっと、顔かしてくんねーっすか?」

 

 すると、声をかけられる。

 黒くばしっと決めたリーゼント……こだわりのありそうな髪型(僕の方が洗練されてはいるが)が特徴的な、ぶどうが丘中学、そう書かれた校章のついた学ランを着用している少年に。

 

「……いいだろう」

 

 店の裏に移動する。

 

「で、要件は、なんだい?」

 

 中学生にしては大柄なその背中に問いかける。財布をスられるのはよくあるが、真っ向から奪われたことは一度もない。自慢にもならないが。

 

「……あんたの腕を見込んで、お願いがあるんす」

 

 姿に似合わぬ小さな声で呟く少年。

 その眼はどこかで見たことのあるような……澄んだもので、カツアゲだとか因縁つけようだとか、そんなものとは縁遠そうにみえた。

 彼はさらにこう言い放った。意外な一言を。

 

「おれの、ゲームの腕を鍛えてほしいッ!!」

 

「……は?」

 

 

 

 

 

「ここだ! ここで決めるんだ! 秘技、サイクロンスマッシャーッッ!」

 

「うお! すげぇ! また負けた……いやぁ、けどほんと助かったっす。ダチと昼飯一ケ月分かけて、今度勝負する約束しちゃいまして。これで対策は完璧っす。へへ」

 

 無邪気に隣でにやりと笑う、少年。

 

「でも負けっぱなしは性に合いませんね。俺意外と負けず嫌いなんすよ。次はこれで勝負、どうすか?」

 

「エフメガか……いいね、受けて立とう」

 

 

 

 

 

「くっそ、かなわねぇ! ボンビー! 格ゲーもレースゲーもシューティングも野球ゲームも積みゲーも、桃鉄まで! 鬼か!」

 

「くくく、あの敗戦を経た僕に、もはや死角などぬぁーいッ!」

 

 あの苦々しい……人形になった時の何とも言えない、あの気持ち悪さを思い出す。

 

「あの敗戦?」

「いや、こっちの話。……ん?」

 

 偶然知り合った少年の名は、東方仗助君。彼の家で何の因果かゲーム大会に興じること数時間。霜月のそれ、最近めっきり短くなってしまった日はとっぷりと暮れ、窓から伺える景色はすっかり暗くなってしまっていた。

 

「すまないね。僕としたことがつい時間を忘れて……すっかり長居をしてしまった。そろそろおいとまするとしよう」

「えー、まだいいじゃないっすか。勝ち逃げなんてズルいっすよ!」

「はは、まいったな。僕としてもそうしたいのはやまやまだけれども……もうすぐお家の人帰って来るんじゃあないのかい?」

「大丈夫っすよ。おふくろ海外出張中でしばらく留守だし。じーちゃん今日は仕事終わるの夜中だし」

 

 そこでひっかかる。

 

「ん? お父さんは?」

 

「ああ。おれ、おやじは、いねーんっす」

 

「え? そうなのかい? ……すまない」

 

 またも僕としたことがなんとも迂闊な発言をしたものだ。後悔しつつ、謝る。

 

「別にいいっすよー。気ぃつかわないでください。どこにいるのかも、顔も知らねー。生きてんだか死んでんだかってくらいだし。産まれた時からおれの家族はおふくろとじーちゃんだけっすから」

 

 あっけらかんとした調子の影に、ほんのわずか……言葉と反対の感情が滲んだのに気づく。それを悟られぬためか、少年はさりげなく話題を逸らす。

 

「そーいや、花京院さん、東京の人っすよね? どうしてこの街に? 仕事とかっすか?」

「ああ、そうだ……自分でもうっかり忘れていたが、実は頼まれてこの人を探しているんだ」

 

 例の写真を差し出す。するとたちまち目を見張る、仗助君。

 

「まじっすか……」

 

「え?」

「知ってます。おれ、このひと」

「ほ、ほんとうかい!?」

 

 そして、少年の口から衝撃的な発言が飛び出す。

 

「だって、この写真の女の人……おれのおふくろですし」

 

「……な!?」

 

 ジョースターさんの探し人……それはこの少年、仗助君の母親だった。

 

(ま、まさか……)

 

「じょ、仗助君。つかぬことを聞くけど……君、今何歳かな?」

「え? 13っすけど」

 

(……。あ、合ってる……)

 

 瞬時の計算。時期的にばっちり合致している……なんということだ。目を逸らしたくなるような、あるひとつの結論がぼんやりとみえてくる。できることなら我は関せず、今すぐ逃走してしまいたい。しかし乗りかかってしまった泥船……沈むとわかっていようが今さら降りるわけにもいくまい。

 

 ならば、あるはずだ……『あれ』が。

 

「仗助君、重ね重ね申し訳ないが、その、君の……首筋を見せてはもらえないだろうか?」

 

「は!? か、花京院さん、そーゆー趣味の人なんすか……? すんません、おれそっちのケは……ふつーに女子が好きっす」

 

「はぁ!? ぼ、僕にもないッ! ちゃんと! しっかり! がっつり! どっぷり! ずっぱし! 夢中な意中の女性が僕にだっているわッ!」

 

「……冗談っすよ。どーでもいいけど、どんだけすきなんすか、そのひとのこと……」

 

 あらぬ誤解を招かぬよう、質問を変える。

 

「おほん、君、首の後ろに、その、アザとか、ないよね? ないといってくれるとありがたいんだが……」

 

「ああ? これのことっすか?」

 

 背中を向けシャツの首元をひっぱりつつ言う。

 

(ああ、やっぱり……)

 

 僕の願いも虚しく、おぼろげだった推測がくっきりと形になってしまった。

 

 仗助君の首筋には、確かにあった。

 ジョースター家の血をひく、という確たる証拠。

 

 星形の痣が。

 

「なんなんすか? 一体……はっ! も、もしかして! 花京院さんがおれの親父……」

 

「……んなわけあるかッ! 君が産まれた当時、僕まだ小学生だぞ!」

 

「はは、冗談っす。わかってますよ。花京院さんにおふくろ探しを頼んだヤツ……それがおれの父親なんでしょう?」

 

「うっ……」

 

 僕などがこのような重要な事実を伝えてしまっていいものなのか。迷ったが、まっすぐこちらを見据える少年に、もう隠し通せはしまい。と、正直に頷く。

 

「……ああ」

 

「そっか……生きてんっすね」

 

 しみじみとそう呟く、少年に訊ねる。

 

「会ってみたい、かい?」

 

「……しょーじき、あまり、気がすすまないっすね。今さらどんな顔していいかわかんねーし。ああ、とくに母親には、ぜったい会わないでほしいっす……泣くから」

 

 彼はいった。まっすぐ、強い光のこもったまなざしをむけて。

 

「申し訳ないっすけど……おれもおふくろも今の生活に満足してます。

 だから、気にしないでくれとだけ、伝えてほしいっす」

 

 ほんのすこしだけ揺れて滲んだ色の瞳で。

 

 

 

 

 

「む、息子!?」

 

「……はい」

 

 宿泊先として抑えたホテルの部屋に着くなり、僕は即、連絡を入れた。

 

「しかし、本人はそっとしておいてほしい、と。

 ですので、今は……。

 って、あれ? ジョースターさん? ジョースターさん!?」

 

 受話器を当てた僕の耳に届くのは、ツー、ツー……と響く、電子音のみ。

 

「……切れた」

 

 そして、それ以降、何度かけても彼に電話はつながらなかった。それほどにショックだったのであろうか……それとも。

 

 一抹の不安を感じつつ、一夜が明けた。

 

 

 

 同様に仗助君の様子も僕は非常に気がかりであった。せめて彼にもう一度会ってからこの地を去ろうと、翌朝、僕は彼の自宅に向かった。

 

「仗助君、おはよう」

「花京院さん……うす」

 

 少し離れた地点で登校前の彼に声をかける。

 

「大丈夫かい? その、なんというか、すまない……」

「大丈夫っすよ。ふっ、なんであんたが謝るんすか。こっちこそすんません。なんか妙なことになっちまって……」

「そっちこそ。なんで君が謝るんだよ」

「ふっ、そうすね」

 

 つい、苦笑し合ってしまう。なんともいえない奇妙な縁に。

 

「もう帰っちまうんすか?」

「ああ」

「そっか。また、来てくださいよ。よかったら」

「そうだね。ぜひそうさせてもらうよ。そのときはまた、一勝負しよう」

「はい! 鍛えとくっす」

 

 がっちりと再会の約束と握手を交わした瞬間だった。

 

「……ん?」

 

 ギャギャギャギャ! と物凄いスキール音を立てながら、猛スピードで一台のベンツが滑り込んでくる。

 

「な、なんだ……?」

 

 急ブレーキの音が鳴り響いた後、バン! と勢いよくドアが開く。

 

 そこからとびでてきたのは、まさかというか……やっぱりというか……このひとだった。

 

「花京院ッッ!!」

 

「じょ、ジョースターさん!? どうして!?」

 

「来るなとか言われても……そういうわけにいくかッ! 居ても立っても居られんくって来てしもうたわい!!」

 

 すかさず、少年の方に向き直る。

 

「仗助君、じゃな……?」

 

「……」

 

「……わしを、殴れ」

 

「……は!?」

 

「きみのことを……知らんかったとはいえ、到底ゆるされることではない。わしはそのためだけにここに来た。さぁ!」

 

「じょ、ジョースターさん!? じょ、仗助君!?」

 

 ひとりオロオロする、僕。何故僕だけが(以下略)。

 

「……そうすか……じゃあ遠慮なく……」

 

 

「ぐはぁッ……!」

 

 

 そういうやいなや、息子の強烈なパンチが父の頬に入る。

 

 ここでも僕は垣間見た気がする。ジョースターの血統を。

 

「つ、強いな……さすがわしの息子、じゃ……」

 

「……手加減してやったんだよ。これでも」

 

 ふっとんだ父親を起き上がらせるべく、手をさしのべる息子。

 

「すまん……ありがとう。これからもお母さんのこと、よろしく頼むな」

 

「……言われるまでもねーよ」

 

「ああ、そうじゃな……」

 

(ふぅ……)

 

 心配などまったく無用だったようだ。すこしだけ、ふたりの距離が近づいたかに見えた。

 

 そんな、ときだった。

 

「会長! そして、その息子……!! 

 ……ふたりそろって、死ねぇーッ!!」

 

 突如、飛び出てきた一人の男……その手に握られた拳銃が火を吹く。

 

「!? いかん! 仗助君ッ!」

 

「……なッ!?」

 

「いけないッ!」

 

(しまったッ!!)

 

 そこでしか……こうなるまで気づけなかった、自分を責める。

 

 『ZERO』の言葉。ずっとなにかがひっかかっていた。

 

──小者の依頼など──

 

 そうだ。あの発言はヤツにジョースターさんの暗殺を依頼した人間が別に存在する……そういうことだ。

 

「くっ!」

 

 必死に法皇を伸ばす。

 

「ぐわぁっ!」

 

 しかし、全ては逸らしきれず、凶弾一発が仗助君を庇ったジョースターさんの腹部を貫通してしまう。

 

「く、くそっ!」

 

 せめて、と、犯人を取り押さえる。

 

「き、貴様は!?」

 

 法皇で捕縛した、その顔を確認して驚く。

 

「ちくしょう! なんでだ!? う、動けねぇ!」

 

 会社でジョースターさんにへーこら胡麻を擦っていた、スコレットとかいうあの小太りのおっさんだった。

 

「跡取りのいねぇ会長の後釜を狙ってやろうと思って、ずっと我慢して媚びへつらっていたのに、全然相手にしやがんねー! こうなったらいっそって思って……大金はたいて頼んだのに役立たずなあいつらは失敗しやがるし! しかも実は息子がいるだと? そんなのオレ様の会長の座がまた遠ざかるじゃねーか! 生かしておけるか! ちくしょう!!」

 

「……ッ!! この、外道が!!」

 

「ぐふッ!」

 

 自己中心的極まりない。聞くに堪えぬ言い訳を見苦しくまき散らす男に全力で当て身をくらわし、青い顔で集まってきたボディガードたちに突き出す。

 

 こんな人間のことは、今どうでもいい。

 

「ジョースターさんッ!」

 

 必死に駆けよる。

 

「お、おやじ……!」

 

「……仗助君……? 

 そう、呼んでくれるのか……? 

 うれしい、もんじゃな……」

 

 

「……いい、冥土の土産になりそう、じゃ……よ」

 

 

「……ジョースターさーんッ!!」

 

 僕の叫びも虚しく、ゆっくりとその瞳が閉じられていく……。

 

 しかしその一方、極めて冷静な言葉が僕達に降りかかる。

 

「……馬鹿親父。花京院さんも。落ち着いて、よくみてみろよ」

 

「……え?」

 

「……あれ? 痛くない……血も止まって? ってか、傷が……ない」

 

「もう、治した。……おれが」

 

 

「「なにぃーッ!」」

 

 

「な、『治す』スタンド使い!? うちの息子が!?」

 

「ああ。おれ、治せるんすよ。昔から。じいちゃんの骨折とかも治したことあるし」

 

 やっぱりあっけらかんと言う仗助君。

 

「人だけじゃあなく、物も直せるぜ……ドラァッ!!」

 

 言うなり、スタンド……人型のそれで、手頃な近くにあったジョースターさんの乗ってきた高級車を殴ってバラバラに破壊する。

 

「オーノーッ! わしのベンツが!! ってあれ?」

 

 しかし、それは一瞬で元の形に戻る。

 

「ついでに、さっきの乱暴な運転でパンクしてたから直しといた」

「そ、そうか。さ、サンキュー。便利じゃの……」

 

 殴ったものを、修復する……復元する……どうやらそんなスタンドらしい。

 信じられないものを見たかのように、ぺたぺたと車を触りに行ったジョースターさんを傍目に見つつ、彼は僕に訊ねる。

 

「花京院さんもあの緑色の……おれのとおんなじもんなんでしょう? 能力は人によってちがうんすね」

 

 そうだ。事情は知らないかもしれないが、彼もスタンド使いでもまったく不思議ではない。

 そりゃあそうだ。さすが、やはりこれもジョースター家、ということだろうか。

 

 いつかのデジャヴ。怒涛の展開による混乱で二の句を継げずにいると仗助君がぽつりと零す。

 

「……ありがとうっす。おれ、死んじまったもんは治せねーんすよ。花京院さんが緑色ので弾丸逸らしてくれたから」

 

「ああ……」

 

「……おやじ……がしんでたら……おれ……」

 

 うつむく、少年。

 やはり、親子なのだ。ふたりは。

 

「……よかった」

 

 

 そんな感慨露知らず、当の父親のこれまたあっけらかんとした声が聞こえてきた。

 

「なー、息子よ! わし、腕も義手なんじゃが、これも治せるんか?」

「無くなっちまったもんも無理だっての。材料がなきゃ元に戻せねーよ。腕の切れ端、もってきてくれりゃできるけどよ」

「はぁ!? 50年前の……しかも活火山の火口ど真ん中じゃぞ! 無理じゃろ……」

「ああ。無理だな。諦めな」

 

「ちょ、ちょっとまった! じゃ、じゃあ……!」

 

 もうぬか喜び……高く舞い上がって真っ逆さまに落ちるのは勘弁願いたい。

 逸る気持ちを抑えつつ、彼女の状況を説明する。

 

 暫し考えた後、仗助君は口を開いた。

 

「うーん、それは……微妙っすね。脳がすでに死んじまっているとしたら……」

 

「そう、なのか……」

 

 またか……と肩を落としかけた僕に、仗助君は続ける。

 

「でも……要はさっきも言ったもとになる『材料』……花京院さんのカノジョさんの場合、脳の細胞っすかね? 細かいことは医者じゃねーんでよくわかんねーすけど。それにあたるものさえあれば周囲に合わせて『元に戻す』ことは……可能と思うっすけど」

 

「……『材料』……?」

 

 そのワードに、おとずれる、ひとつの光明。

 

「……はっ!!」

 

 脳裏に浮かぶ。

 

 『もう一人』の『黄金の少年』の顔。

 

 あの予言は、やはり正しかったのだ、とも。

 

 

 

 

 

 

 




今回もここまで読んでくださってありがとうございます! お気に入り、感想、しおり、本当にうれしいです!! 次回、いよいよ全員集合です!! よろしければまたお付き合いよろしくお願い致します!

もうすぐこのお話も完結です……が、性懲りもなく次回作も本作品にちなんだものにする可能性が高いです。どんなのだったら、また読んでやってもいいぜ? と思って頂けるでしょうか?

  • そのまま4部にクルセイダース達突入
  • 花京院と彼女のその後の日常ラブコメ
  • 花京院の息子と娘が三部にトリップする話
  • 花京院が他作品の世界へ。クロスオーバー。
  • 読んでほしいなら死ぬ気で全部書きやがれ!
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