異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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 小説家になろうにも投稿してます。
 2014年 現在、改稿&加筆修正中
 先ずは一章を連続投稿です。


第一章 ガリア攻略のススメ
異世界召喚


 中二病という病気をご存知だろうか? 某巨大掲示板サイトの専門用語で英雄願望とも言う。

 

 アニメや漫画、ゲーム、小説に影響され、自分が特別な人間だとか、設定とか盛り込んで、痛い発言をするアレだ。

 

 俺もスポーツ選手になろうと努力したり、格闘漫画の影響を受けて格闘技を習ったり、ゾンビを銃撃するホラーアクションやファンタジーの世界に召喚されたりしないかと四六時中、妄想したものだ。

 

 だが、現実に俺に超能力や魔法が使えたとして、どうなるだろうか?

 

 超能力、魔術? ヒーローもの?

 

 政府の諜報員か殺し屋として監察課に置かれるか、戦いに駆り出されるか? それか化物と言われて迫害されるだろう。

 

 テレビに出てくる超能力者もスプーン曲げたりするのを見たことはある。

 だがテレポートや人を浮かせる程の念動力を使える人は創作の世界の住人だからこそ、その存在は許容される。

 

 もしそんな力を持っている人間がいたらかなりの脅威だろう……

 自称千里眼や霊能者もちゃんと実在するのなら警察に協力して、誘拐やテロを未然に防げるはずだ。

 

 いたとしても彼らは平穏とは明らかに離れた生活をすることになるし、存在しない。

 

 異世界召喚? 

 

 よくファンタジーで何の取り柄もない主人公が異世界に魔法使いだか王族だか神だかに召喚されて勇者になって世界を救うべく戦うなんてよくある話だが近年、月に行ったり、火星を調査するのに、どれくらいの時間と金、距離があるというのか? 其れを魔法の一言で片付けようとするんだからマジで幻想(ファンタジー)だろう。

 

 仮に俺が異世界に召喚されたとしよう。

 異世界特典、主人公補正の 能力上昇、翻訳能力、ご都合主義の巡り合わせがついたとしてどうだ?

 

 この平和な日本で生まれた俺が魔物を人を殺して英雄になれるか? 答えは無理(ノー)だ。

 ソレができるなら、俺の就職先は教師ではなく、自衛隊だな。

 よくよく考えてみるとファンタジーってのは客観的に見たら面白いが、当事者からしたら相当な不幸ではないのだろうか?

 

 いきなり誘拐されて、殺し合いの場に駆り立てられるのだから・・・・・・

 

 こんな思考に行き着くようになって いつしか俺はそういう妄想を止め、時たまゲームや漫画、自作のネタ、妄想を詰め込んだ黒歴史のノートを懐かしく見返しながら、若かりし頃を懐かしんだ。

 

 ……恥ずかしいな。やはり黒歴史は黒歴史だ。

 

 もしタイムスリップができるなら俺は中二病を患っていた時の俺を殴る衝動を抑えられなかったね。

 自己嫌悪ってやつだ。

 

 そんな事を頭の片隅にぼんやりと思いながら俺は大学を卒業し

 春から赴任する学校の授業計画書やテキストの準備に頭を悩ませ

 其れを卒業祝の飲み会で忘れ去り

 終電に乗り込んでまどろむ平凡で平穏な日々を過ごしていた時……

 

 俺は異世界に召喚された。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 大学卒業式の飲み会の帰り、運よく終電には間に合った。

 終点の駅までうたた寝して、目が覚めたら煉瓦造りの町の路地裏に立っていた。

 

 立ったまま寝てたのか?

 自分に驚くも見知らぬ建物を眺める。

 まだ酔いが醒めていないのかまどろみながら、路地から抜け出す。

 

 一気に酔いが醒めたね……

 

 視界に広がるのは中世ヨーロッパの街だ…… 

 言語学、歴史学に精通してなくても分かる。

 映画や小説で見た街並み

 中世風の服を身に纏う人々

 皮の鎧を着て、腰に剣をぶら下げている人

 猫耳の少女!!

 魔法使いの三角帽子を被った女の子が街を行きかっている。(後で写真撮らせてもらおう。)

 

 因みに夜だったはずなのに今は真昼間だ。

 あれか?時差か!? つかコスプレ祭り? 

 

 ファンタジーを題材にした映画村にでも来たのかと思うが違う。

 それに耳を傾けて、どこの国の言葉か探ろうとするが耳に届いたのは日本語だった。

 

 勘のいい奴なら気付いたろう。

 いや俺も薄々勘付いちゃいるが認めたくない。

 

 というか俺ってドリーマーか?

 薬なんてやったことはおろかみた事もねーぞ!

 俺は中二病はもう卒業したんだよ!

 本日大学卒業した社会人(予定)だぞ! オイ!!

 

 まぁ現実逃避は未だ早い。

 こういう時に人間性は試されると、どっかの誰かさんも言っていた。

 

 情報収集と行こうじゃないか。

 さぁこの街の人たちには只の一歩だが俺にとっては偉大な一歩を踏み出そうじゃないか!

 

「貴族の兄ちゃん。いい服着てるねぇ、ちょっと小遣い恵んでくれや。」

 

 OH……

 

 振り向くと路地裏に引きずり込まれた。

 掴まれた肩に走る痛みに顔をしかめつつ。

 狼藉物を確かめるべく、キッと睨む。

 

 ガタイのいい男三人が俺に相対していた。

 

 チンピラA

 チンピラB

 チンピラCがあらわれた!

 

 エンカウントだとしたらこんな感じ。

 

 目的はやはりカツアゲだろうな……チンピラェ 

 

 最初の異国?異世界?でのファーストコンタクトがこれではがっかりだ。

 あっさり俺の幻想をぶち殺してくれましたよ、このお三方。

 さっきの可愛らしい猫耳ちゃんや魔女っ娘を見た後で魔逆の位置の方々と邂逅。

 

 この落差が激しい事は紳士の皆さんなら理解してくれる筈だ。

 

 というか貴族? 

 どっちかという俺は家では裸族だが、貴族ではないぞ。 

 

 ……まぁ確かにスーツにビジネスバッグを持った姿

 まぁ貴族と言えなくもないか。

 

「生憎、手持ちが無くてね~。金が欲しかったら働けば?」

 

 俺は心底バカにした顔で三人を見やって挑発する。

 昔からこういう輩は嫌いだ。

 

 普通、命が惜しいならここで助けを呼ぶか、逃げるのだろう。最悪、小金を渡して事なきを得る。

 

 だが、俺は違う。

 それにここは見知らぬ路地裏、背後に逃げ、土地勘のない俺では袋小路に追い込まれるのが落ち。

 それを分かっているのだろうから後ろに退路を残しているのだろう。

 

「あぁん? なんでてめえみてーな野郎にそんなこと言われねぇといけねぇんだよ!」

 

 そう言って凄む男達。

 お?ガンつけか?うちの後輩の方が未だ怖いぞ?

 後、無闇に大声を張り上げても恫喝にもならないよ?

 

 大声で人が集まるしやり難いだろう。

 馬鹿なのだろうか?

 それに俺だってお前等と会話もしたくねえよ。

 

 

 やはりチンピラAの声が聞こえたのか、いつの間にか周りには野次馬が集まっている。

 しかし俺を助けようとはせず遠巻きに男達を見てヒソヒソと囁き合う。

 

『やぁねぇ……またあの穀潰共よ……』

『今度は何をしてるのかしら?』

『まったく、いい年にもなって……』

『誰か憲兵呼んでこいよ』

 

 どうやらこいつらは常習犯らしいね。

 つか憲兵は呼んでくれても助けてはくれないのね町人の皆さん。

 

 まぁそれが普通か。

 憲兵、呼んでくれるだけでも恩の字ですな。

 国家権力を舐めんなよ猿ども。

 

 某とんがり頭の不幸な高校生みたく猫耳&魔女のフラグを建てれず。

 不幸だ―と叫びたくなるが、まぁ我慢だ。

 

「そんじゃ、あんたらはカツアゲ、俺の金が欲しくて無理矢理奪おうとしている。これに間違いはないな?」

「分かってるなら話がはええな、さっさと財布でも置いて消えごっ!?ガハッ!」

 

 はい、言質取りました。

 道に迷ったとか、この地方特有の冗談、ドッキリカメラの線が消えました。

 肉体言語を使った物理的な説得に入ります。

  

 俺の肉体言語は流暢で早口だ。

 マシンガントークで行くぞ?

 

 故に相手に最後まで喋らさない。

 右手の抜き手で相手の喉を潰し、そのまま背負い投げで地面に叩きつける。

 相手は受け身も取れず、畳の上でも無い地面に叩きつけられる。

 堪らず、チンピラAは痛みにのたうちまわる。

 そのまま胸を踏みぬき、気絶させる。

 先ずは一人を説得(・・)

 

 この間、数秒足らず。

 ベテランのパートのおばさんのレジ打ちの様に流れる作業だ。

 

 こちとら体育会系のクラブの総元締めだ。

 身体のデカイ体力自慢共を押さえつける術を身につけている。

 荒事には慣れてる。

 

「て、てめ!」

 

 チンピラBが俺に殴りかかってくる。

 遅い、今度は投げずに半身でかわし右手で腕を掴んで左手で相手の右ひじを粉砕する。

 

「ぎゃああああああ」

 

 右ひじを砕かれ膝を突く男の顎を蹴り飛ばし黙らせる。

 

 二人目。

 

 残ったチンピラCを睨む。

 学校では使わないが、闇討ちしかけてくる馬鹿共相手に良く使った技だ。

 普段は鳩尾に肘を叩き込む八極拳モドキだが武器を持っている可能性もある。

 

 あえてエグイ攻撃手段をとって怯ませる。

 そして止めに本気で相手に眼を飛ばす。

 

 言っとくが俺の顔は鷹の眼、三白眼に鷲鼻だ。

 猛禽類並の迫力を持っている。

 

 普段は怖がられるのが嫌だから糸目にして人のいい顔を繕っている。

 だが本気で凄むとチンピラなんぞ俺に絡もうなんて思わん。

 

「ひ ひいいい」

 

 チンピラCは路地の暗がりで俺の顔が見えなかったが漸く効果が出た。

 

 ぼうぎょりょくが がくっと さがったな。

 

 日が差し込み俺の顔+二人を一瞬で倒したことから恐怖で腰を抜かす。

 

「……失せろ」

 

 そう凄むとチンピラCは泡を吹いて気絶した。

 いや仲間連れて帰れっていうつもりだったんだが……

 

 雰囲気にのまれてやっちまったぜ☆ 覇○色!

 地元の人間や学校の連中はもう慣れてくれたが一見さんは耐性が無い。

 

 やはり俺の眼つけは一見さんには効果は抜群だ。

 

 まぁこのまま放っておけば憲兵とやらがこいつらを連れていくだろう。

 さて面倒な事にならない内にトンズラと行きますか。

 

 路地から出ると野次馬が俺を怖がってモーゼの様に左右に別れ道を空ける。

 

「……」

 

 感情的になるな。

 まだ何かを成し遂げたわけじゃない。

 なぜこんなことで傷付いている。

 バカめ!

 

 うん、普通引くよね。

 ダメだ。

 俺は余程、出鼻を挫かれたのが腹に据えかねていたようだ。(←しつこい)

 

 上を向いて額の汗が目に掛からないようにしながら、俺は街に繰り出した。

 

 俺の冒険は未だ始まったばかりだ!!




 心の汗が染みますねw

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