異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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役者

 王様か~。

 元いた世界で政治家とか会ったことあるけど王様は初めてだ。

 一国の主の謁見とか緊張するかも。

 

 城門を越え、竜騎士隊に先導されながら城に降り立ちアリシアに連れられ、

 等々謁見の間の扉前まで立つ。

 

 まずは予定を確認しよう

 

 ①俺の功績を表彰 

 ②後宮廷で担当医、家庭教師として国王が俺を雇いたいといい、俺が了承する。

 ③お姫様と面会後、診察。

 ④可能なら治療 その後は、護衛 うんぬん

 ⑤偽札探し。

 ⑥姫様の心(とんでもないもの)を盗む。

 

 こんな感じだ。 

 え?

 ⑤と⑥は余計かって?

 

 だって王女の名前がクラリスでこの国には暗部とかいう暗殺のプロみたいなのがいるんだぜ?

 ぜってー狙ってんよ。

 きっとメイドか秘書に扮した美女なスパイもいるだろうし。

 

 

 ん?待てよ? 何か引っかかる。

 斥候職として鍛えられた直感が警報を僅かに鳴らしている。

 

 脅威を予測し、備え、対応しろ。

 

 ―姫様は病弱

 でも大臣とバカ息子は王位を欲している。

 王妃がなくなり、病弱になった姫これを機に王弟が不穏な動きをしだす。

 

 王位を次ぐには配偶者がナミの血族でないといけない。

 加えて種馬は優秀な精霊魔導士でなければいけない。

 

 始祖の血族の生き残りはブリタニア王族のお姫様とマイヤール公爵家

 

 バカ王子の目的は姫様。

 放っておいても婚約者の候補だった筈だ。

 

 マイヤール公爵家に跡取り息子は居ない。

 障害はブリタニア王家か流れのクルトの民だが仮にも王家に婿入りしたクルトの民。

 そこらのポッとでの精霊使いに劣る…は…ず。

 

 …………え?

 

 ちょっと待て!

 姫様を回復する手段を持ち

 強力な精霊魔法の使い手が婚約者候補!

 

 クルトの民が選ばれるのはヒュムで精霊魔法を扱えれるのが彼等、クルト民族しかいないから!

 

 俺はナミと契約し一躍大精霊魔法使い!

 ナミの存在に違和感を感じとれるマイヤール公爵家!

 

 ……あるぇ~もしかして、これって。

 

 おれ、種馬?

 

「……どうかしましたか? アキラ様?」

 

 Summer!?

 アリシアがいつの間にか俺を様付で呼んでいる!?

 

「様? なんで様付け?」

 

「あ」

 

 失言したと、アリシアが顔を背ける。

 流石はに()暗部?

 迂闊すぎだろ!

 

「……おなか痛くなったんで帰っていいかな?」

 

「ここまで来てそういう訳には行きません! もう皆さんお待ちかねですよ!」

 

 正体現すの早ッ!!

 ええい離せ!! いや、離すな!!

 胸が当たってますぅ!?

 

 ああん!

 

「主様?」

 

「――ハ!? 嫌だ、これは罠だ!つか!なんで公爵の令嬢が受付嬢なんだよ! 油断したわ! 嬢しか合ってないんだよ!」

 

「あのダンジョンの監視と流れのクルトの民をスカウトするためです!」

 

 今、明かされる驚愕の真実!

 え? もしかしてもう直ぐ最終回!?

 

「は~な~せ~!」

 

「離しません!王家の為です! 私だって代われるのなら代わりたいです!」

 

「血の涙を流すな! 怖いわ!!」

 

「あの馬鹿に渡すぐらいなら、この際あなたで構いません!いやむしろ好機です!そのまま3Pと称して乱入しますのでよろしくお願いします!!」

 

「行き成り何を言い出すんだこの肉食百合娘は!?」

 

「あの 主様? これは一体?」

 

 事態に付いていけず、困惑するナミ。

 

 おい、ナミ。やはりこの娘はお前の子孫だわ。

 すげぇ血を感じる。

 

 黄泉の入り口での契約がフラッシュバックする。

 

 先祖と同じく強引に関係を結ぼうとしている。

 もうやだ、この民族。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「アキレウス・ブラック様のおな~り~」

 

 ぐぅ 結局女の涙(血の涙)ほだされ(恐怖して)謁見に来てしまった。

 

 俺の視線の先には如何にも王様オーラを放つオッサンが玉座に立っていた。

 生の王様を見るのは初めてだが、先の攻防で俺は精神的に疲れていて感動する気力も無い。

 

 緑を基調とした王様服に筋肉質の偉丈夫、紺色の髪の男が王冠を被らずに玉座に座っている。

 

 因みにアキレウス・ブラックは俺の偽名だ。

 

 アキラという俺の名前上、ニックネームは付きにくい。

 あっきーとか、アキ位だ。

 だが死都での一軒で英雄視されるようになってから

 皆、俺の事をアキレウスとかアキリースとか呼ぶ。

 

 ~ウスとヌスとか歴史の王様か英雄みたいな発音だ。

 そういえば、リッチ?も俺の事をアキレウスとか呼んでたな?

 

 流行ってんのか?

 あの世にまで俺の名前って知れ渡ってんの?

 

 え? ブラックは?

 俺の趣味だ!! 文句ある奴は掛かって来い!!

 

 いや、今は俺の呼び名はどうでもいい。

 

 王様だ、王様。

 見た感じ、なんか王様っていうか破天荒な覇王って感じだな。

 そんなガリア国王アルフォンス3世が口元を歪めて俺を見やる。

 

 隣に控えているのはリィーンとアリシアの父親だろうマイヤール公爵。

 立派な軍服の上からでも分かるほど鍛え上げた肉体と発する圧力からスキルを使わずとも強者である事が分かる。

 

 騎士団長は伊達では無い。

 

 始祖の血を引く、彼の戦闘能力は本物だ。

 黄泉の入り口のリッチに近い圧力を感じる。

 ただ、敵意が無い為か苦しくは無い。

 むしろ機嫌は良さそうだ。

 

 余談だが、この国では兵団が三種類存在する。

 

 ギルドと各地方領主に所属、騎士を隊長に編成される駐屯兵団。

 士官候補生など学生で編成される学生連合。

 そして、王都を守る精鋭で編成される近衛騎士団。

 

 中でも近衛騎士団は一騎当千の兵で編成されている。

 アリシアは近衛騎士団の末席に数えられている新兵、見習いだな。

 ガリアは小国故、兵士の数は小さいが騎士団長である彼は元帥に相当する。

 

 今の俺はレベルだけ上げた状態だ。

 訓練を続けてきた彼に正攻法で敵うかは怪しいな。

 要注意。

 

 そして次の人物に視線を向ける。

 

 公爵の逆隣にいるのは王様の威厳を削って悪知恵を働きそうな悪人顔の男。

 彼が王弟にして宰相のルイであろう。

 悪人顔、実に結構、彼とは共感を感じるね。

 

 そして不機嫌そうに睨んでくる王子って格好の男は宰相の息子シャルルだな。

 俺を敵のように睨んでくる。

 

 特筆する点は無い。

 アリシアの云うとおりの人物の可能性大。

 

 クラリス王女は療養中。

 公爵家の長女は現在、ギルドの受付嬢に扮している。

 次女は謁見の間の外。

 末の娘はいる筈だが、国外で留学中だそうだ。

 

 これがガリア王室か。

 王族の半数が此処に集ってる訳だ。

 

 俺は国賓ですか?

 

 国賓といっても種馬っぽいですが。

 

「お主がアキレウスか 表を上げ、楽にするが良い。」

「ハッ」

 

 俺の社会知識、アルバイト経験、映画や小説の知識を総動員して無礼の無い様に勤める。

 未だ、詰んでいない。

 落ち着こう。

 未だ、慌てる時間じゃない。

 

 此処には高校生探偵も、頭脳は大人なガキも居ない。

 しくじるなよ。 俺!

 シラを切りとおすのだ!!

 

「お主の評判はよく耳にする。新薬、携行食の発明に死都での救助、生還など文武、共に優れる冒険者だそうだな。」

「もったいなきお言葉です。」

 

 否定はしない。

 此処までは別に認めて問題は無い。

 う、嬉しくなんか無いんだからね。 

 勘違いしないでよ!?

 

「ふふふ その功績を称え、褒美を取らす。これからも励むが良い。」

「は 有り難き幸せ!」

 

 ぶっちゃけ侍っぽい受け答え、芝居も掛かってるが噛まずに応答できている。

 役者の仕事でもしようかね。

 

「褒美は追って部下に届けさせる。

 それとは別件で聞きたい事がある。

 お主は優秀な錬金術師にして白魔法にも精通しているそうだが……これに相違はないな?」

 

 はい、本命きましたー。

 ジャブはお終いのようです。

 

 宰相と王子の顔が怖いですー。

 視線に攻撃力があったら俺は蜂の巣です。

 

 今の防御力なら問題はないけどな。

 

「相違ありません。」

「では我が娘 クラリスの治療を頼もう。

 いや国王として父親として頼む、娘を救ってくれ。」

 

 うん普通ならこんな馬の骨には治療を頼まない。

 王室の侍医師団がいるだろうに。

 彼らの面子丸つぶれだ。

 

 半ば確信もってるよね。コレ。

 さっきからナミの方に視線向けてるもん。

 リィーンとアリシア同様、王様と公爵がナミにガン見だもん。

 

 事情を知らなかったら、俺の女に手を出すなとかいってドロップキックぶちかます位の熱視線だもん。

 

 

 フム……俺が大精霊の契約者であることを知られているが確証は無い。

 後ろの大臣は兎も角、その息子の敵意が篭った視線が物語ってる。

 

 腹芸をもう少し頑張りましょう。王子君。

 

 しかし分かってもここは断れない。

 表情から見て明らか、これでは断れんなぁ。

 だが諦めない。

 極力ナミなしで頑張ろう。

 

「必ずや姫様を癒してご覧に入れます。」

「うむ! 姫の場所は侍女のアリシアに案内させる よろしく頼むぞ 婿殿(・・・)

 

「……」

 

 無言で退出する。

 婿って言葉はスルーだ。

 ここで反応をとっては詰んでしまう。

 

 扉を開くと、外で待機していたアリシアは満面の笑みで俺を迎えた。

 

 ムカつく!

 

 ◆◆◆◆◆

 

 つまり、黄泉の入口を攻略したことは最初からバレていたのだ。

 ある日、俺が黄泉の入口に入っていくのをリンが確認。

 普通は止めるが死都で無双をやらかした俺ならもしやと思い王都に連絡! 

 

 案の定、宝物庫に収められていた闇の大精霊のグリモアが起動。

 イザナミのらぶらぶ?自動絵日記として赤裸々に書かれ始めたのだ。 

 

 文章は契約者である俺以外読めないようにプロテクトが掛けられていた。

 絵の部分にはプロテクトがかからず思いっきり美化された俺の似顔絵がデカデカと描かれていた為にバレたようだ。 

 

 ナミは私の秘密が~と怒りながらその日記を取り返えそうとするが念話で止めた。

 幸い似顔絵は後でナミに俺の似顔絵を描かせた結果、美化されまくっていた為まだごまかしは効く。

 グリモアはそのあとで回収すればいい。

 

 ちなみにその挿絵の内容から男性に見せるのを憚れる。

 自分の情事を描くとか名に考えてんだこの女!

 

 いや、それはいい。

 問題はアリシアが管理しているグリモアだ。

 大精霊の復活

 俺の人相と名前

 彼女が国王に俺の存在を報告、同時にリンもそれらしい人物を報告し、特徴と時期が一致。

 状況証拠がそろい俺を逃がさないように仕事を斡旋。

 まんまと釣られた俺。

 

 クラリスを巡って不穏な空気になっていた王室に

 大精霊の復活

 婿に申し分のない大精霊の契約者

 しかも年頃の男だという正に葱を背負った鴨である俺を捕らえるべく動いたのが今回の一軒だ。

 

 鴨鍋&種馬エンドは防がなくては。

 

「リンにしても君にしても大した役者だったよ。ハリウッドいや舞台役者顔負けだな。」

「お褒めに預かり光栄です。アキレウス様。」

 

 アキレウス言うな。

 

「主様の浮気モノ~」

 

「いや、俺のせいかこれ?」

 

 君の血は脈々と受け継がれてるね。

 民族揃って肉食系だよ。

 遺伝ってコエエ。 

 

 で姫様とご対面か……

 まぁ結婚とか婿入りはともかく病気は治してあげないとな……

 

 姫様も肉食系だったら、どうしよ。

 そんなクラリス王女は嫌だ。

 

「やれやれ」

 ┐(´∀`)┌ヤレヤレ


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