異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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錬金術師の治療法

 ……精霊魔法を使ってのシミュレーションをしてみた。

 はっきり言ってややこしい事態にしかならない。

 

 国王やマイヤール公爵家は俺を姫様の婚約者にしたいらしい。

 そのあとの大精霊の契約者というネームバリューがマズイ。

 この国の政争や戦争に巻き込まれたり、現人神扱いされるのは困る。

 

 ハッキリ言って状況はヤバイ、相手は俺が闇の大精霊の使い手である事に確信を持っている。

 この上、精霊化や精霊魔法まで使ったら確定だ。

 

 幸い、精霊魔法が使えると言質は取られていない。

 この依頼が俺を王家に取り込む目的だろうが、そうは行くか。

 俺はどの暴君より気ままに生き、元いた世界に帰る!

 

 さて精霊魔法は禁止 これ絶対。

 竜籠の中でアリシアから大まかな症状を聴く。

 ナミに意見では強力な魔素や精霊、魔物の因子を一気に取り込んだ時に起こる症状に酷似しいる。

 所謂、拒絶反応かアレルギー症状。

 

 想像通りナミのような大精霊クラスの霊破片、因子を取り込んでいるなら

 弱点は光属性の黒魔法、白魔法。

 これを用いて因子を破壊するか、同じ大精霊の力が必要になる。

 

 精霊魔法は使えない、大精霊の因子を破壊せずに治療を施す。

 同時にやることは訳はないな。

 

 ここまでがこの世界の住人が行なえる医療行為だろう。

 

 俺は教員免許、普通免許は持っていても医師免許は持っていない一般ピーポーだ。

 だが現代医療の恩恵を受けてきた。

 そしてスキル【魔改造】今ある知識、記憶、スキルを総動員して彼女を治療する。

 

 よしんば大精霊の因子の拒絶反応以外でも全力で治す!

 俺の未来のために!! 

 

「失礼します。 姫様、新しい医者を連れてまいりました。」

 

 患者はどこだ!?

 黒尽くめの無免許医が来ましたよ?

 

 ◆◆◆◆◆

 

 クラリス王女様は、深窓の美少女だった。

 ナミと同じ、濃紺の髪と瞳が印象的だ。

 最も彼女はナミ程のアグレッシブさは感じない。

 

 病人だから当たり前か。

 その瞳には諦観の色が見え隠れしている。

 

 なんというか庇護欲を駆り立てるような印象の少女だ。

 だが、俺は彼女の肌を見て、そのようなピンクな思考がそがれる。

 

 肌には所何処に刺青の様な幾何学模様の回路っぽい痣、斑点が浮かんでいる。

 

 これが、精霊因子の暴走。

 それも大精霊クラスの暴走だ。

 

 通常なら死んでいるが、王室の待医師団の腕か、彼女自身の力か。

 或いは両方の力で危ういバランスで命を保っている。

 

 ……やっぱ大精霊因子の拒絶反応と暴走だよぉ。

 ナミの契約者の俺だからわかる。

 一目見た時にピンときたね! 

 ナミのウイルスだから、Nウイルスか?

 いやイザナミだから Iウイルスと呼ぼう。

 黄泉の入口のゾンビ共みたいにならないだろな?

 

 さて要はウイルスの進行をとめればいいんだ。

 ウイルスの増殖を抑えるにはワクチンだ。

 

 じっとナミを見るが、駄目だナミを使うのは禁止。

 正体ばれる。

 

 自己紹介をそこそこに診断と治療行為を始める。

 

「王女様~採血しますので腕を拝借しま~す。」

 

 お注射の時間DEATHよ!

 

「はい」

 

 王女は素直に腕を差し出し、診断を受けていく。

 ちょっと待ってくださいね~

 

「【キュア】」

 

 白魔法の解毒魔法で消毒してから自作注射器を取り出す。

 

「ちょっとチクッとしますけで我慢してくださいね~」

「アキラ殿! これは一体! というか姫様になにを!」

 

 注射機を見たこと無いのか、慌てるアリシア。

 回復魔法と調合薬がある世界で注射は珍しいのだろうか?

 いや、錬金術があるのだから作られていてもおかしくないと思う。

 

 でもはっきりいって邪魔だから静かにしてほしい。

 

「ナミ~治療の邪魔だから取り押さえて~」

「はい、主様」

「ナ ナミ様!」

 

 ナミがアリシアを羽交い絞めにする。

 アリシアは少し赤面して嬉しそうだな。やっぱ百合か。

 

「じゃ、いきますよ~。」

 

 すぐに採血し、彼女はピクっと震えるが声を上げずに耐えた。

 無免許の俺がお医者さんごっこに興じているだろうと思うだろうが俺は真剣だ。

 どうか白い目で見ないでください。

 

「【ヒール】 はい、協力ありがとうございます~。

 この血液調べますので 今日のところは症状を押さえて、楽になるお薬だしておきますね食後と就寝前に飲んでください。

 このビンのコップ一杯分です。

 あ、もちろん苦いヤツではなく俺の特性ポーションですんで味は保証できますよ~」

 

 安心させるように、怖がらせないように、鋭い眼光を糸目にして緩和。

 患者を落ち着かせるように間延びした声で話す。

 患者を不安にさせず信頼を得るのも治療行為だそうだ。

 

「ふふ アキレウスさんは優秀な薬師でしたわね。」

「よく 間違われるんですけどアキラだよ。 

 まぁ趣味が高じてね~薬ッて苦いもんばっかだろ?

 だから甘い薬があれば子供でも飲めるし、冒険者も飲み易くなるからな。」

 

 功を奏したのか怯えられずに済んだ。

 流石は王女。

 いや、ナミと契約している為か?

 

「あら失礼しました。それではアキラさんと…私もアキラさんと同じで苦い薬は嫌いだわ。」

「良かったな。今日から美味しい薬が飲めるぞ。」

 

 最も、薬を多用するのは、俺の主義ではない。

 思いっきり笑い、上手い飯食べ足りして幸せに生きるのが万病の薬だ。

 

 クスクスと笑う王女。

 

「ふふふ なんだか変だわ。私、アキラさんと初めて会った気がしません。以前どこかでお会いしましたか?」

 

 そういえばいつの間にか敬語を使ってないな。

 なんでだろ?

 

「え?俺、今、口説かれてる? いや、初対面だけどもしかしたら前世であったのかもね。」

「うふふ でしたら前世は恋人か兄妹かしら?」

「さぁ 女王と下僕かもよw」

 

 軽く雑談をしながら鞄から薬瓶と飴玉を出す。

 

「はいよ。特製ポーションは食後に一杯、飲んでな。体力の回復と症状を抑えるから。飴玉はプレゼント。早く元気になるようにってね。

 私は、採血した血液から薬の開発に入るから翌朝また診察に来ますね。」

 

 もう少し、話したいが、そこはアリシアに任せる。

 そういうケアは今日、会ったばかりの強面より幼馴染がいいだろう。 

 俺の正体の事を勝手に話したりするだろう。

 治るかもしれない、治したいと患者が思うのも必要だろう。

 

 ナミの件は証拠さえ残さなければ如何とでもなる。

 

「行くぞナミ。」

「はい主様。」

 

 そう言って二人で与えられた研究室へ向かう。

 

 (よろしいのですか?)

 (これは俺のエゴだ。保身のために確実な方法を取らずにいるんだ。自分が嫌になってくる。)

 

 念話で悪態を吐く。

 精霊化すれば、千年前の力とキセキを体現し、因子を全て除去できる。

 そうなれば、もうごまかしは効かない。

 

 だが精霊化なしでも治療の構想はできている。

 要は体内にある因子を取り出し、拒絶反応を起こさせずに機能だけ残せばいい。

 

「手術の方針は決まった。 後はこの血液サンプルで実験しソレが有効であるかどうかだ。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 翌朝

 

 与えられた部屋に監視も刺客も来ることが無く、存分に研究できた。

 

 血液を調べ、実験の結果。

 構想通りの治療法が使えると分かった。

 

 となるとサッサと治療を行なう。

 

「手術?」

「ああ 姫ちゃんの症状だが、体内にある精霊因子が増殖し続けてるのが原因だ。

 体がそれを異物、毒物と認識して追い出そうとして、咳や魔力の欠乏といった症状が出てる。

 魔力や生命力を回復させるポーションを呑んでもその場しのぎだろう。

 かと言って因子を消滅させる光属性魔法は使えない。

 なら必要最低限の因子を体内に残し、残りの因子を体外に展開できるようにする。」

 

 ベラベラと話すが、少し分かりづらいのか首を傾げる姫ちゃん。

 本職じゃないから上手く、説明できないな。

 

「つまり病気の大半を体の外に追い出して、姫ちゃんの装飾品に閉じ込めて安全に精霊魔法が使えるようにする。」

 

  

 そして懐から赤い結晶を台座に据えた指輪を出す。

 昨日、採決した姫ちゃんの血を結晶化して指輪の台座に嵌めた。

 

 一見、赤紫の宝石の指輪だ。

 台座の底には小さい穴があいており指輪をはめると結晶部分が台座に触れる。

 装備者の体内の魔力と精霊因子が反応しそこを起点にして精霊魔法が使える。

 

「みてろ? 【闇纏】」

 

 指輪を嵌め、パワーワードを呟く。

 すると指輪が怪しく光りだし、俺の体に闇が纏われる。

 如何にも中二病患者が好きそうな闇のオーラが俺を包む。

 

「え?」

「――な!?」

「先ず先ずの魔法ですね。」

 

 指輪の効果に驚く二人。

 子孫の魔力の形に評価を下す先祖。

 

 そう、病気の毒素を取るのが困難なら武器に変えればいいじゃない。

 精霊因子の総量を減らさずに治療するなら病気にならない器に移し替えて、取り外しできるようにすればいい。

 

 アリシアの血の中の精霊因子が俺の魔力と結びついて精霊魔法となる。

 擬似的な精霊契約と同じだ。

 

 精霊を実体化するには契約者の魔力が必要。

 指輪に魔力を込める事で精霊魔法を発動させる。

 

 これが錬金術師の真骨頂。

 病という鉛を魔法という黄金へと錬成する。

 発想の勝利だね。

 

 そして、因子を外に出す方法だが。

 血液を全部抜くには人工心肺が必要だがこの世界にはそんな物は無いし俺にも作れない。

 

 光魔法で消滅しない程度に因子の部分を当てて追い出す。

 あらかじめ献血用、輸血パックを接続して其処に追い立てる。

 後は血液ごと因子を集めて加工すれば完成。

 致死量の精霊因子を体外の器である装備品、装飾品に封印する。

 

 一日に献血できる量は限られているので少しずつ因子と血液を集めて因子を加工する。

 少しづつだが、治療する度に強力な装備品が作れるのだ。

 

 血を媒介にして契約する黒魔法、精霊魔法も存在する。

 それを錬金術で武器化、装飾化して扱えれる礼装にかえて治療するのだ。

 

 くっくっく みたか! 

 俺はやったぞ! 

 これで大精霊の契約者だと言われてもシラを切り通せる!

 

 精々、世紀の錬金術師と謳われるだけだ。

 さぁ オペを開始する!


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