「くくく やるな~婿殿」
「いえ、患者の身と身内の安全を守ろうとしたまでです。」
つか、婿って言うな。
あの後、馬鹿どもを縛り上げて顔に落書きして牢にぶち込みました。
それで俺、ナミ、シアが王さんと宰相の前で事情説明中です。
まぁ証人も居ますし? 俺に落ち度もないっすからね~
「で、宰相よ息子の不始末だがどう付ける?」
「……暫く牢屋で頭を冷やさせ、2ヶ月は登城を自粛させます。
愚息に身の程を知らしめるべきでしょう……私は甘いですかな?陛下。」
ほほう、愚息は兎も角、宰相はマトモな人らしい。
妥当なところだろう。
自分達が信仰する女神に狼藉を働こうとしたというのを度外視すればだが。
「ふふふ まぁこの事を公にしても記録には残さない、これでお前の面子とやらは保たれるであろうよ。後は当事者の彼らが其れを許すかだが。」
「俺はそれで構いませんよ、患者が治るまで守るのも医者の仕事ですし、彼の自粛が解けるまでには姫様の治療も終わります。」
「ん? 待て 治療が終わるとはもしや……」
「アリシア殿には私と姫様から口止めしていたのですが、今回の事を未然に防ぐためにも申し上げましょう。
彼女の体を蝕んでいた精霊因子による暴走。
便宜的に精霊疾患の治療の目処が立ちました。
精霊因子を除去せず、錬金術と白魔法による治療で制御できるようにしていますので以前より調子も上がります。
王妃様よりも長生きするようになりますよ?彼女は。」
「誠か!? 是れは朗報であるな! しかしそれではシャルルも早まったことをしたな。」
彼も頭に血が上っていたので聞いていなかったんでしょうね~
早死するから今のうちに手篭めにってとこか?
……もう少し痛めつけても良かったな。
「それと、素手で剣を叩き折ったと聞いたが……」
「魔術師が肉体を鍛えているのは盲点でしょうから」
「成程……グレアムを思い出すな。」
王室でも知れ渡るのかあの神父の所業は。
いや、リィーンさんの紹介だったし、王室が知ってて当然か。
「では引き続き、娘の治療の続きを頼む、それでは褒美を取らそう何が良い?」
「はいそれでは……」
◆◆◆◆◆◆
数日後 そこには元気に中庭で走り回る姫様とそれを追いかける従者のアリシアの姿があった。
俺は姫様に自分が新しい婚約者であると伝えていない。
国王に彼女に婚約者であることを伏せてもらったのだ。
白紙にしたかったのが本音だが、彼女に余計な虫が付かない為の配慮と理由をつけて国王も諦めていないようだ。
俺は彼女に兄のように好かれ、慕われるようになった。
王宮の仕事が終わったあともチョクチョク忍び込んで会いに行っている。
今は国内のあらゆる施設のフリーパスと免税、ギルドの徴兵義務の解除を申請してもらいその書状を一筆してもらった。
役職は国家監査官としての役職を得ているが、国からの強制力は無い気軽な役職である。
仕事内容も水戸黄門的な仕事だ。
彼女が精霊因子を完全に制御出来るようになった以上、婿探しはひとまず見送りになっている。
そうそうバカ息子は暫く登城を自粛している。
仮に城に戻ってこれても今の彼女には手出しできないし国王やアリシアがそれを許さないだろう。
「主様、これからどうします?」
「いつもと変わらん、帰還方法を探し、故郷に帰る。」
「そうですか、私もお供します。」
「そうか……それと自分の子孫達にあった感想は? 王女なんかお前によく似てたろ?」
「孫や娘というより妹ですね 私の体感時間だと気づいたら千年も経ってたんですから。」
「そりゃそうか 話は変わるんだが、城を探検してたらこんなものを見つけてな。」
懐からグリモアを出す。
それを見た瞬間、ナミの顔が一気に朱に染まる。
「あ”ぁぁぁ!! そ、それは!!」
「そ。お前のグリモアです。まぁ今じゃ日記だな」
因みに比喩では無く、タイトルは「なみのにっき」。
何の冗談だ?
グリモアは悪魔や高位精霊の取扱説明書。
対象の弱点、能力、秘密諸々が自動で書かれている。
乙女の秘密が満載という点では日記と表現するのも間違いではない。
ただ、一言、言いたい。
ふざけてるのか?
「か 返してください! 返して! まさか読んでないでしょうね!」
「おっと 流石にそれは俺の流儀に反するから読んじゃいないよ。 ホラ」
この手の事で意地悪をしても関係が悪化するだけなので直ぐ返す。
「う”~~~」
日記を受け取ると声を低くして唸るナミ。
あ、涙目だ。
本当に眼を通していないのだら、許して欲しい。
「……(お兄様のバカ)」
何を呟いたのか知らないが、パスからは羞恥と安堵が感じられるが敵意は感じないので大丈夫だろう。
「さ~てこれで俺達の正体を知る者は居なくなったし、証拠も我が手中だ。いよいよ本格的に攻略に乗り出すか!」
この城での目的も果たした。
そう、俺達の戦いはここからだ!
未完!!!!
「いやまだまだ続くけどな!」