異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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死都攻略①

 ~死都~ 

 同心円状に作られた旧・ガリア要塞都市

 

 三重の壁に囲まれたガリアの拠点である。

 魔物の迎撃首都でもあったが、千年前の戦いで陥落。

 一説では当時の五英雄と現人神との戦いが原因という言われもある。

 

 魔力汚染濃度が高い為、死体は魔物に、遺物は強力な魔法道具に代わる。

 ダンジョン化した廃墟である。

 

 現在、外側の防壁、通称【三層】は攻略中。

 濃度の高いミストによりモンスターは凶暴・活性化する傾向アリ

 難易度Bランクのダンジョン。

 

 そして、本日、それに挑む15人の戦士たちがいた!

 

 蛇女の尻尾 ランクD 

ジャック(重戦士)

ギル(シーフ)

ラルゴ(黒魔法使い)

トビ(パシリw)

 

 猫の目 ランクC+  

 

 ミケラン(シーフ)

アーニャ(魔導弓兵)

ナディア(重戦士)

 

 銀狼の牙 ランクB- 

 

 ガーコルト(剣士)

アニ(魔女)

 

 妖精の涙 ランクB 

 

 ノエル(精霊魔導剣士)

 カサンドラ(黒魔法使い)

 テファニア(白魔法使い)

 

 暗部 ランクA 

 リン(黒魔法剣士)

 

 自由の槍 ランクA 

 

 俺(賢者)

 ナミ(精霊魔導士)

 

 このメンツで死都の大規模攻略に打って出る。

 

「はい! 本日はお集まりいただきありがとうございます。本日の作戦を立案しました。自由の槍のチームリーダーのアキラです。」

 

 拍車喝采で迎えられる。

 うん大学のクラブを思い出すね。

 

「今回の仕事は死都の第1層、商業区、居住区の奪還作戦の前哨戦であり南側第1層居住区のゾンビどもを一掃することである。」

 

 その言葉に少々動揺が走る。

 三層からなる死都も第1層だけでB-の驚異のゾンビを一掃するのは容易なことではない。

 まして最近その驚異に晒された蛇女の尻尾と救助作戦に参加した経験がる。

 銀狼の牙はその驚異を身をもって知っている。

 

「だが心配しなくてもいい。我に秘策あり。」

 

 ドヤ顔をする俺。

 プレゼンは未だ始まったばかりだ。

 

「魔物の対処だけどゾンビ、ゾンビ犬、紫オーラゾンビ。是等の習性は人間の捕食による殺害と感染による繁殖。

 こいつらはそろってAHOだな。食欲のみで動く。」

 

 つまり行動がほぼ、ワンパターンだ。

 どうにでも料理出来る。

 

「この習性を利用し、壁上に待機してゾンビを壁際に誘導、一箇所に固まったところを火力の高い魔法や爆弾の投下で一斉駆除することだ。」

 

 直接戦闘が無いことが分かり、Cランク以下の面々の表情に安堵が浮かぶ。

 うん、俺もあんな臭い奴らには極力近づきたくない。

 

「直接戦闘がないのは分かったが、どうやって誘導するんだ?」

「壁上に突っ立てるだけじゃ誘導はできないよな?」

 

 うん、当然の疑問だ。 

 

「誘導は各チームから精鋭特に逃げ足の速いものを選抜し、自身を餌に所定の位置まで誘導する。」

「おいおい囮ってことかよ下手すりゃ死ぬぜ?」

 

 ガコライが周りを見渡して質問する。

 この心配も最もだ。

 だが、俺には秘策があると、既に宣言してある。

 

「心配ない コレを使う。」

 

 そう言って赤い薬瓶を取り出す。

 

「こいつは魔の森に群生する食人花の花粉と動物の血液を混ぜて作った誘引性の高い煙玉だ。」

「こいつを地面に叩きつければ、その臭いを人間の血液と勘違いして集まってくる。要するに撒き餌だ。」

 

 血液中に含まれるフェロモンと魔力を抽出して創り出した秘薬だ。

 つまり任意で魔物を惹きつける。

 

 

「つまり逃げる時の囮にも一網打尽にできる餌にできる代物ってわけかにゃ?」

 

 猫耳ちゃんは理解が早くて助かる。

 

「ああ、ゾンビどもは視力はほぼ無いし主に嗅覚、聴覚を頼りに本能で標的に襲いかかる。

 この煙玉を使って誘導して所定の壁上に誘い込み一気に狩る。」

 

 すると今度はトビが挙手して質問する。 

 

「飛竜を使って空から攻撃するのはダメなんすか?」

「トビ ソレができるのならとうの昔にやってる。 

 死都のような魔力汚染によって濃密なミストと怨念が渦巻いて一種の結界のようになってるんだ。

 比較的ミストの薄い壁上からの攻撃でないと有効な攻撃はできないんだ。」

「す、すいません。不勉強で」

「いや、いい質問だ。俺もその質問をリィーンにして呆れられた。」

 

 ドッと笑いが起きる

 上手く場を明るく出来た。

 

「んん! このように質問は随時受け付ける」

「レベルの低いものが混じっているのは?」

 

 今度は妖精の涙のリーダーが質問をしてきた。

 ダークエルフのノエル。

 

 冒険者の仲でも屈指の剣士が辛辣な意見をのべる。

 おい、明るくなった場でそういう事は言わない。

 空気を呼んで! お願い!!

 

 や、分かってる。

 彼女はかなりの実力者でホントは優しいんだけど言語能力が残念なんですよ。

 今のセリフを補完するならこうだな。

 

「あ~今の彼女の言葉を翻訳します。

『この危険な作戦にレベルの低い物達を同行させては危ないでしょう?なぜ参加させるのですか?』

 と彼女は心配しています。誤解しないで上げてください。」

 

 彼女なりに心配しての意見だったが、彼女の無表情勝つ抑揚のない声で言われると誤解を生む。

 

 場違いな雑魚は失せろ

 足でまといだ消えろ!

 

 この様に取られる。

 

 実際、蛇女の尻尾の面々は自分たちが場違いだという事に肩身の狭い思いをしてる。

 

「彼らを勧誘したのは俺です。 

 今回の任務はギルド内の戦力の底上げも目的にありますし、彼らならこの仕事をやり通せると思って参加させました。

 チーム構成も今回の班の中でもバランスがいいですし仕事が終わった時は化けるかもしれません。 

 それに是れは前哨戦にして試験的に行う作戦です。

 高レベルのものだけが成功できるのではなく、誰にでも出来るようにしなければ戦力の底上げにもなりませんし、

 この死都が絶好の狩場へと変わるでしょう。」

 

 精一杯、フォローする。

 ぶっちゃけ概念崩壊の法則を流出すればもっと楽にできるが今回は自粛する。

 

 簡単に真似できるから故、急激に力をつけて増長した馬鹿が出ないとも限らん。

 そういう意味では蛇女の尻尾は一度死にかけているし、自分の身の程も十分に身をもって知った。

 増長するような馬鹿ではないのでこの作戦に参加させたのだ。 

 

 ……そこまで教えないし面倒も見ないけど。

 

「この作戦が成功した時、蛇女の尻尾の創設者の鮮血の料理人 アデーレ女史に顔向けできる立派な戦士たちが誕生しますよ。」

「成程 理解した。」 

「済まねぇ アキレウスの旦那 みんな 迷惑かける。」

 

 蛇女の尻尾の面々が頭を下げる。

 別にいいのに。

 俺は効率とかを考えて彼らを選んでる。

 謝る必要は無い。

 

「なんのことですか? 俺はこの作戦を成功させるためにベストメンバーを揃えたんですよ?

 もっと自信持ってください。

 ゲルマニアに嫁いだ先代のリーダーにいい武勇伝を聞かせれるじゃないですか。」

 

 彼らが身の丈に合わない依頼を受け続けたのも、鮮血のアデーレ、撲殺神父のグレアム神父に並ぶ実力者に恥じぬように努めたのが原因らしい

 伸び悩んで腐っていったゆえにあの事件を起こしたんだろう。

 それで俺を囮や盾にしようとするのはおかしいし、納得もいかんが、俺は寛大な男だ。

 今回の作戦でチャラにしよう。

 

 それにこの作戦は彼らに実力と自信、誇りを取り戻させるのも目的の1つだったりする。

 

「……アキラこのメンバーの火力で倒しきれないと思うんだけど?」

「アニ 心配はいらない、所定の位置に大量の罠と油、黒色火薬の詰めた樽爆弾を設置して火力をカバーする。

 魔力回復薬の新作も俺が用意している。

 今回はあくまで予行演習だからキリのいいところで引き上げだな。

 ある程度、成果を上げることが目的だ。」

 

 俺の言葉にアニも納得する。

 

「わかった誘導班はどうする。」 

「俺、トビ、ミケラン、ガーコルト、ノエルの5人だ」

「あら 私は連れて行ってくれなのですか?」

 

 リンが意外そうに聞く。

 確かに威力偵察、斥候能力は彼女が抜きん出てる。

 彼女を外すのは俺の保身だったりする。

 国との繋がりが強い彼女には出来る限り手札を隠しておきたい。

 

 ―もう遅い気もするが。

 

「あなたが同行すると本気が出せませんから。」

「ふふふ それは残念です アキラさんの雄姿を間近で拝見したかったのに。」

「あっはっはっは」

 

 まぁ影魔法の影分身と使い魔の大隊編成の人海戦術で殲滅できるし他にも開発武器はたくさんある。

 最近開発した【複製】スキルで製作したアイテムや【ばきゅ~む だいそ~ん】【クレイモア地雷】【銃】もあるがここでは使わない。

  

「それで、質問は以上かな? ……ないようなら作戦、役割、装備を確認次第、死都奪還作戦の前哨戦を行う!」

 

 さぁゾンビがりの始まりだ。

 


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