異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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死都攻略②

 壁沿いに移動しながら遠くに見えるゾンビを投石で挑発して引き寄せる。

 危なくなれば煙玉を放り、かく乱する。

 これを繰り返していけば日本の通勤ラッシュの如くゾンビが集まる。 

 

「紫だ!」

 

 魔力活性化固体。

 

 ゲームなら色違いの強力な魔物であろう紫色の魔力を纏う魔物が現われる。

 素早い動きの紫オーラのモンスターと犬のみ戦闘が必要だ。

 

 ガーコルトの叫びに自分の影から槍を召喚する。

 そして群れから抜け出し、走って襲ってくるゾンビ目掛けて投擲する。

 放たれた槍は霧を切り裂きながら黒い閃光となって紫目掛けて飛んでいく。

 

 そして刺さると同時に紫は渦巻くようにその肢体を四散させ消滅した。

 

「す、凄すぎるにゃ 最早、投槍の威力じゃにゃいにゃ」

「ミケラン、訛りがでてる。」

「にゃ! す、すごい腕ですね、投槍の域を超えています。」

「流石兄貴っす。」

「おいおい 前は片手剣か短剣だったろ。 ソレがお前の切り札か?」

 

 紫を容易に倒し、未だ誰一人負傷していない為、全員落ち着いたものである。

 この分だとゾンビがいくら沸こうがそうそう、混乱する事は無いだろう。

 

「もう少し引きつけよう、背後の団体さんは付いてこれてるか?」

「おいおい、あんま俺達を舐めるなよ。」

「ルーキーに心配されてちゃ、あちきらもおしまいにゃ。」

 

 そうだな。彼らは俺の何倍もの修羅場を潜ってきたんだ。

 心配は無用か。

 

「わかった。紫かゾンビ犬がきたら赤玉投げて足止めしてくれ。俺とノエルで狩っていく。

 ガーコルトとミケランは周囲の索敵を…トビは赤玉を投げれるよう準備しておくように。」

 

 こうして外壁を一周しながら散発的に黒魔法や挑発、投石、赤玉を使って注意を惹きここまで集めたのだ。 

 偶に勢いよく走ってくるゾンビ犬と紫は俺とノエルが狩っていく。

 

 俺の投擲とノエルの高速で振り抜かれる大剣を超えるゾンビはいない。

 

 だが、この人数ではこれだけ惹きつけるのがが精一杯だな。

 これ以上は、リスクが高くなる。

 

 今は高火力のメンバーがいるが保険として誘導班には必要だ。

 今後の課題は攻撃力関係なく、確実に誘導する為のアイテムが必要だ。

 この当たりも改善点アリだな。 

 

「よし、所定の場所まで戻ろう。楽しい狩りの始まりだな」

 

 俺の合図に全員、頷き壁まで引き返した。

 此処からは完全に狩りというより作業という感じだな。 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 それぞれ高さ20メートルの壁上をロープで引き上げてもらったり、

 魔法の浮遊や跳躍で壁上に上り他のメンバーと合流する。 

 眼下には俺たちを喰おうと壁際に集まるゾンビども。

 

「お待たせ、何か変わったことは?」

「特にありません。やはり、ある程度注意を引かないと数は集まりませんね。それでも雑魚がチラホラきましたので少々移動して、投擲武器、魔法で仕留めましたね。」

 

 やはり、壁上に居ても多少、魔物は集まるか。

 遠距離攻撃が高いメンバーは壁上に残って誘導班が上る際に邪魔になる魔物を掃討してもらった。

 

 部隊を残していて正解だったな。

 

「ではみんな壁の下に落ちないよう命綱をしっかり身に付けて下さい。鋼鉄のロープを練成していますから切れないとは思います。」

 

 事前に【錬金術】と土魔法を習得したお陰でより完成度の高い鋼鉄のロープを錬成した。

 レベルの高い人間ならロープの重さは苦にもならないし、耐える事もできる。

 

 全員が装着したのを確認し、作戦開始の号令をかける。 

 

「それでは始めましょうか。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 合図と共に、壁の下に集まったゾンビ共目掛けて攻撃が放たれる。

 

 魔法、火矢、松明が地面に設置した樽爆弾、火薬、油に引火しゾンビの大群を焼き払う。

 爆風で引き飛び、炎に包まれ、次々引火しては魔素となって消えていくゾンビ共。

 

 壁上にいる俺たちに彼らの手は届かず完全にハメ殺し状態である。

 

 ははっ見ろ。ゾンビがゴミのようだ。

 ヒャッハー!!汚物は消毒だーー!!

 

 ……ゴホン

 

 これが策。

 ゾンビに知性が無く群れで行動するのが脅威なら手の届かない場所に待機。

 フェロモンを含んだ赤玉で誘引。

 爆薬を大量に容易し、遠距離から一網打尽にする。

 

 半時もしない内に視界に映る全てのゾンビは魔素を吐き出し、

 灰となって消え壁上の俺たちのレベルを向上させる。

 

 特にDランクの蛇女の尻尾の面々のレベルを大幅に上がっていくのを【透視】で確認出来る。

 

 ゾンビが灰と魔素となって消えたのを確認し、地上へと降りる。

 

「作戦は成功です。暫くこの南居住区は空白地帯になりますのでアイテムの回収を2チーム毎に組んで回収しましょう。

 まだ釣りきれなく溢れた魔物もいるかもしれないので慎重にお願いします。」

 

 そうして灰になった山から装備品を回収、無人の居住区のアイテム探索に入る。

 アレだけミストに包まれていたのに今は南の居住区は霧が晴れ切っている。

 この分なら暫く魔物は出てこないだろう。

 

 探索の結果だが……

 参加したメンバー全員が嬉しい悲鳴を上げたのは言うまでも無い。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 探索が終わり、ギルドに戻り祝勝式を上げる一団。

 豪華な料理と酒がテーブルに並び、みんなが杯を片手に俺に注目している。

 

 

 アイテムを回収し終わりホクホク顔の一団。

 無表情のノエルやアニも機嫌がいいのか表情が緩んでいる。

 かなり高額の臨時収入だ、遊びに使うも装備に当ててもお釣りがくるのだ笑いが止まらないだろう。

 

「収穫は一昔前の金貨、銀貨に魔法アイテム、冒険者の遺品でしたね。

 貨幣は現代と違い質がいいので表示されている金額の10倍はしますね。」

 

 とはリィーンの弁。

 

「みなさんお疲れさまでした。 誰ひとりかけることなくこの作戦を完了しよかったと俺も安心しました。 近いうちに今回の反省点を考慮して大規模の部隊編成して総攻撃を掛けるでしょうが第1層の外周を奪還する為に第2層に通じるゲートを封鎖するために土属性魔法か錬金術の【大地隆起】で塞ぎこちらの陣地を増やし奪還していきます。 俺たちの戦いはこれからですが一先ず今晩は、この作戦の成功と勝利を祝いましょう! 乾杯!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 この一ヶ月後 第1層は完全に解放される。

 1年半後 士官候補生、国軍、ギルドの概念崩壊の法則を駆使し、死都から魔物は消え去った。

 

 死都の名前がアキレウスシティと変わるのだが……それはまた、別の話。

 


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