異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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忍び寄る見えざる手

 自由の槍

 徴兵義務の免除、国内のあらゆる施設、ダンジョンのフリーパスとアイテムの独占販売権を有する組織。

 

 表向きは王女の治療で、得た特権。

 真相は黄泉の入口の攻略及びナミとの契約による報酬である。

 

 俺が欲したの徴兵義務の免除だ。

 戦争は俺に現代日本に生きた俺の倫理観からタブーだ。

 

 この世界に来て半年。地盤を固めて、本腰をいれての攻略にかかり、

 先月は死都をギルドの大部隊と俺たちで死都の大一層を開放した。

 

 次は王墓か魔の森の攻略に乗り出し、異世界帰還のスキルの手がかりを探す。

 もしかしたら遺跡に俺と同じ境遇の人物が残した物もあるかも知れない。

 

 この世界は異世界人、それも日本人が残したと思われる文化を感じるのだ。

 服屋では現代にあるような服や水着。

 子供達が遊んでいるサッカーの様な玉遊び

 

 帰る手がかりはある。

 そう確信し、軍資金もレベルも手に入れた。 

 後は世界を巡り帰還方法を見つけるだけ。

 

 全ては順調だった。

 しかし転機という物は誰しも訪れる。

 

 俺に異世界での転機は、家の前に男が倒れていた。

 ブリキのタライを頭にぶつけて。

 この間抜けな男との出会いが、本格的にこの異世界を攻略する事になるとは俺は思いもしなかった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「いやー痛かったわ~。まさかブリキのタライが落ちてくるとは……

 ああ自己紹介せなな!自分は田中・ヨシツグや よろしゅうな! 渡辺君!」

 

 関西弁である。

 つまり日本人、俺と同郷の人物なのだろう。

 だが俺の観察眼とナミの目がこいつは人間ではなく、人形であると頭に訴えている。

 

 人間離れした整った顔。

 ロボットの不気味の谷を彷彿とさせる顔立ちが目の前の男の印象だ。

 

「それで? 同郷の者に会えたのは嬉しいが、その体は?」

「ああ、これ? スキルで作った人形や。

 本体は花粉症でな~部屋から出られへんから、スキルで作った端末や!

 オンラインゲームみたいに美形のアバターつくろ思てつくってんけど、ちょおやりすぎても~てん。」

 

 同郷の日本人がこの世界に来ていることに嬉しくもあったのだが、がっかりした。 

 

 なぜ人形師で男の人形を作る?

 ローゼンメイデンでも作ってろよ!

 

 ……いや、落ち着け。

 国どころか、街から出る前に手がかりが自分の方から来たのだ。

 少々、落ち着きを無くしているな。

 

「いや~このスキルが結構使えてな? 端末を仰山、量産して戦わせて得た経験値や魔素、情報が自分とこ届くんや。

 

 せやから人海戦術でゲーム感覚かつ効率的にレベル上がってな~。

 そんで次いでに世界中に端末配置して情報収集してたら君を見つけてな?

 こら挨拶せなアカン思てここまで来たんやけどな?

 まさか空からブリキのタライが降ってくるとは思わんかったわ。

 避けることも出来てんけど

 関西の血が逃げたららあかんって騒いでもうたわ~

 正に!!俺の弱点を的確に突くトラップやったは!! さては君……プロやな?」

 

 よく喋る奴だなホント。 

 

「情報収集というとやはり帰還方法を?」

「ん~? ちゃうけど?

 自分は美人のおネェちゃんやこれから美人になるロリの子を探しにガリアに来たんや。

 自分この世界を気に入ったからここで住もかと思ってんねんけど。

 どうやら君は違うようやね?超人みたいな力身に付けてんのに。」

 

 当てが外れた。

 そうかこういう考え方を持つ奴もいるのか。

 異世界に行きたいという願望を持つ奴もいるだろう。

 彼は望郷よりこの世界での永住という選択を取ったのだろう。

 

「俺は、帰りたい。そして神隠しの様な異世界に迷いこむ原因を突き止める。

 誰もがこの世界に馴染める訳では無い以上、

 他にも帰りたいと願う人間が迷い込んだ時の為に帰還方法を探す。」

 

 同郷のものを見つけた所為だろうか

 いつもより雄弁になっているな。

 目の前の人形の態度が少し、癇に障ったのも原因かも知れない。

 

「この世界への訪問が事故なのか、それとも召喚という形の営利誘拐なのかは知らない!

 どちらにしても原因を突き止め、この世界の謎を解き明かし、後者なら召喚者をぶん殴る!

 これは家族を友を恋人を全て奪うような所業なんだ!

 相手がこの世界の最強の魔法使いだろうが、神だろうが、宇宙人だろうが絶対にぶん殴る!絶対にだ!」

 

 呆気にとられる田中とナミ

 

 ひとしきり喋って俺も落ち着いてきたところで田中が口を開いた。

 

「ははは なんやちょっと冷めた感じの男やと思ってんけどちゃうみたいやな。

 悪い悪い、渡辺君の意見もようわかるわ。

 そらぁ。もしこの世界にきたのが誘拐やったら俺かて怒るわな。そん時は協力するわ。」

 

 訂正、コイツは軽い奴だが、悪い奴では無い。

 

「いや、俺も少々熱くなったな。それで俺たち以外にもやはり地球人はいるのか?」

 

 懸念事項がある 2度あることはって奴だ。

 

「ああ おるで?全員半年前から各国にソレらしいのが俺らを除いて数人見つけたわ。」

 

 やはり、居るのか。

 だとしたら彼らと合流して帰還を希望するのなら一緒に協力しよう。

 

 だが、次の田中の言葉が俺を凍りつかせた。

 

「どれも各国がその存在を秘匿しとるけどな? 皆、俺らとは桁違いのバケモンになっとるわ。」

 

 国が秘匿、俺達より強力な存在?

 不穏なワードが次々へと出てくる中、俺の中で最悪の事態が浮かび上がってくる。

 

「この世界に来た誤差はあれど大体、時期が一致しているのに。

 各国ってことは一国毎にバラバラに異世界に現れたってことか?それにケタ違いの化け物って。」

 

 

 

「順に話そうか……ロマリア、ポルトガ、ブリタニア、シン、ルーシ、イシス、ガリアの7国に一人ずつ異世界人がおる。

 ガリアは自分で、イシスがワイやな。」

 

 俺達以外に5人、異世界人がいるのか。

 しかし、国外にそれぞれ一人ずつ。 

 ……偶然では無いのだろう。

 

「他の5人やけどな固有スキルが半端ない。

 個人の趣味志向や生い立ちが反映される観たいやけど他の5人は完全に戦闘向けのスキルや。」

 

 教師としての能力に【魔改造】スキルが入るのならまぁ納得はできるな。

 職業が医者で趣味が人形作成、ネトゲだった田中もそれに準じた固有スキルがあるらしい。

 というかその話振りだと三つも取得してるのか?

 

 もしかして一つだけって俺だけか?

 納得いかないが、続きを促す。

 

 田中は指を折りながら他の5人の異世界に来てからの経歴や能力を話し出す。

 

「ポルトガに居るのは海賊と海の魔物を相手取るやっちゃな。

 新型の銃、大砲、高速船、羅針盤を開発し海戦では無敵を誇る艦隊 

 海の義賊ハイブリッジ海賊団船長 高橋・ワタル。」

 

「ブリタニアに彗星の如く現われた悪魔の大軍を指揮する“悪魔使い”

 普段は黒いローブに白い仮面を付けてるので、顔、性別、名前はハッキリしとらん。

 せやけど俺等と同郷と見てええ。

 ゲームやアニメで見たようなこの世界には存在せぇへん幻獣を召喚しとった。

 戦闘力も半端やあらへん。

 ハイブリッジ海賊団を唯一退けた英雄やクラーケンを召喚して撤退させたらしいから召喚士タイプやな。」

 

「じゃあ無敵じゃねーじゃん。」

「ああ公式には突然の津波による災害や言われとる。」

 

 ああそれなら誤魔化しも効くかな?

 災害級の召喚獣を使えると公表しないとならないからか。

 

 双方にとって公にするのはマイナスになるわけだ。

 

「続けるで?ルーシは大男やな。

 鎧の様な筋肉だけども厄介やねんけど、駆動鎧(パワードスーツ)を纏って戦うことから、鉄人呼ばれとる。

 純粋な身体能力なら俺らの中でもトップと違うかな? 

 因みにこいつも悪魔使いに砂を付けられとる。」

 

 強いのなブリタニアの召喚士。

 確かにアイアンマンではゴジラは倒せないだろうしな。

 

「ロマリアには勇者とか言われる聖人が現れたらしい。

 なんか4ヶ月前に聖剣の封印が急に解けたとかで、騒いどる。

 光の大精霊の加護を受けて、魔物退治、悪人退治と戦闘能力とカリスマで急遽力をつけて来た高校生の男やな。」

 

 ―こいつはガチの宗教国家におるから関わりた無い。

 そう田中は呟く。

 

 確かに手が出しづらい。

 既に英雄として地位を確立しているし国は勇者を手放さないだろう。

 帰郷を望むなら助けてやりたい。

 

「そしてシンに戦女神と呼ばれる最強のお嬢ちゃんやな。神業めいた武術に絶世の美女。

 すべてを破壊し尽くす青い炎を放つことから、蒼炎の戦女神って呼ばれとる。

 多分この子は火の大精霊と契約しとるんちゃうかな。この娘は逆に国を則って皇帝になってるわ。

 それに自分の配下も一騎当千級の猛者がそろとっるわ。」

 

 すげぇ 勇者とは逆に国すら支配下に置いたのか。

 しかも俺と同じく大精霊の契約者。

 それ程のポテンシャルをナミも備えているのか?

 

「その情報網には脱帽するな。

 俺は国内の遺跡探索だけに目を向けてた自分が恥ずかしいよ。」

 

 うん、同じ立場にいながらやってる事がせせこましく感じる。

 バイトしていた自分が恥ずかしい。

 

 田中にしたってここまで他国の事を入念に調べているのだ。

 俺、何してんだろ。

 ゾンビ相手にヒャッハーしてました。

 

 

「そら自分の端末使うてんねんから当然やろ

 ……まぁ連中の意図は分からんけど、それぞれの国で上手いことやってたけど最近きな臭くなってきてるで?

 シンの女帝になった子がゲルマニアとルーシに攻め込む準備しとるんやからな。」

 

「おいおい穏やかじゃないな、正当防衛どこいった?」

 

 完全に侵略国家と化してる。それとも先制的自衛権か?

 どちらにせよ、絶対、関わらないようにしよう。

 フラグも建てない。

 絶対にだ。

 

「いや正当防衛らしいで? 

 シンの彼女は絶世の美女でな?

 なんとか手に入れようとしてきた権力者を返り討ちにしていく過程で、女帝にまで上り詰めたんや。

 ゲルマニアの皇帝やルーシの宰相が彼女の美しさを耳にして、ちょっかいかけて来たんやから自業自得なとこあるし。」

 

 正当防衛や緊急避難という大義名分をその少女に与えてはいけない。

 俺の第六感がそう叫んだ。

 

 正当防衛で国を則るなよ。

 九尾の狐もびっくりだよ。

 

 どちらにせよこのままではシンがアジア一帯だけでなくこの大陸全土を支配するのも時間の問題だな。

 その前に世界規模の大戦が起きるだろうが。

 

「まぁ心配せんでもあの娘はそんな悪い子ちゃうからこっちから手出しせんかったら攻めてきたりはせんと思うわ。」

「彼女に会ったことが?」

 

「フ……人形のモデルにさせて~って近寄ったら端末が溶かされたわ……」

「……」

 

 その光景が目に浮かぶな。

 

「情報はありがたい。世界情勢も聞けたし有益な情報に感謝する。それで君はこの世界に関わっていくのか?」

「いやワイは大陸の覇権争いに興味無いしな自分もそうちゃうん?」

「まぁ帰還方法を探すのに殺し合いは……な?」

 

 どいつもこいつも戦争を始めるとか危険すぎる。

 

「せやろ? 全く力をつけたバカは国に踊らされ易いからな~

 力の責任?みたいなことや守るために戦うって奴?

 結果的に敗者を虐げることになるのに気づかへんもんな~。」

 

 それには同意見だ。

 俺が避けようとした事態だしな。

 

 俺はまだ、ギリギリ国からは距離を取れてる。

 戦争を起こす気も無い。

 

「敵を見つけたり作ったりして常に新しい敵を探そうとする傾向があったりな。」

「あ やっぱそう思う? 君とは話が合いそうやな~」

 

 話の長い同郷の男と話しながら思う、各国が異世界人の取り込みに動いている。

 この前もガリア国王からの取り込みの件もある。

 各国のトップが俺たちを召喚したのではないか?

 

 そんな疑念が俺の中に渦巻いていった。

 


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