異世界攻略のススメ   作:渡久地 耕助

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内戦の結末

 

 巨像が消え去る。

 本来、役目を終えた王族の眠りと宝剣を守護する為に生み出された像が魔力の塵、ソイルとなって世界に還える。

 操られた巨像の最後に英雄はそっと涙を流した。

 だが、英雄には感傷に浸る暇は無い。

 

 彼には未だ、果たすべき使命が残されていたのだ。

 

 ――『黒の勇者の復活』より抜粋。 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 なんか、巨像を倒すゲームのキャッチコピーを思い出すな。

 最後の一撃は切ない……だったか?

 

 だけど今は感傷に浸る暇も、経験値を取り損ねた事を嘆く暇もない。

 王宮の方へ、視線を向ける。

 

「主様……王宮の方に援護は?」

「ぐす……必要ない……王墓の秘宝は偽物だし、巨像をおびき出す餌以外に役立たないし俺が鍛えた弟子もいる。

 勝負はもう着いているだろう。ああ勿体ね~ストックしようと思ったのに~。」

 

 うん、ごめん。

 思ったよりダメージは大きかったようだ。

 冒険の書が全部消えた時のやるせなさを思い出した。

 

 早く、切り替えよ。

 

 王墓にあった古代から伝わるクルトの剣、精霊、魔力を斬る事が出来る霊剣が安置されていたのだが、

 潜伏中に王墓に潜入。

 何故かダンジョンの罠も魔物も無く最深部まであっさり通れた拍子抜けだったのは記憶に新しい。

 

 考えてみれば、王族の遺体を安置する場所なのだから墓参りや納骨?する際には毎度、罠や魔物が襲ってきたらダメだろう。

 となると秘宝を盗んだら動き出すタイプのダンジョンだろうと当たりを付け、宝剣を裏技で複製したものにすり替えた。

 

 推測は的中。

 巨像は動き出さず、まんまと宝剣を手に入れたのだ。

 

「偽物とは知らないとは言え首謀者も報われませんね。」

 

 ナミが王宮にいるであろう首謀者に同情の念を送る。

 

「それより、アレを倒す役割は誰だったと思う? 

 西の三人 いや四人の誰かだろうが悪魔使いはちょっと厳しいから神剣の勇者か?」

 

「あの忌々しい天使の末裔の手先ですか……この場に居れば奈落の底に沈めてやります。」

 

 千年前の勇者と顔見知りだそうだが、今代の勇者とロマリアに厳しいのな。

 

「……まぁ索敵で確認したとこ、悪魔使いらしいのは確認したな。逃げたけど。」

「追わないのですか?」

「召喚者のシナリオに乗る気は無い。

 ここは見逃した方が後々有利になだろ、さて最後の結末だけでも見ていこうか。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ---アリシア視点---

 

「……この程度ですか。もう少し手ごたえがあると思ったんですが。」

「うぅ……」

「つ 強い。」

 

 宰相の連れてきた子飼いの護衛は殆ど私の剣の前に斬り伏せられ、地に伏した。

 殺す気で掛かってきた相手を殺さずに制圧できる程に実力に差があったのだ。

 近衛の末席だが、アキラ殿の薫陶を受けた以上、この程度は造作もない。

 

「ルイ、武器を捨て、巨像を止めて降伏しろ。お前に勝機は無い。」

 

 陛下が降伏勧告するが、命さえあれば即座に反逆者の首を落とす。

 いや、彼の政治的手腕は惜しいが、今回の騒ぎを起こした以上、只では済まさん。 

 

「まだ終わらん!私はココまでやったのだ今更後に引けるか!

 兄上か私かどちらかが死ぬまで終わらん!! 

 クルトの宝剣の切れ味を解くと思い知るがいい!」

 

 クルトの宝剣と聞き、周囲に緊張が走る。

 

 王墓の巨像が守っていた秘宝、これが宰相の切り札か。

 如何なる魔法障壁、精霊の加護に守られた王家の罪人を処刑する為に作られた王族を裁く宝剣。

 精霊魔法を封じ今まで斬ってきた罪人上げの血と魔力を吸い上げ、

 切れ味と魔力を増してきた宝剣は既に魔剣の域にまで達し持ち主の力を倍増させる力も持つ。

 

 精霊魔法を扱うクルトの民である我等にとって確かに天敵になりうる武器だ。

 宰相はあの武芸に秀でた現・国王の王弟。

 

 油断は出来ない。

 一瞬の隙を見て、飛び込み、一撃で斬り捨てる。

 

 そう、覚悟を決めた時、悪戯好きな妖精の様で、

 どこか憎めない懐かしい笑い声が聞こえた。

 

「(くすくす)そんな鈍で果たして斬れるかな~。」

 

 どこからともなく聞き覚えのある声が広間に響いた。

 

「ア、アキレウス!?」

 

 その声を聞き、宰相の顔が青ざめる。

 

 アキラさん!

 やはり、来た。 ガリアの窮地に我が師匠が帰ってきた。

 

 い、一体何処から、来るのだろう。

 やはり、扉から堂々と来るのだろうか?

 いや、窓や天井から来るのもありえる。

 

 にゅるん

 

「ただいま~」

 

 ……大臣の影から出てきた。

 感動の再会とか色々台無しだった。

 

 後の歴史書には残せないな。

 ここは脚色するよう、歴史家か吟遊詩人に伝えよう。

 

 ---アリシア視点 了---

 

 ◆◆◆◆◆

 

 大臣の背後に映る影を利用して転移魔法で現れる。

 

 何時も自宅と黄泉の神殿の移動の際使っていたが、衆目の前で使うのはこれが初めてだ。

 

「おっす。ルイ宰相。巨像と悪魔、邪精霊は全滅したぞ? 如何する? 

 降参?それとも足掻くか?」

 

 だらだら能書きを垂れず、さっさと降伏を勧告する。

 一撃で首を飛ばす事も可能だけど、情報は出来るだけゲロしてもらう。

 

 こういう展開だと黒幕はベラベラ自供してくれるんだけど。

 あれか? 崖まで追い詰める必要があるのだろうか?

 

「う 嘘を申すな!!巨像倒れ、悪魔共が消滅しただと!?まだ合図はしておらんぞ!

 それにこんな短時間で巨像を倒すなど、伝説の勇者か闇の御子でも無い限り不可能だ!」

 

 ああ、倒す当てがあったのね?

 後、自作自演(マッチポンプ)する気だったっと。

 

 クルトの宝剣も持ってるし、王家の証である武器を使って自分で倒す気だったのだろうか?

 

「ふん あんな木偶人形、金貨一枚で作った武器が有れば子供でも倒せるわ。

 それに聞こえない?周りの歓声の声が。俺にはとても悲鳴には聞こえないけどな?」

 

 先ほどまでの巨像の足音による地響き、大砲の轟音、兵士の怒号、魔物の叫びも市民の悲鳴が聞こえない筈だ。

 

 歓喜の声だけが微かに謁見の間に届く。

 

「く、貴様は一体、何者だ!!」

 

 宰相の顔が恐怖に染まり問いかけて来る。

 うん、これはアレを披露するチャンスだな。

 

「ふっふっふある時は異国の物語と歌と曲を奏でる吟遊詩人。

 あるときは冒険者ギルド御用達ポーション、携帯食料を作る謎の錬金術師!!

 またある時は、子供たちに玩具を与え、文字や算術を教える教会の教師!!

 時には、王家御用達の傭兵兼探偵事務所 自由の槍のマスター アキレウス・ブラック。しかしその実体は!?」

 

 次々に衣装を替えながら名乗りを上げて行く。

 このセリフを言う為に、ナミから白い目で見られながらも練習してきたのだ!

 ノリノリである。

 

「七人目の異世界人にして闇の大精霊の契約者! 渡辺アキラだ!!」

「そして、その契約大精霊にして始祖(テティス)の娘、ナミ!!」

 

 どぉぉん!!

 

 異世界に来たときから大事にして来たスーツと黒コートをはためかせ、決め顔で宣言する。

 ナミもガリア王家の祖である母、テティスの名前を出し、アキラの影から現れる。

 

 うん、この女神ノリノリである。

 

「お、おのれ!女神様の名を名乗る不届き者めが!魔剣の錆にしてくれる!!」

 

 はい、明確な死亡フラグ頂きました。

 

 そうして、本物のクルトの宝剣を取りだす。

 

「【霊斬剣】!!」

「なぁ!?」

 

 宝剣に記憶されたスキル名を叫び、宰相の贋作を切り裂く。

 元々、【裏技】で複製した贋作だ。

 抗生物質は同じだが、内包する神秘、魔力はオリジナルに及ばない。

 

 いとも容易く贋作の物質結合、魔力結合を切り裂くことが出来た。

 当然、宰相を含め、場にいる人間が国宝である剣が簡単に斬られ、柄だけ残った残骸を見て唖然としている。

 

 あ、やべ。 

 フォロー入れないと不味い。

 

「い、言ったろ? 鈍だって。この剣こそが王の証だ。

 贋作と本物の区別が付かん貴様は王にもなれんし、何者にも勝てん。」

 

 うん、そういう事にしておこう。

 

 ぶっちゃけ倉庫には本物以上に強化した贋作(魔改造済み)がある。

 今後はそれを使うとしよう。

 

 【闇撫】を影から召喚し黒い腕が放心する宰相を拘束する。

 

「あんたの首を撥ねるのは容易いが、あんたには色々尋問することがあるからな……」

 

 そして俺は国王とクラリス達に顔を向ける。

 

「反逆者ルイを捕縛しました。 彼の処遇、国王にお任せします。」

 

 剣も返すから不問にしてね?

 

「うむ 大義であった。王族とはいえ反逆者。

 その罪は死によって償われるが、そなたの言うように背後にいるものを後ほど調べさせる。

 近衛騎士よ、この反逆者たちを捕縛し地下牢に連行せよ!」

 

 横に控える近衛騎士が素早く彼らを捕え、連行していき謁見の間をさった。

 ふぅ、盗掘に関しては不問だそうだ。

 

 

「さて!積もる話もあるだろうが、未だ終わってはいない。

 余は警戒を解除し、怪我人の治療とこの襲撃が終わったことを国民に伝えに行かねばな。」

 

 と国王が謁見の間を出て行く。

 

「お供します陛下」

 

 マイヤール公爵も続いた。

 謁見の間を出る際、ウインクしてきたが、オッサンのウインクを見ても吐き気がするだけだ。

 いや、意図は理解しているし男気も分かるから吐かないけど。

 

「「「「………」」」」

 

 残された俺、ナミ、姫ちゃん、シア

 

「ただいま」

 

 照れたようにそう呟くとクラリスは感極まって俺の胸に飛び込んだ。

 うん、大きく……いや綺麗になったな。

 

「お帰りなさい。アキラさん。」

 


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