【凍結】麻賀禮(まがれ) 作:あらやだ
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「───なるほどな。
『そういうことだ。私は魔術師と契約できたから事なきを得たがはぐれサーヴァントのお前たちは魔力供給がないため現界していられるのも時間の問題だろう。こちらに来れば霊脈とのパスを繋げ依り代とさせることができる』
「おお、流石はキャスターのサーヴァント。そのようなことまでできるのか。
『? ……ああ、半永久的に食料が涌き出るという対宴宝具か。私たちは兎も角マスターたちの飢えを満たすことができるのは有難い。いち早くライダーと合流して帰還してくれ』
「おう、美味い飯を
『ふっ。了解した。楽しみにしている』
メーガナーダからの念話が切れる。美沙夜たちは藤太に案内され聖女が待っているという塩湖を目指していた。砂嵐は鳴りを潜めていて比較的歩きやすい天候だったがそれでも砂に足を取られなかなかどうして疲れてくる。
砂漠の切れ目は視界で確認できるのだがそれでも十キロメートルは離れている。普通の人間である美沙夜は重華に背負われながらだがそれでも積もりに積もった疲労により顔色はよくない。それもそうだろう。生活習慣ががらりと変わってしまったのだから。
藤太の所有する対宴宝具───その名も
「ところで藤原様」
「はっはっは。様付けは止してくれ。少しばかりむず痒い。藤太でいい」
「……では、藤太様」
「ちと固いがまあいいか。なんだ?」
「聖女様というのはベタニアのマルタ様でいらっしゃるのでしょうか?」
「おう! なんだあいつはそんなに高名だったか」
───マルタ。リヴァイアサンとオナクスの子供である悪竜タラスクを鎮めた一世紀の聖女。元々はベタニアという町で生まれ育ったどこにでもいる町娘だったが、娘妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ信仰の人となったとされる。
───救世主が処刑された後も信仰を捨てることなく、時のローマ総督によって追放されるも死せず、神の恩寵を受けて南フランス・プロヴァンス地方へと漂着。タラスコンという町では今も、聖女マルタの祝日である7月29日に龍の張り子を手にねり歩く行事が盛大に行われてるという。
礼園女学院では馴染み深い基督教の登場人物。それも救世主と密接に関わりのあった存在とあればいくら魔術に疎い美沙夜であっても胸が高鳴った。それは著名人に対するファン心理に近い。
「祈りの力を以て悪竜を鎮めたマルタ様もいるなら百人力ですわ。……ああ、どうしましょう。この格好は失礼じゃないかしら」
薄汚れてしまった制服を少しでも清潔にみせようと埃を払う美沙夜。その様子を見て藤太は記憶に新しいマルタの
「……言わぬが花、知らぬが仏か」
「? 何か仰いましたか?」
「いいや。それよりもそろそろ───」
轟。
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前方からの轟音。これは大蛇が地面を突き破って現れる時の音だ。それもひとつではなく複数。サーヴァント複数相手では分が悪いと各個撃破に切り替えたようだ。魔力の供給源がないマルタが危ない。
三人は顔を見合わせ頷くと藤太は駆け出し重華は美沙夜を抱えて走った。どうか間に合って、と美沙夜は祈るがそれは杞憂に終わる。なぜならマルタは
「───なるほど。邪王と呼ばれる存在がそのような非道を行っているのですね。ああ、嘆かわしい。
「え、ええ……。こちらこそ、よろしくお願いします……」
「そんなに
「は、、はい、」
「───そうは言うがマルタよ。この現状を見てしまえば畏まるどころか怖がっても仕方あるまい。なんせ
三人が到着した頃には戦いは決していた。立っていたのは拳を構えた完全なステゴロスタイルの聖女様と顔面を変形させて痙攣して大地に横たわっている大蛇。聖女様の眼光は言い訳ができないほどヤンキーはたまたレディースであり、美沙夜はその光景に絶句していたのである。
美沙夜のことを敬虔な信徒であると見抜いたマルタは取り繕うように───という先のことをあたかも無かったかのように聖者として振る舞うが無理があった。美沙夜の幻想は砕け散ったのである。
「マ、マスター。大丈夫ですか?」
「だ大丈夫ですわ。もも問題ありません」
「大丈夫そうには見えませんし問題大有りですね」
目が虚ろでお空きれいとのたまう美沙夜を見据え嘆息する重華。美沙夜のイメージする聖女マルタ像はどのようなものだったのだろう。悲しいかな。現実は非情である。
「こ、これは……仕方がなかったのです。杖を具現化させるだけで魔力を消耗してしまうので拳を使わざるを得なかったのです。……私だって、できればこれは使いたくありませんでしたが向こうはこちらの気も知らないで多勢に無勢で襲ってくるし。……まあ、有象無象って感じだったから事なきを得たのだけど。ワイバーンにも劣るミミズどもが、一昨日来やがれってのよ!」
「猫が剥がれているぞ」
はっと我に返り咳払いをひとつ。幸いなことに美沙夜はまだ現実逃避中なのでマルタの醜態を見ずに済んだ。藤太は予め言っておけばよかったと悔やんだ。美沙夜は想像以上に重症だ。願わくば敵サーヴァントと遭遇しないことを。
兎も角。合流できたのでここに留まる必要はない。追っ手を差し向けられる前に離脱するのが吉だ。邪王は大蛇が倒されたことは既知のはず。長居は悪手になる。
「よし! そろそろ
『そればかりはどうしようもない。この低質な霊脈では現界の維持が関の山だ。邪王のように霊山に陣取っていれば話は別だがな』
メーガナーダからの念話が入る。流石のキャスターのクラスとはいえ即席の工房ではスキルを有効活用できないようだ。ダマーヴァンド山という極上の霊脈にいる邪王とでは雲泥の差。他の霊脈を探し当てなければいずれは枯渇してしまう。
『───まあ、奥の手はある』
「なんと。それは心強いな。して如何様な手だ?」
『待て。いま話すことではなかった。帰還したら話してやる』
「そいつは
藤太は愉快そうに笑うとぱんと手を打った。その音により漸く美沙夜は現実に引き戻され重華はやれやれと横抱きにする。マルタは自分の足で行くと言って聞かなかったのだが藤太に見栄を張らせてくれないかと言われ渋々といった様子で負ぶさった。
サーヴァントのスペックであれば工房に戻るのにそう時間はかからない。砂漠という足場の悪い道でさえも人知を超えた速度で突破できる。美沙夜のことを度外視すれば山越えだってできるのだから英霊という存在は凄まじい。
そうこうしている内に再び頂上にたどり着いた四人。あとは下山して森の中に隠されている工房へ帰るだけなのだが───それに逸早く気づいたのは藤太だった。
「跳べっ!」
何を。と問う美沙夜だったが目映い閃光とけたたましい爆音により悲鳴は悲鳴にならず、激しい衝撃により重華から投げ出されないように必死にしがみ付くので精一杯だった。
重華と藤太は間一髪といったところで飛び降りたため美沙夜とマルタも外傷はなかった。しかし先ほどまで自分達がいた山の頂上は抉り取られたように消滅していた。まるで
こんな芸当は人間には到底不可能。間違いなくサーヴァントの仕業だ。
……ダマーヴァンド山からの超長距離攻撃。アーチャーのクラスは藤太がいるため当てはまらないが、百キロは離れているこの山まで届く攻撃をするとは、クラスは一体何なのだろう?
『───い、───お─────ぉぃ─────おい! 何があった!? 状況を説明しろ!』
「おう。キャスターか! 敵サーヴァントからの攻撃を受けた。狙いも何もない面での攻撃だから避けられたものの狙いを定められていたら一網打尽だったろう」
『根城から直接宝具を放たれたか……。端から殺すつもりはなく仕留められたら御の字といった手合か。潤沢な魔力があることをひけらかすとは腹立たしいな』
「どうする? このまま工房へ向かってもいいのか?」
『───いや。我々を炙り出すための罠かもしれない。一先ずナーガの指し示す方へ進んでくれ。私も探知をしてみる』
「相分かった。お主も用心してくれ。森をまとめて焼き払われてしまえば一溜まりもない」
『承知した。ではな』
メーガナーダとの念話が途切れると使い魔のナーガが現れて付いてこいと言わんばかりに体をくねらせた。工房まであと僅かだというのに思わぬ事態だ。重華は記憶を失っていて藤太とマルタは万全の状態ではない。敵サーヴァントとの戦闘になれば劣勢を強いられるだろう。
美沙夜とマルタは二人から降りて自らの足で行くことにした。いつ敵が現れるか判らない現状で動きを制限してしまうのはかなりの悪手だと理解しているからだ。
麓にいるためダマーヴァンド山の様子は確認できないが追撃をしてこないのはかなり怪しい。何やら不吉な予感がするがここで足踏みをしていても始まらない。四人はナーガの案内通りに歩を進めた。
☆
「……む───外したか」
「そりゃあな。あんなに殺気を込めたんだ。あれを食らう阿呆なんざいねえよ」
「バーサーカー……」
「いくら魔力が有り余るからといって無駄遣いはしなさんな。奴さんと戦う機会なんていくらでもあるんだ。な?」
「……諒解」
「それにしても
「
「あん? 戦いに使わねえってんならそいつは何に使ってたんだ?」
「…………………………生け贄を、捧げるためだ」
☆
美沙夜たちは未だに森の中にいた。進めば進むほど木の本数は減っていきだんだんと寂しくなっていく。メーガナーダの工房からもだいぶ離れているだろう。しかし案内役のナーガは止まる気配を見せなかった。
道なき道を進んでしばらく。ナーガはぴたりと止まった。
そこは
美沙夜は人間のため食事を取らなければ死んでしまうし、サーヴァントも微弱ではあるが食事から魔力を取り入れることができるので食料の目処が付いたのは有難い。
『私はこれから工房を破棄して別の場所に移す。準備ができるまではそこに滞在していろ。魔力の消費を抑えるためアーチャーとライダーにはしばらく霊体化してもらうが、構わないな?』
「無論だ。戦闘時以外はその方がいいだろう」
「私も構いません。有事のために備えておきます」
二人はそう言うと瞬く間に消えてしまった。いや不可視化されただけだろう。これが物理的干渉を受けない霊体化というものか。
『よし。美沙夜と重華は現地民を発見したならば食料を分けてもらえるよう交渉をしてくれ。疎通の魔術をかけておく』
「分かりました。……ところで浅神さんの様子は?」
『まだ起きる気配はないな。とはいえ心拍数も脈拍も規定値だから安心しろ。必ず目を覚ますだろう』
「はい……」
美沙夜は重華から赤色の手拭いを受けとると髪を纏めて頭巾のように被った。回教では女性が頭部を晒すのは禁じられているのでいざこざを避けるためだ。ヘッドスカーフのような形になってしまったが贅沢は言えない。
浅神さん、と言葉を漏らす。彼女がいたらどんなことが起きても何とかしてくれそうだ。自分なんかよりもずっと上手く立ち回っていただろう。美沙夜の顔に翳りがみえた。それを見逃すほど重華は鈍感ではない。すぐに意識を切り替えた。
「食料の調達ですか。マスターは苦手な食べ物はあるのですか?」
「えっ。そ、そうね───セロリかしら」
「それはそれはマイナーな野菜を」
「……私これといった好き嫌いはなくてよ? 出されたものは残さずいただきます。それが食材になったすべての命への感謝になるのだから」
「なんと素敵な! 優しい考えですね」
などと会話をしている内に美沙夜の表情から曇りは晴れた。水田の周辺を歩いていると木の棒を持った男の子を発見した。水田に棒を突っ込んで遊んでいるようだ。美沙夜は男の子を驚かせないように優しく声をかけた。
「こんにちは」
「? こんにちはー」
……きちんと意思疎通が取れている。メーガナーダの魔術のおかげだ。美沙夜は心の中で拳を突き上げて喜んだ。男の子は齢五歳くらいで外国人である美沙夜たちに興味津々といった様子。
「君のお名前は?」
「ぼくはファズルだよー」
「ファズルくんか。私は美沙夜。そしてこちらが重華。旅をしていて迷子になってしまったのだけれど、大人の人はどこにいるのかな?」
「そうなんだー。あっちにみんないるよー」
「案内してもらえる?」
「うん」
ファズルの後ろを付いていく美沙夜。この様子だとここは大蛇に襲われていないようだ。到着した場所には暴れたような形跡もない、のどかな雰囲気が漂っている。山岳に石や泥とで壁を作って家屋を構成していて屋根も木材などの単純な資材のため質素だ。
日本では見られないその美しい独自の町並みは感動さえおぼえる。聖杯戦争に巻き込まれてさえいなければ観光をして回りたいとさえも思っている。
町の人々は見慣れない風貌の美沙夜と重華のことが気になるのか遠巻きにして見物していた。東洋人が珍しいのだろう。頭巾を被っていない女性はイスラム圏ではいないのだから。
「ファズル! また遠くまで遊びに行ってたでしょ!」
「あ。ナザニン」
目の前を立ち塞がったのはファズルよりも二、三ほど歳上の女の子だ。煤竹色の布で頭部を覆っている活発そうな少女。すぐに美沙夜と重華に気づいて不安がる。
「あの、あなた方は……?」
「私は美沙夜。彼は重華。実は旅の途中で迷子になってしまってファズルくんにここまで案内してもらっていたんです」
「そうだったんですか。私はナザニン。ファズルの姉です」
「まあ姉弟だったの。二人ともしっかりしてるわね」
「そうでもありません。ファズルは目を離すとすぐにどこかに行ってしまうので探すのがたいへんなんです」
「ぼくちゃんとあそびに行ってくるって言ったよー」
「お父さんの仕事場まで行くなんて思わないわよ!」
世話の焼ける弟としっかりものの姉。それが二人に対する美沙夜の印象だった。兄弟姉妹のいない美沙夜が少しだけ憧れるもの。義理の妹のような存在はいるがどうしても距離感がある。
……橘佳織。彼女はどうしているだろう。自分がここに飛ばされてからかなりの時間が経っていると思うが心配しているのだろうか。
「マスター、用件を」
重華からの耳打ちで我に返りナザニンへ訊ねる。当初の目的は食料を分けてもらうことだ。見も知らぬ異邦人に施しをくれるほど蓄えがあるかは分からないが。
その旨を伝えるとナザニンは両親に確認してくると行って家へ帰ってしまった。ファズルは関係なしに地面に絵を描いて遊んでいる。自由気儘で子どもらしい。
あまり時間も掛からずナザニンが女性と共に戻ってきた。柿渋色の布で顔以外を包んでいる朗らかで見るからに人が良さそうな人だ。顔立ちからナザニンとファズルの母親だろう。
「遠路遥々よくいらっしゃいました。道に迷われてたいへんだったでしょう。どうぞわが家で休んでいってください」
「えっ。いえ、私たちは───」
「遠慮なさらないでください。困っている人に手を差し伸べないなんて神様に怒られてしまいます。さあ、こちらです」
「ちょ、」
お家へ先導されている。ぽわぽわとして雰囲気の方で遠慮することもできずに一宿一飯が決定してしまった。困惑しているとナザニンが申し訳なさそうに話しかける。
「すいません。お母さんはお節介焼きなところがあって誰に対してもああいう感じなんです」
「そ、そうなの……?」
トントン拍子で話が進んでしまったが問題はないのだろうか。心配になりメーガナーダに念話で確認を取る。問題はない。お言葉に甘えさせてもらうといい、と返答。お邪魔させてもらうこととなった。
「そういえば名前を言いそびれていましたね。わたしはレイハネ。どうぞゆっくりしていってください」
「お世話になります。私は美沙夜。こちらは重華。ごはんだけでなくお風呂まで用意していただいて本当にありがとうございます」
「いえいえ、困ったときはお互い様です。それにしてもペルシア語がお上手ですね。お勉強なさったんですか?」
「そ───れは、この国へ来ると決まったときに習いまして。通訳なしで皆さんとお話がしてみたかったので」
「まあ! うれしいわ。では何を話しましょうか?」
ナザニンとファズルの母親、レイハネに招かれシャワーと夕食をいただいた二人。レイハネは甲斐甲斐しく世話を焼き至れり尽くせりの気分を味わうことになった。ナザニンは恥ずかしそうにしていたがファズルは気にした様子もなかった。
疎通の魔術について聞かれてどきりとしてしまったが、それとない理由をでっち上げて事なきを得て安心した美沙夜。しかし、レイハネは一生懸命町のことや国のことなどを話してくれて嘘を吐いてしまったことへの罪悪感が辛かったが───
気になる話が聞けた。
「隣町との連絡が、途絶えた?」
「ええ。隣町とは定期的に交易を行っているのですがここしばらく交易の車が来ていないのです。不審に思った農家の方が様子を見に行ったのですが帰ってきませんでした……」
「隣町へは近いのですか?」
「ええっと───車で一時間はかかります。まあ! 歩いて行くのだけはやめてくださいねっ。なだらかな道ですがあの辺りはヒョウがいるので危険ですっ」
「……………………………………………………」
連絡が途絶えた町。大蛇たちに蹂躙されてしまったのだろう。おそらく農家の方も生きてはいない。まだこの町には現れてはいないようだがいつ大蛇の襲撃に遭うかも分からない。いつメーガナーダからの呼び出しがあるかもわからない状況。恩義もあるため見殺しにはできないししたくない。
戦力は重華、藤太、マルタといるが満足に戦えるサーヴァントは誰一人としていない。敵サーヴァントとの戦いになれば苦戦もしくは敗退する。霊脈さえ見つかれば魔力不足を解消して二人を万全の状態にできるのだが……。
思案しているとメーガナーダからの念話が入った。
『こちらメーガナーダ。ミサヤ、聞こえるか?』
(こ、こちら美沙夜。なんでしょうか?)
『察していると思うが隣町は壊滅している。使い魔からの視覚共有で確認した。この町に現れるのも時間の問題だ』
(……そう、ですか)
『ああ。幸いなことに敵サーヴァントの動きはないようだが今のうちに霊脈を見つけておきたい。聞いてみてくれ』
(聞いてみてと言われましても、何とお聞きすれば……)
『そうだな……観光名所に聖地があるかどうか、で頼む』
(分かりました───)
聖地。観光名所であれば立ち入れる。神話や伝説があるような曰く付きのものであれば高確率で霊脈があるはずだ。
期待半分だったのだが。
「観光名所ですか。それならフィン庭園はどうでしょう?」
「フィン庭園?」
「シアルクの丘の近くにある有名な庭園です。シアルクの丘というのは大昔の遺跡で儀礼用の祭壇があった場所です」
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……ありましたわ。探すのにもっと時間がかかると思っていましたのに、なんだか肩透かしを食らった気分。念話で聞いていたであろうメーガナーダはでかした、と発言してから一切の念話がないのできっと遺跡に向かったのだろう。
ふらっ。頭が揺れて意識が落ちかけた。蓄積されていた疲労がここに来て限界を迎えたらしい。温かい食事を摂れたことで緊張の糸が緩んでしまった。それを見たレイハネはふふ、と笑った。
「長旅で疲れたでしょう。そろそろ就寝の準備をしましょうか。ナザニン、ファズル手伝ってちょうだい」
はーい、とふたつの元気な声。かあっと赤面する美沙夜だったが睡魔の方が勝っていたため羞恥心を圧し殺した。
流れるまま床に着き今日一日のことを振り返る。新たな仲間との出会い。敵サーヴァントの攻撃。霊脈の発見。色々なことが起きすぎて頭が痛くなりそうだ。まったく気配を感じないが藤太とマルタは霊体化して見守ってくれているのだろう。
ふと重華から声をかけられる。
「……良い方々ですね。マスター」
「……そうね。とても良い人です」
「……守らなくてはなりませんね」
「……ええ、必ず守り抜かなくては」
あの笑顔を曇らせることはしたくない。
かなしいかな。決意を新たにした美沙夜だったが微睡みに落ちて泥のように眠ってしまった。
お読み頂き有難うございます。