ちょっとキャラぶれがあるかもしれませんがご了承ください。
――【それ】は、『世界の果て』から現れた。
足元で蠢く、光り輝く【獣】の群れを従えて。それはゆっくりと、ある地点を目指して歩いていた。
向かう先は、
その光り輝く巨体は、さながら『龍』のようでもあった。
雄々しき四肢に、かつて存在したと言われる大樹よりも太い尾。
時折点滅を繰り返す背から尾にまたがる鰭は雷光を呼び。
その瞳には憤怒の色が浮かぶ。
後の時代、わずかに生き残った人々が記した歴史書には、【それ】の名は畏怖と敬意を持って、こう刻まれていた。
終焉の壱、邪龍を食らう【星の獣】を無限に生み出す【星獣王】――【ドラグナール】と。
母なる大地の名を刻まれた【それ】は、ただただ進軍を続け――ていた訳ではなかった。
鰭の雷光がより激しさを増し。
口腔に眩い光が迸る。
次の瞬間、
放たれた先に居たのは、大魔王が出現して以来から確認された中でも最大級の、邪龍の軍勢。
名だたる英雄達が集結してようやく勝負になるかと推測されるその軍勢を、【星獣王】はたった一撃で文字通り消し飛ばした。
「――ちっ、何よあれ!?私達が言えたことじゃないけど、存在ごと消滅させる閃光だなんて反則もいいとこよね!?」
「おいおい、面白すぎておれは滾ってきたぞ?」
かろうじて、その攻撃を避けることに成功した三大魔王の一人、ジャンヌ・オルタはその威力に冷や汗をかき、湊斗光は心を躍らせる。
邪龍が『食われる』という想定外の事態に驚き、その元凶たる存在を抹殺する為に邪龍を総動員したのだが、結果は半壊した邪龍の軍勢。更にはそれに群がる【獣】達との戦闘が始まり、状況は混迷を極めた。
「ようはあのデカブツを倒せばいいんだろ!?おれに任せろ!あんな獲物……逃してたまるか!」
「あっ、ちょっと待ちなさい!?」
ジャンヌ・オルタの制止も聞かず、光はその身を【銀星号】へと変化させ、【星獣王】に向かって飛翔する。
体当たりによる衝撃と不可視の斬撃で【獣】達を蹴散らし、縦横無尽に駆け巡ることで【星獣王】の巨体から必然的に発生する死角へと潜り込む。
「とったぞ、デカブツ!」
そして、必殺の一撃となりうる重砲撃を【星獣王】へと放とうとした――その時だった。
《――その程度か、大魔王の一角よ?ならば、原初へと還るがよい。》
「なっ!?」
突如として眼前に現れた、
「くっ、何が――!?」
《――
考えている暇は、【銀星号】には存在しなかった。体勢を立て直して直感に従いその場を離れると、巨神の瞳から――1つ1つが
「あははははははははははは!なんだお前、なんだお前っ!?おれが苦戦するだなんて、最高に面白いじゃないか!」
《生憎だが、こちらはまったく面白くはない。故に滅びよ、【魔剣】により生まれしモノよ。》
「そうつれないこと……いうなよぉっ!!!」
両腕からブレードを展開した【銀星号】と同じように、両腕から刃を展開した巨神はぶつかり合う。その刃がぶつかりあうたびに大地が抉れ、衝撃波が吹き荒れる。
その様子を間近で観察していたジャンヌ・オルタは、冷や汗を流しながら吹き飛んでくる瓦礫を破壊し、身の安全を守っていた。
「……光のテンションがあそこまで上がった状態で互角だなんて、ほんと悪夢ね。何なのよあれは!?」
「――彼の者の名は、【星の巨神】。あなた達に終焉を齎す存在です。」
その言葉と共に、螺旋のごとき光を纏った槍がジャンヌ・オルタへと振るわれる。その殺気に気づいたジャンヌ・オルタはその手に持つ旗を振るい槍を受け流すと、その勢いのまま距離を取り乱入者の正体を見極めようとしていた。
「――あらあら、まぁまぁ。私が言えたことではないですが、伝説の聖王様がご降臨ですか?」
「えぇ、あなた達を止める為に。我ら『星の意思』は、この滅びを許容しない……あなた達のわがままも、ここで終わりです。」
現れた乱入者――アルトリアが紡ぐその言葉に、ジャンヌ・オルタは憤怒の形相を浮かべる。
そして、ジャンヌ・オルタの感情に合わせるかのように、アルトリアとジャンヌ・オルタの周囲を炎の壁が包み込んだ。
「――わがまま?わがままと言いますか!私達のこの怒りを!恨みを!嘆きを!えぇ、ならばいいでしょう!『星の意思』など知ったことか。その意思ごと、この炎で焼き尽くしてあげましょう!」
「――ならば、その炎を我々は星の輝きで消し去りましょう。例えあなた達が望まなくとも、その魂に救済と眠りを、与えましょう。」
「やれるものならやってみなさい!
「
あらゆる負の感情が入り交じった炎が、ジャンヌ・オルタの旗へと集い巨大な槍と化す。それを見たアルトリアが槍を構えると螺旋の光が激しさを増し、轟音を響かせる。
「――
「――
――炎と光の槍がぶつかり、衝撃波と爆発が二人を包み込む。
かつての英雄と聖王、巨神と魔神がぶつかり合うその戦場で、【星獣王】はそれを見届けるかのように、動きを止めるのだった。
「えー、という訳で難易度がルナティックからマストダイになった感じがあるんですが、ここからどうにかならない諸悪の根源さん????」
「方法がない訳でもないけど、やる夫とユウキちゃんに無茶してもらう形になるわよ?あと、ここまで来たらもう私のせいじゃなくない?????」
――場所は代わり、キングソード。アルトリアが【獣】達を連れて撤退した後、やる夫達は状況と今後の対策を練る為に会議室へと集まっていた。
会議室の
「えーと、どうしてもやらなきゃ駄目?確かにあの【獣】達は厄介だけど、それさえ凌げば大魔王を倒してくれるっていうのなら願ったり叶ったりじゃ……」
「そういう訳にもいかないわ。『星の意思』は地球の危機に反応して緊急設置された『精霊』――外敵を駆除する為に全リソースをつぎ込んだ世界のシステムよ?彼らが暴れるだけでこの星のリソースがガリガリ削られてるわ。」
「……もし、『星の意思』が
「何千年という時間をかけて、この大地のリソースを回復させることになるでしょうね。その間、人類が文明圏を維持できればそれこそ奇跡よ?作物と水源は枯れ果て、生物は絶える。魔道の力は消え失せ、武力も無意味と化す。外敵が存在しなくなる代わり、穏やかな死に向かうのは間違いないわ。」
ユウキの問いかけに対して告げられた、その余りにもあっけらかんとしたニコル・ボーラスの言葉に、重苦しい空気が会議室を包み込む。
確かに、邪龍という脅威は取り除かれるのかもしれない。しかし、その果てに待つのがそれでは、結局何も変わらないのではないのか。
そんな思いが蔓延する会議室をニコル・ボーラスは笑みを浮かべ、
「――でも、やる夫とユウキちゃんが無茶すればどうにかなるかもしれないんだお?いや、やる夫はともかくユウキちゃんに無茶させるってのがあれだけど、聞かせてくれお。」
その状況を打破したのは、やる夫だった。アイコンタクトを送りユウキが頷くのを確認すると、やる夫はニコル・ボーラスに向かって問いかける。それを待っていたかのように、ニコル・ボーラスの笑みが一層歪む。
まるで、この状況を楽しんでいるかのようなその笑みに、
「その意気よやる夫。では、いきなりだけど問題です。アルトリアという
「は、なんだお急に?」
「――確かに、違和感があると言えばありますね。結局の所、【魔剣】とは剣……人が振るう『武器』です。『古龍』だった当時のあなたには、『武器』という形は扱いづらいはずですが。」
「えぇ、その通りよ。最終的に私が【魔剣】を手に入れて頂点に立つ場合、どうしても『古龍』の体ではその力を十全に発揮することはできないわ。だから、【魔剣】を操るに相応しい『
大和の言葉にニコル・ボーラスは自らが導いた答えを述べる。続けてそれに異を唱えたのは、ウィリアムだった。
「だが、お前は現状やる夫を介してしかその力を振るうことはできまい?確か3分程ならば全力を出せると以前言っていたが、その間に決着をつけるつもりか?」
「いいえ、皮肉なことにアルトリアのおかげで
そう言うと、ニコル・ボーラスはユウキの方を向いて、笑みを浮かべる。その笑みが何を意味するものなのかは、ニコル・ボーラス自身にしかわからない。
「その『
「つまり、やる夫がエヴァンゲリオンになってユウキちゃんとシンクロするってことかお。シンクロ率400%超えないようにしなきゃ。」
「やる夫、よくわからないんだけどその説明???????」
「ユウキちゃんは死なないお。やる夫が守るから。」
「いい加減にしないとボク泣くよ????????」
「あっはいすいません一度言ってみたかったんですこの台詞。そしてウィリアムさん、弓を構えるのやめて。」
「ちっ。」
「……あの、それってやる夫君とユウキちゃんが一心同体になるってことですよね?」
「「「「「「「あ?」」」」」」
「おう、座ってろ。全員女じゃイケない体にされたいの???」
「「「「「「「ひぇっ」」」」」」
ニコル・ボーラスの言葉にやる夫がこの世界の
それを他所に、ふと大和が呟いた言葉に一部の兵士達が立ち上がるが、アストルフォのドスが聞いた声に寒気を感じると、大人しく席に座る。
先程までの重苦しい空気は何処へやら。こんな事態だというのにいつも通りな彼らにため息をつきながら、領主は今までの説明を聞いて気になっていたことを口にした。
「しかし、その『星の欠片』とやらはなぜそこまでできる?そんな代物をぽいっとくれた聖王様の考えもわからんがの。」
「『星の欠片』は【獣】達と同種の力――『精霊』の結晶なのよ。ぶっちゃけ魔剣以上のチートアイテムよね?要するに、アルトリアは『なんとか時間は稼ぐし力も貸すから決着をつけろ』って言ってるのよ。」
「……つまり、聖王はこのような事態になってもなお、人類を信じているということか。人類の手で、解決を果たすべきだと。」
「えぇ、そういうこと。まったく、サービス残業させられているのに随分とお人好しよねあの子?無茶振り度合いは変わらないけど、提案した段階で一緒にお助けアイテムもくれるだけどこかの誰かさんよりマシだと思わない?」
そのニコル・ボーラスの煽るような言葉に
「何処へ行くつもりだ?」
「――お前達の答えは出たのだろう?ならば、それに相応しい舞台で待つだけだ。私とて、このようなオワリは本意ではない。私を打ち倒すのは――黄金の輝きを持つ、
ウィリアムの警戒にそう答えると、
「あらあら、ここからが面白い所なのに……まぁいいわ。王子様が舞踏会の準備をしてくれるのなら、魔法使いは魔法使いらしく
「邪神様、なんで手をワキワキさせてるんです??????」
「どうしよう……すっごく不安になってきた……」
そんな様子を見ながら、まるでチェシャ猫のような笑みを浮かべ手を顔の横でニギニギとするニコル・ボーラスを見て、やる夫とユウキはため息をつくのだった。
~To Be Continued……?~
次回:降臨!聖騎士たる龍帝皇!
『星の意思』の元ネタ
【星獣王】:ぼくらの怪獣王
【星の巨神】:最近ゲッターのヤバい方と共演したマジンガーのやばい方
あと、本編でやる夫に厄ネタが詰め合わされたとしてもこの剪定事象やる夫はちょっとヲタ知識があったりする男の子だよ!!!!