ノーゲーム・ノーライフ ゲーマー兄妹と獣耳少女が神経衰弱をするようです   作:星ほたる

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獣耳少女はゲーマー兄妹に勝負を挑むようです

「空、白、しょーぶしやがれ、です!」

 

 開け放たれた扉の向こうから顔を覗かせたのは。

 現在十一歳である白よりもさらに幼い身でありながら、元東部連合・在エルキア大使を(つと)めていた少女。

 フェネックギツネのような大きな耳と尻尾を覗かせる獣人種(ワービースト)。初瀬いづなだった。

 東部連合とエルキアとの勝負に負けて以来、いづなは時々こうして突然現れては空と白に勝負を仕掛けていた。空と白は受ける必要のないその勝負を、最強のゲーマー『  (くうはく)』として全て受けていた。

 開いた口から言葉を漏れさせながら、静止しているステフを余所(よそ)に、空はその勝負の申し込みを受諾する。

 

「いいぜ、今回は何をするんだ?」

 

 ゲームの決定権を今までと同じようにいづなに譲り、いづなが用意しているゲームの内容を聞く。

 

「神経衰弱をやる、です。けど、トランプにジョーカーを入れてやる、です」

 

 いづながクッキーを(つま)みながら詳しいルールを説明する。

 ルールは単純で、基本は通常の神経衰弱と同じである。カードを二枚めくり、数字が揃えば手番をもう一度得て、揃わなければ相手に手番を渡す。ただし、ジョーカーを引き当てた場合のみ通常と異なり、そこで手番を終え、場のカードを五秒間シャッフルするというものだった。

 

「何でもいいけど、電子(テレビ)ゲームはいいのか?」

「空が前に言ってやがった、です。空たちの世界にも、同じようなゲーム、ありやがる、です。こだわるひつよーねぇ、です」

 

 東部連合が得意とするのはあくまで『初見殺し』や『初心者狩り』と呼ばれるものである。それが通用しない空と白を相手に電子ゲームを選ぶメリットはあまりない。

 そもそも東部連合まで出向かなければ電子ゲームができないわけだが、その程度の苦労、ゲームのためなら惜しまないのが『  (くうはく)』である。

 ステフにジョーカー入りトランプを取りに行かせ、戻ってきたのを確認してから、空は話を戻す。

 

「まず、いつも通り、俺と白は二人一組で行う。それと、二つルールを追加させてくれ」

 

 クッキーを二つ手に取りながら、そう空が切り出した。

 

「何だ、です」

 

 一つ目のクッキーをいづなへ差し出しながら空は言う。

 

「まず、ディーラーをステフにさせる。カードを並べる行為やシャッフルする行為はステフ一人で行うんだ」

「サラッと、(わたくし)の意思は無視するんですのね……」

 

 その条件をつける空の目的を、いづなは単純なイカサマ防止だと見抜く。

 いづなにとってその程度の小細工、問題ではない。

 

「わかった、です。もう一つは何だ、です?」

 

 いづなはあっさりと了承し、空からクッキーを受け取って、もう一つの提案を尋ねる。

 ルールを聞き、空の狙いは何なのか、正確に見極めようと身構えるいづな。

 しかし、そのルールは、あまりにもシンプルで、だからこそいづなには裏を読み取ることができなかった。

 もう一つのクッキーを目の前に掲げて空は言った。

 

「もう一つは、ジョーカーをめくった場合、そのジョーカーを持ち札に加えることだ。同点で終わりなんてつまんないことになりたくないだろ? カードの合計枚数が奇数なら、引き分けは起こらないしな」

 

 確かに神経衰弱は基本二枚ずつ獲得することになるため、必然的にポイントは偶数になる。お互いがもし二十六枚ずつ獲得すれば引き分けとなってしまう。しかし、ジョーカーが獲得枚数に数えられるなら一方のプレイヤーが奇数枚になり、同点となる可能性はゼロになる。

 ジョーカーもポイントに加算する。この追加ルールが単純であり、空からは一切の嘘の気配が感じられなかったために、空の本当の狙いがいづなには読み取れなかった。

 実は空にとって、このルールはなくてもよい。たとえいづなが警戒して、ルールの追加を断ったとしても、空の目的は果たされる。

 そもそもゲーム内容の最終決定権は空と白にあるはずだが、空と白は追加ルールを採用するかどうかもいづなに(ゆだ)ねていた。

 結局、逡巡(しゆんじゆん)の末、いづなは採用することに決めた。確かに引き分けはいづなにとっても嬉しくはない。

 

(望むところだ、です!)

 

 結局のところいづなもゲーマーである。相手が勝負を仕掛けてくるのなら、それを受けた上で相手を上回りたい。

 ……決して、目の前のクッキーに釣られたわけではない。

 

「わかった、です」

 

 いづなはクッキーを受け取った。

 

「じゃあ始めるぞ。賭けは今回はなし。せっかくだからそれを【盟約】で確定させておこうか」

 

 何が『せっかく』なのかは不明だが、空の言葉にステフが少し驚く。

 

 【十の盟約】その六。盟約に誓って行われた賭けは絶対遵守される。

 

 しかし、何も賭けないのなら、わざわざ盟約に誓ってゲームをする必要はない。

 実際、ステフは何も賭けないことを誓ったゲームなど聞いたことはなかった。

 

「別に、誓ってやってもいい、です」

 

 何も賭けないことを誓うことにリスクは全くない。

 いづなは空の最後の提案も受け入れた。

 

「【盟約に誓って(アツシエンテ)】、です!」

「ほい、じゃあ俺らも―——【盟約に誓って(アツシエンテ)】」

「……【盟約に誓って(アツシエンテ)】」

 

 異口同音に誓いの言葉を唱え、史上()()のギャンブルが始まった。

 

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