ノーゲーム・ノーライフ ゲーマー兄妹と獣耳少女が神経衰弱をするようです   作:星ほたる

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獣耳少女は全神経を集中させるようです

 ゲームは進行し、九ターン目終了時点では。

 

 公開札『♡2』『♡3』『♡4』『♠5』『♢8』『♡K』

 いづな十四枚

 空白 十二枚

 

 一つの取り漏らしもなくお互いに獲得枚数を伸ばし、ややいづながリードしているものの、今現在いづなが勝っているだけで、いつ空たちが逆転してもおかしくない点差である。

 事実、ここまでの展開ではいづなが終始リードしているのではなく、時折空たちに抜かれることもあった。

 

「何というか、正直意外ですわね」

 

 ここまでの展開をディーラーとしての仕事もなく、見守っていたステフがふと言葉をこぼす。

 

「何がだ?」

「いえ、もう少しソラたちが圧倒的なスコアで勝つものと思ってましたので」

 

 空の問いに、素直な感想を述べるステフ。

 

「それは神経衰弱を舐め過ぎだろ。カードを常に揃えることができるのなら、それはもう神経衰弱じゃない」

 

 公開されていないカードまで全て覚えて全部取ることをしてしまったら、神経衰弱はどちらが先手を取るかを争うだけのゲームになってしまう。

 それはもう、神経衰弱ではない。

 しかし、それでもステフは意外の意を表す。

 

「神経衰弱は記憶力を競うゲームですわよね? シロがいるのにいづなさんはソラたちに負けていないのが意外ですわ」

「ステ公、いづなが負けると思っていやがった、です?」

「———正直に言わせてもらえれば、そうですわ」

 

 卓越した五感から嘘を見抜く獣人種(ワービースト)を前に、取り繕っても無駄だと悟ったステフは、いづなの問いに素直に答える。

 『  (くうはく)』の片翼として、白は常人離れした計算能力と記憶力を駆使する。自分の歩数や呼吸の回数でさえあっさりと覚えてしまう白を相手に、暗記バトルで挑んでもすでに結果が見えている。

 ステフはそう指摘していた。

 

 空白 『♠A』→『♢8』

 

「それはいづなを舐め過ぎだステフ。別に意外でもねえよ。いづなはそれくらい分かっている」

 

 いづな『♢Q』→『♡4』

 

 十ターン目終了。

 

「白に挑むんだ。全てのカードを覚えるくらいできる自信がなきゃ、挑戦してこねえよ」

 

 その言葉通り、いづなは今まで、一つのミスもしていない。

 取れるカードは一つ残さず獲得している。

 だからこその点差である。

 

 空白 『♣Q』→『♢Q』

 

 空が()のカードを揃え、ここで両者十四枚と獲得枚数が並んだ。

 

「それでしたら、どちらが勝つか、運次第、ということですの?」

「運なんてものは存在しねえよ。まあ見てろ。この程度で終わらないから」

 

 空白 『♡10』→『♠5』

 

 そしていづなの手番。

 

 いづな『JOKER』

 

 今回のルールにおいて、最も大きな意味を持つカードが十一ターン目にしてようやく現れた。

 

「あら? シャッフルですわね」

 

 空が追加したルールに従い、ジョーカーのカードをいづなの持ち札に加える。

 十五枚となり、またいづながリードする形になったものの、その差は一枚。一組揃うだけで逆転される僅差である。

 ディーラーであるステフがカードをシャッフルするため立ち上がって、場札に手をかざし———

 

 そのとき、()()()()()()

 

「ひぅあ———ッ」

 

 シャッフルし出していたステフがいづなの方を見て、思わず声を漏らす。

 いづなの体が赤く染まり、燃え盛るような熱を纏う。

 獣人種(ワービースト)でも一部の者しか使えない、物理限界さえも超えるとされる能力——―『血壊(けつかい)』。

 運動能力は空気を蹴って駆けることが出来るほど向上し、もともと優れていた五感は周囲に漂う埃すら全て感じ取るようになる。

 身体に負担のかかるその力をただ一つの目的のために、シャッフルされるカードの行方を正確に追いかけるためだけに解放した。

 ただし、空の追加ルール。

 ディーラーはステフにさせること。

 このルールに従い、シャッフルは当然ステフが行っている。

 そのステフは今、血壊を発動させたいづなを前に、(ひる)んでいた。

 シャッフルを開始した手を止めていた。

 いづなが自身で定めたシャッフルの時間制限。たった五秒の制限を設けたのは、血壊の持続時間の上限とその後の疲労具合を意識したためだろう。

 確かに疲れすぎて集中力が乱れ、暗記したものが飛んでしまっては、元の子もない。

 しかし、五秒という時間は、ステフが気を取り直してシャッフルに取り掛かるには、あまりにも短すぎた。

 空が五秒経過をステフに知らせたとき、果たしてそこには不十分なシャッフルしかされていないカードが広がっていた。

 血を鎮めたいづなに空が声をかける。

 

「どうだいづなたん。目論見を外された気分は。この程度のシャッフルなら、カードを追いかけるのも難しくない。結局状況は変わらなかったな」

 

 空の言葉にいづなの耳がぴくりと反応する。

 もしディーラーをしていたのがステフでなかったなら。例えば天翼種(フリユーゲル)のジブリールであったなら、血壊くらいで動揺することはなかっただろう。だからといって、ステフを責めるのはさすがに(こく)というものだ。

 

「もうシャッフルは使えない。ジョーカーは一枚だけしか入れていないからな」

 

 カードの総数は五十三枚。

 ジョーカーが一枚しか入っていないのは、二枚入らないように、空が状況をコントロールしたためである。

 二つ目の追加ルール。

 ジョーカーは持ち札に加える。

 引き分けをなくすという名目の(もと)、カードの総数が奇数であること、ひいてはジョーカーがたった一枚しか入っていないことを確かめるために、空が提案したルールである。

 このルールはもし採用されていなかったとしても、ジョーカーは一枚だけという認識の共有という目的は達成されていた。

 自分だけカードの行方を知っておくという、いづなの作戦は失敗した。

 しかし、ゲームは終わっていない。獣人種(ワービースト)の血壊個体であるアドバンテージを活かせなかったというだけである。

 

「はあ……はぁ、まだ……終わってねえ、です!」

 

 手番は、いづな。

 血壊の反動で息が切れながらも、カードを捲る。

 

 いづな『♢4』→『♡4』

 

 一応シャッフルはされているが、追跡できているいづなにとって、カードを揃えるくらい容易(たやす)いことだった。

 

 いづな『♢9』→『♠K』

 

 十一ターン目を終え、枚数差を三枚に伸ばしたいづな。

 先手空と白の手番である。

 

「にぃ……」

「大丈夫だって。安心しな、白」

 

 白と簡単に言葉を交わし、二枚のカードを空は捲る。

 

 空白 『♢J』→『♠8』

 

 ステフの顔が描かれたカードと普通の数字のカード。このカードを見て、いづなの目が見開かれる。

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