ノーゲーム・ノーライフ ゲーマー兄妹と獣耳少女が神経衰弱をするようです   作:星ほたる

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獣耳少女はゲーマー兄妹に再戦を誓ったようです

「さて、俺たちの勝ちなわけだが、このまま終了というのはいただけない。いくつか種明かしと行こうか」

 

 種明かし。

 このゲームにおいて、白の計算しつくされた勝利への道筋を大きく狂わせた空。

 その空の行動の、白に言わせれば余計なことの、種明かしである。

 空のおかしな行動は二回あった。

 十三ターン目で空が二枚とも公開済みのカードを捲ったのは、ただの()()調()()

 問題はもう一つの方だ。

 

「十二ターン目、なぜ俺が二枚目も未公開のカードを選んだか分かるか、いづな?」

 

 もちろん、暗記ミスではない。

 空と白は手の握り具合でいづなに分からないように意思疎通を図ったが、白から空へ伝えていた情報は一か(ゼロ)かの二つだけ。

 新しく公開するカードの枚数を指示していただけで、それ以外の情報交換は行っていない。

 つまり、カードの配置は空が自分自身でも覚えていたことになる。

 いづなは空の言葉――『結局状況が変わらなかった』という言葉からブラフ反応を感じていたが、そもそもこの言葉自体、受け取り方次第で真偽が変わってしまうグレーゾーンの言葉である。

 それを少し意識しながら空はその言葉を口にした。

 わざと獣人種(いづな)の五感に引っかかるであろう言い方をした。

 

「白のやっていること、いづなから隠すため、です?」

 

 空の問いかけにいづながそう答える。

 ブラフ反応と空の大きなミス。この二つがいづなの思考を短絡的にさせて、このゲームにおける本来の敵である白の存在を霞ませた。

 だが、それでも二枚も公開して相手に得点させる行為は、あまりにも()()()()()()()()

 だから空に言わせれば、いづなの答えは不正解となる。

 

「いづな、お前はゲームの本質に気付けなかった以外に二つミスをしたんだよ」

 

 いづなのミス、それは白の計算に()まったこと。それだけではない。

 

「まず一つ。二ターン目後手()()()()()()。なぜ二枚目のカードを公開札から()()()選んだ? 一度捲られたカードを選ぶだけなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 適当にカードを選んだことで空は暗記の確認作業を簡単に行うことができた。

 ゲームをするなら一切手を抜かない。

 そのいづななら、適当にカードを捲るリスクも気付けるはずだ。

 いづなも記憶力に不安があった?

 いや、そうではない。

 空がいづなの行動の理由を言い当てる。

 

「二ターン目先手の俺のカードの捲り方を真似したろ」

 

 先に二枚目のカードを別の札にしたのは、空だ。

 その空の行動を見たいづなは、無意識にそうするべきだと感じ、実際そうした。

 

「二つ目のミス。それは知能テストで白に挑んだことだ」

 

 根本的な問題を空は指摘する。

 神経衰弱はあくまで知能テストの性質を持つ。

 それは白が最も得意とする分野であり、そのゲームで白に勝とうとすることは無謀だ。

 

「前から言ってんだろ。ゲームジャンルはよく選べって」

 

 いづなが得意なジャンルは、スポーツ。

 引きこもりでスタミナが全然ない空と、その兄以上に体力がない白。

 この二人と決定的に差を付けられるのは、血壊個体特有の身体能力である。

 今回いづなはその身体能力が活かしにくいゲームを提示した。

 それそのものがミスだと空は指摘する。

 

「正直、こっちの土俵で何仕掛けてくるか楽しみにしてたんだけどな。だけど、こっちの提案は全部飲むし、二ターン目の俺の仕掛けにあっさり乗っちまうし」

「……わくわく……からの、がっかり……」

「だから、俺は十三ターン目、白の計算を曲げてまで仕掛けにいった。白の計算の迷彩を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、お前に自分で気付いてほしかったんだけど」

 

 いづながもし、二枚目のカードを同じカードにしつづけたなら。

 空の一回目のミスは、いづなの目にとても奇妙に映っただろう。

 お互いに同じカードを二枚目に捲る展開なら、二枚とも新札公開というミスは、ほとんど起こりえないからだ。

 いづなに自分で気付いてほしかったことを、空が言葉にする。

 

「いづな、俺たちに本気で勝つつもりでゲームしてたか?」

「———あ、当たり前じゃねーか、です!」

「なら、なぜ俺たちの行動を真似(まね)た? なぜお前の得意ジャンルで来なかった?」

 

 それは、空たちを格上だと認めていたから。

 それは、自分に自信がなかったから。

 敢えて何も賭けないが、わざわざ【盟約に誓って(アツシエンテ)】のゲームにしたのは、真剣勝負の場でいづなにこのことを伝えるため。

 

「いづな、俺たちは強い。だけど、俺たちは特別な武器をもっているわけじゃない。誰でも持っている武器を、ひたすらに磨いてきただけだ。知恵を磨き、創意工夫し、情報から未来を読む。そうしてきただけだ」

 

 何も武器はない。それは嘘だ。

 空のマインドリーディング。白の並外れた演算能力。

 それらは武器ではないのか。

 だがそれらの武器は、多少劣ろうともいづな自身も持っている。それだけではなく、獣人種(ワービースト)の身体能力や血壊という、空と白にはない武器も持っているではないか。

 実際今回の勝負で、いづなは『 (そらとしろ)』に勝ちかけたではないか。

 

「いづな、お前は強い。自信を持っていいよ」

「いづなたん……また、全力で、あそぼ?」

 

 空と白の言葉。励ましと誘い。

 嘘もごまかしも一切無いと分かるいづなだからこそ、その言葉は重く響く。

 

「………当たり前じゃねーか、です……」

 

 いづなはさっきと同じ言葉を、自分自身に対して言い聞かせる。

 自分自身への怒りと、今更やってきた敗北への悔しさ。

 涙ぐみそうになるのを抑え、キッと空と白を睨み付ける。

 

「次はまけねーぞ、です! 首を洗って待っていやがれ、です!」

 

 テンプレートな台詞を残し、ステフのお菓子を両手に携え、いづなは部屋を去る。

 

「ソ、ソラ! いづなさんを放っておいていいんですの⁉」

「んー。まあ、大丈夫だろ」

 

 空は読みかけの本を手に取る。

 白も床に転がって、読書を再開する。

 空と白の目は、去り際のいづなの表情を捉えていた。

 吊り上がった口元を。

 

「………いづなたん、笑ってた……」

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