Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

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第十六章 UNION

マックスら四人、そして突如現れた魔法学校の生徒二人は向き合い、互いの出方をうかがっている・・・・

 

誰が先に攻撃を仕掛けるか・・・相手は二人、こっちは四人だ。まぁ負ける気はしない。

マックスは横目でジャック、ジェイリーズ、ディルの立ち位置を確認し、再び謎の女と男を交互に見た。

 

女のほうはディルとジェイリーズ側に、男は廊下の中央に立ち、マックスとジャックと向かい合う。

女の後ろは壁で行き止まりだ。この場から脱出するには前方の男の先へ突っ切るしかない・・・

 

マックスが思案していたその時、最初の攻撃が始まった。

壁際の女が無言で杖を振ろうとした瞬間を、マックスは見逃さなかった。

「させるか!エクスペリアームス!」

力を込めて杖を突きだした杖先からは、緑の波動が発生した。

 

同時にブロンドの魔女の杖からも光が放たれ、二つの光線がぶつかり合って火花を散らした。

「デイヴィック!」

女は杖を握りしめて支えながら、廊下の先に立つ男に向かって叫んだ。

 

「ああ、わかってる!」

デイヴィックと呼ばれた男に、ジャックが呪文を発動しようとしていた。

男は無言呪文で素早く連続攻撃を繰り出し、光線がジャックに立て続けに迫る。

 

「プロテゴ・・・!」

素早く静かな攻撃に圧倒されながらも、ジャックの持ち前のタイミング力で二発の術を弾き飛ばした。

そこで男は視点を変え、ジャックの隣に静かに杖を振ったのだった。

高速で飛来する光は隣のディルに直撃し、彼は瞬時に固まってその場に倒れた。

 

「ディル!卑怯な奴だ・・・」

ジャックが言った。

「次は誰が石になる・・・」

男は杖を突きだしたまま近づく。

 

「誰もならない。」

マックスは杖を大きく横の壁の方に振り、ぶつかり合う光線が歪んで火花が女に降り注いだ。

この瞬間に術を切り、杖を上に向けて新たな呪文を発動した。

「エイビス!」

 

すると天井に向けられたマックスの杖先が白く光り、鳥の羽が舞い上がると共に数羽の灰色の小鳥が出現したのだった。

更にマックスは男の方を振り向いて・・・

「オパグノ・・・」

 

途端に、小鳥達は男めがけて一斉に飛んでいったのだった。

 

「何だこの小細工は!・・・」

猛スピードで飛んでいく鳥達は男の周りを囲み、くちばしで突っつき始めた。

 

「ペトリフィカストタルス!」

一方でジェイリーズが女の動きを封じたようだ。

 

「フィニート・・・ディル、急ぐぞ。」

ジャックが床で固まったディルを助け、手を取って立ち上がらせた。

 

「今のうちだ。とりあえず外に出るぞ!」

マックス達は来た廊下を突っ切り、走ってその場を離れることに成功した。

今、目くらまし術をかけながら逃げる余裕はない。とにかくその足を止めずに廊下を駆け戻り、階段を下りて一階を目指す。

 

心臓が止まりそうだ・・・奴らに追いつかれれば、その時にはもう戦える力が残っているかわからない。

 

既に息が上がりながら、四人は旧校舎一階までたどり着き、そこで一旦立ち止まった。

 

足音は聞こえない・・・追って来てはいないようだ。

「奴らは来てない。ここで姿を消してから、本来の目的の警官の件を調べるか。」

マックスが言った。

 

「よし、やろうか。こっちが警官の近くに行けば、あいつらも近づきにくくなるだろうしな。それにしても何だったんだろうか・・・」

ジャックが言った。

 

「W.M.C.とかいう魔法学校の生徒で、あの二人がグロリアの手先だということは確かだ。でも、ゴルトを操っていた黒幕があの二人だとすると、それはしっくりこない。」

マックスは続ける。

「なぜ魔法学校の生徒なんだ・・・ここに潜入していたと考えれば、すくなくとも同じクラスの生徒及びセントロールスの教師達の記憶を操らなければいけなくなる。そんな大掛かりな事もやっていたと思うか?」

 

「引っ掛かるのはそれだけじゃない。あの二人の話しからすると、どうも俺達の事をほとんど知らない様子だった。つまり、奴らは前からここに潜入していた訳じゃないってことだろう。」

ジャックが付け足した。

 

「じゃあ、ゴルト・ストレッドを操って、地下で何かをやらせていた黒幕がますます謎だわ。」

 

今まで自分達が対抗してきた姿の見えない黒幕・・・・

更に、突然現れた二人の魔法学校の生徒・・・・

厄介なことに、わからない事がまたひとつ追加されたのだ。

 

「とりあえず休憩だ。いきなりきついぜ・・・」

「だな。あの二人は俺達より確実に上手だった。まぁ魔法学校の生徒なら当然だな。本校舎に行って、近場の物置にでも隠れて休もう。」

と言いながらマックスは、いつしか物置部屋がチームの臨時休憩所になっていると感じた。

 

本校舎に移ってからは、旧校舎の廃校のような雰囲気は一変する。

 

彼らは一番近い物置部屋に入って、ひとまず落ち着いた。

 

ここから先は、さすがに警官に出会すこともあるだろう。魔法使いだけでなく全警官にも注意を払う必要があるのは、これまた面倒な事になったものだ。

せっかくの休校で、誰もいない状態の校舎内を思う存分動き回れるかと思っていたのもつかの間。誰かが事件を起こしてくれたせいで今や警察が集っているのが現状だ。

だがそれは、同時に敵にとっても動きにくくなったはず。

なぜ何者かは警官を攻撃して騒ぎを起こしたのか・・・

犯人はバカなのか・・・・だったら黒幕が務まるか?

あるいは、今回の事件の犯人はゴルト・ストレッドを消した黒幕とは違うというのか・・・・

そしてさっきの二人は関係しているのか?

 

台に腰かけて、マックスは三人の警官が何者かに襲われた事件の事を考えていた。

 

「警官を殺した犯人は、俺達が探してる黒幕だと思うか?」

マックスは皆に向けて言った。

 

「だと思っていた。ついさっきまではな。」

ジャックが答える。

「ここは魔法学校からも魔法使いが来るような所だ。警官殺しの犯人も含めて、俺達以外の魔法使いが黒幕だと決めつけることは出来ないな。」

 

「でも、少なくともさっきの二人もグロリアの手先よ。あたし達の敵であることに変わりはないわ。」

ジェイリーズが言った。

 

「そう言えばあの金髪の魔女、ゴルト・ストレッドや地下の事を聞いた時に知らないような反応をしたな。それが本当なら、黒幕の指令で動いてるんじゃなさそうだな。」

ディルが珍しく推理する。

 

「確かにそこは俺も気になるところだ。となると、グロリアの動きは二手に分かれているということか・・・・」

「二手に・・・つまり、ここセントロールスと魔法学校の生徒がってことか?」

ジャックがマックスの考えを読み取る。

 

「ああ、だから互いの指令内容が違う。でも奴らがセントロールスに来た理由は何となくわかる。」

「俺もだよ。魔光力源しか思いつかない。」

 

「やっぱりグロリアは魔光力源を起動して何かしようとしているのは間違いなかったわね。問題は二つの魔光力源が起動された時、どうなるのか・・・」

 

「今は手掛かりが何もない。ただ、奴らに先を越される前に阻止しないといけない・・・それだけは確かだ。」

 

数分間ここに留まり、体力が回復してきた頃にまた行動を開始した。

目指すは地下周辺。警備代表の警官が地下を避けるよう指示を出しているのならば、近くにその本人がいる可能性は高い。

 

そしてマックス達が物置部屋から出て廊下を歩き出してから、早速話し声と足音が近くから聞こえてくるのだった。

マックスは三人と目で合図し、皆立ち止まって杖を胸元に構えた。

 

「インビジビリアス・・・」

小声で素早く呪文を唱え、四人の姿が薄れていく。

「たぶん警官だな。様子をうかがってみるか。」

マックスの声だけがその場で聞こえた。

 

足音をたてず得意な忍び動きで前へ進んでいると、すぐに前から二人組の警官がゆっくりと歩いて来た。

 

四人は壁に張りつくようにして警官が迫るのを待った。

 

マックスは、近づいてくる警官の話を聞いていたが、どうも内容は地下の事とは何の関係もなさそうだ。

そのまま見えない四人に気づきもせずに、二人は会話を続けながら通り過ぎて行った。

 

マックスから姿を現し、四人はまた歩きだした。

「使える情報はなかったな。特に操られている様子はない。」

 

そのまま一階廊下を静かに進み続けたが、その間も魔法使いの二人は現れることはなく、誰かに襲われるような気配はしなかった。

しかし本校舎内には、複数人の警官達がうろうろしているややこしさに変わりはない。

奥へ進むにつれて、その事を四人とも痛感することになった。

 

「おい、これじゃ全く落ち着かないぞ。どこから警察が現れるか警戒しっぱなしだ。」

度々現れる警官達との遭遇で、ディルの神経はもう限界を迎えたらしい。

 

「だから言ったろ、気は抜けないと。」

マックスが前を向いたまま言った。

「でもジェイリーズの話からすると、地下の近くには誰もいないはずだ。もう少しの辛抱だな。」

 

やがて彼らは地下へと通じる一階中央廊下までやって来た。

 

突然のハプニングはあったが、二人の魔法使いから逃れた後は順調だ。このまま厄介な人物に出会すことなく当初の目的が果たされればオーケーだ。

 

そして、地下へと一直線に伸びる廊下を歩き出したとき、またしても予想外の事は起こった。

 

四人が歩いている目の前に、突然何者かが姿を現したのだ。

あまりに突然のことで、マックスは杖を構える暇すらなかった。だが目の前に立つ人物を確認した途端、一気に安心感に包まれた。

 

「サイレントか・・・」

「君達の驚いた顔を写真に残せたらよかったのにな。」

 

それは間違いなく"彼"だった。

「その登場は勘弁してくれ。心臓に悪いよ・・・」

ディルが本気で驚いたことは、その表情から察することが出来る。

 

「では次は肩でも叩くか。」

「それも怖いな。」

 

「それで、今日は何をしてるんだ?この展開は前回会った時を思い出させる。何か嫌な感じがするが。」

マックスが二人の会話に割って入った。

 

「嫌な感じは私も一緒だ。だから近頃こまめにセントロールスで偵察をしてるんだよ。」

サイレントは続ける。

「君達が揃って動いているということは、何か目的があるんだろうな。」

「そうさ。ジェイリーズからの情報が本当か、それを確めるのが今日のメインミッションだ。」

マックスが言う。

 

「情報とは?」

「はっきり言うと、地下の魔光力源保管所に人を近づけたくない誰かが警察を操って、地下の警備をさせないように企んでいる。と言った所だ。」

マックスは要約して言った。

 

「なるほど。興味深い情報だ。やはり、グロリアは確実に魔光力源に関わる何らかの計画を進めているようだ。気をつけて行動するんだぞ。」

「ああ、わかったよ。」

ここでマックスは、彼にいくつかの質問をしなければいけない事を思い出した。

 

「そうだ、聞きたいことがある。」

「何かな?」

「まずはW.M.C.について、簡単に教えてほしい。 」

これを聞いたサイレントは、歴史の本からその名を知ったのかとでも言うような表情だった。

 

「ワールド・マジック・センチュリーズ。あらゆる国の魔法使いが在学しているイギリス最大規模の魔法学校だ。本で見つけたのならば説明は書いてあるはずだが。」

「本じゃないんだ。さっきそこの生徒から名を聞いて知った。」

 

サイレントは彼らに会うたびに驚かされているような気がした。

 

「魔法学校の生徒に会ったのか?さっきと言うと・・・?」

「ここでだよ。二人いた。そして俺達を攻撃した。」

マックスが言った。

 

「なるほどな。とうとう他のグロリアの新入りが現れたという事か・・・事態は意外と早いかもしれん。」

サイレントが真剣な眼差しになる。

「どうやらグロリア側にも、魔光力源に近づいた君達の存在は知れ渡ったらしい。それで魔法学校からも手先を送ったのだろう。既に魔法学校の生徒がグロリアに引き入れられている事はわかっている。今は二人しか現れていないが、本気になれば何人送り込むかわからん。」

 

「ただでさえ警官に注意して大変だってのに、これから何人襲ってくるかわからないなんて参るな・・・」

ディルが言った。

 

「そうなればこの学校は危険だ。いや、もう既に危ないな。君達は今まで以上に警戒するんだ。そして我々の仲間にセントロールスのパトロールをさせる。相手が魔法学校の生徒となれば、甘く見てはいけないからな。」

「さっき少し戦ったから、それはよくわかるよ。」

ジャックが言った。

 

「問題は、現在のグロリアの団員が直接乗り込んで来た時だ。子供以外の相手と決して戦おうとしないことだ。決してな。」

「了解した・・・」

マックスは今の自分達の力を思い知りながら答えた。

 

「それから、次に聞きたいことだが。」

彼は続けた。

「レイヴ・カッシュという人物を知ってるか?」

「レイヴ・カッシュ・・・・残念ながら聞いたことがないな。その人物がどうした?」

サイレントはその名を知らなかったようだ。

 

「『魔法全史』に書いてあったんだけど、この名前が魔光力源保管所に入るための呪文に使われてるんだ。」

「これはまた聞き流せない事だな。魔光力源の事に加えて、その人物の事をこっちでも調査しておくとしよう。もっと詳しくわかるか?」

「ああ。でもレイヴ・カッシュが19世紀に生きていた冴えない発明家って事と、行方不明になったって事だけだ。」

「覚えておくよ。」

 

サイレントはうなずき、そしてまた話し続けた。

 

「今度は私から質問だ。」

「ああ、何だ?」

「一度、第一魔光力源の所へ案内してほしい。」

 

それから、サイレントを連れて地下へと歩き始めたのだった。

 

 

その頃、セントロールスの屋上では・・・・

 

「それにしても、来てみたらまさかこんな事になってるとはなぁ。誰だか知らんが、よくも面倒な事件を起こしてくれたもんだ。」

W.M.C.の生徒の男が、屋上のふちから下を眺めていた。

そしてそこへもう一人の生徒が近づく。

「一体どこのバカの仕業なんだか・・・・」

それは長髪でブロンドの女子だった。

 

「なぁ、リザラ・・・・」

隣の男が敷地内の様子を眺めながら話し始める。

「俺達は、本当にこれでいいんだろうか・・・」

「デイヴィック・・・今更何言ってるんだ。」

女が言う。

 

「俺達の信じたグロリアという連中・・・・彼らに協力して俺達がやろうとしている事は、本当に最善なのかということだ。」

「何か引っかかるのか?」

「・・・いや、何かよくわかんなくなってなぁ。」

デイヴィックは下を見下ろしたまま言った。

 

その後ろでリザラが・・・

「少なくとも、あたしはあの人達の仲間になれば悪いことはないと思う。あたし達の親だって・・・」

「それ以上言わなくていい。わかってるさ。俺達が後を継ぐことになる可能性は最初からあったんだ。それが運命ならば、俺は迷わない・・・」

 

その後、彼らは屋上にしばらくいた。

 

「なぁ、あいつらの事をどう思う?」

デイヴィックは段差に腰掛けて、近くをうろうろするリザラに言った。

 

「あの四人か。マグル界で育ったわりにはなかなかの腕ね。それにしても、何でマグルの学校にいるんだ・・・惜しいことだね。同じ学校にいたらあたしらの仲間になっていたかもしれないのに・・・」

リザラは呟いた。

 

そして少し二人の会話が途切れた後、リザラが口を開く。

「ミッション、再開しなくていいのか?」

「そうだな。やらなきゃならない。でも俺達には何の手掛かりもない。他の魔法学校の仲間に会って聞いてみるしかないか。」

「もしくは、あの四人を利用できるかもしれないわね。」

 

そしてデイヴィックが立ち上がった。

「よし。あいつらの腕はわかった。四対二では同じ結果になるだけだ。仲間を集めて再び来るぞ。」

「今日は帰るのか?」

「そうする。お前が残りたいと言うならそうするが。」

「・・・いや、帰ろう。」

 

そして二人は、屋上から姿をくらましたのだった。

 

 

それから数日が過ぎ去ったある日の事・・・

 

誰もいない公園に一人、彼は杖を振り回し、連続で魔術を行使していた。

 

一発発動する度に向きを変え、違う方向に呪文を放つ。

杖先からは次々と光が飛び、地面の草に当たって弾ける。

そこへ誰かの影が現れた。

「マックス・・・今日はまたずいぶんとはりきってんな。」

 

声に気づいて彼は振り向く。

 

「ディルか。早いな。」

「俺の登場は意外だったかな?」

ディルが自転車を置いて公園内に入ってきたのだ。そして彼の先には杖を片手にしたマックスが立っている。

 

「すごいな。無言呪文ってやつか。」

「ああ。戦うにはどうしても必要なスキルだから。W.M.C.の二人の動きを見てすぐに思ったんだ。」

「俺も思ったよ。俺達とはレベルが違う。」

ディルがマックスの横に並んだ。

 

「あの時に、俺は何も出来ずに攻撃を食らっただけだった。それが悔しい。そして怖かった・・・」

彼はいつになく真剣な表情で、マックスは彼の思いを察した。

 

「とことん特訓しようじゃないか。そして強くなろう。」

「おう!早速頼む、ご指導をな。」

「よし。無言呪文は相手に何の魔法か知られずに、かつスピーディーに呪文を発動することができる。使うには呪文とその効果をしっかり把握しておく必要がある。強い魔法になるほど成功するのは難しいだろう。とにかく、やってみるか。」

 

その後ジャックとジェイリーズも現れて、皆で魔法の勉強と実戦訓練に明け暮れる事となった。

 

そんな時に、別の場所でも別の人間達が動き出していた。

 

「俺達の任務だが、結構面倒な事になってる。これからは協力して動く必要がありそうだ。」

それはデイヴィックだった。

 

「確か、お前達の任務はマグルの学校にある魔光力源の確保だったな。状況はあまり良くないようだな。」

そこにはもう一人、男子生徒がいる。

「それに、ナイトフィストの手先になったという奴らがいたらしいな。」

「だから頼んでんだよ。何か情報はないか?」

「あの学校の生徒の話では、お前達が探すものは地下にあるらしい。でも詳しい事は知らん。何せ会ったこともない。」

男は言った。

 

「そうか。わかった。」

「アカデミーの仲間も連れていくのか?」

「ああ。エメリア達にはリザラが話をつけている。準備が整い次第行くぞ。俺の予定では明日だ。」

 

 

またある所では・・・

「あんたの仲間から話は聞いたわよ。早速、ナイトフィストに協力するマグル校の生徒に会ったらしいね。」

「なかなかやる相手だったよ。素人にしてはね。」

とある女子とリザラが話していた。

 

「リザラ達、例のアレを守ることが任務でしょ?大変なのはわかってるわ。だから次はあたし達も任務に参加するわよ。」

「話が早くて助かるよ。」

「じゃあエレナにはあたしが話しておくから、その時はよろしく。」

 

二人の女子はどこかの門の前で話を続ける。

「そうだ、リザラはもう会ってるのかい?例のマグル校にいるグロリアの仲間と。」

「いいや。君は?」

「あたしもエレナも見てないよ。どんな奴なんだろうねぇ。なんか学校でヤバい事件起こしたんでしょ?」

彼女は興味ある感じで言った。

 

「たぶんそいつが犯人だろうね。」

リザラはクールに言った。

「それに、その生徒が魔光力源を見つけたんでしょ?魔法学校の生徒じゃないのになかなかやるわよね。見てみたいわ。」

「あたしは興味ないね。」

そしてリザラは姿をくらまし、もう一人は門の内側へと消えたのだった。

 

 

そして翌日、彼らはセントロールスに来ていた。

 

「今回も警官の動きを観察する。それをやりながら魔法学校の生徒の出現も警戒するんだ。また必ず現れる。その時に、更に成長した俺達を見せてやろう。」

裏庭で、マックスがジャック、ディル、ジェイリーズと向かい合っている。

 

「奴らの狙っている物はわかっている。だから必ず地下にたどり着くはずだ。先に行って待機出来れば一番良いパターンだな。」

「あの時に魔女は旧校舎にいた。そして男はどこかへ行っていた・・・恐らく二手に分かれて魔光力源を探していたのだろう。だからまだ奴らが位置を知らないかもしれない。その点ではこっちが確実に有利な立場にある。」

ジャックが言った。

 

「ならばいいがな・・・とりあえず地下へ行こう。それと、グロリアの手先といえども、ここにいる警備担当の警官全員を操るのはまず無理だ。学校のどこかで操られた警官が指揮をとっているはず。その警官を見つけて服従の呪文を解除することも目的だ。」

そしてマックス達は旧校舎の入口から校内に侵入した。

 

そこから本校舎へ移る・・・

 

マックスはバッグから『学校内全システム書記』を取り出して、一階地図のページを開いた。

何度地図のページを開くことか・・・

 

「一階の表側廊下には隠れられそうな小部屋は少ないな。一旦二階に上がったほうが良さそうだ。二階には部屋が多い。」

 

彼らは本校舎に移ってからすぐに階段を上がり、二階廊下から地下へ繋がる一階中央廊下へ下りるルートを選んだ。

 

少し歩くと、様々な教科の教室や物置部屋が連なって見えてきた。

各部屋に誰かいないかと、窓から部屋の中を除きながら静かに進む。

 

そのまま歩いていると、廊下の先から足音が聞こえてくるのがわかった。

いつも通りのやり方で、皆は姿を消してその場をやり過ごそうとした。

少し待つと、それは一人の警官だった。

もちろんマックス達の存在に気づくことはなく通り過ぎる。

 

魔法使い相手では警察もどんなに頼りないか・・・マックスはそう思いながら、目くらまし呪文を解除した。

 

「警官は行ったな。」

マックスが姿を現してから静かに言った。

「いつでも全力で戦えるように、なるべく透明の魔術は避けたいけど、やっぱり警察が邪魔で仕方無いな。」

ジャックが言った。

 

「まあな。だが同じく敵側にとっても動きにくいのは好都合だ。」

 

それから二階表側廊下の突き当たりまで、何事もなく進むことができた。

二階も広く入り組んだ構造になっていて、突き当たりの角を曲がると、更に二方向の廊下へと繋がっている。

 

マックスは二階中央の廊下を選んだ。

「このまま進んで一階に下りたら一階の中央廊下だ。」

 

その時だった。

廊下の先に、明らかに警官ではない人間がいるのを発見した。

四人はすぐそれが、リザラとデイヴィックだとわかった。

 

マックスは気づかれずに近づこうかと考えたが、相手も周りを警戒しているのは当然だ。リザラが後方を確認し、マックス達の存在はすぐに知られてしまう。

 

「デイヴィック!」

「来たかっ・・・」

彼らは即座に杖を向ける。

無言で発せられた光がマックスとジャックに高速で迫った。

二人は訓練したばかりの無言呪文で、術をガードした。

 

「練習の成果はあったな。」

マックスが言った。

 

しかし相手の攻撃は止むことはない。

二人の術が交互に飛来し、容赦なくマックスとジャックを襲った。

 

「ターゲットをしぼって一人ずつ倒す気か・・・」

必死でガードすることしか出来ないマックスとジャックの横に、ディルとジェイリーズが並んで攻撃を開始する。

 

その瞬間を待っていたかのように、デイヴィックがディルに杖を向けた。

 

「しまった!」

マックスが気づいたときには遅かった。

何らかの呪文が発動され、光線がディルに迫り来る・・・

「モビリコーパス!」

その時、ジェイリーズが瞬時にディルに杖を向けて言った。

同時にディルの体がわずかに浮き、壁の方へ大きく移動したのだった。

間一髪、光線は当たらずに飛んで行った。

 

「ナイスだジェイリーズ。」

マックスが言った。

 

ディルは何が起きたかよくわからず、その場でほっとしていた。

しかし落ち着く暇はない。デイヴィックとリザラは呪文を次々に発動してくる。

 

マックスは必死でかわし、無言呪文でガードする。

その隣でジャック、ジェイリーズが攻撃を仕掛け、相手に隙を与えようとする。

 

空中を光線が飛び交い、壁のあちこちに当たっては火花が散る。

 

その時だった。

廊下の後ろから、こちらへ走り来る足音が聞こえてきた。

物音を聞いた警官が向かってきているのだろう。

 

彼らは同時に攻撃を止め、その場は一気に静かになった。

すると複数の足音がはっきり聞こえてくる。

 

リザラとデイヴィックは顔を見合わせ、そして走り出した。

 

「まずい!」

「俺に任せろ!」

ディルが廊下の後ろを振り向き、杖を上げた。

「レペロ・マグルタム」

杖から目には見えない結界が広がっていく・・・

 

「お前達は先に行ってあいつらを追うんだ。俺もすぐに後を追う。」

「よし、じゃあここは頼んだぞ。」

「任せとけ。」

そしてマックスはジャックとジェイリーズを連れて、走り行くリザラとデイヴィックへ迫った。

 

走りながら二人へ攻撃する。それを交互に後ろを向いて跳ね返し、またマックス達に攻撃を仕掛ける。

 

彼らの走る後ろではディルがマグル避け呪文をかけ終わったようだ。もう後ろから警官が来ることはなくなった。

彼は急いでマックス達の後を追った。

 

マックス達は攻撃と防御を繰り返し、先を行く二人もしぶとく対応する。そして廊下の突き当たりを曲がり、姿が見えなくなってしまった。

 

「逃がすか!まだ足音は聞こえる。すぐそこを走っている!」

マックス達は走り続ける。

だが、逃げる二人を追い廊下の突き当たりに近づくにつれ、彼らの遠退く足音がまただんだんと近づいているように聞こえてきた。何かおかしい・・・

 

聞こえる足音は増え、近くでピタリと止まる。

そして、マックス達が突き当たりの角を曲がりきった先に・・・・

 

「・・・何だと。」

三人はその場で走る足を止めた。

 

目の前には、リザラとデイヴィックも含めて五人の人間が立ちはだかっていた。

その全員の手には魔法の杖がある。

 

彼らのうちリザラとデイヴィック、そして知らない男は同じ制服を着ているが、残り二人の女子は知らない制服だ。

 

そして五人はマックス達に杖を向ける。

「杖を上げるなよ。」

五人の中心に立つデイヴィックが言った。

 

これには従うしかなかった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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