Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

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第二十一章 "TEMPEST " (後編)

マックスは窓のカーテンを閉めると、電気を消してベッドにあお向けになった。

 

時刻は深夜2時を迎えようとしている。だが、まだ眠くはない。

昨日あった事に関して、頭が考えるのを止めようとしない・・・

 

つい昨日までは完全に敵だった人間が一人、こちら側にいる。

そして彼女、エレナ・クレイン達のチームはデイヴィックとロドリュークの意見が合わずに、二つに分かれたと言っていた。

更に、ロドリュークが仲間のロザーナを連れ去った。

 

そしてこうなった原因は昨日、学校に潜入していた三人のナイトフィストと出会ってしまったからという訳だが・・・

 

エレナの話を聞いて、まず気になったのがその三人だ。

警官の格好をして、他の警察の人間達に紛れながらグロリアの警戒をしていたらしい。

そんな警官服の三人の人物が、どうしても犠牲になった警官三人と関係しているのではないかと思えてならない。

だが、一人は死んだとニュースで言っていた。

後の二人は、そもそも誰が行方不明だと決めつけたんだ?

警察署内の誰一人として、彼ら三人の顔を知らなかったと言っているのに・・・・

 

マックスの頭は思考し続けた。

 

警官の件も気になるが、今気にすべきはデイヴィック達の現状だ。

まだエレナの言うことを100パーセント信じきってはいないが、嘘まみれでもなさそうだった。

 

彼らのチームが崩れたのは間違いない。それは鏡で見た光景が証明している。

そしてその光景と言えば・・・・テンペスト・・・

 

考えるほどに眠気は遠ざかるものだった。だがマックスの頭の中には、気になって仕方がない事実だらけで埋め尽くされていた。

レイチェルからメールが届いていることにも気づかずに・・・

 

急に、彼はまた起き上がって寝室の窓のカーテンを開けた。

そして窓も開くと、気持ちの良い風が優しく入り込んでくる。

夜風に当たりながら本でも読もうというのだった。

 

そこで彼は一冊の小説に手をつけた。

その他にも、棚には何冊も小説が並べられている。それらは、マックスが昔から読書を好んでいた事の何よりの証なのだ。

 

マックスは一旦頭を空っぽにするために、手に取った本を開いた。

やがて読み進めるうちに、過去の自分の記憶が呼び起こされるのだった。

 

「懐かしい話だな・・・こんな事に憧れた頃もあったか・・・・」

 

彼が持つその本の表紙に刻まれたタイトルは『Knight of Wizard』。

急に何かを思い出したように手に取った一冊だが、この時マックスの頭の中で、彼が昔抱いたある思いが蘇ろうとしているのだった・・・

 

「全て小説のようになればいいんだが。何せ現実の問題だ・・・」

 

ふとした瞬間、彼は小台の上に放っておいた携帯電話が視界に入った。

ここでようやく誰かからメールが届いていることに気がついたのだ。

 

本を開いたまま机に置いて、身を乗り出して台の上に手を伸ばした。

 

「今日はほとんど見てなかったな。」

見てみると、それが何時間も前に届いたレイチェルからのメールだとわかった。

 

「レイチェル・・・全く気づかなかった。無視したと思ってるかな・・・・」

 

メールの内容はそれほど長くはなかった。それは、特に大した内容ではなく、時間があれば会って、話したり魔法の練習をしたりしたい。といったものだった。

 

「そういえば、ここ何日かは会ってないな。」

また会いたいのはマックスも同じだった。

彼女と肩を並べて何でもない会話をしている時こそ、一番気持ちが落ち着く時なのではないかと思うマックスは、早速明日、レイチェルを地下隠れ家に呼ぶことに決めたのだった。

 

だがすぐに、不安を感じる・・・・

 

テンペストは敵側の人間だ。そしてあの地下隠れ家の事を知っている。

これはつまり、奴がいつあの地下隠れ家に現れるかわからないということなのだ。

サイレントがテンペストに、あの隠れ家が俺達の活動拠点になったという事を言っていなければいいのだが・・・

もしそれを知られれば、俺達を消しに現れる。間違いなく・・・・

 

そして奴が現れたとき、レイチェルがいたらと思うと、その後の展開を考えたくもない。

 

「もはや、あの場所は安全じゃない・・・早くサイレントに奴の事を知らせないと。」

 

焦りは更に眠気を遠ざけた。

その後しぼらくは本を読み続けたのだった・・・

 

そして朝はいつも通り訪れて、開いたカーテンから光が射し込む。

 

朝日は、机に置かれた読みかけの本と、椅子に座ったまま寝ているマックスの顔を激しく照らす。

だが彼は全く起きる気配はなく、後からテイルに起こされるまで寝続けるのだった・・・・

 

 

この日の昼の事だ。

 

あの二人はW.M.C.(ワールド・マジック・センチュリーズ)にいた。

 

「どうする?・・・また行く気はあるか?」

教室と思われる、生徒達が複数人いる部屋にてデイヴィックが話をしている。

 

「あの廊下の監視が任務だから。でも・・・正直、気は進まないね。」

デイヴィックの横で、腕を組んで窓の外を向いたままリザラが言った。

「それに、エレナとロザーナの事も気になる・・・」

 

「だな。今日はロドリュークを見てないから、きっとロザーナを従わせて何やらやってるのだろう。でもエレナの事は何もわからない・・・」

 

少し黙った後、デイヴィックは続ける。

「俺達は自分達で正しいと思う任務を考えるべきだ。これからはテンペストの言うことを全て受け入れないつもりだ。」

「じゃあ、まずどうするつもり?」

リザラが振り向いて言う。

 

「まずロザーナを奴のもとから引き離させて、彼女を俺達の側に連れ戻そう。本人もそう望むだろう。その為にロドリュークを見つけるぞ。」

「それには賛成。でも、見つけるって言ってもどこを探す?」

「奴がしそうな事と、与えられるであろう任務の内容を予測しよう。少し考える時間が必要だな。」

 

 

場所は変わり、廃公園の地下隠れ家にも、集まって話し合いをする若い魔法使い達がいる。

 

「よし、今日もよく来てくれた。」

マックスは、いつもながら呼びかけに応じたジャック、ディルを順に見て言った。

そして昨日に引き続き、ここにエレナの姿もある。

 

「君も、昨日の約束通り来てくれたな。君次第で、これからやる事が決定するかもしれないから、ありがたい。」

「あたし次第で?」

エレナが首をかしげた様子で言った。

 

「ああそうだ。そして・・・」

マックスは、今度は別の人物を向いて話を続けた。

「レイチェルも、よく来てくれたな。君にも話しておきたい事があって呼んだ。」

 

そこには、数日ぶりに顔を出すレイチェルの姿があった。

「まずは、隣の彼女を紹介しないとな。」

そしてマックスはエレナを見た。

 

「あたしはエレナ・クレイン。よろしく・・・」

彼女がおとなしくそう言った後、控えめにレイチェルも挨拶した。

「レイチェル・アリスタです・・・」

 

二人の様子を見ながら、マックスはまた話し始める。

「では率直に言おう。彼女、エレナ・クレインはつい昨日の昼まではグロリアの味方だったんだ。」

 

これを聞いて、レイチェルが驚くのは当然だった。

 

「だがもう違う。俺達はそう思っている。詳しい事の成り行きは本人から話してもらおうか。」

マックスがそう言った後、エレナはレイチェルのほうを見て、自分の事をゆっくりと話し始めるのだった。

 

エレナがレイチェルに話をしている最中、マックスはジャックとディルのそばにいた。

「ジェイリーズにも呼びかけたけど、今日は用事でどうしても来られないみたいだ。」

「それでいないのか。残念だが、仕方ないな。」

ディルが本当に残念そうに言った。

 

「それで、ジェイリーズの埋め合わせはクレインを使う気か?」

ジャックが言った。

 

「むしろ彼女が主役だ。さっき言ったように、これから俺がやろうと思ってる事は、全てエレナ・クレイン次第なんだ。そして動くとなった時、彼女も俺達に同行してもらわないといけない。」

 

「今日はいったい何を企んでる?」

ディルは、マックスがいつにも増した真剣な表情だと感じたようだ。

 

「肝心の彼女も揃った所で話すよ。まずはレイチェルと仲良くなってもらいたい。どこか彼女の性格と似ている気がするんだ。」

「それを言うなら、ここにいる皆、似た者同士だろうよ。」

ディルの言ったことは、概ねうなずけた。

 

「もしかしたら、デイヴィック達の方も何か事情を抱えてるのかもな。」

ジャックが言った。

「だなぁ。俺達は皆、過去にデカいものを背負ってるんだ。そしてレイチェルは、そんな俺達のいざこざに巻き込まれてしまったということだな・・・」

 

マックスはエレナと話しているレイチェルを見た。

「でも、これ以上は関わらせない。その為にもこれから動くんだ。」

 

一方、レイチェルとエレナも会話が進んでいるようだ。

 

「あたしはグロリアとナイトフィストの事は何も知らなかった。だから、グロリア側の人間でいることに未練はないわ。今は新しい居場所があるから。」

 

エレナが本心を語っていた。そして彼女が喋る言葉に、レイチェルも同感するかのように・・・

「あたしも、全く知らなかった世界なんです。ただ知らないうちに関わってしまってただけだから、あなたの言ってることはよくわかります。それに、あたしもずっと一人だったから・・・あなたの気持ち、よくわかります。」

 

レイチェルの言葉に、エレナは少しずつ親近感を感じた。

 

「やっぱり、皆似てるんだ。あたしだけじゃなかった。」

彼女の緊張した表情は消え、もはやマックスのチームこそ、自分にとって最善の居場所だと思い始めたのだった。

 

「さて、話は終わったかな。」

マックスが二人に近づいた。

 

「うん。本題に入るのね。」

エレナが言う。

「ああ。今日、俺が考えた事だ。そして君の決意が鍵になる。」

 

マックスは皆を見渡し、ここへ皆を集めた本題を話し始める。

「じゃあ、まず俺が思った事を言うと、ここはもう安全とは言えないかもしれないってことだ。」

「いきなりどういう事だよ。」

ディルが言った。

 

「昨日わかっただろ、俺達の知るテンペストがグロリア側にいると。あいつはここを知ってる。だから来ようと思えばいつでも来れるんだよ。」

「ああ、俺もそれが気になったんだ。」

ジャックが言った。

 

「えっと、テンペスト・・・?」

レイチェルは、マックス達が昨日ここで新事実を知ったことを知らない。

 

「レイチェルにも話しておこう。テンペストって奴はナイトフィストだと思っていた、俺達をここに招いた人間だ。そしてつい昨日、俺達が学校に仕掛けた魔法の監視カメラに、ある決定的な映像が映ってな。」

「それがなんと、テンペストがグロリアの仲間だったっていう証拠映像なんだよ。」

ディルが続きを言った。

 

「つまり、そのテンペストという男が、俺達を襲いにここへ来ることが可能というわけだ。」

マックスは、その表情からレイチェルの驚きようがよくわかった。

 

「これを伝えたかった。レイチェルにな。」

「あたしに・・・」

「ああ。何せ、君は俺達の戦いには何の関係もない、ただの被害者だ。これ以上危険な世界に引き込むわけにはいかない。だから安全だと確定できるまでは、ここと公園には近づかないほうがいい。今日は話を聞いてもらう為に来てもらったが、今日以降は敵の手の届かない所にいてもらいたい。」

マックスの言葉に、ジャックとディルがうなずく。

 

「君はこれ以上こっちの世界に関わってはいけない。」

「でも、君と俺達はずっと仲間だ。それは変わることはないから心配はいらないぞ。」

ジャックに続いてディルが言った。

 

レイチェルは彼らの顔を見つつ、口を開いた。

「・・・ありがとう。気持ちは嬉しいわ。でも、あなた達はどうするの?」

 

「テンペストを拘束するつもりだ。奴が行動できなければ、ここにグロリアの人間は現れない。それまではテンペストに注意しながらここを護る。」

 

「ならばあたしも一緒に護る。ここはあたしのお気に入りの場所でもあるんだから。」

レイチェルが真剣な眼差しで言う。

 

「君まで危険を冒す必要はない。ここは俺達に任せるんだ。あくまで、君はグロリアの生徒に操られていた身なんだから、君が一番狙われる危険性が高い。」

 

マックスが必死に説得すると、続けて二人も・・・

「俺もマックスと同じ意見だな。君が俺達と同じ領域に肩を並べて、同じく危ない目にあうのをスルーするわけにはいかないよ。」

「そういうことだ。だから、君の気持ちだけありがたく受け取っとくよ。大丈夫だ。ここは俺達が必ず護る。俺もここが気に入ったからな。」

 

ジャック、ディルがそう言うと、再びマックスが話しだした。

「それに今後、俺達に仲間が増えるかもしれない。」

「おい、本当かよ!」

ディルがいち早く反応する。

 

「それについてが、今日一番話したい事だ。」

すると今度はエレナの方を向いて・・・

「デイヴィックとリザラ、そしてロドリューク達の事を詳しく教えてくれ。それと君達に与えられていた任務についても、全てだ。俺達はこれから君の言葉を信用するしかない。それが現状を大きく動かす鍵になると、俺は思っている。」

 

マックスの言葉を聞いている周りの皆は、彼が今、何を考えているのかよくわからなかった。

 

「だから本当の事を話してほしい。君を悪いようにはしない。お互い、裏切りはなしだ。」

 

彼の言葉に、エレナは何かを決意したように言った。

「・・・わかったわ。あたしは、あなた達はもう仲間だと確信した。お互い、隠し事は無しね。」

 

「ああ、わかった。じゃあ、まずデイヴィック・シグラル達がどういう人間か、教えてくれ。君が一緒にいて思った事でもいい。どんな感じだ?」

マックスが言った。

 

「デイヴィックはリーダーらしく、うまく皆をまとめてたと思うわ。優しくて、任務にも忠実だった。あたしには良い人に見えるけど・・・」

「なるほど。根は良い奴か・・・そういえば、親は元グロリアと言ったな。元ってことは・・・」

マックスは昨日のエレナの話を思い出す。

 

「今はいないわ。昔、とある任務で父親が亡くなったとだけ聞いたわ。リザラの親も同じよ。ロドリュークの親はグロリアを裏切って逃げ出したと聞いてる。」

「そうだったのか。それでグロリアの味方になったわけだ。俺達と同じようなもんだ。」

 

「それじゃ、あなた達も・・・」

エレナが聞きにくそうに言う。

 

「まあ、そういうことだな。彼らと俺達とは、組織に入ろうとする理由が同じようだ。それで、デイヴィックとリザラ・クリストローナは今でも本気でグロリアになるつもりなのか?君と最後に会った時、何か言ってなかったか?」

マックスは何かを探ろうとしている。

 

「正直、よくわからないわ。ただグロリアに反対するなら、あなた達と出会えば助けてくれるだろうって言われた。」

「どっちとも言えないか・・・まぁ、少なくとも仲間想いだということはわかった。昨日、鏡で聞いた会話からも、君の事をかばおうとしているのは伝わった。そしてクリストローナの方も、シグラルと考えは似ているのだろう。」

マックスは、気が強そうなブロンドの魔女の姿を思い浮かべた。

 

「口数が少なくて、感情を表に出さない人だから最初はちょっと近づきにくいと思ってたけど、彼女も仲間を大切にする人だと思うわ。」

「わかった。そして君とロザーナ・エメリアはこの世界に関係が無かったと・・・・すると問題は、彼女を連れ去ったロドリューク・ライバンだな。」

 

すると、エレナが彼について話し始めた。

「ロドリュークは強さに憧れているだけよ。力と権力を手にするためなら仲間も見捨てるような男だとわかったわ。皆彼から離れたから、ロザーナだけでも服従の呪文で従わせようというのね・・・・」

 

「服従の呪文だと?」

マックスは、探している黒幕がゴルト・ストレッドを服従させていた件を連想した。

 

手口といい、エレナの言うロドリュークのイメージから考えると、黒幕の正体が彼ではないのかという思いが出てきた。

ならば、ロドリュークは魔光力源の場所を知ってることになるのだが・・・・

 

「あいつも魔光力源の場所を知らないんだったな?」

「そうね。間違いなく皆知らないわ。」

「そうか・・・嘘をついているということはないかな。」

マックスはロドリュークが黒幕だという可能性を無視できないようだ。

 

「それはわからないけど。何でそんな嘘をつく必要があるの?」

「もしかしたら、君達も会ったことがないという、魔光力源を発見した例の生徒の正体じゃないかと思ったんだ。」

これにはジャック達も反応する。

 

「なるほどね。確かに人物像が重なるような気もするが・・・となると、ライバンが以前からセントロールスに潜入していたということになるぞ。」

ジャックの言う通り、その部分を解決しないといけない。

 

「彼が噂の生徒の正体っていうのはないと思うけど。」

エレナは言った。

「ロドリュークが一人でマグルの町に出て行ってた様子はないわ。それに、あたし達に隠す理由がないわ。あたし達はテンペストから、魔光力源の確保を指示されていたから、むしろ一人で隠れて動くのはありえないわ。」

 

「それは、確かにそうなるな・・・・あいつは関係ないか・・・」

マックスは話を戻すことにした。

「よし、この件は後回しだ。じゃあ次は、君達に与えられた魔光力源探しの任務についてだ。テンペストは、具体的に何をする為だとか言わなかったかな?」

 

「グロリアが昔から求めている物・・・とだけ言ってたわ。あたし達も、それがどんな物なのか知らないわ。」

エレナは答える。

 

「なるほど。探させるにも与えた情報が少なすぎだな。あの男は何を考えているんだ?」

「それはむしろこっちが聞きたいぐらいよ。最近では、デイヴィック達もテンペストの指示に疑念を感じていたように思うわ。」

「そうか。君達五人とも、あの男には何かしら理解できないものを感じていたか。」

 

彼女の話から察するに、テンペストはエレナ達に指令を出して、駒として使っていただけではないかと思われた。

 

「彼らの事はこのぐらいで良いだろう。君の話からすると、どうもテンペストは君達を道具としてしか見ていなかったように思える。このまま奴に良いように使われ続けた最後は、何が待っているかな・・・正式にグロリアの団員として迎え入れられる?それとも捨て駒か?」

マックスはエレナの本音を引き出させようと迫る。

 

「そんな・・・あたし達は、最初から使い捨ての道具だったって言うの?」

 

「君も薄々感じてはいなかったか?君達のリーダーが感じているように。」

そして彼は最後の質問をする。

「そこで、君の本当の気持ちを知りたい。」

「あたしの・・・気持ち?」

「ああ。君の意思次第でこれから俺達が何をするかが決まるんだ。」

 

エレナを一直線に見て、彼は続けた。

「ずばり、君は彼らをどうしたい?」

 

一瞬その場は静まり、またすぐにエレナが口を開いた。

「どうしたい・・・・それは・・・」

「正直な気持ちだ。君がデイヴィック達、そして仲のよかったロザーナ・エメリアをどうしてやりたいんだ?」

 

そしてエレナは迷わず答えた。

「それは、危険な状況から救ってやりたい。あたしの仲間だから。」

 

彼女のその言葉を聞いて、マックスは安心したのだった。

「決まったな。じゃあテンペストの手中から引き離してやろうじゃないか。」

「でも、そんな簡単に決めていいの?デイヴィック達と出会えば、きっと攻撃してくるわよ。」

「言っただろ、これからやる事には君の決意が鍵だと。君が彼らを大切に想っているように、シグラル達も君の事を想っているはずだ。だから、君が交渉人になってほしい。俺達と協力してテンペストをねじ伏せる為に。」

マックスが、いよいよ自分の考えた事を話しだした。

 

「君の心からの言葉ならば、彼らに届くはずだと思うんだ。」

「あたしに出来るかな、そんな大役。」

「君にしか出来ないだろ。彼らが君が思っている通りの人間なら、絶対に無視できないはず。そうすればシグラルとクリストローナと協力し、エメリアを救うことも出来る。仲間が多くいれば、出来る事も増える。」

マックスはエレナの決意を促す。

 

そして彼女はというと、もう答えは決まっているようだった。

「わかった。やるわ。そして皆でロザーナを救うと約束して。」

「ああ。必ずロドリューク・ライバンの元から引き離そう。その為にも、まずはシグラル達と会って、しっかり話さないと。うまくいけば、皆が救われると信じる・・・」

 

その後も、マックス達の会話はしばらく続いた・・・・

 

 

そして夕方、事は起こる。

 

相変わらず、警官隊しかうろついてないセントロールスの校内にて、あの二人が動きだしていた。

 

「 しかし、本当にデカい建物だよな。最初来たときは魔法学校かと思ったもんだ。」

「そんなこと、今は関係ないわ。」

デイヴィックとリザラが廊下を歩きながら、小声で話していた。

 

「いつも通り、クールだなお前は。」

「やるべき事に集中してるだけよ。」

 

彼らが歩いている所は旧校舎の廊下だ。そして目的の場所はおそらく六階・・・立入禁止を命じられた廊下だ。

 

旧校舎の警備が皆無なのは、テンペストにより警備責任者がマインドコントロールされているせいだろう。

お陰で彼らもまた行動しやすいようだ。

 

そんな順調に目的地へ進んでいる二人の様子を、マックス達が仕掛けたボーラーが高くから見下ろしているのだ。

 

そしてマックスは今・・・

 

隠れ家の片隅のソファに座り、携帯電話を手にしていた。

「というわけだ。何かあったら詳しくは後で伝える。じゃあ、また・・・」

彼は会話を終え、電話をしまった。

 

「ここでした話の内容を簡単にジェイリーズにも伝えておいた。」

「了解だ。それにしても、彼女が俺達の作戦に参加しないってのは、今となっては珍しいよな。」

ディルがテーブルの椅子に座って、鏡を見ながら言った。

 

「ジェイリーズにも外せない用事はあるさ。無理に付き合わせる事はない。そもそも、今日の作戦は俺の思いつきだしな。」

「でもなかなか良い考えだと思うけどね、俺は。ずいぶん思いきった事だけど、成功すれば確かに現状は変わるな。」

ジャックがこちらに歩いて来ながら言った。

 

「これは賭けだ。結果が俺達にとって良いものになればいいんだが・・・そうでなければ困る。」

そう言いながら、自宅から持ってきたバッグの中から読みかけの本を引っ張り出した。

 

「ん?それは懐かしいな。」

ジャックは、マックスが開いた本のタイトルを見てそう言った。

 

それは『Knight of Wizard』だった。

「俺も昔読んだな。まさかお前も持ってたとは知らなかった。」

「なんだか急に思い出してな。そしてこれを読み返してるうちに思いついたんだ。今回のミッションを。」

「まさか、お前があの主人公に憧れてるのか・・・」

ジャックがそう言った時、鏡を触っていたディルが飛び上がった。

 

「おい、皆!二人がいたぞ!」

「早速現れたか!」

マックスは本を持ったまま、急いでディルが持つ鏡を見に行った。

ジャック、エレナ、レイチェルも近寄った。

 

するとそこには、旧校舎の廊下を歩くデイヴィックとリザラの姿が映っていたのだった。

「また必ず旧校舎に現れるとは思っていたが、早かったな。」

そしてマックスはエレナを見て・・・

「その時が来た。準備はいいか?」

 

エレナは力強くうなずく。

「うん。行くわ。」

「よし。悪いが、レイチェルは連れて行くことは出来ない。」

「わかってるわ。気をつけて・・・」

レイチェルがそう言った後、彼らは行動を起こすのだった。

 

だがデイヴィック達の行動を見ているのは彼らだけではなかった。

 

デイヴィックとリザラが旧校舎六階の、立入禁止区域に近づいたとき、"彼"のボーラーにもこの光景は映っている。

そして今まさに、その光景を鏡越しで彼は見ていた。

 

「あの少年達、現れるとは思っていたがこうも早いとは・・・自我だけは大したものだな。」

その男、テンペストは二人が六階廊下を歩いている光景を見ている。

 

突如、彼の背後から静かに現れる何者かが一人・・・

「彼ら、デイヴィック・シグラル達が現れたようね。」

 

その声に反応し、テンペストは振り向いた。

「君だったか。ああ。どうやらあの二人には、もう使い道はなさそうだ。警告を無視して来たのならば、まとめて片付けるとするか。」

 

そして鏡の前から離れようとした時に。

「そうだ、マックス・レボット達の事はあたしに任せてもらえるかしら?」

「いいだろう。だが、なぜ今言う?」

テンペストが言った。

 

「彼ら、もうそろそろ大きな事をやるかもしれないから。」

「そうか。ならばその件、君に任せた。」

そう言い残して、テンペストは部屋から出て行くのだった。

 

その暗い部屋には一人の少女だけが残っている。

 

「そろそろ、黒幕と呼ばれるのも終わりかしら・・・」

 

 

 

 

 




次話
第二十二章 正体 (予告)

デイヴィックとリザラの前に現れるテンペスト。
更にその場に到着するマックス一行・・・

彼らがこのタイミングで出会したのは幸か不幸か。

そして今回、ついに黒幕と呼んでいた人物の正体が明らかになる。



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