Outsider of Wizard   作:joker BISHOP

28 / 39
新章-第四幕 推測者たちの談話

デイヴィック、リザラ、エレナ、ロザーナの四人は今、時計塔の裏にてサイレントとザッカス達と向かい合っている。

 

そして彼らの言葉で一つの事実が明らかとなった瞬間だった・・・・

 

「あのサウスコールドリバーの事件から今まで、ナイトフィストは被害を受けた子供達を監視してきたとは・・・」

デイヴィックが言った。

 

「それも、魔法界だけじゃない。あのマックス達がマグル界にいる訳だね。」

続いてエレナが言った。

 

「いずれはグロリアが勢力を拡大させることはわかっていた。だから我々も入念に計画を練って将来に備えなければと思ったんだよ。」

ザッカスの隣に腰かけている男、マルスが話し始めた。

 

「サイレントは特に、当時から仲の良かったギルマーシスの息子の事を気にしていた。だから、彼がマックスを見守っているのではないかとは思っていたんだ。やはりそうだったな。」

彼はサイレントを見て言った。

 

「もちろんだ。ギルマーシスと約束したからな。彼を護ると。」

 

すると、デイヴィックが思いついたように口を開いた。

「そうだ、父親とあなたが旧友だってことをマックスは知ってるのか?」

 

次に、サイレントは若干ためらった言い方をした。

「いや・・・知らないはずだ。まだおしえてないなからな・・・」

 

「ならば言ってやるべきだろう。あいつも、自分の親と親しかった人が生きていて、しかもあの惨劇の後からずっと気にしてくれていたと知れば喜ぶはずだ。」

デイヴィックは、最近落ち込んでいたマックスが元気になる姿を想像して言った。

 

「そうだろうな・・・彼らはナイトフィストによってあの学校へ導かれた事に関してはいずれ伝える。だがマックスの親と私の関わりについては、言う気になれないんだ。訳は言えんが・・・」

 

「さぁ、この話はこの辺で終ろう。それより大事な話はまだある。今後の連携活動を考えていきたいと思っていてな。」

横からザッカスが割り込んだ。

 

「連携・・・と言うと、俺達も正式にナイトフィストの活動を?」

デイヴィックが身を乗り出して言う。

 

「そういうことだ。君らのやる気はもうわかった。ならば早速実践させていいだろう。魔光力源の事もある。そこで、共に調査してもらいたいんだよ。」

 

これにデイヴィックは即答だった。

「もちろんだとも。そういうのを待っていたんだ!」

 

「決まりだな。では早速、最初の作戦会議を行うかな?]

 

ザッカス達とデイヴィックのチームがより団結していく最中、一方では再び気を取り直したチームリーダーが活動を再開したのだった・・・・

 

 

その少年、マックスは今隠れ家にいる。

そしてジャック、ディル、ジェイリーズと共にテーブルを囲んで座っていた。

 

こんな風に、公園下の小さな空間に四人が集うのは久しぶりの光景だった。

 

「急な呼び出しに応じてくれてありがとう。まずは言いたい事がある。」

マックスが話を始めた。

 

「俺達が探していた黒幕がレイチェルだとわかって以来、俺はチームの活動を・・・皆を放っていた。リーダーの俺が、情けないことだ・・・本当にすまない。」

 

彼は他の三人をそれぞれ見て、切実に謝るのだった。

そしてそんなマックスの姿を見ながら、ディルが最初に言葉を返した。

 

「別に、俺達の事は大して気にしなくていいぜ。チームの事は全てお前が決めていいんだ。そうだろ、リーダーはお前だからな。」

 

「そうねぇ。それに、あなたが悩みこむ体質だってことは皆が知ってるわ。だからそれで怒るほど、あたし達は仲の浅い関係ではないでしょ?」

次にジェイリーズが口を開いた。

「だからせめて、無視はしてほしくないわね。」

 

「それは同感だな。俺が言うのも何だけどさ、もっと俺達に頼っていいんだぜ。何かあったら遠慮はいらん。何でも言ってくれ。」

ディルが言った事にジャックとジェイリーズがうなずいた。

 

「また俺の悪い所が出ていたようだな。でもそれはこれで終わりだ。もう皆を忘れないぞ。もう俺は一人じゃない。既に最高の仲間達がいるということをしっかり自覚したぞ。」

そう言うマックスの表情は、もういつも通りの鋭い眼差しに戻っていた。

「そこでだ。早速チーム活動を再開したくて集まってもらった。」

 

「それでこそリーダーだ。やっといつものチームらしくなってきた!」

ディルの嬉しさは、あからさまに伝わった。

 

「でもこれと言ってやる事が決まってるわけじゃないんだ。だから皆で決めようと思う。」

 

「ならば提案がひとつある。」

すぐに口を開いたのはジャックだった。

「まず今までに起こった事や俺達がやってきた事に関して、わかっている事とわからない事を整理しないか?」

「いい考えだ。一度、頭を整理しておこうじゃないか。」

 

そしてマックスは、三人の顔を順番に見た。

「じゃあ、今俺達の身にふりかかっている事の始まりから順におさらいしていこう。」

 

それから彼らは、自分達が魔法使いの二大秘密組織の紛争に関わることとなったあらゆる出来事を思い出しながら、一時の間語り合ったのだった・・・・

 

14年前、サウスコールドリバーで起こった戦争の被害を受けた同級生四人がセントロールスに集まり、そして仲間となって時々遊んでいた頃の事・・・

やがて高校二年目の夏に、長らく計画していた『学校内全システム書記』強奪作戦を実行してから運命が急加速し始めてからの事・・・

 

これら一連の出来事を軽く振り返っただけでも、いまだにいくつかの謎が残されていることを再認識できた。

 

「やっぱり、まずは俺達がそろってセントロールスに入学してるってのが奇妙だよな。」

ディルが言った。

 

「まずそこだな。前にも一度聞いたと思うが、今一度セントロールスに入学した動機を確認したい。ちなみに俺は、引き取って育ててくれた親戚のテイルからの軽い提案にのったのが理由だ。本音を言うと、行きたい高校なんて考えてはいなかった。」

 

マックスに続けてジャックが・・・

「俺も同じく。で、どうせならマックスと同じ所に行きたいと思った。理由はこれが全てだな。」

 

「俺もまた同じく。高校受験の事を考えてなかった俺に、親がセントロールスが良いって言ったんだよ。それでダメ元で受験して受かっちまったんだな。」

 

「あたしも同じ。でもあたしの場合は受験さえせずに入学してる。」

 

そしてまたマックスが話を進める。

「そういう事だな。特にジェイリーズの場合は有り得ない事が起こっている。そうなるともしかしたら・・・いや、恐らく俺たちの受験そのものにトリックが仕掛けられていたのかもしれない。」

 

「俺も、そろそろこれには第三者の介入があると思わざるを得ないと思うね。そしておおよその推理は出来ると思わないか?」

ジャックの言うことがマックスにはピンときていた。

 

「それについて、今から言いたかったんだよ。皆、なんとなく想像出来るんじゃないのかと思う。俺達がグロリアの宿敵となる側につく可能性を大いに持っていて、かつそんな俺達がマグル界に移り住んだ。そもそもこの時点で何かしら意図が動いていたんだろうと・・・」

 

「あたしも、一つ答えは出てるわ。」

「俺もだぜ。多分。」

ジェイリーズとディルが言った。

 

「まず、共通する過去を持つ魔法使いが同じマグルの街、バースシティーにやって来ている事実から考えるべきだった。意図は14年前の戦争直後から動いていたと考えられる。」

マックスの頭は、久々に論理思考を活発化させる。

 

「そうすると同じ学校に集まっている理由と、そうであることで得する者達も自然とわかってくるな。」

マックスが話した後、他の三人は互いに見合ってうなずいた。

 

「もうわかったな。こんな事、答えは一つしか思いつかない。セントロールスに入学した事、そもそもこの街にいる事も、全てナイトフィストが仕向けたと考えることで納得がいく。」

「同じこと考えたわ。でもそうなると、一つ疑問が浮かぶわ。」

ジェイリーズの言葉に、ジャックがいち早く答えた。

 

「ナイトフィストが親や親戚を操って、俺達をこの街に連れて来させたりセントロールスに入学させたりしたのか・・・そんなところかな?」

「そう・・・よ。」

ジェイリーズが言葉をつまらせながら言うと、マックスがすぐに別の意見を言った。

 

「あるいは操られてなかったとするなら、俺達の身内もナイトフィストの仲間だと考えることができる。信じられないがな。」

「おい、そんなことがあったら驚きだぞ。」

ディルはそう言ったが・・・

 

「いや、その可能性はあっておかしくないかも。確かに驚きの事実かもしれないけど、逆に親からしてみれば、俺達の今の状況を知ればそれこそ驚きの事実だろう?」

ジャックの言い分は、確かに正解だった。

 

「その通りだ。俺はむしろその可能性が一番なんじゃないかと思えてきた。身内は皆グロリアから被害を受けたんだ。ナイトフィストに協力する理由はあるし、このイギリスの一番端にあるバースシティーに逃げて身を隠し、時が来たらセントロールスに集めて実際に組織の人間と接触させた。」

 

「なるほど。それがサイレントって訳だな。」

ディルもマックスの考えに追いついたようだ。

 

「とにかく、次にサイレントに会った時にはっきり聞いてみるべきね。事実を話さないかもしれないけど。」

 

「問い詰めるさ。お互い、もう隠し事をしてる場合ではない。何の為にもならないから。」

マックスはそう言って、この話題から離れることにした。

この時自分が言った言葉が、とある気になる事に引っ掛かったのだった。

 

もう隠し事はなしだ。気になる事は、仲間ならば全て言うべきだ・・・

 

ある事を思いついたマックスはさっそく話し始めた。

 

「そうだ。ちょっと聞いてほしい事があるんだ。」

「なんだ?何か最新情報でもあるのか?」

ディルが早速興味を示した。

 

「いや、これはあくまで個人的に気になっていた事だ・・・そして最近、ひとつわかったんだ。」

「遠慮せずに言ってみろよ。個人的な話をするのはお前としては珍しい事だからな。」

「かもな。じゃあ聞いてもらおうか、俺の見た夢の話を。」

「夢・・・?」

「夢だけど、たぶん事実だ。そんな気がする・・・」

 

マックスはつい最近見た、自分にとって最初で最大の悲劇の光景を鮮明に覚えていた。

これまでほとんど忘れていた記憶も、なぜだか夢の中で思い出した。

これが真実だという確かな根拠があるわけではない。

しかしマックスの予感は、もはや能力。

故に日頃の悪い予感も実際に起こる確率は高い。それはチームの皆が知っていることだ。

 

ともあれ今は特に何の役に立つかはわからないが、気になる夢の事は伝えておいたほうが良いと感じたのだった。

 

「それは、俺が家族を失ったあの日の夢だった。やけにリアルな感覚だった・・・」

「それって、14年前の・・・」

ジェイリーズが言った。

 

「なぜだかな、今になって夢で思い出すことになるとは・・・でも思い出したのは嫌な記憶だけじゃないんだ。」

 

マックスは夢の終わりに見た、自分の前に立つ人物のシルエットを頭に思い浮かべながら続ける。

 

「あの時、俺を救ってくれた人間がいたことを微かに覚えていたんだけど、その姿を夢で確認することができた。」

「誰かが前に立っていた・・・って話は前に聞いてるわ。」

ジェイリーズが言った。

 

「その人物の事だよ。夢でも鮮明には見えなかったけど、大体わかる。黒い服を着て長い棒状の物を持っていた。それは魔法の杖より太くてはるかに長い。そして肝心の顔は、仮面で全くわからなかった。」

 

「ちょっと待てよ、その黒衣に仮面の人物はあくまで夢に出てきたってだけだろ?本当に夢で見た通りの人間じゃない可能性のほうが考えられないか?」

ディルは確かに最もな事を言ったが、すぐ後にジャックは付け加えた。

「普通ならば・・・な?」

 

「まぁ、マックスには俺達に無い、ちょっとした余地能力的なのはあると思うぜ。でも今回は自分でもよく覚えてない過去の光景だぞ。」

「その光景を今のタイミングで見た、ということ自体にも意味がありそうだと思わないか?」

ジャックが言った。

 

「じゃあ意味があるとしたら、どういうことなんだ?」

「例えば、近いうちにその謎の人物が現れる。それを予期して見た夢という考え方もある。」

 

「ジャックの言う通りの事が起こるかはわからん。ただ、これは無視できない重要な夢のように思えるんだ。」

マックスが言った。

 

「とにかく、今は断定できる手段はないわ。でもマックス本人がここまで言うからには、あたしもただの夢とは思えない。マックスの予感がよく当たるのは皆知ってるでしょ?」

 

「他にも、最近になってから不思議な力を発揮したことは忘れてないだろうな?」

ジャックが何の事を意味しているのかは、皆すぐにわかったようだった。

 

「ああ、あの時のなぁ・・・何の魔法か結局わからないままだろ。」

ディルが言う。

 

「俺もよくわからない。自分なりにサイレントからもらった本を調べたけどな。そもそも使おうと思って出た力でもない。」

マックスが言うその力とは、まだデイヴィック達と敵対していた頃、ピンチになった時に突然発動した、あの赤いオーラをまとった魔力のことである。

 

マックスの強い感情による影響だと思われるが、自発的ではなく記憶も無いあの魔法が何なのか全くわかっていない。

それもあの時一回発動したきり、現在に至るまで再発はしていない・・・

 

マックスは今一度、当時の感覚を思い出してみた。

 

あの時はどんな状況だったか・・・その時感じた感情は・・・?

 

相手の方が圧倒的に有利な状況・・・一方こっちは、俺以外は戦闘不能だったっけな。

正直、それまでに感じたことのない危機を感じた。

仲間が失われるかとも思った・・・

 

だが一番は、自分の無力さへの怒りか。

そして今、重要な事を思い出した・・・・

 

「そうだ。あの時に声が聞こえたんだ。まだ皆には言ってなかったかもしれない。」

「初耳だな。声って、誰のだ?」

ディルが言った。

 

「わからないんだ。ただその声と台詞は夢で聞いたことがある。あの力が発動した日の一週間前ぐらいに見た夢だったな。」

 

ジャック、ジェイリーズ、ディルは顔を見合わせた。

「おい本当かよ・・・その時も夢が関係してたのか。」

「それでその声は何と言ってた?」

ジャックとディルが立て続けに喋った。

 

「たしか・・・自分の判断にゆだね、全てを動かせ。そして覚醒しろ。みたいな感じだ。」

「いかにもな台詞ね。その夢で聞いた声が、あの力が発動した時にも聞こえたというわけね。」

「確かに頭の中で響いていた。その時から周りの事は何もわからなくなった。前にも言った通り、力を使っている時の記憶もない。ジャックから起こされるまでな。」

 

この他にも、これまでの出来事をちょっと思い返せばわからないことはいくつも出てくるものだ。

 

道具として使われて消されたゴルト・ストレッドの正体は・・・そもそも、ナイトフィスト側に関係する子供だったか?あるいは本当にグロリア側か?

それともどちらでもないのか・・・?

これは本人がいない今、なかなか確認できそうにない事だ。

 

だが確認できることもある。

それはサイレントが魔法関連の教材を贈ってくれた時の謎だ。

 

本とともに添えられた紙切れのメッセージの内容には引っかかる点が一つあった。

メッセージを読めば、サイレントは『魔術ワード集』をマックスが持っていたことを知ってるようだったが、それは一体いつどこで知ることが出来た・・・?

 

これは今度サイレントに会った時に聞くといい。

そして自分の正体不明の魔法についても、隠し事は無しで伝えるべきだろう。

 

あとは、わりと最近になって起こった三人の警官の事件は大きな謎だ。

 

セントロールスにて、ゴルト殺人の調査を行っていた警察官の一人が死亡。更に二人が何者かの攻撃を受けて怪我を負い、その後行方不明となる。

そしてこの三人とも、その場にいた他の警官や警察署の人間から全く知られていない、身元不明の人間だったという。

なんともおかしな事件だ・・・・

 

そして極めつけは、何と言っても魔光力源関連の謎だ。

 

第一魔光力源がセントロールスの地下にあるという事実はもちろん、学校の本や図書室にヒントを残した人物とその意図。

 

あとは魔光力源とレイヴカッシュなる発明家の関係性と、フィニート・レイヴカッシュという呪文の出所。

 

まだまだ謎は多いということだ・・・

 

マックス達の会話はその後も続いた。

そして一区切りが付いた後の事だった・・・・

 

とりあえず、久々に魔法の学習をすることに決めて、各自本を読んでいるところだ。

こうして彼らが大人しく本を読むという光景も、今や様になっていた。

 

マックスが『魔法全史』を読んでいると、彼の座るソファーの近くにジェイリーズが歩いてくるのがわかった。

 

「ああ、これを貸してほしいのか?」

マックスは自然にそう言って、読んでいた本を差し出した。

 

「いいや、そういうことじゃないわ。」

ジェイリーズの反応を見てマックスは首をかしげた。

 

「どうかしたのか?」

「別に何もないわ。ただ、元のマックスに戻って、チームもまた復活して良かったなぁ・・・なんてこと思ってね。」

 

その言葉を聞いて、マックスは彼女の今の心境を察したのだった。

彼女もまた、自分達と同じアウトサイダー仲間なのだから、このチームがどれだけ自身の支えになっていたかなど、今さら考えるまでもないことだ。

 

「ああ、なるほどなぁ・・・俺も、今日動いてみて良かったと思ってるよ。ジャックのおかげだ。」

「ジャックのおかげ?」

ジェイリーズが言った。

 

「そうさ。ジャックが家に来て俺を突き動かしてくれたんだ。だから俺は今日、立ち直ることができた。あいつはつくづくすごい奴だと思うよ。あいつはサブリーダーに決まりだ。むしろリーダーでいいと思うけど。」

 

「そうだったのね。ジャックというと、このチームができて最初の頃は、彼はいつもクールで言葉が少ないから感情が薄くて冷たい人だと思っていたわ。」

ジェイリーズは、窓際の椅子に腰かけて本を読んでいるジャックの後ろ姿を見ながら言った。

 

「でも今ではわかるわ。彼がチームの中で、一番感情が豊かで仲間思いの良い人だってね。きっと誰よりあなたの事を大切に思ってるわよ。」

「自分で言うのも何だが、かもな。」

マックスは小声で言った。

 

「でも、やっぱりリーダーはマックスじゃないとしっくりこないわ。」

「皆同じ事を言うんだな。」

「同じ思いなんでしょうね。」

「だったら、期待に応えないとな。」

 

すると、ジェイリーズとマックスが話している光景に気づいたジャックがやって来るのがわかった。

 

「お二人さんとも、良い雰囲気でなによりだな。」

「何?やきもちかしら?」

ジェイリーズは、にやけながらジャックに言った。

「いや、ただ素直に嬉しく思っただけで・・・マックスだって、またこうして今まで通りの感じで話してたからさ。」

「何をむきになってるんだ?」

マックスが普通に質問した。

 

「いや、むきにはなってないさ。」

 

するとジェイリーズがマックスの元を離れながら言った。

「せっかくチームが復活したんだし、一番仲良しのあなた達でたっぷりお話を楽しむといいわ。」

 

それからマックスとジャックは、何気なく同じソファーに座って言葉を交わすのだった。

 

「何だか、こういうのは久しぶりな気がするな。こうやって何気ない話をしてるのって。」

ジャックが唐突につぶやいたのだった。

 

「まぁな。最近余裕がなくなってたからだろうなぁ。気がつけば色んな事が起きて、どんどんグロリアと戦ってるという感覚が増してきたから、前みたいに楽しくのんびり会話するってのもなくなってた。」

マックスも、同じく落ち着いたテンションだ。

 

「今となって思うことがある。あの頃・・・魔法を使って時々夜中抜け出したり、イタズラしたり、暇な学校生活を何とか楽しくできないかと考えていた頃は、本当に平和だったんだなぁ・・・」

そのジャックの言葉は、まさにマックスも感じていた事だった。

 

そしてこの時、突然の携帯電話の着信音がこの場の静けさを破ったのだった。

 

「ん?皆そろってるのに・・・珍しくテイルからか?」

それはマックスの携帯電話の着信だった。

とにかくポケットから取り出して確認するなり、その名を再び見ることになるとは思ってもみなかった。

 

「レイチェルからだ・・・」

 

マックスは途端に、何かが起こる予感を感じたのだった。

 

そして同じ頃、ロンドンのとある場所で・・・・

 

 

遠くから車や人のざわめく音が聞こえるだけで、人の気配が全く無い場所に建つ二階建ての建物がある。

そしてその建物の玄関前に、今一人の人影が到着したところだった。

 

中の住人はすぐに気づいて扉を開いたようだ。

開かれた扉の中から顔を見せたのは、他でもないサイレントだった。

 

彼は目の前に立つ相手を見ると、迷いなく家へ招いたのだった。

 

「こうして会うのは久しいのぅ。」

その人物は老人のようだ。

 

「そうですね。わざわざお越しいただいて助かります、詩山(しざん)導師。」

サイレントがそう言うと、その老人はフードをとって顔を見せたのだった。

 

「詩山で結構。もうとっくに導師ではあるまい。」

その老人は日本人で、白髪と白ひげをたしなんでいた。

 

「いいや、私にとってはいつになっても導師ですから。」

「好きにするといい。それで、剣は?」

「ついて来てください。」

そして二人は歩きだした。

 

彼らは歩きながらも会話を続ける。

「それにしても変わっとるわなぁ。話には聞いておったが、ロンドンの辺境地で探偵をやっとるとは・・・それに、"騎士の拳"とやらに関してもなぁ。」

詩山という老人が言った。

 

「目覚めたということです。それにここは魔法使い専用。」

サイレントが言った。

 

「それも聞いておる。今の時代、魔法探偵業は世界各地に広がっておるらしいからのぅ。それもお前さんの影響か・・・」

「世間の情報をいち早く入手出来る効率のいい仕事ですよ。騎士の拳(ナイトフィスト)にとって重要な情報も。」

「そこにお前さんが求めている答えがあることを祈っとる。」

 

そして二人はとある扉の前で止まった。

「この部屋は長い間開けてない。あの時以来です・・・」

サイレントがスーツから鍵を取り出しながら言う。

 

「ならば、剣の使用は・・・」

「ええ、先日一度使っただけです。その時にうまく剣に魔力が届かなかった。」

サイレントは鍵を扉に差し込み回転した。

 

「魔導剣は術者と親密な関係になればなるほど強くなる。お前さんが剣を手放してから14年じゃ。剣の力が衰えてもおかしくはない。とりあえず見てみるとするかな・・・」

そして詩山はサイレントに連れられて、その開かれた扉の奥に入るのだった・・・・

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。