あまり気分が乗らず執筆が滞ってしまい申し訳ありません……。
今回の話は短いですが、書き上げた分だけ投稿します。
次回更新は他作品含めて未定です。
「
「ふん」
文字を刻んだ石を4つ、展開する。鋭利な刃のような風が駆け抜ける。しかし、その不可視の刃は一刀にて両断された。
「ッ、
「ぬるいわ」
さらに4つ。大きな亀裂が走り柱がせり上がる。けれど、それは体勢を崩させるには物足りない。
「
「ふははははははは!」
続けてもう一度、4つの石を眼前に展開。灼熱の塊が舞い上がる。だが、それすらものともせず、逆に大火を打ち返してみせた。
「僕の事おちょくってますよね?」
「今更よな!」
悪びれる素振りも見せず、逆立てた黄金の髪を揺らして男が笑う。周囲は天変地異でも起きたかと思うほどに荒れ、身綺麗な男とのギャップが激しい。脱力した少年の姿に手詰まりを察し、男は少年との距離をつめた。少年はじゃらりと様々な石をポケットから取り出すだけ取り出し、憤慨した様子を隠すでもなく頭を掻く。
「くそ……っ」
その様子が実に面白いと、男は更に笑みを深める。
「やっぱり、付け焼き刃のルーンだと弱いですね……」
「ルーン魔術は門外漢であるが、
「頼んでも御教授願えない、ということですね。分かってます……」
「左様、であるならば……その様に頬を膨らませるな。栗鼠か貴様は」
「……誰のせいだと」
男の性格をよく知る者がこの場にいれば、きっと二度見をするか眼を剥くだろう。それほどまでに、男はいつになく軽快な笑みを浮かべていた。それもこれも、自らを召喚せしめた少年が、想像以上に仕上がっていたためだ。歳に見合わない口調はやや気になるが、その生まれを思えば些末事である。男――ギルガメッシュは漸く笑いを納め、波紋を一つ浮かべてその中に少年が持つ石を無造作に投げ入れた。そして少年を担ぎ上げ、自動修復の刻印が起動を始めた修練場を背後に、地上へと続く階段に足を掛ける。
「さて、これからどうするか」
かつん、かつん、と石階段を踏む音が反響する中、ギルガメッシュは少年に問いかけた。その口角は、答えを聞くまでもないと言わんばかりに愉しげに歪められている。故に、少年はあえて求められていないと思われる方の答えを紡ぐ。
「書庫に貴方の英雄譚があったと思うので、それを読もうかと」
案の定、その言葉にギルガメッシュは顔を顰めた。
「止めておけ、あのようにつまらぬものを読んだとて、貴様には何の益もあるまい。読むならば他の物にせよ」
「そうですか?最古の王の物語を紐解くのも、大変有意義だと思うのですが」
「我がつまらぬ」
やはり、求められていた答えとは違ったらしい。ギルガメッシュの傲慢な言い様に、少年は憮然としてため息をつく。こういった性格であることは
「……ギル視点の、話が聞きたい……かなぁ」
それは思うだけにとどまらず、自然と言葉となって零れ落ちていた。堅苦しい言葉遣いは崩れ、無意識に落とされたそれをギルガメッシュは拾い上げる。こくり、こくり、と船をこぎ始めた少年に視線を落とし、一瞬の思案の後口を開く。
「では、寝物語に我が臣下の話でもしてやろう」
「ああ、それは……」
かすれた声が何事かをいい終える前に、ふっ、と腕の中の重みが増した。しかし、それはサーヴァントであるギルガメッシュには苦にもならない、軽やかな重みで。
「ふ……聞かせてやろうと言ったそばから寝落ちるとは、不敬な奴よ。しかし、如何に精神が成熟していようと、体が幼ければそれに引き摺られるのも道理よな」
猫のように胸元にすり寄ってくる少年を抱えなおし、最古の王はそう独り言ちる。小さく、静かに、穏やかに。
「眠れ、異邦の子。貴様が挑むと定めた己自身、その道程はさぞ険しかろう。故に、今は眠れ。――――夢も見ぬ、深い眠りにな」
――――それは、ある秋晴れの日。少年が王を現世に喚び寄せてから、約半年が過ぎた頃の出来事だ。