Fate/story of color   作:破月

3 / 3
お久しぶりです、生きてます。
あまり気分が乗らず執筆が滞ってしまい申し訳ありません……。
今回の話は短いですが、書き上げた分だけ投稿します。
次回更新は他作品含めて未定です。


王と子

Kal Vas Xen Hur(風よ)

「ふん」

 

 

文字を刻んだ石を4つ、展開する。鋭利な刃のような風が駆け抜ける。しかし、その不可視の刃は一刀にて両断された。

 

 

「ッ、Kal Vas Xen Ylem(大地よ)!」

「ぬるいわ」

 

 

さらに4つ。大きな亀裂が走り柱がせり上がる。けれど、それは体勢を崩させるには物足りない。

 

 

Kal Vas Xen Flam(炎よ)!!」

「ふははははははは!」

 

 

続けてもう一度、4つの石を眼前に展開。灼熱の塊が舞い上がる。だが、それすらものともせず、逆に大火を打ち返してみせた。

 

 

「僕の事おちょくってますよね?」

「今更よな!」

 

 

悪びれる素振りも見せず、逆立てた黄金の髪を揺らして男が笑う。周囲は天変地異でも起きたかと思うほどに荒れ、身綺麗な男とのギャップが激しい。脱力した少年の姿に手詰まりを察し、男は少年との距離をつめた。少年はじゃらりと様々な石をポケットから取り出すだけ取り出し、憤慨した様子を隠すでもなく頭を掻く。

 

 

「くそ……っ」

 

 

その様子が実に面白いと、男は更に笑みを深める。

 

 

「やっぱり、付け焼き刃のルーンだと弱いですね……」

「ルーン魔術は門外漢であるが、(オレ)魔術師(キャスター)の素養もある。しかし、此度の召喚は弓兵(アーチャー)であるが故に」

「頼んでも御教授願えない、ということですね。分かってます……」

「左様、であるならば……その様に頬を膨らませるな。栗鼠か貴様は」

「……誰のせいだと」

 

 

男の性格をよく知る者がこの場にいれば、きっと二度見をするか眼を剥くだろう。それほどまでに、男はいつになく軽快な笑みを浮かべていた。それもこれも、自らを召喚せしめた少年が、想像以上に仕上がっていたためだ。歳に見合わない口調はやや気になるが、その生まれを思えば些末事である。男――ギルガメッシュは漸く笑いを納め、波紋を一つ浮かべてその中に少年が持つ石を無造作に投げ入れた。そして少年を担ぎ上げ、自動修復の刻印が起動を始めた修練場を背後に、地上へと続く階段に足を掛ける。

 

 

「さて、これからどうするか」

 

 

かつん、かつん、と石階段を踏む音が反響する中、ギルガメッシュは少年に問いかけた。その口角は、答えを聞くまでもないと言わんばかりに愉しげに歪められている。故に、少年はあえて求められていないと思われる方の答えを紡ぐ。

 

 

「書庫に貴方の英雄譚があったと思うので、それを読もうかと」

 

 

案の定、その言葉にギルガメッシュは顔を顰めた。

 

 

「止めておけ、あのようにつまらぬものを読んだとて、貴様には何の益もあるまい。読むならば他の物にせよ」

「そうですか?最古の王の物語を紐解くのも、大変有意義だと思うのですが」

「我がつまらぬ」

 

 

やはり、求められていた答えとは違ったらしい。ギルガメッシュの傲慢な言い様に、少年は憮然としてため息をつく。こういった性格であることは()()()()()が、いざ目の前にしてみると呆れるしかない。よくもまあ、優雅な紳士はこの男を召喚したものだ。更に言えば、あの外道神父はこの男と10年も一緒に過ごしていたというのだから、感服する。だが、ここでない世界の記憶を掘り起こしても、意味はない。ここにいるギルガメッシュは、()()()と同質ではあっても、同一ではないのだ。さて、では何をしよう。思考を切り替えつつも、疲れた体に伝わる振動が眠気を誘う。何とか意識を保ちながら、他にやっておくべきことはないかと思案する。叙事詩を読み解くのは、別段今でなくてもいい。むしろ、読み解くより本人に語ってもらえばよいのではないか。

 

 

「……ギル視点の、話が聞きたい……かなぁ」

 

 

それは思うだけにとどまらず、自然と言葉となって零れ落ちていた。堅苦しい言葉遣いは崩れ、無意識に落とされたそれをギルガメッシュは拾い上げる。こくり、こくり、と船をこぎ始めた少年に視線を落とし、一瞬の思案の後口を開く。

 

 

「では、寝物語に我が臣下の話でもしてやろう」

「ああ、それは……」

 

 

かすれた声が何事かをいい終える前に、ふっ、と腕の中の重みが増した。しかし、それはサーヴァントであるギルガメッシュには苦にもならない、軽やかな重みで。

 

 

「ふ……聞かせてやろうと言ったそばから寝落ちるとは、不敬な奴よ。しかし、如何に精神が成熟していようと、体が幼ければそれに引き摺られるのも道理よな」

 

 

猫のように胸元にすり寄ってくる少年を抱えなおし、最古の王はそう独り言ちる。小さく、静かに、穏やかに。

 

 

「眠れ、異邦の子。貴様が挑むと定めた己自身、その道程はさぞ険しかろう。故に、今は眠れ。――――夢も見ぬ、深い眠りにな」

 

 

 

 

 

――――それは、ある秋晴れの日。少年が王を現世に喚び寄せてから、約半年が過ぎた頃の出来事だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。