ハイスクールD×D 主人公に憑依してしまったドリルの男 作:パーシヴァルヴレイヴ
第三者side
駒王学園の校庭でイッセーとコカビエルの死闘が始まろうとしていた。
上空に佇むコカビエル、それに対し、地上に立つグレンラガン。
「……」
〈boost! boost! boost! boost! boost! boost! boost! boost!〉
イッセーは無言で拳を構え、腰を落とすと、
ドンッ!
一気にコカビエルとの距離を詰めた。
ギュィィィンッ
「ふんっ!」
螺旋力の帯びたドリルで貫こうとするが、コカビエルは光の剣を創造し、難なく受け止める。
「この程度か?」
キィンッ!
光の剣を器用に使ってドリルを弾くと、光の剣を横薙ぎに振るった。
「ちっ!」
横薙ぎをバックステップで避け、今度はドリルに螺旋力を溜めていくイッセー。
「ドリル…ブラスター!」
緑の光線をコカビエルへと撃ち放った。
ギュォォォォン!
「はぁぁぁ!」
ドゴォォォォン!
コカビエルは光の剣をしまった代わりに巨大の槍を創造すると、光線目掛けて投合し、威力を相殺した。
しかし、槍の投合後の隙を狙ったイッセーはウィングを展開し、先程以上のスピードでコカビエルの後ろに回り込んでいた。
「メテオスパイラルッ!」
右手に展開したギガドリルを背中に叩き込んだ。
「くっ⁉」
コカビエルもギリギリのところで横に避けることに成功し、その一撃は惜しくも空を切る。
イッセーの攻撃は一発では終わらず、間髪入れずにコカビエルを螺旋力を纏った拳で攻めたてる。
コカビエルも嵐のような連撃を冷静に対処していった。
「少し見くびりすぎたな」
イッセーが攻撃を繰り出した隙を狙うコカビエルの光の槍がイッセーに迫っていた。
「そんなもんで!」
イッセーは咄嗟に上に跳び、急降下に合わせて蹴りを繰り出す。
「イナズマァ…キィィックッ!」
「直線的過ぎるぞ、赤龍帝!」
コカビエルは光の槍を迫ってくるイッセーに向けて投合した。
ドカァァァン!
光の槍はイッセーに直撃し、爆発を起こした。
「やはり赤龍帝でも俺の相手ではな…」
しかし、
「おりゃぁぁぁぁ!」
煙の中から体中に炎を纏ったイッセーがコカビエルの元へと飛び出していた。
「何だとっ⁉」
先程の光の槍で決着がついたと思ったコカビエルは油断していた。
「燃える男の…火の車キィィックッ!」
ドゴォォォォン!
「ゴハァッ⁉」
イッセーの蹴りは見事にコカビエルの腹部を直撃し、コカビエルはその衝撃で地面へと吹っ飛ばされた。
それを上空から見ていたイッセーだが、
「ぐっ⁉」
(イッセー⁉ 大丈夫か!)
イッセーの体に軋むような痛みが走っていく。
無理やり禁手した副作用が今になって襲ってきたようだ。
「大丈夫だ、まだやれる…! それに…」
そう言って地面の方へと目を向ける。
「はっはっ! 面白いぞ、赤龍帝っ! 崇めるような主がいないにも関わらず、ここまでよく戦えるものだ!」
コカビエルは笑みを浮かべながら意味不明な言葉を口にしだした。
「何…言ってやがる?」
「……どういうこと?」
それを聞いたリアス先輩はコカビエルに問うと、
「お前達のような下々の者には真相が知らされていないのだったな。ならば教えてやろう……先の戦争ではな、四大魔王だけではなく、神も死んだのさ」
『⁉』
そのコカビエルの言葉を聞いたイッセーを除いた全ての者が驚愕した。
「知らなくても当然だ。神が死んだなどが人間どもに知れ渡れば、心の均衡も定めた法も機能しなくなる。故にその情報をどこにも漏らさないために、悪魔にさえそれを教えなかった。だから、この真相を知っているのは三大勢力のトップと一部の者だけだ。先ほどのバルパーは気づいたようだがな」
そう言ってコカビエルは、無残にも地面に横たわるバルパーの死体を見た。
「戦後、三大勢力は何処も疲弊状態だった。いずれの勢力も人間に頼らねば存続できない程にな。悪魔も同様だろう?」
コカビエルの衝撃の言葉の数々を放った。それによって、アーシアたちの絶望は計り知れないものとなる。
「そんな…! 主は…もういないのですか? それでは私たちに与えられる愛は……」
「そんなのがあるわけないだろう。今ではミカエルが神の使っていた『システム』を代わりに使っているが、それは神本人が使ってこそ真価を発揮するものだからな。どんなに信仰したとしても、貴様のように切られる信徒など腐るほどいるだろう」
アーシアの嘆きはコカビエルによってかき消され、アーシアはその場に崩れ落ちた。
「アーシアッ!」
急いで黒歌が介抱しているが、アーシアの瞳には光が見えない。
「嘘だ! 嘘に決まっている…そんな事があるなんて…」
別の場所でもゼノヴィアが力無く項垂れていた。
皆が負の感情に抑え込まれる一方だったが、たった一人だけは何も変わらなかった。
「それが何だってんだよ?」
「何?」
「テメェの信じる道をテメェのやり方で貫き通す…!それが俺の信念だ。例え神がいなかったとしても、俺は俺の為すべき事を成す…!」
「で、どうするつもりだ?」
「今、俺の為すべき事は、テメェのくだらない野望を叩き潰す…それだけだっ!」
「ふ、はっはっはっ! 自分の手で自身の運命を勝ち取るか…面白い事を言うな、赤龍帝。どうやら俺と気が合うらしい…故にお前を無くすのは惜し過ぎる。だからどうだ、俺と共に戦争へ身を投じようではないか。ここでお前の力を捨て置くのは勿体無すぎる」
そう言ってコカビエルはイッセーに手を差し出す。
「テメェの言ってる明日は、俺の信じる明日じゃねぇ」
そう言ってイッセーはゆっくりと拳を構えた。
「それが返事と言うわけか。なら…」
コカビエルは地面から一気に上昇し、
「貴様を生かしておけば、この先危険が伴う…ここで殺させてもらうぞっ!」
光の剣をイッセーに向けて振るった。
「こっちには時間がないんでね、さっさと決めるぜ!」
(こいつの話をしている間は何とかドライグが時間を抑えてくれていたが、これ以上時間を無駄には出来ない!)
イッセーは斬撃をしゃがんで避け、コカビエルの腹部に拳底を放つ。
「ふっ!」
コカビエルは拳底が当たる前に後ろへと下がって回避すると、持っていた光の剣をイッセー目掛けて投合した。
イッセーはそれを拳で叩き潰し、
「ダブルブーメランスパイラルッ!」
グレンブーメランとウィングが螺旋を描きながらコカビエルへと迫っていく。
「その程度の飛び道具など!」
コカビエルは光の槍を創造し、迫ってきた二つを弾き返す。
「ドリルブラスト…!」
ブーメランを囮に、コカビエルの上へとイッセーは瞬時に移動し、螺旋力をドリルの先端に集めて構えていた。
「食らえっ!」
ドリルをコカビエルの脳天目掛けて振り下ろした。
「この程度で反応が遅れるとでも思ったか!」
コカビエルはすぐに槍を上へ構えてドリルを弾いた。
弾かれたイッセーはすぐに態勢を立て直し、
「ドリルトルネード!」
ドリルの回転を用いて竜巻を巻き起こした。
「くっ⁉」
発生した竜巻に巻き込まれたコカビエルは態勢を整えられずに身動きが取れなくなってしまう。
そこを見逃すはずもなく、
「スカルゥ…ブレ…」
距離を詰めて、技を放つイッセー。
〈reset!〉
パキィィィィン!
「なっ⁉」
ドリルに溜まった螺旋力が消えていき、グレンラガンも解除されてしまう。
「まだ三分経っていないぞ⁉」
イッセーは動揺を隠せずにいた。
「何をボーッとしている、赤龍帝っ!」
竜巻から脱出したコカビエルは、イッセーに対して蹴りを繰り出していた。
「チッ⁉」
イッセーは何とか腕で蹴りをガードするが、
「堕ちろ!」
コカビエルは頭の上で両手を組み、全力で振り下ろした。
ドォォォォン!
落ちた衝撃によって砂塵が舞う。
「はぁぁ!」
そこでコカビエルは終わらず、何発もの光の槍をイッセーがいるはずの場所へと投合した。
ドコォォン! ドコォォン! ズドォォォン!
地面は衝撃でひび割れ、幾つもの場所にクレーターが出来ていた。
今度こそ勝利を確信したコカビエルは悠然と校庭を見下ろし、
「終わりだな、赤…」
言葉を紡ごうとした。
しかし、
ドゥォン、ドゥォン、ドゥォン…!
一定の音と共に、地面から微かに緑の光が見え隠れしている。
そこには…
「まだだ、まだやれる…!」
全身が傷だらけになりながらも、イッセーは微かな螺旋力の障壁を貼っていた。
「まだやるのか?」
「当たり…前だ…! 俺を誰だと思ってやがる!」
まだ闘志を燃やし続けるイッセーを見たコカビエルは、
「そうか…なら、これで終わりにしてやろう…!」
コカビエルは今まで以上に巨大で光を圧縮した槍を創造し、
「跡形も無く消えろ、赤龍帝!」
イッセーに向けて放った。
sideout
イッセーside
「ダメ! 避けてイッセェェェ!」
先輩達の悲鳴を聞こえてくる。そして、俺の目の前にはコカビエルの放った光の槍がすぐそこまで迫ってきていた。
「まだだ…っ!」
皆の元へ生きて帰るんだ…!
こんなところじゃ終われねぇんだよ!
頼むから動いてくれ…!
俺はまだ終われねぇんだよぉぉぉ!
(何とか間に合ったか…!)
「ドラ…」
ドゴォォォォォォォンッッッ!
巨大な槍は校庭に落とされ、大きな爆発を引き起こした。
「いや…! イッセー…そんなの嫌よ…!」
「兄様…?」
「イッセーがそんな…!」
「イッセーくん…!」
「イッセーさんが…そんな…⁉」
ここにいる誰もがイッセーの死を目のあたりにしたと思われた。
しかし…
「ふぅ…助かったぜ、ドライグ」
俺は左手に装着された籠手に話しかけた。
(一気に終わらせるために螺旋力を使ってしまってすまなかった… それが原因で禁手の制限時間も早まってしまったようだ)
「いや、それでこいつが完成したんだからいいよ、気にすんな」
そう言って俺は左手を見つめる。
「こいつが…俺に合わせて調整された…」
(ああ。赤龍帝の籠手がお前に合わせて進化した形態……赤龍帝の螺旋手(ブーステッド・スパイラルギア)だ)
形状は前の籠手に似ているが、緑の宝玉から幾つもの緑の線が伸びていて、手のひらにももう一つ宝玉がつけられていた。
「力がよく馴染むぜ…!」
(お前の螺旋力で出来ているから当然だ)
俺が確認のために左手を動かしていると、
「なぜ、なぜ生きている⁉」
「イッセー、生きていたのね…!」
上空と地上から、驚きと歓喜の声が響き渡る。
見上げてみると、驚きを隠せないコカビエルが立っていた。そして、涙を流すリアス先輩も。
「そりゃあ、元の力が戻ったからだろ?」
「元の力だと…⁉」
「あぁ。さっきまでは個人的な理由で力を封じられててな、一部の力しか使えなかったんだよ」
俺は話しながらも、スパイラルギアに螺旋力を集めていく。
「それも今になっては改善されたけどな…」
螺旋力を集めると、スパイラルギアは呼応するように赤と緑の粒子を周辺に放ち始めた。
「だからよ、さっきまでとは一味違うぜ?」
〈spiral boost! over explosion!〉
一回の倍加でここまで力が増すとはな…さすが進化しただけはある。
「先輩、今度は心配なんてさせません。すぐに戻ってきます」
その一言だけリアス先輩につぶやき、俺はコカビエルの元へ飛び出した。
進化した赤龍帝の力、見せて…やるぜっ!