ハイスクールD×D 主人公に憑依してしまったドリルの男   作:パーシヴァルヴレイヴ

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お前にそんな顔は似合わねぇ

 

あれから俺たちはさっさと場所を移動し、ギャスの訓練を開始した。

 

まず最初にギャスの酷い対人恐怖症を治そうと思った俺たちは互いに自己紹介する事にした。

 

「ギャス、お前もみんなと同じように自己紹介しろ」

 

「ギャ、ギャスパー・ヴラディです。よ、よろしくお願いします…!」

 

「よろしく、ギャーくん」

 

「は、はい!」

白音に返事を返されて、俺の方を嬉しそうに見上げてくるギャス。

 

俺はそんなギャスの頭を一撫でして口を開いた。

「お前にしてはよくやった。でも、今度自己紹介する時は俺の後ろに隠れずに一人で言えるようにしような」

 

「は、はい…」

何とか自己紹介は出来たが、まだまだ対人恐怖症は治りそうもない。

 

次に何をするか考えていた所、ゼノヴィアがやけに張り切っていたので任せてみたのだが…

 

「ほらほら、デイウォーカーなら日中でも走れるだろう?」

 

「ヒィィィィッッ!! デュランダル振り回さないでぇぇぇぇ!!」

 

ゼノヴィア曰く、「健全な精神は健康な肉体から成り立つものだ!」だそうで、日中でも活動出来る特殊なヴァンパイアであるギャスを訓練と称し、デュランダルでギャスを追いかけまわしている。そして、追われるギャスは半泣きで必死に逃げている。

 

「うっ⁉…ギャーくん、これ食べて元気になって」

 

「イヤァァァァァァッッ!! ニンニクもダメェェェェ!!!」

今度はギャスの前に大量のニンニクを体にぶら下げた白音が現れた。

白音、それやってお前自身が臭ってるんじゃあ世話ないぞ…

 

「ゼノヴィアさんも白音さんもやめてあげてください!」

その三人を見ているアーシアは何度もやめるように声をかけている。

 

「はぁぁ…ゼノヴィアに任せた俺がバカだった…」

 

「白音まで加わってるにゃ。それも良くやるにゃ、あんな量のニンニク持って」

そんな光景を俺と黒歌は頭を抱えて見ていた。

 

 

 

「おっ! 兵藤じゃねーか」

そこに軍手をはめ、その手にシャベルを持った匙がやってきた。

 

「おう、匙」

そう言って俺は手をあげた。

 

「おう。お前らの眷属、一人解禁されたんだってな」

 

「あぁ。あそこにいるぜ」

そう言って俺はゼノヴィアたちから逃げ惑うギャスを指差した。

 

「へぇ、あれが……って、金髪少女じゃねぇか! あの状況じゃなかったら直ぐさまに話しかけたってのに…!」

ギャスを見た途端に、匙は嬉しそうに顔を緩めていた。

 

「美少女ねぇ…ま、そう見えるか」

 

「どう言う事だ?」

俺の一言が気になったのか、匙は俺に質問をしてきた。

 

「あいつ、ああ見えて男なんだよ。女装趣味のな」

それを聞いた匙は意気消沈し、ガックリと肩を落とした。

 

「女装に引きこもり…難易度高すぎるだろ…」

 

「まあな… それよりお前は軍手にシャベルで何を?」

 

「花壇の手入れだよ。一週間前から会長の命令でな。ここ最近は学校行事が多かったし、近々魔王様方もここへいらっしゃるからな。少しでも学園を綺麗に見せるのも会長の兵士である俺の仕事だ」

そう言って胸を張って堂々としている匙。

 

「そうか。大変だろうけど、頑張れよ」

多分雑用だと思うのは間違いに違いない…そうに決まってる。

 

俺が匙を応援していると、いつもは感じない懐かしい気配を感じた。そして俺がその方向を向けた時、そこには…

 

「悪魔さん方はここで集まってお遊戯でもしてるのか?」

浴衣を着たいかにも悪そうな男性。俺はその人に見覚えがあった。

 

「お久しぶりですね、アザゼルさん」

 

「おう。元気にしてたか、赤龍帝?」

俺とアザゼルさんが気さくに挨拶を交わしていると、

 

「ひ、兵藤! 今あの人の事、ア、アザゼルって…!」

 

「「「……」」」

匙は目の前にいる人物に驚きを隠せずにいたが、ギャスを追っていたゼノヴィアに白音、俺の隣にいた黒歌はすかさず戦闘態勢をとっていた。匙もその三人を見てか、直ぐに神器を発動して構えた。

 

「やめとけ。向こうにはその気はねぇみたいだし、取り敢えず収めろ」

俺は三人に構えを解かせる為に話しかけた。

 

「そうそう。赤龍帝の言うとおり、構えを解きな。どうせここで戦っても、赤龍帝以外は相手にならないのぐらいはお前らにも分かるはずだが…?」

アザゼルさんは陽気にそう言うが、俺以外のみんなが警戒を解くつもりはないようだ。

 

「で、ここに何の用ですか? まさか、ただの散歩ってわけでもないでしょう?」

俺がそう聞くと、アザゼルさんはニヤッと笑った。

 

「お前さんは鋭いねぇ、赤龍帝。俺は聖魔剣使いを見に来たんだよ。ここにはいないみたいだが…」

 

「聖魔剣使いなら今、リアス先輩とサーゼクス様にお会いしてますから、そっちに行ってください」

俺が祐斗の居場所を答えると、アザゼルさんは苦い表情を作った。

 

「ちっ…サーゼクスの所かよ。タイミング悪すぎだな、俺」

そう言ってアザゼルさんは頭を少し掻いていた。

 

「ならそこのヴァンパイア!」

そう言ってアザゼルさんに指を差されたギャスは驚いて体を震わしていた。

 

「お前、停止世界の邪眼(フォービトン・バロール・ビュー)の持ち主だよな? そいつは使いこなせないと危険極まりない代物だ。神器の補助具で不足してる要素を補えばいいと思うが…そういや悪魔は神器の研究が進んでないんだったな。だったら…」

 

興味深々のアザゼルさんは次に匙を…詳しく言うと匙の腕を指差した。

 

「それって黒い龍脈(アブソーブション・ライン)だろ?ならそいつを練習に使ってみろ。このヴァンパイアに接続して余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少なくて済むだろうよ」

それを聞いた匙は動揺していた。

 

「お、俺の神器って相手の神器の力も吸えるのか? ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと思ってたのに…」

匙が声を震わせながら言った言葉に呆れるアザゼルさん。

 

「はぁ…ったく、これだから最近の神器所有者はダメになるんだよ。自分の力をしっかりと把握しようともしない。お前の『黒い龍脈』はな、伝説の五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。そいつはどんな物体にも接続することができ、その力を散らせるんだよ。短時間なら持ち主側のラインを引き離して他の何かに接続させることも可能だ」

 

「他に繋ぐ…俺のラインを…」

 

「そうだ。それに成長すれば、ラインの本数も増えるし、そうすりゃあ吸い取る出力も増加する」

 

それを聞いた匙は黙り込んで考え始めた。

 

「まあ一番手っ取り早いのは、赤龍帝を宿したものの血を飲む事だ。ヴァンパイアにその血を飲ませておけば、それだけで力がつくさ」

それを聞いたギャスは一瞬顔を凍ばらせると、俺の後ろに隠れ、

 

「例えお兄ちゃんのでも、血を飲むのは嫌ですぅぅ…」

頭を横に振っていた。

 

「それなら地道に頑張るんだな」

アザゼルさんはそう言うと、もと来た道へと引き返していた。

 

 

「そういや…」

しかし、少し歩くと何かを思い出したようにこちらを振り向いた。

 

「うちの白龍皇が迷惑かけたな。悪気があった訳じゃねぇから許してやってくれ。あいつも今事を起こそうなんて思っちゃいねえだろうしな」

アザゼルさんは俺たちに謝罪の言葉を口にした。

 

「全然構いませんよ。正体隠して何度も呼び出していたあなたに比べれば、なんて事ありませんから」

そう言った俺にアザゼルさんは悪い笑みを浮かべて言った。

 

「へっ、それは俺の趣味だ。あやまらねぇよ」

 

それだけ言うとアザゼルさんは今度こそこの場から去っていった。

 

 

 

残された俺たちはとりあえずアザゼルさんに言われた通りに匙の神器を取り付け、ギャスの神器を使う練習を始めてみた。するとそれは成功し、ギャスは喜んでいた。時々俺たちを停めてしまって涙目で謝りまくっていたが…

 

その後はリアス先輩の差し入れをみんなで食べたり、力を貸してくれたお礼として匙の花壇整理を手伝ってあげた。

 

後、その日の夜にギャスは俺と共に契約を取りに行ったんだが、その時に少しでも相手と向き合って話をしていたのを見ていると、ギャスも自分を変えようとしているのが良く分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここであってるよな…?」

あれから付きっきりでギャスと神器の特訓をしていた俺だったが、その週の休日に朱乃先輩に呼び出され、目的地…街外れにある神社に来ていた。

 

「にしても、悪魔である俺がここに来ていいのか?」

そう言いながら石段の前に差し掛かると、一つの人影が見えてきた。

 

「待ってましたわ、イッセーくん」

それは、巫女衣装に身を包んだ朱乃先輩だった。

 

「ごめんなさいね、急に呼び出してしまって」

 

「全然構いませんよ。どうせ今日は家でゴロゴロするだけでしたから。で、ここを登って行けばいいんですよね?」

俺が朱乃先輩に尋ねてみると、

 

「ええ、そうです。それでは行きましょうか」

朱乃先輩はニッコリと微笑み、石段を登って行った。

俺も置いていかれないように朱乃先輩に続いて登り始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

「気になってたんですけど、俺たちってこの神社にいても大丈夫なんですか?」

 

「ええ、安心してくださって結構ですわ。この神社は裏で特別な約定が執り行われていて、悪魔でも入ることができます」

そう言って朱乃先輩はたどり着いた鳥居を何事も無くくぐった。俺も朱乃先輩と同じようにくぐると、そこにはこの神社の本殿があった。

 

そして、その前には豪華な白いローブに身を包んだ端整な顔立ちの青年が立っていた。その頭上に金色に輝く輪っかを漂わせて…

 

(ドライグ、この人って…)

 

(あぁ。この感じ、力、あの輪…天使だ。最上級のな)

 

(そうか…)

俺がドライグと話していると、目の前にいる青年は俺を見て微笑んだ。

 

「あなたが赤龍帝ですね」

その青年はそう言うと、今度は手を俺に差し出した。

 

「初めまして、赤龍帝、兵藤一誠君。私はミカエル、天使の長を務めさせていただいております。なるほど…このオーラ、とても懐かしい限りです」

そう口を開いた瞬間、青年の背中から金色の12枚の翼が発現した。

 

「よろしくお願いします」

 

朱乃先輩が呼び出したぐらいだから、只事ではないとは思ってたけどまさかここまでの大物が現れるとはな…

 

俺は内心驚きながらも、握手に応えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社の本殿に入ると、ミカエルさんは俺の方を向いて口を開いた。

 

「実は、これをあなたに進呈しようと思いましてね」

ミカエルさんが指差した方向には1本の聖剣が宙に浮いていた。

これって、聖剣だよな…?

 

「これはゲオルギウス… 聖ジョージと言った方が伝わりやすいでしょうか? 彼の持っていた龍殺し(ドラゴンスレイヤー)、聖剣『アスカロン』です」

 

 

「聖ジョージ…そんな聖剣を悪魔であり、ドラゴンである俺が使えるんですか?」

俺が疑問をミカエルさんに尋ねてみた。

 

「心配には及びません。この聖剣は特殊儀礼を施しているので、ドラゴンの力があればあなたでも問題なく扱えるでしょう」

 

「そうですか…」

 

(籠手に取り込めば大丈夫だろう)

 

(そんな事が出来るのか?)

 

(ああ。ミカエルも最初からそのつもりの筈だ)

 

(そうか)

なら貰える物は貰っておくか… でもその前に聞きたい事がある。

 

「頂く前に一つ聞かせてください。何故、俺に聖剣を託すんですか?」

俺の中で一番の疑問をミカエルさんに言った。

 

すると、

 

「過去の因縁を取り払う為に、三大勢力の和平を結ぶ為の必要材料と思って頂けたら幸いです」

ミカエルさんは微笑みながら答えてくれた。

 

三すくみが手を取り合う為か…

 

「分かりました。この聖剣、ありがたく受け取らせてもらいます」

そう言って俺は籠手を展開した左手でアスカロンを持つ。

その瞬間、アスカロンを中心に凄まじい緑の光が放たれた。光が止むと、籠手の宝玉の所からアスカロンと思われる聖剣の柄が現れていた。俺はそれを持ち、勢いよく引っ張るとそのすべてを取り出す事が出来た。

 

(念じればいつでもそうやって取り出す事が出来るようになったぞ、イッセー)

 

(そうか、ありがとう。でもなぁ、剣自体は習ってたけど、俺の主体は拳だからなぁ…ま、いざって時に使えばいいか。それか、祐斗かゼノヴィアに…)

 

「うまく馴染んだようですね。ではこれで私はお暇させていただきますね」

ミカエルさんはそう言うと、一度手を叩いた。すると次の瞬間には、ミカエルさんが光で包まれ始めていた。

 

「この会談が和平に繋がると信じています」

 

 

「はい、必ず…」

ミカエルさんはそう言い残し、光と共に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お茶をどうぞ」

 

「ありがとうございます、頂きます」

 

ミカエルさんが天界に帰った後、俺は朱乃先輩の家に招待されていた。

 

「やっぱり朱乃先輩のお茶は美味いですね」

 

「お粗末様です、ふふ…」

 

こんな会話も少々、場も馴染んだ所で、俺は前々から気になっていた事を朱乃先輩に尋ねてみた。

 

「一つ聞いてもいいですか、朱乃先輩」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「聖剣の一件でコカビエルが言ったあの言葉…朱乃先輩は堕天使の幹部と何か関係があるんですか?」

 

俺のその問いに朱乃先輩は表情を曇らせる。

 

「ええ。私は堕天使の幹部、バラキエルと人間との間に生まれた者です」

 

やっぱり…コカビエルが言った『バラキエルの力を宿す者』、それは血縁者である事を示していたのか。

 

「母はとある神社の娘でした。ある日、傷ついていた堕天使であるバラキエルと出会い、助けるとその時の縁で私を身に宿したと聞きました」

淡々と自身の過去を話すと、朱乃先輩は背中の翼を広げた。その背中の一方には悪魔の翼、もう一方には堕天使の翼が生えていた。朱乃先輩はその一方の堕天使の翼を手に取り、忌々しげに見つめる。

 

「これは穢れた翼・・・。この翼が嫌で、私はリアスと出会い、悪魔となった。でも、今の私は堕天使の翼と悪魔の翼、両方を持ったおぞましい生き物になってしまった…穢れた血を身に宿す私にはお似合いなのかもしれませんね」

 

朱乃さんはそう言って自分を自嘲していた。

 

「こんな私を見て、イッセー君はどう思いました? アーシアちゃんを酷い目にあわし、この街を破壊しようとした堕天使の血が流れる私を… 嫌いになるでしょ?」

 

口を開いた朱乃先輩の顔は悲しみで歪んでいた。

 

それを見た俺は…

 

「何言ってるんですか、朱乃先輩。俺がそんな事で先輩を嫌いになるわけないでしょ」

朱乃先輩の思っている事を否定し、笑いかけた。

 

「えっ…」

朱乃先輩が驚いてる中、俺は堕天使の翼にそっと触る。

 

「例え堕天使の血を引いていようと、朱乃先輩は朱乃先輩です。いつもニコニコと笑みを絶やさない朱乃先輩、Sっ気があって気に入った人をいじめたくなる朱乃先輩、何よりも俺たちを大切に想ってくれる朱乃先輩が好きです、大好きです。だから先輩…いや、朱乃」

俺は微笑みながら朱乃先輩の顔に手を当て、

 

 

「お前にそんな顔は似合わねぇ… いつものように笑っていてくれ。俺はそんなお前が大好きだから」

 

朱乃先輩の瞳から溢れる涙を拭った。

 

すると、朱乃先輩は顔を赤くして下に俯いた。

 

 

「…殺し文句、言われちゃいましたわね。そんなこと言われたら……本当に本気になっちゃうじゃない…」

 

何かを呟いた朱乃先輩は俺に勢いよく抱きつき、

 

「あ、朱乃先輩? どうしたんで…」

 

「イッセー…」

 

「んっ⁉」

自身の唇を俺の唇と重ねていた。

そして数秒後、朱乃先輩は唇を離し、俺を見つめた。

 

「朱乃先輩、これは…」

 

「ダーメ」

そう言って俺の口を指で塞ぐ朱乃先輩。

 

「二人っきりの時には朱乃先輩じゃなくて、朱乃って呼んで…イッセー」

年相応の笑みを浮かべる朱乃先輩。

 

「わ、分かりました」

それを見た俺はドキッとし、その笑顔に見惚れていた。

 

「それでね、イッセー。リアスの事、好き?」

 

「好きです。敬愛する人たちの中の一人ですから」

 

「黒歌は? それに白音ちゃん、アーシアちゃん、ゼノヴィアちゃんは?」

 

「みんな大好きです。大切な家族ですから」

朱乃先輩はそれを聞くなり、何かを考え始めた。

 

「イッセーがこの様子なら、私にもまだチャンスは残ってるわね…」

 

「…?」

俺が不思議がっていると、朱乃先輩は決意の表情を浮かべていた。

 

「私、決めましたわ。あなたの大切な人に、あなたに惚れられるように頑張ります」

 

「え、えーっと、それって…」

俺が戸惑いを隠せずにいると、抱きついていた朱乃先輩は俺の頬に手を当てた。

 

「イッセー、もう一度さっきみたいに朱乃って呼んで?」

 

「は、はい……朱乃」

 

「…うれしい、イッセー」

 

さらに俺を抱きしめてくる朱乃先輩。その声はいつもの凛とした朱乃先輩の声じゃなく、俺に普通の女の子の声だったと俺は思う。

 

「イッセー…」

 

「朱乃…」

俺はさらに強く抱きしめてくる朱乃先輩の髪を優しく撫でた。

すると、朱乃先輩は目を細めて俺に身を預けた。

 

朱乃先輩もこうやって誰かに甘えたかったんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたたち、何をやっているかしら?」

 

あ、あれ〜?

 

「あ、朱乃先輩、ここにはいない方の声が聞こえたような気がしたんですけど…それに背筋が冷たい…」

 

「それは多分とっても怖いお姉様が睨んでいるからだと思われますわ」

 

その言葉を聞いた俺はすぐさま声の聞こえた方を向く。するとそこには…

 

「リ、リアス先輩…」

真紅のオーラに身に纏ったリアス先輩の姿があった。

 

「油断も隙もないわね」

リアス先輩はとってもイイ笑顔を浮かべながら俺たちに歩み寄った。

 

「で、対談はうまくいったの?」

 

「無事に終わりました! ミカエルさんも俺にアスカロンを託して帰られましたです、はいっ!」

少し口調がおかしいことなど、気にしてられるかっ!

 

「ならここに用はないわね。 さっさと帰るわよっ!」

そう言ってリアス先輩は俺の耳を掴み、思いっきり外へと引っ張っていく。

 

「痛っ⁉ 痛い痛い痛いっ!先輩、ちょっと待って!」

俺は悲痛の叫びをあげるものの、先輩が止まる気配はない。

 

「リアス、私は諦めないわよ」

後ろから呟く朱乃先輩。その声はいつもの朱乃先輩の声に戻っていた。

それを聞いたリアス先輩は一度立ち止まるが、すかさずに今度は俺の手を掴んで外に出るのであった。

 

「私だって負けないわよ、朱乃…」

そう一言呟いて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路を歩くリアス先輩の足音は怒りに満ちたものだった。その後から恐る恐るついていく俺。

 

「せ、先輩…あの…」

俺が声をかけようとした時、リアス先輩はこちらに振り向き、俺の傍に歩み寄った。

 

「……い」

 

「へっ?」

 

「ずるいって言ったの! 朱乃ばっかりイッセーと」

拗ねた子供のように頬を膨らませるリアス先輩。その姿は年頃の女の子そのものであった。

 

こうやって怒ってるリアス先輩も可愛い…ってそんな事言ってる場合じゃなかったな。

 

「そんな事しても可愛いだけっすよ、先輩」

そう言って俺がリアス先輩の頭を撫でていると、

 

「子供扱いしないで頂戴っ!」

ますます怒らせる事になってしまったようだ。

 

「なら…」

俺はそう言って目の前にいるリアス先輩に顔を近づけていく。

 

 

そして…リアス先輩の頬に優しくキスをした。

 

 

 

「これで許してくれたら、嬉しいです」

そう言って俺は微笑みかける。

 

「ま、まあ…きょ、今日の所はこれで許してあげるわ! その代わり…」

 

「代わり…?」

「私の事も二人っきりの時にはリアスと呼びなさい。分かった?」

 

「はい。分かりました、リアス」

俺がそう言うと、リアス先輩は先ほどまで顔を真っ赤にしていたかと思うと、次の瞬間には笑みを浮かべ、

 

「ふふっ…じゃあ帰りましょうか」

リアス先輩は俺の腕に自身の腕を絡めて帰路に着くのであった。

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