幼馴染みの女の子   作:サンデイクローズ

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遠足回


幼少期編2

「つかさちゃん、あんなヤツほっておいて私たちとあそぼ!」

 

そんな声が遠くから聞こえてくる。おおかた馬鹿な男児がつかさにちょっかい掛けて女の子に怒られているんだろう。

つかさは同世代の子から頭一つか二つ抜き出てモテる。そしてこの年頃の男子はバカだから好きな女の子が嫌がることをして気をひこうとする。そうすると好きな子に嫌われる、こんな誰もが通る道をまた一人通ったということだろう。

 

「あっ、助けに来なかったってまた怒られちまうか。……でもホームズがおもしろいのがいけないよな」

 

午前中の遊び時間が終わってみんなゾロゾロと教室に戻ってくる。ちなみに俺はここから一歩も動いていない。予想通りつかさの顔がむくれてる、可愛い。

 

「はーい、明日は水族館に遠足でーす。バスの席を決めますからみんな好きな席を書いてくださーい」

 

その声を皮切りにみんな好きな場所にネームプレートを貼っていく。主に女子だけ。男子は憧れのつかさちゃんの隣になるべく、つかさが席の希望を出すまで待っている。この座席指定制度もつかさの隣が人気すぎて一度怪我人が出たせいで始まった制度だ。

 

「ねぇ、りょーたくんはどこにするの?」

 

「んーそうだな、前から1列目かな。どーせ寝るだけだし」

 

「えーっ、1列目だと先生の隣だよー?それより2列目にしよ?」

 

先生の隣という寝るのに最適なポジションを諦めて2列目の通路側に自分のネームプレートを貼り、隣につかさのプレートも貼っておく。

 

「はーい、後は男の子たちだけですよー?早く貼ってくださいねー」

 

なぜか担任に生あたたかい目で見つめられ、他の男子達は「くそっ、りょーたゼッテェ許さねぇ」とか幼児とは思えない血走った目で俺のことを睨んでくる。

ちなみにこの座席指定、先着順でじゃけんけんや抽選は存在しない。それを一回やった時も怪我人が出たせいだ。……このクラス血気盛んすぎじゃねぇか?

 

「つーかつかさが先生の隣行けばいい話じゃね?」

 

「ふーん、りょーたくんあたしの隣になるのイヤなんだ?」

 

「そうは言ってないだろ。はぁ、悪かったよさっきは本読んでたんだ」

 

「じゃあ明日あたしを楽しませること!そしたら許してあげる!」

 

何がじゃあなのかよく分からないが取りあえずお姫様の機嫌が治ったから良しとしよう。

 

 

 

翌日、母さんから弁当を受け取りつかさと一緒につかさのお母さんに幼稚園へ送ってもらう。

 

「涼太くん、涼太君がよければうちの子お嫁さんにしてあげてね?最近、料理を教えてーなんて言うぐらいだから」

 

「お母さん!内緒にしてって言ったのにー!」

 

顔を赤くして怒ってるつかさはやっぱり可愛い。そしておばさんも可愛いと感じたのだろう、頭を撫でて機嫌をとっている。

 

「つかさ、可愛いから大丈夫だ。問題ない」

 

「問題大ありだよ、もう。せっかく今日のお弁当りょーたくんの為に作ったのに……。ビックリさせようと思ってたのに……」

 

「あぁほら泣くなら俺の胸の中、だろ?おいで」

 

そうつかさを抱きしめるとおばさんが「涼太くんも積極的よねー」なんて呟くのが聞こえた。

 

「……んっ、もう大丈夫」

 

つかさがそう言ったのはあれから5分ほど経ってからだった。園児服は涙で濡れちゃったけど着てるうちに乾くだろうから問題ない。

 

「よっし、じゃあ水族館に行くか!」

「うん!」

 

行きのバスでは男子があの手この手でつかさの気をひこうとしていたけど、俺らの前に先生がいたお陰で薄味なものばかりだった。一回爆竹の音で物理的に気をひこうとした奴もいた気がする。やっぱこのクラスやべぇわ。

 

「ふー、やっと着いたね。これからどこいくの?」

 

「ええっと、みんなで一通り見てお昼まで自由行動で飯食ってイルカショー見て帰るんだと。……しおり貰っただろ?」

 

「えへへりょーたくんに聞いた方が早いかなって」

 

全然悪びれてない笑顔を浮かべながらゴメンゴメン、と謝るつかさとそれを見て沸き立つギャラリー。なんだこのカオス。ほかの女子達は案の定引いてるし、先生すらため息つくだけって。

 

 

その後、予定表通り水族館見学はつつがなく終了するかに見えたがイルカショー開演時間になってもつかさが現れなかった。つかさを探すために先生と一緒に行くことにした。

 

「涼太くんはイルカショー見てても良かったのよ?先生たちでつかさちゃんのこと探すから」

 

そう言われたけど、つかさを探さないと母さんに怒られる恐れがあるから一緒に探すことにした。

 

「俺、マンボウの方探してくるんで先生は反対側お願いします」

 

「つかさちゃんがいても居なくても探し終わったらここに来ること、良いわね?」

 

「りょーかいです!」

 

その後、マンボウの水槽の方へと足を進める。こっち方面深海魚コーナーとかもあるせいか他のとこより暗いんだよな。それにはぐれやすさとしてはこっちの方が上だと思うし、多分居るんじゃないかな。

 

「おっ、探したぞーつかさ!」

 

「!りょーたくん……怖かったよ〜!」

 

「ははは、今日のつかさは泣き虫さんだな。良かったよ見つかって」

 

「りょーだが、はぐれたら動くなって……だからっ」

 

「あーそういやそんな事もあったな。……よく覚えてたなつかさ」

 

泣きじゃくるつかさの頭をぽんぽんと撫でて落ち着かせるために背中をさすってやる。

しばらくすると泣きじゃくっていた声が聞こえなくなり、代わりに静かな息遣いだけが聞こえてきた。

 

「まったく、気持ち良さそうに寝ちゃって。どうしよ」

 

眠ってしまったつかさをおぶって先生との集合場所にたどり着いた。まだ、先生は着いていなかったのでこの水族館で一番大きい水槽を眺めていた。

 

「ん。……りょーたくん?」

 

「起きたか?つかさ。ほら、見てみろよあのマンタすげぇデカイぜ?」

 

「うん。そ、だね」

「りょーたくんありがと。探しに来てくれて」

 

「いいよ、つかさは放っておけないからな。……危なっかしくて」

 

「ひっどーい!」

 

 

その後は先生と合流して無事に幼稚園へ戻ることが出来た。

帰りのバスは園児達の寝息しか聞こえないほど静かで読書が進んだ。




ただの水族館見学でした。
幼少期編は残すところあと2つ


…あと2話で終わるのか?
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