高校時の親友であるトモコがもう出てきます。
今日は朝から転入してくる生徒の噂で持ちきりだった。……まぁそれは女子だけで男子は専ら日曜日、そして今朝もあたしと一緒にいた男の子について盛り上がってたけど。
「で?あのつかさちゃんが一緒に休みを過ごしてしかも朝から一緒にご登校する相手って誰よ?」
あたしに聞いてくるのは親友のトモコ。この子にだけは涼太のことを話してるから分かってるクセに。
「さぁ誰でしょう。……なんてね、トモコなら分かってるんでしょ?」
そう問いかけるとさも勝ち誇ったかのように胸を張り「もちろん!」と答えるトモコ。
「つかさの幼馴染みの男の子!でしょ。そっかやっと帰ってきたんだ〜」
なんでトモコが喜んでるんだか。……心当たりは確かにいっぱいあるケド。でもトモコにしか涼太のこと話せなかったからしょうがないじゃん。
「しょうがないじゃないわよ、まったく。でもこれからは一々私のところに来なくても良くなるんだもんね。愛しの彼が来るんだからせいぜい周りに見せつけることね。……ところでその彼は何組に来るの?」
「それが朝も聞いたんだけど『その時になってからのお楽しみ』って言われて何組になったのか教えてもらえてないの。あの言い方からして同じクラスなんじゃないかって思ってるんだけどね」
そんな会話をしている間も廊下の方からは男の子達がある事ないこと言いながら盛り上がっていた。さっきなんか特徴的なクチビルをした男の子が詰め寄ってきたりしたからチョット怖かったし。
その後は入学式と始業式があったけどその時も涼太の姿は見えなかった。……あたしと一緒のクラスなんだよね?涼太。
朝、職員室に行くと応接室に通されてその場で待機と言われてしまった。てっきり朝のうちにつかさのクラスに行けると思ってたんだが式が全部終わってからだという話をされた。
朝つかさに行けば分かるなんて言ってしまった手前何となくつかさに悪い気がしたけど、どうしようもないしな。
そうして気が付けば始業式があるとかで体育館に連れて行かれ、転入生だからと5組の最後尾に座らされた。……大分前の所で金髪の頭がキョロキョロと動いているのが見えた気がした。
そんな始業式と入学式が終わり、今はクラスごとに自己紹介が行われている……っぽい。俺はお約束通り?廊下で待たされているせいで中の様子は分からないが、漏れ聞こえる声からひとつ空いている席について話題になっているようだった。
女子はどこからか転入生が男子だと情報を掴んで勝手にイケメンだと決めつけて騒いでるし男子はそんな女子に不機嫌だし、正直入りたくない空気が出来上がっている。
一部の男子は担任が秋吉先生だということに盛り上がっている。……おっぱい大っきいもんな、秋吉先生。
「それじゃあ皆さんに転入生のご紹介です。これからみんなと一緒に2年3組に通うことになった山崎涼太くんです。山崎くん、入ってください」
言われた通り教室へ入るが、転入生を物珍しそうに見る目が気になるが、つかさの嬉しそうな顔を見ることに集中して意識を逸らして自己紹介を簡単に終わらせる。
自己紹介中つかさのことしか見てなかったせいか、つかさの顔が真っ赤になってて可愛かった。うん、いい自己紹介が出来たと思う。
自己紹介も終わり、俺の席は窓側の一番後ろ。つまりつかさの真後ろ兼漫画とかでよくあるお昼寝ポジションになった。
小学生の時もつかさの後ろだったなぁと懐かしい気分になりながら自分の席へ着く。途中、なぜか男子から射殺すような視線が飛んできた気がするが何かあったのだろうか。……まぁ理由は分かってるけど一々相手にしてたらキリが無いのは小学生の時に経験済みだから無視するけど。
「ようつかさ、朝ぶりだな。顔真っ赤だったけど熱でも有るんじゃねぇの?」
「うるさい!もう、何であたしの顔ずっと直視するのよ」
「いやー、一番落ち着くから?それにしてもまたつかさの後ろだな」
「落ち着くって……。またあたしの陰で読書する気でしょ?でも落ち着くっていうのは賛成かも、涼太が居てくれるってだけで安心出来るし」
今の発言と春休みの愚痴からして結構男子達に追い回されてきたっぽいな。つーか追い回すだけで好きか女の子と付き合えるなら世の中の男ほぼ全員彼女持ちになるんじゃねぇか?
なぜ俺がこんな中身のないことを考えているかと言うと、先ほどのつかさとのやり取りのせいでクラス内の男子(一部)が暴徒化、多くの女子がその鎮圧に向かう、といった内紛から意識を逸らす為だ。
「小学生の時よりヒデェや。これが地獄だって言われたら信じるね、俺は」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「じゃあ逃げるか?」
そう言いつかさの腕を掴み、走り出す。先生には朝のうちにこうなるかもしれないと謝っておいたから大丈夫だと信じて屋上へと向かう。
ダメだったら後で謝ればいいでしょ、それに今日の予定は自己紹介とクラスの係決めで終わるって言ってたし問題は無いはず。
「もうっ、急に走り出さないでよ」
屋上についた途端、つかさに怒られてしまう。
「夏祭りの時のお返しだよ。つーかお前めちゃくちゃ人気だな、流石昔から学校のアイドルやってただけはある」
冗談交じりに聞いてみるが、つかさからの反応はない。何となく嫌な予感がしてつかさから視線を外してみるが、回り込まれてしまう。
「その言い方嫌いだって言わなかった?そもそもあんな大騒ぎになったのはキミがあたしのことからかったからでしょ!」
「だって可愛かったんだもん」
「うっ……そう言われると何も言えなくなるから今だけ禁止!」
頬を膨らませ『私、怒ってます!』とアピールしてくるつかさ。
……悪いけど可愛い以外の言葉が出てこないんだよな。
「やっぱつかさのこと好きだわ俺」
つかさのほっぺの膨らみを押しながら言ってみる。するとつかさの顔がまた赤くなっていく。
「急にそんな事言わないの」
「えー、つかさは俺のこと好きじゃない?」
「好きだよ、涼太があたしに優しくなかった時からずっと」
コイツは人が気にしてることを。あの頃は同年代の奴らに合わせるのがキツくて家で本ばかり読んでたんだよな。つかさに引きずり出されるまで。
「『ごめん、今日はこの話を読みきりたいからまた今度』って何回遊びに連れていこうとしても断わられちゃったもんなー。今思うとあの年でシャーロック・ホームズってどうかと思うけど。……最終的にお義母さんが連れてきてくれなきゃずっと本読んでたでしょ」
「あんな面白い本書く作者が悪い」
断言するとつかさは呆れたようなため息をつく。終いにはどうしてこんな男好きになっちゃったんだろ……とか言い出すんだろう、俺は知ってるぞ。
「ね、今ってみんな教室に居るんだよね。ヘンな感じ、あたし達だけ立ち入り禁止の屋上で座ってぼーっとしてるんだもん」
「……えっ、この学校屋上立ち入り禁止なの?鍵かかってなかったからOKなのかと」
「鎖が落ちてたでしょ。一応立ち入り禁止ってことらしいよ。……それよりさ、あたし髪切ろうと思うんだよね」
そんなことを俺の右手を握り、いやプニプニ遊びながら言ってくるつかさ。
「どうして髪切ろうと思ったんだ?正直今のつかさの髪型好きなんだけど」
「えへへありがと。でもそもそも髪伸ばそうと思ったのが涼太と会えない時間で一番変わるところどこだろーって考えた時に思い付いただけだから。だから、髪が長いつかさちゃんとは今日でお別れ、これでもちょくちょく切ってたぐらいだからすぐ伸びると思うけどね」
「つかさが決めたことなら反対しないけどな。……一回だけポニテにしてくれないか?」
「ふーん、涼太ってポニーテール好きなんだぁ。そっかそっか……でも髪が伸びるまでおあずけ!」
「そりゃないよつかさぁ〜」
「あはは今の声情けなさすぎ!どんだけあたしのポニーテール見たかったの」
そう目に涙が出るまで笑われてしまう俺。……無性に恥ずかしくなってきたんだけど。
「あー!もう、うるさい。教室戻るぞ」
「必死!涼太必死すぎ!……ふぅ、笑い過ぎてお腹痛くなっちゃった」
教室に戻ると丁度終業のSHRの最中だった。
当然、先生からのお叱りを受けて自分たちの席へと戻った。
「えーっと、これでようやく2年3組の全員が揃いましたね。……あぁそうそう、二人には一年間クラス委員としてこのクラスを纏めてもらう事になったので、よろしくお願いしますね」
「えっ……ちょっ、待ってください俺はともかくつかさには無理です!ご再考を!」
「あたしには無理ってヒドいと思うんだけど!先生、あたし、一生懸命やります!」
「西野さん、よろしくお願いします。……山崎くん、西野さんもこう言ってますしやって頂けませんか?」
つかさと先生のW上目遣いなんて卑怯だ!ズルだ!先生はともかくつかさは故意だ!
「……がんばります」
「はいっ、よろしくお願いします!」
くっそ何でそんないい笑顔してるんだ先生……。
それにつかさもノリノリだし。クラス委員になったらお前の苦手な早起きとかしないとだと思うぞ俺は。
「それじゃ、委員長、終業の挨拶お願いします」
「どっちがやる?」
「俺は委員長のしがない召使い役でいいからヨロシク」
そう言うと呆れたようなため息をつき、クラス委員として号令をかける。
まぁなんだ予想した通りというかつかさが号令をかけると男子たちが我先にと立ち上がるのは見ていてとても面白かったな。中には椅子を倒すほど勢いよく立ち上がる奴もいたし。
「はぁー流石つかさだね、あんな息の揃った男子なんて初めて見たよ。……あっ、初めましてつかさの友達やってる中野トモコです、よろしくね山崎くん」
「よろしく、中野……さん?」
「中野でいいよー、つかさから話は聞いてるからよろしくね王子様?」
「?」
「あぁっダメだってトモコ!口閉じて!涼太、今トモコが言ったのはワザとじゃないからね!あたしが話しちゃったせいだから」
「じゃあ今回だけ目を瞑るな。昔ほど気にならなくなったし」
「ありがとー、涼太!大好き!」
嬉しそうに抱きつかれるのは満更でもないんだけどさ、つかさちゃん今僕たちはどこに居るかな?
「放課後の教室」
うーん、合ってるけどそういう事じゃないじゃん?まだみんな帰る支度とかで結構人残ってるじゃん?
「──つまり、めっちゃ恥ずかしいじゃん?」
そう言えば離れてくれると思ったんだけど、一向に離れる気配がない。むしろ抱き締める力が強くなってないか?
「あのーつかさちゃん?何でそんなガッシリホールドなさってるの?ほら、あそこの男の子なんて目が血走ってて今にも俺を殺しに来そうだから。取りあえず離そ?」
「……丁度いい機会だから言っちゃおうかな」
……何を言っちゃうつもりか分からないけど滅茶苦茶嫌な予感はしてる。
「そこにいる男の子たち!あたし、西野つかさは山崎涼太くんの彼女だからもうあたしに告白なんてしない事!……ほら、涼太帰ろ?」
さっきの号令より大きな声で教室中に響かせるようにそんな事を宣言したつかさ。
……これから先、俺が男子にハブられることが決定した瞬間だった。
魂の抜け殻達の間をすり抜け、つかさに引かれるまま気が付けばもう校門まで来ていた。中野によると過去最速記録らしい。
……どんだけしつこかったんだアイツら。
「嬉しそうだな、つかさ」
「うんっ!涼太のお陰だよ?こんなに早く帰れるなんて今まで無かったもん」
「ほんと、今までの苦労は何だったんだろって話よね。今までも彼氏が居るって言ってるのに無視して告白されてたもんね〜つかさちゃん ?」
「うぅ〜ほんと大変だったよ。昼休みも放課後も自由な時間なんてほとんど無いんだもん!」
「まぁなんだ、ドンマイ?」
「だからね、小学生の時に涼太がいてくれたのって結構影響あったんだって思ったよ。それに、これからも涼太が一緒に居てくれれば安心だし!」
俺はいつの間につかさのナイトになったんだろうか。……昔からか。
「まぁ姫を守るのは騎士の役目だしな。さぁつかさ姫、お城までお送りしましょう」
そう片膝をつき、仰々しく片手を差し出す。……このノリも何だか懐かしいな。
「ふふっ、涼太さま、よろしくお願いしますね?」
俺の手をとるつかさ。昔はたどたどしかった仕草も滑らかな動きになっていて、本当にお姫さまのように見えてしまった。
「つかさ、練習しただろ」
「えへへ、バレちゃった?涼太ならいつかやってくれるだろうって思ってたから。でもまさかこんな早くやると思ってなかったけどね。……涼太が王子って呼ばれてたのこの遊びのせいなんじゃない?」
なるほど。昔は馬鹿にされてるのかと思ってたけどこの遊びのせいだったか。
「……ねぇ、外野からで悪いんだけどアンタ達いつもこんなことやってるの?」
「え?あぁ、俺の気分がノッてつかさもその気だった時だけな」
「……甘い、甘いわこの子達。……どこかに自販機ないかしら」
そう言うとなぜか中野が甘い……甘いと呟き出した。不思議な奴だなぁ。
気分悪くなってないか?大丈夫か?
「へーき。ちょっと住む世界が違いすぎただけだから。つかさ、山崎くんごめん、先帰るね!」
「トモコどうしたんだろ?」
「さぁ?……それより姫、抱きかかえても宜しいですか?」
つかさに聞くと顔を赤らめ、か細い声で「はい」と言ってくれる。ここは練習してないんだな。
久しぶりにつかさを抱き上げようと思った時、ふとつかさの制服が目に入った。いや、スカートが気になった。
「……やっぱやめとこうか。パンツ見えるだろうし」
「ええっ!生殺しだよ〜!じゃあ、抱っこ!」
じゃあってなんだよ。
……まぁ喜んで抱っこするんだけどね。
「お前、色々柔らかくなったな。……つーか前見えないからおんぶにしようか」
「むっ、今の発言セクハラだよ!お義母さんに言われたくなかったらこのまま歩くこと!」
「いや、無理だってマジで。女の子を意識しすぎて俺の男の子がほら、な?」
「いいよ、涼太になら」
──耳もとで天使のささやきが聞こえた気がした。いや、小悪魔かも知れない。何にせよあの一言で俺の理性はもうズタボロにされてしまった。
つーか恥ずかしくなって俺の肩に顔埋めるなら言うんじゃねぇって。
「ほら、降りる」
そう言うと大人しく降りて次は背中につかさの重みを感じる。……つかさって着痩せするタイプか?結構柔らかいんだけど。
「去年の身体測定、Bだったの。どうかな?柔らかい?」
「お前何言ってんだよ!とっても柔らかくてご褒美だよちくしょー!」
その後、つかさにからかわれながらも何とか送り届けることに成功した。
よく耐えた、俺の理性。
「もう着いちゃったの?……うー涼太、離れたくないよぉ」
「いや、家すぐそこだから。何だったら電話してくれればすぐ来るし。ほら、降りる」
「……じゃあ降りたらおやすみのチューして?」
「はぁ、するから早く降りてくれ、理性がヤバイ」
「んっ、りょーかい。……じゃあチューするから目つぶって?」
つかさにああ言った手前、言いなりになる選択肢しか残ってないよな。
「……ほら、目閉じたぞ」
俺が喋り終わると、まぶたに柔らかい感触があり、その後鼻先、ほっぺそして最後に唇をつかさにキスをされた。
「目、開けていいよ」
目を開けると顔を真っ赤にして目を閉じているつかさがいた。……まさか俺にもあれをやれと言うのか?いやいやまさかな。
……鼻先と唇にキスをして終わりにする。これ以上は流石に恥ずかしいし。
「あはっ、涼太の顔真っ赤だよ」
「そういうお前も真っ赤だっての。……ほら、もう家に入れって」
「うん。今日は楽しかったよ、久しぶりに涼太と一緒に学校に行けたし」
「これからは毎日一緒に行けるだろ?」
「うんっ!……涼太、また明日ね!」
結構遅れてしまいまして申し訳ありませんでした。
どこまでが甘いか分からなくなりながら書きましたので変なところがあると思われます。ご容赦を
次回は修学旅行か何かの学校行事を書く予定です。