カメンライダー   作:ホシボシ

22 / 34
※注意。

魔法少女まどか☆マギカの軽いネタバレ(?)がありますので未見の方は注意してください。
何を言ってるかワケわかんねぇとは思いますが、ご了承ください。


第19話 ヒーローの誕生

『▲ポケットモンスター』

 

 

キュルキラちゃんは悩んでいた!

 

 

「んー! なかなかレートで勝てないなぁ。皆つよぉい」

 

 

手持ちは悪くないはずなのに。

 

 

「ね? そう思うでしょ? みんなァ」

 

 

メテオ達は苦戦していた。

と言うより、意味が分からなかった。

つい先程までキュルキラと戦っていたはずだ。にも関わらず現在、キュルキラはシャンデリアのようなモンスターに腰掛け、上空に浮いている。

そしてメテオ達の周りにいるのは、サメのようなドラゴン。

 

 

「ガブはぁ、やっぱりSAぶっぱかなぁってぇ」

 

 

"ガブリアス"と呼ばれるモンスターが思い切り地面を蹴る。

すると地震が発生し、ライダー達の動きが止まった。

悲鳴が聞こえる。飛来してきたのは、赤い三日月。"メガボーマンダ"のすてみタックルが次々にライダーたちへ直撃していった。

 

 

「ガハッッ!」

 

 

ホッパーの装甲がバラバラになり、タケシは地面に叩きつけられ、血を吐きだした。

 

 

「あらあらあらぁ、まあ虫格闘じゃそうなるよねぇ」

 

 

なんとか耐え、立ち上がったメテオたちだが、困った事が一つ。

それはキュルキラやドラゴンモンスター達に手も足も出ないと言うことだ。

それは文字通りの意味。キュルキラはエナジーアイテム、『挑発』を再び使用しており、ライダー達の狙いを一点化させている。

 

つまりメテオ達ライダーは、キュルキラやガブリアスらを目で見ているものの、攻撃を当てる事はできない。

まずは挑発を受けた相手を倒さなければならないからだ。

そう書くと、挑発を受けた相手をさっさと倒せばいいように聞こえるが、それができていれば苦労はしていない。

 

 

「ハァアア!」

 

 

メテオ、なでしこ、G、ネオ、オメガは同時に拳を突き出した。

しかしその相手、"ヤドラン"は全く動じていなかった。

拳がダメならば刃と、一部のライダーは切り替えるが、コレもダメ。

物理的な攻撃が効いている気がしない。

 

 

「学習してよぉ。ムリなんだって」

 

 

キュルキラはヘラヘラと笑いながらライダー達を見る。

 

 

「HBぶっぱのヤドランちゃんに――」

 

 

シャンデリア型のモンスター、"シャンデラ"をなでる。

 

 

「鬼火が入った状態でぇ」

 

 

キュルキラはメガボーマンダを指差す。

 

 

「メガする前には『いかく』も入ってるんだからぁ、お前らの攻撃がヤドランに効くわけねぇんだよ!!」

 

 

つまり、『デバフ』。

簡単に言えばメテオ達の攻撃力が大きく下がっているのだ。

さらにヤドランと言うモンスターは物理攻撃に強い。だからこそメテオ達は『詰み』の状態になっているのだ。

 

そして皆気づいている。

ヤドランを殴るたびに、ダメージがなぜかメテオ達にバックする。

きっと、ヤドランが被っている、ゴツゴツしたヘルメットが原因だろう。あれがカウンター装置になっているようだ。

 

さらにヤドランはどうやら"なまけている"ようで、そうするとヤドランの体力が回復していくらしい。

回復する相手に攻撃をつづけ、カウンターダメージを受け続ける。このままではメテオ達は自滅してしまう。

 

 

「だったら! エグゼイド! G!」『サターン!』

 

「はい!」『マキシマムガシャット!』

 

「ああ! 分かった!」

 

 

下がるメテオとエグゼイド、G。

物理攻撃が効かないならば、飛び道具を使えばいい。

土星の輪が。キースラッシャーから放たれた弾丸が。Gの形をしたエネルギー弾が一直線にヤドランへ向かう。

 

 

「えい」

 

 

ボールを投げるキュルキラ。

するとヤドランをかばうようにして、ピンク色のモンスターが割り入り、弾丸を全て受ける。

 

 

「んなッ!」

 

 

爆発が巻き起こるが、煙の中からはなんのことはなく、そのモンスター・"ラッキー"が姿を見せる。

 

 

「特殊受けェ」

 

 

つまり、今度は特殊攻撃に強いモンスターを出してきたということだ。

さらに続けざまにボールを投げるキュルキラ。中からは"ダークライ"と呼ばれるモンスターが召喚され、直後、激しい眠気がライダー達に襲い掛かる。

 

 

「グゥウウ!!」

 

 

眠ったら終わる。

誰もが理解していたが、耐える間に動きは鈍ってしまう。

それで十分だった。怯んでいるライダーたちへガブリアスのヒレが、ボーマンダの翼が打ち当たる。

 

さらにシャンデラから降りるキュルキラ。

直後、シャンデラから大量の炎が溢れた。悲鳴ごと焼き尽くす業火。

爆炎の中に消えていくライダーたち。

 

 

「んんwwヤーバーwwヒートww大ww炸ww裂ww」

 

 

倒れ、転がっているライダーを見てキュルキラは楽しそうに笑う。

一方でその視線の先に、震えているイユを見た。

 

 

「んー? どうしたのイユちゃん」

 

「や、やめて、お願いだから」

 

「なにがー?」

 

「ち、千翼くんたちを傷つけないで」

 

「そっかー、そうだよねぇ、うんうんワカルヨー」

 

 

笑みを浮かべ、優しい声色で説明する。

 

 

「じゃあねぇ、イユちゃん。お願いしてくれたら許しちゃおっかなぁ?」

 

「お、おねがい?」

 

「そう。ポケモンを、消してくださいってお願いして」

 

「ほ、本当にお願いしたら止めてくれるんですか」

 

「うんもちろん! ポケモンは消してあげるね!」

 

「じゃ、じゃあ」

 

「あ! でもでも!」

 

「?」

 

「ちゃんとポケモンを消してくださいってお願いしてね。いい? 『ポケモンを消してください』だよ? 一字一句間違えちゃダメだよ。間違えたら――」

 

 

千翼殺すから。

イユはその言葉を聞いて、震えながら頷く。

そして頭を下げた。同時にキュルキラは指を曲げ、文字を引き寄せる。

 

 

『▲魔法少女まどか☆マギカ』

 

 

文字がキュルキラに吸い込まれたとき、イユは『願い』を口にしていた。

 

 

「ぽ、ポケモンを消してください」

 

「はい! よく言えましたぁ!」

 

 

手を叩くキュルキラ。すると本当にポケモンが一瞬で消えた。

さよなら竜舞マンダ、襷ガブ、輝石ラッキー、ゴツメヤドラン、改造ダークライ、ヤャンデラ。

 

一方、イユは困惑していた。

先程まで黒い服を着ていたのに、今は煌びやかなドレスに身を包んでいるじゃないか。

 

 

「え? え? 何コレ」

 

「マホーショージョ」

 

「え? え……ッ? え!?」

 

「んー?」

 

 

やりすぎ?

 

ゴメンね、キュルキラちゃん、つい楽しくなっちゃって。

 

そうだよね。イユちゃんファンに怒られるよね。

やっぱりさ、ほら、あんまり混ぜすぎるのは良くないよね。

 

だからさ、ほら、ね? ご機嫌とらないと。

ファンフィクションは終わり。キャラ崩壊はいけないね。

自分の知ってるキャラクターじゃねぇとお前らプンプンだもん。

 

 

「だから、はい、おしまい」

 

「ア!」

 

 

イユは片目を押さえる。

 

 

「思い出そうね、イユちゃん。あなた、クールキャラでしょ?」

 

「ア……! アァッ!」

 

「ん? でも、あれ? なんでクールになっちゃったのかなぁ?」

 

「ア! アァ! アァァアァア!」

 

「………」

 

 

下卑た笑みで、キュルキラはイユを睨んだ。

 

 

「思い出せよ。オリジナルの人生を」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

醜く歪む表情。

イユは思い出した。そうか、そうだった、今のイユはブックメイカーが弄ったキャラクターだ。

こんなに感情豊かではなく、本来のイユは冷め切っている。

 

なぜ? それを今、思い出した。

ハッキリと、全部。あの時の痛みと共に。

 

 

「イユ……?」

 

 

起き上がったネオは、掠れた声をあげる。

イユから、変なものが出てきた。

それは、まるで、巨大なカラス。ケーキの王冠を被った異形のモンスター。

 

 

「なに――、あれ」

 

「魔女」

 

「は?」

 

「いやだからソウルジェムがさ、グリーフシー……、まあシラネェかお前らじゃ」

 

 

分かりやすく言いましょう。

キュルキラちゃんは胸を張って説明を開始する。まあ要するに一言ですよ。簡単な一言。

 

 

「イユちゃんは、化け物になりましたとさ!」

 

「う、ウソだ……!」

 

「本当だよォ。まあでも、ウソにできるけど」

 

 

キュルキラは回し蹴りで、近くにあった文字を蹴る――、もとい足につけた。

文字は足に吸い込まれると、キュルキラにその世界の力を与える。

 

 

『▲ラブライブ!』

 

 

一瞬だった。

 

 

「ハーメルンが導く世界の力を使えば、こういう事もできちゃう」

 

 

ネオは――、千翼に戻っていた。

 

 

「戦いのない世界で暮らし」

 

 

学校だった。

ホール、そこで煌びやかなライトが、レーザービームが飛び交う。

 

 

「争いのない毎日を生きる」

 

 

ステージの上にいたのは可愛らしい衣装に身を包んでいるイユの姿だ。

マイクを持って、他の女子生徒と一緒に踊っており、千翼は思わず目を奪われる。

 

 

「くそったれなアマゾン共が生きる世界より、よほど素敵だとは思わない?」

 

 

イユは千翼を見かけると、笑顔で手を振った。

千翼は思わず手を振り返す。

だが、ヌゥっと真横から伸びるキュルキラの顔。

 

 

「アマゾンキラーのイユちゃんより、スクールアイドルのイユたんで良いじゃない。一緒に目指そ? ラブライブ」

 

「……ッッ!!」

 

「まあ、そもそも、選択肢ってないんだけどね」

 

「え?」

 

「だってほら、これ結局幻だから、本物のイユちゃんはさっき化け物になったでしょ?」

 

「!」

 

「分かってるよな王子様。戻せるのは、ブックメイカーちゃんだけだよ」

 

 

世界は元に戻る。ネオのみ、挑発を解除するキュルキラ。

そして走るネオ。腕のブレードを近くにいたエグゼイドに命中させる。

 

 

「グアァア!」

 

「ッ、千翼!?」

 

 

そして続けざまにオメガへ膝蹴りを。

よろけた所を組み合っていく。

 

 

「ごめんッ! ゴメン!! でもイユを助けるためなんだ!!」

 

「落ち着け千翼ッ! 今はそんな事してる場合じゃないだろ!」

 

「場合なんだよ! イユは化け物じゃ終わらせない!」

 

「クッ!」

 

 

抵抗を始めるオメガ。魔女(ばけもの)になったイユは、カァカァ鳴き声をあげて暴れ始める。

すぐにGやエグゼイドもネオを止めに入るが、それを見てキュルキラはひたすらに笑っていた。

 

 

「隙だらけだッつぅの!」『▲ハリー・ポッター』

 

 

キュルキラが腕を振るうと、Gとエグゼイドの体が浮遊を開始する。

さらに腕にはどす黒い光が集中していき、掌を前に出す。

 

 

「アバダ・ケダブラ!!」

 

 

悲鳴が聞こえた。

光はエグゼイドやGに直撃すると、一撃で変身を解除させる。

死の魔法は格別だ。相手がどれだけ万全の状態でも即死させる。尤もライダーたちの場合、鎧を纏っていれば変身解除に留まるようだが。

 

地面を転がるゴロウと永夢。

さらにイユが翼を羽ばたき、風を発生させることで余計に動きを鈍らせる。

 

 

「なでしこ!」「うん!」

 

 

だが、もちろん他のライダーが黙っちゃいない。

まわりこむ様に走ってくるメテオとなでしこ。キュルキラはそれを確認すると、僅かに唇を吊り上げる。

 

 

星屑(タグ)! 台本形式(シナリオライター)!」

 

 

命令からほぼタイムラグなしに笛を吹くハーメルン。

 

 

キュルキラ「フフフ」

 

なでしこ「え? な、なにこれ!」

 

 

ハーメルンの頭上にモニタが出現。

発せられた言葉が、発言者の名前と共に刻まれていく。

 

 

メテオ「構うな! 一気に決めるぞなでしこ!」

 

なでしこ「う、うん! えいッ!」

 

 

何かされる前に倒す。

激しい拳と蹴りのラッシュがキュルキラに襲い掛かった。

はじめは拳で弾いていたキュルキラだが、メテオ達は本気だ、ましてやココで決めると意気込んでいる状況。

キュルキラのお粗末な体術はすぐにねじ伏せられ、メテオは拳で激しくキュルキラの胴や顔を打っていく。

 

 

メテオ「ホワタタタタタタ!!」

 

キュルキラ「グッ! ガハッ! チッ!」

 

なでしこ「エイッ! ヤァアア!」

 

キュルキラ「グッ! チィイ! まずいか!?」

 

メテオ「逃がすか!」

 

キュルキラ「ガハッ! グゥウ!」

 

メテオ「ホワタッ! ホワッチャ!」

 

キュルキラ「グッ! グィイ!」

 

メテオ「アタタタタタタタ!!」

 

キュルキラ「ガッ! ググガガガガ!!」

 

メテオ「ホワッッ! チャァアアア!!」

 

キュルキラ「ギャアアアアアア!!」

 

 

キュルキラはダメージに叫び、地面を転がる。

一方で決めるために走り出したメテオ。それを見て、キュルキラが叫ぶ。

 

 

キュルキラ「推敲(チェック)!」

 

 

ハーメルンの頭上にあったモニタが移動し、キュルキラの前へ。

表示されるのはまさにバックログ。メテオたちが迫る中、キュルキラはニヤリと笑みを。

 

 

キュルキラ「役割交換(シフトチェンジ)!」

 

 

するとどうだ、バックログの文字が変わっていく。

主に、役割、そう、名前が。

 

 

●●●

 

キュルキラ「ホワタタタタタタ!!」

メテオ「グッ! ガハッ! チッ!」

なでしこ「エイッ! ヤァアア!」

メテオ「グッ! チィイ! まずいか!?」

キュルキラ「逃がすか!」

メテオ「ガハッ! グゥウ!」

キュルキラ「ホワタッ! ホワッチャ!」

メテオ「グッ! グィイ!」

キュルキラ「アタタタタタタタ!!」

メテオ「ガッ! ググガガガガ!!」

キュルキラ「ホワッッ! チャァアアア!!」

メテオ「ギャアアアアアア!!」

 

●●●

 

 

「台本形式解除! オーケー! 投稿(アップロード)!!」

 

 

すると地面に倒れるメテオが見えた。

装甲のあちこちに殴られた様な痕、そこから煙が上がっている。

 

 

「ば、バカな! なんだ……!?」

 

 

一方のキュルキラからはダメージが消えているように見えた。

それはそうだ。殴られたのはキュルキラではなくメテオなのだから。

 

 

「ククク! 素晴らしいわ。そして私自身が恐怖する! 神の力の一端!」

 

 

キュルキラは両手を前に出した。そこから放たれる紫色の光が、メテオに駆け寄ろうとしたなでしこに命中する。

 

 

星屑(タグ)! 作者は豆腐メンタル(ガラスハート)!」

 

 

ハーメルンが笛を吹く。

するとなでしこに異変が起こった。背筋を伸ばし、棒立ちとなる。

 

 

「ッ、どうした撫子!」

 

「え、えっと……!」

 

 

体が震え始める。

視線の先には首を回すキュルキラが。

 

 

「なでしこ。私を攻撃したら、殺す!」

 

「!!」

 

 

なでしこは腰を抜かし、ガクガクと震え始める。

キュルキラはなでしこに恐怖を植え付け、さらにそれを凄まじい勢いで増幅させていった。

天真爛漫で物怖じし無いなでしこも、今は些細な悪意ひとつで体が固まり、心が震えて動けない。

 

 

「見える? ライダー共! これが神の力、そして世界の力なの!」『▲ドラゴンクエスト』

 

 

両手を広げるキュルキラ。

そこへ凄まじい炎と風が収束していく。

 

 

「右手にベギラゴン! 左手にバギクロス!」

 

 

両手を叩き合わせ、エネルギーを一つに。

 

 

「合体魔法! 紅蓮裂斬ッ、ベギラクロスッッ!!」

 

 

巻き起こる火炎烈風。

イユごと周囲を攻撃し、風が吹きすさぶ音、炎が轟く音、ライダーたちの悲鳴がキュルキラの耳に木霊する。

 

 

「フフフ! 強いでしょう? 怖いでしょう!? 仮面ライダーよりも強くて魅力的な世界はたーくさんあるの! だからさぁ、もうさぁ」

 

 

キュルキラの声が研ぎ澄まされたものになる。

偽りじゃない、仮面じゃない、本当の声だった。

 

 

「いらねぇんだよ、お前らは」

 

 

立つキュルキラ、倒れるライダー。

離れたところで停車しているリボルギャリーの内部では、それを晴人が確認していた。

 

 

「まずいな。俺もいった方がいいか」

 

「それは困る。ここを離れると我々を守る人間がいない」

 

 

ヘッドギアを被っているジョウジはうろたえている様には見えない。

現在、別のチャンネルに侵入するべく同期中だ。

 

さらに隣においてあるモニタの中では『別のプログラム』が高速で展開中だった。

なにやらモニタの中に『人型のシルエット』が。どうやらまだ姿を見せていないライダーもいるらしい。

 

そしてなによりも座っているミライ。

キュルキラの目的は彼女だ。現在は、イブとなっており、小さくため息を漏らす。

 

 

「そもそもウィザード。あなたが行っても勝てるかどうか」

 

「分からないぜ。やってみなくちゃ」

 

「それよりも――」

 

「?」

 

「まもなく、仮面ライダーゴースト。天空寺タケルが死にます」

 

「なにッ!?」

 

 

イブは立ち上がり、壁を見つめる。

 

 

「……連れて行ってくれませんか」

 

「あ、ああ」

 

 

魔法陣を広げる晴人、イブはそこへ歩き、消えていく。

 

 

「俺も付いていく。アンタは続けててくれ」

 

「なるべく速く頼むぞ」

 

 

ジョウジは淡々と言い放ち、同期を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、天空寺タケルは血まみれで倒れていた。

目は虚ろで、呼吸は弱弱しい。

なによりもその体を埋め尽くさんと突き刺さっている青い針。

 

 

仮面ライダーゴーストはつまらない!

 

仮面ライダーゴーストはくだらない!

 

仮面ライダーゴーストはシリーズの黒歴史!

 

 

悪意ある言葉が突き刺さり、進入していく。

ピヨピヨピヨ。可愛らしい鳴き声を放ちながら、言葉を次々に量産していくオラクル。

しかし悲しいかな、量産できるほどの意見が神なる世界には転がっているのだ。

 

 

「ハァ、失望させるな。私の力を使いながら――」

 

 

アマダムは――、おっと失礼、仮面ライダーゴッドはタケルの頭を踏みつけ、舌打ちを零す。

偉大なるアマダムよ。お前の中にあるのはクロスオブファイアの核。燃え上がる炎は時間と共に色を変え、燃え方も変えていく。

ゴーストもまたその中の一つ、火花が一つでしかない。

 

 

「見たぞ? お前の特徴である、浮遊アクションに苦情が来たらしいな」

 

 

そして無くなった。

全くもって哀れだとしか言いようが無い。もはや他者にとってはゴーストたるアイデンティティも不要と判断されたのだ。

 

 

「それを奪われ、最終的にはどうだ?」

 

 

アマダムはオラクルを見る。

 

 

「ゴースト、ツイッタフォロワー数37818」

 

「……エグゼイドは?」

 

「75045」

 

「ハァ」

 

 

アマダムは思い切りタケルを蹴り飛ばし、うんざりしたように首を振る。

 

 

「本スレがアンチスレになり、一年間見続けてきた連中からは否定され、擁護も『俺は面白かった』『個人的には良かった』などとイチイチ予防線を張らなければならないと思われている。ましてやアマゾンズと比べられ、さらにこき下ろされる始末!」

 

 

アマダムはタケルの傍に立ち、足で胸を――、心臓を踏みつける。

 

 

「オラクル、探せ、殺す刃を」

 

「フフフ! もうミツケテアル! アンチスレでな!」

 

 

鳴くオラクル。

 

 

仮面ライダーゴーストに良いところなんて一つもない。関わった人、全員がかわいそう

 

 

青い言葉が剣に変わる。

アマダムはそれをつかみ取ると、剣先をタケルに向けた。

 

 

「面白くない、格好悪いライダーなんて誰も愛してはくれない。世界が望まないんだよ。そんな存在は――ッ!」

 

「―――」

 

 

タケルは虚ろだった。

もはや、その目に(ひかり)はない。

 

 

「永遠に消え失せろ。仮面ライダーゴースト」

 

 

アマダムは剣を下へ、タケルの心臓へ突き刺した。

 

 

「……ククク! フハハッ! ハハハハハハハハハ!!」

 

 

翼を広げ、オラクルは笑い始める。

視えた。感じた。確認した。刃が進入し、タケルの炎を捉えた。

そしてかき消す。だからこそ完全な死が迎えられる。

 

 

「ヨイぞ、アマダム! 天空寺タケルがモツ、クロスオブファイアのショウメツを確認シタ!」

 

「と言うことは――?」

 

「ライダーのシだ!! フハハハハ!!」

 

「フフフフ! ヒヒヒ! ヒハハハハハハハハ!!」

 

 

ほぼ同じころ、キュルキラが同じ様に笑っている。

 

 

「ライダーとか、マジッ! くだらねぇ! 一部の信者が持て囃すだけで、ぜんぜんたいした事ない世界!」

 

 

でもそれは他も同じ。

周りに浮遊する世界の名前を掴みとると、手当たり次第に下へ投げ、踏みつける。

 

 

「ライダーが終われば次はコイツ等! 全部ゴミみたいな作品! 一部のキモオタしかよろこばねぇゴミみたいな集まり! かわいそうに! こんな気持ちわるいアニメとかゲームとか今すぐ捨てて、バーベキューとか行けばいいのに!」

 

 

笑いながら作品を踏みつけていくキュルキラ。

変身が解除された流星は歯を食いしばり、顔をあげる。

 

 

「否定の先に――ッ、お前達は何を視ているんだ……!!」

 

「……全てがなくなれば! 全てのしがらみも消え去り! そこには新しいものが生まれ、それがどんなものであったとしても存在に疑問はない」

 

 

キュルキラはツインテールを揺らし、ライダー達を睨む。

 

 

「くそったれなお前らが消えれば、仮面ライダーのありとあらゆる権利はブックメイカーちゃんのもの! そうすれば、彼が作り出す新たなる理想郷が救済となるのよ!」

 

「ッ」

 

「まったく、ブックメイカーちゃんがせっかく救ってあげるって言ってんのに、それに従わないゴミ共め。もうお前らは知らない、ブックメイカーちゃんも救うのは最後って言ってた」

 

 

今はとにかくライダーを殺す。

視てるか信者ども、今からキュルキラちゃんがブッ飛ばしてやるかんな。

え? なになに? ははあ、ゴーストの野郎はもうくたばったか。当然だな、ゴミは消える。当然なんだよ。

 

 

「――ッ」

 

 

倒れている千翼はゆっくりと目を覚ました。

どうやら衝撃で少し気絶していたらしい。体を起こそうと思っても、ダメージからなかなか言う事を聞かなかった。

しかしすぐにハッとする。隣ではイユとされている化け物が倒れていたからだ。

 

 

「イ――ッ、ユ……!」

 

 

先程までは動かなかった体も、なぜかすんなりと動いた。

千翼は肩で息をしながら、イユに近づいていく。

一方でそれに気づいた悠は、声を荒げた。覚えている。よく覚えている。まさにこれはあの時と同じだ。アマゾンになった人に語りかけるのは、意味が――

 

 

「ガアアアアアアアアア!!」

 

 

千翼は叫んだ。イユは千翼が近くに来たことを察すると、爪を伸ばして攻撃をしかけたのだ。

痛みにフラつく体では避けられない。結果、千翼の体内深くにイユの爪が進入していく。

 

 

「イユ! ダメだ、そんな事しちゃいけない!!」

 

 

止めようとする悠だが、彼もまた同じ様な状況。イユは体を起こし、爪を振るい、悠を攻撃する。

 

 

「ギャハハハ、なにやってんだよ」

 

 

バカな光景だ。

キュルキラちゃんは大喜び!

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

天空寺タケルは暗闇の中にいた。

それはまるで海の底。自分の体がゆっくりと落ちていくのが分かった。

闇は、暗い。だから自分の手がどこにあるのか、足がどこにあるのか、ましてや自分がどこにいるのかも分からなくなる。

 

でも、まあ、いいか。タケルはそう思った。

 

だって、その方が楽だ。それにその方が神々も望んでいる。

だから、もう、どうでもいい。なにも視えずともそれはそれでいいじゃないか。

アカリも御成も、マコトもアランも、他のみんなも否定され続けるよりはそっちの方がいい。

クロエ――……、いいんだ。もう、全部、消えてしまおう。

 

 

仮面ライダーとか、もう、どうでもいい。

 

 

「死ぬんだね、仮面ライダーゴースト」

 

「死ぬのですね、天空寺タケル」

 

 

暗闇の中、ハッキリとその姿を露にする、アダムとイブ。

ミライの姿ではあるが、別々のサイドテールと、青と赤の瞳がタケルを捉える。

二人は落ちるタケルをジッと視ていた。タケルは、何も答えない。

 

 

「風は……、火の勢いを強めます。けれども、ええ、風の力が強ければ火は消えてしまいますね」

 

「………」

 

 

それの何が悪い。

もういいじゃないか。他の皆は立派だよ。でもおれは違う。

もう、おれの世界に、戦う理由なんてない。

 

 

「ええ、ええ、それがあなたの答えならば受け入れましょう」

 

「終わりの時は等しく与えられるべきだ。キミが受け入れるならば、僕達は止めはしないよ」

 

 

だったら、もう……。

 

 

「はい。終わりにしましょう。仮面ライダーなど、世界を守る駒の一つにしか過ぎません。かわりはいくらでもいますから」

 

「その通り。ゴーストは特別ではない。なくなったところで、世界全体としてみればその影響はあまりにもちっぽけだ」

 

「アダムの言うとおりです。ですので、天空寺さん。あなたが死に、消滅するまでの残り時間を私達にください」

 

「?」

 

「と言うのもですね、聞きたいことがあるのです」

 

 

イブは優しく微笑みかける。

そして、ブックメイカーの部屋、そこに訪ねてくる人物が一人。

 

 

「……サガラ」

 

「よう。久しぶり――、いやッ、はじめましてだったか?」

 

「どうかな。難しい質問だ」

 

 

サガラは遠慮なく腰掛けると、不適な笑みを浮かべた。

 

 

「アダムとイブが天空寺タケルに接触したぞ」

 

「想定内だ。僕が観測者としての掟を破れば、別の観測者が様子を見に来るのは当然のこと」

 

「いいのか。変なことされちまうかも」

 

「されたとしても問題はない。ヤツはもう死ぬ」

 

「……それがお前のリンゴか?」

 

「なに?」

 

 

サガラはニヤニヤ笑いながら立ち上がり、窓の外を見る。

 

 

「お前は知ってるか? どうして俺の祖父さん、ヘルヘイムがかつてアダムとイブにリンゴを食わせようとしたのか」

 

「観測者は全知ではない。提示された情報を神の視点で確認できると言うだけだ。アダムとイブの件に関しては様々な言い伝えが残っている。その全てを見ることはできても、どれが本当なのかが示されているモノがないと、答えは分からない」

 

「ないのか、その答えとされているものは」

 

「ああ。本気で探せばあるのかもしれないが、僕には興味の無いハナシだ」

 

「そうか。残念だ。俺はいつも考えてるのに」

 

「今更知ってどうする? 観測者に戻りたいのか」

 

「いやぁ、ただの知的欲求さ。それにもうなんとなく答えは出てる」

 

「……聞こうか?」

 

「そうこなくっちゃ」

 

 

サガラは素早くブックメイカーの前に来ると、人さし指を立てる。

 

 

「リンゴを食べてはいけないと言われたのはアダムだけだった! イブは知らなかった、なにも」

 

「ああ」

 

「なぜアダムはイブには教えなかったと思う? 絶対に食うなといわれているリンゴを、もしもイブが齧ってしまう可能性を考えなかったのだろうか?」

 

「……それはたしかに」

 

「なあ、知ってるか? 心ってのはいじらしい。人間は押しちゃいけないスイッチほど押したくなる」

 

 

ブックメイカーの返事を待たずにサガラは言葉を続けた。

 

 

「本当はアダムはずっと思っていたんじゃないか? リンゴを食べたいと! どんな味か、気になって仕方なかった。けれども、イブにそんな思いを背負わすのは申し訳ない。だからこそイブにはリンゴのことは言わなかった。そして別の理由を用意した」

 

 

別にそれはなんだっていい。

あっちには怖い化け物がいるとか。あっちは空気が淀んでいるとか。あっちの草には毒があるとか。

なんだっていい、とにかくリンゴを使わず、他の言葉でイブを木に近づけないようにした。

 

 

「蛇はその隙をついて、言葉巧みにイブを操り、リンゴを食わせた!」

 

「それは背景であって、理由じゃない」

 

「だから理由に繋がるんだよ。なあ、おい、アダムはどんな気持ちだったんだろうな? イブがリンゴを食ってるのを視て」

 

 

そして、イブはアダムにリンゴを勧めた。

その結果、食べたのだ。アダムは、リンゴを。

絶対に食べてはいけないと知っていた筈なのに。

 

 

「それだ! そこに俺は答えを視た!」

 

 

つまり、蛇の狙いはイブじゃない。

 

 

「蛇は、アダムがリンゴを食べるかが知りたかったんだ!」

 

 

どうしても気になった。

 

 

「イブは確実に罰せられるだろう、それをアダムは知っていたはずだ。実を食うことは重罪、にも関わらず――ッ!」

 

 

アダムはイブが勧めたリンゴを食べた。

禁断の果実を、黄金の果実を口にしたのだ。

 

 

「僕は、イブが大切だった」

 

 

アダムはタケルに同じ様なことを話し、そしてそう口にした。

頬を染め、嬉しそうに、けれども少し切なげに微笑むイブ。

彼女はリンゴを食べた。知らないでは済まされない。確実に罰せられる。楽園も追放されるだろう。

だからこそ、アダムはその罪を一緒に背負う道を選んだのだ。

 

 

「イブと別れることは楽園を追放されることよりも、よほど苦痛だったからね」

 

 

つまり蛇が視たかったのは、イブのために食べてはいけないと知りつつもリンゴを食べるのか、だ。

結果は食べた。それが蛇の望んだことかは知らない。けれど知りたかったのだろうて。

 

 

「天空寺タケルさん。質問がありますわ」

 

 

イブは問う。

あの日、あの時の蛇のように。

 

 

「愛は、この世界にあると思いますか?」

 

 

 

 

 

 

「愛とかあるワケねぇだろブァアアアアカ!!」

 

 

千翼たちの様子を見て、キュルキラは腹をかかえて笑い始める。千翼がイユを気にかける様子が酷くマヌケに映ったらしい。

 

 

「愛などない! ましてや創作物など!!」

 

 

突風を発生させ、オメガ達を吹き飛ばし、さらに笑う。

さらにオラクルの言葉が思い出される。愛など陳腐にもほどがある。

本当の愛があれば、離婚などと言うシステムは存在する筈がない。

 

もしも愛していると思っている人が強姦されればどうする?

 

もしも大火傷でもして見る影もなくなったら?

 

もしも魔法でゴキブリの姿に変わったらどうする?

 

それでも尚、愛を貫けるのか?

 

 

「人にはムリぃイ!」

 

 

欠落している生き物にそんな事はできない。

 

 

「ましてや忘れたかしら、お前ら戦わせてるのも特撮ファンとか言うアホみたいな奴らなんだよ! それが愛? 笑わせんじゃねぇよ!!」

 

 

だから汚すのさ。

人は嫌な事からすぐに目を逸らす。

だからアンチヘイトこそ究極の救いを齎すための刃に選んだ。神々を減らしていけば、やがて終わる。

 

 

「キタネェもんなんて、誰も見やしない。上辺だけしか見ない連中」

 

 

キュルキラは浮遊する世界を見る。

どれも一緒だろう。ライダーだけじゃない。全ての世界。

言っただろう。はじめる事はできても終わらせることはできない。

だからこそ終わらせるには強制的、無理やりじゃないといけない。

けれども『強完』じゃ愛は育めない。

 

 

「『私は』創作物と神の間に、愛は生まれないと思っています」

 

 

イブはタケルに、そう言いはなった。

 

 

「なぜならばそこには確固たる壁があるからです。分かりやすく言えば、アニメキャラクターとの間に愛は生まれないでしょう? 生まれたとしてもそれは愛のような何か、もしくは酷く一方的なものですね」

 

 

だからこそ、悪意ある言葉は鮮明になってくる。

面と向かうという状況がない以上、多少過剰なものでも漠然としたものに投げるため、遠慮、配慮が消えてしまうのだ。

 

 

「しかし意見は意見です。それは人の心が導き出したものには変わりませんわ」

 

 

だからこそ、本当だ。オラクルの言葉は。

 

 

「私も確認できるので、調べてみましたら、やはりあるのですね。ねえアダム」

 

「ああ。アンチスレやまとめサイト、SNSなど人の意見を述べる場所はたくさんあるからね」

 

「だから本当なんですよ、あれら言葉は。だからもしも貴方があの言葉に心を折られたのならば、これ以上戦う必要はないと、私は思います。ね? アダム」

 

「ああそうだね。タケル、ここでキミが戦う意思を固めようが、あの意見が消えるワケじゃない。キミの事をつまらないと思う人間は、もはやキミが何をしようが、その意見を変えることはないだろう」

 

 

タケルの目は虚ろだった。

そのままゆっくりと沈んでいく。アダムとイブはタケルを引き上げるでもなく、ただ微笑み、それをジッと見ていた。

 

 

「おや、クロスオブファイアが消えていますね。もう完全になくなっています」

 

「死んでしまうんだね」

 

「仕方ないでしょう。おやすみなさい、天空寺タケルさん」

 

「良い夢を。キミの終わりが、せめて良きものになるように祈っているよ」

 

 

沈むタケルと、浮かび上がるアダムとイブ。

 

 

「そうだ。ブックメイカーはオラクルを使い、あなたに黒を見せました」

 

「しかしそれは表裏一体。黒があれば、白もある」

 

「分かってはいるでしょうが、ブックメイカーのやり方は少し偏向が過ぎます」

 

 

ですので、最期の夢は、せめてもの白を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一切を疑うべし』

 

 

 

 

 

 

 

タケルの夢。

 

小さな背中が見えた。小さい手で必死に食パンを掴み、口に運んでいく。

もはや朝食を味わう余裕などない。全てを牛乳で流し込み、慌てて椅子から降りるとテレビの前に正座した。

期待しているのか、抑え切れないのか、ニヤニヤが止まらない。

 

男の子は、胸を抑えていた。

母親は優しそうな眼差しでそれを見ている。

 

青空に広がるタイトル。タケルは画面の中に、自分を見た。

 

 

『同じものを見たとしても、人は、個々で感じるものが違います』

 

 

別の男の子が泣きじゃくっている。

 

どうやらお泊り保育があるようなのだが、不安で行きたくないと駄々をこねている。

 

タケルはそれを無心で見ていた。

 

男の子は泣いている。

が、しかし、両親が持ってきた服を見て涙をとめた。

なにやら諭され、そして頷いた。割り切ったらしい。むしろ、楽しみだ、パジャマを着るのは。

 

友達に見せびらかしたい。パジャマ。

そこには、ゴーストとスペクターとネクロムが映っている。

 

不安は消し飛んだ。

両親がいなくても大丈夫。胸に、信じたヒーローがついているのだから。

 

 

『だから我らの存在はとても不確かだ。眼を通しているのに、耳を通しているのに、それはあやふやになってしまう』

 

 

青年が焦ったように走っていた。

まさか売り切れているとは思わなかったのだろう。同じことを考えている人はたくさんいるのです。

 

だから二件目で見つけた時は、思わず安堵のため息が漏れた。

思い出すのはイラストつきの手紙。歪んだ字で、脱字もあったが、一生懸命に書かれた内容を、彼は一生忘れることはないだろう。

 

サンタさんへ、いいこにしますで、ゴーストドライバーをくださぃ。

 

 

『ですから、人は時に思うでしょう。自分が本当に存在しているのか。生きているのかと』

 

 

母親は不安だった。

こういう事はなれないし、上手くいったかは今でも分からない。

 

しかし遠足から帰ってきた息子が、笑顔で『ゴーストのお弁当ありがとう』と言ってくれた時、母親の目から涙が溢れてきた。

ありがとうゴースト、チキンライスと海苔で作れる顔で。

 

 

『自分を含めた世界の全てが虚偽だと思う。なんのために、なぜ、そして我は誰かと。存在しているのかと迷う』

 

 

はじめての映画はおじいちゃんと一緒だった。

初めは音がうるさいとか、暗いとか聞いていたので不安だったが、祖父は大丈夫と手を引いてくれた。

 

映画が終わったころには、男の子は楽しそうに感想を述べている。

お祖父ちゃんもよく分からなかったが、孫が楽しそうだったので笑顔だった。

 

その時のことを話すと、お祖父ちゃんは病院のベッドで嬉しそうに頷いていた。

次はいつ会えるか分からない、だから男の子とお祖父ちゃんは最期の握手を交わした。

 

 

『ですが、まさにそのように疑っている意識が確実であるならば、今まさにそう思っている自分はその存在を疑い得ないとは思いませんか』

 

 

男の子が嬉しそうに、はしゃぎまわっていた。

仮面ライダーゴーストから、お誕生日おめでとうメッセージが届いたのだ。

 

ゴーストがぼくの事を知ってくれているんだ!

 

そうはしゃぎまわっていた。

 

よかったね!

 

 

『自分など本当は存在しないのではないか? と、疑っている、その自分自身の存在は否定できない』

 

 

薬の影響で嘔吐する息子を、父親と母親は涙を流して見ていた。

できる事と言えば、ただ背中を摩ることくらい。

しかし息子は大丈夫と答えた。その腰にゴーストドライバーがある限り、彼は世界で一番、強い男だった。

 

命を燃やし、必死に生きること。

死んでしまうかもしれない。けれど死んでも大丈夫。

ゴーストになって、家族を、友達を、大切な人たちを守る。

 

そう心に誓えた。ゴーストがいてくれたから。

 

 

『自分はなぜここにあるのか。そう考える事自体が、自分が存在する証明である。それが――』

 

 

男の子が、必死にペンを走らせる。

書き終わった。見返し、自慢げに頷く。

笹の葉にゆれるたくさんの短冊。その中に、男の子の願いがあった。

 

 

仮面ライダーゴーストになれますように。

 

 

「「それが――、我思う、ゆえに我あり」」

 

 

声が二つ、重なった。

 

 

「残念ですが、人は同じ時代(とき)に、同じものを、同じようには愛せませんわ」

 

 

イブはそこにいた。

 

 

「けれど、愛そうとすることはできる。生きていれば、いつかは」

 

 

微笑み、空を指し示す。

 

 

「僕達は、創作物と外の神に、愛は生まれないと言った。けれども――、愛を見出すことならばできる。愛に気づくことができる」

 

 

アダムは空を指し示す。

 

 

「ツイッターをフォローした3万人以上の人がいる。そうそう、日本おもちゃ大賞2016では、もっとも売れた玩具にキミのドライバーが選ばれたらしい」

 

「フフフ。小さな神々をはじめ、たくさんのヒトがゴーストになりましたね」

 

「スペクターかもしれないよ」

 

「まあ、そうですね。フフフ」

 

 

視線の先では、男の子が泣いていた。

 

 

「あら、アダム。彼はどうして泣いているのでしょう」

 

「どうやら、ゴーストの最終回を見て泣いているようだ」

 

「終わってほしくないんですね」

 

「終わってほしくないみたいだ」

 

 

空には無限大のマークがあった。

それは人の想い。ゴーストの敗北を望まぬ、ゴーストの終わりを望まぬ、応援の声。

 

 

「知っていますか? 大人になれば、食べられる食べ物も増えます」

 

「フフフ! 嫌いなものでも、好きな人が出してくれれば食べられる日が――、ああいや、食べようと思う時がくるかもしれない」

 

「そしたら意外と美味しかったと気づいたりするものです」

 

 

ほら、耳を澄ませば、ゴーストショーでお姉さんが叫んでいる。

 

 

『がんばれー!』

 

 

無数の声が続いた。

男の子、女の子、家族や、なかにはガチ勢のオトモダチ。

 

 

「もしかしたら――、その中に」

 

 

アダムは微笑み、タケルを見る。

 

 

「新たな『アイ』が生まれるかもしれないね」

 

 

世界が部屋に移った。

なに、何のことはない、ただの子供部屋だ。玩具があり、本がある。

部屋では、また別の男の子がなにやら色鉛筆を走らせている。

オレンジ色と、黒色を使っていることから察してほしい。それはイラストであり、手紙。

タケルはフラフラと歩き、それを覗き込む。

 

 

「!」

 

 

アダムとイブはタケルの両隣に、やってくる。

 

 

「夢を見たのさ、彼は」

 

「どんな夢かしら?」

 

「ゴーストの今」

 

「青い鳥に苛められている夢ですね」

 

「ああ。ゴーストが負けてしまう」

 

「変身できないもの」

 

「だから、ほら」

 

 

これ、つかってください。と、書いてある。

稚拙な絵の隣に置かれたのは、仮面ライダーゴーストの変身、なりきり遊びが楽しめる『変身ベルト、DXゴーストドライバー』。

 

 

「―――」

 

 

すすり泣く声が聞こえた。鼻を啜る音、しゃっくりが漏れる音。

テーブルが消える、ペンが消える。部屋が消える。男の子だけが見えた。

タケルは、その前にへたり込み、手を伸ばす。

 

言葉はいらなかった。ただ、抱きしめる。

彼の、彼らの、命を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

「!?」

 

 

アマダムは、オラクルは怯んだ。

 

 

「ナンダ!?」

 

「ッ、羽――ッ?」

 

 

なんだこの、視界を覆うほど舞い上がった白い羽は。

 

 

「!」

 

 

アマダムはゾッとして後ろに下がった。

羽の向こうに陽炎が生まれ、そこにあのシルエットが見えた気がした。

しかし姿はない。シルエットはハッキリしない。

 

いない?

 

いる?

 

分からない。

まるでそれは、幽霊のように。

 

 

「ナンダコレハッ!?」

 

 

周囲、次々と浮かび上がる絵。

へたくそ? かもしれない。が、世界にひとつだけの想いだ。

 

それを書いたのは、(アイ)

 

それを見つけた、(アイ)

 

心にバッチリと(アイ)

 

分かっていても(アイ)

 

それでも(アイ)

 

 

だから、それは、偽りの無い――、『I』

 

 

『アァアアアアアアイッッ!!』

 

「!??!?」「ッ!!」

 

 

絵が収束していき、オレンジと黒を基調としたパーカーに変わった。

飛びまわるそれは怯んでいるオラクルを吹き飛ばし、そしてアマダムを直撃し、吹き飛ばす。

 

 

「グアァアア!」

 

「ンンンンッッ!!」

 

 

地面を転がる怪人達。

 

 

『ゥェバッチリミナー!』『ァバッチリミナー!』『バッチリミナー!!』

 

「これは、まさか!?」

 

 

体を起こすと、やはりいるのだ。

印を切っている、天空寺タケルがッッ!!

 

 

「お前ェエエエ!!」

 

「天空寺タケル……! ナゼダ! お前のクロスオブファイアはショウメツしたハズナノニ!!」

 

 

その通り。間違ってはいない。

クロスオブファイアが完全に消えたから、天空寺タケルは確実に死んだ。

だが、忘れてはいないだろうか。

 

 

「変身ッッ!!」『カイガン!』

 

 

ヒーローは!

 

 

『オレ!』

 

 

一度死んで――、蘇る!

 

 

『レッツゴー! カクゴ! ゴ・ゴッ・ゴッッ! ゴーストッッッ!!』

 

 

仮面ライダーゴーストは思い切り吼えた。

吼え、吼え叫び、そして全速力で走る。

 

フラッシュバックする笑顔。期待。希望。

 

子供達の笑顔が、ゴーストの背中を押す翼に変わる。

分かっている。分かってるよ。見ててみんな。

 

 

仮面ライダーゴーストは、わるものになんか負けないからね。

 

 

「ォオオオオオオオオオ!!」

 

「く、クソォォオ!」

 

 

アマダムは両手から次々に光弾を発射し、ゴーストをとめようと試みる。

しかしゴーストは浮遊、オレンジ色に発光しながら空中を不規則な動きで飛びまわり、次々に光弾をすり抜けていった。

そして本当にすり抜ける。ゴーストに命中した弾丸は、なんのことはなくゴーストの体を通り抜けていった。

 

 

「んなッ!」

 

 

まさに、幽霊(ゴースト)

それは弾丸だけじゃない。ゴーストは飛行し、アマダムを通り抜ける。

そしてその背後にいたオラクルへ。

 

 

「ウォァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ゴ――ッッ」

 

 

その頬へ、拳を抉りこませる。

 

 

「グゴォォォオオッォオォッ!!」

 

 

きりもみ状に回転しながら、オラクルは地面へ倒れていく。

ゴーストはドライバーからガンガンセイバーを抜くと、思い切り背後へ振るった。それはアマダムの身を切り裂き、火花を散らす。

 

 

「うぅぅうッ!」

 

 

ゴーストは一瞬でアマダムの背後に回っていた。

上部ブレードを取り外し、柄頭へ連結。ナギナタモードへ変えると、ダブルブレードでアマダムを切裂いていく。

 

 

「グッ!」

 

 

右へ刃を。

 

 

「ガァア!」

 

 

左へ刃を。

 

 

「ハァアア!!」

 

「ゴアァアアア!!」

 

 

思い切り刃を突き出し、アマダムをオラクルのもとへ吹き飛ばす。

重なり、倒れる敵たちを前に、ゴーストは確かに立っていた。

 

 

「お前ェエ……!」

 

「おれは戦う! おれは――ッ! 仮面ライダーゴーストだ!!」

 

 

なぜ生まれてきたのか、なぜ戦うのか。

 

なぜ存在しているのか。

 

それは考えても分からない。

否定されながら生きることは何よりの苦痛だ。しかし、このまま終わるのはイヤだと、あの光景を視て思った。

だから生きるのだ。たとえそれが茨の道であったとしても。

 

分かっている。

先輩が言っていた。戦わなければ生き残れない。だから戦うのだ、生きるために。

 

 

(いのち)ッ、燃やすぜ!!」

 

 

タケルの魂を激しい炎。クロスオブファイアが包み込む。

生き抜けば、いつか答えを見つけられるかもしれないから。

この胸に宿る炎が、闇を照らしてくれるかもしれないから。

 

 

「オラクル!」

 

「ワカッテイル! 新しいホノオ!? オロカナ! ならばまたケシテミセルだけダトモ!」

 

 

さえずり。ピヨヨヨ。

 

 

仮面ライダーゴーストが一番嫌い

 

 

神託。

言葉は鋭利な矛となり、ゴーストに刃を向ける。

だがその時だ。ゴーストが懐から、アイコンを取り出した。

 

 

「お願いします。おれに力を!」

 

 

スイッチを入れて起動。

通常アイコンには数字が記されているものだが、それは漢字の『眼』を模したマークであった。

そうだ、ゴーストは、眼で戦っているのだ。

 

 

『アーイッ!』

 

(なんだッ、あのアイコンは……!)

 

 

アマダムの知らない力だ。

そして排出されるパーカーも見たことがないデザインだった。

とは言え、予想はできる。背中の部分にあるハートマーク。

ハートとは、魂、命、そして愛の象徴。

 

 

(まさか――!)

 

 

そうしていると、ゴーストはドライバーへアイコンをセットし、レバーを引く。

 

 

『カイガン!』『アダムとイブ!』

 

「!」

 

『オレラノマジワリ! スベテノハジマリ!!』

 

 

パーカーがゴーストへかぶさると、光が巻き起こった。

温かい光だ。そしてその中から姿を現したのは、仮面ライダーゴースト・アダムとイブ魂。

 

上が青、下が赤、僅かに交わったところが紫色と言う三色からなるパーカー。

顔には男女の手がリンゴに伸びている絵が。

そして一番の特徴は背中にある巨大なハートの装飾だ。

赤い女性のシルエットと、青い男性のシルエットが向かい合っている姿が、ハートの形になっていた。

 

 

「アダム! イブ!」

 

 

それを視たのか、思わず身を乗り出すブックメイカー。

一緒にいたサガラもヘラヘラと笑い始める。

 

 

「アイツ、アダムとイブの眼になったのか」

 

「――ッッ!!」

 

 

歯を食いしばり、目を細めるブックメイカー。

それはアマダムも同じだった。

アダムとイブは観測者。つまりブックメイカーと同一の存在。その力を使えるとなればそれは――

 

 

「死ネッッ!!」

 

 

一方でオラクルは構わず、青の矛を発射した。

狙うのは心臓。ハートのど真ん中。まあなんとも鋭利な一撃ではないか。あれを頂けば、またも再起不能になるかもしれない。

しかしゴーストは不動だった。ただ前に、手をかざすだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーの中だと、ゴーストが一番好き

 

「!?」

 

 

浮かび上がる文字。それは盾に姿を変えて矛とぶつかり合った。

二つは競り合いもなく、同じように砕け、同じ様に地に落ちる。そして消滅。

 

 

「それは……! 神託!!」

 

「我ら想う――」『ダイカイガン!』『アダムとイブ!』『オメガドライブ!』

 

 

次々とゴーストの背後に浮かび上がっていく文字たち。

 

 

平成ジェネレーションズ最高! 特にゴーストが復活するシーンで涙出た!』『ゴースト面白かったな』『ゴーストと握手した! やばい! 推しになりそう!』『ゴースト見てからたこ焼きばっかり食べてる』『娘がマコトに惚れてるみたい』『息子にゴーストドライバー買ってあげたら狂ったように喜んでる。買ってよかった』『カノンちゃんかわいい!』『俺は胸を張ってゴーストが好きだと言えるぞ』『またゴーストが見たいなぁ』『ゴースト書きやすいから息子のお絵かき帳がゴーストで埋まってる』『ゴーストのフィギュア買いました。いやぁ、メチャクチャ格好イイですね!』『タケルみたいになりたい』『はじめて玩具コンプしたわ。すごい満足感』『キャラクターは面白いし、音楽めちゃくちゃいいよね』『Vシネ最高や! ゴーストって面白いと分からされたわ!』『ゴーストってかっこいいよね。好き』『ゴーストにこんなにハマるなんて想ってなかった。出会えたことに感謝』『仮面ライダーゴーストは大切なことを教えてくれた』『仮面ライダーゴースト最高!

 

 

「グッ!」

 

「ォオォ!」

 

 

広がる文字に怯むアマダムとオラクル。

そしてこれは何もゴーストだけじゃない。他のライダー達の心にも、同じ様な文字が次々に浮かび上がっていった。

 

 

「………」

 

 

映司は空を見上げながら、グッと胸を掴んだ。

みな、それぞれ何を感じたのかは分からない。けれども、確かに何かは胸に届いたはずだ。

 

 

「故に!」

 

ゴーストは走り出す。

同時に文字がゴーストの両手に吸い込まれていった。

 

 

「我らあり!!」

 

「グ――ッ、アオォオォオアアア!!」

 

 

消えるゴースト、現れるゴースト。場所はオラクルの目の前。

そして思い切り突き出す両手。掌底がオラクルの胴を打ち、青い鳥は羽を撒き散らしながら後方へ。

 

 

「ガァア!」

 

 

そして倒れる。

それを見ていたアマダムに宿る危機感。これはマズイ! マズイ、マズイマズイマズイ!

 

 

「オラクル!!」

 

「!」

 

 

アマダムが手を伸ばすと、オラクルの近くに魔法陣が出現。

逃げろという意味だ。万が一にもココでオラクルを失うのはマズイ。だからこそ撤退を。

 

 

「オオッォォォォォォオオッォ!」

 

 

屈辱なのか、オラクルは手を震わせ、思い切り地面を殴りつける。

が、しかし、オラクルも今のゴーストの危険性を分かっているのか。立ち上がるとすぐに魔法陣へ飛び込んだ。

アマダムはそれを確認すると、すぐに魔法陣を消し去り、ニヤリと笑う。

 

 

「調子にのるなよ天空寺タケル! 否定を主とするオラクルには確かに通用する力かもしれないが、私には効かない!」

 

 

なぜならば、アマダムは否定も肯定も超えた先にいるからだと。

ライダーも怪人も全て、クロスオブファイアを宿すものだ。罪の十字架。

そのコアを宿すアマダムこそが全ての頂点。

だからこそ使えない一部は切り取るべきだ。

 

 

「不出来なお前はもういらない! たとえ何度復活しようとも、私が消し去ってくれる!」

 

 

そう言って、アマダムの手に現れたのはガンガンセイバー。

 

 

「お前の力、ゴーストの力を使ってな!!」

 

「……おれを応援してくれているみんなのために、おれはお前に勝つ!」

 

「ハハハハ! 空虚な言葉だ。本当は今も分かってる! そんなバカな事のために戦えないと!」

 

 

また否定が待っている。肯定あれば否定もある。

 

 

「かもしれない。でも、そんな想いを隠すために、おれは仮面をつけたんだ!」

 

「!?」

 

「おれは――」

 

 

記憶の映像がフラッシュバックしていく。 

あの笑顔を、あの心を、あの優しさを。

あの、愛を守れれば――

 

 

「おれは、それだけでいい」

 

 

たとえ黒いものを抱えていても。

たとえ周りからどんな酷い言葉を浴びせられようとも。

自分の信じるもののため、自分の愛したもののために戦う。

命を燃やす。

 

 

「おれは、そういう人たちと一緒に戦ってきたんだよ!!」『アーイッ!』

 

「!」

 

「勝負だアマダム! おれがッ、仮面ライダーゴーストが相手だ!」『カイガン!』『ムサシ!』『ケットウズバット! チョウ! ケン! ゴウ!』

 

「面白い、八つ裂きにしてやる!!」

 

 

共にガンガンセイバーを二刀流にして走り出す。

すぐに交差する四つの刃。刃がぶつかり、競り合う中、アマダムとゴーストはにらみ合う。

 

 

「この戦いで喜ぶのは、お前達を否定する連中だぞ。否定されて、面白半分に貶されて、それでもいいのか。それでもお前達はあいつ等のために傷つくのか!」

 

 

肯定する側も、この戦いを見てゴーストに更なる戦いを望む。

 

 

「奴隷になるつもりか? 死体かよテメェ! いい加減に自分だけの人生を歩もうとは想わないのか!?」

 

「分からないのかアマダム!」

 

「アァ!?」

 

「これが、おれの望んだ道だ!」

 

「なに!?」

 

「おれの命は、おれの人生は――ッ!」『オメガスラッシュ!』

 

「!」

 

「おれだけのモノだァアア!!」

 

 

ゴーストは左手にもつ剣でアマダムを切り裂くと、睨みつつ体の向きを変更する。

さらにアマダムの反撃を、左の剣でなぎ払うよう弾き、右腕に持っていた剣を振り上げて、そのまま叩くように振り下ろした。

 

 

「ウォオット!!」

 

 

しかしそれを受け止めるアマダム。

当然だ。こんな雑魚には負けないという自身がある。

 

 

「英雄の力か! ハッ、笑わせるなよ! 弱い人間がッ、私に勝てる訳ねぇだろうが!」

 

「クッ!」

 

「宮本武蔵! 知ってるぞ!」

 

 

左の剣を思い切りふるいながらゴーストは旋回。

右の剣を思い切りふるいながらアマダムは旋回。

火花散る中、別の火花も散っていく。

 

 

「佐々木小次郎との決闘で一対一の約束を守らず、弟子を連れていくようなヤツだ! 話によれば弟子達を連れて小次郎をリンチしたとも言われているクズ野郎だろ!!」

 

 

二人は回転しつつお互いを切り払う。

 

 

「んなヤツに憧れるなんざ、人間どもの程度が知れるな!」

 

 

アマダムはフィニッシュに左の剣を斜めに振り下ろした。

がッ、しかし、ゴーストはそれを剣で受け止める。

 

 

「違う!」

 

「アァ!?」

 

 

アマダムの剣を弾き、カウンターの切り払いを当てる。

 

 

「武蔵は強かった! たとえ俗っぽいと言われても、勝ち続けた!」

 

「卑怯な手でな!」

 

「だからこそ生き残れた! 彼は生きたかったんだ!」

 

 

斜めに連続切り、アマダムも乗ってきた。

刃がぶつかり合い、激しい音を立てる。だからこそ双方、叫ぶように言葉を放った。

 

 

「心、常に、道を離れず! 武蔵の想いをおれは感じている! たとえ湾曲した捉え方をしたとしても! 強さを求めること、生き抜くこと! 強くなることを学ばせてもらったんだ!」

 

「アホか! クズから何を学んでも意味ねぇだろうが!」

 

「おれにとっては!!」

 

 

ゴーストは二刀の刃でアマダムの剣を受け止めると、思い切り刃をクロスに振るい攻撃を弾いた。

 

 

「クズじゃない!!」

 

「グッ! オォォオ!」

 

 

赤い斬撃がアマダムを押し出す。

その隙に、ゴーストは新たなアイコンを起動させる。

 

 

「頼む! エジソン!」『カイガン!』『エレキ・ヒラメキ・ハツメイオーゥッ!』

 

 

ゴーストはガンガンセイバーを銃に変え、電撃を発射しながら前に出る。

 

 

「おいおい! またクズのお出ましだ!」

 

 

一方でアマダムもまた同じ様にガンモードに変えると、電撃を発射し相殺しあいながら前に出て行く。

 

 

「エジソン! 他人のアイディアパクリまくって! あげくにライバルが製作した電力同源を電気椅子に使用して囚人を処刑して印象を地に落としたヤツだろ!!」

 

「そうかもしれない! でもエジソンは電話を作ってくれた! 電球の進化を進め、今のおれたちの暮らしを豊かにしてくれた!」

 

 

良いも悪いもあるのが人。それがまた、英雄だ。

 

 

「天才とは1%のひらめきと、99%の努力である! そう教えてくれた!」

 

 

銃口同士がぶつかり合い、激しいスパークが巻き起こる。

 

 

「ハハハ! 知ってるか! それは誤用だ! 本当はひらめきが無ければ、努力は無駄になるっていう方の――」

 

「何かがキミの考えたとおりに運ばなかったからといって! それが役立たずだという意味にはならない!!」

 

「ア!?」

 

「これもエジソンの言葉だ!!」

 

 

銃を持っていないほうの腕で繰り出された拳。

反応が遅れ、アマダムはそれを顔面で受ける。

 

 

「ゴガッ!」

 

 

帯電しているゴーストの拳。

やられた、フラつき、後退していくアマダム。

 

 

『アーイッ!』『カイガン!』『ニュートン!』

 

「!」

 

『リンゴガラッカー! ヒキセヨマッカァー!』

 

 

ゴーストが発生させる引力がアマダムを直撃。

しかしアマダムは斥力を発生させて対抗。二人は競り合うことに。

 

 

「アイザックニュートン! 他人の提出した論文を自分のものとして発表したカス野郎の登場だな!!」

 

「ニュートンはおれに教えてくれた! どんな行動にも、必ずそれと等しい反対の反応があるものである!」

 

「グッ! おぉぉ!」

 

 

アマダムは踏ん張るものの、足裏が滑り、地面を抉りながらゴーストに近づいていく。

 

 

「それがおれのリンゴになる!」

 

「ヌァアア!!」

 

 

ついには足が地面を離れ、アマダムは一気にゴーストの眼前に。

 

 

『カイガン!』『ベンケイ!』『アニキ! ムキムキ! ニオウダチ!』

 

 

ゴーストガジェット、クモランタンが飛来、ガンガンセイバーをハンマーモードに変えてアマダムを打ち返す。

 

 

「チィイイ! 悪人の魂が融合した象徴! クズの集まりガァ!!」

 

 

走り、拳を思い切り打ち込む。が、ベンケイ魂は倒れない。

 

 

「違う! 弁慶は勇敢だった! 大切な人を守るために、全身に矢を受けても決して倒れなかった英雄だ!」

 

「んなモン作り話だろうがァ!」

 

「違う! 本当だ! おれにとっては絶対に!」

 

 

踏み込み、ハンマーを振るうゴースト。

アマダムはエネルギーで盾を作るが、ハンマーはそれを容赦なく破壊すると、アマダムに直撃する。

 

 

「グアァア! ああぁ! クソが! なぜ私が人間の力ッ、如きに……!!」

 

「ビリー! おれに力を!」『カイガン! ビリーザキッド!』

 

『ヒャッパツヒャクチュウ! ズキューンバキューン!』

 

「ソイツはどうだ? 多くの人間を殺した、怪人みてぇなヤローだろうが!」

 

 

バットクロックとの二丁拳銃。

光弾を発射していくアマダム。並行に走る二人の弾丸が次々にぶつかり合い、散っていく。

 

 

「ビリーは正義の義賊だ! 弱きを助け強きをくじく! それに一番最初に人を撃ったのは、お母さんを馬鹿にされたからだ!」

 

「それがどうした! まさか殺人を正当化するつもりか!」

 

「いやッ、それはダメだ! だからビリーは裁かれた!」

 

 

けれども行った善意はなかったことにはしない。

それを語り継ぎ、彼は英雄となった。

 

 

「ワケわかんねぇ事をゴチャゴチャと!!」

 

 

アマダムの周りに無数の光弾が出現する。

手を前に出すと、それが一勢にゴーストへ向かっていった。

 

 

『キョクメイ! ウンメイ! ジャジャジャジャーン♪』

 

 

交響曲第5番・運命!

音楽が鳴り響くなか、ベートベン魂は腕を振るう。

魂のオーケストラ。その音は多くのライダー達の心に響いたであろう。

 

 

「ベートーベン! 空気も読めず、女にもモノを投げつける最低のゴミ野郎だったか!」

 

「それでも、この曲は多くの人の心に響いた」

 

 

それは確かに英雄の残したものだ。

たしかに、嫌いな人もいるだろう。人間性を知って、嫌いになる人もいるだろう。

 

しかしどんな人間にも白と黒がある。それを思い知らされた。

だから、受け入れたのだ。白を守るために。黒が大きくなっても。白がほんの少し、欠片でもある限り。

 

なにより、いつか、そしたら――

 

 

「おれも、何かが残せるかもしれない」『ダイカイガン』『ベートーベン・オメガドライブ!』

 

 

腕を振るう、曲が鳴る。

するとアマダムの弾丸が次々に弾けていった。

 

 

『カイガン! ロビンフッド!』「ハロー! アロー! モリデアオウ!」

 

 

ロビンフッド。虚構の英雄だ。

存在してはなかったとされるのが一般的である。

しかし、それでも語り継がれている。知っている人間がたくさんいる。

時にはドラゴンになったり、時には美少女だったり、時には破天荒だったり、時にはクズだったり。

他者観測の中では伝説は大きく形を変えていく。

 

だが、それでも、その中のどれかがヒトの心に刺さるかもしれない。

愛を、打ち込んでくれるかもしれない。

 

 

『ダイカイガン!』『ロビンフッド・オメガドライブ!』

 

 

アローモードを思い切り振り絞る。

アマダムもまたエネルギーで弓を作り、思い切り振り絞った。

 

ああ、怖いさ。辛いさ。

 

でも――

 

仮面の裏で、タケルは一筋涙を流す。

でも安心してくれ。思い出したのは最終回で泣いてくれた子。

安心してくれ、大丈夫だ。

 

 

仮面ライダーゴーストは、終わらないからね。

 

 

「ハァアアアアアアアアア!!」

 

「ムァアアアアアアアアア!!」

 

 

矢と矢がぶつかり合い、激しい爆発を巻き起こした。

凄まじい衝撃に、ゴーストは一瞬倒れそうになった。

しかし、倒れそうになっただけ。踏みとどまり、歯を食いしばり、確かに立つ。

 

人は死ぬ。人じゃない自分達は分からないけど、神なる世界に住んでいる人はいつか必ず死ぬだろう。

創作物だって、何も知らなきゃ人と同じだ。人が人である以上、いつか必ず終わりはくる。

あの人も、彼も、彼女も、アイツも、キミも、英雄だって死ぬ。

 

いつか、ゴーストをいらないと思う時が来るだろう。

 

いつか、ゴーストから離れるときが来るだろう。

人生は一瞬だという人もいるけど、やっぱりそれなりには長い。

 

だから、せめて、欲しいときには一緒にいよう。

ゴーストが傍にいてほしいと願うなら、いてあげたい。いさせてほしい。

 

その為には、死ねないんだ。

 

 

(父さん、おれはまだ、そっちにはいけない!!)

 

 

まだ生きている親子たちのため。

いつかキミが大人になって、子供を生んで、きっとそれが男の子だったら、きっと仮面ライダーに熱中する。

そしたらまた、会えるかもしれないね。

 

 

「―――」

 

弦太朗は言った。

タケルは友達じゃない。

アイツは、魂で繋がった、兄弟だと。

 

 

「変身ッ!」『一発闘魂ッッ!!』『闘魂カイガン! ブースト!』

 

『オレガブースト! フルイタツゴースト!』

 

『ゴー! ファイ! ゴーファイッ! ゴーファイッ! ゴーファイッ!』

 

「ウォオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

赤い火の粉を撒き散らしながらゴーストは空中を疾走してアマダムのもとへ。

ゴーストのサングラスラッシャーと、アマダムが出現させたサングラスラッシャーがぶつかりあう。

 

 

「いい加減にしろよこのクソ駄作野郎がァアア!」

 

「!」

 

「誰もお前の勝利なんて望んでねぇ! 誰もお前の活躍なんて望んでないんだよォオ!」

 

「おれは見た!」

 

「アァ!?」

 

「あの笑顔があればいいッッ!!」『ゴエモン!』『カブキ! ウキウキ! ミダレザキ!』

 

 

拍子木の音が鳴り響くなか、ゴーストは剣を逆手にもって踊るようにアマダムを切った。

今も、こうしている間に必死に戦っている子がいるのだろう。望んでそうなったワケじゃない。自分と同じさ。

その子が戦って、自分が諦めるなんて、情けないにもほどがある。

 

 

「石川五右衛門は、自分が釜茹でにされても、息子を守るために、手を上にあげ続けた!」

 

「違う! 本当は息子を最初に沈めて命乞いをしたんだ!」

 

 

さて、どれが本当か。

そんなもの、分からない。真実を知っている人間など、自分自身以外はない。

いや自分ですら自分の事が分からない世界で、何を信じろというのか。

 

 

「シネエエエエエエ!!」

 

 

アマダムが手を上にかざすと、巨大な黒いエネルギーが。

 

 

「誰もがお前を消えればいいと思ってる! 死ねばいいと思ってる! 歴史から消えればいいと!!」

 

 

「ッ」『ヒミコ!』『ミライヲヨコク! ヤマタイコク!』

 

 

なんの罪も無い人を奴隷とし、時に海外に売り、自らが死んだ際は100人もの奴隷を生き埋めにしたと『言われる事もある』英雄。

真偽は知らない。今その力を借りているのだから聞けば教えてくれるのかもしれないが、ウソを言うかもしれない。

 

だから聞かないし、どうでもいい。

確かにあったのは知っているからだ。

想い、信念、それがあったから語り継がれる。

ゴーストは浄化の炎を盾にし、アマダムのエネルギーを受け止める。

 

 

『カイガン!』

『リョウマ!』

『メザメヨニッポン! ヨアケゼヨッ!』

『闘魂ダイカイガン!』

『リョウマ! オメガドライブ!!』

 

 

そこに人は憧れ、好きになる。想いを寄せるのだ。

 

 

「アマダムゥウウウ!!」

 

 

銃に変えたサングラスラッシャーの引き金を引くと、光弾が発射され、アマダムに直撃する。

悲鳴、そして焦燥の叫び。

 

 

「ゴーストォオ! それでも人間のために戦うっていうのかよォォ! 理解ッッ、できるかァアアア!!」

 

 

両手の拳に炎を宿らせ、アマダムは――、仮面ライダーゴッドは走る。

 

 

『バッチリミナー!』『バッチリミナー!』

 

 

一方で『オレ』に戻り、さらに新しいアイコンを起動する。

 

 

『カイガン!』『ノブナガ! ヒデヨシ! イエヤス!』『ハタスノハイツ!? テンカトウイツ!』

 

「ウォオオオオオオオオオ!!」

 

「アアアアアアアアアアア!!」

 

 

サングラスラッシャーとガンガンセイバーを二刀流にし、ゴーストはアマダムとぶつかりあう。

ただひたすらに殴り、切り、両者は闘志をむき出しにして傷つけあう。

 

 

「ハアアアアアアアアア!!」

 

「ウォッラァアアアアア!!」

 

 

渾身の突きとストレートが交差した。

両者、火花を散らし、血を撒き散らし、地面を転がる。

 

 

『回復!』

 

 

地面を転がりながら、アマダムはエナジーアイテムを出現させ、ゲット。

そして地面を蹴ると、すぐに立ち上がってみせる。

一方で回復をしていないゴーストは、動かなくなる。

呼吸は荒く、耳鳴りは酷く、意識が遠のいていく。

 

 

「……!」

 

 

しかし、差し出された手を視た。

ゴーストが顔をあげると、知らない顔がいっぱいあった。

けれども皆、必死そうな顔でゴーストに手を差し伸べている。

 

 

「ありがとう」

 

 

ゴーストは手をとり、立ち上がった。

 

 

『ガッチリミィナー! コッチニキナーッ!』

 

「!」

 

『ガッチリミィナー! コッチニキナーッ!』

 

 

アマダムは血を吐き出し、口を拭う。

 

 

「ったく、つくづく呪われてるぜ、お前」

 

『ゼンカイガン!』

『ケンゴウハッケンキョショウニオウサマサムライボウズニスナイパー!』

『ダーイヘンゲ~~ッッ!!』

 

 

グレイトフルは地面を蹴り、魔法陣を展開させる。

英雄達の力を合わせ、それを足に集中させる。

 

 

「ハァアア!」『メガオメガフォーメーション!』

 

 

一方でアマダムも地面を蹴り、両足を突き出す。

 

 

「ゴッドキィイイイック!!」

 

 

二つの飛び蹴りがぶつかり合い、爆発が起こる。

爆煙を纏いながら落ちるのは――、双方同じ。

 

 

「グハァアッ!」

 

 

変身が解除されるタケル。一方でアマダムも呻いていた。

 

 

「な、なにィ!?」

 

 

アークルが砕け散ったのだ。

ゴッドの変身が解除され、金色から銀色に戻るアマダム。

 

 

「ま、まさか……!」

 

 

アマダムは飛び起きると、タケルを見る。

一見すれば隙だらけ、生身であるから簡単に殺せそうでもある。

しかしここはそういう世界ではない。心が完全に折れていない今の状態でタケルを倒しても、その先の展開が容易に想像できる。

 

 

「クソッ!!」

 

 

アマダムは思い切り地面を蹴り、タケルを指差す。

 

 

「覚えていろ天空寺タケル! 次こそは必ずお前を消すッッ! ゴーストの力だけではなく、全てのライダーの力を使ってな!」

 

 

気づけばアマダムは消えていた。

ポーズを使ったのだろう。

とりあえずはなんとかなったか。タケルは大の字で寝転び、空を見上げる。

 

 

「ハァ」

 

『おつかれさまです』

 

 

アイコンが浮かび上がる。アダムとイブだ。ミライを離れ、タケルと契約したのだ。

その理由は前にいったとおり。黒だけを知って、それが全てだと勘違いはしてほしくはなかった。

プラスもあればマイナスもある。光があれば闇もある。

 

もちろん、それを知った上でタケルが諦めればそこまでだった。それを責めるつもりもない。

けれどもタケルは立ち上がり、イブ達の眼になった。

簡単なことじゃない。それだけの想いがなければ契約自体ができない。

 

 

「ブックメイカーを止めようかなって思ってさ。やっぱりカメンライダーはおかしいよ」

 

『そうですか』

 

「そりゃあ、その仕組みが間違ってるとか、おれは言えないけど……」

 

 

敵が悪意を振りまいているのは事実だ。

そんな連中が目指す理想は、タケルには酷くおぼろげに見えてしかたない。

とにかく、ブックメイカーというか、少なくともショッカーを倒さなければ。

 

 

「とりあえず今は、天空寺タケルとしてじゃなく、仮面ライダーゴーストとして戦ってみることにする」

 

『ええ、分かりました』

 

『頑張ってくれ。応援しているよ』

 

「うん。ありがとうございます」

 

 

すると差し出された手。

目を丸くするタケル。視れば操真晴人がそこにいた。

 

 

「ほれ」

 

「酷いなぁ、見てたなら助けてくださいよ」

 

「だから、ほれ」

 

 

タケルは困ったように笑うと、晴人の手をとって立ち上がる。

 

 

「食うか?」

 

 

晴人は魔法陣からドーナツを引っ張り出し、タケルへ勧める。

 

 

「いやッ、でもおれ食べれないし」

 

「食えるさ。今のお前なら」

 

「……ッ」

 

 

そういわれるものだから、タケルは反射的にプレーンシュガーを受け取り、齧る。

すると目を輝かせ、思わず笑みがこぼれた。

 

 

「うまッ!」

 

「フフッ、だろ?」

 

 

そこで気づいた。

そうか、そうだ、生きてたんだ。

生き返ったんだ。一年くらい掛かったけれども。

 

 

「………」

 

 

タケルは強く頷き、ドーナツをムシャムシャ口に運んでいく。

 

 

「喉詰まらせて死ぬなよ」

 

「そうしたら助けてくださいよ。魔法使いでしょ?」

 

 

二人は笑い合いながら、次の戦いを目指した。

 

 

 





これ多分永遠にいうけど、ゴーストの一番はじめのPVっていうか特別映像(夢オチ)のヤツのBGM。
あと平成ジェネレーションズの『復活! ゴーストの力』はマジで神だから。
よろしくな(´・ω・)



次ちょっと遅れると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。