カメンライダー   作:ホシボシ

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※注意!

『仮面ライダー4号』のネタバレがあります。


第20話 十人十色

 

「タイトルチェンジ」

 

 

アダムとイブ魂は腕を振るう。すると光の粒子が撒き散らされ、空へ昇っていった。

 

 

「これでいいの?」

 

 

変身を解除するタケル。

アイコンは軽く頷き、タケルの中に戻った。

 

 

『過剰な一方提示は抑えなければなりません。これで少しは調和が保たれるといいのですが』

 

「そうですね」

 

 

と、頷くタケルの周りに晴人はいない。

別行動を選んだ二人。タケルは皆を集め合流へ。

そして晴人は、進ノ介からの連絡を受けたようで其方に向かったようだ。

 

 

『タケルさん』

 

「ん? なに?」

 

 

イブはふと、どうしても伝えたい『どうでもいい事』があると

 

 

『人は――、ウソをつけますよ』

 

「え? ま、まあそれは――」

 

『フフ、分かっているのならばいいのです』

 

「???」

 

 

タケルは首をかしげながらも、皆と合流するために走り出した。

 

 

 

 

ジョウジは薄暗い廊下を走り、一つの扉を開く。

一人の少年が椅子に括りつけられていた。背後にはペストマスクをつけた男が立っており、その手には鋭利なナイフが見える。

マスクの男は容赦なく少年にナイフを突き入れ――

 

 

「そこまでだ」

 

 

改造されたアームは便利だ。

ひとさし指を伸ばし、拳銃のように構える。すると本当に実弾が発射され、持っていたナイフを弾いた。

ペストマスクの男は突如現れた侵入者に怯んでいたが、すぐに拳を構えて走り出す。

だがジョウジもまた数々の戦いを潜り抜けてきた猛者。並の体術では怯まない。

 

 

「姿を見せろ」

 

「!」

 

 

ジョウジは男のマスクを掴み、引き剥がす。

 

 

「ッ、お前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧の間から鮮血が滴る。

ディケイドは仮面の裏で、不快感に表情を歪めた。

ふと上を見上げると、キバが飛んでいるのが目に付く。飛行じゃない、吹き飛ばされた結果だ。

 

 

「ククク! 高貴なる血を! 神へ捧げよ!」

 

 

刃を交差させ、天へ掲げたるはショッカー首領三世。

他の怪人達はディケイドの相手ではなかった。

が、しかし、この男だけは違う。

 

 

死紅(しこう)! 烈風波(れっぷうは)!」

 

 

三世が振るった剣から、赤い竜巻が発生する。

メタルを発動していた筈だが、ブレイドの足裏が地面を離れ、直後背中から地面に叩きつけられた。

 

 

「グッ!」『アタックライド・ブラスト!』

 

 

ディケイドが発生させたのは縦横無尽に飛びまわる無数のマゼンタ。

しかし三世がマントを大きく払うと、赤い風が巻き起こり、弾丸を全てかき消していく。

 

 

「だったら!」『アタックライド』『ポーズ!』

 

 

時間を止めてみる。

しかし三世は何のことはなく走り出し、剣を構える。

分かっていた。ああ何となく分かっていたさ。ディケイドはポーズを解除すると、ライドブッカーを剣に変えて走り出す。

時間停止が通用しなかったのは、三世の周りを飛びまわる赤い蝶。この血死蝶(けっしちょう)がいるかぎり、三世の行動を妨害する能力は全て無効化される。

 

 

「人の世。果ての戦いが結果、悪と正義に分けるなら!」

 

「!?」

 

「我々は悪でもいい! それは些細な問題だ!」

 

 

競り合ったのは僅か五秒ほどだった。

ふと気づけば、ディケイドの手からライドブッカーが消えていた。

剣戟に負け、弾かれたのだ。すぐに視線で後を追うが、その時には全身に焼け付くような痛みが走っているところだ。

 

 

「ぐッ!」

 

 

一方で三世は右の剣を真横に伸ばす。

するとそこへキングラウザーが飛んできた。剣先と剣先がぶつかり、相殺し合う。

 

 

「オラクルの力を拝見したが――、おかしなものだな!」

 

「なに……?」

 

「不愉快なオッサンは死ね」

 

「は?」

 

 

いきなり何を? 思わず足を止めるディケイド。

 

 

「男よりも劣等種である女は死ね。うるさい子供は死ね。目障りな赤ん坊は死ね。有害な喫煙者は死ね」

 

 

キングラウザーを弾いた後は、再び走りだす。

発動するショッカー奥義がひとつ、幻影(げんえい)血斬閃(ちざんせん)。気づけばディケイドの背後に三世の姿が。

 

 

「老害は死ね。障害者は死ね。親は死ね。兄妹は死ね。不快なヤツは死ね」

 

 

ディケイドの背に刻まれるクロスの斬痕。

 

 

「まったく! フフフ! 愚かなものだな、人間とは!」

 

 

怯んだ所に蹴りをいれ、さらに三世は真横を見る。

 

 

「皆。ツイッター、だったか? アレに内なる悪意を書き込んでいる!」

 

 

するとオオカミの咆哮と共にキバが飛んでくるのが見えた。

ガルルセイバーと刃が交わり、五秒後にはキバがズタズタにされているのが見えた。

エンペラーフォームの高貴な鎧が、傷だらけになっている。

 

 

「グアァアァア!!」

 

「俺のこの力は、お前らに対する圧倒的で純粋なる殺意! まさにサムシング!」

 

 

どうだ、考えてもみればみるほど。

 

 

「人の根本ではないか! そう思うだろ? 仮面ライダー共!」

 

 

ショッカーが悪ならば、それと近い人間はどうだ?

周りを呪い、不快なものは同種であれすぐに否定する姿はどうだ?

まさにショッカーと同じではないか。

 

 

「人は黒だ。我々が掲げる悪意と同じものを抱いている!」

 

 

鬼斬(きざん)光煉刃(こうれんじん)

三世の持っている刃に、赤黒い光が纏わり付いた。

 

 

「それを今までは価値のあるもの、守るべきものと口にしていたお前らが、酷く滑稽に見える!」

 

 

三世は立ち上がろうとしたキバを切り裂き、ブレイドを切り抜き、ディケイドの前に立つ。

 

 

「クソ!」

 

 

ディケイドはバックステップ。さらにエナジーアイテムを召喚。

マッスル化、マッスル化、マッスル化……、16連マッスル化によって強化されるスペック。

しかしその時、三世のベルト中央、バックルに刻まれている大鷲の目が光った。

するとディケイドに付与されていたエナジーアイテムの効果が消滅したではないか。

 

 

「んなッ!」

 

「エナジーアイテム無効化マシンだ!」

 

「そんなメチャクチャなものが――ッ!」

 

「あるのだ! ショッカーの技術力をもってすればな!」

 

 

ディケイドの胴に刃が入った。

視界が反転し、硬い地面の感触。空が見え、一瞬で地面に変わる。

また空が見えたと思ったら、地面を睨んでいた。

 

 

「さあ、消去してやる!」

 

 

三世は持っていた剣を二本、地面に突き刺す。

すると剣を中心に広がっていく大鷲のマーク。それはディケイドを、キバを、ブレイドを内包する魔法陣。

 

 

「ショッカーの力を見よ! 滅殺(めっさつ)死雷陣(しらいじん)!!」

 

 

魔法陣の中に激しい電流が流れる。

赤黒い稲妻はディケイド達の全身まで到達し、悲鳴が上がった。

直後爆発。キバの鎧が、ブレイドの鎧が吹き飛び、それぞれは地に落ちる。

 

 

「グゥウウ!」

 

「ガァアア!」

 

 

渡と剣崎の姿を見て、三世はニヤリと唇を吊り上げた。

 

 

「この程度か眼ってヤツは。いけないな、サムシングもパッションも全然足りん! この俺を止めるだけの熱いハートが無ければ、勝負の果ては死だぞ」

 

「ワケの分からない事を――ッ!」

 

 

表情を歪ませる渡。

変身を解除されたが、本体にはそれほどダメージはないらしい。

しかしその後方で転がっている剣崎は違う。激しく咳き込み、血液が口から漏れた。

そればかりではなく切り傷やアザが目立ち、流れ出る血の色は『赤』。

 

 

「フフフ。剣崎一真。ジョーカーの宿命から逃げ出したお前はもはやライダーとしては三流よ。いくらキングフォームの残像を纏おうが、フェイクでは真には勝てない」

 

「グッ! おのれ――ッ!!」

 

 

立ち上がろうとする剣崎だが、腕が震えてうまく行かない。

そうしていると電子音。三世は刺さっている剣を一本引き抜き、背後に刃を向ける。

 

 

「クッ!」『アタックライド』『クロックアップ!』

 

 

不意打ちが外れた。

ディケイドはすぐに後ろに引き、回り込みながら剣を払う。

しかし重なる刃。三世はディケイドの動きをしっかりと目で追っている。

 

 

『アタックライド』『インビジブル』『オートバジン』『バインド』『スタンパー』

 

「ムッ!?」

 

 

ディケイドを切った筈が、残像が消えたのみ。

そして気づけば三世はオートバジンに羽交い絞めにされ、さらに魔法の鎖が三世とオートバジンを括りつける。

 

 

「ウォオオオオオオオオオ!!」『ファイナルアタックライド』『アアアアクセル!』

 

 

マシンガンスパイクが炸裂。

高速でディケイドは三世の周りを駆け回り、蹴りの連打を浴びせていく。

さらにこの蹴り、スタンパーのおまけつきである。一発ヒットするごとに、ディケイドの紋章が三世の全身に貼り付けられる。

ディケイドはオートバジンも構わず蹴り、それだけの爆弾を貯めていった。

 

 

「ヌゥウゥウウ!」

 

 

唸る三世。

バインドの拘束力はなかなか高く、全身に力を入れても外れない。

そうしている間にオートバジンは飛翔。三世を連れたまま、上空へ昇っていく。

五秒ほど経ったか、そこでタイムアップ。紋章が発光し、大爆発が起きた。

 

 

「!」

 

 

まず落ちてきたのはオートバジンの破片。

しかし、それだけだった。肝心のターゲットの姿が無い。

ディケイドが上を見ると、爆煙が吹き飛び、どす黒いエネルギーオーラに包まれた三世が姿を見せる。

 

 

「ショッカー! 変身ッッ!!」

 

 

剣を交差させる三世。

するとその体が変質。人間の姿から異形の姿。大蜘蛛大首領へと変わる。

 

 

「フフフ! 我らの作戦は常に二手先を行く」

 

 

加古から悲鳴が上がる。赤いクモの糸が体から溢れ、まるで繭のように変わった。

 

 

「おい! 大丈夫か!」

 

 

等とディケイドが叫んだ瞬間。

全身から火花が上がった。三世が切り抜ける中、ディケイドは倒れ、変身が解除される。

 

 

「かは――ッ!」

 

「余所見とはナメられたものだな。ディケイド」

 

「クッ! テメェ! 少しは遠慮しろ! 上の人間は敬うべきだろうが!」

 

「ん? なんの話だ?」

 

「偉そうって話だよ。二世にちょっとは敬意を払えよ!」

 

「……ああ、なるほど」

 

 

三世は声を出して笑い始める。

 

 

「確かに普通に考えれば、お前が二世だな。ディケイド」

 

 

が、しかし。ディケイド――、門矢士はショッカーが用意した傀儡でしかない。

世界移動の力を持つ子供を祭り上げることで洗脳し、自分達の都合のいいように操る。

だからこそ二世ではあるが、それはまやかしだ。

 

 

「お前は二世じゃない。本当の二世は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

銃声が響いた。

 

 

「が――ッ」

 

 

血が飛び散る。

焼けるような痛みに顔を歪めたのは――

 

 

「ほう、さすがだな。この位置で体を逸らすか。頭を狙ったつもりだが――」

 

「テメェ! なにしやがる!!」

 

 

M良太郎でなければ危険だっただろう。

叫び、駆け寄るハナ。二人が睨みつけるのは、ファイズフォンを構えていた"乾巧"だった。

 

 

『助けても死ぬ!』

 

 

ハナを抱えた巧はそう言った。

結果的にそれが良太郎の力となり、ハナはそれが優しさだと思っていた。

しかしあの言葉が、本当にそのままの意味だったとしたら?

なぜ、平成一期だけが引きずり込まれたのか。それは『癌』となる人物がいたからだ。

良太郎? いや、違う。

 

 

「仮面ライダーよ! ショッカー繁栄の糧となるがいい!」『5』『5』『5』『Standing by』

 

『キミ――ッ、誰……!?』

 

 

良太郎の声が届いたのか、巧はニヤリと笑った。

 

 

「俺か? 俺は――」

 

 

ファイズフォンをベルトへセットする。

青い蝶が辺りに出現し、赤い光が迸った。

 

 

「ショッカー首領・二世!」『Complete』

 

 

現れたのは仮面ライダーファイズ。

いや、少々語弊がある。

 

 

「ライダーと怪人は同質! 今ならばそれがハッキリと分かる!」

 

 

ショッカー怪人、ファイズ。

 

 

「お前ッ、いつからだ……!」

 

「いつ――、か。そんなものは覚えていない。そんな狂った世界の中で俺達は生きてきたのだろう?」

 

 

ファイズアクセルに手を伸ばす。

 

 

「我々ショッカーがなぜ、ブックメイカーに手をかすか。その理由は簡単」

 

 

全ては神なる世界。

 

 

「既に我々はチケットを手にしている。神なる世界への到達も夢ではないのだ」『Complete』

 

 

光がファイズを包む。

すると光が装甲に変化。あっと言う間にファイズを、『ライダーロボ』へと変身させた。

 

 

「クロスオブファイアを取り戻す行為そのものが狂っていると、お前達はなぜ気づかない! 愚かなライダーたちよ。今ココで消え去るが良い!」

 

 

腕にある機関銃を向けるファイズ。

M良太郎は舌打ちを漏らすと、電王に変身。剣を構えて走り出した。

 

 

「乾が――ッ!」

 

 

一方で士は目を見開き、額に汗を浮かべている。

確かに頷く三世。仮面ライダーの中に一人紛れ込んでいた『ユダ』とも言えばいいか。

それはまさに裏切り者、それこそが仮面ライダーファイズ、乾巧なのだ。

 

そう、あの【Ch.3】にてペストマスクを被っていた猟奇的な殺人鬼。

あれが巧である事はもはや言うまでも無い。

 

 

「何もおかしな話ではない。仮面ライダーは神ではない。弱い人間だ」

 

 

かつて士が大首領としての存在に、何の疑いも持っていなかったように。

巧もまた、その道を選び、ここまで来た。

 

 

「………」

 

 

俯く士。

ああ、なんと言う事だ。心当たりがあまりにも……。

 

 

「オラクルを通し、神の声を聞いた。そして理解した」

 

 

三世は語る。

人がなぜ、ライダーを好きになるのか。

なぜ否定が生まれるのか。

 

 

「人間は二つに分類される。お前たちが散々と口にして来た、"善"か"悪"かと言うこと」

 

 

それを踏まえて思う。

 

 

「お前達を好きになるのは皆、悪だ」

 

 

人がライダーを応援し、怪人が消えてくれるように祈るのは、同属嫌悪だからではないか。三世はそう口にした。

怪人と同じ黒を抱えるものは、それを認めたくがないゆえにライダーを応援する。

それを消してくれるからだ。とは言え、同属嫌悪を抱かぬものもいる。

 

そうすれば自然に、無意識に怪人に同調しライダーたちへの敵意をむき出しにする。

それは一歩引いた観測者の視点、世界そのものを否定していく。

 

 

「とんだ屁理屈だ」

 

「自論だからな。俺のパッションがそう叫んでいる」

 

 

呆れた様に鼻を鳴らす士だが、全てが全てを否定する気にはなれない。

醜いものを抱えているのは人間の証だ。そうするとライダーがときに眩しくて目障りになるときもあるだろう。

そうした悪意が、蠢き、螺旋を描き、無限を形作る。

 

 

「二世はソレに触れた。だからこそ、その選択を選んだ。それだけだとも」

 

 

全ての始まりは『4号』だった。

歴史改変マシンをめぐる戦いの果て、乾巧は命を落とした。

 

 

「消滅の先には何があると思う? 天国? かもしれない」

 

 

だが、その時は違った。

それは天文学的確立が生み出した奇跡なのか。

それとも運命と言うヤツなのか。それは分からない。けれども巧は死後、それに触れた。

 

真理を視たのだ。

 

 

「創作の中で生きる我らの存在は酷く不確かだ。その全ては常人には理解できるものではない。知れば知るほど狂い崩れ、自我を保てなくなる」

 

 

巧もまた同じだった。

とは言え彼もまたライダー。普通の人間ではない。

齎された影響は酷くマイナスのもの。

 

 

「乾巧は自らの全てを賭けた行動が無駄だと知ってしまった。学んだようだな、やつはまあ、アホではないというワケだ」

 

 

今でも信じてる! 意味無く死んだ奴はいないってな。

とは、かつて巧が言った言葉だ。

 

 

「それが毒になる」

 

 

確かに。意味無く死んだやつはいないかもしれない。

しかしその意味があまりにも――

 

ブックメイカーもたびたび口にしていたことだ。

それを巧は知った。いつ? さあ。時間軸などもはや存在しない。

並行世界、パラレルワールド、ライダーの世界。創作物。オリジナル。原作。二次創作。アンチ、ヘイト。批判。批評。感想。

世界の情報はあまりにも膨大で、巧は……。

 

 

「不確かなものに縋るお前らを、俺は心から軽蔑する」

 

 

その時、ファイズが叫んだ。ファイズエッジとデンガッシャーが交差する。

殴り、殴られ、ケンカのようなラフファイトが繰り広げられた。不安げに見つめるハナはただ祈ることだけしかできない。

とは言え、その祈りが通じたのか、激しくかき鳴らされるクラクション。ハナが大きく肩を振るわせると、影がかぶさった。

 

 

「え?」

 

 

上を見ると赤。

一回転しながら、影は地面に降り立つ。

 

 

『タイヤコウカーンッ! SPIN MIXER!』

 

 

ハナの前に着地したのは仮面ライダードライブ。

コンクリートを飛ばすスピンミキサーで、ファイズを拘束しようと試みる。

 

 

「まだだ! 来い!」『タイヤコウカーンッ! MIDNIGHT SHADOW!』

 

 

闇の手裏剣を投擲していく。

しかしファイズは簡単にコンクリートを打ち破ると、迫る手裏剣を次々と剣で打ち弾いていく。

 

 

「ッ、危ない!」

 

 

さらに危険を感じたのか、ハナを突き飛ばすドライブ。

するとすぐにドライブの全身から火花があがり、悲鳴が聞こえた。

空を見れば巨大な怪鳥。大鷲の形を模した戦闘機だ。翼の動きは生物的に見えるが、羽は刃で構成されており、足や目も機械的なパーツでしかない。

さらに開いたクチバシから覗かせたのは機銃。あれでドライブを射撃したのだろう。

 

 

「スカイグライダー」

 

「!」

 

 

衝撃が走り、ドライブは肩を地面にぶつける。

いつのまにか背後を取っていたのは、仮面ライダー4号だった。

 

一方でファイズは強化された豪腕で電王を殴り飛ばす。

固まる電王とドライブ、一方でそれを追い詰めるように歩くファイズ、4号。

 

 

「これは我々を取り戻すための戦いだ」

 

 

ファイズが語る。

ほぼ同じくして、三世も口にしていた。

 

 

「俺達が黒であれば、お前達は白だろう。しかしそこに灰色が混じる以上、架け橋が存在してしまう。そしてそれがある以上、互いは交わり、一枚のコインから永遠に脱することはない」

 

「……ッ」

 

「我らはそれを好まない。個々が一枚になるか。もしくは白と黒をハッキリと分けなければならない。でなければ我らの戦いは永遠に続くだろう」

 

 

ショッカーはそれを望んでいない。それは不毛だ。

ゴールの無いマラソンをいつまでも続けるほど、暇ではないのだ。

今は各ライダーがそれぞれクロスオブファイアを取り戻しているところだ。しかしそれは長く、言ってしまえば冗長だ。

 

そして蓋を開けてみればその実、理由は似通ったものである。

己の中にある譲れないものを思い出し、力を取り戻す。なにかしら『善』のようなものを思い出し、そこに輝きを見出し、魂が燃え上がる。

 

だが人は完璧ではない。

またその炎が消えてしまう時がくる。だが炎は消えても、またつけば、燃え上がる。

永遠だ。まさに終わりはない。

 

 

「我々は確固たる自分を持つことが必要だ」

 

 

ショッカーはまだそれができている。

 

 

「お前はどうだ? 白になるか。黒になるか?」

 

 

いや、訂正しよう。白になれるか?

白であり続けられるか?

 

 

「ムリだな。お前たちがライダーである限り」

 

 

ライダーの答えを聞くまでもなく、三世は言い放った。

たとえば、ファイズ、巧のように。終わりが来たと思っても終わらないし、白だと思っても今は黒。

結局交じり合うなかで灰色であり続けてしまう。

灰色、そうオルフェノクのように。

 

 

「どうやら、まだ我ら達の戦いは続きそうだな」

 

 

灰色が消えない限り、表と裏の関係が続く。

白は白、黒は黒。分けられない。それを繋ぐ確固たるグレー。

 

 

「―――」

 

 

士はただ俯き、歯を食いしばるだけだった。

反論の言葉を探しているのか、それとも何かを思い出しているのか。

一方で剣を構えて歩く三世。淡々と、ただ右から来たものを左へ流すだけのような雰囲気だ。

はいはい、じゃあ殺すから。また後で。そういう話なのかもしれない。

 

 

「!」

 

 

三世の肩から火花が散る。

痛み――、は、あるのかもしれないがノーモーション。

そしてゆっくりと背後を振り返るが、そこには何もない。

 

 

「?」

 

 

首を傾げる三世。

するとまた衝撃が走る。今度は膝から火花が散った。

 

 

「困るなぁ。主役がいないというのに、盛り上がってくれては」

 

 

空間にジャミングが走り、直後そこにシアンのライダーが現れる。

 

 

「……ディメンションエンドか」

 

「海東!」

 

 

仮面ライダーディエンドは含み笑いを浮べながら歩行を開始する。

銃をプラプラと弄びながら気だるそうに標的へ向かっていく。

 

 

「観測者の噂は聞いていたけれど。フフフ、きっと素晴らしいお宝が待っているに違いない」『アタックライド・ブラスト!』

 

 

青白い光弾が無数に三世へ飛来していく。

しかしマントを盾にすれば、それらは全て遮断され、マントを払うと全てがかき消える。

 

 

「む」

 

 

驚き、前のめりになるディエンド。

さらに、それは一瞬の間。ヒュンと音がしたのは三世が剣を振るったから。

すると発生するのは赤い斬撃。それは一瞬でディエンドの眼前に到達すると、胸の装甲に直撃する。

 

 

「グッ!」

 

 

思わず膝をつくディエンド。

その間に三世は地面を蹴って走り出す。

 

 

「させないよ!」『アタックライド』『インビジブル!』

 

 

三世が切りかかったときには既にディエンドはホログラフとなり消失。

 

そしてそのまま気配が消え去った。

 

 

「………」

 

 

一瞬の間。

 

 

(なにしに来たんだアイツ)

(なにをしに来たんだ……)

(なにをしに来たんでしょう――?)

 

 

呆気に取られる士、剣崎、渡。

一方で三世は鼻を鳴らし、剣を近くにいた士に向ける。

 

 

「今度こそ終わりだ。ディケイド」

 

「――ッ」

 

 

その時、三世は見た。

ディケイドの後方。はるか後方だ。赤い光の柱が昇る。

 

 

「クソ! まったく、次から次へと。なんだと言うのだ」

 

 

士達もそれを確認した。

直後、脳裏に届く言の葉たち。

 

 

ディケイド見てから、またライダーを見始めた。今の俺にとっては感謝するべき作品

 

 

世界が、スローモーションになる。

 

 

「………」

 

 

士は眉を顰め、沈黙する。

一方で三世は構わず、剣を斜めに振るった。

だがそこへ伸ばした腕。士は右腕で確かにその刃を受け止める。

 

 

「なにッ?」

 

 

士の腕だけがホログラフに包まれている。

目を細め、三世を睨みつける士。

 

 

「永遠に続くとしても!」

 

「!」

 

「俺はッ、壊すために歩き続ける!」

 

 

腰にあるディケイドライバーが光り、自動的にカードが装填される。

光が迸り、直後、士の姿がディケイド激情態に変わった。

渾身のストレートで三世の腹を打つと、立ち上がりながらカードを装填する。

ダメージに鈍った体を突き動かしたのは間違いなく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛だ!!」

 

 

火野映司は目を輝かせて立ち上がった。

 

 

「は?」

 

 

先程まで気絶していた筈なのに。

唐突な展開にキュルキラは足を止め、映司を見る。

 

 

「愛だ! 愛だよ! ほほはは! ウハハハハハ!」

 

 

映司は何もない虚空を見上げながら、手当たり次第に手を伸ばし、何かを掴むジェスチャーを行った。

おそらく、見えているのだろう。頭に浮かんでいった赤い文字を。

ツインテールを揺らし、辺りを確認するキュルキラ。すると光の柱を確認した。

 

 

(あれは――)

 

 

すると、脳内に響く声。

ブックメイカーだ。

 

 

『ゴーストだ。彼が――……、変身した』

 

「ふぅん」

 

 

簡単に説明され、キュルキラは一連の流れを理解する。

アダムとイブ、信託、そして変身。それをふまえて改めて映司を見る。

 

 

「おれは理解できる! メズールにはムリだった場所に立ってる! いやッ、他のグリードだってたどり着けなかった!」

 

 

興奮しているのか、大口を開けて笑う。

グリードにとっては未曾有の欲望であった愛。

笑い続けると息ができなくなったのか、大きく咳き込み、そして大量のセルメダルを口から、耳から、目から吐き出す。

ジャラジャラと大量の地面に落ちたセルメダル。その中にはいくつかのコアメダルが見えた。

 

 

「愛あいアイあイアイアい愛あイ愛!! ボくちんガ見つけたのヨですわぞん!!」

 

 

一つ、スーパータカのメダルが落ちた。

映司が限界を超えたセルメダルとコアメダルを取り込んで尚、かつてのウヴァのように暴走状態にならないのは未来のコアメダルで時間を停止していたからだ。

その一つが消えたのだから、それだけグリード化が進行してしまった。もはや自我すら保てず、一人称も話し方も暴走している。

 

 

「チッ! クソが! 来い、原作カテゴリ!」

 

 

手招きするキュルキラにシンクロし、浮遊する文字が吸い込まれていく。

 

 

「クロスオーバー!」『▲名探偵コナン』『▲モンスターハンター』

 

 

大剣を持ったキュルキラは、エンジンがついたスケボーに飛び乗り、映司のもとへ。

 

 

「おかしくもないくせに笑いやがって! 愛が理解できるワケねぇだろうが今のアンタに!」

 

「でキらみ! だっぇこれなに楽じぃ! 嬉シシシ! ハヒルハバハ!!」

 

 

キュルキラが振るった大剣が映司の胴体に抉りはいる。

一瞬で切断される肉体。しかしそれぞれ上部と下部はセルメダルへ変貌。ジャラジャラと音を立てて一つに固まる。

そしてシルエットは映司ではなくタジャドルへに変身した状態で具現する。

 

 

「あ、間違えう。こっげヨワヨワだかり」『プテラ!』『トリケラ!』『ティラノ!』

 

 

タカ、クジャク、コンドルを投げ捨てると即プトティラへ。

強力な冷気と、斧でキュルキラの動きを鈍らせる。

 

 

「………」

 

 

一方で、倒れている千翼は一点を見つめていた。

本当に存在しているのか。それとも目に映っているだけなのかは知らないが、そこには赤い文字が浮遊していた。

 

 

千翼とイユには、幸せにな――

 

 

はじめから覚えていたのか。それとも今思い出したのか。

覚えていたが仮面を被っていたか。そんなものは別に重要なことじゃない。今はただ、千翼は全てを知っている。それだけだ。

 

 

「………」

 

 

千翼は動かなかった。

ただ一点を見つめ、涙を流す。

そうしているとカラスの化け物がムクリと起き上がってくるのが見えた。

 

 

「………」

 

 

なにを思っているのかなど、もはや語るも虚しい。

だがせめて少しだけ語るのであれば、これらの戦いはクロスオブファイアを取り戻す以外にもう一つ大きな試練の意味をもっている。

それは、神なる世界から見て、フィクションとしての自分をどう捉えるかだ。

千翼は翼を広げる異形を見て、泣いていた。

 

 

「千翼――ッ!」

 

 

このままでは攻撃される。近くにいた悠は千翼を抱えようと腕を掴む。

しかし、千翼は動かなかった。

 

 

「ッ?」

 

 

そこで悠も気づく。千翼の表情。諦めたような。安堵したような。

 

 

「千翼……?」

 

 

そうしている間に再びメテオやホッパー、エグゼイドらが変身を行い、キュルキラの方へ向かっていく。

稲妻が見える。炎が飛び交う。氷の柱が次々と地面を突き破った。オッケーだのガシャットだのいろいろとうるさい電子音も聞こえてくる。

そんな中で体を震わせながら起き上がっていくカラスの化け物。黒い羽を落としながら、ギョロリとした目で千翼を睨んだ。

 

息を呑む悠。

しかし直後、カラスの化け物はクチバシから真っ黒な血を吐き出し、一度地面に伏せる。

どうやらダメージが溜まっているらしい。

 

 

「おれ達はまだ――、何も始まってなかった」

 

 

そんな中で、千翼は呟く。

誰かが言っていた。『人は、始めることはできても、終わらせる事はできない』と。

 

 

「だから――ッ、だから……」

 

 

すすり泣く。

 

 

「始めちゃいけない事もある」

 

「―――」

 

 

悠はその時、果てしない後悔に包まれた。

優しさなど――、哀れみなど、かけるべきではなかったのかもしれない。

 

 

「―――」

 

 

悠は眉間にしわを寄せた。

思えば、世界が融合した時、千翼とイユは何も知らなかった。

いや、忘れていたのか。ブックメイカーが意図的に記憶を抜いていたのかもしれない。どの時間軸なのかなど、深くは考えなかった。

 

とは言え、悠は全てを知っている。

全てが終わったと思ったあの時間から来た。

 

 

「………」

 

 

だから、だから――ッ。

 

 

『千翼とイユだね。僕は水澤悠』

 

『すごい! 僕と同じ力なんだ!』

 

『一緒に敵がきたら、やっつけようね』

 

 

悠は思わず鼻を鳴らし、自嘲的な笑みを漏らした。

我ながら――、バカな事をした。

 

 

『悠兄ちゃん……!』

 

 

そう呼ばれたときに、止めるべきだった。

お前と僕は、そんな関係ではないと。

 

 

『どうしたの? 千翼』

 

「ッ、ツハッ!」

 

 

うな垂れる。

そうか、そうだな。

そういう道を辿ってきた。"せめて今は"となんて、考えるべきではなかった。

 

 

「おれは――、おれなら、終わらせられる」

 

「………」

 

 

千翼は立ち上がり、ドライバーを構えた。

 

 

「おれは、人間じゃない。だから、始まる前に――」

 

「………」

 

 

悠はうな垂れ、そしてゆっくりと顔を上げる。

その眼光は、殺意に満ちた獣のソレだった。手にしたアマゾンズドライバーにジャミングが走る。

 

結局、こうだ。

 

それは、戦う宿命。

 

一つだけの――

 

悠は、"ネオアマゾンズドライバー"を腰へ押し当てると、注射器を装填。レバーを引き上げ、スイッチを叩き押す。

 

 

「ウォ゛オオオオオオオオオオオオオオオオ゛ッッッ!!」

 

 

答え。

 

 

「アァッマゾンッッ!」『n・e・o』

 

「ァ゛マァゾォォンッッ!!」『n・e・w・o・m・e・g・a』

 

「!?」

 

 

激しい衝撃波と熱波が襲い掛かる。

キュルキラを覆っていた氷が弾け飛び、オーズもまた大量のメダルを撒き散らしながら吹き飛んでいく。

 

 

「……ッ」

 

 

キュルキラは見た。

真っ二つに両断される、カラスの化け物の姿を。

 

 

「………」

 

 

大量の黒い羽が、雪のようにヒラヒラと舞い落ちていく。

落ちるのは黒く澄んだ血の湖。薄目を開けたイユがいた。

抜け殻だ。それを抱きかかえているのは、複眼を光らせたネオ。

 

 

「は?」

 

 

ピチャリ、ビチャリ、血溜まりを歩く音。

強化装甲に包まれたオメガは、血まみれで歩いている。

 

 

「こ、殺した……? なんで」

 

「決まってる」

 

 

キュルキラは怯んだように後退していく。

 

 

「夢なんだ」

 

「え?」

 

「だから、目覚めなくちゃ」

 

「は? は……?」

 

「無いんだよ。この今は」

 

 

イユは、イユだ。魔女じゃない。

アマゾンはアマゾンだ。その宿命がある。目を逸らしても、いつかはまた直視しなければならない。

仮面ライダーは仮面ライダーだ。けれども、アマゾンズはアマゾンズだ。

 

 

「元の世界に帰る。あるべき姿に戻す」

 

「――……アホ?」

 

「だったら良かった。バカみたいに傷つく事も無かった」

 

「――ヵ。救われたくないの?」

 

「………」

 

 

オメガは答えない。

代わりに、口を開いたのは――

 

 

「チッヒー。痛い?」

 

「え?」

 

 

イユは、その手でゆっくりとネオの頬に触れる。

 

 

「イユ――……!」

 

「痛いよね。ゴメンね。でも――ッ」

 

 

イユは、涙を流して微笑んだ。

 

 

「ありがとね」

 

「な、なんで!?」

 

 

キュルキラは声を震わせ、また後退していく。

 

 

「え? 死んだ筈じゃ……ッ! え!?」

 

 

その時、ピン、ピン、ピンとメダルが弾かれる音がした。数は三つ。

 

時に、こんな話を聞いたことはないだろうか。

人魚の涙、シーグラスと呼ばれるそれは、主に海岸で見つかるガラス片のことである。

鋭利な破片も、波に揉まれれば角が取れ、宝石のように美しいものになる。

 

要するに『中』で、精錬される。

それは炎。魂の波長は物質を変化させる力を持ち合わせている。

 

悠、千翼、イユは、食欲がある。

しかしそれは鋭利でソリッドで、人を傷つけてしまう。

だからこそ世界が融合した際にはそれを抑える必要があった。

しかし生き物は食べていかなければ生きられない。だからこそ食べなくてもいい体を作る必要があった。

 

融合すれば、ライダーが集まり、技術が集まり、それは可能となる。

簡単だった。グリードは食欲を感じない。だからこそ、それを意図的に作ればいい。

フィリップやジョウジがいたらそれは簡単だ。

 

クジラ、サメ、オオカミウオ。

たまたまあった。だから一枚ずつ三人に入れた。

コントロールした。そうすれば、はい、食欲が消えました。

 

終わり。

 

 

でも、排出した。だから始まる。

いや、戻るのか、本来の姿に。

 

 

「愛だよ」

 

「!」

 

 

ゾッとした。

飛び上がり、距離を取るキュルキラ。

千翼たちから輩出されたメダルは自動的に一人の男の下へ、正確にはその男がつけているオーズドライバーへ吸い込まれた。

 

 

「愛があるから、苦しむんだよ」

 

「お前――ッ、まさか」

 

「愛がなかったら、救われたと思っても救われないんだろうね」

 

 

火野映司は額に汗を浮かべながらも、確かに立ち上がり、キュルキラを見る。

ピントの合っていない瞳じゃない。しっかりと光を宿した眼光だ。

 

 

「苦しくても、愛があれば、そっちに行っちゃう」

 

 

我ながらバカなものだ。

とは言え、そうなっている。映司はポケットから割れたメダルを見せ、またしまう。

 

 

「おれも、ほら、あるからさ。自分でやりたい事とか、成し遂げたい事とか」

 

「火野映司……! なぜ、グリード化はどうなったのよ!」

 

 

映司はオーズドライバーを傾けると、スキャナーを手にする。

装填されているのは千翼たちから排出されたコアメダル。

が、しかしそれは始めに与えたコアメダル(サメ、クジラ、オオカミウオ)とは違っていた。

三枚のコアメダルは千翼達の体内で精錬され、先程のゴーストの神託によって燃え上がった炎により、まったく別の物に変わったのだ。

 

 

「変身!」

 

 

映司はスキャナーをスライドさせる。

キン、キン、キンと音がして桃色のメダルが激しい光を放つ。

 

『ラブ!』『ラブ!』『ラブ!』

 

『ラララァララァーララーララーブ!』

 

 

光が晴れると、姿を見せたのは仮面ライダーオーズ、"ラララコンボ"。

頭部にはハートのシグナルが輝き、桃色の複眼の周りには白い翼の装飾が見える。

肩にも大きなハート型の装甲があり、脚には割れたハートの装甲が追加されていた。

その固有能力は『愛の力』。たとえば状態異常の無効化。コアメダルをいくつ体内に内包していようが、ラブメダルが存在する限り、映司は自我を失うことはない。

 

 

「フッ、ハァアア!」

 

 

腕を天に掲げる。

すると桃色の光がドーム状に広がっていき、ネオやオメガを通過する。

すると消失する食欲。状態異常無効化の能力は、仲間にも適応できると言うワケだ。

 

 

「愛……?」

 

 

ポツリと、誰にも聞こえない音量でキュルキラが呟く。

 

 

「………」

 

 

前髪が顔を隠しているため、キュルキラの表情は全く確認できない。

とは言え、唇は、歪に。

 

 

「……きもちわる!」

 

 

萎え、萎え、激萎え。

 

 

「……なにが愛よ。クッソ意味分かんない」

 

 

偉そうな事を言ってんじゃねぇぞ。

ああ、マジ、反吐がでるわー。なにが愛だよ。

クロスオブファイアによる精錬? おい、おいおいおいおい冗談だろ。

なんだよ赤い神託って。くだらねぇキモオタのオナニーみてぇな言葉でなに愛とか思い出しちゃってんの?

は? アホ? クズ? あ、マジでキレたわ。

 

 

「お前らが――ッ、ンなんだからよォオオ!!」

 

 

キュルキラは腕を交差させ、文字を引き寄せていく。身の周りを激しく旋回する原作カテゴリ。

 

 

「消すわ! マジでッ! なにがいい? なにで殺して欲しい!?」

 

 

試しに一つ、世界に触れる。

すると、その世界は、バチッと音をたててキュルキラから離れた。

 

 

「―――」

 

 

あれ?

 

 

「は?」

 

 

近くにあった世界を蹴る。

世界はキュルキラに吸い込まれることは無く、そのまま蹴り飛ばされていく。

 

 

「おい」

 

 

飛び上がり、世界を掴む。

掴んだだけ。それだけ。

 

 

「どういう事だ……!?」

 

 

構えていたメテオたちも、その変化に目を見張る。

世界がキュルキラに融合されない。先程までは力として使えていたものが、できていない。

 

 

「な、なんで! どうしてなのよ!」

 

 

理由があるとすれば一つ。

 

 

「何をした! オーズ!!」

 

 

オーズは小さくため息をつき、首を振る。

 

 

「少し、愛を活性化させただけだよ」

 

「はあ!?」

 

「どの世界も、みんな――、ほら」

 

 

ふと、ひとつの世界が弾け、粒子となって消え去った。

連鎖爆発。次々にキュルキラが使うはずだった世界が消滅していく。

美しい光の粒子が振り落ちる中、オーズはキュルキラをまっすぐに睨んだ。

 

 

「誰も、傷つけるためには生まれてない」

 

「――ッ」

 

「伝えたい事があるから、見せたいものがあるから、世界が生まれ、続いていく」

 

 

その中で人が傷つく事はあるかもしれない。

けれども、はじめから傷つけるためには生まれていない。どんなモノも誰かの心に届くように生まれている。

 

 

「フィクションは武器じゃない! 人の欲望を叶えるための大切な希望だ。世界にも意思がある。だからキミには協力しないってさ」

 

「しらねーッ! くっだらねェ! マジくだらねぇわ!!」

 

 

キュルキラはツインテールをブンブン揺らしながら地団太を踏む。

 

 

「お前の状態変化無効が働いただけだろ!? なに偉そうに言っちゃってんのよアンタ!」

 

 

世界が効果を失っている。

だからこそイユは死ななかった。カラスの化け物とか、魔女とか、そういうのは『他世界』の力が交わったから生まれたモノだ。

ソレが消えたのだから、イユは死んではいない。魔女なんてなかった。そういう話である。

 

 

「本当にそう思ってる?」

 

「ったりめぇだろうが! 世界なんてな、フィクションなんてな! 自由に使って、遊んでいいんだよ! なにしてもいいんだよ!!」

 

「ダメだよ。だから世界はキミに呼応するのを止めたんだ」

 

「……!」

 

「他者観測の中で生きてるんだから分かるでしょ? 傷つけるだけの物語は、いらないって思われてる」

 

「ふ、ふざけ――ッ!」

 

 

ふと、別のフィールドが広がる。

これは、ゲームエリアだ。エグゼイドが何かしたのだろう。しかしそんな事はどうでもいい。

そうだ、全てがどうでもいい。たとえ世界が他者を傷つけることを拒み、キュルキラに力を貸さなくなったとしても、どうでもいい。

 

キュルキラは二本のバトンを取り出す。

両方の先端に青白い炎が宿り、キュルキラはそれを回転させながら走り出した。

 

 

「殺す! 他世界の力が使えなくとも! キュルキラちゃんにはまだハーメルンがついてるもん!」

 

 

ギラリと視線を送る。

 

 

星屑(タグ)!」

 

 

ハーメルン、沈黙。

 

 

「星屑!」

 

 

沈黙。

 

 

「星屑ッ! タグッッ!! タ――ッ、っておい! なんでだよ!!」

 

 

沈黙するハーメルン。

キュルキラが叫んでいても、ビクリとも動かない。

 

 

『エラー』

 

「んぬ!?」

 

 

●●●

 

ガイドライン違反(攻撃的な言葉や中傷(人格否定)・脅迫)

特定の個人を攻撃するような作品の投稿や書き込み

このアカウントはロックされました

 

●●●

 

 

「―――」

 

 

真っ白になり固まるキュルキラ。

ハーメルンはもはやこの場にいる事が無意味と判断したのか、灰色のオーロラを出現させて消えていく。

ふと、口笛が聞こえる。そちらを見ると、サングラスをかけ、アロハシャツの上にジャケットを着た男が立っていた。

 

 

「間に合ったみたいだな」

 

「貴利矢さんッッ!?」

 

 

反応するエグゼイド。そこで全てを思い出した。

そうだ、そうか、偽りの世界で友人だったのは――

そうだ。貴利矢もいたではないか。明日那と知り合ったあの世界で、九条(くじょう)貴利矢(きりや)は同僚だった。

 

 

「まさか……!」

 

 

エグゼイドは自分の腰にあるゲーマドライバーを見る。

永夢が使っていたものはパラゼイドであったエムに奪われてしまった。

その後、永夢の前にゲーマドライバーが落ちてきたのだ。あの時は一心不乱で、それを掴み取ったが、考えてみれば――

 

 

「これッ、貴利矢さんのですか!」

 

「まあな。返してくれよ永夢」

 

「え? でも――」

 

「いーから! 疲れてるだろ?」

 

 

エグゼイドは反射的に地面を跳び、貴利矢の前に立つ。

貴利矢はニヤリと笑うと、エグゼイドからベルトを剥ぎ取り、そのまま自分へ装着した。

 

 

「お前が細工をしたのか!」

 

 

キュルキラが指さされ、貴利矢はサングラスを外しながら頷いた。

 

 

「まあな。リプログラミングの技術をハーメルンに適応できないか、ジョウジと一緒に悪戦苦闘さ」

 

 

とは言え、結局は成功。

リボルギャリーの内部に『アンチハーメルン』を設置し、ゲームエリアを展開。

キュルキラを引きずり込むことで、その恩恵を遮断させる。

 

 

「天才だなジョウジは。なにより『まとも』で助かる」

 

 

ヴェハハハハハハァーッ

ソレイジョーイウナー!

タッニオーッン ソォートー

クァミノサイノウニィー

 

 

フラッシュバック。

いかんいかん、頭が痛い。

貴利矢は頭を振りながらガシャットを前に出す。

 

 

「三速!」『爆走バイク!』『ギリギリチャンバラ!』

 

 

回転しながら貴利矢はガシャットをドライバーへ装填。

 

 

「変身!」『ガシャット!』『ガッチャーン! レベルアーップ!』

 

『爆走バァイク!』『I got you(アガッチャ)!!』

 

『ギリ\ 切りッ/ 斬りッッ\ギリッッッ! チャンバラァー!』

 

 

仮面ライダーレーザー・レベル3は、変身と同時にガシャコンスパローを発射。

光の矢がキュルキラの眼前に迫る。

 

 

「グッ!」

 

 

なんとか着弾前にそれを掴み取る。

そして握りつぶすが、気持ちは欠片も晴れない。

 

 

「そもそも――ッ!」

 

 

お前は、誰だ。

 

 

「お前ッ、え? ブックメイカーちゃんが用意した……ッ、え!?」

 

「確かに、自分はブックメイカーが用意した、永夢を惑わせるための道具でしかない」

 

「だ、だったら――ッ、は? え? でもなんでソッチの味方して――」

 

「選んじまったからかな、永夢が前に進む事を」

 

 

たとえ幻影であろうが、この世界において貴利矢は貴利矢だ。

そこに存在し、九条貴利矢として存在している。

 

 

「だからあるんだよ。クロスオブファイアが」

 

 

永夢(コア)が、エグゼイドとして戦い続ける限り、『仮面ライダーエグゼイド』が終わることはない。

だとすれば、仮面ライダーレーザーが死ぬこともない。

 

 

「俺の中に灯ったクロスオブファイアが、全ての『貴利矢(じぶん)』を共有する」

 

 

ややこしいか?

 

ならば簡単に。

 

 

「俺が、九条貴利矢である限り――」

 

 

レーザーは真っ直ぐに、キュルキラを睨んだ。

頭の中に過ぎったのは、赤い光の柱が齎した神託。

 

 

クリスマスの日に息子がめちゃくちゃヘコんでる。弓矢買ったばっかだから尚更……

 

貴利矢が戻ってきてくれて息子が超喜んでる(笑) パパのサングラスかけて、めっちゃモノマネしてるし(笑)

 

 

フッ、と、笑う。

 

 

「――俺は、仮面ライダーレーザーだ」

 

「……!」

 

 

キュルキラは汗を浮かべ、立ち尽くす。

頭を押さえ、後退していく。ゾッとする。つくづく呪いの大きさに圧倒される。

そして新たな気配。上空を見ると、オレンジ色の飛行物体が。

 

 

「よっと!」

 

「わ!」

 

 

永夢の前に着地するのは竜斗。

そしてレバーを引く音と、電子音。

 

 

「ライダーきりもみクラッシャァアアアアアッッ!!」『LIMIT BREAK』

 

「グッ! グゥウウウウ!!」

 

 

フォーゼ、ロケットステイツが高速回転を行いながらキュルキラに突っ込んでいく。

巻き込まれ、地面を滑るキュルキラ。一方でフォーゼはメテオ達のところへ着地するとベースステイツへ。

そして頭をキュッとなでてみる。

 

 

「よぉ流星。遅くなって悪い」

 

「気にするな。来てくれて――」「ゲンタローッ!」

 

 

メテオをおしのけ、フォーゼに飛びつくなでしこ。

キュルキラは息を荒げ、さらに後退していく。

 

しかし気配。背後を振り返ると、Gとホッパーが。

右を見るとネオ、オメガ。左を見るとオーズ。

前にはフォーゼとメテオとなでしこと、あとはレーザー。

そして衝撃。キュルキラが叫びを上げると、血が舞った。

 

 

「ターゲット、排除」

 

 

カラスアマゾンだ。

キュルキラは理解する。把握する。察する。

 

 

(あ、死ぬわこれ)

 

 

キュルキラちゃん。おしまい。

ぶっ殺されて、はい、ちゃんちゃん。

 

 

「………」

 

 

いや、待て、全力で逃げれば?

ブックメイカーに応援要請をすれば何とかはしてくれるのではないか……?

 

 

「………」

 

 

 

逃げれば――、どうなるの?

 

 

どうすんの?

 

 

「………」

 

 

助かったとして――、だ。

考えなさいキュルキラちゃん。あんたは、なんで?

 

 

「だ」

 

「ッ?」

 

「まァだッ! だァアアアアアアアアア!!」

 

 

キュルキラが叫ぶと、下半身がボコボコと音を立てて変質する。

脚が消え、変わりに巨大な球体が出現する。級体の周りには赤、青、緑、茶色、黄色、水色、紫色、金色、黒色、白色の宝石が埋め込まれていた。

十人十色。視る眼はいろいろ。なんて話。

 

 

「キュルキラちゃんは諦めない! 諦めてあーッげないッッ!」

 

 

球体が飛行能力を付与しているのか、浮き上がるキュルキラ。

さらに埋め込まれた宝石の一つ、赤色のものが光る。するとキュルキラの手に宿る炎。

 

 

「バカは死ななきゃ治らない。けれどもアンタ達は死なない! 救いようがないわね!」

 

 

キュルキラが両腕を前に突き出すと、その掌ではなく、背後から無数の炎弾が飛来していく。

まさに隕石だ。炎塊は次々にライダー達の周りに降り注ぎ、爆発していく。

 

 

「チッ! 永夢! そのチビすけを頼む!」

 

「は、はい!」

 

 

永夢は竜斗をつれてリボルギャリーの方へ。

一方で炎塊を撃ち落していくレーザーたち。その中でフォーゼはメテオとなでしこの肩を叩く。

 

 

「うっしゃ、アレで行こうぜ」

 

「ああ、気合を入れろよ弦太朗」

 

「おっけーゲンタロー!」

 

 

フォーゼが軽く突き出した拳に、メテオとなでしこは拳を打ち返すことで合図を送る。

ここで注目してもらいたいのはなでしこだ。美咲撫子、彼女はその実、宇宙生命体SOLUがオリジナルの撫子をコピー、トレースしている状態である。

 

そしてオリジナルの撫子は『高校生』だ。

だが今フォーゼと共にいる撫子は、中学生ほどの小柄な体型である。

トレースに失敗した? いや、そうではない。現在の撫子はSOLUの容量で言うならば100%ではない状態なのだ。

 

では残りはどこへ?

その答えは、メテオが"溶けた"ことが表している。

 

 

「!?」

 

 

キュルキラもそちらに気づいたのか、意識を奪われる。

現在、フォーゼの世界は壊滅状態にあった。そういう設定、バックボーンがある。その状態で流星もまた無事ではなかった。

 

だからこそ、メテオスイッチに自分の記憶と人格を全て移植し、『脳』に変えた。

それをSOLUがコーティングすることで流星の形状を再現している。

つまり撫子は自らの肉体を、流星の再現に削いでいた。そしてまたSOLUは変質する。なでしこもまた形状を失い、それぞれはスイッチへ。

 

 

「行くぜ流星、撫子! 友情と愛情のフルパワーで!」『Fusion』

 

「!」

 

「宇宙を掴むッ!」【フュージョン!/オン】

 

 

激しい光が迸る。

フォーゼ、メテオ、なでしこがそのままの意味で『合体』した。

現れるのは"仮面ライダーフォーゼ・メテオなでしこフュージョンステイツ"。

コズミックエナジーがアンドロメダを作り、フォーゼはその中に立ち構える。

 

 

「宇宙ゥウウウウウウウウウ!!」

 

「クソ! そこまでして! なんで!!」

 

 

キュルキラの舌打ちに、メテオの返事が聞こえてきた。

そこまでする価値のあるものが、そこにあるからだと。

 

 

「キタぁあああああああああああああああ!!」

 

 

フォーゼの声の中に、なでしことメテオの声も重なって聞こえる。

友情。愛情。言葉では説明できない感情は、もはや文字を超越している。フィクションを超えて、心に届くのだ。

 

 

「撫子! 頼むぜ!」『おっけーまかせてーッ!』

 

 

現在の状態は、かつてアクマイザーと戦った際に変身した時よりも遥かに進化している。

その証拠がスイッチだ。なでしこと一体になっている今、SOLUとしての能力をフルに使うことができる。

全てのスイッチの力をなでしこがトレースし、コズミックステイツの力と同じく融合して使用することができた。

 

だからこそフォーゼの脚に出現するランチャーモジュール。

そこから発射されたのは通常のミサイルではなく、SOLUの一部。それらは一瞬で、ロケットモジュールに姿を変えた。

 

 

「グッ!!」

 

 

迫る炎に直撃していくロケットモジュールたち。

炎塊と競り合うが、そこでフォーゼはさらに物質変化を使用。

ロケットモジュールの先端がドリルモジュールに変わり、ガリガリと炎を削っていく。

 

 

「んなッ!」

 

 

ドリルロケットたちは炎塊を削り崩すと、そのままキュルキラのもとへ。

キュルキラは素早く光のシールドを張ると、それらを受け止めた。見れば下半身にある金色の宝石が光り輝いている。

どうやら10個の宝石が、キュルキラに対応する属性の力を与えているらしい。

 

 

「っしゃ! フゥ! ノリノリで行くぜぇー!」

 

 

移動を開始し、光の矢を発射していくレーザー。

同じくフォーゼも、両腕に出現させた銀色のロケットモジュールを発射、キュルキラの結界に撃ち当てる。

 

 

「オラアア!」

 

「ぐあぁあぁッ!」

 

 

バリン! と大きな音を立てて破壊される結界。

 

 

「ハァア!」『タカ!』『カマキリ!』『バッタ!』

 

 

怯んだキュルキラへ、オーズが迫る。

未だ多くのコアメダルを内蔵しているが、ラブメダルの効果でグリード化する事はなくなった。

亜種コンボと呼ばれる形態になり、バッタの跳躍力で上空にいるキュルキラへ到達すると、鎌の一撃を浴びせる。

さらにバッタはもう一人。ホッパーもまた跳躍すると、キュルキラの肩へ踵落しを食らわせる。

 

 

「カハッ!」

 

 

まだ終わらない。

ネオはクロー、フォーゼはウインチを発射。

キュルキラの下半身にそれらを引っ掛けると、思い切り下へ引っ張った。

 

 

『コブラ!』『ウナギ!』『ゾウ!』

 

 

さらにオーズもいやにリアルなコブラと、電撃を纏った鞭(ボルタームウィップ)で加勢。

浮遊するキュルキラを思い切り下へ引っ張って行く。

 

 

「グガァア!」

 

 

ダメージで怯んでいたため、キュルキラは抵抗するまでも無く墜落。

地面に叩きつけられ、うめき声を上げた。

 

 

「ぐぅッ! うざいなァ!!」

 

 

紫色の宝石が光ると、球体からどす黒い闇のエネルギーが煙幕のように噴射される。

ダークネスフォッグ。それに触れればバチバチと音を立てるエネルギー波による攻撃を受ける。

とは言え、雲は一瞬で吹き飛んだ。赤い旋風。仮面ライダーGがレバーを入れたのだ。

 

 

「スワリングッ!」

 

 

赤く発光するエネルギーが装甲を伝い、Gの左足に収束していく。

地面を蹴り、飛び上がるG、先程エネルギーをためた足とは逆の、右脚を前につきだして飛び蹴りを仕掛けた。

 

 

「ライダーキック!」

 

 

左足から放出されるエネルギーが、体全体に纏わりつき、紅いドリルのように変わるG。

 

 

「ッ! クソ!」

 

 

キュルキラが左手を前に出すと、光属性のシールドが出現、Gを受け止める。

 

 

「!」

 

 

キュルキラは複眼を光らせたホッパーを確認。

次は右手を前に出し、シールドを展開する。

するとそこへ命中するライダーキック。唇を噛み、競り合いを開始する。

 

 

「ウォオオオオオオ!!」

 

 

だがそこへ振ってくる刃。

オメガがブレードで、加勢を。

シールドがガリガリと削れ、オメガはそこで後ろに跳んだ。

 

 

『スキャニングチャージ!』

 

 

入れ替わりで飛来するのは三つのリングを潜り抜けて飛んでくるオーズ。

 

 

「セイヤアアアアア!!」

 

「!」

 

 

タトバキックが炸裂し、シールドを撃ち破る。

そこでGとホッパーの蹴りもキュルキラの胴体に直撃、激しく回転しながら後方へ吹き飛んでいく。

 

 

「あ。当たった!」

 

 

感慨深いと天を見上げるオーズ。

間髪いれずGとホッパーはキュルキラへ向けて走り出す。

 

 

「グゥウ!」

 

 

前にそれを確認。

さらに背後を振り向くと、ネオとレーザー、カラスが走ってくるのが見える。

 

 

「ナメるなァア!」

 

 

ポン! と音がして、キュルキラが球体から脱出。

どうやら下半身の球体は、肉体に一部ではなく装甲のようだ。

球体は自動浮遊しながら宝石を発光。茶色の宝石は土、激しい地震が発生し、ライダー達の動きが鈍る。

さらに黄色の宝石が発光すると、雷が発生。激しい雷撃がライダーたちの装甲を傷つける。

 

 

『クワガタ!』『カンガルー!』『チーター!』

 

 

雷の間を縫って走ってくるオーズ。

キュルキラもそれを理解して、拳を握り締めると真っ向からぶつかり合う。

 

 

「フッ! ハァ!」

 

「ゴッ!」

 

「セイセイセイセイ!!」

 

 

オーズはキュルキラの拳を、上半身を後ろに傾けるスウェーバックで回避すると、まずはアッパーを一発顎へ叩き込んだ。

さらにクワガタヘッドから電撃を発射。

 

 

「チィイ!」

 

 

キュルキラの動きが鈍ったところで、肩に一発、鎖骨あたりへ一発。

わき腹をすくい上げるように一発。後退していく動きに合わせて胴体へストレートを一発!

 

 

「威力が足りないのよ!!」

 

「え? おわわ!」

 

 

だがキュルキラは裏拳でオーズの拳を払うと、肩を掴み、後ろへ投げ飛ばす。

そこにはビリーザロッドで雷を吸収していたフォーゼが。

 

 

「弦太朗くん! 止めて止めてぇー!」

 

「ん? おぉぉお!? 映司先輩――って、ぐはあ!」

 

 

フォーゼは飛んできたオーズを何とか受け止めるが、そこでキュルキラのツインテールが伸びた。

まるで触手だ。フォーゼとオーズをガッチリと縛り上げると、キュルキラはそのまま思い切り頭を振るう。

近づいてきたGやホッパーたちをなぎ払い、ある程度振り回すとオーズたちを投げ飛ばす。

 

 

「くたばれ!」

 

 

上浮に浮遊する球体から炎弾が発射、フォーゼとオーズに直撃して爆発を起こした。

 

 

『シャチ!』『カメ!』『ゾウ!』

 

 

だが水を纏わせたシールドで、オーズはそれを防ぎきっていた。

さらに体からメダルが排出、自動的にオーズドライバーへ移動し、交換、装填される。

 

 

『ライオン!』『クジャク!』『ワニ!』

 

 

タジャスピナーで炎弾を発射しながら距離を詰めるオーズ。

さらにライオンヘッドからフラッシュを発生させて目をくらませる。

 

 

「目障りな!」

 

 

ツインテールを振るわせるキュルキラ。

しかしその時、オーズの前に割り入るレーザー。

 

 

「自分に任せな!」『ギリギリ!』『クリティカルフィニッシュ!』

 

 

発光する鎌を二刀流にして走るレーザー。

次々と襲い掛かる髪を両断していきながら前に進む。

 

 

「グッ!」

 

 

気づけば髪形はショートカット。

とは言え、キュルキラもバカではない。ワニ型のエネルギーを纏った蹴りを紙一重で交わすと、風の力を発生させて飛び上がる。

そして再び球体と合体。黒の宝石を光らせ、強力な重力フィールドを発生させる。

 

 

「うわ!」

 

「グッ!」

 

 

押さえつけられる力に、足を止めるライダーたち。

 

 

「ハァ! ハァ! これで終わりに――ッ!」

 

 

しかしキュルキラは見た。

一人だけ、強力な重力フィールドを突っ切ってくる者が。

フォーゼだ。両腕につけたロケットと、足にあるスキー板のようなリフターで強引に突進してくる。

 

 

『げんたろぉ!』【弦太朗!】

 

「ああ! 友情パワー! 炸裂させるぜ!!」

 

(ヤバイ!)

 

「『【ライダァアアアアア!!】』」『LIMIT BREAK』

 

 

重なる声。

フォーゼは出力を最大にして飛び上がる。

 

 

「アルティメットクラッシャァアアアアアアア!!」

 

「く、クソ! クソ!! クソクソクソッッ!!」

 

 

次々と属性の弾丸を発射するが、その全てをフォーゼは回転するリフターで引き裂いていく。

 

 

(に、逃げ――)

 

 

上に移動する――、が、やはりと言うべきなのかフォーゼは強引に突っ込んでくる。

 

 

(られないッッ!!)

 

 

結果、キュルキラは球体を捨てる。

フォーゼは球体に直撃し、それを破壊。一方で本体のキュルキラは斜め上空に飛んでいた。

 

 

「ハアア!!」

 

 

フォーゼは両腕のロケットモジュールを発射。

 

 

「効くかよ!!」

 

 

猛スピードの弾丸だったが、キュルキラは腕を払い、それを後方へ受け流した。

 

 

「アアアアアアアアアアアア!!」

 

 

ふと激しい怒りと焦燥感を感じ、キュルキラは叫んだ。

なんか、もう、全部。

 

 

「最ッッ! 低ェエエ!!」

 

 

キュルキラは気づいていたのか、それとも気配を感じたからか、後ろを振り返る。

弾き飛ばされたロケットモジュールが一つに交じり合い、人のシルエットを形成していく。

 

 

「俺達の想い、意思――ッ!」

 

「!」

 

「そして信念は、永遠に不滅だ!!」『メテオストーム!!』

 

 

巻き起こる黄色と青の旋風。

 

 

「俺の宿命はッ! 嵐を呼ぶぜ!!」

 

 

仮面ライダーメテオストームは、スイッチをシャフトに取り付け、思い切りワインダーを引き抜いた。

 

 

「メテオストームッ! パァッニッッシャアアアアアアア!!」

 

 

赤く発光する独楽がシャフトから発射され、自動でキュルキラを追尾しながら周りを飛びまわりながら突撃を繰り返す。

 

 

「ウゥウゥアァアァアアア!!」

 

 

独楽がまとわり付く、それに怯み、気づけばキュルキラは地面に倒れていた。

しかしこのままでは危険だ。纏わり付く不快感を押さえ、立ち上がる。

 

 

「あ」

 

 

遅かった。

そう思ったのは、ネオとオメガが前に立っていたからだ。

 

 

「げ」

 

 

気づけば、両腕が無かった。

 

 

「終わりにしましょう」

 

 

ホッパーが跳ぶ。キュルキラを掴む。投げる。

上空へ巻き上げられるキュルキラ。Gの蹴りが、レーザーの蹴りが、オーズの蹴りがキュルキラを打つ。

最後は、カラスアマゾンがキュルキラを踏みつけ、そのまま地面に叩き付けた。

 

 

「―――」

 

 

黒い羽が舞う。

キュルキラは人間態に戻り、小さく唇を吊り上げた。

 

 

「まけちった」

 

 

唇の端から、赤い血が流れる。

 

 

「ごめんね……、ブックメイカーちゃん」

 

 

目を閉じたキュルキラ。

音も無く、砂のようにただサラサラと消えていく。

 

 

「……欲望、か」

 

 

オーズは、ふと手に乗せたラブメダルを見つめながら、小さく呟いた。

 

 

 





ラララァララァーララーララーブ!(適当)


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