カメンライダー   作:ホシボシ

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第25話 Crazy about you

 

「それではポッピー歌います! レッツトライトゥギャザー!」

 

 

音楽が鳴り響く。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

プリズムの床を踏みしめて、レベルワン達は一直線にゲムデウスを目指していく。

まずはあのウイルスの塊を患者から分離させなければならない。それはレベルワンでなければ不可能だ。

距離が、詰まる。当然動き出すゲムデウス。咆哮をあげると、ゲムデウスの眼前に無数の光球が出現していく。

 

 

『ガしャコンぶレいカー!』

 

 

歪んだ音声が聞こえ、ゲムデウスの手に現れたのは『目』の装飾が目立つ禍々しいハンマー。

ハンマーのサイズはエグゼイドの持つガシャコンブレイカーよりも少し大きい程度。

過去のゲムデウスの武器は剣と盾だったが、そこはそれ元がパラゼイドゆえなのか、エグゼイドを強く意識した武器になっているようだ。

ゲムデウスはハンマーを思い切り振るい、光球を打つ。それらは向かってくるライダー達めがけ飛来していき、次々に着弾と爆発を繰り返した。

しかし直撃はしない。ライダーは皆それぞれ回避行動に出ていたからだ。

 

 

「フッ! ハァア!」

 

「フンッ!」

 

「きゃわわわ!!」

 

 

飛び上がるエグゼイド。空中にレンガブロックが出現していき、それを足場として空中を飛びまわる。

一方でブレイブはゆっくりと剣を構え、神経を研ぎ澄ませる。そして眼前に光球が迫ると、剣をそこへ合わせ、斬り弾いていく。

ポッピーに関しては純粋に手足をバタバタ振り回して必死に逃げ回りながら歌っている。

 

 

「おっと、ほっと!」

 

 

レーザーはステップを踏みながら光球を交わし、危険と思わしきものは両手に持つタイヤ型の銃で撃ち落していく。

だが光球はすぐに生成できるのか、キリがない。

そこで唸るスナイプ。地面を蹴り、体を思い切り回転させる。

 

 

「オラァアア!」

 

 

スナイプの囲む弾丸型のエネルギー。

自身が巨大な『弾』となり、光球を弾きながら一直線にゲムデウスへ向かう。

とは言えスピードは速くとも、軌道は真っ直ぐ。ゲムデウスはハンマーでスナイプを簡単に打ち返すと、再び光弾を連射していく。

 

 

「チッ! キリがねぇ!」

 

「研修医! アイツのレベルは!」

 

「おそらく――ッ!」

 

 

大きな体をゴロゴロ動かして回避に徹するレベルワンたち。

ゲムデウスなのだから少なくとも100相当、ないしは『X』と言う可能性がある。確実にレベルワンで対処できる相手ではないだろう。

前回は抑制機能が働いていた為になんとかなったが、今回はそうもいかない。

 

 

「チーム医療で行くぞ、みんな!」

 

 

返事はポッピーからしか返ってこなかったが、全員ちゃんと理解していたようだ。

良くも悪くも阿吽の呼吸とでも言えばいいのか。三人はすぐに別のガシャットを取り出し、ゲーマドライバーへ叩き込む。

 

 

「術式レベルX」「第参戦術!」「三速!」『レベルアーップ!』

 

 

要は、フィニッシュに至るまでのダメージをレベルワンで叩き込めばいい。

それを可能にさせるまで弱らせたり、気を散らせるのは他のレベルでもいい。

しかし気をつけなければならないのは、現在ゲムデウスは鎧で竜斗を囲っている状態だ。

あまり傷つけすぎると、中にいる竜斗を傷つけてしまう可能性がある。

まあ尤も、ベテランのドクター達には今更かもしれないが。

 

 

『『『I got you(アガッチャ)!!』』』

『ジェットー! ジェットー! イン・ザ・スカーイ!』

『ジェットジェーット! ジェットコンッバァアアアアアアアット!』テレレーン!

『ギリ\ 切りッ/ 斬りッッ\ギリッッッ! チャンバラァー!』

『かッ飛ばせ! ストライク!』

『ヒットエンドラン&ホームラン! カッ飛ばせ! ファミスタ! 決めろ完全勝利ィー!』

 

 

うるさく鳴り響く電子音に紛れるジェット噴射の音。

レベル3となったスナイプは空中へ舞い上がると、バックパックに装備されているガトリングを引き出し、銃弾の雨を浴びせる。

レベル差があるのか、ゲムデウスにダメージはないようだが、衝撃は感じるのかうめき声をあげている。

顔の周りを飛びまわるハエは目障りだ。ゲムデウスは叩き落そうと光弾を撃っていくが、空中を高速で飛びまわるスナイプにはなかなか当たらない。

そうしていると別の電子音。ゲムデウスの背後に回っていたレーザーが、ガシャコンスパローを構えているのが見えた。

 

 

『爆走! クリティカルフィニーッシュ!』

 

『目障りな!』

 

 

発射を防ぐために光弾をレーザーに向かわせようと、しかしそこでブレイブの肩アーマーから野球ボールが射出され、空中に留まるレンガブロックを破壊した。

中からは当然エナジーアイテムが出てくる。ブレイブは連続でボールを発射しており、一瞬で周囲のアイテムボックスを破壊、すぐにお目当てのアイテムをゲットする。

 

 

『挑発!』

 

 

光弾はすぐに向きを変えて一直線にブレイブを目指していく。

一方で片足を上げ、ガシャコンソードを構えるブレイブ。おお見よ、これぞまさに伝説の一本足打法!

 

 

「俺に打てない物はない!!」

 

 

ソードなのだから斬る筈なのだが、今は完全に『打つ』だった。

ガシャコンソードの周りに纏わり付いたファミスタエネルギーが、剣をバットに変え、カキーッンと気持ちいの良い音と共に弾丸は全てゲムデウスへ打ち返される。

さらに剣を振ったところにエフェクトが残り続け、次々に迫る弾丸は、これまた次々に反射されていった。

 

 

「グゥウウウウウ!!」

 

 

レベル差があるのならば相手の力を利用してやれば良い。

自らの攻撃に怯み、動きを止めるゲムデウス。するとチャージが完了したのか、ガシャコンスパローから巨大な光の矢が放たれる。

 

 

「グッ、ソォオ!」

 

「あッ! マジか!」

 

 

ゲムデウスは全身を叱咤させ、真横に跳ねた。

矢は当然命中せず、ゲムデウスの背後を虚しく飛んでいく。

が、しかし、ココでエグゼイドがポッピーに素早く耳打ちを。そしてすぐに走る。

場所は先程ブレイブが挑発のエナジーアイテムをを見つけるために破壊したブロックたちのところ。

つまりそこには回収されなかったエナジーアイテムがたくさん放置されているのだ。

 

 

『高速化!』

 

 

黄色い光りに包まれたエグゼイドは文字通り猛スピードで走り抜ける。

そして遂には、さきほどレーザーが外した光の矢に到達。いやむしろ追い越した。

すぐさまターンをかけ、地面に手を押し当てることで急ブレーキ。そこでエグゼイドはポッピーの名を叫んだ。

 

 

「永夢!」

 

 

ポッピーは掴んでいたエナジーアイテムを思い切り投げる。

エグゼイドまでは少々距離があったが、いまだ高速化が発動されているエグゼイドは、そのままガシャコンブレイカーを投擲。

高速化は武器にも影響しているのか、ハンマーは一瞬でエナジーアイテムに命中し、それが『エグゼイドが取った』と言う事として認識される。

 

 

『反射!』

 

 

反射のエナジーアイテムにより、エグゼイドの前にバリアが具現。

そこにレーザーの矢が命中し、文字通り『反射』が発動する。

さらにこの矢にも現在エグゼイドに付与されている高速化が適応するらしく、矢は一瞬でゲムデウスの背に突き刺さる。

 

 

「!」

 

 

だが察するドクター達。

刺さりが甘い。やはりゲムデウスのレベルはそれなりの様だ。矢先だけは装甲に食い込んだが、それだけだ。

大変だ、なんとかしなければ。その思いを抱いたポッピーがバグヴァイザーを構えてゲムデウスに切りかかった。

 

 

「永夢のために! 頑張るッ!」

 

『ハナエル! とことん愚かだなテメェは!!』

 

 

本物をマネして、本物になりたくて、けれども永夢を愛するポッピーなど確認されていない。そんなものは幻想だ。

 

 

『結局お前は自分から偽者になってる!』

 

「!」

 

『本物を真似してもお前は虚構だ! ポッピーピポパポにはなれない!』

 

「!!」

 

『ハナエル! お前はただの怪人だ! ポッピーの記憶を移植されただけの醜いモンスター!』

 

「!!!」

 

『このクズが! さっさと死ね!!』

 

「――ィ」

 

『あ?』

 

「最ッッッ低ッッッ!!!」

 

 

仮面ライダーポッピーには特殊能力がある。

恋愛シミュレーションのガシャットを使っているからなのか、『好感度が低い』相手にほど攻撃力が上がるのだ。

ポッピーは跳躍でゲムデウスの背後に回ると、すぐさま足を振るい、飛び回し蹴りを叩き込んだ!

 

 

『グゥゥ!』

 

 

足裏がゲムデウスに叩き込まれた瞬間、起こる爆発。好感度が低いと爆弾が爆発するものなのだ。

だがまだレベルの壁が立ちはだかる。ゲムデウスは怒りに吼えながら全身から衝撃波を発生させて、迫るライダー達をまとめて弾き飛ばす。

そのままゲムデウスは地面を蹴った。狙うのは当然ポッピーである。

 

 

『砕けろ!』

 

 

ゲムデウスのハンマーがポッピーの顔面を粉砕しようと振るわれる。

尻餅をついたポッピーは避けられない。グッと身を縮め、腕で頭を覆うくらいしか抵抗はできなかった。

 

 

『ゲキトツ! ルォボッツ!』

 

 

だがゲムデウスの足元に広がるタイトル画面。

そこからロボットゲーマくんが飛び出し、アッパーカットをハンマーに叩き込む。

ポッピーがいる下ではなく、上に、虹色の空の方へ打ち上げられるハンマー。

ゲムデウスが呆気に取られていると、さらなる衝撃が。

 

 

「ォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「!」

 

 

ゲムデウスの足が地面を離れる。

エグゼイド、レベルワンの巨体から放たれるタックルがぶち当たり、ポッピーからゲムデウスを引き離す。

 

 

「チィイイイイ!!」

 

「おい! 俺を見ろ! ゲムデウス!!」

 

 

すぐに体勢を立て直し、ジェット噴射で飛びまわるスナイプ。ガトリングで注意をひきつけるが――、そこで歪な音声が走る。

 

 

『ゴミが、消し去ってくれる!』『ゲきとツろボっツ』

 

 

ゲムデウスの左腕が肥大化し、機械的な装甲で覆われる。

まさかと思えばそのまさか。左腕が分離すると、ジェット噴射で自立移動を開始、ロケットパンチは空中にいるスナイプを追いかけ始める。

一方で倒れているポッピーに駆け寄るエグゼイド。見たところ怪我はなさそうだが……?

 

 

「ありがと永夢。私は平気」

 

「……なあ、ポッピー」

 

「え?」

 

「どっちがいい?」

 

「どういう意味?」

 

「だから、ハナエルか。ポッピーか……」

 

 

先程の言葉が心に刺さっているのではないかと思っている。

このポッピーは元はハナエルと言うバグスター。そこにポッピーの記憶が移植されている状態だ。アンデンティティはあやふやかもしれない。

だが、しかしポッピーは首を振った。どうやらエグゼイドの心配は杞憂だったようだ。ポッピーは一度変身を解除し、笑顔をエグゼイドに見せる。

 

 

「私はポッピーだよ。ちょっと環境とか状況は違うけど、全部覚えてる」

 

「ああ、そうか」

 

「ドレミファビートのバグスターじゃないけど、それでも私はポッピー。仮面ライダーで、クロスオブファイアを持ってて、それから――」

 

 

ポッピーは左手を見せる。それはかつて、幻想と思っていた世界での真実だった。

 

 

「永夢のお嫁さん!」

 

「!」

 

 

カブトが拾っていた。

つけておいてやれ、そう言われたが、言われずともつけていた。

それはかつて永夢が本当だと思っていた世界で、彼女に渡した指輪であった。

 

 

「ああ、ありがとう」

 

 

別におかしな話じゃない。これもカブトが教えてくれた。

カブトも知っている。少し歯車が違えば、関係も状況も変わってくる。

カブトの妹もそうだったようだ。カブトの親友と恋に落ちていたらしい。

結局とそれは報われることはなかったが、いつかまた、別の世界軸できっと――。

 

 

「ねえ、永夢。私の事――、好き?」

 

「決まってるだろ」

 

「え?」

 

「最高にときめくぜ!」

 

「ぶふっ!」

 

「お、おい! なんで笑うんだよ」

 

「だ、だってぇ、そんな格好で!」

 

 

レベルワンのエグゼイドはバツが悪そうに頭をかいた。

 

 

「ヒュー、おアツいねぇ」

 

「ったく、見ちゃいられねーな!」

 

「オペ中だぞ! 集中しろ!!」

 

 

レーザーは、レベル3からレーザーターボに変わり、走る。

さらに飛びまわりながらレーダーを起動するスナイプ。すると気づいた。

 

 

「でかしたぜポッピーピポパポ」【A】『ズ・キューン!』

 

 

ガシャコンマグナムを取り出し、ライフルモードに変形を行う。

スコープレンズを覗くとチャージ開始。スナイプが狙うのはただ一点、先程ポッピーが蹴った場所だ。

そこはレーザーが矢を刺した場所、ポッピーは光の矢を蹴り、さらにゲムデウスへ埋め込んでいたのだ。

 

 

「オラアア!!」『バンバン! クリティカルフィニーッシュ!』

 

 

さらにスナイプも驚異的なエイム能力で矢のど真ん中に銃弾を命中させる。

とは言え、その部分に集中していたからか、追尾していたロケットパンチは身で受けてしまい、地面に墜落。ガシャットが外れ、レベル2に戻った。

しかし追撃は許さない。走るレーザーは落ちたガシャットを拾い上げて自分のドライバーへ装填。

コンバットゲーマを装備して、虹色の空へ舞い上がる。ロケットパンチは追尾対象をスナイプからレーザーへ変更した。

一方でゲムデウスは背中の矢がより進入している事に気づく。

これはまずいか? そう思ったときには、既に背後にブレイブが回っているところ。

 

 

『いッくッぜ! ギャラクシッアーッン!』

 

 

戦闘機を背負ったブレイブが狙うのは、当然刺さった矢。

船体から赤いレーザーが発射され、光の矢に直撃、さらに深く深く押し込んでいく。

 

 

『グゥウウウウ!!』

 

 

完全に矢が進入した。

だが、それだけだ。ダメージは少ない。ゲムデウスは体勢を立て直し、腕を自身に戻す。

 

 

『まイティぶらザーズ』

 

 

またも歪な電子音。

構えるライダー達。が、しかし、何も起きない。

 

 

『ッ!? なんだ!』

 

 

うろたえるゲムデウス。

すると笑い声が聞こえてきた。前を見ると本当のマイティブラザーズ、つまりオレンジ色のエグゼイドが走ってくるのが見えた。

エグゼイドがフォームチェンジを行ったようだ、だが青緑はまだポッピーと話している。さらにこのオレンジ、見れば手には別のガシャットが。

 

 

「フフフ、おれと遊ぼうぜ、ゲムデウス」『デュアルガシャット!』『ガッチャーン!』『マ・ザ・ル・アーップ!』

 

『ッ、貴様!』

 

 

赤い拳・強さ! 青いパズル・連鎖!

赤と青の交差! パーフェクトノックアーッウト!

音声が鳴り響き、ゲムデウスの前にパラドクスパーフェクトノックアウトが姿を見せる。

同じくして走り出すゲムデウス。その実、彼のレベルは99を遥かに超越している。だからこそ負ける理由はなかった。

そして後ろから打撃音が聞こえるなかで、青緑のエグゼイドはポッピーを抱き起こす。

 

 

「ねえ、ポッピー」

 

「うん? なぁに、永夢」

 

「あの、えっと……」

 

 

照れる、が、言えない辛さは知っている。

もうあんな思いは、したくない。

 

 

「愛してる。だから、ずっと一緒にいて欲しい」

 

「……はい!」

 

 

最後のピースが嵌った気がした。

だからこそ黄金の光が巻き起こり、永夢の懐にあったガシャットに力が収束していく。

 

 

「いこっ、永夢。患者さんは待たせたらダメだよ!」

 

「うん!」

 

 

手を取り合い、立ち上がる二人。

同じくしてパラドクスの拳がゲムデウスの頭部を捉えた。

怯み、後ろへ下がるゲムデウスと、ターンを行いガシャコンパラブレイガンを掴み取るパラドクス。

青い銃弾が不規則に動き回り、ゲムデウスの全身を撃つ。

 

 

『な、なんだ?』

 

「フフフフ」『マッスル化!』『マッスル化!』『マッスル化!』

 

 

ゲムデウスは強烈な違和感を感じていた。

パラドクスの動きは目で追える。攻撃も見える。

しかしそれを防ぐことが――、できない。振るわれた斧をハンマーで受け止めるが、衝撃が強すぎて腕が痺れる。

すると伸びた脚。パラドクスの蹴りがゲムデウスの腕を弾きハンマーが斧から離れた。だからこそパラドクスは斧を存分に振るい、ゲムデウスへ刻み付けることができるのだ。

 

 

『グウゥウウゥ! なんだ! 何でだよ!』

 

「フフフハハ! いいぜぇ、そのリアクション。心が滾る!」『ガッチョーン』『ウラワザ!』『ガッチャーン!』『パーフェクトノックアウト! クリティカルボンバーッ!!』

 

 

斧を投げ捨て、飛び上がるパラド。

一旦両足を引っ込めた後、直後思い切り伸ばし、蹴りを繰り出す。

赤と青のエネルギーを纏ったソレを、ゲムデウスは肥大化した左腕で受け止めようとするが――

 

 

『グゥォオオオオオオオオ!!』

 

 

装甲が粉々に砕け散り、ゲムデウスは蹴りを腕に受けて地面を滑る。

おかしい! いくらマッスル化を使っているとは言え、想定を遥かに超えるダメージだ。

これは明らかにおかしい。圧倒的な恐怖が、たかが99と言うレベルに押され始めるワケがないのに!

 

 

「焦ってんなァ、ゲムデウス」

 

 

レーザーが笑う。そこでゲムデウスは気づいた。

そうだ、明らかにおかしいのであれば、裏があるのは道理。

 

 

『何をした!』

 

「お前に撃ち込んだ矢。ただの矢じゃない」

 

『ッ!?』

 

「あれは俺のガシャット。つまり、レベル0の力を込めた」

 

 

つまり皆で協力し、必死に当て、そして必死に刺し入れた光の矢は攻撃のためのものではないと言うことだ。

レベル0とはそれ即ち、ウイルス抑制の力。思い出せばゲームエリアを展開しただけでもパラドの力を封じたり、星まどかを救う手にもなった。

さらに対パラドクス戦では、ゲンムとエグゼイドのコンビネーションによりパラドクスに勝利する事までできた。

加えて、レーザーはゲムデウスウイルスの消失にも成功している。

 

つまりレベル0とは威力こそは低いが、ウイルスに対して絶大な効力を発揮するものだ。

それは今回も例外ではない。フィアーもまたバグスターが恐怖に絡んだことで、ウイルスにかわりないのだ。

 

 

「お前に刺さったレベル0の矢が、お前の力を抑制し、レベルをどんどん下げていくってワケだ」

 

『――ッ! チクショウがァア!!』

 

 

矢を引き抜こうと背中に手を回すゲムデウス。

だがそこで銃声。スナイプが銃を弄び、鼻を鳴らす。

 

 

「やらせるワケねぇだろ」『バァンバァン! シミュレーションズ!』

 

『I ready for Battleship!』『I ready for Battleship!』

 

 

さらに手にはガシャットギアデュアルβが。

待機音が連続する中、他のライダー達もガシャットを構える。

 

 

「覚悟しろゲムデウス。お前も終わりだ。術式レベル100」『タドルレガシー!』

 

「五速!」『ドラゴナイトハンターッ! ゼーット!』

 

「第伍拾戦術。変身」

 

 

そして笑いながら後退していくパラドクス。一方で前進していくエグゼイド。

 

 

「ありがとうパラド」

 

「ああ、しっかりやれよ、永夢」

 

 

パラドクスは粒子となりエグゼイドへ交わる。

そしてレベルワンに戻り、ハンマーを構えるエグゼイド。

それだけじゃない、ポッピーが必殺技を発動、ハートや星のエネルギーがハンマーの周りに纏わり付く。

 

 

『辿る歴史!』『ド! ド!』

『スクランブルだァー!』

『目覚める騎士!』『ドラゴナナナナーイトゥッ!』

『出・撃・発・進!』『タドールレガシィー!』

『ドラッ!』『ドラッ!!』

『バンバンシミュレーショォォォォンズ!』

『ドラゴナイトハンタァアアアアア!』

『ゼェエエエエエエエッッッッッッッット!!』キュピーン☆

『発進ッッ!』

 

 

音が重なりワケが分からなくなる。

とは言え、こうしている間にもゲムデウスのレベルはどんどん下がっていくのだ。

うろたえる中で、敵を囲んでいくライダー。

その中で、エグゼイドが叫んだ。

 

 

「聞こえるか! 竜斗!」

 

 

残念だけど、人はいつか必ず死ぬ!

創作物だって、視られていないところで絶対に死ぬ。

それが人であると言うことだからだ。だからそれは仕方ない事なのかもしれない。

 

でもそれでも、怯えながら生きるか、少しでも輝きを見つけようとするのかくらいは選べる。

そしてその可能性を広げるためにドクターがいる。

心を救うことは中々難しい。それでも、今は――ッ、仮面ライダーなんだ。

 

 

「だから待ってろ! 必ずお前を助ける! そして生きるんだ! そしたら――ッ!!」

 

 

世界は、きっと変わるはずだ。

走り出すライダーたち、ポッピーも何かしようと腕を上げる。

 

 

「そ、それでは続けて歌います! Rush,N,crash!」

 

 

音楽が鳴り響き、ポッピーは振り付けを踊り始める。

一見ふざけている様に見えるが、音が、歌が、ライダー達のクロスオブファイアを活性化させていく。

弱体化し続けるゲムデウスと、強化され続けるライダー。

砲撃が唸る。スナイプが弾丸を放ちながら前進開始!

 

 

「さっさとくたばれ!」

 

『グゥウウ!』

 

 

さらにレーザーが火炎を発射しながら翼を広げて突進。

ゲムデウスがよろけたところで、エグゼイドの巨体が割り入った。

 

 

「オラッ! オォオオオ!」

 

『グッ! ガアアア!!』

 

 

ハンマーを振るい、打撃ダメージを与えていく。

その周囲に展開していく光の剣。ブレイブが白いマントを翻すと、空中を留まる剣が次々にゲムデウスへ突き刺さり、爆発を起こしていく。

 

 

「フッ!」

 

 

地面を転がるエグゼイド。

空中を飛行するレーザー、標的に狙いを定めるスナイプ。

三人はそのままエナジーアイテムを狙い、獲得する。

 

 

『マッスル化!』『発光!』『分身!』

 

 

皆目を閉じた。直後激しいフラッシュがレーザーの銃口から放たれる。

眩い光はゲムデウスの目を潰し、その隙に分裂していくスナイプ。

 

 

『キメワザ!』『バンバン! クリティカルファイヤー!』

 

 

両手の装甲を合わせて船体を作る。

さらに全身にある砲台も、全てがゲムデウスを狙った。

そこから発射されるのは強力なエネルギー弾。分身したスナイプはざっと6体、それが全て銃弾を発射し、ゲムデウスに直撃していく。

 

 

『グアァアアアアアアァアア!!』

 

 

凄まじい爆発が巻き起こり、爆炎の中に悲鳴が消えていく。

一方でバリアを発生させ、爆炎の中を突っ切っていくブレイブ。

ガシャットを引き抜き、それをガシャコンソードへ装填する。

 

 

『タドル!』『クリティカルフィニーッシュ!』

 

 

光のエネルギーが剣に集中し、刹那、ブレイブは剣を下から上に振るいあげた。

するとその軌跡にあわせるように、真っ白な斬撃が天へ昇る。

 

 

『―――』

 

 

空へ打ち上げられるゲムデウス。

まだだ、まだ終わらない。ブレイブはガシャットギアデュアルβを取り出し、ギアをまわす。

 

 

「術式レベル50」『タドゥファンタジー!』

 

 

フォームチェンジ。

タドルファンタジーとなったブレイブはすぐにキメワザを発動。

剣を真横に振るうと、黒い斬撃が発射されてゲムデウスへ重なる。

レガシーの一撃は竜斗に回復魔法を与え、ファンタジーの一撃はゲムデウスを攻撃し続ける。

白と黒の交差、巨大な十字架はゲムデウスを磔にし、完全にその動きを封じてみせた。

 

 

 

「研修医!」「エグゼイド!」「永夢ッ!」

 

「ああ! 最高のアシストだぜみんなッ!」『キメワザ! マイティ! クリティカルストライク!!』

 

 

大きな両足をそろえ、エグゼイドは飛び上がった。

空中で一回転。そして、足を突き出す。

凄まじい光を灯しながら、そのままエグゼイドはゲムデウスの胴体めがけ、突っ込んでいく。

 

 

『グアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

足裏がヒットする感覚。

吹き飛ぶゲムデウスと、十字架に固定されたままの竜斗。

ウイルスの分離に成功したようだ。ブレイブがマントを振るうと、十字架が消失。落ちて来た竜斗はポッピーはキャッチし怪我なく終わった。

 

 

『グゥウウ!!』

 

 

地面を殴りつけ、吼えるゲムデウス。

納得がいっていない、そんな様子である。

まあムリもないか、最強のウイルスである恐怖と結合した結果がコレなのだ。

少なくとも、描いたプランとは大きく逸脱している。

 

 

「どうしてか分かるか、ゲムデウス」『ハイパームゥテキ!』

 

『!』

 

 

広がるタイトル画面が逆光となり、黒いシルエットの中でエグゼイドは目を光らせていた。

ゲムデウスが劣勢になっているのは、何もおかしな事じゃあない。

確かに、恐怖は絶大なウイルスだ。それは確実に竜斗を死へ誘っている。

だが恐怖が他のウイルスと圧倒的に違う点は直接的な死へ引きずるものではない。もちろん心をダメにしてしまう厄介なものではあるが、同時に対処ができるものでもある。

 

 

「生きたいんだよ、竜斗は。彼らは」『ドッキーング!!』

 

『ふざけるな! だったら、何度も沈めてやる! 圧倒的な恐怖! フォビアこそが我が正義だ――ッッ!!』

 

 

走り、拳を振るうゲムデウス。

鉄拳がエグゼイドの画面を――

 

 

『ンッwwパwwッwwカwwーwwンww!!!!』

 

 

煽ったように気の抜けた電子音が。

だがエグゼイドの腰に装填されていた金色の扉が開いたとき、凄まじい光が巻き起こり、ゲムデウスは逆に後ろへ弾き飛ばされた。

 

 

「ハイパーッ、大ッ変身!」『ムゥゥゥゥゥテェキィイイ!!』

 

 

光が満ち、金色に染まるエグゼイド。

電子音――、もはや歌が流れ、その姿が大きく変化していく。

 

 

★☆★輝けぇー!☆★流星のご・と・くゥー!☆★☆

 

★★★黄金の最強ゲーマァー☆☆☆

 

☆ハ★イ☆パ★ー☆ム★テ☆キ★ー☆ッ★!

 

☆★☆★エグゼェエエエエエエエエイド★☆★☆

 

 

 

黄金の粒子が振りまく中で、竜斗は目を覚ました。

前に見るのは、仮面ライダーエグゼイド、ムテキゲーマー。

 

 

「ポッピー歌います! Time of Victory!!」

 

 

音楽が鳴り響く、動き出すエグゼイド。

 

 

『ォオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

叫び、再び殴りかかるゲムデウスだが、エグゼイドは人さし指を一本前に出す。

それで、拳を完全に止めてみせた。

 

 

『ばッ、バカなァッッ!!』

 

 

エグゼイドが人さし指を振るうと、ゲムデウスの拳が弾かれる。

 

 

「命の輝きの前に――」

 

 

エグゼイドはゲムデウスを蹴り上げた。

顎を蹴られたゲムデウスはもう見えない。虹色の空に豆粒ほどのシルエットが見える。

あれがたぶんゲムデウスなのだろう。ポッピーやレーザーが目を見開き固まっている中で、エグゼイドの姿も消えた。

残っているのは黄金の粒子だけ。本体はワープを行い、ゲムデウスの上に出現する。

 

 

「恐怖が放つ濁りきった闇など、もはや相手ではない」

 

 

踵落としでゲムデウスを地面に叩きつける。

あまりの衝撃にゲムデウスはバウンドしている。

一方で地上にワープしてきたエグゼイドは、ハイパームテキのガシャットを叩いた。

 

 

『キメワザ!』

 

『ハイパー! クリティカルスパーキング!!』

 

【HYPER! CRITICAL SPARKING!!】

 

 

ワープを行い、一瞬でゲムデウスの前に現れるエグゼイド。

拳を撃ち込んだと思えば、高速のラッシュが始まった。

ハイパームテキは全てのエナジーアイテムを使用した状態であり、その強化は限界値を超えている。

さらにハイパームテキはヒットの数値を自分で決めることができる。

つまり一発しか殴っていないように見えても、攻撃さえ当てれば5回殴ったときと同等の衝撃を与えることができるのだ。

 

おっと、そんな事を言っている間に殴り続けるエグゼイド。

既にゲムデウスの肉体には推定で1589644566510発の拳が打ち込まれていた。

そして跳ぶ。辛うじて顔をあげるゲムデウス。だがエグゼイドの姿が一瞬にして視界から消えた。

ワープである。後ろを見る。エグゼイドがいた。しかしワープ。右に現れ――、おっともう左……、ではない。正面からエグゼイドが飛び蹴りを仕掛けてきた。

 

 

「ハアアアアアアアアアア!!」

 

『グギャアアアアアアアアアア!!』

 

 

エグゼイドがゲムデウスを貫く。

 

 

「………」「………」

 

 

煙が、止まった。

 

 

『フフ! なんだ! なんだ!! こんなものか!!』

 

 

笑うゲムデウス。どうやら耐えられたようだ。

エグゼイドの希望を少しでも濁らせてやったことが嬉しくてたまらない。そんな様子だった。

恐怖している筈だ。焦っているはずだ。そんなヤツの目の前で患者を八つ裂きにしてあげたらどんなに楽しい事だろうか。

一方でエグゼイドは立ち上がり、黄金の髪を靡かせながら振り返る。

 

 

「消えろ。恐怖よ」

 

『なに……?』

 

 

次の瞬間。

 

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

『グアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

 

激しく点滅するヒットエフェクト。

どうやら少々、遅れて効くようだ。

興奮湧き上がるポッピーやレーザー。歓声はゲムデウスにとっては不快でしかない。皮肉にもソレがゲムデウスに踏みとどまる意思を与えてくれた。

 

 

「やったか!!」

 

 

前のめりで叫ぶレーザー。だが――ッ!

 

 

『グゥウウウウウウウ!!』

 

 

まだだ。

さすがは恐怖を冠するだけはある。

ゲムデウスは確かに立ち、痛みを無視するように走り出した。

 

 

『死ねェエエ! エグゼ――』

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

え?

ゲムデウスは足を止め、痛みと衝撃に叫ぶ。

 

 

『ガ――ッ!!』

 

「………」

 

 

だが、それでも、耐える!

エグゼイドを殺す。

エグゼイドを殺す

エグゼイドを殺す。

エグゼイドを――!!

 

 

『ガアアアアアアアアア! まだだ! 俺はッ、死なない!!』

 

 

ハンマーを振るい、そこへゲムデウスは全てのエネルギーを集中させる。

究極の一撃だ。全ての患者を殺し、全ての希望を滅することができ――

 

 

「………」

 

『――おいッ、なんだ! なんだその余裕は!!』

 

「………」

 

『がああ! ムカつくぜエグゼイド! 今すぐにお前を――』

 

「………」

 

『ま、まさか――ッ』

 

「………」

 

『まさか!!』

 

 

ま だ 終 わ っ て な い の か ! ?

 

 

「もう終わってる。恐怖(フィアー)――」

 

『ヤメロォオオォォオオォオォオォォォオ!』

 

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『イギエェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』

 

『究極の一発ゥァ!!』

 

 

もはや文字に覆われたソレは、ゲムデウスとは思えない。

 

 

「切除完了」『完★全☆勝★利☆!!』

 

 

大爆発が起き、ゲムデウスは粉々に砕け散る。

え? 凄すぎない? 竜斗達は顔を見合わせて、目を丸くしていた。

一方で永夢の名を呼ぶ声。ライダー達は足早にエグゼイドに駆け寄っていく。先頭はポッピーだ、もはやダッシュと言うよりはスキップである。

 

 

「みんな! サンキ――」

 

「えむぅぅうううううう!」

 

「ごはっ!」

 

 

飛びつくポッピーに続いてレーザーやスナイプはエグゼイドの肩やわき腹を小突きはじめる。

 

 

「なにすんだよ!」

 

「テメー! コッチの台詞だ! ソレ持ってるならさっさと使えよ!!」

 

「そう――ッ! てか、え!? これ自分たち必要だったか!?」

 

「レーザーの言うとおりだ! ムテキで弱らせてから、レベルワンでよかっただろうが、使い方へたくそか! 俺が使う! ガシャットよこせ!!」

 

「もー! やめてよ大我! 永夢に酷い事しないで!!」

 

「待て待て待て! 違う違う違う!」

 

 

ゴタゴタ言い合うライダー達を落ち着かせるさせるエグゼイド。

変身を解除すると、ハイパームテキをグッと握り締める。

 

 

「使えなかったんですよ。今までは」

 

「は? でもさっき――」

 

「そうです。使えるようになりました」

 

 

永夢はポッピーに微笑みかける。

それに気づいたのか、ポッピーもにっこりと笑ってピースサイン。

意味が分からない他のドクター達は首を傾げるだけだが、そこで気づく。竜斗達は助けることができた。ならばもうこんな所には用はない。

 

 

「お!?」

 

 

そこで気づく。スナイプとブレイブの体が透けてきた。ジャミングも入る。

どうやら時間が来たようだ。二人は変身を解除し、肩を降ろす。

 

 

「……後は頼んだぞ、永夢」

 

「しくじんなよ。エグゼイド」

 

 

データの残骸となり、消え去る二人。ちなみにリボルギャリー内で笑っていた男やマッドサイエンティストもココでロストする。

永夢達は頷くと、それぞれ子供達の手を取って走り出した。

 

 

「!」

 

 

ふと気づく。虹色の中に混じる確かな黒。

子供達な不安げな表情を見て永夢は確信した。

確かに恐怖と結びついた化け物は倒すことはできた。しかし恐怖とは感情の一つであり、無くすことのできないものでもある。

生きたい。割りきりたいとは思っていても、無意識に黒い感情が湧き上がっているのだろう。

 

 

「行こう、竜斗くん」

 

「う、うん!」

 

 

それでもこの小さな手が、しっかりと永夢の手を握っている事は大切にしなければならない。

永夢は竜斗をおぶさり、ポッピーはミライの手を引き、貴利矢は加古を横抱きにして走り出す。

だがココで一つ問題が。

 

 

「つっても、出口どこだよ!」

 

「う、うん! 本当に!」

 

 

辺り一面虹色の空間。

走れども走れども同じ様な場所で一向に終わりが見えない。

一方でどんどん虹はその輝きを失い、淀んだ黒に染まっていく。

 

 

「どうする永夢」

 

「……大丈夫」

 

 

オペも、医療も一人じゃない。

チーム医療だ。それはもちろん、ライダーも同じである。

同じ志を持った者達が、同じ目的で集まり、力を合わせる。それがライダーの――、いや人間だろう。

 

 

「グッ! ガ――ッ!」

 

 

外。

エピローグのバックルから火花が散ったのは、ゲムデウスが爆死したときだった。

それは時間にしてはあまりにも短く。しかしライダー達にとってはあまりにも大きな時間だった。

膝をつくエピローグ、その時、ディケイドが複眼を光らせる。

一瞬だった。ライダーシャッフルが全て解除され、それぞれはそれぞれの姿に戻る。

 

 

「おお! やっぱコイツが一番だな! しっくりきやがるぜ!!」

 

 

肩を回し、嬉しそうに回る電王。

同意である。ホッとしたように仮面の感触を確かめるライダー達の中、巨大なタカが風を切裂いた。

 

 

「響鬼ッ!」

 

『はいよ!』

 

 

ファイナルフォームライド、ヒビキアカネタカ。

巨大なディスクアニマルとなった響鬼は、その翼でエピローグを打つ。

衝撃で仰向けに倒れるエピローグ。一方で上空へ昇ったヒビキアカネタカは二段階変身、巨大な太鼓、ヒビキオンゲキコとなり、落下。

 

 

「グッ!」

 

 

エピローグに直撃すると、その動きを拘束させる。

 

 

「ゥオオオオオオオオオオオオオオオ!!」『ファイナルアタックライド』『ヒヒヒヒビキ!』

 

 

ディケイドは両手に音撃棒を持ち、それを音撃鼓へ叩き込んだ。

我武者羅に、ひたむきに打ち付ける音撃棒。清めの音が鳴り響き、それが内部へ響いていく。

美しく澄んだ音は、虹色を覆う闇を払い、世界に光りを齎す。

 

 

「行こう」

 

 

永夢は、手を引いた。

ふと、竜斗の脳裏に――、いや世界に過去が映し出される。竜斗の記憶が流れ出ているのだろう。

 

 

『んー、そうかぁ。先生は別に良いと思うけどな』

 

 

それはヒビキと交わした会話だった。

 

 

『竜斗が恥ずかしいと思うなら、胸を張って隠しておけばいい』

『今はそれでいいんじゃないの? 竜斗がもっと大人になれば、いろいろ分かる事もあるけど、今は自分が納得できる道を選ぶが一番だな』

『はぁ、そういうものですか』

『んん。ただ、何かを好きになる事自体は恥ずかしい事じゃないからな』

『それに仮面ライダーが好きな大人はたくさんいるぞ。高いフィギュアとか、ベルトもあるらしいし』

『そ、そうですよね!』

『そうそう。あとはそうだな、誰かが好きな物を否定するのはよくない事だ』

『それは、仮面ライダーが教えてくれただろ?』

 

 

あとは、そう。

教えてもらった。仮面ライダーは子供が見るものだが、大人が作っている。

大人が本気で作っているものなのだ。

 

幻想の世界。なぜ、仮面ライダーが好きだったのか。竜斗はやっと理解した。

きっと、どこかで救いを求めていた。そして助けてほしいのは生きたいからに他ならない。

終わりを望むものは、どうしようもないからそうしているだけだ。救いがあれば、縋りたい。

もしかしたら、それは、どちらも同じ?

 

 

「ごめんなさい」

 

 

震える声で、そう言った。

 

 

「ありがとう」

 

「………」

 

 

気づけば、世界は水中と同じだった。

必死にもがき、竜斗は、ミライは、加古は、泣きそうな顔で足を動かす。バタバタともがき、音を放つ光へ手を伸ばす。

 

 

「ボクらが手を貸すのは、みんなが、いい子にしてたからだよ」

 

 

永夢は、そう言って笑った。

光が強くなっていく。目を細める竜斗。すると光から腕が伸びているのが見えた。

永夢たちは竜斗の背を押して光りに近づけ、竜斗たちは腕を伸ばし、光から伸びた手を掴んだ。

 

 

「取った!」

 

「よし! 引け!!」

 

 

引き上げられる感覚。

光に向かって体が進むとき、竜斗達はかつてない『安心感』を覚えた。

 

 

「!!」

 

 

世界が鮮明になる。

竜斗の右腕を掴んでいたのは龍騎、左腕を掴んでいたのはファムだった。

そして加古はキバとブレイドに抱えられ、ミライはゴーストが引き上げる。

同時に、変形を解除する響鬼。永夢達もエピローグのバックルから飛び出し、全ての準備は整った。

 

 

「決めろ!!」

 

 

ディケイドが強く叫ぶ。

その視線を受けて、ビルドはニヤリと笑う。

いいのか? いいんだな。この全ての美味しいところ。もらうぞ。

ビルドの脳内に素早く広がる数式。全ての方程式が次々に解かれ、答えが導き出される。

 

 

「お前の歴史を叩き込め! ビルド!!」

 

「ああ! 勝利の法則は――、決まった!」

 

 

複眼から伸びる触角をなぞり、手を開く。

エピローグが立ち上がろうとしている中、ビルドはレバーを掴んでひたすらに回す。

 

 

「人質はもういないぞ、ブックメイカー」

 

「……チッ、下らない!」

 

 

ディケイドの問いかけに鼻を鳴らす。

確かにもう竜斗達はバックルのなかにいない。

だがまだ全ての機能が消えたワケじゃない。竜斗たちはまだ眼だ。その事実が消えない限り、エピローグはエピローグであり続ける。つまり不死であると言う事。

それに確かにビルドの力は未知数だが、真っ向から弾けば何とかなる。

神経を集中させるエピローグ。さあ、何がくる? とは言えご丁寧な電子音のおかげで予測はできた。

そうだ、ムーンサルトだ。確実にムーンサルトが関係している動きに違いな――

 

 

「は?」

 

 

ボゴォン! と音を立ててビルドの姿が地中に消えた。

なんだ? そう思ったとき、謎の白い線がエピローグの『左右』に出現。

さらに同じくして地中から土の柱が伸び、そこにビルドが立っているのが見えた。

 

なんだ? なんだこれは。

混乱している間に、左右にある二本の線がそれぞれ一つに交わる。

その間にいたエピローグは当然挟まれるわけだが、そこで気づく。二本の線が体を縛り、動けない!

 

 

成分解放(レディーゴー)!』

 

「!!」

 

 

柱から飛び上がるビルド。エピローグは気づいてないが、白い線はビルドが出現させたエネルギーエフェクトだ。

真横からみると、『グラフ』になっている。ベジェ曲線のようなソレが示すのはビルドが通るべき軌道。

そして、滑走路。

 

 

『ボルテック・フィニーッシュ!』

 

 

グラフの上に蹴りの姿勢で乗るビルド。

すると移動を開始し、赤い中点Mを越えたところで脚にエネルギーが纏わりつく。

 

 

(ムーンサルトじゃ……、ないのかよ――ッ)

 

 

何気にグラフに飛び乗るときにはムーンサルトジャンプを使っていたが。

まあいい。すぐに両腕を広げてグラフを破壊するエピローグだが、もう遅かった。

既に中点を越えたビルドは一気に加速。その脚が、タンクの脚が、戦車の弾丸(キック)がエピローグに叩き込まれた。

 

 

「グアアアアアアアアアアア!!」

 

 

火花を噴出しながら後ろへ飛んで行くエピローグ。

すると光が迸り、空中でブックメイカーの姿が引きずり出された。

 

 

「なにッ!?」

 

「確かに――、アンタは不死身なんだろうな」

 

 

ビルドは既にその答えを導いていた。

ジョーカーを攻略する方法はブレイドかディケイドでなければ厳しいか? 或いはウィザードで太陽にでもぶち込むか?

まあいい。確かにいろいろ方法はあるかもしれない。だがもっと根本的な解決方法がある。

 

 

「お前が選んだのは、ソッチ側だろ」

 

「ッ! まさか――!」

 

 

ガシャンと、何かが落ちた。

下を見る。するとそこには火花を散らしてショートするハーメルンが見えた。

完全に破壊されており、ブックメイカーは言葉を失う。

 

 

「コイツが、怪人との違い」

 

 

ディケイドは、ディケイドライバーを強く掴んで揺らす。

ライダーには命が二つ。自分の命と、ライダーとしての命だ。

 

 

「コレが、"なりそこない"の証だろ」

 

「グッッ!!」

 

 

確かに、不死は厄介だとも。だがそれは結局、外付けの力に他ならない。

ライダーを選んだ以上、ベルトが破壊されればその力は失われる。それがルールだ。

 

 

「俺達の勝ちだ」

 

「―――」

 

 

一瞬でカブトがブックメイカーの背後に現れる。

首元に放たれた手刀により、ブックメイカーはビタリと止まり、そのまま崩れ落ちた。

 

 

「早く戻って来い!!」

 

 

ディケイドの叫びを、カブトは背中で受けていた。

 

 

「チッ、まあいい! とりあえず……、終わってくれたか」

 

「………」

 

 

タケルは天を仰ぐ、真っ青な空が見えた。

 

 

「おなか、へったな」

 

「じゃあ何か食べましょうか」

 

 

変身を解除した翔一がニッコリと笑った。

するとゴゴゴゴゴと地鳴り、荒野の地面を切裂いて『レストラン・アギト』が姿を見せる。

口をあんぐりと開けて固まっているほかのライダー達を見ながら、士は呆れた様に肩を竦めた。

 

 

「どんな力だよ」

 

 

 

 

 

 

 

「オォー」

 

 

丸いテーブルに全てのライダーが並んでいる。

歓声の正体は翔一が用意したカレーだ。特に野菜には自身があるらしい。

付け合せには天道が用意したサバミソが並んでいる。

 

 

「どんな組み合わせだよ」

 

「食ってみろ、俺の研究成果だ」

 

 

さらにテーブルの中央にはグツグツと煮える湯豆腐が用意されていた。

それを鬼気迫る表情で見つめる巧。おそらく彼が豆腐に触れることはないだろう。

 

 

「あれ? やだなぁ乾さん。好き嫌いはいけませんよ。それともアレですか、お豆腐掴めないんですか? いたんですよ俺の知りあいにも不器用な人が」

 

「ナチュラルに煽るな」

 

「上等だ。やってやるよ」『5』『5』「やめろ!」

 

「全く、食事くらい静かにとれないのか」「ブレイドのアホ」「おい誰だ今の、戦うか?」「なかよくしろよ平成一期」「まあまあいいじゃない。みんな元気があってさ」「お、良い事いうじゃねぇかジジイ」「モモタロス、清めの音撃食らっとくか?」「なかよくしろよ平成一期!」「そうだよみんな、俺達は同じライダーじゃないか。こんな事で言い争うなんてよくないって。特に俺はほら、そういう世界だったからさ」「真司さん、チャック開いてますよ」「ブホッ!!」「ギャハハ! だっさ! 良いこと言おうとしてコレかよ!」「う、うるさいな美穂!」「お、この魚中々ウメーじゃねぇか」「本当だ。さばと味噌がベストマッチしてる。おかわりもらうな」「おいざけんな! 俺の魚取るなよ!」「うるせぇ! 俺はまだビルドドライバーのレバー壊した事許してねぇからな!」「フッ、なかなか活きのいい後輩が出てきたじゃねぇか。だがライダーってのはな、常にクールでなきゃしまらねぇ。そう、俺のようなハードボイ」「翔太郎、チャック開いてるよ」「―――」「永夢あーん」「は、はずかしいよポッピー」「あーん!」「あ、あーん」「……ゲンタロー! あーん!」「おう! あーん!」「真司!」「どうした美穂!」「死ね」「なんでだよ!!」「おいこの鯖熱くねぇか?」「常温ですよ」「デザートにヘルヘイムの実でも食うか?」「やめろ」「ねえ弦太朗」「お、どうしたリュウタロス」「なんでウンコ頭に乗せてるの?」「リュウタロス!!」「ハハハハ! いいじゃねぇか良太郎先輩。これはリーゼントって言ってな――」「そういえばオーズ、コヨミを助けてくれたらしいな。サンキュー」「いやいや。そういえば晴人くんは魔法使いなんだよね! なにか魔法使えるの?」「ああ、見てろ! ほれ!」「わぁ! ムキムキになったぁ!」「なんでそれ選んだんですか?」「五代さん、1945番目の技ってなんですか?」「パンツをお尻に食い込ませるヤツ」「封印しろ」「モッチーハリハリ、らっきょ取ってくれ」「誰だよ」「あ! 私ポッピーピポパポです! よろしくね!」「ボッビービボバボさん、そっちの小瓶の中って福神漬けですか?」「惜しいよ! ポッピーピポパポ」『ポリピーマムマム?』「ううん、なんで間違えたのかな? ベルトさん」「ポルビーポンポン、水そっちにあるだろ?」「ポッピーピポパポだよ」「シャリバンギャバン、永夢とは――」「ねえ永夢、この人たちわざと? わざとだよね!?」「ねえ五代さん、この親指立てるのってなに?」「ああ、これね。サムズアップって言って! 古代ローマで満足できる、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草なんだって!」

 

もう誰が喋っているのかすら分からない。

ふと、士がテーブルを見回す。カウンターで並んで座っている竜斗たちもきっと同じことを思っただろう。

 

 

「変なのばっかりだな」

 

 

その言葉にムッとするもの、笑うもの、同意するもの。様々だった。

 

 

「俺は――、リ・イマジネーションと出会ってきた」

 

 

小野寺ユウスケをはじめとした彼らは、確かに仮面ライダーだった。

姿は――、借り物と思われてしまうかもしれないが、皆それぞれに信念があり、大切なものを守るために戦った。

それは紛れもなく、クウガであり、アギトであり――、つまり間違いなく仮面ライダーだった。

 

今にして思う。

彼らは彼らであり、同時に、諦めなかった象徴でもある。

それを聞くと、皆真面目な表情で沈黙した。だがそこで扉が開く音、現れたのはジョウジだ。どうやら『解析』が終わったらしい。

 

 

「フィリップ。検索を頼む」

 

「……キーワードは?」

 

「ブックメイカー。あとは――」

 

 

次々とキーワードを述べていくジョウジ。最後は――

 

 

「再構成、そして仮面ライダー」

 

 

フィリップもまた理解したいのか、目を見開く。

その事実、額に汗が浮かび、思わずニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「そういう事か」

 

「どういう事だよ」

 

 

士の問いかけには答えず、フィリップはタケルを見る。

 

 

「ゴースト。先程の戦闘でキミにおかしな点があった。あの時、キミはどういう状態だったのかな?」

 

「!」

 

 

目を逸らし、沈黙するタケル。

いいや、分かっている。あれは間違いなく、タケルの特殊能力が発動したのだ。

タケルは誰かに触れると、その人の過去を知ることができる。おおまかだが、タケルはそこで見てしまったのだ。あまりも、大きな――

そこで、ブックメイカーが目を覚ました。

 

 

「お前達――ッ!」

 

 

椅子を並べた簡易的なベッドで眠っていたブックメイカーは、跳ね起きると一気に後ろへ下がる。

一方、タケルの目の色が変わった。イブが憑依しているようだ。あくまでも実力行使ではなく、話しあいで物事を解決しようとしているらしい。

 

 

「ブックメイカー、本条栞さん」

 

「……なんだ」

 

「私はあなたの事を知りません。あなたは、突然でしたから」

 

 

ある日、いきなり観測者として覚醒し、そして間もなくこんな事件を起こしてしまった。

イブはどうしてもその点が気になっているらしい。何かとても大きな違和感を感じると。

 

 

「あなたはなぜ、このような事を?」

 

「………」

 

「観測者に理由無き暴走などありえません。あなたは全てを捨ててまで、何を見ようとしたのですか?」

 

「………」

 

 

教える必要はない。

ブックメイカーは無表情の仮面の下に激しい憎悪を爆発させていた。

一つが失敗すれば、次の手を用意するだけだ。そうだ、なにせ相手は仮面ライダー。エピローグが破壊されることも想定内である。

次の手こそが最終手段、なるべくならば使いたくはなかったが――

 

 

「!?」

 

 

そこで気づく。

待て、おかしい。ブックメイカーはそこしれぬ不安を抱いた。

なぜならば『エピローグ』が失敗すればすぐにでも次の手に出るように手は打っておいた。なのになぜ、気絶して起きるまでの時間が経っている?

 

 

「私達の力を使い、竜斗さん達の『眼』を解除しました。もうあなたに世界を乱すことはできませんよ」

 

「……ッ」

 

「分かっていますね。竜斗さん達はもはや眼であることを欠片も望んでいない。だからこそ私たちも解除ができた!」

 

 

だろうて。そうだろうな。それくらいは分かる。

だからもっと早く『次』がある筈だった。にも関わらず、これが、今。

 

 

(アマダム、オラクル――ッ! まさか!!)

 

 

その時、イブは目を開き、思わず後ずさる。

 

 

「え?」

 

 

咳き込むのは、ブックメイカー。

するとその口から、大量の血が溢れた。

ライダー達は一勢に立ち上がり、構える。一瞬だった。ましてや気配もなかった。

だがブックメイカーの腹部を突き破る『蛇』は、確かに存在している。

 

 

「なにが――」

 

 

レストランアギトが消え去った。

再びライダー達はは荒野の上に立つ。一方で崩れ落ちるブックメイカー。

腹部には穴が開いており、今もなお口からは赤い血が流れ出ている。

 

 

「おお、偉大なるブックメイカーよ。私は真に残念だ」

 

 

視線が集中する。

そいつは、いきなり姿を見せた。

赤いマントを広げるのは――、"ショッカー首領"!

 

 

「キミ達と我らの意思は同じであった。だが残念な事に、ただ一つ。たったの一つだけ意見が違えたのだ」

 

「お前……ェエ!!」

 

「それは、あまりにも大きな違いである、と、私は思っている」

 

 

蛇はショッカー首領のフードから伸び、そのままブックメイカーの腹部を貫いていた。

さらに見れば、蛇はブックメイカーから何かを抜き取ったようだ。そう、熱く、燃える、魂を。

蛇はそれを飲み込むと、首領のもとへ戻る。赤いフードにある目の奥には凄まじい闇と殺意が見て取れた。

 

 

「ブックメイカーよ。残念だが、我らは一つ、ウソをついていた」

 

「グッ! ゴホッ! ガハッ!」

 

「それは、我々はライダーを救済しようなどとは、欠片も思っていないと言う事だ」

 

 

だから今、裏切った!

ショッカーにとって、もうブックメイカーは不必要な存在である。

 

 

「ライダーはショッカーを裏切った。我々は裏切り者を許してはおかぬ! ましてや! ライダーにはショッカーの多くの計画が潰された。それを無かったことにし、あまつさえ救済などとは!!」

 

 

しわがれた声にはそれだけの時間を感じた。

ライダーが在れば在るほどに、ショッカーもまた存在を継続させていく。その中で何度多くの失敗があったことか。

 

 

「覚えておくが良いブックメイカーよ。我々ショッカーは悪魔の軍団。ライダーを生かして帰すワケがないのだ」

 

「バカな――ッ、意味のない……! 事だろうが!!」

 

「そうではない。キミのおかげで、多くの知識が手に入った。あまりにも大きな知識が」

 

 

ライダー以外にも様々な世界の技術が、存在がある。

それを束ね、頂点に立つ神なる世界がある。

それを理解すれば、あとは早い。

 

 

「最近の悪意は複雑で仕方ない。救済? 観測者? ォオン、ナンセンスではないか」

 

「ッ!?」

 

「我らショッカーの野望は、世界征服! それ以外にはないッッ!!」

 

 

ショッカーは悪意の概念にして、具現。

ありとあらゆる世界であろうとも、そこに悪意がある限り、ショッカーは不滅である。

思えば、グロングはなぜグロンギなのか。それは進化を齎した者がいるからだ。

アンノウンもまた同じ。テオスだけが神ではない。ミラーワールドを作った要因に絡まるものはなにか。

オルフェウスの愛する妻を噛んだのは、なんだったか。バトルファイトの裏にいるものはなんだ。魔化魍を作り出したのはなにか。

ワームもおなじく、イマジンも等しく、ファンガイアにしても同じだ。

もっと言えば、メモリやメダルを生み出す技術を流出させたのは何か?

 

 

「全ては、我ら、ショッカーの力!」

 

 

フードが弾け飛び、ショッカー首領の素顔が晒される。

赤いヒビ割れが目立つ白い頭部には、髪も耳も鼻も存在はしていない。あるのはただ大きな『目』、さらにマントの中からは大量の蛇が這い上がり、頭部を覆っていく。

無数に絡み合った蛇に覆われた頭部から見える禍々しい目。これがショッカー首領の姿である。

 

同じくして黒い煙が世界を覆う。

一瞬だった。煙が晴れると、視界を埋め尽くすほどのショッカー怪人達が姿を見せる。

同固体も複数存在しており、何度も倒した筈のトカゲロンやクモ女も大量に存在している。

その先頭には、オラクルとアマダムが立っていた。

 

 

「アマダムゥウウッ!!」

 

唇を血で汚しながらブックメイカーが叫んだ。

オラクルは初めからショッカー側だった。だがアマダムは違う。ブックメイカーが引き抜いたのだ。だからこそそれは間違いなく裏切り。

ブックメイカーの視線を受けて、アマダムはバツが悪そうに目を逸らす。

 

 

「……悪いなブックメイカー。どちらに味方をするのが賢いのかは明らかだった。私も消されたくはないのでな」

 

「カシコい判断ダ! ピヨヨヨ!!」

 

 

バカな事を。

ブックメイカーはそう言おうと思ったが、既に声が出ないほどに衰弱していた。

そして怪人の背後から、巨大なマシンが姿を見せる。一見すればそれは石像だ。

20メートルほどはあろうか? フードを被ったショッカー首領と、その両肩に足を乗せて翼を広げている大鷲がある。

 

 

「長々と戦ってくれたおかげで、ついに完成させることができた」

 

「クッ!」

 

 

一勢に変身するライダー。しかし首領に焦りはない。

右手をあげるとマシンが作動。大鷲の目が光ると、一瞬で全てのライダー達の変身が解除された。

 

 

「なにッ!?」

 

 

そして士達から光が伸び、大鷲へ吸収されていく。

 

 

「ライダーであると言うことは、クロスオブファイアを持つ者だということだ」

 

 

それを理解できたことがなによりの収穫だった。

だからこそ作ることができたのだ。この、『クロスオブファイア吸収マシーン』を。

 

 

「キミ達の炎を集め、所持数をゼロとする。分かりやすく言えば、キミ達はもうライダーには変身できない!」

 

「馬鹿が! 炎なら――ッ!」

 

 

湧き上がる。ご名答。

だが、それをタイムラグなしで吸収し続ける。

新たな炎が燃え上がれば、それを纏めて吸収していく。

 

 

「―――」

 

 

単純。あまりにも単純な方法だ。

しかしそれが何よりも士達を弱体化させる。どれだけ力を込めようとも、どれだけ探せどもベルトが無い。現れない。

さらに実質的にコアが消えたためか、ライダーではないハナや美空たちの姿が透けていき、次の瞬間には消え失せた。

言葉もなく消えた身近な人たち。良太郎や戦兎は呆然と固まっている。

 

 

「厄介なモンッ! 作りやがって――ッッ!!」

 

「ショッカーの技術力に不可能はない! ありとあらゆる悪意が技術を常に進化させていくのは、貴様らも理解してのことだろう」

 

 

ライダーでなくす。

この言葉、ブックメイカーと首領の中では大きく違っていたようだ。

救いの道に導こうとするブックメイカーと、破滅の道へ導こうとする首領では、攻撃性が違ってくる。

ライダー達を最も簡単に殺すのは、その力を奪うことだ。尤もショッカー首領とてまだその最終真理、結論には至っていない。

しかし今回、多くの戦いや事実を視て、確実にショッカーの完全勝利は可能だと考えている。

その上で立てたプラン。それを実行するため、今、姿を現したのだ――!

 

 

「消えよ。ブックメイカー!」

 

 

蛇の一体がエネルギー弾を発射する。

ここでライダー達の何人かはブックメイカーを助けようと走った。

だがそこへ別の蛇が炎を発射し、足止めを行う。そうしている間に、ブックメイカーへ光弾が直撃。

 

 

「グッ! ガアアアアアアアアアア!!」

 

 

爆発が起きる。

ブックメイカーの全身が粒子と変わり、破裂するように四散した。

死が、訪れる。そしてそれは何もブックメイカーだけではない。

全てのクロスオブファイアを奪われたライダー達は皆、それぞれ必死にこの状況を打破するべくプランを立てていく。

しかし何もなかった。なぜならばありとあらゆる方法はライダーがあっての事だからだ。今の自分達はただの人間。いや、火の粉くらいはあるのか。

 

 

「チッ」

 

 

ディエンドが――、いや違う。海東が舌打ちを放つ。

オーロラを出す力もなくなっている。来るんじゃなかった。

そう考えている一方で、他のライダー達はほんの僅かに残った炎を使って具現できる武器を具現していく。

 

 

「竜斗くん、ミライくん、加古くん。目を瞑るんだ」

 

 

タケルは三人の頭を撫で、微笑む。

震える竜斗達は分かっていた。今から起きるのは――

 

 

「イブとアダムがなんとかしてくれる。だから、せめて、キミ達は――」

 

 

あまりにも簡単な終わりだった。抗ってきたライダーたちは、ライダー達だからこそ。

タケルは立ち上がると、ガンガンセイバーを構えてショッカー首領に立ちはだかる。

 

 

「無駄なことだ」

 

「いやッ、違う。変身できるとかできないとか、そんなの関係ない!!」

 

 

ライダーじゃなくなったからといって、その心が変わるワケじゃない。

たとえ目の前に多くの怪人がいようが構わない。その後ろに守るべき人たちがいるのなら、戦う。戦い続ける。

 

 

「それが、おれ達の答えだ!!」

 

 

走り出すタケル。それに続き、他のライダー達も地面を蹴った。

そして竜斗たちの前に現れるアダムとイブ。それはタケルから分離したことを意味する。震える竜斗、その前に真司と美穂が駆け寄ってきた。

 

 

「ごめんッ、あんまり時間ないから」

 

「え?」

 

 

真司はしゃがみ込み、竜斗と視線を合わせる。

 

 

「もう、夢から覚める時間だ。竜斗」

 

「それは……」

 

「残念だけど、たぶん俺達は――」

 

 

首を振る真司。

こんな話をしにきたんじゃない。彼らは――、違うだろう。もうそろそろ仮面ライダーを押し付けるのは止めよう。

だから真司は龍騎としてではなく、城戸真司として学んだことを伝える。

 

 

「世界にはいろんな情報があって、いろんな意見があって、迷ったり、怖かったりするかもしれない。自分が信じてたものが、ある日、バラバラになって、心もバラバラになって、自分が誰か分からなくなるかもしれない。そういう人って自虐とか、過度な批判に走るけど、そんな事をしても、不安は消えない。永遠に見つかることのないエゴサーチを繰り返すなんて無茶だ」

 

 

真司もよく分かってる。

いろいろ迷走して、最後まで悩んでいた。それでも少しはマシになれたと思うのは、自分の中に答えがあったからだ。

 

 

「自分の信じるモノ。それを持って欲しい。竜斗」

 

「おとうさん――ッ」

 

「――じゃ、ないんだ。じゃないんだよ」

 

「……!!」

 

「それはもう夢なんだ。だから竜斗は――、いや本当の名前のキミは、自分になってくれ。本当のお母さんとお父さんに会いに行くんだ」

 

 

だがまあ、それでも美穂の最後の言葉は親として。

 

 

「竜斗、あなたは生きて。あとツバサをお願い」

 

 

美穂に背を押され、不安そうなツバサが竜斗に抱きとめられた。

 

 

「ツバサ……」

 

「おにいちゃん……」

 

 

偽物の兄妹だが、竜斗はぐっとツバサを引き寄せ、抱きしめる。

 

 

「ミライちゃんも、加古くんも、竜斗と仲良くしてくれてありがと」

 

 

何も答えない。答えられない。

一方で立ち上がった真司と美穂は拳を握り締め、走り出す。

声をあげようとする竜斗だが、イブが人さし指で唇を押さえる。シーっと言うジェスチャーは、沈黙の要求。

 

 

「目を閉じましょう。目を閉じれば、物語は見えませんわ」

 

 

沈黙とは即ち、存在の否定。

姿が見えぬ、台詞も見えぬ。これでは物語に存在しているのかは分からない。

分からないものは否定のしようがない。それは少々遠回りな救助方法。ライダー達はせめてもの抵抗に、竜斗たちだけは絶対に助けると誓った。

戦闘員や怪人の咆哮と、人間の咆哮が重なる。斬る音、斬られる音、竜斗達は言われた通り目を塞ぎ、絶対に何も喋らなかった。

だが皮肉も、首領の笑い声が脳に響き渡る。

 

 

「フハハハハ! アダム、イブ! お前達はその子供らにつくか」

 

「あなたは世界の秘密を知った。その上で、侵略をすると?」

 

「その通り。全ての世界は、我らショッカーのものだ」

 

「なんてことを――!」

 

「止めてみるか。観測者達よ」

 

「……いえ。抵抗は、この子達を守る事に使わせていただきましょう」

 

 

そもそも、アダムとイブに戦う力などない。

向かっていっても殺されるだけだ。もちろん二人は観測者、超人的な力を使うこともできるが、何度も言うように観測者は全てに勝ち、全てに負ける。

その勝負は『メタ』を含むため、終わりが来ない。どちらかが負けを『自分で認める』ことがない以上、永遠のいたちごっこが続く。

それにアダムとイブは、首領がブックメイカーから何かを抜き取ったのを見ていた。予想が正しければ、やはりココで戦うことは無意味だ。

 

ならばせめて竜斗達を守るように立ち回ったほうがいい。

竜斗達は『この物語』だけの存在だ。それを守るように、文字を紡ぎ続ければいい。

それくらいはしてあげられる。

 

 

「フフフフ、まあいい。そんなちっぽけな命など、我らにはどうでもいいことだ」

 

「っ?」

 

「アダムらよ。そなた達はまだ理解していないようだな。我々の目的を」

 

「どういう事だ?」

 

「そもそも。ブックメイカーはまだ一手、最後の手段を残していたのだよ」

 

 

ブックメイカーとしてはエピローグを使い、決着をつけるつもりだった。

しかし残念ながらその計画が失敗に終わった時、ブックメイカーは最後の手に出るつもりだった。それこそが竜斗達を使った『世界転移』だ。

竜斗達は眼であり、灯台でもある。その光を目指し、船を進める道しるべ。

 

 

「竜斗、ミライ、加古、その三人が果たしてどの世界から呼び出されたのか」

 

「まさか……」

 

「その通り。ブックメイカーは彼らを、神なる世界から連れてきたのだ!!」

 

 

ふと、気づく。

竜斗は思わず涙を流し、拳を振るわせた。いつの間にか聞こえるのは怪人達の声だけだった。

アダムとイブは見つける、地面に広がる大量の血を。

 

 

「丁度いい。今、全てのライダーが絶命した。最後の扉を開くのだ!!」

 

 

首領が目を、眼を光らせる。

すると竜斗たち三人から光が放たれ、空へ打ち上げられていく。

 

 

「これより我等は、神なる世界への到達を果たす」

 

「まさか!」

 

「その通り! 全ての世界を生み出す神なる世界を征服すれば! 我らショッカーは完全なる神へと昇華するだろう!!」

 

 

光が迸った。

荒野は消えさり、終焉の地は崩壊を迎える。

しかし問題はない。かつてのコロンブスのように、あまりにも大きな新天地がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――」

 

 

意識が鮮明になる。

ショッカー首領とクロスオブファイア吸収マシーン、そして無数の怪人軍団は空に立っていた。

下を見るとクラクションや人の話す声が聞こえてくる。ビルが並び、コンビニが見え、電車が走っている。

そして見えるではないか、アリのように蠢く人間たち。

 

 

「おお、ココが……!?」

 

 

話は聞いている。

神なる世界はショッカーの知っている日本とそう変わらないことを。しかし声を震わせ、叫ぶアマダム。

 

 

「ち、違う! ココは神なる世界などではない! ましてや――ッ、竜斗達を引き抜いた世界でもない!」

 

「なんだと……?」

 

「がッ、だがッ! 近い! 近いぞ!! この感覚は――ッ、ま、ま、間違いない! し、ししししし神なる世界の波動!!」

 

 

興奮したように拳を震わせているアマダム。どうやらウソではないようだ。

 

 

「フム。ブックメイカーめ、流石に保険はかけておいたか」

 

 

ブックメイカーも自分が裏切られる可能性は考慮していたようだ。

いや少し語弊がある。観測者は神ではない。ブックメイカーの最終手段は実に不完全だったのだ。

世界はそんなに甘くない。ブックメイカーとて、どれだけ調べても神なる世界へはたどり着けなかった。

だが代わりに、限りなく近いところの世界は見つけることができた。その中の一つが竜斗たちの世界であり、その中の一つが今ショッカー首領たちが赴いた世界である。

 

 

「竜斗たちに内包されている世界情報を元に転移を行った筈が、竜斗たちの世界でも無いというのは――?」

 

「世界転移の際にジャミングが入る。座標が特定できないんだ。おそらくは神なる世界の影響だろう」

 

「なるほど。流石は神の住む世界か。進入を防ぐ機能が働いていると」

 

「だが近いことにはかわりない」

 

「その通り!」

 

 

両手をゆっくりと広げ、赤いマントを広げるショッカー首領。

眼下には自分たちが支配者と勘違いしている愚かな生き物が蔓延っている。

これはチャンスだ。この世界に神なる世界に近いのであれば、世界形態もまた同じくしてだろう。ならば約70億の人間が――、怪人になる素質を持っている。

 

 

「今からこの世界を、ショッカーの基地とする。人間はなるべく殺すな。全てを改造人間にすれば、我らの戦力はさらに高まる」

 

 

大歓声、そして飛来。

今日、天気予報は外れる。悪魔の雨が、恐怖の雨が、地獄の雨が降り注ぎ、地上から悲鳴が聞こえるまではそう時間はかからなかった。

この世界は、ショッカーの偉大なる計画の礎となり、悪の拠点となるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

そして、それを見つめる者達が。

 

 

「大変だ……!」

 

 

どこぞのマンションの屋上。

給水タンクの陰に隠れ、竜斗、ミライ、加古、ツバサは降りそそぐショッカー怪人達をジッと見つめていた。

 

 

 

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