カメンライダー   作:ホシボシ

31 / 34
第28話 ABAYO(後編)

「………」

 

 

少年は先ほどからずっと同じ表情を浮かべていた。

ハナや美空が、助けられた人たちを励まし、避難誘導を行っている。

一方でメテオやレーザーは、迫る怪人をけん制している。

 

その中、十字架から助け出された少年はずっと真剣な顔で周りを見ていた。

吹き飛ぶ怪人、起こる爆発。脳裏には今までの人生がフラッシュバックしていく。

なに、おかしな事はない。たまたま容姿がそれなりに恵まれていたからスカウトを受けて、オーディションを受けて、主役に抜擢された。

一年ドライブやって、それをバネにほかのドラマにも――

そんな中で怪人に襲われた。ウソみたいな人生の中で、彼はその男に出会った。

 

 

『キミ、名前は?』

 

『え? あ……、す、進矛――、です』

 

『へえ、いい名前だ』

 

 

自分が演じた戦士が前に立っていた。

 

 

「あれが――……、仮面ライダー!」

 

 

つぶやいた先、戦士達はポーズを取る。

クロスオブファイアがかつて無いほどの炎を放っている。電子音が、それぞれの主人達の名を叫んだ。

 

 

『ウィッザード!』

 

「さあ、ショータイムだ」

 

『鎧武ッ!』

 

「ここからは俺達のステージだ!!」

 

『ドッラーイブ!』

 

「アマダム! ひとっ走り付き合えよ!!」

 

『ゴゥースト!』

 

「命、燃やすぜ!!」

 

『エグゼーッィド!』

 

「ノーコンテニューでクリアしてやるぜ!!」

 

 

平成ジェネレーションズ!

クロスオブファイアマスター・アマダムVSゴースト&エグゼイドwithレジェンドライダー。

 

Fight――!!

 

 

『ゲィム! スタァート!!』

 

 

走りだした五人の仮面ライダー。

肩を並べたのは一瞬。それぞれは個性を爆発させて加速していく。

アマダムが光弾を連射してしてきた。体を大きく反らしながらジャンプで回避するエグゼイド。浮遊で回避するゴースト。迫る弾丸を切裂いていく鎧武。

 

 

『コネクト・プリーズ』『スピ・スピ・SPEED!!』

 

 

一方でウィザードは魔法陣からマシンウィンガーを引っ張り出し、搭乗する。

そして高速移動を発動させるドライブ。襷掛けしていたタイヤが回転し、一気にトップスピードとなりアマダムへ向かっていく。

 

 

「フッ!」「ムゥン!」

 

 

振るわれたハンドル剣の刃が青い軌跡を残す。

だがアマダムは怯まなかった。しっかりとその目でドライブの動きを追っており、まずは払いを手で受け流すと、そのままバックステップ。次の返しを回避すると、そのまま後ろを振り向いた。

そこには回り込んでいたドライブが立っている。再びバックステップと上体反らしで剣を回避すると、体を思い切り捻って足を地面にこすり付けた。

 

それは足払い。

ドライブは上腕から地面に倒れ、さらに思い切り蹴り飛ばされて地面を転がる。

だがそこへ駆けつけるシフトカー。ドライブはそれをつかみ取ると、すぐに体を起こす。

 

 

「!」

 

 

しかし目の前にはアマダムが放っておいたエネルギーの斬撃が。

三日月状のエネルギーはドライブに直撃すると、その体を真っ二つに変えた。

 

 

「ッ! 泊さん!!」

 

 

上ずったゴーストの悲鳴が聞こえる。

他のライダーも一瞬ギョッとしたが、そこで気づく。ドライブはちゃんと斬撃を防御していたようだ。

 

 

『タイヤコウカーンッ! DIMENSION CAB!』

 

 

斬られたと思っていたドライブが地面に着地。

上半身だけのドライブはハンドル剣を持ってアマダムへ向かっていく。

ディメンションキャブ、タイヤをワープホールとして空間を跳躍できるものだ。

 

 

「アホが!」「ぐっ!」

 

 

とはいえ、地面を叩くアマダム。

清めの音撃が響き渡り、ドライブはダメージに動きを止めた。

 

 

「次はお前だ!」

 

「やってみろ! アマダム!」

 

 

振り返るとそこにはエンジン音。にらみ合うウィザードとアマダム。

前者はその雰囲気に怯まず、思い切りアクセルグリップを捻った。加速していくバイク。アマダムもまた不動である。

 

 

「!」

 

 

ウィザードはさらに加速。

だからこそマシンウィンがーの車体先頭がアマダムに直撃した。

尤も、直撃と言うよりは受け止められたと言う方が正しい。しかしバイクのシート上にウィザードはいない。

既に飛び上がっており、アマダムの頭上を回転しながら背後に回る。その脚には赤く燃える炎が宿っており、体を捻った際の回し蹴りがアマダムの肩を打つ。

それだけではなく、手にはウィザーソードガンが。回転の際にそれも振るっており、刃がアマダムの背を切る。

 

 

「チッ!」

 

 

未だにバイクは加速を続けており、手で押さえつけていなければならない。

故にアマダムは上半身だけ捻り、後ろを確認する。着地と同時にウィザードは地面を蹴ってアマダムへ距離を詰めている。

忌々しいと伸ばした腕。しかしウィザードは器用に体を回転させながら軽く跳ね上がる。

蹴り上げがアマダムの腕を弾き、がら空きになった胴体へ渾身の突きが――

 

 

「!?」

 

「アホが!!」

 

 

アマダムの体が消えた。

瞬間移動だ。ウィザードの背後に現れ、裏拳で弾き飛ばす。

 

 

「グッ!」

 

 

倒れたウィザードは、剣を地面につき立てて立ち上がった。

さらにホルダーから指輪を外すとハンドオーサーを操作して、手形にかざす。

 

 

『バインド・プリーズ』

 

 

アマダムの周りに魔法陣が出現、そこから魔法の鎖が伸びてアマダムの四肢に絡みついた。

 

 

「ムッ!」

 

 

鎖を引きちぎろうと力を込めるアマダムだが、そこで銃声と衝撃。

ウィザードの後方から浮遊してきたゴーストが現れ、ガンガンセイバーの弾丸でアマダムを射撃していく。

そうしていると駆けつけるエグゼイドと鎧武。ガシャコンブレイカーと、大橙丸がアマダムへ入る。

とはいえ、抵抗感こそ感じたが手ごたえはない。それもその筈、アマダムは液状化を使用し攻撃と拘束を無効化した。

 

 

『ウォーター!』『リキッド!』『プリーズ』

 

 

すぐに自らも液状化を発動するウィザード。

さらにエグゼイドもレンガブロックを破壊し、液状化のエナジーアイテムを獲得する。

淀んだ銀の液体と、輝く青とピンクの液体が混じりあい、交差を続ける。

 

 

「無駄だァ!」

 

「ぐあああ!」「チィイ!」

 

 

とはいえ、結果はアマダムの勝利。

実体化したエグゼイドとウィザードは地面に叩きつけられ、転がっていく。

しかし時間は稼げた。ベートーベン魂に変身したゴーストと、タイプテクニックに変身したドライブが複眼を光らせる。

 

 

『ダイカイガン!』『ベートーベン! オメガドライブ!』

 

『タイヤコウカーンッ! ROAD! WINTER!』

 

 

運命の音色が、音の衝撃波となり液体になったアマダムを激しく揺らす。

飛まつが飛び散った。同時に聞こえる苦痛の声。どうやら物理的な攻撃は防げても、波動系統には弱いらしい。

なんとかして散らばった液体が集まっていくが、そこへドライブが発生させた冷気が直撃する。

 

 

「ムゥウ!」

 

 

実体化し、霜掛かったアマダムは地面に倒れる。

立ち上がり、確認、液状化ができない。どうやら凍結効果が作用しているらしい。

そこでハイパームテキのガシャットを取り出すエグゼイド。

しかしアマダムが手をかざすと、ガシャットの周りに鎖が巻きつき、スイッチがまったく押せなくなる。

 

 

「あ、あれッ!?」

 

「ハッ! お前たちは所詮、後付の力で強くなっているだけだ」

 

 

バインドによるアイテム遮断。

他のライダーはエグゼイドの力が封じられたのを見て強化アイテムを取り出すことを止める。

確かに、アマダムの言うことは一理ある。だが"それ"を掴み取った意思は、ひとつもウソのない信念だ。

 

 

「ハァアアアアアアアアア!!」

 

 

それを証明するようにアマダムへ駆け寄っていく鎧武。

 

 

「ッシャア! ォウラァア!!」

 

 

無双セイバーを振り下ろし、それを腕で受け止められれば、次は大橙丸を横にふるってアマダムの胴体を切り裂く。

アマダムが僅かに怯んだ隙にレバーを引き、リロードを開始、そのまま銃口を向けて光弾を連射。

さらにこの間にも鎧武は動いていた。銃弾を発射しながら前進し、アマダムを切り抜いていく。

 

 

「ナメるなよォッ!」

 

 

だが直撃を許したのはそこまでだった。

次の大橙丸はアマダムが出現させた闇の剣で受け止められる。鎧武同じく二刀流となったアマダム、さらにここでクロックアップが発動。

気づけば鎧武の右手から、左手から剣が弾かれる。

 

 

「見くびるな! 前回は私に大いな油断があったからに他ならない!」

 

「ぐっ!」

 

 

鎧武の胴にアマダムの足裏が直撃する。

怯み――、しかし鎧武は踏みとどまって拳を構える。剣がなくともコイツがあればせめて少しはダメージをと。

 

 

「ましてや時間がある! 事実がある! もはや今ッ、我が体内にあるクロスオブファイアは更なる進化を遂げている!!」

 

 

新しい炎が生まれれば、それがアマダムの力になる。

もはや今、それはビルドの炎さえ。

 

 

「今の鎧武やウィザードなど、私の敵ではない!!」

 

 

アマダムは足裏をもう一度鎧武の胴体に押し当てる。

ウサギの跳躍力で蹴る。威力はタンク。そしておまけのスタンパー。

鎧武の胴体に浮かんだ魔法陣が爆発し、悲鳴が聞こえた。

まだ終わらない、走るアマダム。先ほどのお礼だ。剣を振り上げ、そして鎧武へ向けて振り下ろす。

 

 

「ウゥ゛ッ!」

 

 

硬い感触。

アマダムの刃が捉えたのは鎧武の身ではなく、鎧武の『実』。

とっさに伸ばしたロックシードで刃を受け止めていたのだ。クロスオブファイアにより、その強度は上がり、盾の代わりを立派に果たす。

 

 

『パイン!』

 

 

開錠の音と、電子音。

だがそれがどうした? 仮にそれを使うとしてもいちいちベルトにセットしなければならないだろう。

そんな隙は与えない、アマダムはもう一度剣を振り上げ――。そして、真横に吹っ飛んだ。

 

 

『I got you!!』『ゲ・キ・ト・ツ! ロボッツ!!』

 

 

豪腕がアマダムを押し出し、その隙に鎧武はベルトへロックシードを装填する。

すると空にクラックが開き、巨大なパイナップルが姿を見せる。

鼻を鳴らすアマダム。体を押していたロケットパンチを掴み取ると、それを鎧武に向かって投げつける。

 

 

「ハァアア!」

 

 

しかし跳んだウィザード。

体を回転させつつ上昇。蹴りで捉えたのは空に浮かぶパイン。

装甲の固まりは一度地面を跳ね、そのままロケットパンチに打ちあたり、相殺される。

ロケットパンチはそのままエグゼイドの腕に戻り、バウンドしたパインは鎧武の頭にスッポリと。

続けてカッティングブレートを倒すと、ギシン! と音がしてフルーツが両断された。

 

 

『ソイヤ!』『パインアームズ! 粉砕・デストロイ!』

 

 

果汁状のエネルギーが飛び散り、すぐに鎧武はパインアイアンを伸ばした。

狙うのはアマダムではなく、地面に突き刺さったハンドル剣。鎧武はそれを引き抜き、戻し、手におさめる。

さらにもう一度。次はウィザードが地面に刺していたウィザーソードガンへ。

 

 

「ォオオオオオオ!」

 

 

パインアイアンは投げ捨てる。

左にウィザーソードガン。右にハンドル剣。鎧武は歪な二刀流でアマダムへ向かう。

一方で闇の剣に両手にし、走るアマダム。刃がぶつかり合い、斬撃が乱れ飛ぶ。

アマダムは笑う。確かに鎧武はずっと剣を扱ってきた。

だがアマダムの中にはずっと剣を扱っていた鎧武の炎も。他の怪人の炎も持ち合わせている。

ましてや、殺意のレベルが違う。

 

 

「ゴミが!!」「グォ!!」

 

 

アマダムは鎧武のわき腹を蹴り、大きく怯ませる。

さらに回し蹴り、鎧武の手からウィザーソードガンが弾かれた。

ここで目を光らせるアマダム。手に持った闇の剣にエネルギーを宿し、鎧武の首元を狙う。

だがそこで広がる魔法陣。鎧武の首と、闇の剣の間に広がったそこからはウィザードの腕が伸びる。

 

 

「ウゴッツ!」

 

 

ウィザードは弾かれたウィザーソードガンを拾い上げ、コネクトを発動。

鎧武の前に魔法陣を生み出し、そこへ持った剣を突き入れる。

そうやって魔法陣から伸びた剣が、闇の剣を弾く。さらにそこでドライブがドア銃による射撃を開始、アマダムの肩や脚から火花を散らす。

 

 

「がアアアアア! 鬱陶しいわ!!」

 

 

アマダムはメタル化し、銃弾は無視。体から火花を散らしながらもかまわず鎧武を目指す。

だが鎧武の体が浮いた。纏わりつくのはオレンジの光、ゴーストだ。光の粒子となって鎧武をつかんで飛行する。

 

 

「ウオオオオオオオ!」

 

 

鎧武は急降下しつつアマダムを切りつけようと。

だがアマダムは闇の剣を消失させると手を前にかざす。

すると鎧武の両手にあった剣が消えたではないか。スチールベントだ、アマダムはハンドル剣で迫る鎧武を切り裂さいた。

 

 

「ムッ!」

 

 

だがそれを受け止める鎧武。

ゴーストが渡したガンガンセイバーを持ち、さらに分離させることで二刀流に変わる。

 

 

「ゼゥラ!!」

 

 

右手に持っていた剣がアマダムに届いた。

アマダムは舌打ち交じりに後ろへ下がる。

 

 

「目障りな連中だ」

 

「!」

 

 

世界が紫色の光に包まれた。

感覚が、変化する。鈍い。なによりも遅い。

脳は正常に働いているようだが、体がまったく言う事を聞かない。

 

 

「重加速か!!」

 

 

唯一、正常に動けるドライブが叫ぶ。

人差し指を立てて笑うアマダム。そのとおり、時間の概念を変える力でウィザードたちはまともに動くことができない。

 

 

「さあどうする? 足手まといのクズ共を守りながら戦うか? それともお前だけで私に勝てるとでも!?」

 

「――ッ」

 

 

そのとき、トライドロンのクラクションが聞こえた。

 

 

「あ?」

 

 

周りを見るアマダム。

すると、無数のドライブがそこに見えた。

 

 

『ドライブアームズ! ひとっ走り! いざッ、トゥギャザー!』

 

『カイガン! ドォライブ! ケイカン! セイギカン! タイヤコウカン!?』

 

『アイム ア レジェンドッライダー!』

 

「なんッ! だとぉお!?」

 

 

相変わらずノロノロしているウィザードを尻目に、鎧武、ゴースト――

 

 

「おいちょっと待て! なんだ!? なんかめっちゃ冗談みたいな奴いるぞ!」

 

 

三頭身のドライブ、これはエグゼイドだ。

三人のライダーはみな、ドライブの力を持っている。それを使い重加速に対抗できうる形態となったのだ。

並ぶ、歪なドライブ。

 

 

「アマダム! 俺達の魂は繋がってる!!」『ドォッ! ラーッイブ! ターッイプ! HIGH SPEED!』

 

 

銀色に染まるドライブ。

腰を落とし、仮面の裏でニヤリと笑う。

 

 

「さあ、Shall We DRIVE?」

 

 

同時に走り出すドライブたち。

みなそれぞれハンドル剣を手にしており、アマダムへ切りかかっていく。

 

 

「くそ!」

 

 

アマダムは予想外の展開に怯み、動きが鈍る。

と言うよりドスドス走ってくるゆるキャラみたいなドライブが気になって仕方ない。

しかしこのゆるキャラ思い切り殴りかかってくる。何とかその拳を交わすと、エグゼイドはレバーを引いて装甲を吹き飛ばした。

 

 

『トライトライトライ! トライドロンで爆走!』

 

<ひとっ走り付き合えよ!

 

『フルスロットルドラァアアアアアアアアアイブ!!』

 

「グッ!」

 

 

銀色のドライブが前に来る。そして同時に必殺技。

 

 

「ウッ!」

 

 

赤い竜巻にでも巻き込まれたのかと思う。

アマダムの周りを駆け回る合計4台のトライドロン。

もはやアマダムに逃げ場はない。一方でそこへ飛び込んでいく四人のドライブ。

 

 

「ォオオオオオオオオオオオオ!」

 

「グッ! グォオオォオオォ!!」

 

 

跳ね回るドライブたち。

スピードロップの乱舞が繰り広げられ、蹴りの嵐がアマダムへ襲い掛かる。

 

 

(すげー)

 

 

なんて事を、トロトロしたウィザードが思っている中、アマダムが地面を転がっていく。

 

 

「あ、戻った」

 

 

急に戻るものだから思わずウィザードはよろけてしまう。

どうやらアマダムにダメージが入ったことで発動していた重加速が解除されたのだろう。

一方で基本フォームに戻るライダーたち。その中でエグゼイドがガシャットを構えた。

 

 

「魂の共鳴だ! オレ達の炎を合わせようぜ!!」『ドラゴナイトハンターッ! ゼーット!』

 

 

広がるタイトル画面と、そこから姿を見せるドラゴン。

同じくしてそれを見ていたポッピーが声を張り上げた。

 

 

「ポッピー歌います! B.A.T.T.L.E G.A.M.E!!」

 

 

音楽が世界を包む。

活性化するクロスオブファイア、燃え上がる炎が未知の力を覚醒させていく。

するとどうだ、出現したドラゴンが分離、体のパーツは装甲となってそれぞれのライダーに装備されていく。

 

 

『ファング!』『ブレード!』『クロー!』『ガン!』

 

『ド! ド! ドラゴナナナナーイトゥッ!』

 

『ドラッ!』『ドラッ!!』『ドラゴナイトハンタァアアアアア!』

 

『ウィザァード!』

『ガイムゥー!』

『ドルァアイブ!』

『ゴーッスト!』

 

 

装甲が装着完了。

どうやらクロスオブファイアは電子音すらも追加してくれるらしい。

ウィザードの頭部を覆う竜の顎。

鎧武の腕に装備される青い長剣。

ドライブの四肢に装備される竜の爪。

ゴーストに装備されるレールガン。エグゼイドの力がほかのライダーに付与された。

 

 

「グッ!」

 

 

魂の炎と炎が混ざり合う。

未知の脅威に思わず足を止めるアマダム。さらにエグゼイドは別のガシャットを取り出し、起動させつつベルトへ。

 

 

【ガシャット】

 

【ガッチャーン……!】【レベル・アーップ】

 

【天地創造の力ァ】『ゲットメイク!』【未来のゲーマーァ!】

 

【マイティクゥリエイタァア! ブイッ! アーッル! ェエエエエエエエエエエエックス!!】

 

「さあ! 超協力プレーでクリアしてやるぜ!!」

 

「チィイイッ!!」

 

 

マジックハンドを伸ばすアマダムだが、それは鎧武に切り払われる。

ならばと前方に魔法陣。そこから姿を見せたのは、ミラーモンスター・マグナギガ。

アマダムが背中に手を押し付けると、装甲が展開。そこから無数のミサイルやレーザーが発射される。

エンドオブワールドだ。それらは迫るライダーたちへ着弾。大爆発を起こすが――

 

 

『スペシャル・ラッシュ!』

『フレッシュオレンジアームズ!』

『ターッイプ! WILD!』

『カイガン! ビリーザキッド!』

 

 

ライダーたちの前にはエグゼイドが作った虹色の壁があった。

それが爆炎を防ぐ盾となったのだろう。

壁を吹き飛ばし走るライダーたち。形態を変え、アマダムに近づいていく。

 

 

「クソ!」

 

 

あまりいい流れではないか。

アマダムは前を向いたまま、足を動かし、後退していく。

だがそこで激しい抵抗感。確認してみれば、エグゼイドがガシャットを動かし描いた軌跡が『現実』へ具現している。

それはまるでプロレスのロープ。いや、ゴムか。

後ろへ下がったことで力が加わり、そしてアマダムが力を抜いた瞬間、勢いで前に発射される。

パチンコだ。アマダムは逆に前に出てしまい、ライダーたちに近づいてしまう。

 

 

「オオオオオオ!!」

 

 

バットクロックを連射しながら距離をつめたゴースト。

爪を突き出し、アマダムへ直撃させるとレールガンを発射する。

悲鳴をあげて吹き飛ぶアマダム。だが『それ』が消滅したと同時にゴーストは背後にいたアマダムに蹴り飛ばされる。

どうやら吹き飛んだアマダムは分身だったようだ。しかしすぐにほかのライダーたちがサポートに入る。

エグゼイドはクリエイターの力でクッションを具現。転がるゴーストを柔らかなソレで受け止め、さらにアマダムの四肢に『錘』を描くことで動きを封じていく。

 

 

「だあァ! 重い! なんだこれは!!」

 

 

そこへ駆けつける鎧武。

剣を振るうと大量の果汁が飛び散っていく。これはもちろん本物ではなく、そう見えるエネルギー弾。

つまり剣を振るうとショットガンが発射されるようなものだ。アマダムは錘をつけてなお軽快な動きで剣を回避していくが、果汁だけはよけきれず全身から火花を上げていく。

 

 

「めんどくせぇえ!」

 

 

だったらとアマダムは眼球を動かす。

使う力はまさに今エグゼイドが変身しているクリエイターゲーマーの力。

アマダムの視線の動きに合わせて巨大なミサイルが描かれていき、完成と同時に発射された。

 

 

「まかせろ!」

 

 

空中を飛行するウィザード。

頭部の竜と、胸部の竜が同時に咆哮をあげ、火炎を発射。

ひとつに交じり合った炎はミサイルに直撃し、爆発。さらに爆風と爆炎は竜が吸い込み、辺りの被害を抑える。

 

 

「グウゥウ!」

 

 

唸るアマダム。

とにかく向こうの手数が多い。ゴーストが放つ銃弾もそうだし、エグゼイドが次々に放ってくるミサイルも面倒だ。そして張り付いてくるウィザードと鎧武。

その一方で後ろに下がっている男がいた。ドライブだ。

ここは一発すごいのをお見舞いしてやろう。トライドロンに乗り込み、突進をしかけてそこからの追撃を。

 

 

「あでッ! くぉ、あら!?」

 

 

装甲とか武器が邪魔で――ッ、なかなか、入れな――!

 

 

「………」

 

 

乗ってから気づいた。

運転できねぇ……。

 

 

『大丈夫だ進ノ介。私に考えがある』

 

 

そもそもトライドロンは自動で運転できる。

ベルトさんに促されて外に出るドライブ。

するとトライドロンが変形。巨大なパワーアームがある『テクニック』に。

 

 

『カイガン! ロビンフッド!』

『ダイカイガン! ドラゴナイト! オメガドライブ!』

 

『ソイヤ!』『ドラゴンスカッシュ!』

 

『チョーイイネ!』『ドラゴン! サイコォオオオ!!』

 

 

狙い研ぎ澄まされたレールガンの一撃がアマダムの肩を抉った。

バランスを崩したところでドラゴンの血が滴る剣が胴体を切り抜ける。

さらに上空から降り注ぐ火炎弾。一方でドライブも必殺技を発動、四肢にある爪が光り輝き――

 

 

『よし! 行くぞ進ノ介!』

 

「はへ!?」

 

 

アームがドライブをつかむと、思い切り振りかぶる。

まさか――、と、思った瞬間。

 

 

『トライドロン! スマッシュ!!』

 

「うわあああああああああああ!!」

 

 

思い切りアームをひねり、トライドロンはドライブを投げ飛ばす。

捻りを加えたからか回転が激しい。しかし狙いを理解したのか、ドライブは思い切り腕を伸ばしてみせた。

まさに回転するのこぎりだ。ドライブはそのまま唖然としているアマダムへ捨て身の突進をかましてみせる。

 

 

「ぐぎああああああああああああああ!!」

 

「ごはああああああああああああああ!!」

 

 

どっちがどっちの悲鳴なのやら。

とはいえ威力は本物だったようだ。衝撃に加えての斬撃、アマダムは悲鳴を上げて転がっていく。

そしてドライブもまた地面に墜落し、だらしなく四肢を地面にほうけて沈黙している。

 

 

「泊さん! 大丈夫ですか!?」

 

「おーい! 平気かァ!?」

 

 

駆け寄るほかのメンバーたち。

 

 

「………」

 

「う、うごかない」

 

「………」「………」「………」

 

 

視線を交差させるライダーたち。

エグゼイドが残念そうにガシャットを動かし、創作の力を行使する。

 

 

【警視庁 特状課・巡査】

 

【泊 進ノ介・殉職――ッッ!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変なナレーション入れるなよ!!」

 

「あ、生きてた。すまん。つい……」

 

 

飛び起きたドライブは、エグゼイドが作ったテロップをかき消すと、けだるそうに立ち上がる。

少し怯んだが、まあいい。ギアが上がって来た。

 

 

「レベルアップと行こうぜ!!」

 

 

うなずき、それぞれのアイテムを取り出す。

シンクロする電子音。アマダムも地面を殴ると立ち上がり、咆哮をあげながら地面を蹴る。

 

 

『マイティマイティブラザーズ!』\ヘイ!/『ダブルエーックス!』

 

 

走り出した二人のエグゼイド。

キースラッシャーを振るうオレンジだが、アマダムはその刃をなんなく掴み取ると指を振るう。

マグネットが発動し、エグゼイド同士がびったりとくっついた。

 

 

「雑魚が!」

 

「うわあ!」「うグッ!」

 

 

両手の掌底がエグゼイドたちを打つ。

後退していく中で、飛び上がる鎧武とゴーストが見えた。

 

 

「パラド! 悪い!」【ミックス!】【ジンバーッ! レモン!】『【ハハーッ!』】

 

「先生! 肩借ります!」『オレガブースト! フルイタツゴースト!』『ゴー! ファイ! ゴーファイッ! ゴーファイッ! ゴーファイッ!』

 

 

エグゼイドたちの肩を蹴って、飛来してくる鎧武とゴースト。

振り下ろすソニックセイバー。切り払うサングラスラッシャー。

しかしメタル化しているアマダムはまず腕を盾にしてソニックセイバーを受け止めると、側宙で飛び上がりサングラスラッシャーを回避する。

そこで『ルナ』が発動。伸びしなる腕と脚が鎧武たちを打つ。

 

 

「ンの野郎ッ!」

 

 

怯みながら鎧武は弦を引き絞る。

すると収束していく光、手を離すと、光の矢が発射された。

 

 

「甘い甘い! 通用するかよッ、この私に!」

 

 

だがリフレクトを発動したアマダム。光の矢が、流れるように軌道を変えてゴーストに突き刺さった。

 

 

「私の劣化品どもが! 見ているだけで腹が立つわ!」

 

 

大地を踏みしめると、雷撃がほとばしり鎧武に命中。

麻痺と怯みをあたえ、伸びる足で回し蹴りを叩き込んだ。

お次はゴーストだ。倒れているところへ追撃を――

 

 

『ドラゴタイム・セットアップ!』『スタート!』

 

「!」

 

『ウォータードラゴン!』

 

 

カチカチとメータが進む音。

ドラゴンの鳴き声とともにゴーストの前方、地面に魔法陣が広がり、そこからウォータードラゴンが飛び出してきた。

両手に剣を持っており、それを存分に振るうことで注意をひきつける。

 

 

『ハリケーンドラゴン!』

 

 

上空に魔法陣が出現し、緑色のウィザードが飛び出してくる。

ウィザーソードガンを逆手に持ち、蟷螂のようなシルエットでアマダムへ飛び込んでいく。

 

 

「グウゥウ!」

 

 

その奇襲は分かっている。アマダムの脚にエネルギーが宿り、回し蹴りを繰り出してウォータードラゴンとハリケーンドラゴンを吹き飛ばす。

だがそこで地中を突き破って伸びてくる壁。正面、右、後ろ、左。土の壁はアマダムを閉じ込める。

そして地面から何かが削れる音。アマダムが真下を睨むと、ボコッと音がしてウィザードが回転しながら飛び出してきた。

 

 

『ランドドラゴン!』

 

 

倒れるアマダム。

そこで土の壁が吹き飛び、向こう側からタイプデッドヒートとなったドライブが飛び出してくる。

蹴り上げでアマダムを浮かし、空中にいるアマダムへ高速で拳を叩き込んでいく。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオ!!」

 

「グウウウウゥ!!」

 

 

連打は許さない。

アマダムはなんとか掌から光弾を発射。一度ドライブを怯ませると、アマダムは着地して態勢を立て直す。

両者、拳を握り締めて再激突。

 

 

【ミックス!】【ジンバーメロン!】『【ハハーッ!』】

 

『カイガン! ヒミコ!!』『ミライヲヨコク! ヤマタイコク!』』

 

 

鎧武が放った矢がドライブに命中する。しかしこれは攻撃ではない。

網目状のエネルギーがドライブに纏わりつきシールドに変わる。同じくそこへ桃色の炎が襲来、相手から受けるダメージを遮断する防御壁だ。

だからこそドライブは相手の拳を受けても全力で拳を振るうことができた。

激しいラッシュがアマダムと交差する。果てしなく続く打撃音。それを見てオレンジ色のエグゼイドがウキウキと前に出てきた。

 

 

「おいおい、そんなモン見せるなよ。滾るだろうが……!」『パーフェクトバズュゥ……!!』

 

 

ガシャットギアデュアルを取り出し、

 

 

『what's the next stage?』『what's the next stage?』

 

「変身……!」『デュアーッルアップ!』

 

『Get the glory in the chain! PERFECT PUZZLEゥ……!!』

 

 

パラドは仮面ライダーパラドクスに変身。

両手を広げると、周囲に散らばっていたエナジーアイテムが収束していき、空中に等間隔に並んだ。

そしてパラドクスはパズルゲームのようにアイテムの移動を繰り返す。

するとアイテムが並んだ。パラドクスが腕を振るうと、それにあわせるようにアイテムはターゲットに命中していく。

 

 

『混乱!』

 

 

アマダムは頭を抑えてフラフラと。

一方でエグゼイド達にはマッスル化が。

 

 

「よし! 敵が怯んでる間に精神攻撃を仕掛けるぞ!」

 

「ッ!?」

 

 

かろうじて音を拾えた。

しかしアマダムは首をかしげる。

精神攻撃? なるほど、確かに直接攻撃よりかは効果はあるかもしれないが、ウィザードたちにそんな能力はあっただろうか。

ましてや作戦が聞こえたのだから耐える準備はできている。

さあ、何が来る! アマダムはいざ迫る攻撃に対処をしようと――

 

 

『エキサイト♂ プリーズ♂』

 

「………」

 

 

は?

 

 

『バナナ♂アームズ♂』『ナイト♂オブ♂スピアッー♂』

 

 

対処を――

 

 

『モンスター♂ レッカー♂ トラベラー♂』

 

『♂タイヤカキマゼール♂』『タフガイ♂♂』

 

 

対処……

 

 

『カイガン(意味深)』

『ベンケイ♂』『ア♂ニ♂キ♂ムキムキ♂ ニオウダチ♂♂♂』

 

 

対……

 

 

「オ♂レ♂と♂ゲ♂キ♂ト♂ツ♂ロ♂ボ♂ッ♂ツ♂し♂よ♂う♂ぜ♂」

 

「―――」

 

 

♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂♂

 

 

「う、うわああああああああああああああああああ!!」

 

 

青いバラが咲き乱れ、アマダムはなぜ空中を吹っ飛んでいた。

なんだこれ! なんなんだこれ! これなん――ッ、こ……! これ必要だったか? この今のッ、これっ、必要だったか!? そもそもコレ今ッ、これ今なんの時間なんだよ!

等とは思いつつ、脳はグラグラと。

これももしや混乱の一環なのだろうか。だめだ分からない。

アマダムが地面にへばり付いて唸っていると、穏やかではない電子音が聞こえてきた。

 

 

『オールドラゴン!』

『カチドキアームズ!』『いざッ! 出陣!』『エイ! エイ! オーッッ!!』

『ターッイプFORMULA!!』

『ゼンカイガン!』

『ケンゴウハッケンキョショウニオウサマサムライボウズニスナイパー!』

『ダーイヘンゲ~~ッッ!!』

『最大級のパーワフルボディー!』

< ダリラガーン!!

        ダゴズバァーン!! >

『マキシマァムパワァー!』

『エェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッックス!!!!!!!』デデーン!!

 

「アァアッッ!!」

 

 

苛立ちのままに地面を殴り、アマダムは立ち上がる。

一方でドスドスと音を立てて走ってくるエグゼイド。豪腕が振るわれ、しかしアマダムはそれを片手で受け止める。

同時に腕から衝撃波を発生させた。後退していくエグゼイドだが、よく見ればパワードアーマー、つまりマキシマムゲーマの中にエグゼイドはない。

すでに分離していたエグゼイドは、キースラッシャーを手にアマダムの背後に着地。すぐに反転して切りかかる。

もみ合い、そして背後からは体勢を整えたマキシマムゲーマがビームだのを発射してマダムの動きを妨害する。

 

 

「覚えてるかアマダム!」

 

「アァ!?」

 

 

鎧武は叫び、ロックシードを火縄大橙DJ銃へ装填。

そしてそれをドライブへ手渡した。すでにトレーラー砲にて必殺技を発動していたドライブ。両手に持った武器の銃口が光り輝き、エネルギーが集中していく。

チャージを妨害しなければ。アマダムはエグゼイドを押しのけ、ドライブのほうへ走る。

だが向かってくる旗を持った鎧武。さらに空中からウィザードが飛来。爪と尾の乱舞でアマダムを打つ。

 

 

「俺がどこから来たのか!」

 

 

鎧武は叫んだ。

一番はじめ、アマダムと戦ったとき、鎧武は声を聞いた。

助けを求める声だ。そしてそれを聞いたのは鎧武だけではない。少し会話をしたのを覚えているが、アクアというライダーに変身する青年もいた。

オーズに助けてもらった。自分も彼のような人間になりたいと。

 

 

「魂は続いていく!」『エジソン!』『ラッシャイ!』

 

 

グレイトフルが召喚した英雄が、銃口をアマダムに向ける。

 

 

「魂の光は、悪意には塗りつぶされない!!」

 

「馬鹿が!!」

 

 

アマダムはブレーキ。迫るエジソンと対峙する。

 

 

「I'm Edison」

 

「!?」

 

「I'm Edison! Are you Edison? NO! Yes! I'm Edi――、NO! NONONO!!We Are! Edison――ッッ!!」

 

「うるせぇ!! 少し黙ってろォ!!」

 

 

アマダムは高速回転で電撃をすべて吹き飛ばすと、そのまま掌底でエジソンを打ち、後方へ吹き飛ばす。

だが入れ替わりで現れたグレイトフルとカチドキアームズ。グレイトフルはゴーストチェンジを行わずとも各英雄の力を使用することができる。

武蔵と卑弥呼と装甲が光り、炎を纏った刃がアマダムを狙う。

同じく鎧武は旗を両手に持ち、炎を纏った乱舞を。

だがアマダムはそれを的確に弾きながら回避を行っていく。

 

 

「!」

 

 

そこで謎の衝撃。

アマダムは脚に激しい痛みを感じ、思わずよろけてしまった。

目をサーチモードに切り替える。するとどうだ、いるじゃないか。透明化しているエグゼイドが。

 

 

「虫けらどもが!」

 

「グッうう!」

 

 

しかし問題はない。アマダムが地面を踏むと、自身を中心に電撃が発生する。

ドーム状に広がる攻撃には回避など不可能。動きを止めるライダーたちへアマダムは渾身のパンチを打ち込んでいった。

 

 

「うわぁあああ!」

 

 

吹き飛ぶゴーストだが、そこで浮遊を発動。

近くにいた無人のマキシマムゲーマに飛び乗った。

 

 

「えっとッ、これッどうやって――! あぁ、こうか!」

 

 

適当だったがマキシマムゲーマくんはゴーストの意思どおり走り、アマダムへ拳をぶつける。

さらにそこで鎧武、エグゼイドは武器を投擲。

旗とキースラッシャーがアマダムへ当たる。もちろんこんなものはダメージにすらならない。しかし注意はひきつけた。

アマダムの視線の先、二つの銃を構えるドライブが。

 

 

「ハアアアアアアアアア!!」

 

「グッ! ヌゥウウウウ!!」

 

 

トレーラー砲から青いレーザーが。

火縄大橙DJ銃からオレンジ色のレーザーが発射されアマダムへ直撃する。

激しいエネルギーにアマダムの動きが完全に止まった。

そう、これもまた足止めにしか過ぎない。

 

 

「終わりだ! アマダム!!」

 

 

アマダムの真後ろに着地するウィザード。

その衝撃でアマダムは空中へ打ち上げられ、同時にウィザードは魔法陣を広げる。

四大元素のエネルギーを纏ったドラゴンの幻影が飛翔し、次々にアマダムへ突進。命中したところに新たな魔法陣を広げる。

飛び上がり、翼を広げるウィザード。空中にいるアマダムへ向けて足を伸ばした。

 

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「――ッ! ゴガァアアア!!」

 

 

ストライクドラゴン。

キックを当てられたアマダムは遥か上空へ吹き飛ばされる。気づけば回りは空ではなく宇宙だった。

すると背後に凄まじい熱を感じる。

アマダムが振り返ると、轟々と燃える巨大な太陽がそこにあった。

 

 

「ンンンンンッッ!!」

 

 

太陽の中に入ったアマダムはすぐに炎を吸収する能力を発動する。

とはいえ、このままではいられまい。

そこでふと思い出したワールドレコード。世界の記録が脳内を駆ける。

 

 

「……終わったか」

 

 

一方で着地するウィザード。ゴーストたちもそこへ駆け寄っていく。

だが瞬間、夜の世界が真昼のように明るくなった。

呆気にとられている中で火柱が上がる。踏ん張るライダーたちが見たのは、炎にまみれたアマダムの姿だった。

 

 

「お前――ッ!」

 

「フン! フォーゼのワープドライブを使えば宇宙から戻ってくることなど造作もない」

 

 

注目するべきは、そのカラーリングだ。

戻ってきたアマダムは赤色に染まっていた。

そこで前に出るウィザード。アマダムの中に巡る魔力の波長、これには見覚えがあった。

 

 

「気づいたか指輪の魔法使い」

 

「お前、まさか!」

 

「そう。太陽の中で別世界に移動した。お前の世界だウィザード」

 

 

ウィザードの世界、その太陽の中に移動したアマダム。

 

 

「ハハハ、あの雑魚、まだ死と再生を繰り返していたぞ」

 

「フェニックス……!!」

 

「奴の自我は死んでいた。だからッ、この私が吸収させてもらった!!」

 

 

ユナイトベントの力を使い、フェニックスを取り込んだ。

するとどうだ、フェニックスの『再生すれば力が上がる能力』がアマダムに齎されたではないか。

指を鳴らすアマダム、するとライダーたちの前に大爆発がおき、悲鳴がシンクロする。

 

 

「さあ、そろそろ遊びは終わりにするか」

 

「なに……!?」

 

「そもそも、お前たちはまだ何か勘違いをしているのではないか?」

 

 

アマダムの中には全てのライダーのクロスオブファイアが存在している。

そしてその炎は時間と共に、情報と共に、事実と共に、解釈と共に成長していくものだ。つまりライダーが強くなればなるほど、アマダムにもその恩恵が齎される。

そう言う意味で、エグゼイドには大いに感謝しなければならない。

 

 

「ハイパームテキ」

 

「ッ! まさか!」

 

「そのとおり。私は、無敵なんだよ!!」

 

 

ダメージを『受けている様にしていた』だけだ。

ライダーの進化は戦いの進化でもある。新たな技術が敵意を加速し、争いを昇華させていく。

アマダムが指を鳴らすと全ての時間が停止した。クロノスのポーズだ。アマダムはすぐに五人のライダーの頭上に小さな太陽を生み出す。

再び指を鳴らすと太陽はライダーに直撃、大爆発を起こした。

しかし世界は静寂に包まれている。

アマダムはその中で、ポツリと呟いた。

 

 

「リスタート」

 

 

耳をつんざく爆音。

地面に叩きつけられるライダーたちを、アマダムは笑って見下していた。

 

 

「私のライダーの象徴だ。お前たちの存在を確立できるの私に他ならない」

 

「グッ!」

 

「その私がお前たちを不要と言うのだ。大人しく事実を受け入れろ」

 

 

アマダムが欲しているライダーだけだ。

別に中身などどうでもいい。むしろ、ライダーの力を振るう人間は不愉快でしかない。

ブックメイカーも散々と口にしていたが、勘違いしたゴミを見るほど苦痛なものはない。

 

 

「不出来なお前たちは新しい歴史に呑み込まれるべきだ」

 

 

目指す理想たる世界にウィザードたちはいてもいいが、少なくともそれは操真晴人ではない。

アマダムもまた神なる世界を目指すもの。ソレを邪魔する障害は、排除しなければならない。

 

 

「もうこの時間さえも無駄だ! お前たちを殺し、この物語を終わらせてやろう」

 

「――ッ、させない」

 

「あァ?」

 

 

禁忌に近づけば、永遠の負の連鎖は続いていく。

無限は可能性の象徴だが、裏を返せば悲しみを永遠に連鎖させることでもある。

それは駄目だ。それだけは止めなければならない。だからゴーストは立ち上がった。

なによりも、この心には『彼』の苦しみがある。抱き起こしたとき、過去が見えた。

もしかしたら自分は間違っているかもしれない。彼は確かにそう思いながら前に進んでいた。けれども怖いから、辛いから、そして憎いから。

 

何よりも、救いたいと思う心は本物だった。

 

彼は、大切な思いを抱きしめてくれる存在が必要だと説いた。

だったら、全てのライダー達の苦しみと喜びを、なかった事にはしない。

だからこそ、この物語は勝たなければならない。

真の正義は創作の中にしかない? だったら――!

 

 

「おれは、おれ達はッ、創作を超える!」

 

「!」

 

 

ゴーストはブックメイカーから受け取ったアイコンを右手に持った。

それを思い切り前へ突き出す。すると戦っているライダーたちから炎が湧き上がり、アイコンへ収束していく。

そのままゴーストはアイコンを天へかざし、両腕を旋回させる。右手は下へ、左手は上へ。

そして腕を横に広げると、体を右へ捻りつつ両腕も真横に振るう。そして再びアイコンを持った手を前に突き出し、強く叫んだ。

 

 

「変身!!」『アーイ!』

 

 

アイコンをドライバーへ装填。

そしてレバーを引く。

 

 

『カイガン!』『ヘイセイライダー!』

 

 

ゴーストの周りにライダーズクレストが次々に出現。

さらにゴーストの姿が赤を貴重としたものに変わる。グレイトフルを彷彿とさせるその鎧に、次々と各ライダーの紋章が張り付いていった。

中央にはゴーストの紋章。そして背にはエグゼイドとビルドの紋章も見える。

なによりも頭部装甲の角は、『平』の感じをモチーフに。

 

 

「これがッ!」『アラタナコセイ!』

 

「!」

 

「おれ達の姿だ!!」『コレガ――、ヘイ・セイ!!』

 

 

仮面ライダーゴースト・平成ライダー魂。

 

 

「なんだその姿は……!」

 

 

アマダムも知らない姿だった。

一方で印を切るゴースト。

 

 

「魂、燃やすぜ!!」『ドライブ!』『ファイズ!』『カブト!』

 

「ウッ!」

 

 

電子音がライダーの名を告げ、装甲に刻まれる紋章が光った。

するとそのライダーの力がゴーストに与えられ、まずは高速移動でアマダムの眼前に迫る。

だがアマダムに焦りはない。まずは時間を止めて――

 

 

『エグゼイド!』

 

「!」

 

 

時間が、止まらない!

いや、正確には止まっているがゴーストが動いている。そういえばクロノスの『ポーズ』は"ムテキ"には通用しなかった。

つまり、それが、今!

 

 

『アギト!』『クウガ!』『ヒビキ!』『フォーゼ!』

 

 

紋章が光る。

すると体術の質が明らかに上昇した。

拳のスピードはまるでロケットのよう。打ち込む場所も的確で、防御を崩す技術も高い。

なによりも拳が打ち込まれた際に全身を揺らす音撃の追加。

 

 

「ハアアアアア!!」『エグゼイド!』

 

「ぐわぁあッ!」

 

 

体が地面を離れ、手足をバタつかせながら墜落していく。

時間が再び動き出した。すぐに顔を上げるアマダム。

おかしい! ダメージが確かに体に響いている。なによりも確かな傷を負っている。

無敵の筈が、ダメージを受けている!?

 

 

「リプログラミングだ! お前の無敵と時間停止を封印した!」

 

「ば、馬鹿な! そんな事が!!」

 

「だったら試してみるか!」『ガイム!』『オーズ!』『デンオウ!』『ブレイド!』『フォーゼ!』

 

 

ガンガンセイバーを取り出すゴースト。

カラフルな電撃が刃に纏わりつき、さらにフォーゼの力でワープドライブを発動。

空間跳躍でアマダムの背後に回りこむと、空間を断つほどの斬撃を叩き込む。

 

ガンガンセイバーは常にライトニングスラッシュとオレンジスカッシュ、さらにとオーズバッシュを発動している状態にある。

世界にいくつもの線が走り、空間が湾曲していく。これはマズイとバックステップで回避を行うアマダム。

しかし電王の力が発動し、剣先が分離してアマダムを捉えた。

 

 

『キバ!』『リュウキ!』『ウィザード!』

 

 

空中に出現する三体のドラゴンは、次々に火炎を発射し、炎の雨をアマダムへ降らせる。

 

 

「グゥウウウ! ヅアアアアアアアアアア!」

 

 

アマダムは爆炎にもまれ、吹き飛ぶ。

 

 

「ナメるなァア!!」

 

 

だが空中で腕を振るい、三日月状のエネルギーを発射する。

 

 

『ダブル!』

 

 

パックリと分かれるゴースト。エネルギー波はその間を通り抜けていく。

 

 

『ゴースト!』

 

 

虹色の粒子を纏い、浮遊を行う。

不規則な動きをアマダムは捉えられない。

次々に光弾が発射されるが、ゴーストにはまったく命中せず、あっと言う間に距離が詰まった。

 

 

「ハアアアアアアアア!!」

 

「グアアアアアアアア!!」

 

 

拳が抉り刺さり、アマダムは地面を転がっていく。

攻撃が打ち込まれた場所からは血が吹き出るように炎が溢れていった。

確かなダメージ。確かな痛み。確かな現実!

 

 

「わ、私のクロスオブファイアが――ッ、も、漏れ出て……!!」

 

 

前回と同じだ。

また、ライダーの意思ってヤツがアマダムの炎をかき消していく。

アマダムの脳が一瞬真っ白に。だからこそ、エグゼイドが持っていたハイパームテキを縛り付けていた鎖が吹き飛んだ。

 

 

「みんな!」

 

 

振り返るゴースト。

他のライダーたちも強く頷き、それぞれのアイテムを取り出していく。

 

 

『インッフィニティー! プリーズ!』

『ヒー! スイ! フー! ドー! ボーザバビュードゴーンッ!』

 

『ロック・オープン!』

『大! 大! 大! 大! 大将軍!!』

 

『FIRE! オーッル! エンジン!!』

『ドォッ! ラーッイブ! ターッイプ! TRIDORON!!』

 

『ムゥゥゥゥゥテェキィイイ!!』

★☆★輝けぇー!☆★流星のご・と・くゥー!☆★☆

★★★黄金の最強ゲーマァー☆☆☆

☆ハ★イ☆パ★ー☆ム★テ☆キ★ー☆ッ★!

☆★☆★エグゼェエエエエエエエエイド★☆★☆

 

 

輝きがアマダムの目を刺す。

強化形態に変身したウィザードたち。

距離は少し離れているが問題はない、ウィザードは高速移動を使用すると一瞬でアマダムの眼前に迫る。

 

 

「ポッピー歌います! Missing Piece」

 

 

音楽が響き渡り、ウィザードの輝きが増していく。

 

 

「ンの野郎ッッ!!」

 

 

踏み込んでストレートを放つアマダム。

しかしカキンッ! と音がして、アマダムの拳がウィザードの装甲に弾かれた。

よろけ、後ろへ下がるアマダム。すぐに闇の剣を出現させて切りかかるが、ガキンッ! と音がして剣が弾かれる。

ならばと全力で振り下ろしたらば、バキン! と音がして剣が砕け散った。

 

 

「ウゴォアアア!」

 

 

同時にアマダムへ刻まれる閃光。アックスカリバーの斬撃が光の線になり、アマダムを照らす。

縦に一撃、突き、踏み込んで突き、切り払い。そこでアマダムの反撃の蹴りが来る。

しかし高速移動でバックステップ。そのままアマダムの真後ろに来ると剣を思い切り振るっていく。

幾重もの光が迸り、アマダムから苦痛の声が聞こえた。

そこでターン・オン。斧の刃がアマダムの腰へ入り、切り抜け、駆け抜ける。

 

 

『ハイ! ハイ! ハイ! ハイ! ハイタッチ!』

 

『プラズマシャイニングストライク!』

 

 

斧を投げるウィザード。

回転する刃がアマダムに纏わりつき、動きを封じる。

その隙に指輪を付け替えて、ハンドオーサーを操作。

手形に指輪を読み込ませる。

 

 

「アマダム! 俺達の終わりはココじゃない!」『キックストライク!』

 

「!」

 

「まだ行かなきゃいけない場所がある。俺のフィナーレは来ない!」『サイコオオオオオオオオ!!』

 

 

足を中心に広がる魔法陣。大量の宝石を撒き散らしながらの飛び蹴り。

アマダムは腕を交差させて防御を取るが、それでも威力に押し負け大きく吹き飛んだ。

背中から地面に倒れるアマダム。ポッピーは鼻を鳴らして息を吸う。

 

 

「歌います! 乱舞Escalation!」

 

 

音楽にまぎれて鍵を捻る音が何度も聞こえた。

マントを靡かせ極アームズがアマダムの前に立つ。

 

 

「アマダム! 人を脅かすお前を! ぜってェ許さねぇ!!」『ドンカチ!』

 

「グゥウ!!」

 

 

思い切りハンマーを叩くと、その衝撃でアマダムが跳ね上がった。

 

 

『ブドウ龍砲!』『ブドウ龍砲!』『クルミボンバー!』

 

 

強制的に立ち上がらせた後は二丁拳銃を乱射しながら距離をつめていく。

シールドを張るアマダムだが、距離が詰まると鎧武は両手から銃を離し、パワーグローブを両手に装備して思い切り前に突き出した。

 

 

「おのれッ!」

 

「フッ!」『ソニックアロー!』『影松!』『影松!』『影松!』『メロンディフェンダー!』

 

「ンヌッ!」

 

「ハアア!」『バナスピアー!』『イチゴクナイ!』

 

 

破壊されるシールド、アマダムはフックを放つが鎧武はバックステップ、その中で弓を発射しており、着地と同時に槍を構えて突進。

アマダムの周りには槍が生え、さらにその周りを旋回する盾を配置するなど、徹底的に逃げ場を封じていく。

そうやってアマダムにバナスピアーを突き刺した後は、大量の爆発するクナイが降り注ぎ、アマダムを爆炎で包んでいく。

 

 

『パインアイアン!』

 

 

アマダムを縛り付ける鎖。

鎧武は踏み込み、咆哮をあげて鍵を連続で捻っていく。

 

 

「ォオオオオ!!」『大橙丸!』『大橙丸!』『バナスピアー!』『大橙丸!』『影松!』『大橙丸!』『大橙丸!』『無双セイバー!』『大橙丸!』『大橙丸!』『影松!』『大橙丸!』『大橙丸!』『大橙丸!』『大橙丸!』『大橙丸!』『ソニックアロー!』『大橙丸!』『大橙丸!』『大橙丸!』『大橙丸!』『バナスピアー!』

 

 

連続で現れる剣。

鎧武はそれを掴み取ると、アマダムを一度斬り、そして持っていた武器を投げ捨てて新しい武器を手にする。

切っては捨て、斬っては投げ、辺りには無数の大橙丸をはじめとした武器が転がっていく。一方で高まる魂。まさに乱舞はエスカレートしていく。

 

 

「アマダム! お前に俺は止められない!」

 

『火縄大橙DJ銃!』『無双セイバー!』『大橙丸!』

『火縄大橙DJ銃!』『無双セイバー!』『大橙丸!』

 

「グッ! ゴアアアアア!!」

 

 

鎧武の両手に出現する火縄大橙DJ銃。すでに無双セイバーと連結しており、さらに大橙丸も合体しているナギナタモードに。

同時にアマダムの周りに落ちていた大量の武器が動き出し、アマダムその一点に刃を向けて収束していく。

大量の武器に串刺しになるアマダム、鎧武は持っていた武器で救い上げるように切り上げてアマダムを宙に浮かし、カッティングブレードに手をかけた。

 

 

「セイッハアアアアアアアアア!!」『極スパーキング!!』

 

「グァあああああああああああ!!」

 

 

縦に一閃。横に一閃。

鎧武が振るった剣からオレンジ色の斬撃が発射され、十字型のエネルギーがアマダムを包み込む。

 

 

「グウウァアアア!!」

 

 

地面に叩き落されたアマダム。

脳内にかける危険信号。この流れは、あの時と酷似している。

 

 

「まさか……! こんな事が! なぜッ! 何故だァア!!」

 

「意思だ! それが魂の炎を左右させる!」

 

「なにッ! なんだとォ!?」

 

 

ポッピーが歌を変える。

UNLIMITED DRIVE、歩いてくるのはドライブだ。

 

 

『カモン!』『フレア! スパイク! シャドウ!』

『タイヤ! カキマゼーッル!』

『アタァック! ONE! TWO!! THREE!!!』

 

 

アマダムの前方にドライブ。そしてアマダムの後方にドライブの分身が出現する。

さらにこの分身。複眼が赤い渦を巻いている。中身はベルトさんだ。どうやら独自に動くことができるようで、さらにシフトトライドロンを操作していく。

 

 

「カモン! マンターン! ジャッキー! スパーナ! タイヤカキマゼーッル! グランプリ!!」

 

 

チェッカーフラッグを模したタイヤが肩につき、両腕にはマンターン、ジャッキー、スパーナが合わさった武器があった。

ベルトさんが両腕を突き出すと、ジャッキーが伸張、先にあったスパーナがアマダムを打ち、怯ませる。

すると光るマンターン。ベルトさんは一瞬でアマダムの前に距離を詰めた。

 

 

「魂が加速していく。今の私にも分かる。Amazingでgreat、なによりもBeautifulな感覚だ」

 

「何を言っている! 意味が分からない!」

 

「だからこそキミは私たちに押されているのだ。本当に分からないのか、アマダム!」

 

 

音速を超えるベルトさん。

タックルに弾き飛ばされ、アマダムは前のめりにバランスを崩す。

そこへ直撃していく針や炎弾。

 

さらにここでグランプリの固有の力が発動される。

タイヤの柄と同じ、チェッカーフラッグが空に出現し、風に靡く。

すると巨大なロードが出現し、全てのシフトカーが文字通りレースを開始する。

始まるグランプリ。赤いシグナルが青に変わり、シフトカーたちはロケットスタート。それは一つ一つが弾丸となり、ロードに立っていたアマダムへ次々と直撃を繰り返す。

 

 

「グアアアアアアアアアア!!」

 

 

倒れるアマダム。

ドライブたちの目にはもはや勝利しか映っていない。

彼らは、前に進むことだけを考えている。

 

 

「負けられない理由がある。走り続ける魂がある! それが俺達の、世界の答えだ!!」

 

 

分身が消え、ベルトさんとの意思が交じり合う。

シフトトライドロンを連打するドライブ。音声が重なり、ドライブの前に各タイヤの紋章が浮かび上がった。

タイヤカキマゼールによって全てのタイヤが収束していく。真っ白に輝くタイヤからパワーを受け、ドライブは飛び上がった。

 

 

『FIRE! オーッル! エンジン!!』

『ヒッサーツ! FULL Throttle! TRIDORON!!』

 

 

空中に飛び上がったドライブ。

するとエンジン音と共に、空中で加速。飛び蹴りがアマダムに直撃し、後方へ吹き飛ばしていく。

 

 

「アァ! アァアア!! なんでだ! クソ! 魂とかッ、信念だとか! 意味がわからねぇ!!」

 

 

ドイツもコイツも上をいきやがる。

くそったれな鎧武とウィザードよりも数年、新たに生まれたこいつ等にも押されるって言うのかよ!

アマダムは我武者羅に光弾を連射していく。しかしその中をまったく怯まずに歩いてくるエグゼイドが。

 

 

「一人の力じゃできない事もある」

 

「何を偉そうに語る!」

 

 

アマダムの手に巨大な光弾が生み出された。

もちろん威力も凄まじい。並みの耐久なら直撃前に蒸発させることができる。

その光弾を思い切り投げ飛ばすアマダム。エグゼイドは向かってきたそれを人差し指で真上に弾き飛ばした。

 

 

「んなッ!!」

 

「Time of Victory!!」

 

 

ポッピーが音を変える。

エグゼイドは黄金の髪をなびかせながら、スイッチを叩いた。

 

 

『キメワザ!』

 

『ハイパー! クリティカルスパーキング!!』

 

【HYPER! CRITICAL SPARKING!!】

 

「く、クソォおお!」

 

 

オーロラを出現させ、そこへ飛び込むアマダム。

この流れは完全にマズイ。持ち前の耐久力があって助かった。ここはまず一旦避難し、体勢を整え――

 

 

「お前はココで倒す」

 

「は?」

 

 

肩をつかまれ、引き摺り下ろされた。

エグゼイドはワープでアマダムへ距離をつめ、そして拘束する。

そして発光する足を胴体に叩き込んだ。

 

 

「オレ達の魂は、永遠だ!!」

 

「!!」

 

 

たった、一撃。

されど――

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【HIT!】【GREAT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【GREAT!】【HIT!】【GREAT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】【GREAT!】【HIT!】【HIT!】【GREAT!】

 

「グウウウウウウウウウウウウウ!!」

 

 

エフェクトに包まれ、アマダムの動きが完全に止まった。

 

 

『ビルド!』『ディケイド!』

 

 

ゴーストの装甲が光る。

ビルドのジャンプ力が付与し、さらにディケイドの破壊の力が付与される。

破壊、それは相手の特殊能力さえも粉々にしてしまう。不死のアンデッドを殺せたように、死なないフェニックスも、ディケイドの前には無力なのだ。

 

 

「アマダム! これがッ、仮面ライダーの力だ!!」

 

 

印を切ると周囲にライダーの紋章が出現。

それらは一瞬だけ元のライダーの姿となり、そしてまた紋章となる。

 

 

存在(イノチ)、燃やすぜッッ!!」

 

 

ゴーストは足を伸ばし、バク宙で飛び上がる。

その動きにシンクロするようにして収束していくライダーの紋章たち。

一回転が終わった時には全ての紋章が足に宿り、ゴーストは右足を突き出して降下を開始した。

アマダムはそれを見ている。見ていた。が、しかし次々に襲い掛かるエフェクトとダメージに思考が完全に停止していたのだ。

 

 

「ハアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ギアァアアアアアアアアアア!!」

 

 

平成ライダーの魂を込めた一撃がアマダムを捉え、貫いた。

逆海老反りとなり、地面を平行にして吹き飛んでいくアマダム。

 

 

「く、くそがァア! またかよ――ッ! またなのかよ……ッ! なんだってお前ッ、私とお前たちで何が違って――ッッ! ガァアアアアアアアアアア!!」

 

 

大爆発。

アマダムは木っ端微塵に吹き飛ぶと、そのまま塵となって消え去った。

 

 

「ふぃー……、やったな」

 

「ああ!」「ああ」「はい!」「おお!」

 

 

拳を突き出すウィザード。

そこへほかのライダーも拳を合わせ、頷きあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グァアッ! ヅッッ! クソが!!」

 

 

戦う怪人やライダー達から少し離れた場所。

人気のまったくない高架下でアマダムは具現した。

まだダミーを作るだけの力は残っていた。ガタキリバの力を使い、入れ替わる。

分身がやられている間に本体はベルデの力で透明化し、ここまで逃げてきたのだ。

 

 

「クソ共が……ァア!!」

 

 

地面を殴りつける。

相当なダメージを受けたが、まだ耐えられる。

少しだけ休み、そして別世界へ逃げるのだ。そうすれば不本意ではあるが『流れ』にはできる。

せっかくクロスオブファイアを蓄えたのだ。死んでゼロにするよりはいい。アマダムはそれを思い、寝返りを打つ。

 

 

「何がライダーだ。何が信念だクソが……!!」

 

 

さすがは気持ち悪い人間に好かれるだけはある。

さすがは子供(ていのう)に好かれるだけはある。全くもって幼稚で、茶番で、くだらない時間だった。

ああ言うのがくだらない作品の典型例なのだろう。ああいう野蛮極まりないクズみたいな作品が人間の脳みそをダメにしていくのだ。

そうだ、そうに違いない、クソだ。マジでクソ以下だ。ああ、クソ! クソクソクソッッ!!

 

 

「クソがァア!!」

 

 

掠れた声は爆音や怪人の声にかき消されていく。

かつてない不快感、屈辱感がアマダムを包んでいた。

誰でもいいからブッ殺したい。と言うよりも神を無性に殺したくなった。

どうせ今も私のこの無様な姿を見て笑っているのだろう。覚えていろよ、いつかお前を――

 

 

「!」

 

 

足音が聞こえた。

マズイ。ライダーか? アマダムは感覚強化の力を使い、聴力を上げる。

そして気づく。この慌てた様な足音には覚えがあった。

 

 

「あぁ、マスターアマダム! 大丈夫ですか!!」

 

「ッ、お前は……!」

 

 

その少年、元仮面ライダー4号の『灰島輝夫』は倒れたアマダムに駆け寄り、視線を合わせるために地面に膝をつける。

ファイズ戦が終わり、姿を消していた輝夫少年。どうやらショッカーについてココまで来ていたようだ。

 

 

「酷い傷だ……! い、行きましょう。空間移動を使えば大丈夫……!」

 

「ま、待て。待て! 今は世界を移動できる力がない!」

 

「な、なんて事だ。僕は同一世界でしか移動は行えないし……! でッ、でも大丈夫です! 今から僕が貴方を安全な場所へ! そこで休みましょう!」

 

 

輝夫はアマダムを抱きかかえようと力を込める。

しかしアマダムはその手を振り払い、唸り声をあげる。

 

 

「待て。待て待て! なんだお前は! 何が目的だ!」

 

「何がって……、僕はただマスターアマダムをお助けしたいと!」

 

「だから――ッ、なぜ……!?」

 

「なぜって、貴方が僕を――」

 

 

鬼気迫る表情で放たれた言葉には、一点の曇りもなかった。

 

 

「貴方が僕を助けてくれたではありませんか!!」

 

 

 

 

 

 

 

そこには光も闇もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ライダーガイジ爆誕』

 

このタイトルが、動画サイトで一位を取ったときから、輝夫少年はちょっとした有名人になった。

動画の内容は中学生くらいの少年が電車の中で唐突に立ち上がり、ライダーの真似を全力ですると言うものだった。

迷惑行為には変わりないのだが、悪質性が高いかと言われれば非常に難しいラインであり、なんだったら頻繁に電車やバスに乗る者ならば一ヶ月に一度くらいは似たような人に出会うものだ。ましてや回数的にはその一度だけ。まあとはいえ、動画は拡散されたために大きなネタにはなったものだが。

 

『気持ち悪い』

『ワロタ』

『何がおもしろいのか分からない』

『隣のおじさんの顔ww』

『流石に草』

『なんでこんな馬鹿って減らないんだろう』

『イキリオタクの哀れな末路か』

『特オタってマジでこんなんばっかだよ。映画館でバイトしてるけどニチアサ系のヤツ見に来るのってマジで地獄みたいな奴らばっかだし』

『仮面ライダーを汚すのは止めてほしい』

 

コメントは羅列されていくが、特別多いわけでも少ないわけでもなく。

少し話題になったが、逆を言えばそれだけだった。

ポッと燃えて、ポッと落ちる。線香花火のような出来事に終わったのだ。

そしてこの動画の主役。静寂の中で突如寄生じみた声をあげ、変身ポーズを取って決め台詞を叫んだものこそ輝夫少年その人だった。

理由は別に特別なことではない。輝夫少年は自分でこの行動をやろうと思った訳ではないのだ。

拡散された動画を見てゲラゲラ笑っている男子グループを見て、輝夫少年は唇をかんでいた。

 

なに、不思議な話じゃない。輝夫少年はカースト最底辺の男だったと言うだけだ。

よく"いじめは、いじめられる側にも原因がある"と言われている。まあ多くの人間はそんな事はないと口にするが、中には建前のために声を大にする者もいるわけで。

要するに、やはり目につくのは、目障りな行動をしてしまった者が多い。カーストにおいて最底辺にいくには何かしらの要因はあるということだ。

 

輝夫少年の場合はライダーが好きだった事が原因だろう。

彼はライダーファンであることに誇りを持っていたし、ライダーはとても素晴らしいものだと確信していた。

仮面ライダーは子供向けの幼稚な物語ではない、高尚な物語は大人のファンも多いから、年齢層の高い人ほど好きになるのだと確信していた。

スーパー戦隊とプリキュアはライダーがあるから視聴率も上がっているのだ、その信者共は感謝しなければならないと常々思っていた。

 

自分がライダーを一番愛していると常に思っていた。

ライダーファンは全てのシリーズを愛さなければライダーファンではないと思っていた。

アニメよりも特撮が素晴らしいと常に思っていた。ライトノベルを読んでいた奴らを心底見下していた。

美少女アニメを見ている奴らはキモオタだと馬鹿にしていた。まどマギや未来日記は龍騎のパクリだと本気で思っていた。

なんだったらまどかに至っては鎧武のパクリだと思い、『まどかの脚本家は鎧武の脚本家に謝罪しろ』と言ったメッセージを意気揚々と掲示板に書き込んでいた。

 

休日にはネットサーフィンを行い、ライダーの知識やまとめサイトを確認していた。

二次創作も見たことがある。だがオリジナル主人公を作る奴らは頭がおかしいと思っていた。

元の主人公こそが絶対なのだ。正しいのだ。完全なのだ。そう思う日々を続けていた。

それが徐々にリアルにも影響され始めたとき、彼の位置が決まり始めてきた。

 

アニメや漫画の話題が出たとき、『そんなクソみたいな作品よりライダーの方が――』などと嬉しそうに語り始めた彼の周りには、いつのまにか人が減っていった。

 

そしてついには素行の悪いグループに目をつけられ、おつかいを命じられ始める。

しかし輝夫少年は『金自体はもらっているからコレはパシリではない』とか『僕は弄られキャラなだけだ』などと言い訳を用意し、日々を過ごした。

だがついには暴力を振るわれ始めたとき、輝夫少年の何かが壊れ始めてきた。

 

ライダーとかキモいんだよ。

そう言われたからだろうか。ネットを見ても、いやに否定的な意見が目につくようになってきた。

つまらない。くだらない。黙れ、お前らに何が分かる。輝夫少年は『ライダー最高』と言うコテハンでアンチスレに突撃。一日中激論を繰り広げた時もある。

しかし輝夫少年の思いは空しく。顔を真っ赤にしたクソコテ野郎の哀れな遠吠えとして受け流されていった。

 

まさか、そうなのか。輝夫少年の精神は日々磨り減っていった。

誇りだった筈のライダーグッズをジャラジャラつけたカバンも、なんだかとても恥ずかしく見えてしまった。

ライダーが好きなヤツは頭がおかしいヤツなのかもしれない。輝夫少年の頭に浮かんだ思いは強くなっていくばかりだ。

そんな中、やらないと殴ると脅迫され、電車で変身やら決め台詞やらを叫ぶ動画製作に協力してしまった。

 

違う。こんな筈ではない。輝夫少年は何度も思った。

しかしネットでライダーを見るたび、テレビでライダーを見るたび、惨めな思いをする自分が脳裏によぎり。

そんな自分を見て笑い、暴力を振るう人間たちが目に浮かび。

そして今までの自分を否定するようなアンチコメントばかりが目に浮かび。

気づけば、あれだけ盲目的に楽しんでいたライダーが楽しくなくなっていた。

 

 

「ライダーごっこしようぜ!」

 

 

にわか知識の少年たちが適当に役を決める。

ファイズ、龍騎、ダブル、フォーゼ。

相手は輝夫怪人だ。ライダーパンチが輝夫少年の腹部を捉えた。

 

 

「―――」

 

 

殴られているとき、輝夫少年はかつてない焦りに囚われた。

このままじゃダメだ。いけない。助けて!

心で叫んだ。

 

 

『僕は怪人じゃない!!』

 

 

そして哀れな特オタ怪人は地面に倒され、ライダーキックで頭を踏まれた。

そんな想いが通じたのか。帰り道、輝夫少年の前に、本物のファイズが来てくれた。

 

 

「!!」

 

 

輝夫少年は言うつもりだった。

あなたのファンなんです! と。

だが気づけば、輝夫少年は椅子に括り付けられ、惨殺されていた。

 

 

「―――」

 

 

目が覚めたとき、輝夫少年は自宅のベッドの中にいた。

あれは夢だったのだろうか?

いや、そんな筈はない。この身に突き入れられたナイフの冷たい感触と、激痛は脳に焼き付いている。そして感じた恐怖も、ウソな筈がない。

輝夫少年は声をあげて泣いた。大声をあげて泣きじゃくった。結局、間違っていたのか。結局自分は怪人だったのか。

するとそのとき、何かが落ちる音が聞こえた。

 

 

「え?」

 

 

輝夫少年が顔を上げると、自分をいじめていた少年たちの首が転がっていた。

 

 

「!?!?!??!?」

 

 

声にならない悲鳴を上げる。

少年たちはみな舌をだらしなくたらし、目をむき出しにして絶命している。

その中で壁を叩き、存在を知らしめるのはアマダムだった。

 

 

「よう」

 

「え……? え――ッ!?」

 

 

そこにいたのはアマダムだけじゃない。

その隣にはブックメイカー。さらにその隣には人間態のキュルキラが見えた。

 

 

「灰島輝夫。ファイズにいた鈴木照夫のリ・イマジネーションだ」

 

「ふぅん」

 

 

キュルキラが迫る。

巧に殺された記憶が蘇り、輝夫は真っ青になった。まさか、また?

そうは思えど、差し出されたのはハンカチだった。

 

 

「え?」

 

「かわいそうに。涙が出てる」

 

 

キュルキラはハンカチを自分で持ち、軽く輝夫の涙をぬぐう。

そして持っていたカバンから何かを取り出すと、それを笑顔で差し出していく。

 

 

「はい、飴ちゃん」

 

 

輝夫は混乱していた。

カーペットの上に転がっている首、そして笑顔で差し出された飴玉がなんともミスマッチだ。

とはいえ、キュルキラは優しい声色で語りかける。

 

 

「辛いときは、甘いものでも食べて忘れちゃえばいいのよ」

 

「あ、ありがとう……、ございます」

 

 

それを見て、ブックメイカーは肩を竦ませて笑っていた。

 

 

「いつもそれくらい優しいと嬉しいんだけれど」

 

「優しいわよ! 怒るときはいっつもブックメイカーちゃんが悪い時じゃない!」

 

 

手を振り上げるキュルキラ。ブックメイカーとアマダムが同時に頬を押さえた辺り、怒るとすぐに手が出るタイプのようだ。

さて、そこで前に出るのはアマダム。

彼は、輝夫に手を差し伸べた。

 

 

「私たちと一緒に来い」

 

「え……?」

 

「お前は、使える」

 

「!!」

 

「一緒にライダーを終わせるのだ」

 

 

頷くブックメイカー。

ファイズを狂わせ、そして存在自体もファイズを左右させる毒となる。

はじめに気づいたのはアマダムだった。だからこそ彼は輝夫を蘇らせ、仲間に引き込もうと。

 

 

「私が力を与えてやる! どうする? 弱いまま、無駄な世界を生きるのか?」

 

「――ッ」

 

「悔しくないのか? 弱者のまま虐げられ、そして信じていたライダーにも裏切られた。復讐したいとは思わないのか!!」

 

 

それを聞いて、輝夫の心に歪な炎が宿ったのは言うまでもない。

受け入れればそれはすぐだった。アマダムやブックメイカーの協力のもと、輝夫にクロスオブファイアが埋め込まれる。

 

 

「唯一無二になれ、4号」

 

 

輝夫は4号となり、日々を訓練に費やした。

いずれ始まるブックメイカーの理想、カメンライダーを実現するためだ。

仲間になったときから輝夫もまた多くの知識に触れた。

 

そして気づいた。不毛だ。全ては不毛だった。

ライダーなど、なんて小さなものに縋っていたのだろうと輝夫は思う。

ずっとライダーとは雲の上の存在だと思っていたが、その実、それは大きな間違いだった。

ライダーは、遥か下だった。

 

 

「僕たちが救ってあげるのさ」

 

 

ブックメイカーは決意に満ちていた。

 

 

「ブックメイカーちゃんの作る世界は正しいの。何も間違ってはいないのよ」

 

 

キュルキラは優しかった。

そんなある日、輝夫は座っているブックメイカーを見つけた。

考え込む中、ブックメイカーの手が震えていた。近くにいたキュルキラがすぐにブックメイカーに駆け寄り、自分の手をブックメイカーの手に重ねて震えを止めてていたが、その時輝夫は気づいた。

 

戦いを続けるとして、神が戦いを望むことになる。苦しみは加速する。

戦いを終わらせる。多くの人間が死ぬことになり、苦しみは加速する。

 

ブックメイカーは前を見ていた。ライダーの目指す未来には苦しみしかない。

だがその道のりは険しい。終わりはあるのか? もしかしたらライダー達と同じ轍を踏むだけじゃないんだろうか。

ましてや勝ち目は? 圧倒的に不利とも言える。他の観測者に見つかれば計画を始める前に消される可能性もあるとブックメイカーは言っていた。

なぜ、それでもブックメイカーが戦う道を選んだのかは輝夫には分からない。

しかし一度だけ、それとなく話を聞いてみたことがある。

 

 

「言葉にすらなっていない、『助けて』を聞いた……」

 

 

ブックメイカーは淡々と言い放った。

 

 

「世界には悪が必要だ。未曾有にして正体不明の悪がいれば人は結束できる。怪人がいなければ――、いずれ人が悪になる。人は皆正義であればいい。結束すればいい。そのためなら、僕は喜んで悪になろう……」

 

 

概念の中だ。語弊はあるかもしれないが、それでも多くの命を奪った。

もう戻れない。それでも、ブックメイカーは引き返さない。

自分のためにも。『彼』のためにも。ドロドロになった汚いものを抱えながら戦う存在が必要だ。

 

 

「でなければ、絶対に救われないモノがある」

 

 

きっとブックメイカーもまた何かを抱えているのだろう。輝夫はなんとなくだが理解した。

キュルキラだってそうだ、ブックメイカーを見つめる時の目が、ほかの者を見る目とはまるで違っていた。きっと何か抱えるものがあるのだろう。

だから輝夫は4号として戦えるように必死に特訓を重ねた。

全てはブックメイカーの悲願、カメンライダーを成し遂げるため。

なによりも――

 

 

「何かお困りではありませんか、マスターアマダム」

 

 

なによりも、あの絶望から救ってくれた恩師の力となるためだ。

輝夫を助けたのはライダーではない、アマダムだ。本来ならば巧に殺されたまま放置される死体を、アマダムは蘇生させてくれたのだから。

いやそれだけじゃない。自らを苦しめる悪たちをアマダムは殺害してくれた。あの転がる首を思い出せば、それだけで輝夫は前に進んでいけた。

輝夫はアマダムの周りにつき、お礼をしきりに口にしていた。

 

 

「いい、いい! 気にするな! お前は実験体でもある」

 

「と、言いますと!?」

 

「クロスオブファイアを移植すると言うシステムがどの程度の結果を齎すかだ。お前は貴重なサンプルだ。活躍を期待しているぞ」

 

 

期待している。

必要だ。

それは、かつてないほどの希望を生み出してくれた。

だからこそ輝夫は深く、深く、それは深く頭を下げたのだ。

そんなある日、ブックメイカーが言った。

 

 

「オラクルを作る」

 

 

そのためにはハーメルンを介して神にアプローチをかけたい。

ハーメルンは文字を通して神なる世界に干渉できる。だからこそ、文字を作らなければならなかった。それもただの文字じゃない。物語、世界を見せなければ。

 

 

「アマダム。キミにお願いしたい」

 

「私が? 面倒だな」

 

「そう言うな。僕はまだ眼が順応できていない。あまり過度な干渉は控えたいんだ。観測者システムは僕も全てを把握しているわけじゃないからね」

 

「フム。だったらキュルキラがいるだろうが。アイツにやらせてはどうか」

 

「彼女は――、その……」

 

「ハハハ。分かるぞ。アイツは頭が悪いものな。物語なんて書ける知能がな――」

 

 

アマダムはキュルキラが後ろに立っていることに気づいていなかった。

だからこそキュルキラのビンタで真横に吹き飛び、壁に叩きつけられて動かなくなった。

 

 

「あたしはブックメイカーちゃんのために特訓中なの! まだアレになれてないから!」

 

「そ、そういう訳でよろしく頼む。ははは……」

 

 

解散。

アマダムは不服だったが、彼としてもオラクルの力は興味深いものであった。

ゆえに了承する。そして――

 

 

「マスターアマダム。ぼ、僕もお手伝いをしてもいいですか?」

 

「ん? ああ、来い来い。私一人では面倒だと思っていたところだ」

 

 

こうして二人はハーメルンに載せる物語を作ることになった。

 

 

「こ、こう言うのはどうですか?」

 

「おお、いいじゃないか。ゴッドか。私を表すに相応しい」

 

「は、はい! ありがとうございます……!!」

 

 

それが、仮面ライダーゴッドである。

アマダムに体よく流されたか、基本的に書くのは輝夫の担当だった。

とはいえ、ふと、手が止まる。

 

 

「?」

 

 

アマダムが顔を動かす。

そこには不安げに俯いている輝夫少年がいた。

ゴッドはやはり、ライダーを否定する物語だ。カメンライダー計画に賛同し、ライダーを救うことは別に不満はない。

しかしファイズに対する――、いや全てのライダーに対する憎悪もあった。そして過去の痛みもあった。

全てはグチャグチャだった。

 

 

「……いつか、かつて、僕は彼らを崇めていた。称えていた。そのせいで馬鹿な真似をいろいろとしました」

 

「分かっているならいい」

 

「本当でしょうか? 僕は変われたのでしょうか? 変われるのでしょうか。そもそも、僕は今、仮面ライダーをどう――……、ああ、ああ、ダメです。分からない」

 

 

するとアマダムは小さくため息をひとつ。

そして立ち上がると、輝夫の傍に立ち、代わりにキーボードを叩く。

アマダムは次々に仮面ライダーゴッドに加筆を行った。そしてファイズについて打った文字をそのまま口にする。

 

 

「悩んで何になる?」

 

「え?」

 

「悩むということは結果を求めることを放棄している逃げでしかない。事実、私は悩んでいる人間を多く見てきた。まさにそれはライダーにも言える」

 

 

力に手にすると言うことはそういうことだ。

ありとあらゆる可能性が選択肢の中に現れる。幾重もの道が前に広がるのだから、まあそれは当然の事かもしれない。

 

 

「だが悩みきったやつなどこの世にはいない。皆、答えを出した。出さざるをえない奴、全く納得していない答えを出した奴。それはバラバラだ。だがいずれにせよ悩みで解決する問題などこの世にはない」

 

「………」

 

「答えを出すのはただ一つ。力と才能だ。弱いやつは死ぬ。ウジってるヤツは消える。これが世界の摂理でおじゃる」

 

 

その弱さとはスペックの話ではない。

文字通り、弱さだ。

 

 

「お前は私の力により、4号の力を手に入れた。どうだ? お前は鎧を手に入れても、弱いままでいたいのか?」

 

「それは――、嫌です……!」

 

「フム。ではその思いを文字に込めろ。過去と共にライダーを否定しろ。いいか?」

 

 

アマダムは、声色を変える。

真剣に語りかけた。

 

 

「ライダーは神ではない。奴らはただの――、人間だ」

 

 

そしてそれは世界も同じだ。

神の世界など、ただのひとつもない。それはもちろん神なる世界も同じだ。

 

 

「人を神と履き違えるな。神でない限り、絶対はない。信仰もまた同じだ」

 

「――ッ、はい!!」

 

 

強く頷き、輝夫は文字を綴った。

アマダムはそれを褒めた。褒めてくれた。部屋からは二人の笑い声がよく重なって聞こえてきた。

 

 

「――あの時の、時間は、とても価値のあるものでした」

 

 

現在。

うめくアマダムの傍、地面にポタリと雫が落ちた。

声が震えている。アマダムが顔を上げると、必死に笑みを浮かべる輝夫の姿があった。

 

 

「たとえ、どれだけの人間が嫌悪しても。僕にとって……! 仮面ライダーゴッドは、とても――ッ、素晴らしい、物語です……!!」

 

「お前――ッ」

 

「グッす……! あ、あれを書いたことで、僕は、救われました……! ひっく!」

 

 

しゃくりあげ、涙を流し、無様な姿で輝夫はアマダムに微笑みかけた。

どんなに酷いと思われても。どんなに下らないと思われても。どんなに憎まれても。

どんなに無駄だと思われても、たった一つ、たった一人、その少年には、何よりも価値のあるものだったんだ。

 

 

「ブックメイカーさんたちがッ、なによりも貴方がッ、僕を助けてくれたんです! ライダーじゃない! ライダーではダメだ! 貴方がッ、うゥゥう……!!」

 

「………」

 

「マスターアマダム……、我々は――ッ、負けるのでしょうか――?」

 

 

しばし無言ではあったが、やがてはアマダムは大きく息を吐いた。

 

 

「ああ。そうだな。私たちは、もう……」

 

「グ……ッ!」

 

 

また無言だった。

しばらく、輝夫は唸り、涙を流し続ける。そしてポツポツと言う。

 

 

「ライダーが勝ちました。やはり、ライダーが勝ってしまいました。正義は勝つんです。正しいほうがいつも勝つんです」

 

「――ッ」

 

「……僕たちは、間違っていたんでしょうか。だから負けたんでしょうか。グッ、うぅう、僕たちがやってきた事は、結局無駄で、哀れで、愚かで――」

 

 

ギュッと目を閉じると、大量の涙が溢れてきた。

これからどうなるのか。帰るのだろうか? 消えるのだろうか? いずれにせよそれは仮面ライダーの意思だ。

おかしい話だ。今はそれがとても不安で、悔しかった。

かつてはライダーを妄信的に愛していたのに、今はライダーの勝利で終わるのが嫌で仕方なかった。

 

思い出すのだ。今も、今ですらも。

ライダーを思い出すと、痛みも一緒についてくる。自分の愚かさも、惨めに虐げられた悪意も、いつも心を刺していた激痛も全部。

 

 

「もう――、嫌だ……」

 

 

崩れ、泣き喚く。

 

 

「なぜ……ッ、こんなに傷ついても仮面ライダーを好きでいなければならないんだろう」

 

 

なぜこんな事を思わなければならないのだろう。

自分はただ仮面ライダーが好きだっただけだ。

なのにどうして多くの悪意を生み出し、向けられ、そしてライダーに殺され、ライダーを憎悪し、ライダーと戦うことになったのか。

そして、ライダーに負けたのか。

 

 

「悪になんて――、なりたくなかったのに……!!」

 

 

いずれにせよ、もう終わりだ。

もうライダーが勝とうが、ショッカーが勝とうが、そこに輝夫の望む世界はない。

 

 

「マスターアマダム、お願いです。もういっそ、僕をココで殺してください……」

 

「!」

 

「僕はヒーローにも――ッ、怪人にすらなれなかった……!」

 

 

その時だった。

アマダムは、叫ぶ。

 

 

「馬鹿なことを……! 言うな!」

 

「え?」

 

 

そもそも、悪とはなんだ?

ひたすらに悪意を振りかざせば悪なのか。怪人なのか?

人を笑いながら殺す怪人が、目の前で泣いている子供になんとなく情けをかけることは、ありえないことなのか?

そんな筈はない。事実、アマダムはそうした。

それはかつて、リントだった時の記憶がそうさせたのかもしれない。

 

 

「ゴッドのように図々しく生きろ」

 

「!」

 

「それが――、お前の望んだ世界だろ……!」

 

 

アマダムは全身を叱咤し、重い体を引き起こす。

 

 

「自分が正しいと笑え。そうすれば、100人がお前を嫌おうとも、お前はお前を愛せる。まずは自分を愛せ。でなければ……、愛を語る資格はないぞ」

 

 

アマダムもまた観測者が触れるべき知識に触れた。

その代償にて、自我が保てなくなる時がある。自分というキャラクターが分からず、かつてのライダーの敵の衣装になり、口調はバラバラに。

だからだろうか。そうはなってはいけないと思っていた。

 

 

「別にライダー(あいつら)を目指す必要はない。あんなのはカスでいい」

 

 

アマダムは上半身を起こし、輝夫の肩をポンポンと叩く。

 

 

「だから――、あいつらを超えろ。お前はお前だろう。輝夫」

 

「マスターアマダム……!」

 

 

アマダムは唸り、立ち上がる。

体が重い。肩で息をしながら、大きく上下させながら、一度天を仰いだ。

 

 

「俺は死ぬ」

 

「!!」

 

 

輝夫は口を開き、目を開き、打ちのめされたように固まった。

 

 

「きっと殺しまくったからかもしれん。だから真似するな。同じになるとお前は死ぬから……、まあ、なるべく清く優しく生きろ。私は復活するが、お前は自分では復活できん。ッて言うかまあアレだ。そもそも死ぬということ自体、なるべく経験しないほうが――」

 

 

首を振るアマダム。

こういう事が言いたいんじゃない。とにかく、輝夫はもう、自分(アマダム)には近づかないほうがいい。自分たちのような生き方はしないほうがいい。

自らの愚かさが分かっているなら、時間はかかっても真面目に、まともに生きられるはずだ。そっちのほうが何倍もいい。

 

 

「そうすれば、きっといつかお前を愛してくれる人も現れるだろう。親以外にも、女だ。そう、そうしたら私に教えろ。その女は守ってやるから」

 

「な――、ぇ」

 

「だができればお前が守れ。できる筈だ。いや、やろうとしろ。そしたらお前は五代とか乾みたいなクズ共よりも立派なヒーローに――ッ、なれるだろうさァ……!!」

 

 

アマダムは足を前に出した。

いや、それはもう引きずっていると言うのが正しいが、アマダムは前に進んだ。

先ほどは後ろに逃げることばかり考えていた男が、今、前に向かっている。

 

 

「なぜッッ!!」

 

 

涙を流し、輝夫は叫んだ。

いつかは復活できるとは言え、それは絶対じゃない。不安もきっとあるだろう。

なのに、なぜ、わざわざ負けに行くと分かっていて。

 

 

「なぜそれでも戦うと!?」

 

 

もちろんアマダムはそれを聞いちゃいない。ただフラッシュバックしていく過去。

ブックメイカーに声をかけられたこと。計画を打ち明けられたこと。仲間になったこと。

観測者との日々は、なかなか刺激的だった。キュルキラも悪くない賑やかしだった。

自分を崇拝してくれる信者の輝夫くんは、悪くなかった。

思い返してみれば、たくさん笑ったものだ。

 

 

「もしかしたら――ッ」

 

 

だが、思い出せるブックメイカーの最後は鬼気迫る表情だった。

血を吐き、アマダムを睨みつける。その目にあった感情はプラスな筈がない。

キュルキラももう死んだ。輝夫も――、もう。

 

 

「友達だったのかもな……!!」

 

 

だから、せめて、前にすすむ。

輝夫には、こう、説明しておこうか。

 

 

「後ろに進めねェ、理由ができちまった……!!」

 

 

輝夫はそれで理解した。

いや、理解はできなかったが、アマダムの覚悟だけは理解できた。

だから最後に、声を張り上げ、ただひたすらに叫んだ。喉が潰れてもいい。二度と喋れずともいい。これだけは絶対に伝えなければならないと思ったから。

 

 

「マスターアマダム!」

 

「!」

 

「あなたが過去、何をしてきたのか! どれだけの罪を犯したのか! それは僕には分かりません。ただそれでも――ッ、それでも!!」

 

「………」

 

「それでもッ、僕にとっては、貴方は一番のヒーローでした!!」

 

「――そうか」

 

「はい! 貴方が僕を救ってくれました!! 貴方はッ、間違いなく、僕にとっての仮面ライダーです!!」

 

「あんなクズ共と一緒にするな」

 

「ではッ、カメンライダー!」

 

 

アマダムは笑った。それも違う。

 

 

「私は――、私だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライダー!!」

 

「!」

 

 

呼ばれ、反応し、声の方向を見るライダー達。

 

 

「あいつ!!」

 

 

ゴーストが前のめりになる。

歩いてきたのは、金色に染まったアマダム。雄雄しきゴッドの姿だった。

 

 

「アブネェ、あぶねぇ、忘れるところだったぜ!!」

 

 

足を引きずりながらも、アマダムは両腕を広げ、自らの存在を強くアピールする。

 

 

「敵がカッコ悪けりゃよォ、ライダーの魅力が出ねぇよなぁあ!!」

 

 

アマダムはサムズアップを浮かべ、そのまま親指で自分の心臓部分を強く指差した。

 

 

「あるんだよ! 私にも、一番デッケェ! 誇り(クロスオブファイア)がヨォオオ!!」

 

「!」

 

「来い! 来いよライダーッ! でないと、置いてくぜぇええぇ!!」

 

 

アマダムは両腕にエネルギーを宿し、地面を蹴った。

一方で立ちはだかるのはクウガ。かつての因縁が、ぶつかり合う。クウガは両手を広げ、腰を落とした。

集中、集中、そして地面を蹴る。エネルギーが宿った右足が地面につくたび、そこに炎が浮き上がった。

そして地面を強く蹴り、飛び上がる。空中で一回転。直後、咆哮と共に右足を突き出した。

 

 

「ゥオリャアアアアアアアア!!」

 

「ウグ――ッッ! アァアアアアアア!!」

 

 

膝をつき、着地するクウガ。

放物線を描き、アマダムは地面に叩きつけられた。

脳が揺れる。その中で、立ち上がる。胸にはクウガのマークがしっかりと刻まれており、激しいエネルギーがアマダムの中に流し込まれていった。

 

 

「グゥウウッ! アァアア! がッ! クソオォ!!」

 

 

クウガの紋章を中心に、黄金の亀裂がアマダムを駆ける。

 

 

「いいかァ! ライダー共! 私はもはや概念だ! お前らが戦い続ける限り! 怪人の魂が魔法石をつくり、その主である私は生まれ変わる!!」

 

 

なによりもクロスオブファイアがある限り、アマダムは不滅だ。

永遠に続く戦いの象徴。それこそがアマダム。クウガの霊石なり。

 

 

「私の力はクウガに戻る。だがッ、忘れるな! 私は必ず蘇る。次も、その次も! 何度もでもォオ!」

 

 

膝が折れ、アマダムは地面に跪いた。

だがその膝を殴りつけると、アマダムは再び立ち上がり、ライダー達を指差した。

 

 

「私はこれからも殺し続ける! だからッ、止めてみろ! ライダー!!」

 

 

世界を永遠に続かせてみろ。

アマダムはそれを叫び、両腕を広げて笑った。

ライダーが光ならば、それを照らし続ける闇が必要だ。アマダムは、必ず戻ってくる。

 

 

「アマダム様に! 私自身にッ! バンザァアアアアアアアアアアイ!!」

 

 

アマダムは仰向けに倒れ、直後大爆発を起こした。

内包していた魔法石も砕け、中にあるクロスオブファイアが周囲に拡散していく。

 

 

「!」

 

 

虹色の光が散るなか、ファイズは見知った人影を見つける。

輝夫少年は、ゆっくり歩き、ファイズの前にたった。

 

 

「――ごめんなさい」

 

「輝夫……!」

 

 

駆け寄るファイズ。

ガラではないが、輝夫を抱きしめた。

 

 

「悪かったな……! 本当に――、本当にッッ!!」

 

 

輝夫もただひたすらに謝った。

ファイズは頷くと、彼をポッピーたちがいるところにまで連れていくのであった。

 

 

 

 

一方、青い羽が舞っていた。

オラクルは邪魔な怪人を跳ね飛ばし、前に進んでいく。

 

そろそろ、終わりにしようではないか。

希望は高く積み上げたほうが、崩したときの落差が大きい。

さて、もうそろそろいいだろう。ライダー達に流れが来ている? 冗談ではない。ならばすぐにショッカーに流れを戻してやればいいだけだ。

オラクルにはそれができる。どれだけ強い力を持とうとも、心はウソをつけない。口ではどうとでも言えるが、悪意には勝てない。

誰も、みんな! 心ある限り!!

 

 

「サて、誰カラ始末してやろうカ……!」

 

 

カン!

 

 

「信託ガあれバ! 誰モガ、悪意に沈むナリヤ!」

 

 

カンカン!

 

 

「人ノ悪意コソが答え!」

 

 

カン!

 

 

「!」

 

 

お ま た せ。

そう言わんばかりにオラクルの前に立ちはだかるのは、RX。

 

 

「ショッカー怪人オラクル! 人々の想いを湾曲させて伝えッ、真実を悪意に変えようとする貴様をッ、俺は絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛ッッ!」

 

「ピヨヨヨ! 面白イ! ならば貴様ガ最初のギセイシャだ!!」

 

 

当然、悪意は、対RXにしっかりと用意している。

オラクルが翼をはためかせると青い羽が散り、それが文字へ変化していく。

 

 

RXとかにわか御用達のライダー。実際見てみると普通につまらんよ

 

RX最強とか言ってる奴が一番うざい。信者はディケイドに負けたことをいい加減に認めろよ。いまや液状化とか珍しくもないから

 

ネットのノリが一番寒いライダー。最強の一つ覚えばかり。RX信者とかもはや特撮界の癌

 

RXってディケイド並みに先輩ライダーの扱い酷いからね。揃いも揃って無能ばっかりだし、歴代ライダーファンとしては最底辺の作品だと思う

 

 

青い言葉は巨大で鋭利な槍となり、空中に留まる。

 

 

「カクゴせよ! 逃げラレはしない! この槍ハ防御も回避も不可能ダ!」

 

「!」

 

 

ならばと腕を交差させるRX。

光が迸り、その姿が変わっていく。

 

 

「ロボライダー!」

 

「無駄ダ! イカナル装甲をモッテしても防御不可能! ソレハこの槍、言葉の槍ユエ! お前ノ心を直接傷つけるナリヤ!!」

 

「何ッ!」

 

「回避もまタ同ジク! 槍をミタ時点でオマエはもはやこの攻撃カラは逃げられヌ!!」

 

 

これは攻撃ではなく会話だからだ。

尤も、もうRXに避けられる術はない。たとえ液状化したところで言葉に刺し貫かれるだろう。そうだ、悪意に心を刺し砕かれよ。

オラクルはその言葉と共に槍を発射した。

 

 

「フッ! トゥア!!」

 

 

一番目の槍をRXはその身で受け止め、粉砕した。

カキン! パキン! と音がしてロボライダーは二番目、三番目に迫る槍を拳で粉砕。

四番目の槍は掴み取り、すぐに握りつぶして粉々にしてみせる。

 

 

「フッ! ハァアア!」

 

 

ならばとオラクルは爪を青く光らせ、ロボライダーに駆け寄った。

振り下ろす爪。しかしロボライダーの肩に触れたとき、はじかれ、爪が砕ける。

一方で拳を握り締めていたロボライダー。そこへ光が集中し、そのまま思い切り拳をオラクルへ叩き込む!

 

 

「ロボパンチッッ!!」

 

「グアアアアアアアア!!」

 

 

爆煙をあげながら後方へ吹き飛んでいくオラクル。

それを見てロボライダーはハッとした様に一歩前へ。

 

 

「ッ、逃がさん!!」

 

「オマエが吹っ飛ばシタんダロウガァ! クソ! ユルサン!!」

 

 

オラクルが両手を広げると、上空から巨大な青い鳥が姿を見せる。

もちろん本物の鳥ではない。鳥の形をした戦闘機だ。饒舌に説明を行うオラクル。

ブルーバード、ショッカーの技術力を集結させて完成させた対ライダー最終兵器だった。

クロスオブファイアを様々な視点で分析、解析。ありとあらゆる攻撃を跳ね返し、同時にブルーバードの攻撃は全てのライダーにとって致命傷を与える効果的な一撃を繰り出す。

 

 

「サラニ2017個の特殊能力があり、ライダーキラーの真骨頂ナリ!」

 

「ならば! ボルティックシューター!」

 

「ククク! ムダダ! ブルーバードの破壊! それには各4つのコアポイントを同時に攻撃しなければナラズ! そしてその場所! 貴様にはワカルマイ! 銃で撃とうが、ソレ、全て貴様に反射サレルなりや! ピヨヨヨ!」

 

「悪は許さん! 俺が断じて許さん!」

 

 

引き金をひくロボライダー。

光弾が発射され、それはブルーバードに命中すると粉々に爆散させる。

 

 

「ごめんやっぱもうちょっとスルーするの無理だわ! オマエ話聞いてたか!? 通用しないって言ってるんだヨ! なのになんで普通に破壊してんだよ!!」

 

 

それだけじゃねぇわ。

いや普通にスルーしたけど一番始めの槍も納得いってないからね!?

 

 

「信託は直接攻撃じゃなくて精神攻撃の一種だって何回も言ってんだろ!? なのになんでロボライダーの装甲ではじいてんだよ! パンチで落としてんだよッッ!!」

 

 

饒舌にほえるオラクル。

だが、まあ、冷静になろうではないか。なにかカラクリがあるに違いない。

それを今探る必要はない。精神攻撃が通用しないならば直接攻撃であの世に送ればいいだけの話。

オラクルはそれが可能だと確信していた。翼を広げ、飛翔する。たった一秒でそのスピードは音速を超え、ロボライダーを翻弄していく。

 

 

「サンシャインシュート!」

 

「ぐああああああ!!」

 

 

ロボライダーが光弾を放つと、それはオラクルに直撃して地面に墜落させる。

唸るオラクル。次は青く淀んだ剣を取り出した。

これだけは使いたくなかったが仕方ない。呪詛の剣、オラクルの最終兵器だ。

 

 

死ね』『うざい』『憎い』『殺したい』『殺す

 

 

そんな言葉をタップリと練り上げ、作り上げた負の刃。

それを受けたものは、心が腐敗し、崩壊する。

一撃でいい。この刃を受ければその時点で廃人だ。もちろん防御は無意味だ。刃はどんな装甲にも入り、心を破壊する。

先ほどはイレギュラーがおきたようだが、今回はそうはいかない。装甲も、液状化も全て無意味だ。オラクルは剣を構え、ロボライダーへ近づいていく。

 

 

「バイオライダー!」

 

「死ね!」

 

 

斜めに入った剣はバイオライダーをすり抜ける。

 

 

「ムゥン!」

 

 

次は横に振るうオラクル。

剣はバイオライダーをなんのことはなく通過した。

 

 

「ゼイッ! ゼイリャアアア!!」

 

 

ならばとオラクルは剣を振り回す。

斜め、突き、払い、切り上げ。次々と振るわれる刃。全てバイオライダーをすり抜ける。

 

 

「バイオアタック!!」

 

 

液状化し、青く発光するバイオライダー。ウヨンウヨンウヨンウヨンウヨンと音と立ててオラクルの周りを飛び回る。

 

 

「クソ! クソ!!」

 

 

剣を振り回す。

液体をすり抜け――、いやだから確認するけど本当は液状化しててもこの刃が当たればァアアアア――!!

 

 

「バイオ! ブレード!!」

 

「アァ……!」

 

 

発光する刃での切り上げ。スパークカッターが決まり、オラクルが持っていた剣が破壊される。

真っ二つになり落ちる刃。オラクルは倒れ、バイオライダーはRXに戻る。

 

 

「な、何故ダ! なゼ我が信託ガ通用シナイッ!!」

 

「オラクル! そんな事も分からないのか!」

 

「ナニィ!?」

 

「彼らもまた、我々が守るべき人間だからだ!!」

 

「ッ!? う、ウケイレルと言うのカ!」

 

 

つまりRXが傷つかないのは、全てを受け入れているからだ。

悪しき言葉の刃を放つ人間も、RXが守ると決めた愛する人間には変わりない。だからこそその言葉には怯まない。

 

 

「それが自由の形には変わりない!」

 

「罪だとシテモ!? そんな馬鹿ナ! 心は傷ついていル!!」

 

「その反省は神の――、人の判断だ! 我々はその自由を守るために戦っている!!」

 

 

人間は愚かではない。気づくのも、反省するのも、過ちを繰り返さないのも全ては人の判断によって行われる。

その領域は、仮面ライダーであるかなど関係ない。人間に残された可能性だ。

仮面ライダーは神ではない。大切なのは愛と正義を信じ、人の自由と可能性を守ることだ。滅びに導くショッカーはいらない。

 

 

「滅びも、存続も、全ては人が決めることだ! そこにお前たちの出る幕はない!!」

 

 

RXは思い切り地面を叩き、バク宙をしながら前方へ跳ぶ。さらに体を捻り、両足を突き出した。

マズイ! オラクルはすぐに立ち上がるが、ダメージで体が重い。分かってはいれど、気づけばもう目の前に迫る足裏が。

 

 

「RX! ケィェ゛ア゛ッック!!」

 

 

ピポポポポと音がしてRXの両足が発光。そのままオラクルの胴体に直撃すると、小さな爆発を起こした。

 

 

「ウワァアアァアァアアアァア!!」

 

「リボルケイン!!」

 

 

背中を地面に向けたまま、オラクルは遥か彼方へ吹き飛んでいった。

RXは腕を旋回させ、サンライザーへかざすと、そこから光る杖・リボルケインを抜き出す。

 

 

「悪意もまた人の一部だ。しかしそれらはいずれ、捨てなければならない。絶対に!」

 

「グアァアアァアアァアアアア!!」

 

 

オラクルは吹き飛んでいる。

 

 

「悪意を振りまき、心に宿し続けようとする貴様を、俺は許さんッッ!!」

 

 

RXは踵を返し、後ろを振り向いた。

マクロアイがオラクルの姿を補足する。

地球一周お疲れ様、そんなオラクルに待っていたのは、腹部を貫くリボルケインだった。

 

 

「グッ! オォオオ――……ッゥ!!」

 

 

だがショッカー最強怪人。

ここでなす術もなくやられるのだけは虫唾が走る。

 

 

「ナメるなヨォオオオ!!」

 

「!」

 

 

オラクルは地面にしっかりと足をつけ、リボルケインを両手で掴むと翼を広げた。

そこで踏み込むRX。瞬間、リボルケインが消えた。え――? と、オラクルが思ったとき、目の前にはロボライダー。そして腹部に押し当てられる銃口。

 

 

「オッ! オ゛ッ! ヲォッッ!?」

 

 

ゼロ距離で三発。よろけ、後退していく中、ロボライダーはバイオライダーとなり液状化。

一瞬でオラクルの背後に回ると、発光する刀で背中へVの字の残痕を刻み込みこんだ。そしてまた液状化でオラクルの前方にやってくるとRXへ変身。

腹部にはしっかりとリボルケインが刺さったままだった。

 

 

「エェ!??!?!??!?」

 

 

困惑するオラクルだが、ダメージで体が動かない。

そうしていると背中から勢いよく噴出す火花。

まだだ、まだだまだだ! オラクルは拳を握り締め、目の前にいるRXの顔面を粉砕しようと――

 

 

「シャア!」「オッラァ!」「オゥッラアィッ!」「ハアア!!」

 

「!?」

 

 

正面だけではない。焼け付くような痛みが左右と、左右斜めに走った。

オラクルが首を曲げ、周囲を確認すると、龍騎が、電王が、鎧武が、エグゼイドが加勢に加わっているではないか。

それぞれ剣をオラクルにつきたて、直後オラクルの口や目、耳や鼻、全身のいたるところからシャワーのように光が、火花が噴出していった。

 

 

「オラクル! 絶望から生まれたお前を倒すのは、人の希望が生み出した我々と知れ!!」

 

「オォッ! オォォオォッッ! フォロロロロロロロロロ!」

 

 

オラクルは最期の抵抗に周囲に羽を拡散させる。

しかしRXは怯まない。むしろ踏み込み、リボルケインをより深く押し込んでいく。

それにシンクロするようにして龍騎たちも剣をより深くオラクルの中に沈めていく。

拡散された羽は消し飛び、オラクルは首をガクガクと不規則に動かしている。

 

 

「時代がライダーを求める限り、悪意の言葉に勝利はないと知れ!」

 

「フォオォォオ……! フォロロロロ……!!」

 

 

剣を勢いよく引き抜くライダー達。

踵を返し、残心。リボルケインを旋回させてポーズを取るRXは漢字で表すのならば、まさに――

 

『一欠』!

 

ライダーは否定を受け入れた。その上で前に進み続ける。

RXもまた同じだ。世界のルールを受け入れ、人のために戦う道を選んだ。

永遠に信彦(しんゆう)と殺しあうシステムに足を踏み入れた。

ならばもはや、人の弱さで構成されたオラクルに勝てる可能性など万に一つも存在していなかったのだ。

 

 

「そ、そン! ソンな馬鹿なぁアあアァ……! こッ、コココこコンなコとがぁアあぁッアァぁ!!」

 

 

シュゥゥゥゥと未だに火花を撒き散らし、オラクルは大きくよろけフラつきながらジタバタと暴れている。

 

 

らッララララらららララらラいぃぃいダァアアア!!

 

 

そしてきりもみ状に回転しながら、ゆっくりと地面に倒れていった。

 

 

サいコぉオォォおオぉおぉオォおオォゥぇぁアアアアッッ!!

 

 

爆発。爆発。大爆発!!

オラクルは青い羽を撒き散らしながら爆発四散し、木っ端微塵吹き飛び、完全に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーはつまらない

 

 

一方で、ひとつ、ネタバラシ。

イブによって促され、タケルはゴースト・アダムとイブ魂に変身。言われるがままに信託を発動してみればコレだ。

赤い文字は悪意を綴っている。そして先ほどのオラクルの断末魔。 

つまり――

 

 

「色が違うだけだったんだ……」

 

『フフ、そういう事ですね』

 

 

青も、赤も、なにも変わらない。

赤がプラスだとか、青がマイナスだとか、そんな事ではないのだ。

ただどんな言葉を提示するかと言うだけ。どんな言葉を見せるかと言うだけ。

どんなツイートを調べて、見るかと言うだけ。

 

 

『分かりやすくすれば、こうだろうか』

 

 

アダムが答えを示す。

ゴーストの周りに信託が。神の、人の意見が集っていく。

 

 

仮面ライダーは面白い

 

仮面ライダーはつまらない

 

ライダーってこんなに面白かったんだな。正直ナメてたわ

 

最近のライダーってテンポわるいなぁ

 

 

混ざり合う赤と青。

アダムとイブは口にした。

世界は情報で溢れている。

そして人はかつての昔より、多くの時間が経ち、進化した技術の中で生きている。それは大いなる進歩を齎したが、甘えも齎した。

今も毎日、人は昔よりもより沢山の情報を見ることができる。

 

 

『しかし全ての情報を得る事が正しいのでしょうか? 時には、見たくないものを見ないことを選択すること。どんな言葉が真実なのか、それを見極めること。情報管理は、人に与えられた課題ではないでしょうか?』

 

『それを放棄したとき、人は情報に飲まれ、獣になる。理性を失うことは、自分を見失うことだ』

 

「――でも、生きていたら、見たくない物を見なきゃいけない時もあります」

 

『分かっているじゃないか』

 

「え?」

 

『それが、生きていくと言うことさ』

 

 

目を逸らすのか。

真正面を見るのか。

蜃気楼を追い続けるのか。

それとも、目を閉じるのか。

 

 

『それは、人間が選ぶ道ですわ』

 

 

それは期待するしかないとイブは言う。

 

 

『観測者たちは信じていますよ。多くのヒーローは人間を守るために傷つき、戦いました。そこには確かな理由があるからだと思いたいですね』

 

 

守るだけの価値がある存在なのだと。

 

 

「……がんばるよ、おれ」

 

 

ヒーローとしても、人間としても。

一方で、ゴーストの近くにホッパーが立つ。話を聞いていたようだ。

 

 

「僕は、否定も必要なのかもしれないと思っています」

 

 

もしも今この瞬間、何かを傷つけなければ自我を保てず、壊れてしまうほど苦しんでいる人間がいるのならば。

せめて創作の世界だけで終わってくれるのならば。その痛みは受け入れてもいいと。

 

 

『なかなかそうはいきませんわ。世界を否定すれば、多くの人が傷つく』

 

「それでも――」

 

 

ホッパーの足元にはガーベラの花があった。

怪人に踏まれたのか、ライダーに踏まれたのか、逃げる人に踏まれたのか。グチャグチャのガーベラがあった。

 

 

「僕たちを否定するものがいなければ、僕たち(ライダー)によって傷つけられた者は、救われない」

 

 

その時、ショッカーが拠点にしていたセンタービルの一部が爆発し、砕け散った。

そのから感じる力の波動。気づけば、首領の姿が消えていた。

 

 

「だが、やはり、そうであったとしても……、僕たちは――」

 

 

頷きあうゴーストとホッパー。

二人は走り出し、センタービルに開いた穴を目指した。

 

 

 






オラクルを倒した5人のライダーは僕の中のトップ5です(´・ω・)b


次回、最終回です。
長かったら分割しようかなとは思いますが、たぶん大丈夫かなと。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。