カメンライダー   作:ホシボシ

32 / 34
最終回。
一応一度見直したつもりですが、誤字とかあったらすいません。


最終話 仮面ライダー

 

 

『コーカサス!』『カメンライド』『ゴッドスピードラブ』

 

『アタックライド・イリュージョン!』

 

 

ディエンドは上に向かって複製の力を発動。

すると炎に包まれた大量のケタロスが、魂がどこと共にあるのかを説明大合唱しながら無数に降ってくる。

次々と地面に落ちて爆発するライダー流星群。それらは怪人を次々に爆破し、消し飛ばす。

 

 

『リュウガ!』『カメンライド』『エピソードファイナル』

 

「マンッ! マンモ!?」

 

 

なんとか生き残ったアリマンモスも周りの景色が変わっていく様に驚き、足を止めてしまった。

だからこそ高速移動を行ったディエンドに気づくのが遅れてしまう。

背後に回りこんだディエンドは銃口をアリマンモスの背中に押し当て、引き金をひく。

 

 

「ウグッ!!」

 

 

銃口から発射されたのはアンカーだ。それはアリマンモスの背に突き刺さり、拘束する。

銃を持ち上げると、銃口に張り付いたアリマンモスも上に掲げられる形になる。そのままディエンドは銃弾を発射。

衝撃でアリマンモスの体が空へ打ち上げられた。

 

 

「う、ウゥウ!?」

 

 

だがまあ、これくらいならば。

アリマンモスが安心した瞬間。前から紅蓮の炎が。後ろから漆黒の炎が飛んで来るのが見えた。

叫ぶ。空中なのだから身動きが取れない。叫ぶ。叫ぶ。

 

 

「ま、マンモォオォォォォオオ!!」

 

 

そして着弾。ディエンドコンプリートは劇場再現の力。

エピソードファイナルのクライマックスを飾るドラゴンライダーキックとドラゴンライダーキックの激突に挟まれ、アリマンモスはなす術もなく爆散していった。

カメンライドが解除され、世界が元に戻る。

ふと、ディケイドが見えた。

 

 

「士」

 

「ん?」

 

「使いたまえ」

 

 

カードを投げるディエンド。

ディケイドはそれをキャッチすると、絵柄を確認する。

 

 

「それはもうあげるよ」

 

「あっそ。じゃあ遠慮なく」

 

 

ディエンドが物をくれるなんて珍しい。

何か裏があるに違いない。そんな様子を感じたのか、ディエンドは小さく笑った。

 

 

「勘違いをしないでくれたまえ。この世界に来れたことが、なによりのお宝だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「強がりますね」

 

 

未だ激化する戦いの中、キバはRXに声をかける。

一見すれば余裕でオラクルを倒したように見えるが、そもそもオラクルの信託は心を直接殴る精神攻撃だ。

考え方を変えたから、だとか、精神が強いだとかの話ではない。どんな思いがあれ、どんな心持があれ、心が殴られていることには変わりない。

 

 

「痛いさ。だが――」

 

 

RXは心臓の位置に手を添える。

 

 

「信彦を――、シャドームーンを倒すときに感じる痛みよりは、軽い」

 

「……それをあと何度、繰り返すと思いますか?」

 

「分からない。だが、俺は戦う」

 

「なぜ?」

 

 

なぜだろう。

もしかしたら分からないのかもしれない。それはキバも。

みんな答えを探している。永遠に見つからない答えを。見つけたと思っても変わり続けていく答えを。

 

 

「だが、止まることはない。俺も、キミも」

 

「……ええ」

 

「今は、この胸にある愛を信じたい」

 

 

 

それはRXだけではない。

愛――とは、大きな意味がある。様々な意味が入っている。

自己に向けるもの、他者に向けるもの。言い方を変えれば『甲斐』や『原動力』や『理由』だろう。

自分が、世界がどうでもいいなんて思っている人間はココにはいない。

 

そしてそれは"彼"も同じだ。センタービルの中、赤と黒を貴重とした首領の間。

大鷲の紋章が輝くなかで、1号と首領は拳を交差させる。

打撃音、そして痛み。首領はマントを翻し、1号の視界を奪う。

 

 

「!」

 

 

マントを掴む1号。

だが逆を言えばマントだけだった。そこに首領の姿はない。

すると衝撃。無数の蛇が1号の体に絡みつき、噛み付き、横へ押し出していく。凄まじい力とスピード、1号の体がビルの壁に沈み、埋め込まれた。

見る。首領の頭部から伸びる無数の蛇が、一勢に口の中を光らせていくのを。

烈火が迸ったのはそれからすぐだった。視界を覆い尽くす炎が1号の仮面を白く染める。

 

 

「ライダー――」

 

 

言葉が爆音にかき消された。

センタービルの壁が吹き飛んだのはその時だ。静かにマントを体に戻して佇む首領。

ジッと、見る。ギラリとした目が細くなった。爆煙の中でシルエットが確かに確認できるではないか。

ライダーパワーを発動し一時的に力をあげた1号は、壁から抜け出すと同時に床を転がり、炎を回避したのだ。

 

とはいえそれは紙一重。

1号はふと、真横にぽっかりと空いた穴から、真下の光景を見る。

広場にはまだ無数の怪人が確認できる。そしてそれと戦う無数のライダー達も見える。

 

 

「本郷猛。それはお前の業だ」

 

「……ッ」

 

「お前がショッカーを裏切らなければ。お前が生きる意志を放棄していれば、ここまでの負のスパイラルは生まれなかった」

 

 

9人の男を道連れにして、1号は戦った。

いやそれだけじゃない。移り変わる時代の中で、もはや20をも超える人間たちを地獄に落とした。

異形の姿に変えてしまったのだ。

 

 

「人間の負を今日も、明日も、お前たちが生み出していく」

 

 

首領の目が光った。すると、まるでメデューサに睨まれたように1号の動きが止まった。

そこへ瞬時に蛇が絡み付いていく。不動の首領、動き回る蛇、室内の至る所に叩きつけられるライダー。

最後は首領の目からエネルギー弾が発射され、1号に直撃する。

ダメージに怯む声、そして変身が解除される。

 

 

「――ッ!」

 

 

倒れ、顔を上げる本郷猛。

 

 

「ずいぶん老いたな」

 

 

恰幅はずいぶんと良くなってはいるものの、顔には老いが出ていた。

改造人間とはいえ、機能的な劣化は免れないか。ましてや本郷猛に埋め込んだショッカーの技術は過去のものだ。

 

 

「無様に生を求める心。それが過ちなのだ」

 

 

孤独に破れ、仲間を求めてしまった。

まるでそれは、人間のように。もう違うのにも関わらずだ。

そしていざ、創った。地獄の道連れと解っていて。

 

 

「………」

 

 

別に、否定はしない。

それが、罪を生み出した。

 

 

「本郷さん!!」

 

 

開いた穴からゴーストとホッパーが入ってきた。

一方で入り口の門が開き、鎧武、ディケイド、エグゼイドが姿を見せる。

 

 

「本郷!!」

 

 

ディケイドが叫ぶ。

すると本郷はゆっくりと頷いた。

忘れていた過去を思い出す。ある日、心が折れた。別に特別な理由などない。

倒しても倒しても現れる改造人間。あとどれくらい続くのか、本郷にはさっぱり分からなかった。

そして怪人を倒しても、本郷が知らないどこかで犠牲者は生まれている。ましてやいくら怪人とは言え、自分と同じような存在を殺し続ける恐怖。

終わりなき日々。終わる事のない野望。

疲れた。疲れてしまった。怪人の攻撃を受けて倒れたとき、心が折れる音が聞こえた。

 

 

「―――」

 

 

その時、本郷は視た。

四角い枠の中、不安げな表情を浮かべている子供が。

枠の向こうの景色を見て、本郷は全てを察した。

 

それは一瞬で、気づけば枠は消えていた。

泣きそうな子供の顔はなかった。はじめから無かったのか、それとも――……。

だが、そこで、本郷は、1号は立ち上がった。

 

その記憶は、すぐに忘れた。

それでも、ふと、同じような事があったときに思い出してしまうのだ。

 

 

「ショッカー。俺たちは死なんのだ――」

 

「………」

 

「死ねんのだ。戦いがある限り」

 

 

キィイイイイン!

 

 

「ライダァアアア――……!」

 

 

グラララララァン!

 

 

「変身!!」

 

 

グワオォオォン!

 

 

「トォオウ!!」

 

 

シュルシュルシュルシュル――、ヒュィイイイイイイイイン!!

本郷猛は右腕を左斜めへ突き上げた。そのまま半円を描き、左腕を右斜めに伸ばして地面を蹴った。

ビルの天井を破壊しながら上昇。ベルトの風車が激しく回転し、赤、黄色、青緑の波動が広がっていく。

ビルの上半分が消し飛んだ。そして魂の炎が不死鳥となり、本郷の周りを飛び回る。するとどうだ。夜が、闇が散った。

 

青空の中、本郷の姿が1号に変わった。

そして空中で一回転を行ったとき、不死鳥は1号と融合した。

地面に着地したとき、1号の姿が全く新しいものへ変わっていたのだ。

 

"ネオ1号"。かつてゴーストと共に戦った形態だ。

黒いマスク、赤い複眼、緑の体は現在の本郷猛を彷彿とさせるマッシブさである。

風に靡く赤いマフラーを見て、首領はかみ締めるように言う。

 

 

「……多くの時代が経ち、お前たちは進化を繰り返してきた」

 

 

首領は確信する。

本郷はIQ600の天才だ。だからこそショッカーの技術を理解し、独自に改造手術を繰り返して強化していった。

それは他のライダーも同じだろう。時代がライダーを進化させ、新しい力を。新しい能力を手にしていく。

 

 

「だが結局得てきた力は、他者を傷つける力だ。命を奪う力だ!!」

 

 

殺す力なのだ!

首領は声を大にして叫んだ。

 

 

「お前たちに、平穏は訪れない!!」

 

「――ならばまた、私は拳を振るおう」

 

 

手は握れずとも、その握ろうとした人の手を血で染まらぬようにはできた。

たとえ、自らの手を真っ赤な血で染めてもだ。

 

 

「檻を砕き、自由を求めるため、空へ伸ばしたこの腕で」

 

 

並び立つライダー。

ホッパーは一瞬、1号を見て、そして再び前を向いて拳を握り締めた。

一方でガシャットを取り出すエグゼイド。ディケイドが用意してくれた特別製だ。

 

 

『レッツゴー! 1! 号!!』

 

 

ディケイドはライドブッカーから1号が描かれたカードを抜き取る。

ゴーストはブックメイカーから受け取ったアイコンをかざす。すると絵柄が変わり、1号ライダーが見えた。

 

 

『イチゴ!』

 

 

イチゴロックシードを鎧武は――

 

 

「馬鹿」「アデッ!」

 

 

ディケイドに叩かれ、鎧武は肩をすくめる。

 

 

「へへ、冗談だって。本当は――」

 

 

サガラにもらったロックシードを取り出す鎧武。

すると絵柄が刻まれ、それを開錠する。

 

 

『イチゴウ!』

 

 

そして、変身。

 

 

『ガッチャーン! レベルアーップ!』

『ライダーパンチ! ライダーキック! ライダライダアクション! ゴーッ!』

 

『ロックオン!』『ソイヤ!』

『1号アームズ! 技の1号! レッツ! ゴー!』

 

『カイガン! カメンライダー!』

『アイボウハバイク! ヒッサツハキック!』

 

『カメンライド――』『イチゴウ!!』

 

 

並び立つ1号。

ネオ1号を中心に、彼らはショッカー首領を睨みつける。

 

 

「ムゥウン!!」

 

 

顔中の蛇を伸ばす首領。

 

 

「っしゃ! 俺に任せろ!!」

 

 

無双セイバーを右手に持ち、左手は指を伸ばす鎧武。

 

 

「ライダー! チョップチョップチョップ!!」

 

 

剣と手刀で迫る蛇をバッタバッタとなぎ倒していく鎧武。

刃に触れ、手刀に触れ、蛇たちは千切れ飛ぶ。

そしてその中の一匹をホッパーが掴み取った。彼が司るのは技ではない、力だ。思い切り引っ張ると、首領の足が浮き上がり、引き寄せられていく。

抵抗を。そうは思えどその時体に纏わりつく粒子。ゴーストだ。実体化すると、首領を掴み、そして地面に叩きつける。

 

 

「ライダー返し!!」

 

 

まだだ、叩きつけられた首領へエグゼイドが駆け寄り、キャッチする。

 

 

「ライダーきりもみシュート!!」

 

 

捻りを加えて投げ飛ばす。

そこへ詰め寄るディケイド。

 

 

『フォームライド』『イチゴウ! サクラジマ!』

 

 

カラーリングが変化。

一度咳払いをし、飛び上がる。

 

 

『アタックライド』「『ライダージェット!』」

 

 

文字通り凄まじい勢いで飛び上がるディケイド。

 

 

「オラァアア!!」『アタックライド』『ライダーカット!』

 

 

首領を投げ飛ばす。

1号のパスが続き、そして最終的に待っていたのはネオ1号。

 

 

「ライダーパンチ!!」

 

「ムゥウ!」

 

 

次は首領が壁に叩きつけられる番だった。

並び、構える1号たち。

 

 

「共にいくぞ!」

 

 

ネオ1号の声に皆は頷く。

腕を斜めに伸ばし、複眼を光らせるホッパー。

 

 

『ダイカイガン!』『カメンライダー! オメガドライブ!』

 

 

レバーを引いて必殺技を発動させるゴースト。

 

 

『キメワザ!』『レッツゴークリティカルストライク!!』

 

 

キメワザスロットホルダーにガシャットを装填し、銀色のボタンを押すエグゼイド。

 

 

『イチゴウ・スカッシュ!』

 

 

カッティングブレードを倒してエネルギーを満たす鎧武。

 

 

『ファイナルアタックライド』『イイイイチゴウ!』

 

 

新1号に戻ったディケイド。

 

 

「ライダージャンプ!」

 

 

一勢に飛び上がる1号たち。

首領は目を光らせ、全身にエネルギーを纏わせる。

 

 

「地獄の道連れに貴様達も連れていく……! ワシと一緒に死ね!!」

 

 

赤く発光、点滅を繰り返す首領。

どうやら自爆を行おうとしているようだ。しかしソレよりも前に、ライダー達の足が届いていた。

 

 

「ライダーキック!!」

 

「ヴッ!」

 

 

首領は一瞬で壁に叩きつけられると、直後壁を破壊してビルの真下に落ちていく。

そこで自爆のタイマーが作動したのか、断末魔と共に爆発が起こった。

首領を倒した。それは遠くのほうにいた竜斗たちも確認できた事。

戦いが、終わる。誰もが笑顔を浮かべたのだが――

 

 

『変・身』

 

「!」

 

 

まさか、本当に自爆をしようとしていた訳ではあるまい。

それは1号にも分かっていた事だ。首領はただ体と言う器を放棄しただけにしか過ぎない。

辺りには、アマダムが死んだ際にもれ出た大量のクロスオブファイアが。そしてオラクルが死んだ際に拡散した人の負がある。

それは全て一点に収束。首領が爆発した場所へ集まっていく。もちろん分かっていた。

クロスオブファイア吸収マシーンは、まだ予備があったのだ。

 

 

「そ、そんな……!」

 

 

竜斗は思わず呟いた。

一同が見る場所、そこには轟々と燃える青い炎がある。

その中央には一人のライダーが浮かんでいたのだ。

 

 

「ショッカー首領、それがお前の正体か!」

 

 

1号が指差したのは、『仮面ライダーコア・ショッカーフォーム』。名前はかつてダブルとオーズが戦ったものと同じだが、その背景や姿は変わっている。

まずはサイズ、前回のコアよりも小さく、ライダー達と同じサイズではあるが、それはそれだけ力が密集していることを意味する。

そして複眼。首領が変身したからなのか、サイズはひとつだ。

そしてマフラー。それが炎の蛇になっている。

そして炎の色。オラクルのパワーを吸収しているのか、美しい青に煌いている。

 

 

「――ククク、フハハハハハ!!」

 

「ッ! なにがおかしい!!」

 

「いや、なに、人の悪意に触れたが――、これはこれは」

 

 

信託を発動してみる。首領は数え切れない悪意に接した。

皆、自尊心やアイデンティティの獲得ができずに怯えている。好きなものを直視しているようで、直視できていない。

何が好きかも分からない。そしてそんな生活を送っている間に、負だけが確かに蓄積されている。

 

 

「弱い生き物だ」

 

 

そして轟音、センタービルが完全に崩壊する。

その中から姿を見せたのは――、恐竜だ。

ティラノサウルスが咆哮をあげて飛び出してきた。尤も、肉はなく骨だけ。さらに顔の部分がパックリと割れ、中からは禍々しい髑髏が顔を見せる。

"骸骨恐竜"。もう一度強く、咆哮をあげる。すると水平線の向こう。空に亀裂が走った。

 

 

「我らショッカーは、世界」

 

 

世界のあらゆる所に網を張り、改造と侵略を繰り返していく。

そして進化を繰り返すのだ。それはこれからも続いていく。信託を見て、確信した。

 

 

「かつての大戦、我々はドイツの生き残りだった」

 

 

そしてあらゆる戦争がテクノロジーの進化を促し、なによりも憎悪がショッカーをショッカーであるようにしたのだ。

人は神に近づいた。近づきすぎた。今ならば分かる。コインの表裏一体はライダーとショッカーではない。人間とライダーでもない。

ショッカーと人間なのだ。

 

 

「人が存在する以上、お前たちが望んだ争いのない世界はやってこない」

 

 

コアは骸骨恐竜の背に足を置くと、亀裂を目指して走らせた。

 

 

「人間がいる限り、我らショッカーに敗北はない」

 

 

どうやらあの亀裂は次なる世界への入り口のようだ。

 

 

「だがッ、お前たちの勝利もやってこない!」

 

 

逃がしてはいけない。拳を握り締める1号ライダー。

しかしまだ広場には怪人が残っている。アレを無視してはいけないだろう。

すると、ゴーストが前に出た。

 

 

「本郷さん。おれたちに行かせてください」

 

「……!」

 

 

時間は無い。返事はすぐだった。

 

 

「頼んだぞ。我々も怪人を片付け、すぐに向かう」

 

「はい!」

 

 

ゴーストはディケイドたちを見る。

すぐに頷き、彼らは穴から飛び出すと勢いよく地面に着地した。

 

 

「行くぞ、平成ライダー共。最後の勝負だ」

 

 

頷き、集まるクウガたち。

既にかなり距離が離れている骸骨恐竜。走っても確実に追いつけない。

だが――、彼らは仮面ライダーだ。

 

 

「へへ、やっぱコイツがねぇとな」

 

 

ドゥルルン!

低く、竜が唸るような音が響いた。

 

 

「ふぅん」

 

 

ふと、携帯を取り出すビルド。

 

 

「おいおい、これから戦闘だっつうのに何やってんだよお前」

 

 

電王が詰め寄ると、ビルドは軽くデコピンを。

 

 

「あで!」

 

「よく見てろ。先輩」

 

 

ライオンボトルをセットして携帯を放り投げると、それがバイクに変形。

 

 

「あらぁ」

 

「進化してるだろ? フフフ」

 

 

駆けつけるのは、ライダーたる証明。そして何よりの友であった。

ビートチェイサー。マシントルネイダー。ライドシューター。

オートバジン。ブルースペイダー。凱火。カブトエクステンダー。

サイクロン。マシンデンバード。マシンキバー。マシンディケイダー。

Gハリケーン。ハードボイルダー。ライドベンダー。マシンマッシグラー。

マシンウィンガー。サクラハリケーン。トライドロン。マシンゴーストライカー。

仮面ライダーレーザー・レベル2。ジャングレイダー。ジャングレイダー。マシンビルダー。

 

 

「乗れ! 永夢!」

 

「ああ!」

 

 

エグゼイドを筆頭に、シートの上にライダー達は腰をおろす。

そしてハンドルをしっかりと掴むと、エンジンを思い切り吹かした。

マフラーから魂の炎が吹き出る。男たちは仮面の裏で、一瞬ニヤリと笑った。

しかし対照的に聞こえる泣き声。人の波をかきわけて前に出てくるのは竜斗だ。

 

 

「なんで! どうして!!」

 

 

竜斗は深い絶望に苛まれていた。

1号たちが首領を吹き飛ばし、地面へ叩きつけ、爆散させたとき、竜斗は全ての終わりを確信した。

しかし結果として首領は生きていた。生きて、強化され、竜斗にとっては唐突な技術をひけらかした後、新しい世界などと言う突拍子もない空間を目指そうとしている。

その時、竜斗は気づいてしまった。終わりはないのだ。終わってはくれないのだ。

ブックメイカーが散々と言っていたことが今になって分かってしまった。

 

 

「なんで、どうして! また戦いだ。終わったと思ったのに!」

 

 

重なり合うエンジン音に負けないように竜斗は叫んだ。

声がかすれ、涙で前が見えないからフラつき、倒れそうになった。しかしそれでも地面に手をついて竜斗は前を目指した。

龍騎と一緒に暮らした記憶が蘇る。ツバサは何も言わず、ただジッとファムを見ていた。

 

あれは夢? 違う。

本当だったら当たり前のことだ。

もちろんそこには大きな差はあれど、家族をつくり、一緒に暮らす。

もしくは何かしら仕事をして――、まあ仕事がなくても生きていって。そういう生活こそが『日常』というものだ。

 

 

「ダメだよ! 行っちゃダメだ! どうせ終わらない! もっと酷くなる!!」

 

 

しかしライダー達にその日々はやってこない。

いや、ライダーだけじゃない。世界に触れた、創作世界の中で生きる戦士たちは――

 

 

「やめて、お願いだから行かないで!!」

 

 

ライダー達は首を振るように、またアクセルを吹かした。

進むつもりなのだ。竜斗は泣き叫んだ。その"理由"のひとつが自分であるという事がたまらなく情けなく、どうしても申し訳なくなった。

 

 

「もういいよォ! もう休んでよ!! もう――ッ、いいでしょッッ!?」

 

 

かつて人は未知の世界に夢を見た。苦痛や恐怖を忘れるために世界を創作した。

善行を積んだものは死後の世界で良き場所に行くことができる。

逆に悪い奴は死んでなお、罪を償うための地獄に向かう。

そうやって人は何も無い世界を生きて、終わりの世界に夢を見た。

 

人の想いが神を作ったのだ。

もちろんこの考えは違っているかもしれない。しかし合っているかもしれない。

もはや今の世、これら不確定な情報を裏付けることはできず、人はそれを創造で埋めていく。

とはいえ、過度な創造は概念となり、今にも、未来にも伝わっていく。

いずれにせよ、現在、神はさまざまな派生となり世に伝わっている。ゲーム、アニメ、小説、神をモデルにしたキャラクターは、神を永遠にしていく。

 

 

「いいじゃないか! もう止めてよ!! 神になんてなろうとしないでよ!!」

 

 

仮面ライダーは神ではない。

しかし人は仮面ライダーを神にしようとする。神であってほしいと願ってしまう。

だが先のとおりライダーは神ではない。その矛盾がいつか亀裂を生み、綻びを生み、やがては崩壊へと至らせる。

そのときに苦しむのは誰なのか、竜斗は考えただけでもゾッとした。

暖を取るために、ライダー達に火をつけて燃やす。その火をつける行為を竜斗は行いたくなかった。

なかったのに――……。

 

 

「ごめんみんな!!」

 

 

竜斗の声を掻き消すように、クウガが声を張り上げた。とても疲れたような声色だった。

 

 

「アマダムッ、生まれたの――、俺のせいみたい!!」

 

 

まって、待ってよ。どうして無視するの!

竜斗は声を張り上げるが、クウガは聞いていないようだ。

 

 

「だからッ、とりあえず終わらせるの――、手伝ってもらっていいかな!?」

 

 

全てのライダーが頷いた。

クウガはありがとうと叫ぶ。

 

 

「待って! 待ってよッ! なんで! 行かないで! ここにいてよ! 先生! タケルさん! 弦太朗先生! 永夢先生! お父さん!! マスター! また2017のワザを教えてよ!! それでいいじゃない!!」

 

 

しかし誰も、振り返らなかった。

そしてビートチェイサーの後輪が激しく回転する。火花が散り、地面が削れ、煙が上がる。

刹那、バイクが前に出た。他のライダー達も同じだ。遠くに見える骸骨恐竜の背を睨み、車体を前に。

 

その時、竜斗は敗北を確信した。

震える声で叫んだ。叫んでしまった。

 

 

「ライダー!!」

 

 

全員が振り返った。

クウガは竜斗にサムズアップを浮かべ、消えていく。

 

 

「待ってて、もうすぐ終わるよ」

 

 

誰かも分からぬ優しい声。

竜斗は崩れ落ち、走り去るライダー達の背中をジッと見ていた。

 

 

「いってらっしゃーい! 永夢ゥー!!」

 

「………」

 

 

大きく手を振るポッピーや、無言で見送るカラスアマゾン。

ファムは竜斗の肩に優しく手を乗せた。そして一緒に小さくなっていく背をジッと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「――ッ」

 

 

青空の下、男たちは宿命の道を走っていた。

車が燃えている。人の姿は無い。

道路を並走する男たちは、遥か遠くに見える終わりを睨んだ。

幾度となく繰り返した未体験ゾーン。スピードメーターの針は既に限界地点で震えていた。景色が線になり、吹きすさぶ風は仮面をつけていても冷たく、鋭く、顔を打った。

 

激しい抵抗感。

しかしライダー達は姿勢を低くして、風を切り裂いて進む。

揺れるハンドルをしっかりと握り締め、ただ一点、前だけを見て走る。

ゴーストは一度、ブックメイカーにもらったアイコンを握り締めた。記憶が、想いがフラッシュバックし、交じり合い、眼に映る。

かつての彼は、未来の自分かもしれない。

 

 

「或くんの魂を返せ!!」

 

 

首領はブックメイカーから或の魂を抜き取っていた。

まだ苦しませるのか。あれだけの悲しみを生み出しておいて、もう十分だろ。

もう休ませてあげるべきだ。その想いが、炎が、記憶を共有させる。

遠くに見える亀裂から、黄金の粒子が流れていた。

男たちはただひたすらにスピードを上げた。

邪魔な車を吹き飛ばし、ガードレールを吹き飛ばし、ビルを破壊し、最短で骸骨恐竜を目指す。

 

もう、戻れぬと分かっていて。

もう、帰れぬと理解()っていて。

ビルの隙間から、歩道の間から、まだ逃げていた人々が足を止めた。

駆け抜けるライダー。人を抜け、時に間を縫い、車体を傾け、姿勢を傾け。

子供が、ぽかんと見ている。電王は軽く敬礼みたいなポーズを行った。

光が。炎が輝きを増す。想いが交わり溶ける。ライダーか、怪人か、それとも人か。

誰かが呟いた。『哀れ』だと。

 

 

「―――」

 

 

ブックメイカーとシンクロするゴースト。

神の想いが、人の想いが、自分の想いが、悲しいくらいに重かった。

信託がよぎる。或の記憶がよぎる。人々の姿がよぎる。

僕らの距離感は曖昧で、少しは前に進めたろうか? 痛みを放つ心を抑えて、進む。伸ばした手また解かれて、迷って。

それで見えたものは――……。

 

 

「――ッ」

 

 

世界がスローモーションになる。ゴーストの脳裏に一瞬ブックメイカーがよぎった。

彼と、彼と手をつなぐ少女。そして見えない或。

見つめるキミが微笑む。けれど、どうして泣きそうに笑うのか。正しさを呟けぬ理想は茨に消えてほどけていくのに。

ああ、ああ、竜斗の声が耳に張り付く。またそれがシンクロを加速させる。

 

心を抱きしめてくれたキミ。

ごめんね。僕はまた進むから。

見送る、その背また手を伸ばす。悲しいサイクルだ。

でも後悔は欠片もしていないから、ゴーストはアクセルグリップを捻った。

 

 

「!」

 

 

首領(コア)は気配を感じ、振り返る。

地面を並び、走る。仮面ライダー。

 

 

「愚かだな」

 

 

つくづくそう思う。ライダー達もその言葉は受け入れてやろう。

グルグル同じところを回る。何度も繰り返してる『キミ』は、いつかは終わりが来ると信じてるのに。

 

 

「ォオオオオオ!」

 

 

叫び、アクセルグリップを力の限りまわす。

スピードメーターが限界値をぶち抜き、針はメーターの中を残像が見えるほど高速回転していく。

 

 

「死ぬのが怖くないのか? 無限が怖くないのか?」

 

 

かわいそうな物を見る目で、首領はライダー達を一瞥した。

同じくして振りかえった巨大な髑髏。その口をあけると、巨大な光球を発射してライダー達を狙う。

凄まじい力と光が迫り、ライダー達の仮面を照らす。

 

 

「怖いさ! だから――ッッ!!」

 

 

ライダーの中で、答えが聞こえた。誰かが叫んだ。

 

 

「俺達だけでいい!!」

 

 

もしかしたらそれは『僕』だったかもしれないし、もしかしたら全員が同時に声をそろえていたかもしれない。

少なくともひとつだけ言える事があるのならば、その答えをライダーの誰もが否定することはなかった。

総意――、とまでは結論付けないが、少なくとも今の答えとしては一致していたのだ。

 

ライダー達は吼え、アクセルグリップを限界まで捻る。

止まりそうになる心。引き返しそうになる心。無いと言ったらウソになる。しかし誰もが前に進み、光の先を睨んだ。

悲しみも、苦しみも、全てを振り切って走るのだ。

 

 

「超えなければならない痛みがある!!」

 

 

だからこそ並ぶライダーマシンは光球を突き破り、首領との距離を大きく詰める。

 

 

「グォオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

髑髏が鳴いた。

尾が振るわれ、左右のビルを破壊し、その残骸をライダー達が進む道に振り落とす。

凄まじい瓦礫の数はあっと今に積もり、壁になった。おまけに首領の力で、それは怨念を纏う『岩石』に変わった。

ライダー達の意思を否定するような壁。皆、次々にブレーキをかけてスピードを落としていく。しかし前に出る者もいた。ゴーストだ。

 

 

『グレイトフル!』

 

 

変身。そして加速。

なぜならばおれは、ゴースト。そういわんばかりにゴーストは瓦礫をすり抜ける。

幽霊に岩の壁など関係はない。ゴーストは振り返り、弁慶の鎧を光らせる。

 

 

「ハァアア!」

 

 

ハンマーモードにしたガンガンセイバーを投げる。

回転し、飛来する武器は壁に叩き込まれると幾重もの亀裂を刻み込んだ。そこでさらに加速するトライドロン。

変形を開始し、あっと言う間に『ワイルド』へ。そしてそのまま壁に激突すると、木っ端微塵に破壊した。

 

石片を踏み越えて進むライダー達。曲がり角に差し掛かる。

思い切り身体を倒し、バイクを傾ける。

世界がスローモーションになる。空は晴れているのに、なぜか雨が降ってきた。

冷たい雨が降ってきた。雨粒はすぐに仮面をぬらし、雫が複眼伝い、頬に垂れる。

一メートル前に進むたびに、一メートル異形に近づいていく。

歪に回る世界で、ライダー達は尚も加速していく。

 

 

「ォオオオ!」

 

 

らしくないな。

ライダー達は叫んだ。ノスタルジーを、切なさを吹き飛ばし、間抜けに笑う。

ダメだダメだ。こんなの真面目すぎる。カッコいいじゃないか。

翔太郎はご満悦のようだが、一部のものはカッチリしすぎてて合わない。クサすぎる。

もっと間抜けなほうがちょうどいい。かっこ悪いくらいが丁度いいのだ。

おい、誰か、チンチンでも出しなさい。誰かが叫んだが、見事に全員から無視された。

 

 

「目障りな!」

 

 

そこで首領は鼻を鳴らす。

この期に及んではしゃいでいると言うのか。このバカどもは。

なにが自分達だけでいいだ。あれだけ怯え、恐怖し、怒っていたくせに。

花弁のように分裂したティラノサウルスの頭部から、怨念の力を集合させた光線が発射される。

ライダーたちは左右にハンドルを切り、車体を蛇行運転させることで回避していく。

しかし迫る光線もまた縦横無尽だ。

地面が爆発し、その爆風に飲み込まれて悲鳴があがった。

 

 

「ウォおお!?」「ダハァア!!」

 

 

爆風が体をマシンから引き剥がし、電王とフォーゼは空中へ放り出される。

激しいスピードの中だ。マシンだけが前に出て二人は後方へ向かう形になる。

 

 

「弦太朗! 良太郎!」

 

 

だが後方を走っていたドライブが、トライドロンの左右のドアを蹴り開いた。

瞬時の判断。フォーゼと電王は腕を思い切り伸ばし、ドアを掴んで踏みとどまる。

 

 

「うひぃぃい!」「よいしょ、よいしょ!」

 

 

電王は平泳ぎをするように足を動かして助手席に乗り込んだ。

フォーゼも背中のブースターで体勢を整え、運転席から助手席へ転がりこんだ。

 

 

「二人とも大丈夫か!」

 

「助かったぜ進ノ介!」「おぉ、サンキュ……!!」

 

 

そこでハッと体を動かす電王。

 

 

「こ、こりゃあ――!!」

 

「どうした! モモタロス!」

 

「緊急事態だ! ちょっと今から言う場所に寄ってくれ!」

 

「分かった!!」

 

 

ドライブはハンドルを思いきり切ってドリフト。

ライダー達が直進していくところを左折していく。

一方、ココで一人の少女を紹介しておきたい。バイトガール霧桐さんだ。

前日にフィーバーしすぎた霧桐さんは、目が覚めておはようと時計を見たら夜だった。

あと一時間足らずでバイト開始。すぐにシャワーを浴び、ばっちしメイクを決めて家を出る。

 

なんか、夜のはずなのに青空だ。ウケる。

なんかコンビニとかビルとかめっちゃ壊れてる。ウケる。

バイト先誰もいないし。なんで? ウケる。

とりあえずカウンター立ったけど客誰もこねぇ。ウケる。

ティリリ! ティリリ! ポテト爆揚げ、ウケる。

あ、お客さん来た。ウケる。

 

霧桐さんは小窓まで歩く。

チェーン店の方針で、直接顔を合わせて注文を聞くのだ。このファストフードのドライブスルーは。

 

 

「はい、おつぴこでーす。注文どぞー」

 

 

霧桐さん。窓を開ける。

ドライブスルーにトライドロン、緊急参戦――ッ!

 

 

「えーっと」

 

 

窓が開く、ドライブの前をとおり、窓から顔を出す電王。

 

 

「ワイワイバーガーセットひとつ。あーっと、ポテトは……Lで」

 

「りょ。ドリンクはぁ、どぉすぅ?」

 

「あぁ、オロナミンCとかある?」

 

「マ? ウケる。ただリアルガチでごめんなさい。ウチそれ置いてないんで。かなぴよにさせて、マジで申し訳ないでーす」

 

「あー、じゃあコーヒーで」

 

「おけまるぅ」

 

 

ピシャっと窓が閉まり、トライドロンは支払い所まで進む。

 

 

「820円えーん」

 

「あ、財布ねぇわ」

 

 

フォーゼもギョッとしたように体を探るが、すぐに首を横に振る。

 

 

「え? は!?」

 

 

ドライブも体を探るが、そもそも変身しているので財布なんてある訳がない。

 

 

「あーしの奢りでいいっすよぉ」

 

「えッ、マジ?」

 

「ガチっすぅ。お兄さんたちめちゃメタルゥ。マジウケたんでぇ」

 

「マジ感謝」

 

「うぃー」

 

 

商品を受け取る電王。

トライドロンは出発し、ファストフード店をあとにする。

助手席にいた電王は袋をあけて、あつあつのポテトを取り出した。

 

 

「ふぅう、腹減ってたんだよ」

 

 

口のところに持っていくが――

 

 

「あれ? おろ? あ、そっか仮面してるから食えねぇんだ」

 

「………」

 

 

ドライブは車を運転しながら思う。

 

 

 

 

な ん だ こ れ

 

 

 

 

「フィリーップ! 進ノ介たちはどこに行った!?」

 

 

無人で走るバイクを見て、ディケイドが叫んだ。

 

 

『ドライブスルーだ! バリューセットを頼んでる!!』

 

「分かった! 戻りしだい殺せ!!」

 

 

ディケイドは怒号を上げながら車体を旋回させた。タイヤがこすれ、スレスレをエネルギー弾が通過する。

このクソ大事なときに何をやっているのか! 血走った目を開いてイライラとグリップを捻っていた。

いや、まあ気持ちは分かる。だがお腹がすいていたのだ。仕方ないのだ。

それになにもそれはマイナスだけを齎すワケじゃない。トライドロンの車内、ふと電王がドライブを見る。

 

 

「そういえば、進ノ介だったよな、名前」

 

「ああ。それが?」

 

「………」

 

 

沈黙。電王はフォーゼを見る。はて、どこかで聞いた名だが。

 

 

「………」

 

 

フォーゼも沈黙。進ノ介。進ノ介。シンノスケ。しんの――

 

 

「あ」「あ」

 

 

クロスオブファイア、覚醒。

 

 

『しんちゃんオン!! ほっほー!』

 

「!」

 

 

なんだかへんてこりんな電子音が聞こえ、一同は後ろを見る。

すると空を飛行してくるトライドロンが見えた。ライドブースターを装備しているが、なによりも車体の上には巨大な顔がある。

 

 

「は?」

 

 

アストロスイッチ・『しんちゃん』

かつてフォーゼが嵐を呼ぶ幼稚園児から受け取った代物だ。

それを使用することで、ブースターしんちゃんが出現。トライドロンを抱きしめるように装備されている。

 

ブースターしんちゃんは対象のサイズによって大きさを変更でき、トライドロンにあわせて巨大化している。

一見すれば見た目は子供だが、下半身の部分がまるごとブースターになっており、そこからジェットのようにエネルギーを放出して装備者に爆発的な加速を与えるのだ。

ブリリリリリリリリ! 音は最悪だが、加速力とトップスピードは装備前とは比べ物にもならない。

現にトライドロンは一同から遅れていたにも関わらず、合流、いやむしろ一同を追い抜き、骸骨恐竜を間近に捉える。

 

 

「………」

 

 

無言で手を前に出す首領。するとバリアが発生し、トライドロンを打ちはじいた。

空中を回転し、トライドロンは地面に着陸。しんちゃんブースターも同時に消滅していった。

 

 

「おう、食うか」

 

「いらん!!」

 

 

窓からハンバーガーを伸ばす電王。ディケイドは一蹴しているが、それを後ろでビルドが見ていた。

 

 

「やれやれ、本当に変なのばっかりだな」

 

「お前もいずれこうなる」

 

「ご冗談を」

 

 

ふと、顔を上げると光球があった。

一瞬。だから避けられない。着弾、爆発。

 

 

【T】『(ベスト)(マッチ)!』【G】

 

 

『天空の暴れん坊ーゥ! ホークガトリング!!』『完成(イェーイ)!』

 

 

爆炎をオレンジ色の翼が切り裂いた。

変身時のエフェクトで攻撃を防いでいたビルドは、バイクのシートを蹴って空に舞い上がる。

ガトリングガンからは銃弾が無数に発射、それらエネルギー弾は一つ一つが鷹の形となり、翼を広げて標的を追尾する。

 

 

「………」

 

 

とはいえ首領は無言でバリアを張り続けて抵抗を行う。

ならばとビルドホークガトリンガーに手をかけ、銃口を回転させる。

 

 

『10!』『20!』『30!』『40!』『50!』

『60!』『70!』『80!』『90!』『100!』『フルバレット!!』

 

 

グラフが骸骨恐竜を囲むように出現。球体状のエネルギーが標的を拘束する。

だが骸骨恐竜は一瞬でそれを破壊すると、何事も無かったかのように進行を続ける。

だがそれで必殺技が終わるわけではない。ビルドが引き金をひくと、ホークガトリンガーから100発の弾丸が発射され、首領を狙っていく。

当然それを結界で受け止める首領。しかしライダーはビルドだけではない。攻撃によって徐々に骸骨恐竜との差が縮まってきた。

もう照準には入っているのだ。

 

 

「ハァアアアア……!!」

 

 

黒い闇が湧き上がり、雷が迸る。

クウガはアルティメットフォームへ変身。

手を前に出すとパイロキネシスが発生し、骸骨恐竜の全身が、首領の全身が炎に包まれた。

だが首領は不動だった。当然か、既に青い炎に包まれている。さらに骸骨恐竜もまるで水を払うように全身を震わせて炎をかき消した。

とはいえダメージを与えれば僅かに減速させることを一同は見逃さなかった。首領が次なる世界へ到達する前に倒さなければならない。

 

 

「ムゥウン!」

 

 

首領が手を振るうと無数の光弾がライダー達に向かって降り注ぐ。

エンジン音と爆音がシンクロする。オメガはジャングレイダーを右に移動させる。

前輪を光弾が掠り、激しい抵抗感を感じる。それだけではなく光弾が着弾すれば当然爆発が起きる。

激しい爆風はハンドルを容赦なく奪い、右に曲がったつもりが左に移動しなければバイクが倒れてしまう。

それが次々に来る。少しでも気を抜けば吹っ飛ばされそうだ。

ましてや敵の攻撃は防ぐか回避か、その上でコチラが攻撃を行わなければならない。

チャンスを伺う。皆、虎視眈々と。

 

 

「ウッラアアアアアアアア!!」

 

 

マグネットステイツになったフォーゼはバイクを運転しながらキャノンを乱射。

電王はガンフォーム。ダブルはヒートトリガーと、とりあえず今はそれぞれ飛び道具を使いながら攻撃を仕掛けていく。

その中で体を伸ばし、ミサイルのように加速するビルド。ついには恐竜戦車を目の前にして、その背中に着地する。

 

 

「続くぜ! なでしこ! 流星!」

 

 

既にソル体となって待機していたのか、マシンマッシグラーのマフラーからニュルリと銀色の液体が飛び出してきた。それはすぐに人型となり実体化。

 

 

「愛と!」

 

 

仮面ライダーなでしこはフォーゼの右に現れ、手を伸ばす。

 

 

「友情の!」

 

 

仮面ライダーメテオはフォーゼの左に現れ、手を伸ばす。

 

 

「スリープラトン! 行くぜ変身ッ!!」

 

 

その手を掴み取るフォーゼ。メテオ達が交じり合い、メテオなでしこフュージョンステイツに変わる。

マシンマッシグラーのシートから飛び上がり、両手のロケットを噴射、銀色の光をあげながら恐竜戦車へ近づく。

さらになでしこオン。スキー板が装備され、地面をスライド、そのまま尾に飛び乗り、背中を駆け上る。

 

 

『ブッ飛びモノトーン! ロケットパンダ!』『完成!』

成分解放(レディーゴー)!』『ボルテック・フィニーッシュ!』

 

 

再びグラフが首領を拘束する。

無駄な事を。そうは思ったが、そこで感じる気配。

フォーゼが見えた。右手のロケットを融解させ、再構成、クローモジュールに変える。

 

 

『LIMIT BREAK!』

 

 

フォーゼのロケットが首領のシールドに直撃した。

そこですぐにビルドも合流。二つのロケットがシールドを崩そうと前進する。

忌々しい。腕を振るう首領だが、感触は無い。フォーゼたちはすぐに移動を開始し、もう一方の手ある爪でシールドをガリガリと削っていく。

 

 

「………」

 

 

だが首領の心に焦りは宿らない。

首にマフラーがごとく巻きついていた蛇が目を光らせる。

すると首領の頭部周りに炎の蛇が二体出現、炎の大蛇はそのまま空中を這い、フォーゼとビルドの頭部にかぶりつく。

 

 

「!」「!」

 

 

大蛇は顎に力を入れる。

ゴギリと音がして、二人の頭部が噛み砕かれる。大量の血が飛び散り、仮面の破片が落ちていく。ダラリと手足が力なく垂れた。

仮面ライダーフォーゼと、仮面ライダービルドは、蛇に噛み砕かれて死亡した。

 

 

『HYPER・CLOCK OVER』

 

「!」

 

 

蛇が、ビルドの頭にかぶりつく。

が、しかし噛み砕けない。顎にありったけの力を入れるが――

 

 

『輝きのデストロイヤー! ゴリラモンド!』『完成!』

 

 

その輝きは炎には塗りつぶされない。

大蛇とて、ダイヤを砕くことはできない。

一方でビルドはゴリラの豪腕を振るい、大蛇を掴んだ。力を込めると炎がちぎれ、蛇は消滅する。

 

そしてもう一方の蛇はそもそも手ごたえすらない。

フォーゼは後ろに飛んでおり、メテオギャラクシーを操作して土星の輪を飛ばす。

さらにここにはチェンソー、スパイク、シザーススイッチの力も込められ、切断能力が上昇している。

それを証明するように輪が蛇に触れると、次々に切り裂き、輪切りにしていった。

 

 

『RIDER KICK!』

 

「!」

 

 

首領の背後に出現するハイパーカブト。

発光する脚はバリアを砕き――、そこで止まった。首領が伸ばした腕がカブトの脚をしっかりと掴んでいたのだ。

グッと力を込めるが、なにもおきない。首領はそのままカブトを下へ投げ飛ばすと、ビルドとフォーゼを睨み、指を鳴らす。

すると空間に爆発が生まれ、ビルド達を吹き飛ばした。体が浮き上がり、意図していない方向へ引っ張られる。地面を見ているのか、空を見ているのか分からない状況。

ただ信じているのはチラと見えた相棒だ腕を伸ばすと、ハンドルの感触があった。

それをグッと掴み、シートへ飛び乗る。

 

 

「潰れよ!!」

 

 

首領が吼える。

するとそれに合わせて骸骨恐竜が足を振り上げた。

巨大な影がライダー達を覆う。すぐに左右に移動していくライダー達だが、中心部にいたオメガはそうもいかない。

結果、加速。姿勢思い切り低くして全速力で駆ける。

 

――が、間に合わない。だがオメガは冷静だった。

後輪を跳ね、車体を上げると、シートを思い切り蹴って跳躍。加速の勢いを味方にして超高速で空を疾走する。

結果、骸骨恐竜の足が地面についたとき、破壊されるのはジャングレイダーのみだった。

バイクは魂の炎で生成できる。とはいえ、地面についたオメガは衝撃で地面を転がっていく。

 

 

「!」

 

 

だがそれを抱き上げるものが。ネオだ。

 

 

「……ありがとう。千翼」

 

「うん――ッ!」

 

 

少なくとも、今は。

二人は頷くと、骸骨恐竜を睨んだ。

エネルギーエフェクトが迸る。オメガはニューオメガへ変身。クローをロードするとそれぞれ骨の突起に引っ掛け、飛び移る。

そこで気づく。いつの間にか周囲の世界が荒野に変わっていた。

察する一同。世界にはきっと層がある。その一層を超えたのだろう。

つまり別世界が近づいている証拠だ。このまま移動を続ければやがては別世界に。

その証拠に遠くに見えていた亀裂が徐々に近づいているのが分かる。

 

時間はあまり残されていない。

加速をしたのはGだ。全身に赤いエネルギーを纏い、残像を残しながら前に出て行く。

 

 

「お見せしよう。熟成された、魂の炎のフレーバー!」

 

 

思い切り腕を振るうと、赤いカーテン状のエネルギーが放出され骸骨恐竜に直撃する。

 

 

「よーし、俺もいくぞぉ! 鬼神覚醒!」

 

 

響鬼はアームド響鬼に。

骸骨恐竜の尾に飛び乗ると、荒れた山を駆け上るようにダッシュ。そして音撃鼓を押し付け、音撃棒を叩き始めた。

波紋が広がっていく。音撃が身に染みて悲鳴をあげる髑髏。

首領はすぐに響鬼を止めようと移動を開始するが、そこでアマゾンズが妨害に走る。

 

それを合図に轟音が走った。地面を突き破り出現したのはリボルギャリー。

すぐに展開し、ダブルは後部を換装、ハードタービュラーとなり、空を疾走。上空からの攻撃へ。

さらにオーズもバイクをトライドベンターへ強化。野獣の咆哮と共に骨へ飛びついていった。

龍騎はサバイブに変身と同時にファイナルベント。ドラゴンファイアーストームが飛来するエネルギー弾を次々に破壊していく。

クウガもバイクをゴウラムと合体。ビートゴウラムはその角で骨にぶつかっていく。

おっと、キバはブロンブースターを装備。カブトはエクステンダーをキャストオフ。

 

さらにドライブに至ってはトライドロンの真横にRXのライドロンが並走してくる。

そこで龍騎がストレンジからのユナイトベントを発動。完成する大型車両、トライドライドロン。

それぞれ爆発的な加速力でそのまま飛び上がり、骸骨恐竜の足へ突っ込んだ。

 

 

『スキャニングチャージ!』

 

 

アシストにプトティラコンボに変身したオーズが必殺技を発動。

強力な冷気が骸骨恐竜の足元を襲う。そこで加速するサイクロン。乗っていたホッパーはシートを蹴ると、複眼を光らせた。

 

 

「タアアアアア!!」

 

「グォオォォォォォ!!」

 

 

ライダーキックが膝横を打つ。

流石に足にダメージを受ければ堪えるのか、骸骨恐竜の動きが大きく鈍った。

ここが好機と次々に体へ飛び移っていくライダー達。あるものは生身で、あるものはバイクに乗って。

ゴーストやウィザードはイグアナやドラゴンを使って尚も攻撃をしかけている。その中でエグゼイドは声を荒げる。

 

 

「レーザー!」

 

「どうした永夢!!」

 

「マキシマムゲーマーになっていいか!?」

 

「………」

 

 

グシャー!

最大級のパワフルボディに押しつぶされ、貴利矢、死亡。

 

 

「ダメ「わかった!」『ゥレベルマーックス!!』

 

「なにが! ちょまて! なんで聞いた!!」

 

 

レーザーが吼える中でエグゼイドは飛び上がり、レベル99へ。

そのままシートの上に落ちてくる。さよなら、俺。

レーザーは自らの肉体が大きなパワードアーマーくんに潰されるのを――

 

 

『高速化!』

 

 

エグゼイドは地面に着地するとエナジーアイテムを獲得。

そのままレーザーを掴んで上に持ち上げると、ダダダダダと音を鳴らしながら地面を高速で駆け抜ける。

 

 

「………」

 

 

パワードアーマーくんに掴まれているレーザー。

え? これなんかコレッ、え? これでいいの? 自分このままでいいの? バイクなのに掴まれて運ばれてるけどいいの?

そんな自問を繰り返しながらも、意図を理解する。

そうか、そういうことか。数は多いほうがいいものな。周囲ではライダー達が恐竜の背にあがり、首領にはじかれて落下を繰り返している。

 

 

「っしゃ! 俺達もいくぜ永夢!!」

 

「ああ!」

 

 

マキシマムゲーマから排出されるエグゼイドと、ターボとなって跳躍するレーザー。

二人は恐竜の脚にしがみつくと、そのまま上に駆け上っていく。

 

 

「ようし! 俺も行くぜ行くぜ行くぜェエ!!」

 

 

尾に距離を詰める電王。

そしてシートを蹴り、思い切り腕を伸ばした。

直後、電王は地面に直撃する。

 

 

「あらー!」

 

 

掴むのを失敗すると悲惨だ。

猛スピードのバイクから投げ出されたのと変わらないのだから、地面を凄まじい勢いで転がっている。

生身だったら肉の塊になっている頃、しかしこんな時でも身体の中では煽り合いなのは電王だからこそなのか。

 

 

「もうなにやってんのさ先輩! 僕に任せてよ」『ROD・FORM』

 

 

立ち上がった電王はすぐにロッドを振るい、糸を飛ばした。

それは尾の先端にヒット、すぐにリールを引き戻して電王は尾にとびついていく。

 

 

「ウッオォアアアアアア!!」

 

 

とはいえ、首領に近づく前に炎の蛇が立ちはだかりライダー達を弾き飛ばしていく。

蛇はまもなくレーザーとエグゼイドに迫る。どうするのか、揺れる恐竜の背なかではうまく身動きが取れない。

 

 

「よし! いい手を思いついたぜ永夢!」

 

「ッ、どういう手だ!?」

 

「こうするんだよ!」

 

 

回し蹴り、それはエグゼイドの頭部を捉え、打ち倒した。

 

 

「いッ! な、なにするんだレーザー!」

 

「決まってんだろ。裏切るんだよ!!」

 

「はぁ!?」

 

 

倒れるエグゼイドを尻目に、レーザーは一直線に首領の前に。そして跪き、頭を下げる。

 

 

「なんのつもりだレーザー」

 

「ハッ! 私めを崇高なショッカーの一員にしてもらいたいと思いまして!」

 

「……ほう」

 

「なんでもいたします! ライダー達が隠しているとっておきの情報もお渡しします」

 

「信用しても、良いのだな」

 

「もちろ――、ってんなワケねぇだろ! 永夢!!」

 

「!」

 

 

レーザーの頭上から跳んでくるのはエグゼイド。

蹴りは本当に当てるだけの程度の威力だった。それで気づいたのだ、お得意のフェイクだと。

だからこそレーザーが気を引いている間に、エグゼイドはチャンスを――

 

 

「って、ウゴォオ!?」

 

 

エグゼイドは背中に違和感を感じたかと想うと、そのまま骨の上に叩きつけられる。

なんだ? エグゼイドが顔を上げると再び衝撃が。

レーザーがエグゼイドの腰を思い切り蹴り、骨の上から振り落としたのだ。

 

 

「うぐあぁああああ!!」

 

 

落下していくエグゼイドをレーザーは冷めた目で見ていた。

 

 

「ハッ、乗せられちゃった?」

 

 

エグゼイドの背中にあったのは針と糸。

歩いてくるのは仮面ライダー電王・ロッドフォーム。

 

 

「首領の隙を作るというのがウソなのさ」

 

「そゆこと」

 

「貴様ら……」

 

 

ショッカー首領の前に並ぶレーザーと電王。共に頭を深く下げ、忠誠を誓う。

 

 

「首領。僕たちは賢い生き物です。ライダーよりも首領の方がお強い」

 

「まったくもってその通り。だから――」

 

 

ヒュンと、風を切る音。

 

 

「乗せられちゃった?」「釣られてみる?」

 

 

さらに裏切り。

レーザーと電王は共に回し蹴りを行い、首領の首を狙うが――、足を、蛇が食い止める。

 

 

「愚かな奴らだ」

 

 

首領の中にあるオラクルの力が、クロスオブファイアが、なによりもハーメルンを作り上げた際の情報が脳にはある。

ウラタロスが、貴利矢がどういうキャラクターなのかは分析済みだ。いまさらココにきてショッカーになろうとするタマではない。

その程度ならばここまで苦しんでいるものか。

 

 

「消え去れ! 仮面ライダー!!」

 

 

首領は蛇を出現さえ、それを鞭としてレーザーや電王を振り払う。

蹴られ損じゃねーか! 叫ぶエグゼイドごと、まとめて焼き払うことにした。

荒野に凄まじい爆発が巻き起こる。視界の全てが炎で埋まり、爆音が、大地が地面から剥がれる音がライダーの悲鳴さえもかき消していく。

 

 

「!」

 

 

だが、再び爆発が巻き起こった。

それは爆発を吹き飛ばすための爆発。炎はライダー達を守るように。

仮面ライダークウガは空に手を伸ばしていた。パイロキネシスがライダー達を守る。

その時、世界が変化した。亀裂が近づき、世界の融合が近づいためだ。

 

それは荒野とは似ても似つかぬほど幻想的で美しい場所だった。

地球にも同一の場所がある。ウユニ塩湖だ。地上と天空が反射し、融合している。

その美しい世界が、ライダー達の魂に燃料を注ぎこんでいく。

そうだ、美しいのだ。世界は歪だが確かな美しさを持っている。

その美しさを、汚してはいけない。だからこそライダー達は再びバイクの上にしっかりと座り、アクセルグリップを捻る。

そのしぶとさに、首領は同情を。哀れみを。そして確かな怒りを覚える。

 

 

「無駄だ。お前達の戦いが終わることはない。報われる日は来ないのだ」

 

 

なのにクウガは、目を光らせる。

 

 

「また戦いか……。そう思った事は、何度もある」

 

 

いつか、終わると信じていた。

そう思ってどれくらいの時間が経ったのだろう。

 

いつか、報われると思っていた。

そう思って、どれくらいのものを奪ったのだろう。

 

変わり変わる歴史の中で、変わらないものを探していた。自らを縛る十字架を忘れるために。

クウガの脳裏に被害者達の顔写真が連続で焼きついていく。

3万人以上が死んだ事実は一生その背中に刻み込まれる。多くのものを失った。今もきっと――。

それでも、得た筈なんだと信じたい。

その中にある確かな、希望を。

 

 

「でも、下じゃなくてさ、上を見ちゃうんだよ。そしたらさ、空が青いんだ!」

 

 

クウガはテレポートで首領の前にやってくると、拳を打ち込んだ。

炎を纏う拳を、首領は炎でできた掌で受け止める。

拳を、蹴りを、クウガは全力を乗せて繰り出す。かつてダグバと殺しあったときのように、悲痛な声をあげて。

 

しかし対照的に、空は驚くべきほど青く澄んでいた。

戦うのは悲しいが、それでも空は青かった。たくさん楽しい思い出を作ったときと同じだ。

いろいろな国を旅したときと同じだ。見知らぬ人と肩を組んで酒を飲んだときと同じ色だった。

クウガは再び拳を振るった。

青空が笑うから。

 

 

「ハアアアアアア!!」

 

 

拳を受け止めた首領だが、気配を感じて真横を見る。

そこには飛行するマシントルネイダーに乗ったアギトが。シャイニングフォームの紋章が二つ現れ、アギトはそこへ飛び込んでいく。

 

 

「眼であるにも関わらず、まだ虚構の希望に縋るのか、アギトよ」

 

「人の選択肢(じゆう)を守るために戦うのがライダーです」

 

 

否定は受け入れよう。

否定ができる世界を守るために戦おう。

それが良いことなのか悪い事なのかを決めるのは、神々(ニンゲン)の問題だ。かつてテオスが選んだ道を翔一もまた辿ろうとしている。

しかれども、いやだからこそ彼は吼えた。

 

 

「誰も、人の未来を奪うことはできない!!」

 

 

アギトはまっすぐに足を伸ばした。神に与えた未来。

 

 

「!」

 

 

蛇をかき消すシャイニングフォームの輝き。

同時にクウガは雷光迸る蹴りを繰り出した。二つの足は首領の両腕でガードされるが、それでも確かな衝撃とダメージを与える。

そして空に見えた龍。背に乗った龍騎はドラグバイザーツバイの銃口を輝かせる。

龍騎の隣にはジェットパックを使って飛行しているファイズが。同じく銃口を真っ赤に光らせている。

 

 

「城戸真司! 乾巧! 滅びに向かって歩くのか!!」

 

「俺は――ッ! 生き残る! どんな戦いが待っていたとしても、必ず生きて、みんなを救ってみせる!!」

 

「ああ。何度死んでも、必ずハッピーエンドに変えてやるぜ!」

 

 

生きてく甲斐は希望(いのち)

守りたい夢がある。

二人のライダーは希望を胸に炎を、(あか)を発射した。

左右に跳ぶクウガとアギト。一方でエネルギーの本流は首領を包み込む。

 

 

「眼として生きて、呪いを知った!」

 

 

10、J、Q、K、A――!

空中に並んでいくラウズカード。

 

 

「だが今ならば分かる!」

 

 

赤い文字が、人々の笑顔が頭に浮かんだ。

そのために戦ったのは、神の意思なのかもしれない。

しかし少なくとも、自分の意思でもあった。神の想いを託されたことは、決して呪いではなかった。

愚かな人間もいる。ならば見せてやるのだ、王たる証明。

 

 

「ライダーが俺を選らんだのではない! 俺がライダーを選んだのだ!」

 

 

切り札は剣だけ。

 

 

「清き心! 鍛えた体!」

 

 

鬼の文字が浮かび上がる。

剣に炎が宿り、そのリーチが何倍にも触れあがっていく。

 

 

「俺が鬼になったのは、もう二度と弱さに折れないためだ!」

 

 

清め音、響かせて。

 

 

「そのために歳を取った今も鍛えてる! 恥ずかしくない男でいる為に!」

 

 

今更ウジウジしてたら、それこそ一年間付き合わせた少年達に申し訳がない。

 

 

「そんな背中は晒せない。鍛えてますから!」

 

 

響鬼は思い切り炎の剣を振るった。

放たれたエネルギーを切り裂き、炎の刃は骸骨恐竜を切り裂いていく。

同じくして振ってくるブレイド。黄金の刃が鋼鉄よりも硬い骨を切り裂いた。

 

 

「お祖母ちゃんが――、いや、俺が言っていた」

 

 

鎧が展開する。凄まじいエネルギーが銃口に宿る。

仮面の裏で笑う。ただ笑う。今更な話など遅すぎる。ああ、やはり――

 

 

「俺が全て正しい」

 

 

ついてこれるか、俺に。

 

 

「俺が――、正義」

 

 

エネルギーの嵐が骨を吹き飛ばす。

しかしバラバラになった骨は一つ一つが意思を持ったように浮遊。

同じく空中に浮き上がった首領の手の動きにあわせ、槍となって飛来していく。

 

 

「目に見えないところでいつも僕たちは何かに支配されている」

 

 

サイクロンが跳んだ。骨に当たり、粉砕する。

粉々になった骨の欠片は、雪の結晶のようにキラキラと。

 

 

「それでも、心は自由だ」

 

 

美しきモノのため。

ホッパーがハンドルを掴みながら足を振るう。蹴りがまたひとつ、骨の欠片を粉砕した。

 

 

「ゴチャゴチャ難しい事とか関係ねーんだよコッチは」

 

 

思う。

記憶繋いだ絆。

 

 

「楽しければいいんだよ」

 

 

虹色の刃が次々に骨を粉砕して回る。

 

 

「俺達のクライマックスは続くぜ、どこまでもな」

 

 

つまらねぇなら、俺達が楽しくしてやるよ。

それくらい思っていたほうが楽でいい。

 

 

「ひとつ、疑問があります」

 

「聞こうか。紅渡」

 

「貴方は一体、神なる世界の向こうに何を視るのでしょうか。世界を支配して、その先に何を望むのですか?」

 

「究極の支配は世界を取ることだ。全ての世界がショッカーの意のままに操られる。つまり、我らが新しい神となる」

 

 

宿命の鎖を壊せ。

キバは時間の無駄だと飛び回り、口から放つレーザーで骨を塵にしていく。

 

 

「お前らの野望が、俺達を生み出した!」『アタックライド』『テレビクゥン!』

 

 

世界を壊す意思は。

 

 

「破壊の理想が、お前らの野望を壊す!!」

 

 

ディケイドコンプリートフォームの周りに出現していくライダーの幻影。

クウガからキバまでを引きつれ、ディケイドは飛び蹴りを繰り出した。

 

 

「受け取ってもらおう、僕の――、正義と悪のマリアージュ!」

 

 

そしてその中にはGの姿もある。

正義と悪の交差。元は操られるだけの傀儡が、自由の翼を広げて空へ舞い上がった。

今もそうだ。自分の意思でココにいる。戦っている。前に進んでいる。

 

 

「スワリングッ! ライダーキック!!」

 

 

そこで爆発が起きる。粉々に砕け散る骸骨恐竜。

否。それは破壊ではなく、ただの形態変化だ。バラバラにされたのではなく、バラバラになったのだ。

骸骨恐竜は不要になった肉体をパージし、全てのエネルギーを頭部の髑髏に集中する。

 

脳天に立つ首領。

骨の花びらからは先ほどとは比べ物にならない威力の破壊光線が発射され、ライダー達を爆撃していく。

 

 

「もう一度言う」

 

 

炎の中で首領は目を細めた。

首に巻きつけた蛇の中には或の魂がある。それを少しずつ、溶かし、知識を得ていく。

 

 

「お前達がいる限り、世界に平和は訪れない」

 

 

神の世界では、今日もまたライダーが原因で争いが生まれている。

扱いが悪い。愛がない。馬鹿にしている。これが一番。あれは下の下。繰り返す憎悪を背中に受けて戦い続ける。

下らない想いを胸に、下らない一人遊びを続けていく。

 

 

「この私が、お前達のようなモノに負けるワケがない! ライダーに負ける筈がないのだ!」

 

「ライダーなんて、そんな高尚なモンじゃねぇよ……」

 

「なに?」

 

 

爆炎を吹き飛ばし、サイクロンジョーカーゴールドエクストリームが姿を見せる。

 

 

『ショッカー首領、キミこそライダーに縛られている。世界に縛られている!』

 

 

スカルとか、ダブルとか、アクセルとか。まして1号とか。

別にそんな素敵なモンじゃない。誇りは持っているが、縋るつもりはない。

大切なのは、その中身。魂だ! たとえライダーではなくとも、愛する街を守る。

 

 

「その想いが、俺達をここまで引っ張ってきた!!」

 

「……!」

 

「ショッカー首領! いや、俺たちの前にいるお前!!」

 

 

翔太郎とフィリップの声が重なる。

 

 

『さあ、お前の罪を数えろ!!」

 

 

風を纏い、ダブルは首領を目指す。

しかし髑髏の周りに結界が発生。ダブルのキックは強力なバリアに阻まれる。

 

 

「いいなぁ、決め台詞かぁ、みんなあるもんなぁ!」

 

 

時間停止を繰り返し、オーズは首領の周りを駆ける。

 

 

「あ、でもおれにも一個あったか」

 

 

スキャニングチャージ。

必要なのは、明日の欲望だけ。

 

 

「ライダーは、助け合いでしょ!」

 

 

スーパータトバのキックも結界を打つ。

競り合いの中、オーズは叫んだ。ライダーは助け合い。いやまったく仰るとおりではないか。

だがそれは、ライダーでなければならないのか?

いや、そんな事はない。そんなワケはない。助け合えるのは人間も同じだ。

人間だからこそだ。

 

 

「だから今、おれ達は人間として戦う!!」

 

 

ライダーを脱ぎ捨てようじゃないか。

 

 

「宇宙ゥウウ! キタァアアアアアア!!」

 

 

それに呼応するようにフォーゼが二つのロケットで突っ込んでくる。

 

 

「友情にライダーもライダーじゃねぇも関係ねぇ!」

 

 

友情は永遠に。

 

 

「人間は見た目じゃねぇんだ、自分の中にどんだけ熱い想いがあるかだろ!!」

 

 

結界が揺れ始める。

フォーゼのクロスオブファイアの源、その奥底にあるのは友情だ。

 

 

「フォーゼは俺の最高のダチだ!」

 

 

いや、いや、それは違う。その本質、さらに奥、それは如月弦太朗ではないか。

 

 

「つまり、俺じゃねぇ!!」

 

 

ディケイドが行ったライダーシャッフル。あそこに答えはあった。

飛来してくる黄金の龍。ウィザードは高速回転する爪を結界に叩き込む。

 

 

「さあ、ショータイムだ」

 

 

最後の希望を手に。

 

 

「ウィザードじゃない――」

 

「!」

 

「俺に怯えろ、ショッカー首領」

 

 

バキン! と、音が鳴る。結界に亀裂が走った。

力を込め、首領は結界の強度をさらに高める。いやそれだけじゃない、無数の炎の蛇を出現させてウィザードたちを食い殺そうと試みる。

だが直後、蛇たちの体中に突き刺さる槍や刀。

 

 

「ショッカー首領! 俺はアンタをゼッテェ許さねェ!!」

 

 

戦いの果て、極み上る乱世に。

そして神になった。しかし鎧武ではない。

神になったのは仮面ライダー鎧武ではない、葛葉紘汰だ。

 

 

「ここからは葛葉()紘汰()のステージだ!!」

 

 

さらに衝撃。

エネルギー弾と化したトライドロンの上に乗っているのは、タイプスペシャル。

 

 

「脳細胞がトップギアだぜ! ひとっ走り付き合えよベルトさん!」

 

『了解だ。一気に加速するぞ!!』

 

 

ふと、首領はドライブと目があう。

ドライブが仮面の裏で笑っているのが見えた。

 

 

「神の意思だからか、それは知らない。だが俺は結果的にライダーを捨てることになった!」

 

 

駆け抜ける正義感。

 

 

「だが刑事は捨てなかった! 刑事である事は捨てなかった!!」

 

 

いい人間も悪い人間も見てきた。

 

 

「悪意は過ちだと信じてなきゃ! 刑事なんてやれるかよ!!」

 

 

亀裂が広がっていく。

そこへ飛び込んでいく無限大。魂、燃やすこと。

 

 

「人間の可能性は無限大だ!!」

 

「!」

 

「命ッ、燃やすぜ!!」

 

 

ゴーストの蹴りが止めとなり、結界は粉々に破壊される。

 

 

「「ォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」

 

 

そこで咆哮が重なる。食うか、喰われるか。生きたいと願うから。

オメガとネオはただひたすら野獣のように叫び、首領と髑髏を切り裂いていく。

そこで飛来してくる無敵の光。

運命、変えてやれ。その想いが足に、心に宿っている。

 

 

「全ての運命はオレが変える!」

 

「――ん」

 

「ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!!」

 

 

首領と髑髏を包み込む大量のヒットエフェクト。

しかしそれだけだ。エフェクトは大量に浮かびあがっているのを見ると、ダメージは受けているようだが首領はまったく仰け反らず、不動のままにライダー達を睨みつけていた。

 

 

「下らん。とことん下らん!」

 

 

所詮、記号的な言葉を並べただけだ。

それらしい台詞を並べ、正義や善意などと言う埋め込まれた思考プログラムを口にし、それが真実と信じて動く。

創作物の愚かさや。全ては神に操られた身と知りながらも、神に生み出され、神に否定されながらも、まだちっぽけなものに縋り、本心と信じる答えを口にする。

 

 

「貴様らは亡霊だ! 悪意で生まれた善意を語る亡霊なのだ!!」

 

 

最大級のエネルギーを解き放つ。

首領ですら身震いするような神なる世界のエネルギーをも込めて。

大地が揺れる。世界が爆発していく。ライダー達は悲鳴をあげ、吹き飛んでいく。変身が解除されて地面をすべる。

何度見た光景だろうか。だから知っている。だから分かっている。

いっそ笑え。馬鹿だと笑え。

それでも、負けないでと声が聴こえた。

 

 

「アンタには空虚な言葉に聴こえても――」

 

「!」

 

 

一番初めに立ち上がったのは、桐生戦兎。

 

 

「俺には、ありがたい言葉に聞こえたけどね」

 

 

クウガの信念、心の内を聞いたとき、魂が揺さぶられた。

ビルドは、仮面の裏でクシャっと笑う。馬鹿みたいな奴らがいっぱいだ。

だがそれが、どこか嬉しく。安心した。

 

 

「俺も、これからたぶん――、まあ面倒な事が起きるんでしょうよ……。うんざりするね」

 

 

それでも彼らのように、苦しくても、辛くとも。

逃げるとしたら――、前に逃げ続ける。

創作される道。戦兎は取り出した二つのボトルを降り始める。

クウガを見て、知りたいと思った。そしてそれに続くように戦うライダー達の背を見て、知りたいと思った。

 

だから、ついつい成分をちょこっと頂いてしまう。

そしてできあがったボトルは二つ。一期と、二期。

 

 

『カメン!』『ライダー!』【K】『飛・蝗(ベストマッチ)!!』【R】

 

 

ビルドドライバーのレバーを、ひたすらに強く回す。

 

 

「別に難しい話じゃないだろ」

 

 

チューブがそれぞれの変身者に届き、成分を注入していく。

 

 

「愛しているモノがあるから――、傷ついても折れない」『覚悟完了(アーユー・レディ)!?』

 

 

誰もが、また、声を合わせる。

 

 

「変身!」『永遠のヒーロー!!』

 

 

ラビットタンクになったビルド。それぞれもまた、基本フォームへと変わる。

 

 

『カメンライダー!』『完成(イェーイ)!!』

 

 

愛があるから自己犠牲を選び続ける事ができる。

今も、これからも信じている。ライダーの記憶があれば、人は間違いに気づける。間違っていると声を出せる。

そして、苦しんでいる人たちに手を差し伸べることができる。

それを、見てきた。

 

 

「戦う理由としては十分だ」

 

 

ラビットの力で跳躍。

真上にあったのはレンガブロックだ。それを破壊すると、一つのエナジーアイテムが出現する。

巨大化。ビルドの姿が文字通り、巨大化し、髑髏とそう変わらないサイズになる。

 

 

「ちょっとくすぐったいんだろうな!」『ファイナルフォームライド』『ディディディディケイド!!』

 

 

ディエンドから受け取ったカードを発動。

変形し、空を疾走するディケイド。ジャンボディケイドライバー、それは巨大化したビルドの腰にやってくるとビルドドライバーを消滅させて変わりに装着。

 

するとビルドの姿が、"ディケイドコンプリートフォーム・ジャンボフォーメーション"に。

さらにシンクロするようにして全てのライダーがカードとなり、ディケイドの胸に収まっていく。

クウガからビルドまで。それが紡いできた歴史と言うものだ。

ヒーローを求める心が生み出した結晶なのだ。

 

 

「譲るぜ、映司!!」『フォームライド』『オーズ――』

 

 

モザイクに包まれるディケイド。

そして、エネルギーが迸る。

 

 

『タカ!』『イマジン!』『ショッカー!』

 

 

更なる(タカ)みを目指す創作(イマジン)は、人々に衝撃(ショッカー)を与えるだろう。

 

 

『ターマシー! タマシー・タマシィー!』

 

『ライダァアアアアアアアア――ッ! (ダマシイ)ッッ!!』

 

 

全てのライダーの魂を一点に。

オーズが手を合わせると、空間に巨大なエネルギーが発生していく。

一方で髑髏が咆哮をあげる。怨念を集中させ、首領は特大のエネルギー波を発射した。

 

 

「ハァアアアアアアアアアアア!!」

 

 

一方で魂を投げるオーズ。剛速球で投げられた魂は、エネルギーを引き裂いていく。

 

 

「これが、おれ達の感情。魂だ!!」

 

 

映司が叫んだ。

一度無くしたからこそ分かる。これほど尊いものだったとは。

そして魂が髑髏に直撃したとき、その周囲にクウガからビルドまでのライダークレストが拡散する。

 

 

「セイヤァアアアアアアアアアア!!」

 

 

オーズが腕を外から内へ払うと、全ての紋章が収束し、髑髏に直撃する。

悲鳴が聞こえた。髑髏は粉々に崩壊し、上に乗っていた首領は地面へ落下していく。

 

 

「ンン゛ッ!!」

 

 

地面を転がり、立ち上がる首領。

その時、唸るようなバイクの音が聞こえた。駆けつけた昭和ライダー達。

全ての怪人を倒して約束どおりやって来たのだ。

 

 

「そこまでだ、ショッカー!!」

 

「――ッ」

 

 

バイクから飛び降りる1号たち。

気づけば、首領の周りには多くのライダーが立っていた。始めは一人だった仮面ライダーは、今はもうこんなにも。

そしてその志は、同じ方向を見ている。

 

 

「ゴキブリ共が……!」

 

「違う。飛蝗(バッタ)だ! 貴様がそうした……!」

 

 

強く、指を刺す1号。

そして一同を睨み、強く頷いた。

 

 

「行くぞ、ライダー達よ! 全ての力を、魂を合わせるのだ!!」

 

 

ライダーパワー全開。

その言葉と共に、1号は腕を斜めに振り上げた。

 

そして2号も同じく、変身ポーズの最後。拳を握り締めて肘を曲げる構えを。

 

V3は右肘を曲げ、右手でVの字を作り、左は右の肘に添える。

 

ライダーマンは両肘を曲げ、腕を広げた。

 

エックスは左手を開いて前に突き出す。

 

アマゾンは両腕を広げて腰を落とした。

 

ストロンガーは人差し指と中指を立てて、天に突き出した。

 

スカイライダーは右手を握り、腰へ。そして左手を斜め前に突き上げる。

 

スーパー1はファイブハンドを変える際の構えを。

 

ゼクロスは変身ポーズのはじめ、腕を交差させる構えを。

 

RXは拳を名乗りの最後、グッと握り締め、肘を曲げる構えを。

 

シンは両手を開き、口を大きく開いて天を仰ぐ構えを。

 

ZOは右手をゆっくりと斜めに払い、そして一気にファイティングポーズを。

 

Jは文字通り、手でJを模した構えを。

 

クウガは左手はベルトに添えて右腕を前に伸ばす構えを。

 

アギトはクロスホーンが展開し、キックの〆を飾る構えを。

 

龍騎はファイナルベントの構えを。

 

ファイズは手首を振る動作を。

 

ブレイドはラウザーを突き立てる動作を。

 

響鬼は敬礼の様にシュッと手を振るう。

 

カブトは天をさすポーズを。

 

ホッパーは腕を斜めに思い切り伸ばした。

 

電王は名乗りを上げる時の構えを。

 

キバは両手を広げるポーズを。

 

ディケイドは一度手を叩き合わせて、構える。

 

Gは変身後、『G』のエネルギーを放出する際の構えを。

 

ダブルは相手を指差すポーズを。

 

オーズは腰を落としてファイテングポーズを。

 

フォーゼは両腕を思い切り広げる構えを。

 

ウィザードは指輪を見せて腕を真横に伸ばした構えを。

 

鎧武は腰を落として大橙丸の峰を肩に置いた。

 

ドライブはドライブは右手を開き、左手で右手首に触れた。

 

ゴーストは印を切る。

 

オメガは腕を広げ腰を落とす。

 

ネオは前かがみになり、今にも飛びついていかんとのポーズを。

 

エグゼイドはレベル2になった時の動きを。

 

そしてビルドは、勝利の法則が決まったときの構えを行った。

 

全てのライダーの複眼が光り輝き、ベルトから凄まじい光が放たれる。

魂が共鳴し、全員の声が重なった。

 

 

「オールライダァアアア! シンドロォオオオオム!!」

 

 

ベルトの前にライダークレストが出現し、それがまたベルトに吸い込まれていく。

虹色の旋風が巻き起こった。その風に乗り、ライダー達は地面を蹴る。

 

 

「オールライダー! ジャァアアアンプ!!」

 

 

虹色の光を纏いながら空へ昇る戦士達。

一方で首領は叫んだ。すると空間の至る所からライダーと同じ数、つまり37体の蛇が姿を見せる。

 

 

「オールライダーッッ! キィイイイイイイイイックッッ!!」

 

 

流星群のようにライダーキックが振ってくる。

電王だけ蹴りではなく剣を構えて降っていく(本人曰く個性)が、そこへ食らいついていく蛇たち。ライダー1人に一体の蛇。

炎の大蛇は次々にライダー達をせきとめ、競り合いを開始する。

 

 

「トォオオオオオ!!」

 

 

唯一、1号の蹴りだけは、蛇を破壊し、突破することができた。

だがそれは終わりではない。首領自らが大鷲の紋章を広げ、1号のライダーキックを受け止めた。

 

 

「ッッ!!」

 

 

力を込める1号。

だが紋章はビクともしない。他のライダーも持てる力を最大に振り絞り、最終形態に変身して競り合いを始めるが炎の蛇は喰らいついてくる。

 

 

「無駄だ! 真理の力に触れた私の前に、お前達の魂などッ! 通用せぬわ!!」

 

「グ――ッ!!」

 

虚像(フィクション)のために戦う創作物めらが! それを知って、勝つ道など選べるものか!!」

 

 

力を込め続ける1号。

しかし結界に亀裂は走らない。むしろ押し出されていくのを感じていた。

 

 

「もはやお前達は神に見放されたのだよ!」

 

「構わん!!」

 

「!!」

 

 

叫ぶ1号。ただひたすらに叫ぶ。

 

 

「我々は、人間の自由と平和のために、戦い続ける!!」

 

「無駄だ! 気合でなんとかできるものでは――」

 

『ダイカイガン!』

 

「ッ、なに!?」

 

『オレ! オメガドライブ!!』

 

 

その時、オレンジ色の光を足に纏わせ、ゴーストが1号の隣に並んだ。

結界に叩き込まれる足裏。するとどうだ、大鷲の紋章に確かな亀裂が走った。

その時、首領は思わず声を荒げてしまう。

 

 

「なんだ? なぜだ!?」

 

 

現れたのはゴースト。ムゲンではなく『オレ』だ。

にも関わらず結界に亀裂を入れる? ありえない。たとえ1号の力があったとしても、それはありえない事なのだ。

ましてや、そもそも蛇はまだ破壊されていないはず。

その時、時間が止まったような気がした。首領は固まる。なぜならば視線の先には、蛇と競り合う仮面ライダーゴーストが見えたからだ。

 

 

「貴様――ッ、何者だ!!」

 

 

その時、首領は思わず胸を押さえた。

取り込んだ魂が、燻る。

この感情は――、拒絶。蛇と競り合うゴースト見た瞬間、魂が揺れ動く。

 

 

「或の――ッ、ではアレは! アレはッッ!!」

 

 

声を震わせ、その男の名を叫んだ。

 

 

「おのれ――ッ、ブックメイカァアアァアア!!」

 

 

蛇と競り合うゴーストは、"ブックメイカー"。

死ぬはずだった。死んでもよかった。終わりを望んでいた。しかし――、悲しいかな。まだどうしてもひとつ。

たった一つだけ、遣り残したことがある。それだけが背中を押してくれなかった。腕を掴んで、引き戻しやがる。

だから、生まれてしまった。クロスオブファイア。罪の十字架。瞬きをするアイコンは、最後の形を作り出した。

 

 

「それが!」

 

 

1号の隣にいたゴーストが叫ぶ。

 

 

「仮面ライダーゴースト・"オレタチ魂"だ!」

 

「!」

 

 

叫ぶ、叫ぶ。

魂の咆哮をあげて、蛇と競り合うゴーストは力を増していく。

 

 

「首領! 或だけは――ッ、その子だけは解放するッッ!!」

 

「ヌォオオオ! 貴様ァアアア……ッッ!!」

 

 

ヒーローは、一度死んで、蘇る。

 

 

「この物語の幕は――ッ、僕が降ろす!!」

 

 

自分で撒いた種だ。最後のエゴを貫こう。

永遠に続くとしても、それでも終わらせなければならないものもある。

 

 

「歪んだ悪意と、歪な世界に――ッ、決着をつけるぞ!!」

 

 

未練を引きずって、醜く戻ってきて、存在をすり減らしながら抗う。

 

 

「命……! 燃やすぜッッ!!」

 

 

燃えカスになるまで、最後の塵のひとつになるその時まで、ブックメイカーは力の放出を止めはしない。

まもなく本当に、存在のひとつ消え去るとしても構わなかった。

最後の最期で、最高の自己犠牲を選べることを喜ぼう。

 

そしてその一方で、もう一人のゴーストは違った。

最高の後ろ向きを選んだ男の前で、最低の前向きを選んだ男がいた。

命を燃やし、灰になろうとする男の前で。命を燃やし、その炎で前に進む力を見出した男がいた。

否定に心を刺し貫かれ、存在の業に身を焼かれながらも、前に進んだ男がいたのだ。

 

ショッカー首領。

そしてブックメイカー最大の誤算は、確実に消え去ると見くびっていた男――!

 

天空寺タケルが最大の障害となった事だった!

 

 

「おれも――ッ」

 

 

2号、V3、ライダーマン、エックス、アマゾン、ストロンガー、スカイライダー、スーパーワン、ゼクロス、RX。シン、ZO、J。

 

 

「彼らと同じ――!!」

 

 

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド。

G、ホッパー、オメガ、ネオ。

ダブル、オーズ、フォーゼ、ウィザード、鎧武、ドライブ、『ゴースト』、エグゼイド、ビルド。

 

そして、仮面ライダー1号!

 

 

「仮面ライダーだッッ!!」

 

 

その叫びが、結界を貫いた。

 

 

「テヤァアアアアアアアアア!!」

 

「グアオォオオォオォオアッ!!」

 

 

ゴーストと1号のライダーキックが首領の胴体に突き刺さり、さらには他のライダー達も蛇を粉々にしてみせる。

首領の体は反射する世界を何度も回転しながら吹き飛び、そして凄まじい水しぶきをあげながら地面を滑っていく。

 

 

「………」

 

 

動きが止まり、それはすぐだった。

首領が、フラつく身体で立ち上がる。鎧は粉々になり、蛇は消え去り、白い顔に血走った目が見開かれていた。

 

 

「戦いはッ、終わりはしない……!」

 

 

震える人差し指で、天を指し示す。

 

 

「し――、神なる世界こそ――ッ、究極の……! クロス、オーバー……」

 

 

ありとあらゆる世界がたどり着く場所。

そこに交わる想いは、必ず影響を与え、拡散していく。

生み出された悪意は、消えることなどない。

 

 

「ひ、ひ、人は――ッ、日々、我々ショッカーに近づいていく……!!」

 

 

その想いがある限り、ショッカーは不滅だ。

 

 

「私は、不死身だ……!!」

 

「だったらまた、潰す!!」

 

「ムゥウ……!!」

 

「どんな野望でも、必ずおれが、おれ達が止める!!」

 

 

頷く1号。ゴーストも頷き、声を張り上げた。

 

 

「仮面ライダーの意思は、永遠に不滅だ!!」

 

「ふ、フフ――ッ、ハハッ!!」

 

 

首領は目を見開き、ゴーストを、天空寺タケルを激しくにらみつけた。

 

 

「覚えておこう。仮面ライダー。いや平成ライダー。どうやら我々は……! キミたちを見くびっていたらしい……! 特に――、ゥウウウ゛ンッ! 特に、お前、天空寺タケル――ッッ!!」

 

 

首領の体に亀裂が走り、そこから凄まじい勢いで光が漏れる。

ひとつ、ふたつ、崩壊はあっと言う間に。まさか高校生(こども)に負けるとは。つくづくライダーと言うのは、人間と言うのは――ッッ!

 

 

「だがッ、忘れるなよライダー! ショッカーもまた、はじまりは人間だということを!!」

 

「……!」

 

「我々は、我々になるのだ! その時まで……! フフフ、ハハハ……! フハハハハハハハハハハハハハッッッ!! ワーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァアアア!!」

 

 

大爆発が巻き起こる。

首領は最期の時まで大声で笑い、散っていった。

世界が崩壊していく。遠くに見える亀裂が消えていく。

 

 

『サンキュー、タケチャン!』

 

 

天空寺タケルは振り返ってライダー達を視る。

ゴーストは、自分ひとりだった。

"オレアイコン"で、変身したタケルは、深く、深く、息を吐いた。

心臓は動いている。安堵でドクンドクンと強く鳴り響く鼓動は、生きていることを教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街が見渡せる丘、そこにライダー達は立っていた。

そこに1号や、他の昭和ライダー達の姿は無い。

 

 

『我々を認めぬ神も、花を踏まない心はあるだろう』

 

 

次なる悪意が待っている。彼らはそう言って、バイクを走らせた。

むろんそれは他の平成ライダー達も同じだ。もうこの世界でやるべき事はない。

ショッカーは、怪人は滅んだ。ならばライダーは異物でしかない。ここにはいてはいけない存在なのだ。

 

だがそれでも、燃えるように紅い夕日が照らす世界は、あまりにも美しい。

せめて今は、このほんの少しの今だけは、仮面を捨てようではないか。

ある者はゴトッと音をたてて地面に落とし、ある者は大切そうに抱えながら、男達はマスクを取り、素顔を晒した。

体は鎧に包まれたまま。異形のまま。クロスオブファイアがマスクを剥離させ、男達の素顔を晒す。

風が吹き、男達の髪を揺らした。

 

 

"かつて、勇敢に悪意と戦った男達がいた"

 

 

翔一は唇だけ吊り上げていた。瞳はまっすぐに夕焼けを睨んでいる。

ヒビキは嬉しそうに微笑んでいた。だがどこか少し、寂しげだ。

翔太郎とフィリップはクールに笑ってみせる。

進ノ介はベルトさんと街を交互にみて笑っている。

 

 

"かつて、人生を戦いに捧げた男達がいた"

 

 

巧は眩しそうに表情を歪め、遠くを睨む。

良太郎は胸に手をあてて真剣な表情を浮かべている。

士は少々意地の悪い、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

悠は眉をひそめ、戦いの終わりを感じていた。

 

 

"かつて、自由になるために戦った男達がいた"

 

 

天道はニヒルに笑っている。

タケシは夕焼けの美しさに見惚れているようだ。

映司はかみ締めるように少しだけ微笑んでいる。

 

 

"かつて、雄雄しく絶望と戦った男達がいた"

 

 

五代は泣きそうに笑っていた。サムズアップを浮かべる。それは自分に投げるもの。

晴人は飄々とした笑みを浮かべている。

紘汰は遠くを見ている。いろいろな犠牲を思い出しているのだろう。

 

 

"かつて、信じる誠のために戦った男達がいた"

 

 

真司は何かを覚悟したようにゆっくりと息を吐いていた。

剣崎は無表情で、目線を少し斜め下に。

渡は真顔で遠くを見ている。

永夢はこれからの事を思い、寂しげに目を細めている。

 

 

"かつて、愛のために戦った男達がいた"

 

 

ゴロウはいつの間にかグラスを取り出しており、紅い液体を揺らし、眺めている。

弦太朗は満面の笑みを浮かべ、腕を組んで仁王立ちだ。

タケルは儚げな笑顔を浮かべている。

千翼は一度目を閉じ、そしてゆっくりと開いていた。

 

 

「行こうか」

 

 

そして、桐生戦兎はこれからの事を想い、今はただ笑っておいた。

男達はノスタルジーに笑い、泣きそうになり、今はただ足を前に出す。

横一列に並び立つ男達は目を閉じた。そして目を開けたとき、ライダーシンドロームを行う際に取ったポーズを今一度。

すると一瞬で、落ちていた筈の仮面が。抱えていた筈の仮面が頭に装着される。

夕焼けに照らされた男達の影は、紛れもなく人ではなかった。

遠くのほうで子供が母親に抱きしめられている光景が視える。

仮面ライダー達は、それだけで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

踏切があった。

無音。夕暮れの世界で、竜斗はぼんやりと遠くを見つめていた。

 

 

「見送りが俺で良かったのか? 城戸のヤツとか」

 

「城戸真司さんは、お父さんじゃないよ」

 

「おお。そっか」

 

 

ヒビキは竜斗の背中をさする。そして同じく小さく笑い、遠くを見る。

 

 

「先生だったな、俺。どうだった?」

 

「うん。優しくて、いい先生だった」

 

「お。嬉しいね」

 

 

竜斗はぼんやりと夕焼けを見つめていた。

なんだろうか。このかつてない程の安堵と、疲れと、切なさは。

憧れのライダー達にあれだけ会えたのに、満たされているはずなのに、どうしようもなく寂しい。

遠くのほうにデンライナーが見えた。あそこにツバサも加古も乗っている。アレに乗って竜斗は自分の世界に帰るのだ。

では隣の先生だと思っていた人は?

 

 

「また、戦いに行くの?」

 

 

この言葉が全てだった。

全ての寂しさと焦燥の理由。するとヒビキは笑ってしまうのだ。

 

 

「ああ。応援しててくれよ。シュ!」

 

「……どうして」

 

「困っている人がいるからさ。だから竜斗、もしも困ったことがあったら、俺たちを思い出してくれ。俺たちを忘れないでくれ」

 

「それが戦いを創るのに?」

 

「俺たちの守ろうとしたもの、戦おうと決めた理由が消えるよりはいい。それにもう俺達は俺たちだ。生まれた時点で、終われないのさ」

 

 

仮面ライダーに終わりはない。終わりはこない。ヒビキは言う。

 

たとえライダーが死んでも。

 

たとえライダーが消えても。

 

たとえ最終回が来ても。

 

たとえ脚本家が変わっても。

 

たとえ監督が、脚本家が、原作者が、俳優が、関わる何者かが死んでも、犯罪を犯して逮捕されても。

 

たとえ何らかの理由で二度と創らないと言っても。

 

たとえシリーズが終了しても。

 

たとえライダーなんて無かったと公式が発表しても。

 

たとえボロクソに叩かれても。

 

一度、その目で視た限り、心にある限り、今日もどこかで彼らはバイクを走らせる。

今日もどこかで正義の仮面は回り続ける。

 

 

「だから、覚えておいてくれ。大切なものの為に戦った、俺たちのことを」

 

「忘れないよ、絶対に」

 

 

誰かが物語を紡がなければならない。永遠に生き続ける、英雄を。

竜斗はデンライナーの入り口に立った。

ヒビキは笑みを浮かべて火打ち石で火花を生み出す。

切り火。神聖な炎で魔除けやお払いを意味する行動である。竜斗のこれからが良き日であるようにを願うと同時に――。

もう二度と、彼がライダーの戦いに巻き込まれぬように。

彼らは見ているだけでいい。そう想い、ヒビキは踵を返して歩き出す。

 

 

竜斗は――、竜斗だと思っていた少年は、病室で目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

ブックメイカーは白い世界を歩いていた。

ベンチを過ぎ、停留所を素通りする。ひたすらに歩き、深遠を目指す。

白が深くなってきた。それでも歩く。自分の意思で歩いているのか、強制的に足が進んでいるのか、それは分からないが――、別にどちらでも良かった。

 

 

「!」

 

 

ブックメイカーはふとあるモノを見つけて、立ち止まる。

何もない世界で、一人の少女が体育座りをしていたのだ。

何もない世界なのだから当然やることもなく、だから少女はとてもつまらなさそうな表情を浮かべている。

とはいえ、少女はブックメイカーに気づいたのか。パッと笑顔を浮かべて立ち上がり、駆け寄っていく。

 

 

「―――」

 

 

思わず、ブックメイカーは口を開いた。少し大きめに開く。

その母音の形――。いけない、少女は人差し指でブックメイカーの唇を押さえ、言葉を遮断する。

 

 

「ッ」

 

 

ブックメイカーは怯み、止まる。

少女から一歩距離をとると、小さく言葉を放つ。どんな表情を浮かべていいのか分からない様子だった。

 

 

「待っててくれたのか。キュルキラ」

 

「……フフ。遅すぎよ? ブックメイカーちゃん」

 

 

ツインテールを揺らし、キュルキラは背の裏で腕を組む。

歩き、ブックメイカーの周りをゆっくりと回り始めた。

 

 

「……おぼえてる?」

 

「何を?」

 

「いろんな世界を回ったこと」

 

「まあ、それは……」

 

 

いろいろと情報を集めたり、拠点にしたり。

 

 

「キュルキラちゃん。あの世界が印象に残ってる。ほら、桜と紅葉が一緒にあったじゃない」

 

 

覚えていた。

その世界は季節感がよく分からなかった。満開の桜を眺めていたら紅い太鼓橋を隔て、向こう側には欠片の桜もなく、かわりに真っ赤な紅葉が見えた。

キュルキラも流石にあれにはテンションが上がったと言う。現にその時、彼女は隣にいたブックメイカーの手をとり、橋の上に走った。

戸惑うブックメイカーに構わず、両手を握り、向かい合い、フィギュアスケートみたくクルクル回る。

思い出す。目に紅葉が映ったかと思うと、すぐに桜に切り替わった。舞い落ちる桜の花びらが地に落ちるまえに、ひらひらと落ちる紅葉が見えた。

そして目の前に、笑顔のキュルキラがいた。

 

 

「……すまない」

 

「どうして謝るの? あなたは自分の意思で、この道を選んだんでしょ?」

 

 

それはそうだ。

或のため、そして自分のために、ライダーの仮面を捨てた。

間接的にも、直接的にも命を奪ったことがある。『仕組み』を知った以上、心はそれほど痛まなかった。

日々膨れ上がる恐怖と憎悪を感じ、自分の歩んできた道を塗りつぶしていった。

過去の自分が見れば否定する行動を、自ら進んでやった。

 

 

「でもそれは、貴方がそうしたいと思ったからでしょ。本当はこんなことしたくなかったなんて言わないでね。たとえ今がそうだったとしても、過去は否定しないでね」

 

「………」

 

「どんな存在になっても、どんな犠牲を払っても――」

 

 

キュルキラは振り返り、笑顔を浮かべる。橋の上で見た笑顔と同じだった。

 

 

「それでも戦う道を選んだんでしょ? だったら、誇りなさいよ」

 

「――ああ」

 

 

ブックメイカーは確かに頷いた。キュルキラも頷く。

 

 

「だからキュルキラちゃんは、ブックメイカーちゃんに協力してあげたのよ」

 

 

とはいえ、もう終わりだ。

稲妻が迸った。そこから姿を現したのは、金の光を纏う『天使』。

鎧の胸部には獅子の顔が、正面から見て左肩には角を持つ牛。右肩にはワシの顔があった。

そして頭部はその三つの生き物を融合させた頭があった。背には四つの翼があり、鎧の中には『手』をイメージさせる装飾品がたくさんと見える。

息を呑むブックメイカーとキュルキラ。会うのは初めてだったが、その見た目から該当する人物が思い浮かぶ。

 

 

「ケルビム……!」

 

『はじめましてブックメイカー』

 

 

"ケルビム"。

観測者とは視るもの。世界の仕組みで言えば、『眼』と『上位観測者』の総称だ。

その観測者は珍しい存在かもしれないが、それでも総数でみれば少なくはない数がある。

それを纏める組織もあり、そこには当然序列のようなモノも存在しているのだ。

その上に立つのが、今まさに姿を見せたケルビムだ。

つまり、観測者のリーダーとも言える存在。

 

 

『私が何故ココに来たのか、キミには分かるね』

 

「ああ」

 

『観測者機構はキミの行動を許すワケにはいかない。我々は視る者ではあるが、そこに秩序があるからこそ成り立つものだ』

 

 

もちろん秩序を守ることを考えればある程度の干渉は、やむなし。

だからこそ観測者機構は『眼』と言うシステムを編み出した。

野次を飛ばすだけではなく、そこにアクターを入れる。しかし監督ではない。ブックメイカーはそれを忘れ――、いやわざと過度な干渉を行い続けた。

眼を利用し、自らが舞台に立ち物語をかき乱す。

 

 

『とはいえ、キミは観測者ではない。天城或こそが真の観測者。広い目でみれば、キミもまた眼なのだ』

 

「或を観測者にしたのは、アンタか?」

 

『いや、そうではない。観測者を選ぶのは世界だ。私もそこには一切の干渉を持ってはいない』

 

 

世界の意思を尊重しつつ、調和を求める。

今もこうしている間に世界は生まれ続けている。中には他の世界を『模造』する世界があり、それは要観測対象だ。

この世界はどうか? フム、危険なところだ。

 

 

『キミの干渉は眼ゆえに見逃すとしても、神なる世界の情報を開示したことは罪深い』

 

 

アレは絶対隠しておかなければならないシステムだ。

世界の禁忌を創作にとって重要なキャラクターに教えるのは穏やかなことではない。

 

 

「そうしなければならない――、理由があった……!」

 

『――フム』

 

 

顎を触るケルビム。観測、観測、完了。

 

 

『件の、天城或か』

 

「腐ったシステムのせいで巻き込まれた」

 

『確かに気の毒だが――、世界の意思だ。無辜な者が巻き込まれることは世界の目でみれば珍しいことではない。紛争地帯では感情なき銃弾に幼子が撃たれ、先進された世界においても災害や事故、悪魔のルーレットに選ばれることはある』

 

「容認するのか……?」

 

『世界は優しいが、残酷な面もある。私はただその意思を尊重したいだけだよ』

 

 

ケルビムは掌をかざす。するとそこに輝く魂が出現した。

 

 

『ショッカー首領が取り込んだ或の魂だ。キミ達が首領を倒したことで解放された』

 

 

ケルビムはそれを地面に置いた。

 

 

『もはや自我はなく、厳しい言い方をすれば失敗作だ。とはいえ彼もまた観測者のカテゴリに入ることには変わりない。そしてブックメイカー、キミは立場上は眼であるが、代理として動いてきたのは事実である』

 

 

全ての責任は、或にある。

 

 

『放置はできない。責任には、相応の罰を』

 

「!」

 

 

ケルビムの手に、炎の剣が出現する。

 

 

「なにをする!」

 

『この魂が利用されるのは防がなければならない。ましてや、このまま彼を観測者として存在させることは私としても心苦しい』

 

「だったら――」

 

『選ぶのだ。ブックメイカーよ』

 

「!」

 

『それがお前の最期の選択になる』

 

 

剣を振るうと、白い世界が炎で包まれた。

世界はオレンジ色に染まり、炎はブックメイカーやキュルキラ、なによりも落ちた魂に燃え移る。

痛みは――、無い。熱も感じない。むしろ苦痛よりも穏やかな気分にさえなる。だがこの炎は紛れも無く本物だ。

 

 

『我が炎が全てを焼き尽くす。それはもはや魂さえも、世界さえも』

 

 

全ては無になる。

なくなれば、世界の調和は保たれる。

 

 

『その最期が良きものであるように、私は祈っているよ』

 

 

ケルビムは消え去った。

炎は、膝辺りまで肉体を侵食していく。

 

 

「!」

 

 

思わず、ブックメイカーは魂を拾い上げた。

そして必死に纏わりつく炎を払おうとする。なんとか纏わりつく炎は消え去ったが、果たしてそれで何になるのだろうか。

炎は視界の全てにある。どこに行こうが関係はないだろう。

馬鹿ではない。今までの会話から、或の魂はいかなる場所にも逃がすことはできないだろう。

ならば、もう……。ブックメイカーはただ魂を持ったまま立ち尽くした。

手の力はなくなっていき、魂を落としそうに――

 

 

「!」

 

 

そこで衝撃を感じる。

キュルキラがブックメイカーを抱きしめた。

言葉はない。目を閉じ、腕をブックメイカーの背に回し、ただギュッと抱きしめる。

 

 

「………」

 

 

また、反射。

ブックメイカー左手に持った魂を上にかかげ、右腕はキュルキラの背にまわす。

無言だった。何も言わない。時間が遅く感じる。

 

 

「逃げろ」

 

 

かろうじて絞り出た言葉だが、何も変わらない。

キュルキラは動かず、目を閉じ、ブックメイカーを抱きしめ続ける。

止めてほしかった。力が発動されてしまう。なぜシャンプーを変えなかった。

昔がフラッシュバックして、力も同じだ。触れた相手の記憶が流れ込んでくる。

 

 

『ごめんなさい』

 

 

世界は、ありとあらゆる可能性を持っている。

頭にある弾丸を取り出す手術が失敗し、死体に変わった男へ少女は言葉を投げた。そしてその首に刃を入れる。

フラッシュバック。少女は頭を下げた。首を貸してくれないか? 楽にしてあげるから。

馬鹿みたいな言葉に、男は笑った。

 

 

『貸してやるよ。でも――、終わらない』

 

 

目が見えない男は、海のほうへ顔を向けて笑った。

近くには多くの死体があった。

 

 

『終わらねぇんだよ』

 

「………」

 

『ちゃんと返せよ』

 

 

誰もがみんな、分かっていたとでも言うのか。

自分は世界に踊らされていたとでも言うのか。

守りたいと思ったものは炎に包まれ、救いたいと思った連中はまた地獄を歩むのか。

だったら自分のやってきた事は――

 

 

「僕は――……、どこで間違えたんだ」

 

 

ポツリと、ブックメイカーの目から涙がこぼれた。

誇るって言ったくせに。今更そんな言葉。キュルキラは薄目をあけて小さく笑った。

そして抱きしめる力を強める。少しでも彼の不安が消えるように。そして少しでも自分の想いが伝わるように。

 

 

「――ッ」

 

 

その時、腕を通して記憶が伝わった。

目を輝かせる少女が見たのは、諦めずに戦う、パーカーを着た戦士の姿だった。

その時、掌を通して記憶が伝わった。

或が愛していたのは、人を守るために戦う幽霊の姿であった。

 

 

「―――」

 

 

ブックメイカーは、全てを察した。

見上げればそこに英雄たちの影を視た。

待て、待てよ。まだ灰にはなってない。まだ僕は――、俺は、ココにいるじゃないか。

あの時、全てを、存在をも燃やし尽くすつもりで蛇を蹴った。だが結果としてまだブックメイカーはここにいる。

燃やすということは灰に近づくと言うことだ。にも関わらずまだココにいるのは何故なのか――?

 

なぜ目の前にいるツインテールの少女は炎に包まれても逃げないのか。

当たり前だ、そもそも何とも思っていない男に口付けなど落とすものか。

今も抱きしめたままなのは、理由があるからに他ならない。

 

そしてなぜ天空寺タケルは、受け取ったアイコンを返したのか。

なぜ今のブックメイカーの懐にはアイコンがあるのか。全ての理由が視えた気がする。

だからブックメイカーは手を伸ばし、叫んだ。

英雄達が頷いたのを、ブックメイカーはその目で確かに視た。

 

 

『アーイ!!』

 

 

英雄達が――、ブックメイカーに協力してくれていた英雄が、最後の力を連れてきてくれた。

 

 

「これが」『カイガン!』『ペンと――』

 

 

仮面ライダーゴーストは、炎に包まれ、それでも前を見た。

 

 

「最後の物語だ」『ダイカイガン!』

 

 

キュルキラは目を閉じているから、どれだけ時間が経ったのかは分からないし、自分がどうなっているのかも分からなかった。

ただし腕の感覚が無くなっていることから、自分がもう長くない事は分かった。

そのとき背中にグッと強い感触が生まれた。キュルキラは驚いて、思わず目を開けてしまう。

するとそこには笑みを浮かべたブックメイカーがいた。

 

 

「!」

 

 

彼は、キュルキラを『両手』でしっかりと抱きしめていた。

お互い、全身が炎に包まれている。けれどもキュルキラは少しだけ呆気に取られて、直後嬉しそうに笑った。

言葉はいらなかった。二人は目を閉じ、少しだけ唇を吊り上げ、ただ抱き合いながら炎に包まれていく。

次第に強くなっていく炎。二人の姿が赤の中に消え、存在さえも焼き焦がしていった。

燃え続けたのは"二人"だ。灰になり、消え去ったのは二人。

そこに魂は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

ランドセルが揺れる。

天城或は、縁日で取った金魚に挨拶をして、家を飛び出した。

友達と合流し、笑いながら学校を目指す。

 

 

「――身代わりになったか」

 

「ええ。創作の力を使ったのですね。そして自らが代わりに、と」

 

「ましてや15個、揃っていた。設定は有効だ」

 

 

アダムは寂しげに笑う。

悲しい生き物だ。こうする事で救われるとは。

 

 

「全てを知ってなお、自己犠牲を取ることで救われる者たち……」

 

 

アダムとイブは本を閉じた。

視る事を止めれば、物語は終わりになる。

 

 

「おめでとうございます。ハッピーエンドですわ」

 

 

名前も知らない英雄に観測者は賛辞を投げた。

仮面ライダーとは言えない、カメンライダーに。

 

 






tips


黒江(くろえ)灯里(あかり)

キュルキラの部族では『首狩』の文化が常識とされており、その行為には霊的なモノが宿るとされ、神聖化されていた。
しかしその信仰心を利用し、キュルキラは私利私欲のために首を狩るようになっていた。
欲望と快楽に任せた行為に、次第に怨念が溜まり、キュルキラは怪物となった。

と、言う――、設定。

実際はただの幼馴染。
「キミのためなら世界を敵に回してもいい!」そんなクサイ台詞を実際に実行した哀れな女。
けれどまあ、本人はそれなりに幸せだったようだ。



・??????????

ブックメイカーは称号であり、本当の名前はもう炎に包まれて分からない。
下の名前の読み方はおそらく『たける』だろうが、どんな漢字なのか知る術はない。


………

今も当然ライダーを見てるワケなんですが、本当の意味で仮面ライダーを見てたのはRXと他の昭和だけだと思います。
もう今はぶっちゃけ意図してなくとも『俳優』さんを見てるし、特撮ドラマを見てるんですよね。
それこそドラえもんもそうだけど、子供の頃はぶっちゃけ声とか変わっても何とも無かったんですよ。
ただもう今となっては……。


たとえば設定的には弦太朗本人でも、それがオリキャスじゃないならそれはもう弦太朗じゃないんですよね。


まあもちろんそれが良いことか悪いことかは置いておいて。
そういうのも今、仮面ライダーを見る際の一つの面白さだと思ってます。
昭和ライダーとかニコニコでやってますけど、今見たら本当に危ないことやってるんですよね。そっちのほうに目がいくというか。
確かカニバブラーだったかな? 軽快にアクションしてるんですけど、めちゃくちゃゴツゴツした岩場に背中からぶっ倒れてるんですよね。
仮にクッションしてたとしても、背中ボロボロですよたぶん。

あとはこれ何回も言ってるけど、たとえば龍騎の浅倉とかはあの役者さんじゃなかったらココまで人気は出てなかったと思うんですよね。
魅力を構成するものがひとつじゃないって言うのも、ライダーとか特撮の面白いところだと思います。

まあだからこそオリ主も面白いですよね。
要するにライダー=変身者は同じじゃないってのを再確認させてくれます。
それはなにより可能性の面白さですよね。

上の通り、王蛇はあの役者さんが演じた浅倉だからこそボクは好きなのであって、『王蛇』が好きなのかと聞かれれば――、みたいな。

そこに何かとても深いものを感じるのです(´・ω・)b


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。