カメンライダー   作:ホシボシ

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第5話 バカは選択肢を間違える

 

 

「!」

 

 

竜斗が目を開けると、そこは自室の天井が見えた。

 

 

「えッ?」

 

 

飛び起きる。

窓の外は明るくて、差し込む日差しに目を細める。

耳をすまさずとも聞こえてくる小鳥達の声。間違いなく、いつもどおりの朝だった。

 

 

「え? えッ? え!?」

 

 

ウソだ、と、思わず叫んだ。

 

 

「本当よ!」

 

「えッ!」

 

 

扉が開き、美穂が入ってきた。

口をあけて間抜けな表情を浮べている息子を見て、ニヤリと笑う。

 

 

「なんちゃって。なんの話? あ、分かった。おねしょしたんでしょ。分かる分かる、そりゃウソだって思いたくなるわよね」

 

「ち、違うよ! 違うからね!」

 

「わわわ! ちょっと、なんだよ! どうしたの竜斗?」

 

 

竜斗は美穂を突き飛ばすように部屋から出ると、急いでリビングに向かった。

扉を開くと、そこにはパンにジャムを塗っているツバサが見えた。

 

 

「つ、ツバサ! ツバサってば!」

 

「んー、どうしたのおにいちゃん。朝からおっきな声だして」

 

「いやッ! だって! 昨日ッ!」

 

「きのうがどうしたの?」

 

「それが、あの、うまく覚えてないんだけど、なんて言うか! ほら、ツバサもいただろ?」

 

 

「んー? わかんない」

 

「わかんないって! うそだ! だって、ぼくたちは――」

 

 

ぼくたちは、なんだ?

 

 

「あれ?」

 

 

立ち尽くす竜斗。ツバサは構わずジャムを塗りたくっていた。

 

 

「きのう、どうやって帰ったんだっけ? オーロラが……、あれ?」

 

「おにいちゃん、どうしたの? さっきから変だよ?」

 

「ねえツバサ、昨日ツバサはぼくと一緒に帰ってきたよね?」

 

「うーん。うん」

 

「どうやって帰ってきた?」

 

「ん? あるいて」

 

「ウソだ」

 

「本当だよ。お靴、ぬいであるもん」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

 

夢だったのか?

竜斗は不安になる。脳には昨日の出来事がまだ残っている。怪人に襲われ、みんなで逃げて、仮面ライダーに助けてもらった。

しかしふと視線を移したニュースでは、アイドルがバンドマンと不倫したと言う、まあある意味どうでもいいニュースがトップで扱われている。普通、あんな事があったのであれば、少なくとも騒ぎにはなっているはずなのに、テレビはおろか地元の新聞ですらまったく触れられていない。

そもそも化け物だとか、ライダーだとか、冷静になればなるほどありえない存在だというのが分かる。

はじめは本当にあったと思っていたことも、なんだかウソだったのではないかと思えてきた。

 

記憶はあやふやだった。

気づけば朝、ベッドで眠っていた。そんな事はあるのか? それにタケル。彼がどこにもいない。

ミライもまったく覚えていないようだし、なんだか変な気分だ。

 

 

(夢、だったのかな?)

 

 

事実、そう思ってしまうほどに朝はいつもどおりだった。

ツバサはかわいい猫だの犬だのが出てくるニュースのワンコーナーを見て笑っているし、真司と美穂はいつもどおりワーワー言い合いをしている。

 

 

「なに言ってんだよ美穂! ハンバーガーに決まってるだろ!」

 

「サワークリームオニオンのポテチだろ!」

 

 

なぜ真司たちがヒートアップしているのかと言うと、『コーラに一番合う食べ物はなにか?』という果てしなくどうでもいい内容のせいだった。

竜斗も自分の両親がさすがにそこまでアホではないことを知っている。もしも昨日、息子が未知なる脅威に襲われていたとしれば、こんな意味不明な言い争いをすぐにやめて警察か病院に付き添ってくれるはずだ。

 

しかし、そんな様子はない。

やはり夢だったのかもしれない。

納得はいかないが、無理やりに割り切って竜斗はパンを齧り始めた。

 

その後も、いつもどおりだった。

ツバサをつれて家を出て、雄介の喫茶店に寄ってから幼稚園にツバサを送り、竜斗は学校に行く。

 

 

「おはよう竜斗くん」「おはよう竜斗」

 

「おはよう二人とも」

 

 

教室についてもやはりいつもどおり。ミライと加古が手をふり、竜斗は後ろの棚にランドセルを置いて二人のもとへ。

 

 

「あ、あのミライちゃん」

 

「なぁに?」

 

「昨日さ、どうやって家まで帰った?」

 

「うん? どういう事?」

 

「いやッ、えと、ちょっと……」

 

「うーん、歩いてかなぁ」

 

「普通に? 誰と?」

 

「え? えーっと……?」

 

 

ミライは少し困ったように笑みを浮かべると、迷ったように首を傾げる。

 

 

「なに? なんの話?」

 

 

加古が訝しげな表情を浮べる。

確かに少し変な質問だ。ストーカーじみた内容に、竜斗は慌てて訂正を。

 

 

「いや、別にへんな意味じゃないんだけど」

 

「うん。大丈夫。分かってるよ。でもあんまり覚えて無くて」

 

「え」

 

「夢が強烈でさ」

 

「その、夢って……?」

 

「うん。なんか周りが森で。喋るヘビがいて――」

 

 

途中までは自分と同じ様だったが、どうにも夢の内容が違っていた。

やはり勘違いだったのだろうか。竜斗はすっかり昨日の記憶に自信がなくなってしまい、以後はミライの夢に適当に相槌を打っていた。

しかしやはり気になるものは気になる。1限目が終わった休み時間、竜斗は本条に声をかけた。

自分の席に座って読書をしていた本条に、昨日の件をそれとなく振ってみる。

 

 

「やっぱり夢だったのかな」

 

「夢か」

 

 

本条は、少しだけ唇を吊り上げた。

 

 

「夢じゃないのかもしれないよ」

 

「え?」

 

「そもそも夢ってなんなんだろう」

 

「それは、寝てるときに見るもの?」

 

「確かにね。でも、もしかしたらもっと深い意味があるのかもしれない」

 

 

たとえば、パラレルワールド。

自分がいる世界とは次元を隔てた場所にある別の世界。

そこにはもう一つの地球があって、もしかしたらもう一人の竜斗がいるのかもしれない。

二人はお互いに、お互いの存在を知らないし、触れ合うこともありえない。けれども何か些細なことでつながりがあるとしたら――?

 

 

「たとえば今このAと言う世界にいるキミが、夢と言うツールを解してBの世界のキミの主観を体験したのかもしれない。あるいはCか、Dかもしれない」

 

「ど、どういう意味?」

 

「つまり夢と言うのは幻とかウソじゃなく、本当に起こったことを体験してることなのかも」

 

「そんなまさか」

 

「フフ。でも、キミはそんなファンタジック、ウソみたいなことを体験したんだろう?」

 

「あぁ、そうか。それはたしかに」

 

「この世界にはウソも本当もないよ。ただそこにあるだけ。ウソは確かにウソだけど、それはウソじゃなくなるかもしれないし、別の世界じゃ本当かもしれない。無限に広がるパラレルワールドは、無限の可能性を秘めている。この世界の常識は、別の世界では非常識かもしれない」

 

「はぁ」

 

 

凄い想像力だなと、思わず感心してしまう。

だが確かに本条の説明は腑に落ちるところもあった。あのリアルな体験がリアルな夢だったらば、それはもしかしたら別の世界では本当に起こったことなのかも。

世の中にはまだ解明されていない事が沢山ある。本で読んだが、妖怪の正体は外国人だったり、病気のせいだったり、当時まだメジャーではなかった動物だったりと、いろいろ解明が進んでいるらしい。

竜斗は本条にお礼を言うと、自分の席に戻っていった。

 

 

「………」

 

 

ウソは、本当になる。

それは逆を言えば、"本当はウソ"になると言うことだ。

本条は頭の中でその言葉を浮かべ、ニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムゥ」

 

「お母さん大丈夫だったの?」

 

「うん。ありがとう。ただのギックリ腰だったみたい。人騒がせなんだから」

 

「ムムゥ!」

 

「じゃあもしかしてお昼から」

 

「うん。これ食べたら保育園」

 

「ふぅ、大変」

 

「ムムムゥ!」

 

「別に大変じゃないよ。みんなと会えるのは楽しいし」

 

「んー、ありがたい。いつもツバサみてくれてありがとうね」

 

「ムムムムゥ!!」

 

「なに、どうしたのよさっきから!」

 

 

お昼。ランチ。

ポッピーは頬を膨らませて不機嫌そうにしながら、オムライスを口に運んでいる。

それを見ていた美穂とハナは、怪訝そうにポッピーを睨みつける。

三人は友人だった、美穂は休み。ポッピーは家事手伝い。ハナは母親が具合が悪いと連絡がきたため、出勤時間を遅らせてもらった。

だから時間が出来たので、病院の傍にあるカフェでランチをしようと言うことになったのだが、どうにもポッピーの機嫌が悪い。

 

 

「本当はね、今日は永夢とラブラブランチだったのにぃ」

 

「………」

 

 

あっそ。と、美穂の目が語っている。

 

 

「相変わらず仲いいよね」

 

「そうだよ! でもね、今日は永夢、友達とご飯に行くんだって! 私を放置して楽しんでるんだよ!」

 

「ああ、なるほど、そういうプレイね」

 

「ちょっと美穂さん。何言ってるの!」

 

 

ハナは顔を赤くして、ジットリと美穂を睨みつける。

一方でヘラヘラ笑う美穂。こういうネタは嫌いじゃなかった。

 

 

「宝生先生ってどうなのよ実際。結構自分から行くタイプなの?」

 

「んー? どうかなぁ。でもギューってしながらするのは好きみたい」

 

「ほうほう」

 

「ちょッ! もう! 食事中になんてこと言ってんの!」

 

 

呆れた様に首を振るハナ。

 

 

「いいじゃん別にねぇ。ハナ先生だってどうなのよ、良太郎先生となんかないの?」

 

「な、ないよぉ」

 

「本当にぃ」

 

「ほんとほんと。だって良太郎先生って、なんか男の人っていうよりは、叔父さんとかなんかそんな感じ」

 

「ひどッ!」

 

「でも本当に叔父さんじゃないんでしょ?」

 

「え? あれ――? ん……ッ?」

 

 

たしかに、そうか。ハナはなんだか不思議な感覚に陥る。

そうだ、他人。良太郎とは他人。他人? なんだか引っかかる。

 

 

「でもいいよ、愛する人がいるって」

 

「なに、唐突に」

 

 

ポッピーは紅茶を手を取ると、うっとりと斜め上を見つめる。

どうやら彼女にしか視えていないものがあるようだ。頬を桜色に染めて、ポッピーは幸せそうにフニャンと笑う。

 

 

「今も早く永夢に会いたい」

 

「おい、私らに失礼だろ」

 

「永夢とギュってしたい。夜は永夢に美味しい物を食べさせてあげたい」

 

 

美穂の言葉は無視して、ポッピーは言葉を続ける。

 

 

「永夢の声が聴きたい。永夢の傍にいたい。そう思わせてくれる人がいるって、幸せじゃない?」

 

「そ、それはまあ、そう思うけど……」

 

 

ハナは、困ったように赤面しながらコーヒーを啜った。

 

 

 

 

 

 

「――ッ」

 

 

天空寺タケルは、ゆっくりと目を開ける。

 

 

「あれ……?」

 

 

体を起こす薄暗い室内だった。

しかしなにか音声が聞こえる。これは――、嬌声だろうか? 女性が喘ぐ声が聞こえてきた。

すると気づく。タケルの傍で、フィリップがテレビを見ていた。どうやら嬌声はそのテレビから聞こえてくるものらしい。

とは言え、画面の中も薄暗く、何が起こっているのかはいまいち分かりづらい。フィリップは顎に手を当てて、それをジッと観察していた。

 

 

「おうフィリップ、タケルの調子は――っておい! 何見てんだよお前!」

 

 

姿を見せた翔太郎は真っ赤になって顔を背ける。

 

 

「すまない、チェリーには少し刺激が強いか」

 

「そうそう――っておい! どういう意味だお前ソレ!!」

 

 

フィリップはガンを飛ばしてくる翔太郎を無視すると、テレビを消して、振り返る。

そしてジッと、タケルを見た。

 

 

「ゴースト。目が覚めたみたいだね」

 

「あなたは……!」

 

「行こう。みんなが待ってる」

 

「え?」

 

 

そういうと、フィリップはタケルを今いる『リボルギャリー』から出るように促した。

一方で、すぐ近くにあるファミリーレストラン。

 

 

「おお、これ美味いな!」

 

 

大きなハンバーガーを齧り、咀嚼している弦太朗。

 

 

「うん、んまんま!」

 

 

一方で隣に座っていた撫子は、同じハンバーガーを吸うようにして一瞬で口の中へ。

そのまま三回ほど口を動かすと、ゴクンと音をたてて存在をロストさせる。

 

 

「おかわり」

 

 

既に注文していたのか、すぐにウエイトレスが新しいハンバーガーを三個持ってくる。

しかしいずれも撫子は一口で平らげると、また注文をするためにボタンを押した。

 

 

「おい撫子。食いすぎだ」

 

「いいじゃねぇか流星。もっと食えよ撫子。全部流星が奢ってくれるから」

 

「ありがとリューセイ。もっとおかわりするね」

 

 

笑顔を浮かべる撫子。

流星は飲んでいたスープを吹き出し、隣でワインを飲んでいたゴロウの顔面に直撃させていた。

 

 

「あ、す、すまない。いやそれより! おい、おい! やめろ撫子! さりげなく高いほうを頼むな!」

 

 

騒いでいる弦太朗たち。

ひとつ通路を挟んで隣の席では、士がコーヒーを飲んでいる。

 

 

「面倒な事になってきたな」

 

「またまた。予想通りだろ。すんなりキバたちが協力してくれるとは思ってなかったわけだし」

 

 

晴人は士の向かいに座り、メニューを見ている。

 

 

「でもよ、こっからどうするんだ?」

 

 

士の隣で、紘汰はフルーツパフェをつついていた。

一応紘汰は神さまであり、食べなくてもいいが、最近は『神パワー(紘汰が勝手にそう呼んでいる)』の調子がいいらしく、味覚も正常に働くらしい。

 

 

 

「大きく分けて、二つ」

 

 

士はミルクとシュガーをテーブルに置き、まずはミルクを指差した。

 

 

「ショッカーを潰すこと。あとは――」

 

 

そして次はシュガーを。

 

 

「はは、分かるよ士くん! ポケモンを捕まえることでしょ?」

 

「違う!」

 

 

士の後ろで映司が微笑んだ。

テーブルには様々な色のドリンクが並んでいる。映司がドリンクバーで作った特性ドリンクだ。

いろんなジュースを適当に混ぜ合わせて、最強コンボを見つけているらしい。とは言え、いくつもコップは使えない。

では中身はどうしているのかと言うと、映司の隣で青い顔をしている悠を見れば分かるだろう。

 

 

「よし! できた! ウーロン茶にコーヒー、牛乳にロゼの紅茶! はい! 悠くん! 召しあがれ!!」

 

「あ、あの映司さん。ボクはもう……!」

 

「遠慮しないでよ! ささ! グイっといっちゃって!」

 

「………」

 

 

士はみずっぱらになっている被害者を、同情の目で見ながら、続きを口にする。

 

 

「"眼"を潰すことだ。カメラマンが消えれば、テレビは砂嵐だろ?」

 

「眼か」

 

 

晴人の隣にいた進ノ介は、バニラアイスをスプーンの上に乗せてジッと見つめる。

 

 

「どっちだと思う?」

 

 

進ノ介は士を見る。

 

 

「……断定はできないが、確実に普通じゃないのが二人いた。俺が気づいてるんだから、渡は確実に気づいている」

 

「なるほど」

 

 

"目的は同じだが、やり方が異なる"。

それは戦いの場でも言っていたことだ。しかしそもそも、彼らはなんの話をしているのだろうか?

そしてその時、フィリップ、翔太郎、そして二人の後をおずおずとついてくるタケルが見えた。

 

 

「待たせたな。主役の登場だ」

 

 

帽子を整え、ニヒルに笑う翔太郎。

 

 

「………」「………」「………」

 

「無視かよ!!」

 

 

士は翔太郎を跳ね除けると、タケルに視線を移す。

 

 

「きたな、タケル」

 

「え、えーっと」

 

「晴人」「はいよ」『クリア! プリーズ』

 

 

景色が変わった。何も変わっていないように見えて、大きな変化が二つある。

まず一つ、一般人が皆消えた。客も、ウエイトレスも、窓の外を見ても誰もいない。

そしてもう一つ、ドリンクバーにある文字やらが全て反転していた。

 

 

「え? え? え?」

 

 

うろたえるタケル。

すると進ノ介が立ち上がり、タケルの肩に触れる。

 

 

「タケル。大丈夫だ。これはミラーワールド。鏡の中だ」

 

「か、鏡ですか?」

 

「ああ。まあ長くいるとシュワシュワになるんだが、士の近くにいれば大丈夫だ」

 

「士……?」

 

「ああ、えっと、あの、ほら、つまらなさそうな顔してるやつ」

 

「おい、進ノ介」

 

「悪い悪い。とにかくほらタケル、俺と一緒に座ろう」

 

 

進ノ介はタケルと共に弦太朗の後ろ側に座る。

 

 

「なにか食うか? いや、その前にジュースでも飲むか? メロンソーダにコーラ、いっぱいあるぞ。あ、いけね、店員いないんだった。でもドリンクバーは使えるよな? なんでも言ってくれ、とってきてやる」

 

「あ、あの……! えっと」

 

 

困ったように笑い、肩を竦めるタケル。

グイグイくる進ノ介に怯んでいるのが一つ。あとは――、食べられないし、飲めもしない。それを言いたくないのが一つ。

 

 

「落ち着けよドライブ。ゴーストが困ってるだろ」

 

「後輩がかわいいんだろ。よく言ってた」

 

 

からかうように笑う晴人と士。

進ノ介は少し恥ずかしそうに頭をかいた。

 

右上の四人席には弦太朗、撫子、流星、ゴロウが座っており。

右下にはタケルと進ノ介が。

通路を挟んで、左上の四人席には士、紘汰、晴人。

左下には映司、悠、翔太郎、フィリップが座っている。

 

あと士は一瞬向こうの方を確認する。少し離れたところに『何人か』いるようだ。

とは言え、問題はないのか、話を続けることに。

 

 

「あとは――」

 

「大丈夫だ。店の外にいたから、一緒に引きずりこんでおいた」

 

 

晴人の言葉どおり、すぐに息を荒げた永夢が入ってくる。

 

 

「す、すいません。遅くなりました」

 

 

晴人の隣に座る永夢。

とにかくこれで全員が揃ったらしい。そもそも、士達の第一作戦は『天空寺タケル』の回収である。

 

 

「タケル。俺達を覚えては?」

 

「え? え? え?」

 

「だろうな。お前が一番――」

 

 

そこで士は言葉を止めた。目を細める晴人。

 

 

「……いや、とにかく、なにがどうなってこうなったのか、フィリップ。説明を頼む」

 

「ディケイドの登場により――」

 

 

立ち上がるフィリップ。その手に一冊の本が現れる。

 

 

「僕らは多世界と言うものの存在を強く認識するようになった。別々の世界は時に交わり、一つの世界となる。たとえばスーパーヒーロー大戦やバトライドウォー。あるいは時に全く異なる存在を引き込んで。ウルトラマンやガンダムを巻き込んだロストヒーローズ事件などなど。あ、ちなみにだけど、交わりやすい季節は『春』らしい」

 

 

なんとか戦い抜いてきたライダーたち。しかし気になるのは、何故そんな事が起きたのか、これからも起きてしまうのか、だ。

だからこそフィリップや士は、世界がどう生まれてくるのかを調べるようになった。そんな時、渡から観測者の存在を知らされる。

 

 

「世界は宇宙だ。今も新しい世界が生まれ続けている。だがそれは奇跡のせいじゃない。しっかりとしたメカニズムから創生されるものさ。宇宙がビックバンから生まれたように。人間が進化から生まれたように。男性器と女性器が合わさる交尾によって新たな生命が生まれるように」

 

 

要するに、世界が生まれること、世界が交わること、それらは偶然ではない。

それを調べるうちに、士達は一つの存在を見出した。

 

 

「それが、神さ」

 

「かみ?」

 

 

ぽかんとした様子でタケルが呟く。

一方で興奮したように目を見開き、タケルを指差すフィリップ。

 

 

「そう。ゴッド。もちろんそれはゼウスだのアポロンだの、八岐大蛇や釈迦だの、シヴァだのの事を言っているわけじゃない」

 

 

神が世界を創っている。文字通り。

 

 

「ディケイドの世界、ダブルの世界、オーズの世界。様々な世界のはるか上、創造を司る世界が存在する。枝分かれし、今も広がり続ける世界の頂点はたった一つの世界。いわばそれは母体。それこそが神々の住む『神なる世界』なのさ!」

 

 

神なる世界。それは世界を生み出す世界だ。そこに住む人間は『神々』と称され、どんな人間でも世界を創ることができる。

つまりディケイドの世界も、ダブルの世界も、もっと言ってしまえば仮面ライダーですらその神なる世界の神々が生み出した産物にしか過ぎない。

 

 

「神なる世界はどんな場所なのか、ましてやどうやって行くのかは全く分からない。しかしそこに足を踏み入れたもの、或いはその力を得たものは、観測者を名乗ることができる」

 

 

鳴滝がそうだった。そして観測者は自分の力を分け与えることもできる。それが『眼』と言う存在だ。渡と剣崎が選ばれた管理を司る役職。

 

 

「まあそれはいい。今はおいておこう。ある日、ある時、また僕らの世界が交わった」

 

 

集結する仮面ライダー。

そこで、一人の『敵』が現れた。

 

 

「正直、甘えはあった。確かにキバやブレイドはディケイドと敵対はしているものの、あくまでも彼らは仮面ライダー。僕達の目指す場所はいつも同じで、脅威を前にすれば協力はできていた」

 

 

だから皆、心のどこかで思っていた。

どんな敵が来ても、力を合わせれば勝てると。

 

 

「だが、今回は違った」

 

 

手も足も出なかった。誰もヤツには勝てなかった。

次々に敗北していくライダーたち。そしてそこに、その向こうに、ライダー達は世界の真理を視た。

 

 

「ゴースト。キミもいた」

 

「え……ッ!?」

 

 

頭を抑えるタケル。

全く思い出せない――、ワケではなかった。

確かにデジャブ、既視感があった。フィリップや士を見た記憶がある。知っている記憶があった。

 

特に向かいに座っている進ノ介には何か強い信頼感のようなものを感じていたからだ。

まさに初めて会った気がしない。もちろん事実、そうなのだ。進ノ介とタケルは出会っているし、一緒に戦った。

ダヴィンチ、ドクターパックマン……。

 

 

「今回の敵は、僕達の記憶を消すことができた。ああ、いや、本当はそんな単純な事じゃないんだけれど、今はそう思ってくれていい。とにかく、ヤツは僕達の想像をはるかに超越し、まさにそれは――ッ、そう、究極的で神話的だ!」

 

 

なぜか嬉しそうに語るフィリップが印象に残る。

しかし確かにそれは圧倒的な力だった。かつて戦ったどんな敵よりも、凄まじく、ライダー達は完全なる敗北を叩き込まれた。

なによりも一つ大きなポイントがある。それは今こうして興奮気味に喋っているフィリップが、どうやって負けたのかを覚えていない事だ。

 

 

「記憶を消された? いや、知らないんだ! 僕は攻撃を受けたのに、攻撃を受けていない事になっている! だって知らない。そんな事実は無かった!」

 

「???」

 

 

意味が分かっていないタケルだが、とにかく攻撃を受けたものは記憶を消されてしまったような状態になるらしい。

タケルが尤もたる例である。現に今、タケルはなにも覚えていない。

だがこうしてタケルが呼ばれたのは、つまり、まだ終わっていないからだ。

 

 

「敵連中はやはり、放置はしておけない。ましてやキミ達も」

 

「おれ達……?」

 

「そう。ゴースト、キミ以外にも記憶を消されたものは多い。それも完全に! 彼らはみな、この世界の住人として暮らしているが、それはウソだ」

 

「……ッ! だったら、助けないと!」

 

「そう。よって僕らは再び団結し、協力し合う必要がある。この世界にも存在するショッカーを倒し、なによりも僕らを負かした敵にリベンジを決めて、倒すためにね」

 

 

強く頷くタケル。既に翔太郎達の力は見た。あれは紛れもなくゴーストと近い力。

そして微かに残っている記憶は間違いなく信頼や友情のそれ。だからこそタケルはこの短時間でフィリップの話や、士達を信頼することができたのだ。

 

 

「そういう事だったら、おれも協力します。ただ――」

 

「?」

 

「今、おれ、なぜか変身できなくて」

 

「敵の力のせいだろう。キミが無意識に変身することを拒んでいる」

 

「え? いやッ、そんなはずは――」

 

「キミが変身に使用するゴーストアイコンは『オレ』、つまりキミ自身だ。当然キミが変身する事を拒めば、アイコンはキミには応えない。そして他の英雄のアイコンも、キミが戦いたくないのだから力を貸すはずもない」

 

 

言葉を失うタケル。フィリップの説明は納得できるものであった。

しかしだとしても、変身を拒む心が分からなかった。一体なぜ自分は変身することを恐れているのか、それがタケルには全く分からない。

それは晴人達も同じだった。何が『とても大切な部分』が抜け落ちているような。

 

「………」

 

 

士が複雑そうに視線を逸らしたのを、タケルは気づかない。

 

 

「とにかく! まずは僕達を適応させることだ」

 

 

タケルが進ノ介に強い信頼を覚えたのは、進ノ介がタケルの前に姿を現したからである。

記憶を失ったタケルは、ダブルやオーズを見た事で、記憶の奥にあった過去を強く揺さぶられた。

だからこそ今こうして士達に協力している。もしも記憶が完全に閉ざされた状態であれば、タケルはより強い警戒心を抱き、協力するまでにもっと多くの時間を要した事だろう。

 

 

「キミと同じく、記憶を失った戦士達に強いアプローチをかける必要がある。だが、あいにくと他のメンバーはキミよりもずっと深層にいる。助け出すには、より強い力が必要だ」

 

 

だからこそ士達は事前に『ビーコン』を置いた。

 

 

「ビーコン? なんですかそれ」

 

「船で言う灯台さ。灯台があるからこそ、船は安全に港へつける」

 

 

士達は船、だから事前に灯台をしかけた。

そしてこの世界により適応できるようにしておいたのだ。そうしなければ士は――、ディケイドの力があるからいいとしても、ダブル達は異物でしかない。

 

 

「世界は、体内のようなもので、ウイルスが入ればそれを排除しようとする傾向がある。それじゃあ凄く動きにくいだろう? だからこそ、僕達の力を適応させる役割が必要だった」

 

「つ、つまり、どういう事ですか?」

 

「簡単に言えば、僕達の記憶や力を取り戻す『ビーコン』と言う重要な役目をもった人物がいると言うことさ。今から、このビーコンに、各ライダーの力を取りもどさせる」

 

 

一旦、情報を整理しよう。

 

・ライダー達の世界が融合をはじめた。この現象自体は珍しいものではなかった。

 

・集まったライダーたち、そこで『敵』と出会う。

 

・『敵』はあまりにも強く、ライダー達は次々に敗北していった。

 

・敵を倒すという目的は同じだが、もともとの関係や、やり方を巡ってライダーが大きく分けて士派か鳴滝派に分かれた。

 

・敵の攻撃を受けたものはまるで、『記憶を消された』ような状態になる。

 

・敵は一つの世界を創った。そこに倒したライダー達を幽閉している状態になっている。

 タケルたちが今いるレストランがその世界である。

 

・ライダー達を再び助けるために、ディケイドたちが動いている。

 

・記憶を取り戻すために士達は事前に『ビーコン』と呼ばれる人物を派遣した。このビーコンが鍵となるらしい。

 

 

「ビーコンは――」

 

 

一同の視線がある人物に移った。

それが、宝生永夢である。

 

 

「………」

 

 

永夢は硬い笑みを浮かべると、ゆっくりと後ろを見る。

 

 

「いや、先生アンタだろ」

 

 

紘汰が笑いながら言った。冗談だと思ったらしい。永夢のジョーク。

しかし士は目を見開くと、額に汗を滲ませる。

 

 

「おい、永夢」

 

「は、はい……?」

 

「俺達の会話、理解してるよな?」

 

「………」

 

 

永夢は真っ青になると、引きつった笑みを浮かべる。

 

 

「あ、あの、ボクって、あの、その、ショッカーの動きを確認するために先行してたんです――、よね?」

 

 

紘汰の表情から笑みが消えた。

 

 

「冗談だろ?」

 

「え? えっと――?」

 

「永夢、お前ッ、なんて言った?」

 

 

士の言葉に、永夢は反射的に自分の役割を言う。

 

 

「ポッピーと一緒に、調査するようにって――、あれ? 違いましたっけ?」

 

 

翔太郎は両手を広げてヤレヤレとジェスチャーをとると、帽子を深く被って顔を隠す。

 

 

「コイツは……、やっちまったな」

 

「え? え……?」

 

 

フィリップは本を閉じて、目を細める。

 

 

「エグゼイド。バーコードウォーリアーディケイドのガシャットはどうしたんだい?」

 

「な、なんですかそれ」

 

「なるほど。やはりキミの失態のようだ、エグゼイド。ははあ、あの映像はそういう事か」

 

「え……? あの、そろそろ分かるように説明を――」

 

「つまり――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポッピー!!」

 

 

小さなアパートの一室。それが所謂二人の『愛の巣』だった。

そう、本当に小さくて狭い部屋。お金を診療所を開設した際に沢山使ってしまったから。

 

けれども狭くてもよかった。

むしろ狭いほうが一緒にいられる時間が長いから。だから永夢はこの家が好きだった。

壁はボロボロだけど全然良かった。お風呂とトイレは別だから全然良かった。なにより、愛する人がいたからオールオッケーだった。

 

 

「えむぅー! おかえりー! ギュってしてぇ!」

 

 

現に今だってそうだ。

扉を開くと、彼女は嬉しそうに走ってきて、抱きしめてくれたじゃないか。

 

 

「ああ、ポッピー……!」

 

「わ、どうしたの永夢。ちょっと痛いよ」

 

「ごめん。ごめんね。でもポッピーなんだよね?」

 

「う、うん。当たり前じゃない。でも、本当に強――ッ」

 

 

永夢は力いっぱいにポッピーを抱きしめる。

それだけ密着する体。ポッピーの胸が永夢の胸に押し当てられ、心臓の鼓動がシンクロする。

ポッピーの髪に顔を押し当てる永夢。一方でポッピーは恥ずかしそうに頬を赤くしていた。

 

 

「あの、永夢。まだ玄関だよ? もしかしてココでするの? わ、わたしは別にいいけど……、声出ちゃったら多分外に聞こえるかもだから、できれば、あの、ベッドに……」

 

「………」

 

「永夢?」

 

 

ポッピーは顔を引いて、永夢の表情を確認する。

永夢は、悲しそうだった。だからポッピーはすぐに永夢を抱きしめて優しく頭をなで始める。

 

 

「どしたの? なにか嫌なことでもあった? よしよし。辛かったね。もう大丈夫だからね。わたしが傍にいるからね」

 

「ポッピー……」

 

「大丈夫だよー。話してみて。わたしじゃ力にならないかもしれないけど、なんでもするよ、永夢のためなら」

 

「ほんとう?」

 

「もちろん。ようし、だったら夜は永夢の好きなものにしよう! いっぱい食べてね、あの、その、いっぱいエッチしたら……、きっともう大丈夫だよ。えへへ」

 

 

恥ずかしそうに笑うポッピー。

だから永夢は、泣きそうになりながら、彼女に縋った。

 

 

「ウソ、ウソだよね?」

 

「うん? なにが? あ――ッ」

 

 

ポッピーはマズイと言う風に目をそらす。

 

 

「あ、あの、も、もももしかして、ご、ごご、ゴムにこっそり内緒で穴開けてたこと? いや、あの、あれは違うの。あれはほんの出来心――」

 

「違う。違うよ! そうじゃない!!」

 

「えッ、だったら――」

 

「ポッピーが!!」

 

 

永夢の声は、震えていた。

今にも零れそうな雫が眼の端にあった。

 

 

「ポッピーが敵だなんて、ウソだよね!!」

 

「――え?」

 

「ボクはポッピーと一緒にこの世界に来たんだよね!? だってポッピーはボク達をずっと助けてくれた! 優しいバグスターだもんね!?」

 

「……うん」

 

「そ、そうだよね! よかった! じゃあみんなの所に行こうよ! はは、士くん達はボクをからかおうと――」

 

「チッ」

 

「え?」

 

「気づいてんじゃねーよ」

 

 

低かった。聞いたことがないほど低い声だった。

それに舌打ちをして表情をゆがめた彼女の顔は、はじめて見たかもしれない。

 

 

「あーあー、萎えるわー。気づいちゃったねぇ、宝生永夢ゥ」

 

「ポッピー……?」

 

 

ポッピーは両手でバツマークを作り、首をかしげて舌を出す。

そして笑みを浮かべた。それは随分濁った、下卑た笑み。

 

 

「ビブベボ! バッドエンドォ!」

 

 

ポッピーは笑みを浮かべ、あるアイテムを取り出した。

青緑色のゲームパッド、ガシャコンバグヴァイザー・ツヴァイ。呆気にとられている永夢めがけ、ポッピーは容赦なく光弾を発射した。

 

爆発が起こった。アパートの壁が吹き飛び、永夢が地面に叩きつけられる。

二人の部屋は二階だった。だから背中から叩きつけられた衝撃と痛みもまたそれなりである。

ましてや永夢のTシャツの腹部が赤黒く染まっていることを忘れてはいけない。

 

 

「ぽ、ぽっびぃ……」

 

 

呼吸を荒げる永夢。口から、鼻の穴から血が流れている。

しかしそんな事など永夢にとってはどうでも良かった。縋るようにポッピーの名を口にする。

一方で、そのポッピーはポッカリと開いた穴から顔を出す。

 

 

「永夢ゥ、ダメじゃない。なんでもベラベラお喋りで、本当に分かってない」

 

 

ポッピーは穴から飛び降り、地面に着地する。

 

 

「爆弾を選んだら破滅するのは恋愛ゲームじゃお約束でしょ? 天才ゲーマーさん?」

 

 

いつのまにか、ポッピーの腰にはバックルが。

彼女は持っていたバグヴァイザーをそのバックルへ装着する。

 

 

「親しき仲にも礼儀あり。そんな当たり前の事も分からない男なんて――」【ガッ・チャーン!】

 

 

ポッピーはガシャットを取り出すと、無表情でそれを起動させる。

 

 

「嫌い」『イナンナ・ケージ!』

 

 

ポッピーの声で起動するガシャット。そして彼女の背後に広がるタイトル画面。

違う。違った。永夢の記憶にあるのは、ポッピーが使うのはときめきクライシスで、イナンナケージなんてガシャットは知らない。

タイトル画面はときめきクライシスによく似ていた。しかし映っている女の子が檻の中で微笑んでいた。

 

 

「変身」『がしゃっと!』【バ・グ・ル・アーップ!】

 

『クレイジーガール♪』『愛はディストラクション♪』

 

『女はいつもイナンナケージ♪』

 

 

濁った桃色の光がポッピーを包み込む。

射出されたゲートがポッピーを通り過ぎると、その姿が仮面ライダーポッピー・イナンナゲーマーへと変わる。

永夢はなんとか体を起こしてその姿を確認する。見た目は、ときめきクライシスで変身した場合と変わらなかった。だが目の色が青ではなく、紫色になっている。

 

 

「う、ウソだ……! ゴフッ!」

 

 

咳き込むと、血が吹き出た。

それでも永夢は立ち上がると、ポッピーのもとまで歩き、その足に縋りつく。

 

 

「ウソだよねポッピー。いつもみたいに、かわいい冗談だよね!? ただボクを困らせようとして――ッ」

 

「んー? 冗談? なーにが?」【ガッ・チョーン】【ガッ・チャーン!】

 

 

バグヴァイザーを手に持つと、ボタンを押す。するとついていた刃が回転し、チェーンソーのような音を立てた。

ポッピーは微笑みながら永夢の髪を掴むと、強制的に立ち上がらせる。そしてゆっくりとその刃を腹部に近づけていった。

 

 

「ウソって、こういうこと?」

 

「――ッ、ぎゃぁあぁあぁあぁあぁあああぁああぁあッッッ!!」

 

 

永夢の口から聞いた事のない絶叫があがる。

回転する刃が腹部に押し当てられ、肉片が飛び散っていく。

後退していく永夢、その腹部からまさに零れるように小腸がはみ出してきた。

反射的にそれを手で抑える永夢。青ざめ、震えている彼を見てポッピーは満足そうに笑う。

 

 

「苦しんでる永夢って素敵だよ。とってもかわいいし、エッチ」

 

「グッウウ!! アァアァッッ!!」

 

 

もがき苦しむ永夢。

すると光が迸り、永夢の傷が一瞬で完治した。

痛みは消えたが、フラッシュバックが起きているのか、永夢は相変わらず地面に手をついて呼吸を荒げている。

 

しかしなぜ永夢の傷が治ったのか?

それは当たり前の話、治した者がいるからだ。あのままでは会話にならない。

 

 

「仮面ライダーエグゼイド。キミは、ゲームをモチーフにしている」

 

 

アパートの階段を降りる音が聞こえてきた。

 

 

「ドレミファビートは音ゲー。ときめきクライシスはギャルゲー。ゲームのジャンルは多種多様だ。上位観測者たる神々は知識に長けている。だからこそ、頭には可能性が過ぎってしまうんだよ。たとえそれが下卑たものであったとしてもね」

 

 

脚が見えた。永夢はゆっくりと顔を上げる。

 

 

「可能性は命の種だ。神々の想いが存在を具現する。だからこそ、このイナンナケージが生まれたと僕は口にしよう」

 

 

子供だった。

まだ小学生ほどの少年が永夢の前に現れたのだ。

 

 

「フフ。下手な真実なら、知らないほうが幸せだったな。宝生永夢」

 

 

その少年の名前は、本条栞。

 

 

「キミは、選択肢を間違えたんだよ」

 

 

 




(´・ω・)女なんてこんなもんよ(偏見)

次回、未定。
多分金曜か土曜にでも。

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