Fate/Fantasy 〜妖星乱舞〜   作:うどんこ

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※注意

・今回からケフカの口の悪さが目立ちます。許容出来ない方は素直にブラウザバックする事をオススメします。
・ケフカは主人公ではなくラスボスポジションです。基本ゲスい事しかしません。
・バニシュデスやバリアントナイフ二刀流乱れ打ち、アルテマれんぞくまは当SSでは禁止です。使うなら感想欄でケフカさんに向けて使って下さい。間違っても作者に向けて使わないで下さい。




第一楽章 その②

 冬木市にある倉庫街の奥、そこでは二騎の英霊(サーヴァント)が激戦を繰り広げていた。

 一騎は長さの異なる二本の槍を華麗に操る美男子。そしてもう一騎は小柄であるが、凛々しさのある少女。どちらも名のある英霊なのであろう。一進一退の互角の戦いが繰り広げられていた。

 その傍らにはどちらかの英霊のマスターと思われる白髪の女性が一人、真剣な眼差しで戦いを見つめていた。他の者は見渡す限り確認できない。恐らく遠くからか、隠れてこの戦いを見ているのであろう。

 

「おやおや、昼ドラの如く爛れた三角関係が大好きな色男と、部下に不倫された哀れな王様と創り物のお人形のドロドロ愛憎劇ですか? これはまた屁が出るほど退屈な『屁』ですね〜。 フヒヒッ 『絵』ですね〜」

 

 そんな騎士の誇りを賭けて戦っている二人を馬鹿にするかの様に、白髪の女性の背後にいきなり姿を現したのは不気味な道化。ヘラヘラと笑いながら女性の隣へ動く。

 その道化の動きに英霊達は咄嗟の反応をするが、生身の人間である女性はいきなりの事に反応出来ずにいた。二つの槍を操る男──ランサーは決闘の邪魔をされた事に憤りながらも警戒して距離をとり、ランサーを相手取っていた少女──セイバーはかなり焦った様子で己のマスターを助けに急ぐ。

 

「そこの貴方! アイリスフィールから離れなさ──」

 

 

プゥッ

 

 乾いた空気の音が倉庫街に響き渡った。そして呆気にとられた表情で闖入者以外の三人が動きを止める。

 

「 こ い て し ま い ま し た 」

 

 そのふざけた態度には流石のセイバー、ランサーもかなり腹が立った。

 

「なんですか貴方は! いきなり現れてアイリスフィールを人質に取るのかと思えば、その……下品な音を鳴らして! 私達を侮辱しているのですか!」

 

 そんな風に怒っているセイバーにゆっくりと近づきながら、嘘臭い笑みを見せる。

 

「おやおや、これはいけない。うら若き乙女がお下劣な会話にもついていけないとは。それではエグい話を連発する現代の若者の会話に参加できませんよぉ?」

 

 体を揺らし、笑いを堪えている。セイバーを挑発しているのであろうか。やはり馬鹿にしている様にしか感じられない。

 

「貴様、我々の決闘に水を差すだけでは飽き足らず、俺からセイバーの相手を奪うつもりか? いくら名のあるであろう英雄と言えども、先約を横から掻っ攫うのは許さんぞ」

 

 敵意の篭った視線と槍の先を道化に向けるが、当の本人は全く物怖じする事なく面倒臭そうにしている。

 

「まっっったくウルサイですねぇ。ぼくちんはお前に話しかけてないんだ。女誑しの飼い犬は黙ってろ!!」

 

 流石のランサーもこの言葉には腹が立った。マスターから「キャスターが危害を加えて来ない限り、無視してセイバーを先に始末しろ」との命がなければ飛び掛かっていた所だ。どうやらランサーのマスターは、道化を見た目などから『キャスター』と判断した様だ。そしてその発言から周りの者も道化を『キャスター』なのだろうと思い込んだ。

 

「キャスター、それ以上私達を挑発し続けるのなら、私はランサーと組んで貴方を先に片付けますよ」

 

 セイバーにも敵意を向けられた道化は、ワザとらしい溜め息をつきながら下がっていく。

 

「ハイハイハイ、じゃあね あの、私は黙って見学してますから えぇ」

 

 そう言ってアイリスフィールの隣へと、やれやれと頭を動かしながら再び移動する。

 

「ぼくちんはこのお人形さんと楽しく実況してるから、お二人は仲良く乳繰りあっててくださなさいナ」

 

 お目当の位置に着くなり身体を宙に浮かせ、器用に寝転がる。その行為に周りは驚きつつも、やはり『キャスター』なのだろうと認識を深めた。宙に浮く魔術などそうそう使えるものではないのだから。

 一度白けた場で、再び熱くなる様な戦いをするのは中々難しいものである。ましてや、再び邪魔しそうな存在がいれば尚更だ。しかも、セイバーはそれに加えて、マスターの側にその存在がいるのだ。たまったものではない。

 

『何をしている? 宝具を使って即刻セイバーを片付け、次にそこにいるキャスターを始末しろ』

 

 ランサーのマスターは痺れを切らしている様だ。さっさと茶番を終わらせろというように命令する。ランサーも渋々といった様子でセイバーに襲いかかる。セイバーもそれを迎え撃つが、どうも動きがどちらも先程までの勢いがない。あの『キャスター』に見られていると落ち着かないのだ。まるで値踏みするような眼で見ているのだから。

 当の道化はというと、尻をポリポリとかきながらセイバー達をニタニタしながら見つめ、アイリスフィールに何か話しかけていた。

 

「そういえばキミの旦那さん、お仕事まだ終わってないみたいだねぇ〜。何かトラブルでもあったのかナ?」

「……何の事かしら」

 

 何故そんな事をと思いながらもしらを切るが、場を読まない道化の前では悪手であった。

 

「おやおやぁ? あまり人に知られたくない事でしたかぁ? そしたらもっと声を『小さく(大きく)』して内緒話しないといけませんねェ!」

 

 ケラケラ笑いながら地に足を付け、銃を構える動作をとある方へ向け、大声で喋り始めた──ランサーのマスター、ケイネス・アーチボルトがいる場所に向けて。

 

「高みの見物で油断している相手の頭をズドン!! これでランサーは脱落! セイバーのマスターも中々いい趣味してますなァ……でもそんなものはつまらん!」 

 

 最後の一言を放つ瞬間だけ先程までのおちゃらけた気配が消え、どこか狂気が篭っている様であった。

 

「と思ったからキミに『ヒソヒソ(デカデカ)』と聞いて見たんだけど間違ってたかナ?」

 

 これだけの声量であればケイネスも聞こえているだろう。そして咄嗟に身を隠し、ランサーに警戒させるであろう。完全にこの道化の所為で作戦がオシャカである。

 アイリスフィールが隣の道化を睨むも、本人はどこ吹く風といった様子でのうのうとしている。

 

「やっぱり隠し事はすぐにバレちゃうわね〜。何がいけなかったのかしらね。ぼくちん分かんなァ〜い!」

 

 全く悪びれる様子もなく、この状況を楽しんでいるようだ。ケイネスもこの異様な道化に危機感を感じたのか、ランサーへの命令を変更する。

 

『ランサー、セイバーよりも先にキャスターを始末しろ。アレからは嫌な予感がする』

 

 そんなケイネスの思い切った発言に道化はワザとらしく驚いた。オーバーリアクションが更にワザとらしい。

 

「おおっとぉ!? 良いんですかぁ? 折角あの犬っころがアホ毛を追いつめていたのに、その機会を捨ててぼくちんを狙うなんて」

 

 アイリスフィールも意を決したようにセイバーへと指示を出す。

 

「セイバー、ランサーと協力してキャスターを倒しなさい」

「しかしアイリスフィール、奴は貴方の隣にいるのですよ!」

 

 セイバー陣営にとっては道化に手を出しづらい状況なのである。いつ人質にされてもおかしくないのだから。

 

「何ですかこの状況は? まるで私が悪いみたいな空気じゃないですかあ。いや〜ん、人気者は辛いわね」

 

 不満そうな表情を浮かべながら、アイリスフィールから離れた位置にわざわざ移動していく。何故かセイバー陣営に対しての自分の優位を捨てている。一体何を考えているのだろうか。

 

「でもこのままじゃ1対2、此方の分が悪いですね。んもぅ〜仕方ないッ! 助っ人を呼ぶとしますか」

 

 そう言って指を鳴らすも何も現れない。道化の妄言なのであろうか。

 

『何をしている? 始末するなら隙だらけの今だ、ランサー』

「了解した、マスター」

 

 ランサーが勢いよく道化に向かって飛び出す。それに対しても道化は身構える事なくニタニタと笑っていた。やはり何か企んでいるのだろうか。そう考えながらセイバーはその場で警戒をしていた。

 

「そうそう、その位置。わざわざ自分から出迎えるなんて物好きですねぇ、()()()の猪武者サンは」

「─────AAAALaLaLaLaLaie!!!」

 

 ランサーの頭上にいきなり雷鳴が轟いたかと思えば、ランサーを吹き飛ばし、戦車(チャリオット)に乗った大男と青年が現れた。

 吹き飛ばされたランサーは体制を立て直して大男を睨み、セイバー達も道化を助けた新たな敵を睨みつけた。

 

「ふーむ、余達はどうやら出る機会を完全に間違ったようだのう」

「何呑気な事言ってやがるんですか〜! これじゃ僕達完全に袋叩きだ……終わった……」

「安心しろ坊主、余はそう簡単にはやられぬさ」

 

 そんなやり取りをしている二人組に道化はゆっくりと近付いていく。

 

「いや〜、助かりましたよ。もし来てくれなかったら、ワタシコワァ〜い人達に乱暴されてました。それじゃぼくちん離れて見てますので、勧誘でもなんでも好きなことやっちゃって下さいナ。まあ、出来ればの話だけど。 ケヒヒ」

 

 この状況の元凶である道化はそのまま大男──ライダー達の後ろへと身を隠す。まるで盾にしているようであった。

 

「ライダー、あいつと知り合いなのか?」

「いや? あんな奴など余は知らぬぞ。もし会っていたとしたらあれ程特徴的な奴だ、忘れるなどあり得んな」

「でもあいつ、お前と親しそうにしてたぞ?」

「そうしてあの二人を余になすりつけたのであろう。食えない輩だ。坊主、あやつから目を離すな。あれからは何を仕出かすか分からん危うさを感じるぞ」

 

 そんなライダー二人組に後ろから野次が飛んで来る。先程の道化からのものだ。

 

「二人で無駄話してないで早く話を進めてくんなァい? ぼくちんこの後も予定が詰まってるんだ。残業代も出やしないんだから、ちゃっちゃと仕事を終わらせて定時で上がらせてよね、全く」

 

 よく分からない事を喚く道化。それにはどう反応を返してよいか二人は分からず顔をしかめていた。

 

「仲良さげに話しているとは、やはり貴様はキャスターの味方か。それなら貴様を始末して、キャスターを潰すまでだ」

「手を貸しますよ、ランサー」

 

 セイバーとランサーは協力して、ライダーを潰し道化を叩くつもりのようである。面倒な事この上ない。

 

「落ち着け二人とも。余はうぬらと争いに来たのではない。だからまず話し合いをしようではないか」

 

 どうどうと、まるでじゃじゃ馬を諭すように話すライダーに、若干不満を覚えながらも襲いかかるのを止まる二人。なんだかんだで聞く耳はあるようだ。

 

「フム……先ずは自己紹介とでもいこうか! 我が名は征服王イスカンダル! ライダーのクラスを得て現界した!!」

 

 いきなりの真名のカミングアウトに呆れるセイバーとランサー。その後ろでは、道化が小さな氷の粒を花吹雪のように舞わせ、さりげない演出をしていた。

 ライダーの真名の暴露にはマスターである青年──ウェイバー・ベルベットも予想外であったのか、早速文句を言っていた。その様な状況になっても、道化は花吹雪を舞わせるのを止めない。ウザったらしいことこの上ない。

 

「早速本題に入るが、一つわが軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦をともに分かち合う所存である」

 

 セイバーとランサーの視線は先程よりも更に冷え切った冷たいものであった。それもそうであろう。ただでさえこの道化の所為で乱れた場に乱入して来ただけでは飽き足らず、更には手下になれと言っているのだ。道化程ではないが腹立たしいものである。

 ライダーとランサー、セイバーが口論している様子もニタニタと笑いながら、今度はセイバーとランサーの頭上にも氷の粒を舞わせている。そして更に不機嫌になる二人。そして不機嫌なままライダーの勧誘をハッキリと断った。

 

「むぅ……待遇は応相談だが?」

 

「「くどい!!」」

 

 なおも引き下がるライダーを二人そろって切って捨てる。

 その返事に、本当に残念そうな顔をしてライダーは頭を掻いた。

 

「そもそも貴様にはもう朋友とやらを一人作ってるではないか。それだけでも十分じゃないのか」

 

 ランサーがそう訊ねると、そう言えば訂正していなかったなと頭を掻いて笑いながら、ランサーの問いを否定する。

 

「まだ勘違いさせてしまっていたままであったの。これは失礼した。余の後ろにいる男は朋友でも無いし、わが軍門に入れてやるつもりもない」

 

 そう言って後ろにいる道化を指差す。当の本人は指を差されると同時にキリッと決めポーズをきめていた。此処にいる誰もが見ていないであろう方向へ向けて。

 

「そこの『キャスター』と何か一悶着あったのですか?」

 

 セイバーの疑問も軽く手を振って否定する。

 

「いや、そもそも奴とは此処での邂逅が初だ。まだどの様な奴かは皆目検討もつかぬ。……ただ、奴を仲間に引き入れるととんでもない目に合う気がするのだ。余の勘がそうささやいておる」

 

 豪胆な征服王も流石に遠慮する程の危険な匂いを振り撒いている当の道化は、その言葉に不満そうである。

 

「差別はんたァ〜い! いくらワタシが超絶ハンサムでその美貌に嫉妬してるからって、仲間外れにされるのは心が広〜いぼくでも傷付いちゃうズラ!」

 

 そんな間の抜けた発言をする道化への視線は、全て冷ややかなものであった。

 

『いったい何を血迷って私の聖遺物を盗み出したのかと思えば……よりにもよって君自身が聖杯戦争に参加する腹だったとはねぇ。ウェイバー・ベルベット君』

 

 ウェイバーの姿をどこかで確認したのか、ケイネスの声が倉庫街へと響き渡る。

 

『致し方ないなぁウェイバー君。君については、私が特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。魔術師同士が殺し合うという本当の意味……その恐怖と苦痛とを、余すところなく教えてあげるよ。光栄に思いたまえ』

 

 どうやらケイネスとウェイバーと呼ばれた青年は師弟関係であったが、弟子のウェイバーが使う筈だった聖遺物を盗み出してこの地に来たという事らしい。

 そしてケイネスは、ウェイバーを格下だと完全に見下している。

 しかしウェイバーは何も言い返せない。恐怖が勇気を上回り、言葉が出せずにいた。

 

「おう、魔術師よ。察するに、貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターとなる腹だったらしいな」

 

 だが、代わって言い返す者がいた。ウェイバーのサーヴァントであるライダーだ。

 

「だとしたら片腹痛いのぅ。余のマスターとなるべき男は余と共に戦場を馳せる勇者でなければならぬ。姿を晒す度胸さえない臆病者なぞ、役者不足も甚だしいぞ」

 

 ライダーがケイネスを腰抜けと馬鹿にして苛立ちが募って来ている時に、更に癪に触る笑い声が聞こえてくる。

 

「呼び出す予定だった脳筋に全否定されてますねぇ。そんなお二方が組んでたら果たしてどうなってたのかナ〜。想像するだけで笑いが止まらないじゃないですくわぁ。

 まあ、根暗の引きこもりと天然タラシのコンビで正解だったんじゃないのォ〜。それでも反りが合ってなさそうです ガ。うっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃあ!!」

 

『チッ…………』

 

 舌打ちが聞こえてくる。言い返しても更に酷い罵倒が飛んでくること間違いないであろうから、黙っているしかなかった。

 

「全く、この戦争には腰抜けばかりが多くて困るのう。おいこら、他にもまだおるだろうが。闇にまぎれて覗き見をしている連中は!」

「何を言っているのですか? 貴方は」

 

 セイバーが聞き返すと、ライダーは満足そうな顔をしながら返す。

 

「セイバー、そしてランサーよ。うぬらの真っ向切っての競い合い、真に見事であった。途中で無粋(ぶすい)な邪魔が入ったが、あれほどの清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出てきた英霊が、よもや余一人ということはあるまいて」

 

 邪魔と言葉を発した時、ライダーは道化にジト目を向けていた。そんな視線もどこ吹く風の道化は、ケイネスの事でまだ腹を抱えて笑っている。

 

「聖杯に招かれし英霊は、今!ここに集うがいい。なおも顔見せを怖じるような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」

 

 その怒号が響いて間もなくして、一騎の英霊が姿を現した。その姿を一言で表すなら『黄金』。金の鎧を身に纏い、傲岸不遜さをこれでもかと溢れ出させている。

 

「我を差し置いて”王”を称する不埒者が一夜のうちに二匹も涌くとはな」

 

 黄金の英霊は軽く怒気を含んだ視線をライダーへと向ける。そんな不遜な英霊の態度に呆れながらもライダーは反応する。

 

「難癖つけられてもなあ……、イスカンダルたる余は世に知れ渡る征服王に他ならぬのだが……」

「たわけが。真の王たる英雄は天上天下にこの我唯一人。後は有象無象の雑種に過ぎぬ!」

「そこまで言うなら、まずは名乗りを上げたらどうだ? 貴様も王たる者ならば、己の異名を憚りはすまい」

「問いを投げるか、雑種風情が……王たるこの我に向けて! 我が拝謁の栄に浴して尚、この面貌を知らぬと申すなら、そんな蒙昧は生かしておく価値すら無い!」

 

 殺意をライダーへと向けようとした時、己を明らかに見下した腹立たしい視線に気が付いた。その視線の元には、馬鹿に仕切った表情を隠すこともなく、ニタニタと嘲笑っている道化の姿があった。

 

「……何が可笑しい、雑種」

 

 殺意を道化へ向け、宝具をいくつも周りに展開するも、道化の態度は変わるどころか、声を大にして嗤い始めた。

 

「何がオカシイって? そんなモノ決まってるじゃナーイ! 雑種雑種叫んでいる本人が、正真正銘、()()()()()()()風情だってことにだよ」

 

 明らかな挑発である。黄金の英霊の殺気が膨れ上がるが、それでもなお道化は蔑みの言葉を止めない。

 

「人間である事も出来ず、神などいう自己中な存在からも厄介払いで低級な神にしかしてもらえなかった中途半端な存在のキミが、一体どぉ〜んなこと考えてその言葉を使ってたのか〜ナッ? もしかして自虐ネタ? ウィッヒッヒッヒッ!」

 

 比較的穏やかな者でも怒りを抑える事が難しそうな侮辱を投げかけるが、黄金の英霊は意外にも声を荒げるどころか、出すこともしなかった。しかし、目だけは怒りの炎で燃えていた。

 

「……もう消えろ」

 

 その言葉と同時に更に展開した十を超える宝具が、道化に向けて射出される。凄まじい勢いで迫る宝具に対して、道化は反応ができないのかはたまた避ける気がないのか、一切身(じろ)ぎする事なくその場に止まっていた。そして数多の宝具が直撃する瞬間、粉塵が舞い上がる。その光景を見ていたマスター達の殆どはその瞬間、道化の脱落を疑わなかった。

 

「ライダー、あのピエロがどうなったか分かるか?」

「……何をしたのかはよく分からんが、あの数本の武具が当たる直前に姿がいきなり消えおった。余が思うに、令呪なしでも瞬間移動が可能なのではないか?」

 

 その言葉を聞いたウェイバーの顔は驚きで満ち溢れていた。

 

「ハァッ!? ほぼ魔法の域にあるものをあいつは軽々と使えるのか!?」

「だろうな。一つ言えるのは見た目とは裏腹に、相当高位な魔術師だったのであろうと言うことだ」

 

 手応えのなさに黄金の英霊──アーチャーが舌打ちをすると同時に、その真後ろから少しおどけた耳障りな声が響く。

 

「シンジラレナーイ!!! いきなり暴力に訴えるなんて! そんなにスーグ怒るなんてキミ、友達いないでしょっっっ!!」

 

 アーチャーがその場から飛び退いても追撃する事なく、悪意に満ちた言葉を紡いでいた。

 

「あ、ゴッメーン! 友達一人は居たね。自称保護者お手製の泥人形には執心だったんだよねェ〜。無能な奴らが作ったクソみたいな泥人形と一緒に友達ごっこするのは楽しかったでちゅか〜? そんなんだからコミュ障の傲慢チキになっちゃったんだよ。少しは反省してる?」

 

 道化は何の躊躇いもなく相手の逆鱗に触れていく。周りの者達は、いっそ清々しいまでの口の悪さに感心していた。

 

「王たる我への不敬の数々、一度地獄を見るべきだな……」

 

 先程よりも更に多くの宝具を展開する。確実に仕留める気のようである。しかし、そんな局面でも道化は少しも慌てておらず、誰も見ていないであろう方向に変なポージングを決めていた。

 

「今回の主役はワァタシ!! 目立ちたがり屋の脇役は映す価値なしになっちゃいますよぉ?」

 

 道化もやっと戦う気になったのか、身体から魔力が漏れ始めた。あれだけこの場を引っ掻き回した者だ。黄金のアーチャー以外の者達は正体を見抜けるよう集中して観察し始めた。

 

「楽しい楽しいお遊戯会の始まり始まり〜。さあ、あ〜そび〜ましょ!」

 

 くねくねと軌道が不安定な魔力の球が大量に放たれ、アーチャーの周りをクルクルと回りながら取り囲んでいく。

 

「ヒャーーハッハッハッハッハッ!!! 踊れ! 踊れーーッッッ!!」

 

 四方八方から迫り来る、道化の放つ魔力の球を数多の宝具を発射して防ぐ。放たれた宝具は球を打ち消しても威力を少しも落とす事なく降り注ぐ──道化以外の者達へと。

 

「狂宴の始まり〜ィ!!」

 

 セイバー、ランサー、ライダーは己の獲物で宝具の雨を凌いでいるが、英霊ではない者達にはたまったものではない。ウェイバーはライダーの戦車の中で縮こまり、アイリスフィールはセイバーに守ってもらっていた。しかし、姿を見せていない者達にもアーチャーの宝具が迫っていく。ケイネスや切嗣、舞弥、更には時臣の使い魔や既に脱落していると皆が勘違いしている筈のアサシン、そして自身のマスターである雁夜が隠れている場所にも少なくない数の宝具が牙を剥く。

 

「アイリスフィール! 出来るだけ私から離れないで下さい! 少しでも離れられると守れるか保証出来ません!」

「セイバー、今すぐ切嗣を助けに向かうのは出来ますか?」

「少し厳しいですね……貴女を守りながら切嗣の元へ向かうとなると、アーチャーの流れ弾の量が減らないと前進もままなりません」

「私を置いて向かうのは駄目ですか?」

「駄目です。切嗣達の方よりも私達の方に大量の流れ弾が来てます。恐らく、足止めするのと同時に、何処に隠れているかもお見通しだと警告しているのでしょう。それと、まだ切嗣の存在を周りの者達に知られる事になる動きは控えた方が良いでしょう。……あの道化のせいで、既に手遅れかも知れませんが」

 

 セイバー陣営から必死に巻き添えから身を守る会話が聞こえ、ライダー陣営からも少し焦った会話が聞こえる。

 

 

「ライダ〜、あいつらを止めてくれ〜!! 今現在全く生きた心地がしない」

「ぬぅ……ちとキツイのう。宝具を使えば可能だが、魔力の消費量を考えると勧めることは出来ぬ」

 

 偶に道化へも宝具が放たれるが、その宝具は道化に届く前に、魔力の球に阻まれ、撃ち落とされていた。そしてそのオシオキとばかりに、くねくねと動く魔力球が宝具の間を掻い潜り、アーチャーの身を脅かす。そしてその度に、アーチャーの目の中の炎が更に燃え上がっていった。

 

「我の腸を煮えくりかえらせるだけでは飽き足らず、ましてや我が宝物を利用するなどと……一刻も早くこの世から消えよ!! 狂人ンンン!!!」

「クックックッ……ここまで自尊心が高いとますますイジめたくなっちゃうじゃないですか〜。頑固者で考えが時代遅れの古臭い化石は埋め直さなきゃね……」

 

 禍々しい笑みを浮かべると、そのまま身体を宙に浮かせる。

 

「ホワァ〜ッホッホッホッホッホッホッ!!! ぼくの力を少しだけ見せてあげるよ」

 

 今は夜である筈なのに、空を神々しい光を放つ雲が覆い始め、その雲の間からは更に眩しい光が漏れる。

 

「さあ、崇めなさァ〜い……」

 

 光輝く雲の合間から溢れる光が、更に増していく。一瞬だけ、道化の背中から六翼の翼が生えている姿が見えた気がした。

 

こ こ ろ な い て ん し(フォーレン・ワン)

 

 その瞬間、この場にいる全ての者に可愛らしい小さな天使が纏わり付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、次もよろしく〜!」

「何を言っている? 狂人」




お待たせしました。二ヶ月ぶりの投稿です。このSSは不定期投稿なので次の更新も気長にお待ち頂けるとありがたいです。

『こころないてんし』は原作仕様だと余りにもエゲツなさ過ぎるので少し弱体化させてます。まあ、仕方ないね! ……それでも反則臭くなってますが…… 因みにルビは、技名の英語表記です。
因みに原作の効果は、回避不可・防御不可で、全員を瀕死(HP1)にして来ます。

それとケフカさんのCVは千葉繁さんで脳内再生して下さい。よく知らない人はワンピースのバギーやレレレのおじさん、幽白の桑原、ドラゴンボールのラディッツ、北斗の拳のナレーションの人です。

スキル説明

スキル名:第4の壁
保有者:ケフカ・パラッツォ
クラス:バーサーカー
ランク:EX
読者や作者側の世界が見えている状態。時々メタ発言をするのもこの為。因みに、今回の話ではfate/zeroを少し視聴して予習して来ている。



あと、全く関係無いですけど、キングハサンとゴルベーザってシルエットが似ている気がしません?

〜〜おまけ〜〜

ケフカ エンカウントボイス集

VSランスロット
「どっち付かずはキライなんだ!」

VSモードレッド
「チチ離れも出来ないガキンチョめ!!」

VSヴラド三世
「蚊取り線香でもいかがです?」

VS源頼光
「ンまぁ〜ッ!! 野蛮なヒトォ!!」

VSフランケンシュタイン
「化け物はどう足掻いても化け物なんだよ……」

VSキングハサン
「死ぬ準備は いいですか?」



幻聴(いいですとも!)
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